JP4280414B2 - 無線信号を受信する方法と装置 - Google Patents
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Description
(発明の技術分野)
本発明は無線システムに関係し、特にアンテナビームの助けにより無線信号を受信する方法と装置に関係する。
【0002】
(関連技術の説明)
受信無線信号の品質は多くの自然現象により影響される。
【0003】
これらの現象の内の1つは時間分散であり、これは受信器に到達する前に伝播路中の異なる位置の障害物により反射される送信器からの経路上の信号により発生する。信号が走行する異なる伝播路のため、信号は異なる時間遅延で受信器に到達する。無線システムにディジタルコード化信号を導入すると、時間分散の信号は成功裏に復元可能である。時間分散信号を復元するためレーク(RAKE)受信器又はイコライザを使用することは当業者には公知である。
【0004】
高速フェーディング又はレーリー(Raleigh)・フェーディングと呼ばれる他の現象は、送信器又は受信器から近距離の物体により送信器から受信器への路上で散乱される信号により発生する。このように、互いに位相関係がわずかにシフトした異なる信号版が受信される。位相差が好ましくない区域スポットでは、受信した信号版の総和は非常に低くなり、零に近いこともある。これは、受信信号が実質的に消滅するフェーディング・ディップを発生する。フェーディング・ディップは波長と同じオーダーの距離で頻繁に発生する。900メガヘルツ無線帯域では2つのフェーディング・ディップ間の距離は15−20cmのオーダーである。移動中の送信器又は受信器の場合、高速フェーディングの結果としての2つの連続するフェーディング・ディップ間で経過する時間は、信号の搬送波周波数と受信器に対する送信器の速度の両方に依存する。
【0005】
フェーディングに対処する1つの公知の方法は、無線受信局にアンテナ・ダイバーシティシステムを設けることである。このシステムは互いに空間的に又は直交偏極方向に、またはその組合せにより分離された2個以上の受信アンテナを含む。結果として、各アンテナにより受信された信号のフェーディングの相関は減少し、従って両方のアンテナが同時にフェーディング・ディップに曝される可能性は減少する。アンテナ・ダイバーシティ装置により受信される両方の信号の無線受信を可能とするため、無線受信局は各受信アンテナに別々の受信器分岐を備える。
【0006】
無線送信に障害を与える第3の現象は干渉である。干渉信号は、所要信号と同じチャネルで受信される任意の不要信号として特徴付けられる。軍用無線システムでは、対処すべき最も重要な干渉はジャミング、すなわち敵による意図的な妨害である。セルラ無線システムでは、干渉問題は通信の容量需要と密接に関係している。無線スペクトルは不足しているリソースであり、セルラ事業者に与えられた無線周波数帯域は有効に使用されなければならない。このため、事業者サービス域はセルに分割され、あるセルで使用された無線チャネルは間に最小数のセルを有するセルで再使用される。移動電話の人気のため、トラヒック容量の需要は急速に増大している。容量需要を処理する1つの方法はセルの大きさを減少し、これにより区域単位当りのチャネルのより密な再使用を可能にし、従って周波数再使用因子を保持しつつ特定区域の通信容量を増加させることである。
【0007】
都市の中心や鉄道の駅のような容量需要が大きい区域では、基地局の場所を見出すことがしばしば困難となる。基地局の利用可能な場所は吊下げ可能な壁の形式を取る。このような性質の場所の場合、無線基地局が小さく電力を要しないことが重要である。電力は冷却を必要とし、冷却は空間を必要とするため、無線基地局の大きさは電力消費と関係する。例えば新たな無線基地局の場所を使用するため当局から認可を受ける場合に関しても、設備の外観も重要である。
【0008】
セルラ・システムの人気の増加のため、干渉に対処し、また大きなトラヒック容量を可能とする新たな方法を見出す必要がある。このため、セルラ・システムの無線基地局での適合アンテナの使用が多大な興味を呼んでいるが、商用システムでは今だ実装されていない。適合アンテナはビーム形成装置に接続されたアンテナアレイを一般に含む。適合アンテナは、各々が細い所定の空間区域をカバーし、広範囲の所定区域又はセクタ内を全方向的に一緒にカバーするアンテナ・ビームの組を形成する。移動送信器から送信された信号はアンテナ・ビームの各々により受信され、信号の各々の版が別々に受信されて角度情報が保持される。角度情報は信号の異なる版間の位相差に固有のものである。信号源の方向の推定は受信信号の復調版を基に行なわれる。この推定パラメータはDOA、到着方向(direction of arrival)と呼ばれる。
