JP4283036B2 - 成膜方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は成膜方法に関し、より詳細には、塗布溶液法によって誘電体膜を成膜する成膜方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
強誘電体特性や圧電体特性を有する膜をエピタキシャルに成膜する方法として、PLD(Pulsed Laser Deposition)法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、及び高温スパッタ法等が知られている。これらの方法によれば、数100nm程度の薄い厚さの膜を成膜する場合には、高品質の膜を容易に得ることができる。
【0003】
ところが、圧電アクチュエータやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等に使用される強誘電体膜は、可動部分に対して大きな力を加える必要性から数μ程度と比較的厚い膜厚に成膜しなければならず、上記の方法を採用したのでは、成膜に長時間を要し、工業的には困難となってしまう。また、強誘電体膜の圧電特性を利用した光スイッチや光偏向器等の光学デバイスでは、横から強誘電体膜に光を通すので、光を通し易くするために強誘電体膜を厚く成膜する必要があり、上記と同様の問題が生じてしまう。
【0004】
そこで、これらの不都合を回避すべく、塗布溶液法で強誘電体膜を成膜することが考えられる。その塗布溶液法は、ゾルゲル法、CSD(Chemical Solution Deposition)法、MOD(Metal Organic Decomposition)法等とも呼ばれ、溶液の重ね塗りによって所望の厚さの膜を得る方法であり、比較的低コストで厚い膜を成膜することができるという利点を有する。実際、非特許文献1では、膜厚が10μmと厚いPZT膜を作製している。
【0005】
また、非特許文献2は、この塗布溶液法によって成膜されたPZT膜の組成をAES(Auger Electron Spectroscopy)によって調査し、PZT膜の膜厚方向の組成プロファイルを得ている。
【0006】
【非特許文献1】
R, Kurchania et al., J. Matter. Res., 14, 1852 (1999)
【非特許文献2】
Amanuma et al., Appl. Phys. Lett., 65, 3140 (1994)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、塗布溶液法で使用される溶液は、重ね塗りの各回において同じものが使用されるので、重ね塗りで得られる個々の層は、全て同じ組成で均一となるはずである。
【0008】
ところが、非特許文献2に開示されるように、重ね塗りで得たPZT膜は、膜厚方向に組成変動する可能性が高いことが知られている。これは、PZTがPbTiO3を結晶核として層の下から結晶成長するため、重ね塗りした各層の下側界面付近ではTiが多量に消費されてTi濃度が高くなり、逆に上側界面ではTiが不足してTi濃度が下がり、相対的にZr濃度が高くなるためであると考えられる。
【0009】
しかしながら、このように膜厚方向に組成が変動するような構造は、膜厚方向に均一な組成が求められる光学デバイスには不適当である。
【0010】
また、既述のように、塗布溶液法において所望の厚さを得るには層を重ね塗りする必要があるのであるが、使用する溶液が低粘度だと一回当たりの層を厚くするのが難しいため、溶液の塗布を何度も繰り返す必要があり、製造コストを高めてしまう恐れがある。これを解決するために、高粘度溶液を用いて一回の塗布で成膜する層の厚さを厚くし、少ない塗布回数で厚い膜を形成することも考えられるが、非特許文献1に記載されるように、高粘度溶液では各層間の界面の接合性が悪く、明確な界面層が形成されてしまう。このような状態は、光学デバイスのみならず、膜の面方向の特性を利用する圧電デバイス等の特性にも悪影響を及ぼすことになる。
