JP4276618B2 - 低鉄損一方向性電磁鋼板 - Google Patents

低鉄損一方向性電磁鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、トランスの鉄心等に利用され、一方向性電磁鋼板の性能、特に低鉄損性に優れた一方向性電磁鋼板に関するものである。
近年、鋼板の圧延方向に磁化容易軸をもつ一方向性電磁鋼板は、主に変圧器やその他の電力変換器の鉄心に用いられ、エネルギー変換時に生じる損失を小さくするために、鉄心の材料には低い鉄損特性が強く要求されている。
電磁鋼板の鉄損には、大別してヒステリシス損と渦電流損からなっている。ヒステリシス損は結晶方位、欠陥、粒界等により影響を受け、渦電流損は材料の板厚、電気抵抗および180°磁区幅等により決まる。
従ってこれまでは、ヒステリシス損低減の観点から結晶粒組織を(110)[001]方位に高度に揃え、結晶の欠陥を少なくするなどの方法が用いられ、渦電流損低減の観点から板厚を薄くし、Si含有量の増加などにより材料の抵抗値を高めたり、張力被膜の鋼板表面への塗布などにより180°磁区幅を細分化するなどの方法が用いられ、電磁鋼板の低損失化が試みられてきた。
また近年、鉄損を飛躍的に減少させるために、鉄損の大部分を占める渦電流損低減の観点から、上記の鋼板表面への張力付与以外の手段を用いて、人為的に鋼板に磁極を発生させ、180°磁区を細分化させる方法が提案されている。
例えば特許文献1などには、レーザを一方向性電磁鋼板表面の圧延方向と直角方向に対して、所定のビーム幅、エネルギー密度、照射間隔で照射することにより、鋼板表面に局部的な高転位密度領域、すなわち微小塑性歪を加えることで、磁区の芽を発生させて磁区の細分化を行い、一方向性電磁鋼板の鉄損を低減する方法が開示されている。
また特許文献2には、一方向性電磁鋼板表面の所定方向及び所定荷重で溝を形成した後、歪取り燃鈍により歪導入部に微細結晶粒を生じさせ、二次再結晶粒との界面から磁区細分化の芽を発生させる方法が開示されている。
また特許文献3には、焼鈍済みの一方向性電磁鋼板の所定方向に溝付きロールなどにより機械的に所定深さの溝を形成した後、エッチングにより機械的歪により生じた微細粒を除去し溝を深めることで、一方向性電磁鋼板の鉄損を低減する方法が開示されている。
上記特許文献1〜3の方法は、一方向性電磁鋼鈑表面に溝又は局部的塑性歪(高転位密度領域)を形成し、180°磁区幅の細分化を行うことを技術思想とする技術であるが、これらの方法で得られる鋼板の鉄損(W17/50 )は0.80〜0.78W/Kg程度が限界であった。なお、前記W17/50 は磁束密度1.7T、周波数50Hzにおける鉄損を示す。 上記方法において鉄損低減効果に限界が生じる理由は、後述するように本発明者らの検討によれば、溝又は塑性歪の形成により180°磁区幅が細分化され、渦電流損は低減するものの、逆にヒステリシス損が増加する結果、鉄損が低減しないためであることを確認している。
以上の通り、従来技術を用いる限りは一方向性電磁鋼板の鉄損をさらに改善することは期待できないため、従来に比べて飛躍的に鉄損を低減する方法が望まれている。
特開昭55−18566号公報 特開昭61−117218号公報 特開2000−169946号公報
上記従来技術の現状を踏まえ、本発明は、従来の溝や歪形成以外の手段を用いて、ヒステリシス損の増加を抑制しつつ渦電流損をより低減することによって、従来に比べて飛躍的に鉄損特性が向上する低鉄損一方向性電磁鋼板を提供するものである。