【0009】
DOAの推定を可能とするため、各ビームにより受信される信号は対応する無線受信器分岐により別々に受信されなければならない。
【0010】
DOA推定は1本以上のアンテナ・ビームの選択、又は問題の移動体へのダウンリンクの送信用の細い操舵可能なビームの方向付けに使用される。選択されたビームでの送信は移動局に方向付けられ、これにより他の方向で同じチャネルを使用する移動体は干渉に曝されなくなる。ダウンリンク干渉は従って適合アンテナ技術により対処される。
【0011】
フェーディング及び干渉の結果に対処する1つの方法は、無線チャネル周波数でその搬送波周波数を変化させることである。この方法は周波数ホッピングと呼ばれ、GSMシステムで使用されてある程度の成功を得ている。特許公開米国第08/768319号は周波数ホッピング・システムに関して、操作用に利用可能な周波数帯域幅より広いコヒーレンス帯域幅に属する問題に取り組んでいる。これは、周波数ホッピングに使用する搬送波周波数は相関するフェーディングを有することを意味している。従って、フェーディングに対処する周波数ホッピングの目的は達成不能である。米国第08/768319号で提示された解決法は、人工的な遅延拡散を導入することによりより小さなコヒーレンス帯域幅を発生することに関係している。人工遅延拡散を発生する1つの方法は、信号を2つのアンテナで受信し、アンテナの第1のものにより受信した信号を遅延させ、遅延信号を第2のアンテナからの信号と組合せることである。2つの組合せ信号が次いで1個の受信器へ送られる。
【0012】
米国特許明細書第5563610号は、非常に細くかつ分離した区域をカバーする異なるビームを基とするアンテナ・ダイバーシティを得るための複数ビーム形成アンテナの使用を示している。これは角度ダイバーシティと呼ばれ、相関していない別々のビームで受信した信号を生じる。この目的のため、米国第5563610号は、各アンテナ・ビームからの分岐が2つの群に分散される受信システムを教示している。一方の群では信号は他方に対して遅延され、次いで組合される。2つの群の対応するものから各々が得られる2つの組合せ信号はこのように得られ、次いで従来のCDMA受信器へ送られる。
【0013】
この受信器では角度情報は信号が組合された後は失われる。従ってDOA推定を行うこととビーム形成によりダウンリンク干渉に対処することは不可能である。
【0014】
(発明の要約)
本発明は、限定された数の無線受信器分岐を含む無線受信器で正確なDOA推定とアンテナ・ダイバーシティの両方を可能とすることを与えた時に生じる問題を取扱う。限定された数の無線受信器分岐は、DOA推定の正確度とアンテナ・ダイバーシティ受信の性能との間のトレードオフを生じる。全ての受信器分岐がDOA推定過程に使用された場合、フェーディングに対する保護の欠如がDOA推定の性能を低下させる。反対に、相関の小さい信号の別々な受信によりダイバーシティ利得を保持する場合、別々に受信可能なビームの数、従ってDOA推定の精度も減少する。
【0015】
その他の問題は、小さく、かつ低電力消費を有し、かつDOAを推定する手段と共にアンテナ・ダイバーシティを有する無線受信システムを含む無線基地局を作成することである。受信器分岐は空間を必要とし、かつ電力を消費することを思い出されたい。
【0016】
本発明の目的は、アンテナ・ダイバーシティによるものとDOAの正確な推定を可能とするアンテナ・ビームによる受信を共に可能とし、適度な数の受信器分岐のみを含む受信器でフェーディングに対処し、従って小型でかつ電力を要しない無線局を提供する目的を達成するものである。
【0017】