【0011】
本発明は係る従来例の問題点に鑑みて創作されたものであり、膜厚方向の組成変動が抑えられた誘電体膜を成膜することができる成膜方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の一観点によれば、第1溶液の塗布によって形成される第1塗膜と、前記第1溶液と同じ種類の溶質成分を有し且つ前記第1溶液よりも粘性の高い第2溶液の塗布によって形成される第2塗膜とを塗布溶液法によって交互に複数積層することにより、所定の厚さの誘電体膜を基板上にエピタキシャルに形成する成膜方法であって、前記第1溶液及び前記第2溶液としてPZT成膜用の溶液を使用し、前記第1溶液のチタン濃度を前記第2溶液のチタン濃度よりも高くする成膜方法が提供される。
【0013】
本発明によれば、低粘度の第1溶液を用いて第1塗膜を形成するので、この第1塗膜の表面の濡れ性が良くなり、第1塗膜の上に第2塗膜を形成しても各塗膜の間に界面層のような不連続面が生成されない。
【0014】
しかも、第2塗膜を形成するための第2溶液として第1溶液よりも粘性の高い溶液を使用するので、第2塗膜の塗りの厚さを厚くすることができ、第1塗膜だけで誘電体膜を構成する場合と比較して、誘電体膜を所定の厚さまで厚くするのに必要な塗布工程の回数を減らすことができる。
【0015】
また、第1溶液及び第2溶液としてPZT用の溶液を使用することにより、PZT膜が上記誘電体膜として成膜される。
【0016】
その場合は、第1溶液におけるチタン濃度を第2溶液よりも高くすることにより、第2塗膜の結晶核となるPbTiO3に必要なチタンが第1塗膜から第2塗膜に供給されるようになるので、PZT膜の膜厚の主体となる第2塗膜においてチタン濃度が膜厚方向に変動するのが防止されると共に、結晶化後の第1塗膜のチタン濃度が低下して第2塗膜のチタン濃度に近づき、膜厚方向の組成変動が全体として抑えられた高品位なPZT膜を得ることができる。
【0017】
なお、第1、第2溶液中に含まれる鉛は揮発し易く、更に結晶化アニールの際にPZTの成長核であるPbTiO3核として消費されるので、予定している組成のPZTを得るのに必要な鉛濃度よりも高濃度に鉛を第1、第2溶液中に添加するのが好ましい。但し、第2溶液では、PbTiO3核への鉛の消費分が第1溶液よりも少ないので、第2溶液中の鉛濃度を第1溶液におけるのと同程度に高くすると、予定していた以上の鉛を含むPZT膜となる恐れがあるので、第2溶液における鉛濃度は第1溶液における鉛濃度よりも低くするのが好ましい。
【0018】
また、第1塗膜と第2塗膜とを1ユニットとし、そのユニット毎に個別に結晶化アニールを行うことにより第1塗膜と第2塗膜とを結晶化すると、膜の結晶化がユニット毎に終端するので、全ての塗膜を一括アニールして結晶化する場合と比較して、結晶化アニールの対象となる膜厚が薄くなり、第1、第2塗膜が緻密に結晶化すると期待できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1(a)〜(c)は、本発明の第1の実施の形態に係る成膜方法を工程順に示す断面図である。本実施形態では、塗布溶液法により、厚い膜厚の強誘電体膜を基板上にエピタキシャルに形成する。
【0021】
最初に、図1(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0022】
まず、チタンアルコキシド、鉛アルコキシド、及びストロンチウムアルコキシドからなる溶質を1wt%の濃度でブチルフタレート等の溶媒に溶かして第1溶液を作製する。その第1溶液は、Tiが比較的高濃度のPbZr0.1Ti0.9O3なる組成のPZT膜を成膜するための溶液であり、その組成に合わせて、溶液中でのジルコニウムとチタンとの組成比(Zr/Ti)が1/9に調整されている。また、この第1溶液は、溶質全体の濃度が1wt%と低いため粘性が低く、薄い膜を成膜するのに好適な溶液である。
【0023】
