JP4280825B2 - 屈折率分布領域を有するガラス材料の製造方法 - Google Patents

屈折率分布領域を有するガラス材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、微小光学素子、光学機器用の基板等として有用な屈折率分布領域を有するガラス材料の製造方法に関する。
従来、屈折率分布を利用した光学素子(レンズ素子)の形成方法としては、例えば、
(1)ガラス基材に、基材とは屈折率の異なる微小な半凸レンズ又は球状レンズを接着又は埋設する方法、
(2)ガラス基材に、特定のイオンを拡散させて基材中に屈折率分布を形成する方法、
(3)光誘起吸収によって、ガラス基材に屈折率分布を形成する方法、
(4)CVD、蒸着等の気相法又はゾルゲル法等の液相法により、ガラス基材上に基材とは屈折率の異なる膜を成膜する方法、などが知られている。
しかしながら、これらの方法には、例えば、
(a)化学的成分又は電子状態の異なる誘起欠陥構造をガラス基材中に分布させて屈折率分布を形成する場合には、ガラスの化学組成の変化等が生じるため、所望の部位において均一な光透過特性・波長分散性を有するレンズ素子が得られ難い、
(b)光照射(光誘起吸収)では、ガラスの光学的性質が劣化し易い、
(c)半凸レンズ又は球状レンズをガラス基材に接着又は埋設する場合には、両者の接合部での耐久性が不十分である、
(d)使用環境下でのレンズ素子の耐久性が低い、などの問題点がある。
これらの問題点に鑑み、本発明者らは、ガラス基材の表面に同一化学組成を維持しつつ、部分的にガラスの密度変化に基づく屈折率分布領域を形成する手法として、加熱により密度変化が生じるガラス基材の表面に対して、波長が5μm以上のレーザー光を照射して密度変化を生じない温度までガラス基材表面を部分的に加熱後、一旦冷却し、次いで加熱部分を前回よりも高い温度で加熱するという操作を繰り返し行うことにより、当該部分を密度変化が生じる温度以上まで加熱する、という技術を開発した。この手法では、波長が5μm以上のレーザー光として、例えば、炭酸ガスレーザー光が用いられている。
この手法によれば、ガラス基材表面の加熱部分に密度変化が生じて、基材表面に同一化学組成を維持したまま屈折率分布領域を形成できる。また、レーザー光の照射サイズ、照射エネルギー等を調節することにより、加熱部分(屈折率分布領域)の形状、屈折率の程度等を所望範囲に制御することもできる。そして、この手法により得られた光学素子は、例えば、マイクロレンズ、マイクロレンズアレイ等のレンズ素子をはじめ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の基板として用いられる微小光学素子として好適に利用することができる(特許文献1,2、未公開特許出願1、及び非特許文献1)。
このように、本発明者らが開発した上記手法は、ガラス基材表面に同一化学組成を維持したまま、微小領域に精密に素子形成を行うことができる点で大きな利点がある。
しかしながら、この手法では、ガラス自身がレーザー光を吸収するため、加熱により屈折率分布領域が形成できるのはガラス表面近傍のみであり、ガラス基材内部に屈折率分布領域を形成することは困難である。また、炭酸ガスレーザー光では、波長に依存した光学的な制限により加工サイズに限界があり、屈折率分布領域の微細化の要求に満足に応えることができない。