本発明の要点は、アンテナ・ダイバーシティによりかつ異なるアンテナ・ビームにより受信した信号の組に人工時間分散を導入することである。異なるアンテナ組立体により受信した信号の組は互いに遅延され、同じ空間をカバーするビームから得られる信号は組合される。第1アンテナ組立体のビームの各々に対して、同じ空間区域をカバーする他のアンテナ組立体の各々にビームがある。このようにして角度情報は保持される。各組み合わせ信号は次いで結合無線受信器で無線受信される。DOA推定は全てのビームから得られた受信信号を基に計算可能である。無線受信信号の自然及び人工時間分散の両方がイコライザ又はレーク受信器で復元可能である。信号の本発明による組合せにより、組合せ信号の各々からのエネルギは信号がイコライザまたはレーク受信器に到達するまで保持される。異なる時間分散信号からのエネルギはイコライザ又はレーク受信器で互いに併合される。組合せ信号の一方のエネルギが対応する受信アンテナでフェーディング・ディップのため一時的に低くなっている場合、他のアンテナにより受信した信号のエネルギがフェーディング・ディップを補償する。
【0018】
より詳しく言うと、本発明は、アンテナ・ダイバーシティを達成するため分離されている、すなわちアンテナ組立体は空間的に又は異なる偏極方向により分離される、少なくとも2個のアンテナ組立体により信号が受信される方法により上述の問題が解決される。アンテナ組立体の各々はアンテナ・ビームの組を発生する。アンテナ組立体はアンテナ・ビームの相互に対応する組を発生するよう構成される、すなわちビームは対応する角度カバレッジを有し、特定の区域は、アンテナ組立体の各々から1つづつの2つのビームによりカバーされる。対応するアンテナ・ビームで別々のアンテナ組立体により受信された信号は、互いに対して遅延された後に次いで相互に組合される。人工的な多重路伝播が従って組合せ信号に関連して作成される。次いで組合せ信号は無線周波数からより低周波への周波数変換と復調のために1無線受信器分岐へ送られ、ここで人工時間分散は例えばイコライザ又はレーク受信器のディジタル信号処理により復元可能である。DOA推定は別々のビームから信号が送られるいくつかの無線受信器分岐からの出力を基に計算可能である。
【0019】
本発明は又上述の問題を解決する無線受信器システムに関係する。無線受信器システムは、アンテナ・ダイバーシティを達成するため相互に分離している少なくとも2個のアンテナ組立体を含む。アンテナ組立体の各々はアンテナ・ビームの組を発生し、ここで各ビームは狭い空間区域をカバーし、ビームは互いに特定区域を全方位的に又はセクタ内をカバーする。ビームの異なる組は互いに対応し、1つの空間区域はアンテナ組立体の各々からのビームによりカバーされる。遅延要素がアンテナ組立体の1個を除く全てに接続される。遅延要素は対応するアンテナ組立体により受信した信号を遅延する。遅延は各アンテナ組立体に別々の値を与えられる。多数のコンバイナが遅延要素に接続され、かつ遅延要素無しのアンテナ組立体にも接続される。コンバイナの各々は対応するビームからのアンテナ組立体信号の各々から受信する。各コンバイナ出力は対応する受信器分岐に接続される。
【0020】
本発明は、1個の無線受信器分岐がいくつかのアンテナ組立体からの信号を供給され、以後信号が復元されることから、既知の技術の改良を構成する。従って、アンテナ・ダイバーシティ利得を得ることと正確なDOA推定の計算を可能とすることの両方を達成するための無線受信器分岐の所要数は、アンテナ・ビームの組中のビーム数に対応して限定される。これにより無線受信器の大きさとその電力消費の両方が減少される。
【0021】
さらなる改良は、本発明の無線受信器を含む基地局が地面上に配置されアンテナ組立体が支柱に取付けられている場所に対して見出される。基地局をアンテナ組立体に接続するケーブルの重量は支柱寸法に関して重要な因子である。基地局をアンテナ組立体に接続するケーブル本数は、アンテナ組立体近傍にコンバイナを結合することにより減少可能である。これによりケーブルの重量は減少し、これは支柱がより小さい寸法となることを可能とし、従って支柱と共にケーブルのコストを低下させる。
【0022】
望ましい実施例と添付図面とを参照して本発明を以下により詳細に説明する。
【0023】
(望ましい実施例の詳細な説明)
図1では、2台の移動局MS1とMS2と、本発明の無線受信器を含む基地局BSを図示する。無線チャネルCHを第1移動局MS1と無線基地局BSとの間の通信用に使用する。無線チャネルCHは又図1には図示していないが他の基地局との通信用に第2移動局MS2によっても使用される。
【0024】