なお、この第1溶液中のPbは、揮発し易いうえに、PZT膜の核となるPbTiO3として後述する結晶化アニール時に消費されるので、最終的な膜中のPb量が不足する恐れがある。そこで、Pb量の不足分を予め見込んでおき、この第1溶液には、上記の組成(PbZr0.1Ti0.9O3)を得るのに必要なPb量よりも9mol%だけ余分にPbが添加される。このような第1溶液は、組成と濃度を指定すれば材料メーカが作製することができる。
【0024】
そして、格子定数がPZTに近くPZTと格子整合を図り易いSTO(SrTiO3)基板1をスピンコータ内に容れ、そのSTO基板1の(100)面上に上記の第1溶液を0.1cm3滴下し、回転数3000rpm、30秒間の条件でSTO基板1上に第1塗膜2を1〜10nm、例えば10nmの厚さに形成する。なお、基板としては、STO基板の他に、MgO基板も使用し得る。
【0025】
その後に、大気中、基板温度150℃の条件下で第1塗膜2を5分間加熱することにより、第1塗膜2中の溶媒成分を蒸発させ、第1塗膜2を乾燥させる。
【0026】
次に、図1(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0027】
まず、既述の第1溶液と同じ種類の溶媒と溶質を使用し、濃度が第1溶液よりも高い25wt%の第2溶液を作製する。但し、その第2溶液におけるジルコニウムとチタンとの組成比(Zr/Ti)を4/6に調整し、溶液中におけるTi濃度を第1溶液よりも低くする。また、この第2溶液は、溶質全体の濃度が第1溶液よりも高い25wt%であるため、その粘性が第1溶液よりも高くなり、厚い膜を成膜するのに適した溶液である。
【0028】
このような組成の第2溶液によれば、原理的にはPbZr0.4Ti0.6O3なる組成のPZT膜が得られるのであるが、実際には、第1溶液と同様に、PbがPbTiO3核に消費されたり、Pbが揮発したりして膜中のPb濃度が低下する。よって、第1溶液と同様に、Pb濃度の減少分を予め見込んでおき、PbZr0.4Ti0.6O3なる組成のPZT膜を得るためのPb量よりも多くPbを第2溶液中に添加するのが好ましい。
【0029】
但し、PbTiO3核の生成は、Ti濃度が高い第1塗膜2内で主に起こるので、この第2溶液中のPb濃度を第1溶液ように9mol%にまで高める必要はない。そのため、本実施形態では、第2溶液のPb濃度を第1溶液におけるのよりも低濃度の7mol%とする。
【0030】
そして、STO基板1を再びスピンコータ内に容れ、第1塗膜2上に上記の第2溶液を0.5cm3滴下し、回転数3000rpm、30秒間の条件により、第1塗膜2よりも厚い150〜500nm、例えば200nmの厚さの第2塗膜3を第1塗膜3上に形成する。
【0031】
その後に、大気中、基板温度150℃の条件下で第2塗膜3を加熱することにより、第2塗膜3中の溶媒成分を蒸発させ、第2塗膜3を乾燥させる。
【0032】
続いて、不図示のホットプレート上にSTO基板1を載せ、大気中でSTO基板1を350℃に約10分間加熱することにより、各塗膜2、3の熱分解処理を行う。この熱分解処理は、各塗膜2、3中の有機物を飛ばし、無機物よりなる骨格を各塗膜2、3内に形成するために行われる。
【0033】
次いで、図1(c)に示すように、上述の工程を更に4回繰り返すことにより、各塗膜2、3の積層体の厚さを約1μm程度まで稼ぐ。
【0034】
その後に、酸素含有雰囲気、好ましくは酸素100%の雰囲気中において、昇温速度100℃/秒、基板温度700℃の条件で約2分間各塗膜2、3を一括してRTA(Rapid Thermal Annealing)することにより、各塗膜2、3を同時に結晶化してエピタキシャルなPZT膜にし、そのPZT膜を強誘電体膜4とする。このような熱処理は、結晶化アニールとも呼ばれる。
【0035】
なお、上記した強誘電体膜4の成膜方法をフローチャートに示すと図2のようになる。
【0036】
そして、上記により得られた強誘電体膜4は、例えば、圧電アクチュエータ、光デバイス、MEMS等に適用される。