特開2002−255879号公報 特開2003−207605号公報
未公開特許出願1
特願2003−297973
N. Kitamura, K. Fukumi, J. Nishii, T. Kinoshita, N. Ohno, Jpn. J. Appl. Phys. 42(2003) L712-L714.
本発明は、ガラス基材表面のみならず、ガラス基材内部にまで、ガラスの同一化学組成を維持したまま微細な屈折率分布領域を形成できる、屈折率分布領域を有するガラス材料の製造方法を提供することを主な目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、OH基を100ppm(重量)以上含有するガラス基材に対して、OH基の振動熱励起が可能な波長が2.1〜3.1μmのレーザー光を照射し、OH基の振動熱励起を利用してガラス基材を加熱する方法によれば、ガラス基材表面だけでなく、ガラス基材内部にまで屈折率分布領域を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の屈折率分布領域を有するガラス材料の製造方法に係る。
1.OH基を100ppm(重量)以上含有するガラス基材に、波長が2.1〜3.1μmのレーザー光を照射してガラス基材に屈折率分布領域を形成することを特徴とする、屈折率分布領域を有するガラス材料の製造方法。
2.ガラス基材を高密度化した後、ガラス基材にレーザー光を照射する上記項1記載の製造方法。
3.ガラス基材を高密度化してOH基の吸収中心波長をレーザー光の波長に近似させた後、ガラス基材にレーザー光を照射する上記項1記載の製造方法。
4.上記項1〜3のいずれかに記載の製造方法により製造された、屈折率分布領域を有するガラス材料。
5.屈折率分布領域が、屈折率が連続的に変化する領域である上記項4記載のガラス材料。
6.レンズ又はレンズアレイである上記項4又は5に記載のガラス材料。

以下、本発明の屈折率分布領域を有するガラス材料の製造方法について説明する。
本発明の屈折率分布領域を有するガラス材料の製造方法は、OH基を100ppm(重量)以上含有するガラス基材に対して、波長が2.1〜3.1μmのレーザー光を照射することにより、ガラス基材の所望部位に屈折率分布領域を形成する方法である。
この製造方法によれば、波長が2.1〜3.1μmのレーザー光が、ガラス基材中のOH基を振動熱励起させるため、当該レーザー光をガラス基材に対して照射した際に、照射部位(レーザー光のエネルギーが届く部位)に存在するOH基が振動熱励起する。そして、OH基の振動熱励起により、励起部位及びその近傍のガラス基材が加熱されてガラスの密度変化が生じ、それにより屈折率分布領域が形成される。従って、この製造方法によれば、基材表面のみならず、レーザー光のエネルギーが届く範囲内において基材内部にも屈折率分布領域を形成できる。
本発明の製造方法で用いるガラス基材としては、OH基を100ppm(重量)以上含有するガラスからなる基材であれば特に限定されない。
ガラス中には、一般にガラスの網目構造の一部として、≡Si−OH、≡P−OH、=B−OH、=Al−OH等の状態でOH基が含まれている。これは、ガラスの製造過程において、特別な脱水処理を施さない限り、製造当初のガラス中には多少の水分が含まれているため、水分がガラスの網目構造を構成する元素(Si、P、B、Al等)と反応して、前記≡Si−OH、≡P−OH、=B−OH、=Al−OH等の状態に変わるからである。また、上記元素と反応しなかった水分の一部は、若干であるがH−OHの状態でガラス中に含まれる場合がある。以上より、ガラス製造過程において、ガラス原料に含まれる水分除去、ガラス溶融時の脱水等が十分に行われていない場合には、製造当初のガラス中には多くの水分が含まれるため、その結果、多くのOH基が≡Si−OH、≡P−OH、=B−OH、=Al−OH等の状態でガラス中に含まれることとなる。なお、ガラス中のOH基としては、前記5種類を考慮することができるが、一般に≡Si−OHの含有量が最も多く、反対にH−OHの含有量は無視できる程度である。
具体的には、四塩化ケイ素を酸水素炎中で直接溶融して製造される直接法合成シリカガラスには、通常1000ppm(重量)を超えるOH基(特に≡Si−OH)が含まれている。図1は直接法合成シリカガラスの赤外透過スペクトルの一例であるが、このスペクトルでは、波長2.1〜3.1μmの範囲内にOH基の熱振動励起に起因する吸収帯が明確に現れており、OH基が含まれていることが分かる。