無線基地局BSは2個のアンテナ組立体AA1、AA2を装備する。アンテナ組立体AA1、AA2はアンテナ・ダイバーシティを達成するために分離される。両者とも多数のビームにより120°セクタをカバーする。第1アンテナ組立体AA1は第1組のアンテナ・ビームSAB1を発生し、第2アンテナ組立体AA2は第2組のアンテナ・ビームSAB2を発生する。第1組SAB1のビームの各々に対して、同じ空間区域をカバーする第2組のビームSAB2中の対応するビームがある、すなわち2つのビームは重なり合っている。第1移動体MS1が位置している空間区域はビームの組SAB1、SAB2の各々のビームによりカバーされ、第2移動体MS2への方向は他のビームによりカバーされる。
【0025】
異なるビームから得られた信号は受信器で別々に受信され、これにより角度情報を保持する。第1移動局MS1への方向を推定するDOA推定はこれらの信号の助けにより実行可能である。
【0026】
第1移動局MS1へ向けられたビームの送信によりダウンリンク干渉は減少され、これにより第2移動局MS2のダウンリンク品質を改善する。ダウンリンク・ビームは第1移動局MS1のDOA推定を元に選択される。
【0027】
両方のアンテナ組立体が同時に深いフェーディング・ディップに曝される危険性を減少することによりアンテナ・ダイバーシティ装置はアップリンク品質を改善する。
【0028】
TDMAシステムに対する本発明の無線受信器の実施例を図2を参照して以下に説明する。無線受信器RRCは2個のアンテナ組立体AA1、AA2を含む。アンテナ組立体AA1、AA2の各々は、多数のアンテナ要素AELにより形成されるアンテナアレイAARと、アンテナ要素AELに接続された低雑音増幅器LNA、及び低雑音増幅器LNAからの接続を有するビーム形成装置BMとを含む。第1アンテナ組立体AA1のアンテナ要素AELは第2アンテナ組立体AA2のアンテナ要素AELの偏極方法に対して直交する偏極方法を与えられる。
【0029】
本実施例ではビーム形成装置BMはバトラ(Butler)マトリクスから構成される。バトラマトリクスBMは、各々がアンテナ・ビームに対応する多数の出力を有する。
【0030】
無線受信器RRCは又、多数の遅延要素DLMと、多数のコンバイナCMBと、多数の無線受信器分岐RXと、DOA推定器DP及びイコライゼーション及び信号推定装置EqSEとを含む。
【0031】
第2アンテナ組立体AA2のバトラマトリクスBMの各出力は対応する遅延要素DLMに接続される。遅延要素DLMの各出力は対応するコンバイナCMBに接続される。各コンバイナCMBはまた第1アンテナ組立体AA1のバトラマトリクスBMからの他の接続も有する。コンバイナへの2つの入力は対応する空間区域をカバーするビームに対応する。
【0032】
各コンバイナCMBの出力は対応する無線受信器分岐RXに接続される。無線受信器分岐RXはチャネル選択と、無線周波数からベースバンドへの周波数変換とを含む。
【0033】
全ての無線受信器分岐RXの出力はイコライゼーション及び信号推定装置EqSEに接続される。本実施例ではイコライゼーション装置はMLSE、最尤シーケンス推定と、異なるビームから得られた受信信号を組合せる装置とを含む。
【0034】
無線受信器分岐RXの出力はまたDOA推定器DPにも接続される。DOA推定器は当業者には公知であり、例えば1989年11月の信号、システム、コンピュータ第23回アシロマー(Asilomar)会議会報の著者ヴィバーク(Viberg)、オッターステン(ottersten)及びカイラ(Kailat)による「到着方向推定と...」を参照されたい。
【0035】
直接シーケンスCDMAシステムに使用するための本発明の無線受信器RRCの他の実施例を図3を参照して以下に説明する。本発明の無線受信器RRCは2個のアンテナ組立体AA1、AA2を含む。アンテナ組立体AA1、AA2は図2を参照した前述の実施例のアンテナ組立体AA1、AA2と同じ部品を含む。しかしながら、相違は、2個のアンテナアレイAARが直交偏極方向を与えられてはおらず、約10−20波長だけ空間的に分離されている点である。
【0036】
無線受信器RRCは又多数の遅延要素DLM、多数のコンバイナCMB、多数の無線受信器分岐RX、レーク受信器RAKE、及びDOA推定器DPを含む。
【0037】