【0037】
上記した実施形態によれば、粘性の低い第1溶液によって形成される第1塗膜2と、第1溶液よりも粘性の高い第2溶液によって形成される第2塗膜3とを交互に複数積層して強誘電体膜4とする。低粘度の第1溶液で形成される第1塗膜2の表面は濡れ性が良いので、その上に第2塗膜3を形成しても、各塗膜2、3の間に界面層のような不連続面が生成されない。
【0038】
更に、第2塗膜3を形成するための第2溶液として第1溶液よりも粘性の高い溶液を使用するので、第2塗膜3の塗りの厚さを厚くすることができ、第1塗膜2だけで強誘電体膜4を構成する場合と比較して、強誘電体膜4を所定の厚さまで厚くするのに必要な塗布工程の回数を減らすことができる。
【0039】
しかも、第1塗膜2におけるTi濃度を第2塗膜3よりも高くすることにより、第2塗膜3の結晶核となるPbTiO3に必要なTiが第1塗膜2から第2塗膜3に供給されるようになるので、強誘電体膜4の膜厚の主体となる第2塗膜3においてTi濃度が膜厚方向に変動するのが防止されると共に、結晶化後の第1塗膜2のTi濃度が低下して第2塗膜3のTi濃度に近づき、膜厚方向の組成変動が全体として抑えられた高品位な強誘電体膜4を得ることができる。
【0040】
図3は、上記した第1塗膜2と第2塗膜3とをそれぞれ3回交互に形成して強誘電体膜4を形成した場合において、強誘電体膜4の膜の深さ方向における組成をSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)により調査して得られたグラフである。このグラフの横軸は、強誘電体膜4に対するスパッタリング時間を示し、縦軸は、二次イオンの強度(任意単位)を示す。
【0041】
なお、同図における比較例とは、第1塗膜2を省き、3層の第2塗膜3のみで厚さ約1μmの強誘電体膜4を構成した場合の組成変化を示す。
【0042】
図2に示すように、比較例においては、Ti組成もZr組成も共に膜厚方向へ周期的に大きく変動している。これに対し、本実施形態では、その組成変動が小さく抑えられ、第1塗膜2を挿入した効果が見られる。
【0043】
また、図4は、図2の比較例と本実施形態のそれぞれの強誘電体膜4の結晶構造をXRD(X-Ray Diffraction)によって調査して得られたグラフである。このグラフの横軸のΦ/°は面内方向の回転角を示し、縦軸は、回折X線の強度(任意単位)を示す。
【0044】
図4に示される結果より、本実施形態ならびに比較例で得られたPZT強誘電体膜は、(202)面に着目してφスキャンを行うと、90°毎に4回対称でピークが現れることから、"cube-on-cube"でc軸に配向したエピタキシャル膜であることが理解される。
【0045】
しかし、それぞれのピークに着目すると、本実施形態におけるピークの半値幅は比較例の約1/2となっており、更に、本実施形態のピーク強度は比較例の約2倍となっている。このことから、本実施形態の強誘電体膜4の結晶の質が比較例よりも向上していることが理解される。
【0046】
なお、図示は省略するが、その比較例と本実施形態のそれぞれの強誘電体膜4に対してTEM(Transmission Electron Microscope)による断面観察をしたところ、比較例では、界面層に相当するコントラストの異なる相が第2塗膜3の界面に見出された。これに対し、本実施形態では、そのような異相が見られず、均一な強誘電体膜4となっていた。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0048】
図5は、本実施形態に係る成膜方法を工程順に示す断面図である。
【0049】
既述の第1実施形態では、図2のフローチャートに示したように、第1、第2塗膜2、3を所要回数積層してなる積層体を形成した後に、その積層体を構成する各塗膜2、3を一括して結晶化アニールした。これに対し、本実施形態では、一組の第1、第2塗膜2、3を1ユニットとし、このユニット毎に結晶化アニールを施す。これ以外は第1実施形態と同様である。
【0050】