また、溶融法で製造されるリン酸塩ガラスでも、原料に含まれる水和水等の水分が融液に残存することに起因して、1000ppm(重量)を越えるOH基(特に≡P−OH)がガラス中に含まれる場合がある。
さらに、ケイ酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス等でも、製造時に残存した水分に起因して、100ppm(重量)を越えるOH基(特に≡Si−OH、=B−OH等)がガラス中に含まれる場合がある。
本発明の製造方法に用いるガラス基材としては、ガラス内部にOH基を100ppm(重量)以上含有しているものであれば、上記いずれの製造法により合成されたガラスからなる基材でもよい。OH基の含有量は、100ppm(重量)以上であれば特に限定されないが、波長2.1〜3.1μmのレーザー光のエネルギーを吸収する効率がガラス中のOH基の含有量に比例して増大することを考慮すると、より効率的な屈折率分布領域の形成のためには、OH基の含有量は500ppm(重量)以上が好ましく、1000ppm(重量)以上がより好ましい。
OH基の含有量の上限は特に限定的ではないが、20000ppm(重量)程度である。20000ppm(重量)を超える場合には、ガラス自体の化学的・熱的な耐久性、安定性等が低下するおそれがある上、レーザー照射時にガラス中に結晶が生じてガラス状態を維持し難くなるおそれがある。従って、20000ppm(重量)程度を上限とすることが好ましい。OH基の含有量の調整方法は特に限定されないが、通常は各ガラス製造時における脱水、乾燥等の条件を調整すればよい。
OH基の含有量は、例えば、ガラスを熱分解後、生じたH2Oの量を測定する化学分析
により算出できる。具体的には、熱分解により生じたH2Oの2倍のモル量が、熱処理前
のガラス中に含まれる≡Si−OH、≡P−OH、=B−OH、=Al−OH等の総量とみなすことができる。これは、熱分解により≡Si−OH、≡P−OH、=B−OH、=Al−OH等のうちの2分子から、1分子のH2Oが生じるからである。なお、製造初期
のガラスでない限り、ガラス中の水分量(H2O量)は無視できる程度に低く、またH−
OHの量は他のOH基の量と比べて非常に少ないため無視することができる。
また、シリカガラスのように、≡Si−OHが殆どであり、他のOH基の存在が無視できるような場合には、上記化学分析を行わなくても、下記手法によりガラス中のOH基が全て≡Si−OHであるとみなしてOH基含有量を概算することができる。具体的には、赤外吸収中心波長における≡Si−OHの単位含有量当たりの吸光係数αOH(ガラス1L中に1molの≡Si−OH基が存在する場合の吸光係数)が77.5L/(mol・cm)と公知であるため、この吸光係数の値とガラスの赤外透過スペクトル解析結果とからOH基(≡Si−OH基)含有量を概算することができる。以下、その手順を、図5を用いて具体的に説明する。
図5は、実施例2で用いる直接法合成シリカガラス(厚みt:0.15cm)の赤外透過スペクトルに、2.7μm帯にあるOH基の吸収中心波長を示す縦線を追加したものである。図5からは、該シリカガラスの吸収中心波長における透過率T1が1.5%である
ことが分かる。また、該シリカガラスにOH基が含まれていない場合の透過率は、該スペクトルからOH基の吸収帯を消失させることにより考慮でき、該吸収中心波長と同じ波長における透過率T2は91%であることが分かる。
そうすると、該シリカガラスに含まれる未知量のOH基に依存する吸光係数αは、下記式にT1、T2及びtを代入することにより、11.89cm-1と導かれる。
α=〔−log(T1/T2)〕/t
得られた吸光係数αの値を、前記吸光係数αOH:77.5L/(mol・cm)で割ると、該シリカガラス1L中に含まれるOH基のモル量が算出でき、その値は0.153mol/Lとなる。OH基の分子量は17であるため、0.153mol/Lは2.601g/Lに換算される。さらに、該シリカガラスの密度が2.2g/cc(2200g/L)であることを考慮すると、該シリカガラスのOH基含有量は1182.3ppm(重量)であり、これを近似すると1200ppm(重量)となる。
このようなOH基の含有量の算出方法は、例えば、下記非特許文献に記載されている。G. Hetherington and K. H. Jack, Phys. Chem. Glasses 3(1962) 129.