本発明は上記課題を解決するものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)鋼板表裏層の何れか一方又は両方における1箇所又は複数箇所に溝を有し、該溝側面の片側面または両側面から4μm以上の幅方向範囲で、かつ鋼板表面から溝深さの0.75倍以上の厚み方向範囲に、磁気異方性定数がFeの磁気異方性定数の2倍以上であり、前記溝側面の法線方向に対して±12°以内(0°を含む)の角度をなす向きに少なくとも1つの磁化容易軸を有するCo系金属またはFeNiO系化合物を含有することを特徴とする一方向性電磁鋼板。
)前記Co系金属またはFeNiO系化合物が前記溝側面の片側面または両側面から12μm以上の幅方向範囲に含有することを特徴とする上記(1)に記載の一方向性電磁鋼板。
本発明によれば、鉄損特性が非常に優れた一方向性電磁鋼板を提供でき、トランスのエネルギー損失が非常に小さくなる等、工業的効果が極めて大きい。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明者らは、一方向性電磁鋼板の表面に溝または歪形成による従来の鉄損低減方法について確認試験を行い、以下の問題点を確認した。
図1は、表面に溝及び歪を形成し低鉄損化した一方向性電磁鋼板における表面張力と鉄損との関係を示す。
表面に溝及び歪を形成し低鉄損化した一方向性電磁鋼板の何れも、外部応力により鋼板表面の張力を増加することによって、さらに鉄損が低減する。表面張力が2kgf/mm2 (19.6133MPa)の場合に、表面に溝を形成した一方向性電磁鋼板ではW17/50 で0.66(W/kg)、表面に歪を形成した一方向性電磁鋼板ではW17/50 で0.64(W/kg)まで低鉄損化が図れる。しかしながら実際の製品では、外部応力として鋼板表面に張力皮膜が塗布されるが、鋼板との密着性の限界などにより、2kgf/mm2 (19.6133MPa)程の応力を得ることは難しい。
従って、実際の製品においては、表面に溝を形成した一方向性電磁鋼板ではW17/50 で0.69(W/kg)、表面に歪を形成した一方向性電磁鋼板ではW17/50 で0.66(W/kg)までの低鉄損化が図れるが、それ以上の低鉄損化は困難である。
鋼板圧延方向に対しておよそ直角な方向に溝を形成する方法では、表面の溝深さの増加と共に全損失を構成する渦電流損は磁区細分化が進行するため低減する。しかし、全損失を構成するヒステリシス損は表面の溝深さの増加と共に逆に増加してしまうため、表面の溝形成による全損失の低減には限界がある。また、溝深さの増加によって鋼板表面の凹状部から磁束密度が漏れるため、磁気特性の一つであるB8(磁界800A/mにおける磁束密度)が劣化する問題も生じる。
一方、レーザ照射等により鋼板圧延方向に対しておよそ直角な方向に歪を導入する方法では、歪量の増加と共に磁区細分化が図られ損失は低減される。この方法では表面溝形成方法に比べて、ヒステリシス損の増加や表面の漏れ磁界によるB8の劣化の問題は生じにくいため、図1に示すように溝形成方法に比べて低損失化の効果が高い。
しかし、本発明者らの確認試験結果から、レーザ照射により弾性歪の増加により磁区細分化は進むが、同時に塑性歪も増加し、塑性歪による磁壁移動が妨げられるためヒステリシス損が増加することを確認している。
また、この方法で低損失化した鋼板は、歪取り焼鈍処理を行なう場合には歪による磁区細分化効果は消失してしまう。そのため、約800℃の歪取り焼鈍処理が必要とする巻きトランスに使用する鋼板にはこの方法を適用できず、焼鈍処理が不要な積みトランスの用途に制限されるという問題があった。
以上の本発明者らの確認試験結果から、溝形成又は歪形成と張力付与等のような従来方法の組み合わせでは、一方向性電磁鋼板の低鉄損化に限界があり、大幅な低鉄損化は図れないことを確認した。