まず、図1(a)で説明したのと同じ工程を行うことにより、図5(a)に示すように、STO基板1上に第1塗膜2を厚さ約10nmに形成し、その第1塗膜2を乾燥させ、第1塗膜2中の溶媒成分を蒸発させる。
【0051】
次に、図1(b)で説明したのと同様の工程を行うことにより、図5(b)に示すように、第1塗膜2上に第2塗膜3を厚さ約200nmに形成し、この第2塗膜3を乾燥させ、第2塗膜3中の溶媒成分を蒸発させる。
【0052】
第1実施形態では、この後に、この第2塗膜3の上に新たな第1塗膜2を形成する工程に移ったが、本実施形態では、この状態における第1、第2塗膜2、3を1ユニットとし、このユニットに対して結晶化アニールを施す。その結晶化アニールとして、例えば、酸素100%の雰囲気中、昇温速度100℃/秒、基板温度700℃のRTAを採用する。この結晶化アニールにより、第1塗膜2と第2塗膜3とが結晶化してエピタキシャルなPZT膜となる。
【0053】
この後は、第1、第2塗膜2、3よりなる1ユニットを更に4ユニット積層することにより、図5(c)に示すように、各塗膜2、3で構成される強誘電体膜4を形成する。このとき、各塗膜2、3は既に結晶化してあるので、この強誘電体膜4に対して結晶化アニールを行う必要は無い。
【0054】
上記のような強誘電体膜4の成膜方法をフローチャートに示すと図6のようになる。
【0055】
以上説明した本実施形態によれば、一組の第1塗膜2と第2塗膜3により構成されるユニットに対して個別に結晶化アニールを施し、膜の結晶化をそのユニット毎に終端させるので、全ての塗膜2、3を積層して厚さを稼いだ後に結晶化アニールを行う第1実施形態と比較して、結晶化アニールの対象となる膜厚が薄くなり、第1実施形態よりも各塗膜2、3が緻密に結晶化されると期待できる。
【0056】
(第3実施形態)
本実施形態では、図7に示されるような光偏向素子に対し、第1実施形態で形成される強誘電体膜を適用する。
【0057】
この光偏向素子を作製するには、まず、STOよりなる下部電極基板10上にPLZT用の塗布液をスピンコート法により回転数3000rpm、塗布時間30秒で塗布し、その後塗布溶液中の溶媒成分を基板温度140℃で5分間蒸発させる。次いで、得られた塗布膜を基板温度320℃で5分間熱分解し、その後、650℃、5分間の条件で結晶化アニールを行う。このような一連の工程を所要回数繰り返して膜厚を稼ぐことにより、厚さが1800nmのPLZT((Pb0.91La0.09)(Zr0.65Ti0.35)O3)膜を形成し、それを下部クラッド層11とずる。
【0058】
この後に、既述の第1実施形態で説明した成膜方法を用いる工程に移る。
【0059】
まず、既述したような粘性が低く且つTi濃度の高い第1溶液をスピンコート法により回転数3000rpm、塗布時間30秒で下部クラッド層11の上に塗布して厚さが約10nmの第1塗膜を形成し、その後、第1塗膜中の溶媒成分を基板温度150℃で5分間蒸発させる。次いで、粘性とTi濃度が共に第1溶液よりも高い第2溶液を回転数3000rpm、塗布時間30秒の条件で第1塗膜の上にスピンコートすることにより、厚さが約200nmの第2塗膜を第1塗膜上に形成する。そして、これら第1塗膜と第2塗膜とをそれぞれ6層積層することにより、各塗膜の積層体の厚さを約1200nmにし、その後、この積層体を昇温速度100℃/秒、基板温度700℃の条件で約2分間RTAしてPZTに結晶化させ、結晶化後の積層体をコア層12として使用する。
【0060】
この後に、下部クラッド層11と同様の方法を用いて、コア層12上にPLZTを厚180nmに形成し、それを上部クラッド層13上に形成する。ここまでの工程により、下部クラッド層11、コア層12、上部クラッド層13により構成される光導波路層15が下部電極基板10上に形成されたことになる。
【0061】