このような、OH基を100ppm(重量)以上含むガラス基材の中でも、シリカガラス基材、リン酸塩ガラス基材、ケイ酸塩ガラス基材、ホウ酸塩ガラス基材、ホウケイ酸塩ガラス基材、石英ガラス基材等が好ましく、化学的耐久性の観点から、特にケイ酸塩ガラス基材、ホウケイ酸塩ガラス基材等が好ましい。なお、ガラスに含まれ得るアルカリ金属元素にはRb、Cs等が含まれるが、これらの元素はガラスの耐水性を低下させるため、含有量を極力低減することが好ましい。
さらに、上記したガラス基材の中でも、屈折率温度係数(dn/dT)が正値を持つガラス基材の場合には、レーザー照射による温度上昇によりガラス内部でレーザー光が集光するため、照射部分のエネルギー密度を効率的に高められるため好ましい。例えば、シリカガラス及びホウ酸塩ガラスの場合には、dn/dT>0である。ケイ酸塩ガラスの場合には、線膨張係数が約100×10-7/℃以下であれば概ねdn/dT>0である。ホウケイ酸塩ガラスの場合には、線膨張係数が約80×10-7/℃以下であれば概ねdn/dT>0である。
ガラス基材の形状は特に限定されず、最終製品の用途に応じて適宜設定できる。例えば、レンズ、レンズアレイ等をはじめ、ディスプレイ用基板などに適した形状が広く採用でき、具体的には、板状、円柱状、角柱状等が挙げられる。例えば、前記した組成のガラス塊を研磨することにより所望形状の基材としたものを使用してもよいし、前記した組成のガラス溶融体を所望形状の基材となるように形成後、必要に応じて研磨したものを使用することもできる。
本発明の製造方法では、このようなOH基を100ppm(重量)以上含むガラス基材を用いて、これに波長が2.1〜3.1μmのレーザー光を照射する。
レーザー光としては、ガラス基材に含まれるOH基を振動熱励起させることのできる、波長が2.1〜3.1μmのものであれば特に限定されない。レーザー光の波長の好適な範囲は、ガラス組成によりOH基の吸収中心波長が変動するため一般化はできないが、ガラス基材の吸光係数αが1以上(厚さ1mmのガラス基材が約10%のレーザー光を吸収する)となる波長が好ましく、吸光係数αが6以上(厚さ1mmのガラス基材が約50%のレーザー光を吸収する)となる波長がより好ましい。このような波長は、例えば、シリカガラス基材の場合には、2.17〜3.05μmであり、2.66〜2.83μmがより好ましい。
このようなレーザー光をガラス基材に照射することにより、照射部位(レーザー光のエネルギーが届く部位)に存在するOH基が振動熱励起し、励起部位及びその近傍のガラス基材が加熱されて密度変化が生じる。これにより、目的とする屈折率分布領域が形成される。また、上記波長のレーザー光であれば、ガラス自体に殆ど吸収されず、エネルギーが届く範囲において基材内部に存在するOH基も振動熱励起させることができる。
レーザー光としては、具体的に、
Er:YSGGレーザー光(波長:2.79μm)、
Er:Cr:YSGGレーザー光(波長:2.79μm)、
Cr:Tm:Er:YAGレーザー光(波長:2.69μm)
Er:YAGレーザー光(波長:2.1μm)
Ho:YAGレーザー光(波長:2.1μm)
等が使用できる。
これらの中でも、特に前段3種のものは、波長がOH基の吸収中心波長に近いため、OH基の吸収効率(即ち、振動励起効率)が高いため好ましい。例えば、シリカガラス中のOH基の吸収中心波長は2.74μmであり、Li2O(33.3モル%)とSiO2(66.7モル%)とからなるケイ酸塩ガラス中のOH基の吸収中心波長は2.9μmであり、Na2O(25モル%)とSiO2(75モル%)とからなるケイ酸塩ガラス中のOH基の吸収中心波長は2.8μmであり、CaO(50モル%)とP25(50モル%)とからなるリン酸塩ガラス中のOH基の吸収中心波長は約2.6μmであることが分かっている。また、後段2種のものについては、前段3種のものと比較するとOH基の吸収効率は低いが、例えば、後記の通り、レンズによりレーザー光を集光することにより、屈折率分布領域の形成効率を高めることができるため、本発明の製造方法において使用可能なものである。
このようなレーザー光の照射方法は特に限定されず、所望の屈折率分布領域の形状、大きさ等に応じて適宜設定できる。例えば、レーザー光を走査してガラス基材の所望部位に屈折率分布領域を形成する方法、基材表面に予め所定のパターンが形成されたマスクを配置して、基材露出部分にレーザー光を照射してガラス基材の所望部位に屈折率分布領域を形成する方法等が挙げられる。