本発明は、上記のような従来方法とは全く異なる技術思想及び全く新たな構成により、大幅な低鉄損化を図った一方向性電磁鋼板を提案するものである。
先ず、本発明の技術思想について説明する。
図2の概念図に示すように、一般に一方向性電磁鋼板の磁化容易軸は圧延方向に向いているため、磁区は圧延方向に平行および反平行な磁化(矢印)で構成され、180°磁区幅を形成する。この状態でさらに鋼板表面の圧延方向に対して直角方向に溝を形成すると、鋼板の180°磁区幅は狭くなる。つまり磁区の細分化が行なわれることは上述した通りである。
本発明者らは、表面の溝形成による磁区の細分化のメカニズムを磁区解析から検討した結果、図3の概念図に示すように、この鋼板では溝の断面に磁極が発生し、これが磁区の再構成を促すために、結果的に180°磁区幅が細分化されることを見出した。
上述した鋼板表面に形成する溝深さを増加すると共に磁区の細分化が促進する理由は、溝深さの増加により溝断面積が増大するため、溝断面に発生する磁極も増加し、さらに磁区の再構成が促進するからであると考えられる。しかしこの方法は、上述したように溝深さの増加と共にヒステリシス損を増加し鉄損低減を阻害するため、溝だけを深めることによる鉄損特性の低減には限界がある。
本発明は、上記磁区解析結果を踏まえ、溝深さすなわち溝断面積を増加させずに、溝断面の単位面積当たりの磁極量を増加させることにより、磁区の再編成を促進し、より細分化させることを技術思想とする。
そのために本発明は、図5に示すように、鋼板表裏層の何れか一方又は両方に1箇所または複数箇所に溝を形成し、この溝側面の片側面または両側面から所定幅方向範囲で、かつ鋼板表面から所定厚み範囲に、溝側面の法線方向にほぼ平行な容易軸を有し、かつFeに比べて磁気異方性定数が高い物質を付与することにより、この磁気異方性定数が高い物質を付与した部分の溝側面において、180°磁区を構成する磁化の向きを、図3に示す溝側面に平行に向う還流状態の磁化方向から、図4に示す溝側面に垂直になる磁化方向に誘導することにより、溝側面に発生する単位面積当たり磁極量を増加させ、鋼板の磁区の再構成、細分化の促進を実現するものである。
本発明によれば、鋼板表面に溝を形成した一方向性電磁鋼板において、溝深さを増加せずに磁区細分化を促進することができるので、従来の溝深さの増加に伴うヒステリシス損増加の問題は抑えられ、従来に比べて鉄損特性を飛躍的に改善できる一方向性電磁鋼板を提供することができる。
また本発明は、歪を形成した一方向性電磁鋼板の問題点であったトランス等の製品を作成する際に生ずる加工歪を除去するための焼鈍処理の影響がなく、熱処理後も鉄損特性が優れる一方向性電磁鋼板を提供することができる。
一般に物質の磁化が、磁化容易軸に向き易いかどうかを示す指標は、磁気トルク法やマイクロ波共鳴法等により測定される正負の磁気異方性定数で決まる。
例えば、電磁鋼板の母材元素であるFeは、図6に示すように磁化容易軸が三つあり、その磁化容易軸の一つは圧延方向に向いている。また鉄の磁気異方性定数は、結晶の対称性から3方向が同等の正の磁気異方性定数:約4.8×104 (J/m3 )を持つことが知られている。
従来の鋼板表面の圧延方向にほぼ垂直な方向に溝を形成した一方向性電磁鋼板では、図3に示すように、180°磁区を構成する磁化の向きは溝側面の近傍で還流し、磁化の向きは溝側面に対して平行な状態なるため、溝側面に発生する磁極量は減少してしまう。
従って本発明では、鋼板の磁区の再編成、細分化による鉄損特性の向上のために、電磁鋼板の各180°磁区を構成する磁化の向き(鉄の容易軸方向である圧延方向)が溝側面で還流する状態にある溝側面に平行な磁化の向きを溝側面の法線方向に誘導し、溝側面での単位面積当たりの磁極量を増やすために、溝近傍に溝側面の法線方向に少なくとも1つの磁化容易軸を有し、かつFeに比べて磁気異方性定数が十分に高い物質を含有させる必要がある。