アンテナ組立体AA1、AA2は各々がビームに対応している多数の出力を有する。第2アンテナ組立体の出力の各々は対応する遅延要素DLMに接続される。遅延要素DLMの出力の各々は対応するコンバイナCMBに接続される。これらのコンバイナCMBの各々には第1アンテナ組立体AA1からの出力も接続される。コンバイナCMBで2つの出力に対応するビームは同じ空間区域をカバーする。
【0038】
コンバイナCMBからの出力は対応する無線受信器分岐RXに接続される。無線受信器分岐RXは図2の実施例を参照して説明されている。
【0039】
無線受信器分岐RXからの出力はレーク受信器RAKEに接続される。レーク受信器RAKEは、例えば最大比組合せ、MRCを介して異なる無線受信器分岐RXにより無線受信された信号を組合せる装置を含む。レーク受信器RAKEは遅延信号のレーク組合せを実行する。レーク組合せとMRCの両者は当業者には公知の技術である。
【0040】
無線受信器分岐RXの出力はまたDOA推定器DPにも接続される。レーク受信器のDOA推定のさらなる説明については、スタンフォード大学電気工学部のアイマン・エフ・ナキブ(Ayman F Naguib)の博士論文、CDMA無線セットワークの適合アンテナ、を参照されたい。
【0041】
上述の実施例はアンテナ・ダイバーシティを得る2つの方法、空間的分離によるものとアンテナ要素ALEの直交偏極方向によるものの各々を説明してきた。多重接続方法、TDMA又はCDMAはアンテナ・ダイバーシティを得るために両方の方法又は2つの方法の組合せを使用可能である。
【0042】
本発明の方法をここで図4を参照して以下に説明するが、この方法では2組のアンテナ・ビームにより2組の信号シーケンスが受信される。2組のアンテナ・ビームは、アンテナ・ダイバーシティを達成するために分離されている2個のアンテナ組立体により供給される。アンテナ・ビームの第1組中のビームの各々は第2組の対応するビームと同じ空間区域をカバーし、2本のビームは重ね合わされる。信号シーケンスの組中の各信号シーケンスはアンテナ・ビームに対応する。この段階は図4の流れ図のブロックB1により表される。
【0043】
信号シーケンスの第2組は遅延され、これは図4ではブロックB2により表される。
【0044】
第1組の信号シーケンスの各信号シーケンスは次いで遅延された第2組の信号シーケンスからの対応する信号シーケンスと組合される。2つの組合せ信号シーケンスは共に同じ空間区域をカバーするビームから得られる。この段階は図4の流れ図でブロックB3により表される。このようにして人工的時間分散が組合せ信号シーケンスに導入される。
【0045】
各組合せ信号シーケンスは別々に無線受信されそれらはチャネル選択と、無線周波数からのベースバンド・レベルへの周波数変換とを含む。この段階は図4の流れ図でブロックB4により表される。
【0046】
DOA推定は多数のアンテナ・ビームから得られた受信信号シーケンスを基に実行される。この段階は図4の流れ図のブロックB5により表される。
【0047】
時間分散により時間的に拡散された各組合せ信号のエネルギはイコライザ又はレーク受信器で互いに併合され、第1移動体MS1から送信された信号の推定が次いで行なわれる。既知の組合せ方法、例えばMRCを使用することにより、信号推定は多数のアンテナ・ビームから得られた無線受信信号シーケンスを基にして行なわれる。この段階は図4の流れ図のブロックB6により表される。
【0048】
2個の受信アンテナ組立体が既述の実施例では使用されている。これはアンテナ・ダイバーシティを達成する時の最少数である。例えばより高度のアンテナ・ダイバーシティを達成したい時には2個より多いアンテナ組立体を使用しても良い。ダイバーシティ方法の組合せを達成する場合にも2個より多いアンテナ組立体が使用される。本発明の方法によると、さらに他のアンテナ組立体から得られた信号の組は、他のアンテナ組立体から得られた信号の組に対して遅延される。同じ空間区域をカバーするビームから得られた信号シーケンスは、上述した本発明の方法に従って他と比較して遅延され、次いで組合され無線受信される。
【0049】
第3の又はそれ以上のアンテナ組立体AA1、AA2が本発明の無線受信器RRCに追加された場合、遅延要素DLMがこれらのアンテナ組立体の出力に接続され、各遅延要素DLMの出力は第2のアンテナ要素と同様にコンバイナに接続される。従って、コンバイナへの全ての入力は同じ空間区域をカバーするビームと関連している。遅延要素DLMが接続されるアンテナ組立体AA1、AA2の各々に対して、これらの遅延要素DLMはアンテナ組立体AA1、AA2に重要な遅延を発生する。このようにしてコンバイナへ送られる信号シーケンスは他に較べて遅延される。