また、レーザー光を照射する際は、必要に応じて、集光レンズ、集光ミラー等を用いてレーザー光を集光し、照射部位のエネルギー密度を高めてもよい。これにより、照射部位のOH基の振動熱励起効率を高めることができる。例えば、集光レンズを用いてレーザー光を集光し、レーザー光の直径が最短になった部分(ビームウエスト)をガラス基材に照射すれば、照射部位のエネルギー密度を効率的に高めることができる。集光レンズは特に
限定されないが、例えば、CaF2レンズが使用できる。
さらに、パルスレーザー光を用いる場合には、パルス数及びパルスエネルギー(1パルス当りのエネルギー)を増大させたり、パルス幅を減少させたり(ピーク強度を増加)することにより、熱効果(励起効率)を上昇させることができる。
パルスレーザー光を用いる場合のパルス条件は特に限定的ではないが、パルスエネルギーとしては、50〜90mJ/パルスが好ましい。但し、レーザー光のエネルギーが過大となると基材が破損し易くなるため、用いる基材とレーザー光の種類に応じて適宜調整すべきである。パルス幅としては特に限定的ではないが、パルスエネルギー(1パルス当たりのエネルギー)が同じであればパルス幅が短いほど、基材に加わるエネルギー量が大きくなるため、パルス幅を短くし過ぎると短時間に基材に大きなエネルギーが加わって熱衝撃により基材が破損するおそれがある。従って、パルス幅は用いる基材とレーザー光の種類に応じて適宜調整すればよいが、通常は8μsec〜10msecから調整すればよく、8〜1000μsecから調整すればより好ましい。
なお、これらのレーザー光の照射条件は、上記手法により適宜調整できるが、ガラス基材が過度に加熱された場合には、基材に亀裂、アブレーション等が生じる場合があるため、このようなガラスの破損が生じない範囲内でエネルギー密度、エネルギー量、パルス条件等を調整する必要がある。
本発明の製造方法では、予めガラス基材を高密度化してもよい。高密度化した場合には、加熱に対する屈折率変化の応答性が高まる(活性化エネルギーが下がる)ため、屈折率分布領域の形成効率が高まる。ガラス基材を高密度化する方法は特に限定されず、例えば、高温(好ましくはガラス転移温度Tgの0.6〜1.1倍程度)、高圧(0.2GPa以上が好ましく、特に1GPa)の条件下で1分〜2時間程度処理する方法が挙げられる。処理時間は、温度条件に応じて適宜設定すればよい。このような処理が行える装置としては、例えば、超高圧HIP等が挙げられる。
また、高密度化する際に、ガラス中のOH基の吸収中心波長をレーザー光の波長に近似させることができる場合にはより好ましい。この場合には、屈折率変化の応答性が高まるだけでなく、OH基によるレーザー光の吸収効率も高めることができる。
例えば、シリカガラス中のOH基は2.74μmに吸収の中心波長を有するが、これにEr:Cr:YSGGレーザー光(波長:2.79μm)を照射する場合の吸収効率(吸収係数α)は、該中心波長のレーザー光を照射する場合の吸収効率と比較して数分の一程度である。他方、このガラスを1GPaの高圧下、1200℃で2時間処理して高密度化した場合には、OH基の吸収中心波長を長波長側に移動させてレーザー光の波長に近似させることができる。これによりレーザー光の吸収効率をより高めることができる。また、高密度化による屈折率変化の応答性も高まるため、屈折率分布領域の形成効率が相乗的に高まる。
高密度化の程度は限定的ではないが、溶融した原料を大気圧下で徐冷することによって得られる同一組成の通常のガラスと比較して、1%以上、特に3%以上が好ましく、吸収係数が倍増する程度が最も好ましい。高密度化の上限は、例えば、吸収中心波長がレーザー波長を超えない限度で調整できるが、概ね20%程度である。シリカガラスの場合には、概ね上記の通りであるが、他のガラス、例えば、二酸化炭素が70%程度含まれるケイ酸塩ガラスでは、13〜14%程度が上限として好ましい。ガラスの種類にもよるが、吸光係数が10%以上増加すれば、高密度化の効果は確実に得られる。高密度化には、例えば、超高圧HIP処理等が利用できる。