本発明において、上記のメカニズムによる一方向性電磁鋼板の磁区の再編成、細分化の促進効果は、鋼板表裏面の何れか一方又は両方における1箇所又は複数箇所に形成した溝の側面に誘起させる磁極量の増加程度、すなわち、溝側面近傍で還流する状態の溝側面に平行な向きの磁化が溝側面に垂直方向の向きになる度合いにより決まる。
そのため、本発明において、鋼板表裏面の何れか一方又は両方における1箇所又は複数箇所に形成した溝側面の近傍に付与する上記金属または金属化合物のFeに対する磁気異方性定数の大きさ、及び、磁化容易軸方向(溝側面の法線方向に対する角度)、並びに、上記金属または金属化合物を付与する幅方向範囲(溝側面から略圧延方向への範囲)、及び、厚み方向範囲(溝深さに対する厚みの比率)を適正に規定することが重要である。
先ず、以下に本発明の一方向性電磁鋼板における上記金属または金属化合物のFeに対する磁気異方性定数の大きさ及び磁化容易軸方向(溝側面の法線方向に対する角度)について説明する。
なお、以下での説明の便宜上、「磁気異方性定数がFeの磁気異方性定数より大きい金属または金属化合物」を「高磁気異方性物質」という。
図7は、板厚が0.23mmの一方向性電磁鋼板における高磁気異方性物質の磁化容易軸方向及び磁気異方性定数と、鉄損W17/50 との関係を示す。
なお高磁気異方性物質は、図5に示すように、鋼板の圧延方向に対してほぼ直角方向に、鋼板表面からの深さが約20μm、幅が約100μmの溝を形成し、この溝の両側面からそれぞれ約50μmの幅方向範囲で、鋼板表面から約15μm(溝深さの0.75倍)の厚み方向範囲に帯状に存在するものである。
図7において、鉄損W17/50 は、磁気測定装置を用いて、周波数50Hzで励磁し、最大磁束密度が1.7Tになる時の鉄損値を示す。
また磁気異方性定数は、Feの磁気異方性定数(約4.8×104 (J/m3 ) )に対する相対比率として示す。また、磁化容易軸方向は、高磁気異方性物質の少なくとも1つの磁化容易軸と溝側面の法線方向とのなす角度(°)を示す。
一方向性電磁鋼板の表面に形成した溝深さの増加(溝側面の表面積の増加)に伴い、図3に示すように、溝側面の近傍において180°磁区を構成する磁化の向きの還流による磁化の向きの乱れが顕著となり、溝側面で発生する磁極量は減少するが、溝側面の近傍に付与する高磁気異方性物質のFeに対する磁気異方性定数を増加させると共に、その容易軸方向と溝側面の法線方向との角度を低減することで、図4に示すように、溝側面近傍の磁化の向きの乱れは抑制され、磁区の再構成、細分化により鉄損特性は向上する。
図7から、従来の一方向性電磁鋼板に比べて鉄損値を充分に低減させるためには、鋼板に付与する高磁気異方性物質がFeの磁気異方性定数の2倍以上にすると共に、その容易軸方向が溝側面の法線方向に対して±12°以内とする必要がある。
また、一方向性電磁鋼板の鉄損値をより低減させるためには、高磁気異方性物質の容易軸方向が溝側面の法線方向に対して0°、つまり溝側面の法線方向と平行とすることが好ましい(図9「高磁気異方性物質の容易軸方向と鉄損W17/50 との関係」参照)。
なお、上記容易軸方向の溝側面の法線方向に対する角度において、「+」は時計周り方向、「−」は反時計周り方向を示す。
また本発明において、一方向性電磁鋼板に対して上記金属または金属化合物の付与する箇所は、鋼板表裏層の何れか一方又は両方における1箇所又は複数箇所のいずれの実施形態でも、従来の一方向性電磁鋼板に比べて鉄損を低減できる作用、効果が得られることを本発明者らは実験により確認している。