次に、上部クラッド層13上にスパッタ法によりPt膜を成膜温度約600℃で厚さ約200nmにエピタキシャル成長させ、上部電極形状にパターニングされたレジストパターン(不図示)をそのPt膜上に形成する。そして、このレジストパターンをマスクとして使用しながらイオンミリングによりPt膜をパターニングし、これにより残ったPt膜をくさび型の上部電極14とする。
【0062】
以上により、本実施形態に係る光偏向素子の主要部分が完成する。
【0063】
この光偏向素子は、下部電極基板10と上部電極14との間に印加される電圧の値に応じ、コア層12内を通る光信号の向きを所望の角度に偏向させる機能を有する。
【0064】
本実施形態によれば、光信号が通るコア層12に既述の第1実施形態を適用したので、膜厚方向の組成変動が抑えられた高品位なコア層12が得られ、コア層12内の組成変動によって光信号が劣化するのを防ぐことができる。なお、上記では第1実施形態の方法でコア層12を成膜したが、第2実施形態の方法でコア層12を形成してもよい。
【0065】
このような光偏向素子は、例えば図8の上面図に示されるような光スイッチモジュールにも適用し得る。
【0066】
4チャネルの光信号のそれぞれは、この光スイッチモジュールの入力チャネル導波路16a〜16dの終端から広がり出た後、第1二次元レンズ17で一旦コリメートされる。その後、光信号は、各チャンネル毎に既述の光偏向素子を並べてなる第1偏向部21に導かれ、この第1偏向部21において個別に偏向される。第1偏向部21で偏向された光信号は、スラブ導波路を通り、その後第2偏向部22に入力される。この第2偏向部22は、第1偏向部21と同様に既述の光偏向素子を並べてなり、入力された光信号を個別に偏向する機能を有する。そして、第2偏向部21で偏向された光信号は、第2二次元レンズ19により集光された後、出力チャネル導波路20a〜20dの終端から射出し、不図示の光ファイバー等へと導かれる。
【0067】
この光スイッチモジュールでは、第1、第2実施形態で説明した成膜方法を用いて第1、第2偏向部21、22のコア層を形成するので、コア層を通る光信号の劣化を抑えることが可能となる。
【0068】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0069】
例えば、上記では、PZT等の強誘電体膜を成膜する方法について説明したが、少なくとも3種類の元素により構成される誘電体膜も上記の方法で成膜することができる。
【0070】
以下に、本発明の特徴を付記する。
【0071】
(付記1) 第1溶液の塗布によって形成される第1塗膜と、前記第1溶液と同じ種類の溶質成分を有し且つ前記第1溶液よりも粘性の高い第2溶液の塗布によって形成される第2塗膜とを塗布溶液法によって交互に複数積層することにより、所定の厚さの誘電体膜を基板上にエピタキシャルに形成することを特徴とする成膜方法。
【0072】
(付記2) 前記第1塗膜を前記第2塗膜よりも薄く形成することを特徴とする付記1に記載の成膜方法。
【0073】
(付記3) 前記第1塗膜を1nm以上10nm以下の厚さに形成し、第2塗膜を150nm以上500nm以下の厚さに形成することを特徴とする付記2に記載の成膜方法。
【0074】
(付記4) 前記第1溶液及び前記第2溶液としてPZT成膜用の溶液を使用し、前記第1溶液のチタン濃度を前記第2溶液のチタン濃度よりも高くすることを特徴とする付記1乃至付記3のいずれかに記載の成膜方法。
【0075】
(付記5) 前記第1溶液の鉛濃度を前記第2溶液の鉛濃度よりも高くすることを特徴とする付記4に記載の成膜方法。
【0076】
(付記6) 前記第1塗膜と前記第2塗膜とを1ユニットとし、前記ユニット毎に個別に結晶化アニールを行うことにより、前記第1塗膜と前記第2塗膜とを結晶化することを特徴とする付記1乃至付記5のいずれかに記載の成膜方法。
【0077】
(付記7) 前記積層が終了した後に、積層された全ての前記第1塗膜と前記第2塗膜とを一括してアニールすることにより、前記全ての第1塗膜と前記第2塗膜とを同時に結晶化することを特徴とする付記1乃至付記5のいずれかに記載の成膜方法。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、低粘度の第1溶液で形成される第1塗膜と高粘度の第2溶液で形成される第2塗膜とを交互に積層するので、各塗膜の間に不連続面が生成されない。