本発明の製造方法では、屈折率分布領域を有するガラス材料の具体例として、レンズ、レンズアレイ、ディスプレイ基板用素子等を形成できる。勿論、これら以外にも、ガラス基板中に形成された屈折率分布領域を利用して所望の光学特性を発揮するものであれば、本発明の製造方法により作製可能である。
例えば、レンズを作製する場合には、ガラス基材として、一般に板状ガラス基材を用いればよい。レーザー光は一般に円形に照射すればよく、照射部位でのレーザー光の直径は、所望するレンズの大きさ等に応じて適宜調整できる。照射部位でのレーザー光の直径は、通常5〜1000μm、好ましくは5〜500μm程度である。このような照射部位におけるレーザー光の形状、直径等は、集光レンズを介して調整してもよく、また所定のパターンが形成されたマスクを配置することによって調整してもよい。レーザー光のエネルギー密度、エネルギー量、パルス条件等については、所望のレンズの大きさ、屈折率分布の程度に応じて適宜設定すればよい。
形成された屈折率分布領域は、レーザー光照射方向から見て垂直な断面を観察した場合に軸中心部分が最も屈折率が小さく、半径方向外側に向かって屈折率は連続的に上昇する。また、レーザー光の照射方向に観察した場合には、屈折率分布領域のレーザー光照射源側の屈折率が最も小さく、基材の深さ方向に進むにつれて屈折率が連続的に上昇する。
このようにして得られたレンズは凹レンズとして機能し、レンズのレーザー光照射側から物体を観察した際には、正立像が観察される。ガラス基材には、該レンズとして機能する屈折率分布領域を1つだけ形成してもよく、2つ以上形成してもよい。2つ以上形成する場合には、得られたガラス材料はレンズアレイとしても使用できる。
レンズアレイを作製する場合には、例えば、板状のガラス基材に対して、前記レンズの形成を多数行うか、又はレンズアレイのレンズ配置パターンをかたどったマスクをガラス基材上に配置し、マスクされていない基材露出部分にレーザー光を照射することによって作製できる。
このようにして得られたレンズアレイは、通常のレンズアレイ用途は勿論のこと、特にディスプレイ基板用素子として使用することもできる。該レンズは前記の通り凹レンズであるため、ディスプレイの表示デバイスに配列された発光素子の位置に対応するようにレンズアレイの個々のレンズを配置すれば、ディスプレイの視野角を広げることができる。
本発明の製造方法によれば、OH基を100ppm(重量)以上含有するガラス基材に、波長が2.1〜3.1μmのレーザー光を照射するという簡単な操作によって、ガラス基材の所望部位に屈折率分布領域を形成できる。この方法では、レーザー光のエネルギーが届く範囲内であれば、ガラス基材内部にも屈折率分布領域を形成できる。
当該レーザー光はガラス自体に殆ど吸収されないため、基材内部に存在するOH基も振動熱励起させることができ、基材表面のみならず、基材内部にまでも三次元的に屈折率分布領域を形成することができる。また、用いるレーザー光の波長が炭酸ガスレーザー光よりも短いため、炭酸ガスレーザー光を用いる場合よりも、さらに微細な屈折率分布領域を形成できる点で有利である。
しかも、本発明の製造方法では、ガラス基材の成分組成を変化させないため、均一な光透過特性・波長分散性を有するガラス材料(レンズ、レンズアレイ等)が得られる。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
実施例1
直接法により製造された合成石英ガラス(OH基含有量:約1200ppm(重量))を光学研磨して厚さ2mmの板状としたものをガラス基材とした。
Cr:Er:YSGGレーザー(波長:2.79μm)のパルス光(パルス幅:200μsec以下)を焦点距離40mmのCaF2レンズを用いて円形のビームに集光し、ビ
ームウエストの位置に基材表面を固定して、66mJ/パルスのビームを1パルス照射した。ビームウエストの位置でのビーム直径は約10μmであった。
照射により、図2に示す写真のようにガラス内部に屈折率分布領域が形成された。照射方向から見た屈折率分布領域の直径は60μmであり、深さ方向の長さは約250μmであった。
屈折率分布領域は、軸中心部分の屈折率が最も低下しており、外部(半径方向)に向かって屈折率が連続的に上昇する分布が形成された。
照射方向から物体の観察を行った結果、正立像が観察でき、屈折率分布領域が凹レンズとして機能していることを確認した。