以上の理由から、本発明では、鋼板表裏層の何れか一方又は両方における1箇所又は複数箇所に有する溝の近傍に磁気異方性定数がFeの磁気異方性定数の2倍以上であり、かつ溝側面の法線方向に対して±12°以内の角度をなす向きに少なくとも1つの磁化容易軸を有する金属または金属化合物(高磁気異方性物質)を含有させることとした。
また本発明では、一方向性電磁鋼板の鉄損値をより安定して充分に低減させるために、高磁気異方性物質の容易軸方向を溝断面の法線方向と平行とするのが好ましい。
なお、上記の磁気異方性定数がFeの磁気異方性定数の2倍以上であり、かつ溝側面の法線方向に対して±12°以内の角度をなす向きに少なくとも1つの磁化容易軸を有する金属または金属化合物(高磁気異方性物質)とは、Co系合金、FeNiO系化合物等が挙げられる。
また物質の磁気異方性は、その結晶構造やその形状などに依存する。例えば針状結晶構造の鉄粉の磁気異方性は、Fe自体の磁気異方性定数に比べて、針状方向の異方性が高い磁気異方性定数をもつことが知られている。したがって、上記金属または金属化合物(高磁気異方性物質)として、上記の例示した金属または金属化合物で結晶構造や形状が異なり、特定方位の磁気異方性が異なるものも当然含むものである。
また本発明において、上記金属または金属化合物(高磁気異方性物質)の形態は、金属系、合金系、化合物系、酸化物系のいずれでも良い。
次に、本発明の一方向性電磁鋼板の溝側面近傍に付与する上記金属または金属化合物の幅方向範囲(溝側面から略圧延方向への範囲)、及び厚み方向範囲(溝深さに対する厚みの比率)について説明する。
図8は、板厚が0.23mmの一方向性電磁鋼板における溝側面近傍に付与した高磁気異方性物質の厚み(溝深さに対する厚みの比率)と、鉄損W17/50 との関係を示す。
なお、高磁気異方性物質は、図5に示すように、鋼板の圧延方向に対してほぼ直角方向に、鋼板表面からの深さが約20μm、幅が約100μmの溝を形成し、この溝の両側面からそれぞれ約50μmの幅で帯状に存在するものである。
また、高磁気異方性物質の磁気異方性定数は、約4.53×105 (J/m3 )(Feの磁気異方性定数(約4.8×104 (J/m3 )の約9.4倍)であり、高磁気異方性物質の少なくとも1つの磁化容易軸方向は、溝断面の法線方向に対して±12°以内であった。
図8において、鉄損W17/50 は、磁気測定装置を用いて、周波数50Hzで励磁し、最大磁束密度が1.7Tになる時の鉄損値を示す。
一方向性電磁鋼板の表面に形成した溝深さの増加(溝側面の表面積の増加)に伴い、図3に示すように、溝側面の近傍において180°磁区を構成する磁化の向きの還流による磁化の向きの乱れが顕著となり、溝側面で発生する磁極量は減少するが、溝側面の近傍に付与する高磁気異方性物質の溝深さに対する厚みを増加させることで、図4に示すように、溝側面近傍の磁化の向きの乱れは抑制され、磁区の再構成、細分化により鉄損特性は向上する。
図8から、従来の一方向性電磁鋼板に比べて鉄損値を充分に低減させるためには、高磁気異方性物質の厚みは、溝深さに対する厚みの比率で0.75以上とする必要がある。
また図9は、板厚が0.23mmの一方向性電磁鋼板における溝側面近傍に付与した高磁気異方性物質の幅(溝側面から略圧延方向への範囲)と、鉄損W17/50 との関係を示す。
なお高磁気異方性物質は、図5に示すように、鋼板の圧延方向に対してほぼ直角方向に、鋼板表面からの深さが約20μm、幅が約100μmの溝を形成し、この溝の両側面にそれぞれ約15μm(比率0.75)の厚みで帯状に存在するものである。
また、高磁気異方性物質の磁気異方性定数は、約4.53×105 (J/m3 )(Feの磁気異方性定数(約4.8×104 (J/m3 )の約9.4倍)であり、高磁気異方性物質の少なくとも1つの容易軸方向(溝側面の法線方向に対する角度)は0°と12°の2条件で行った。