【0050】
2つの組合せ信号シーケンス間の相対遅延は、イコライザ又はレーク受信器が解決可能な十分な長さでなければならない。GSMシステムのイコライザでは、この遅延は2.5シンボル時間のオーダーでなければならず、IS 136基準による無線システムのイコライザに対しては遅延は0.5−1シンボル時間のオーダーでなければならない。レーク受信器に対しては、この遅延は拡散シーケンスの大体数チップ時間でなければならない。さらに信号を組合せなければならない場合、遅延のこの差を2つの連続して遅延される信号間に導入しなければならない。
【0051】
これに関連してアンテナ組立体はアンテナ・ダイバーシティを達成するために分離されているものとして参照されている。アンテナ・ダイバーシティとは、空間的に又は主に直交偏極方向により、又はその組合せにより分離されている少なくとも2個のアンテナアレイを介して信号が独立に受信されることを意味する。直交偏極方向による受信には、アンテナ要素を空間的に分離する必要はない。事実、2つの別々な偏極方向での同時受信を容易にする1装置に設計されたアンテナがある。
【0052】
アンテナ・ダイバーシティ装置により受信された信号は相関がないものとしてしばしば不適切に参照されている。この参照が何故不適切であるかと言う理由は、問題の信号が第1移動局MS1から送信され従って完全に相関しているからである。しかしながら、信号は受信アンテナ・ダイバーシティ装置への走行時の異なる伝播路により影響される。アンテナ・ダイバーシティ装置の目的は、異なる伝播路により生じる受信信号への影響の相関程度を減少することである。別の言葉で表現すると、アンテナ・ダイバーシティ装置の目的は、異なる信号のフェーディングの相関程度を減少し、従って全てのアンテナ組立体が同時に深いフェードに曝される可能性を減少することである。
【0053】
実際には、アンテナ・ダイバーシティ装置により受信した信号の完全に相関のないフェーディングを達成することは不可能である。1つの理由はアンテナアレイが十分離れて隔置出来ないためである。しかしながら、これは問題とはならない、何故ならフェーディングの相関の適度な減少がアップリンク無線品質の十分な改善を行なうのに十分であるからである。実際には、アンテナ・ダイバーシティ装置が曝されるフェーディングの一般的な相関係数は、0−1のスケールで約0.7であり、ここで0は全く相関がないことを意味し、1は受信信号の完全な相関を意味する。
【0054】
図2及び図3で図示したアンテナ要素AELに接続された低雑音増幅器LNAは受信器により信号に導入された雑音の影響を減少させる役割を果たす。この目的のためアンテナ要素AELに接続される低雑音増幅器の使用は公知である。
【0055】
図2及び図3を参照して第2アンテナ組立体AA2に接続される遅延要素DLMはソーフィルタ(saw-filter)又はファイバケーブルから構成される。どちらの場合でも遅延要素DLMは受信信号強度の減衰を生じる。遅延要素DLMにより生じたこの減衰は第2アンテナ組立体AA2の低雑音増幅器LNAの対応する増幅度の増加により補償されるのが望ましく、コンバイナCMBで組合される信号が受信器内で等価な増幅にさらされることを可能とする。第2アンテナ組立体AA2の遅延要素DLMが受信信号の信号強度に増幅度-D dBを与え、かつ第1アンテナ組立体AA1の低雑音増幅器LNAが受信信号に増幅度A dBを与える場合、第2アンテナ組立体AA2の低雑音増幅器LNAの増幅度は、遅延要素の減衰を補償するためA+D dBでなければならない。
【0056】
本発明の無線受信器RRCを含む基地局BSでは、コンバイナCMBはアンテナ組立体(AA1、AA2)の近傍に配置されるのが望ましい。特に基地局BSがアンテナ組立体(AA1、AA2)から離れて配置されなければならない場所の場合、これは接続ケーブの本数が減少されるため改良となる。必要なケーブルのコスト、重量及び空間もこれにより減少される。
【0057】
上述の実施例では、無線受信器RRCと本発明の方法が無線スペクトルの2つの多重接続の原理、すなわちTDMAとCDMAに使用された。本発明はこれら2つの多重アクセスの原理に限定されず、本発明はまた他の多重接続の原理にも適用可能であることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 2台の移動局と2個のアンテナ組立体を含む無線基地局とを図示する。