実施例2
直接法により製造された合成シリカガラス(OH基含有量:約1200ppm(重量))を超高圧HIP処理して高密度化(密度2.279g/cm3)した。次いで、高密度
化した合成シリカガラスを光学研磨して厚さ1.5mmの板状としたものをガラス基材とした。
Cr:Er:YSGGレーザー(波長2.79μm)のパルス光(パルス幅200μm以下)を焦点距離40mmのCaF2レンズを用いて円形のビームに集光し、ビームウエ
ストの位置に基板表面を固定して、55mJ/パルスのビームを照射した。具体的には、ガラス基材表面の4箇所に、1、10、100及び1000パルスの4種類の照射を行った。ビームウエストの位置でのビーム直径は約10μmであった。
照射により、図3に示す写真のようにガラス内部に4箇所の屈折率分布領域が形成された。照射方向から見た屈折率分布領域の直径はいずれも約20μmであり、深さ方向の長さはいずれも約200μmであった。
屈折率分布領域は、軸中心部分の屈折率が最も低下しており、外部(半径方向)に向かって屈折率が連続的に上昇する分布が形成された。照射するパルスの多いほど、軸中心部の屈折率低下の程度が大きいことが確認された。
照射方向から物体の観察を行った結果、正立像が観察でき、屈折率分布領域が凹レンズとして機能していることを確認した。
実施例3
二酸化ケイ素(SiO2)73mol%、酸化アルミニウム(Al23)15mol%
及び酸化リチウム(Li2O)12mol%を主成分とするアルミノケイ酸塩系ガラス(
含有OH基量:150ppm(重量))を光学研磨して厚さ2mmの板状としたものをガ
ラス基材とした。
Cr:Er:YSGGレーザー(波長2.79μm)のパルス光(パルス幅200μm以下)を焦点距離40mmのCaF2レンズを用いて円形のビームに集光し、ビームウエ
ストの位置に基板表面を固定して、81mJ/パルスのビームを1パルス照射した。ビームウエストの位置でのビーム直径は約10μmであった。
照射により、図4に示す写真のようにガラス内部に屈折率分布領域が形成された。照射方向から見た屈折率分布領域の直径は40μmであり、深さ方向の長さは約150μmであった。
屈折率分布領域は、軸中心部分の屈折率が最も低下しており、外部(半径方向)に向かって屈折率が連続的に上昇する分布が形成された。
照射方向から物体の観察を行った結果、正立像が観察でき、屈折率分布領域が凹レンズとして機能していることを確認した。
直接法により合成されたシリカガラスの赤外透過スペクトルを示す図である。図1からは、2.1〜3.1μmの領域にOH基の熱振動励起に起因する吸収帯が観測される。 実施例1で形成された屈折率分布領域の顕微鏡写真を示す図である。(a)は屈折率分布領域をビーム照射方向から観察した基材表面の顕微鏡写真であり、(b)は屈折率分布領域を通過するように基材を深さ方向に切断し、断面方向から屈折率分布領域を観察した顕微鏡写真である。 実施例2で形成された屈折率分布領域の顕微鏡写真を示す図である。1〜1000パルスまでそれぞれ屈折率分布領域をビーム照射方向から観察した基材表面の顕微鏡写真である。 実施例3で形成された屈折率分布領域をビーム照射方向から観察した基材表面の顕微鏡写真である。 図1の赤外透過スペクトル図において、2.7μm帯にあるOH基の吸収中心波長を示す縦線を追加した図である。図中、1.5%は、赤外透過スペクトルを測定した直接法合成シリカガラスの吸収中心波長における透過率を示し、91%は、OH基が含まれていないと仮定(吸収帯がない)した直接法合成シリカガラスの同波長における透過率を示す。

Claims (3)

  1. OH基を100ppm(重量)以上含有するガラス基材に、波長が2.17〜3.1μmのレーザー光を照射してガラス基材に屈折率分布領域を形成することを特徴とする、屈折率分布領域を有するガラス材料の製造方法。
  2. ガラス基材を高密度化した後、ガラス基材にレーザー光を照射する請求項1記載の製造方法。
  3. ガラス基材を高密度化してOH基の吸収中心波長をレーザー光の波長に近似させた後、ガラス基材にレーザー光を照射する請求項1記載の製造方法。
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