【0079】
しかも、第2溶液の粘度が高いので、第2塗膜の塗りの厚さが厚くなり、誘電体膜を所定の厚さまで厚くするのに必要な塗布工程の回数を減らすことができる。
【0080】
また、誘電体膜としてPZT膜を成膜する場合は、第1溶液におけるチタン濃度を第2溶液よりも高くすることにより、PZT膜の膜厚の主体となる第2塗膜においてチタン濃度が膜厚方向に変動するのが防止されると共に、結晶化後の第1塗膜のチタン濃度が低下して第2塗膜のチタン濃度に近づき、膜厚方向の組成変動が抑えられた高品位なPZT膜を得ることができる。
【0081】
そして、第2溶液における鉛濃度を第1溶液における鉛濃度よりも低くすることにより、予定していた以上の鉛を含むPZT膜が得られてしまうのを防ぐことができる。
【0082】
更に、第1塗膜と第2塗膜とを1ユニットとしてそのユニット毎に個別に結晶化アニールを行うことにより、全ての塗膜を一括アニールして結晶化する場合よりも、各塗膜が緻密に結晶化すると期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1(a)〜(c)は、本発明の第1の実施の形態に係る成膜方法を工程順に示す断面図である。
【図2】 図2は、本発明の第1の実施の形態に係る成膜方法のフローチャートである。
【図3】 図3は、本発明第1の実施の形態に係る成膜方法で成膜された強誘電体膜と、比較例に係る強誘電体膜とのそれぞれの膜の深さ方向における組成をSIMSにより調査して得られたグラフである。
【図4】 図4は、本発明第1の実施の形態に係る成膜方法で成膜された強誘電体膜と、比較例に係る強誘電体膜とのそれぞれの結晶構造をXRDにより調査して得られたグラフである。
【図5】 図5(a)〜(c)は、本発明の第2の実施の形態に係る成膜方法を工程順に示す断面図である。
【図6】 図6は、本発明の第2の実施の形態に係る成膜方法のフローチャートである。
【図7】 図7は、本発明の第3の実施の形態に係る光偏向素子の斜視図である。
【図8】 図8は、本発明の第3の実施の形態に係る光スイッチモジュールの上面図である。
【符号の説明】
1…STO基板、2…第1塗膜、3…第2塗膜、4…強誘電体膜、10…下部電極基板、11…下部クラッド層、12…コア層、13…上部クラッド層、14…上部電極、15…光導波路層、16a〜16d…入力チャネル導波路、17…第1二次元レンズ、18…スラブ導波路、19…第2二次元レンズ、20a〜20d…出力光導波路、21…第1偏向部、22…第2偏向部。

Claims (4)

  1. 第1溶液の塗布によって形成される第1塗膜と、前記第1溶液と同じ種類の溶質成分を有し且つ前記第1溶液よりも粘性の高い第2溶液の塗布によって形成される第2塗膜とを塗布溶液法によって交互に複数積層することにより、所定の厚さの誘電体膜を基板上にエピタキシャルに形成する成膜方法であって、
    前記第1溶液及び前記第2溶液としてPZT成膜用の溶液を使用し、前記第1溶液のチタン濃度を前記第2溶液のチタン濃度よりも高くすることを特徴とする成膜方法
  2. 前記第1塗膜を前記第2塗膜よりも薄く形成することを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
  3. 前記第1溶液の鉛濃度を前記第2溶液の鉛濃度よりも高くすることを特徴とする請求項に記載の成膜方法。
  4. 前記第1塗膜と前記第2塗膜とを1ユニットとし、前記ユニット毎に個別に結晶化アニールを行うことにより、前記第1塗膜と前記第2塗膜とを結晶化することを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の成膜方法。
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