【図2】 本発明による無線受信器を図示するブロック概略図。
【図3】 本発明による他の無線受信器を図示するブロック概略図。
【図4】 無線受信方法を図示する流れ図。
Claims (9)
- 受信器システム(RRC)において、
アンテナダイバーシティを達成するための、各々がアンテナ・ビームの組(SAB1、SAB2)を与える少なくとも2個のアンテナ組立体(AA1、AA2)であって、第1アンテナ組立体のアンテナビームによってカバーされる空間区域が実質的に第2アンテナ組立体のアンテナビームによってもカバーされるように配置され、アンテナ組立体はさらにそれぞれのアンテナビームで受信した信号をそれぞれの出力として供給するアンテナ組立体(AA1、AA2)と、
前記アンテナ組立体(AA1、AA2)の少なくとも1個の出力に接続された遅延要素(DLM)と、
前記第1アンテナ組立体からの入力と、前記第2アンテナ組立体からの入力とを各々組み合わせるコンバイナ(CMB)であって、前記入力の少なくとも片方は前記遅延要素(DLM)を介して接続され、同じ空間区域を実質的にカバーする複数のビームから得られる複数の受信信号を組み合わせることに適合した前記コンバイナと、
対応するコンバイナの出力に各々接続され、無線受信器に導かれる無線受信器分岐(RX)と、を含む受信器システム(RRC)。 - 請求項1に記載の受信器システムにおいて、 前記第2アンテナ組立体(AA2)の要素に前記遅延要素(DLM)は接続され、前記コンバイナ(CMB)の各々は前記第1アンテナ組立体(AA1)の要素に接続された入力と前記遅延要素の内の1個に接続された他の入力とを有し、前記両入力は同じ空間区域を主にカバーするアンテナ・ビームに対応する、受信器システム。
- 請求項1に記載の受信器システムにおいて、
チャネル推定と信号推定を計算する装置(EqSE、RAKE)が設けられ、前記装置は前記無線受信器分岐(RX)から接続された入力を有する受信器システム。 - 請求項1に記載の受信器システムにおいて、
前記無線受信器分岐(RX)はチャネル選択フィルタと、無線周波数からより低い周波数へチャネルを変換する周波数混合器とを含む、受信器システム。 - 請求項1に記載の受信器システムにおいて、
前記アンテナ組立体(AA1、AA2)の各々はアンテナ要素(AEL)のアレイ(AAR)と、各アンテナ要素(AEL)に接続された増幅器(LNA)及びビーム形成装置(BM)とを含む受信器システム。 - 無線受信方法において、
第1組のアンテナ・ビーム(SAB1)を与える段階と、
第2組のアンテナ・ビーム(SAB2)を与える段階と、
アンテナダイバーシティを達成するために前記第1組と第2組のアンテナビームを配置し、さらに前記第1組のアンテナビームによってカバーされる空間区域が実質的に第2組のアンテナ・ビーム(SAB2)によってもカバーされるように配置する段階と、を含み、
a)前記第1組のアンテナ・ビーム(SAB1)によって第1組の信号を、前記第2組のアンテナ・ビーム(SAB2)によって第2組の信号を受信する段階(B1)であって、各組の各信号は対応するアンテナ・ビームから得られる段階と、
b)第2組の信号を遅延させる段階(B2)と、
c)前記第1組の信号を前記遅延された第2組の信号と組合せる段階(B3)であって、各組合せは前記第1組の信号からの信号と前記遅延された第2組の信号からの信号とを含み、前記信号は共に対応する空間区域をカバーするビームから得られる前記組合せる段階と、
d)組合せ信号を無線受信する段階(B4)と、
を含むことを特徴とする無線受信方法。 - 請求項6記載の方法において、
e)アンテナ・ダイバーシティにより前記第1組の信号のフェーディング・パターンと前記第2組の信号のフェーディング・パターンとの間の相関を減少させる段階と、
をさらに含む方法。 - 請求項6又は7記載の方法において、段階dはチャネル選択と、無線周波数からより低い周波数への受信信号の変換とを含む方法。
- 請求項6又は7記載の方法において、
h)段階dを実行した後に受信した信号を基にDOA(Directional of arrival)を推定する段階(B5)をさらに含む方法。
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