図9において、鉄損W17/50 は、磁気測定装置を用いて、周波数50Hzで励磁し、最大磁束密度が1.7Tになる時の鉄損値を示す。
一方向性電磁鋼板の表面に形成した溝深さの増加(溝側面の表面積の増加)に伴い、図3に示すように、溝側面の近傍において180°磁区を構成する磁化の向きの還流による磁化の向きの乱れが顕著となり、溝側面で発生する磁極量は減少するが、溝側面の近傍に付与する高磁気異方性物質の溝深さに対する厚みに加え、付与する幅を増加させることで、図4に示すように、溝側面近傍の磁化の向きの乱れは抑制され、磁区の再構成、細分化により鉄損特性は向上する。
図9から、従来の一方向性電磁鋼板に比べて鉄損値を充分に低減するためには、鋼板に付与する上記高磁気異方性物質の幅は、4μm以上とする必要がある。
また、一方向性電磁鋼板の鉄損値をより安定に低減させるためには、鋼板に付与する上記高磁気異方性物質の幅は、12μm以上とするのが好ましい。
以上の理由から、本発明では、鋼板表裏層の何れか一方又は両方における1箇所又は複数箇所に有する溝の片側面または両側面から4μm以上の幅方向範囲で、かつ鋼板表面から溝深さの0.75倍以上の厚み方向範囲に上記金属または金属化合物(高磁気異方性物質)を含有させることとした。
また、一方向性電磁鋼板の鉄損値をより安定に低減させるために、上記高磁気異方性物質の幅方向範囲は、上記溝の片側面または両側面から12μm以上とするのが好ましい。
本発明の一方向性電磁鋼板は、上述したように、鋼板表面に溝及び歪を形成した一方向性電磁鋼板における溝深さ及び塑性歪の増加に伴うヒステリシス損増加の問題は生じ難いため、従来に比べて鉄損特性を飛躍的に改善できる。
本発明において、鋼板表裏層の何れか一方又は両方における1箇所又は複数箇所に形成した溝側面の近傍に、前記金属または金属化合物(高磁気異方性物質)を付与する方法は、特に限定する必要はない。
例えばその具体的な方法として、通常の方法で得られる一方向性電磁鋼板に対して、さらにエッチングや歯形ロール等の加工方法を用いて、その鋼板表面に積層するための溝を形成した後、上記高磁気異方性物質を積層し、再びエッチングや歯形ロール等で積層した高磁気異方性物質部分を加工し、本発明の指定する構造を作成する方法が用いられる。
なお、上記高磁気異方性物質を積層する方法は、例えばスパッタ法、蒸着法、メッキ法のいずれかの方法が用いられる。
また、鋼板に溝を形成せずに、母材鋼板を圧延で製造する過程に形成した窪み等を利用して上記高磁気異方性物質を積層しても良い。また積層方法としては、上記高磁気異方性物質を冷間または熱間圧延し埋め込んででも良い。
また、上記高磁気異方性物質を積層ではなく、鋼板表面へのイオン注入やドーピング等の方法により付与する方法を利用しても良い。
質量%でSiを約3%含有し、残部はFeとその他の不純物の組成から成り、鋼板の結晶方位が(110)[001]の理想方位に対して平均値で約3度以下のずれを持つ集合組織を有し、厚さが0.23mmの一方向性電磁鋼板を製造した。このとき、この鋼板の鉄損値W17/50 は、約0.9(W/kg)であった。
その後この鋼板の表層に、図5に示すように表1の条件で高磁気異方性物質を積層し、表層に高磁気異方性物質を付与した鋼板を製造した(表1の試料No.1〜10)。
また、高磁気異方性物質を付与した本発明の一方向性電磁鋼板に対する比較鋼板として、上記一方向性電磁鋼板の表層に溝のみを形成した鋼板(表1の試料No.11)、及び上記一方向性電磁鋼板の表層に歪を形成した鋼板(表1の試料No.12)を製造した。
なお、一方向性電磁鋼板の表層に溝のみを形成した鋼板(表1の試料No.11)の溝深さは約20μm、溝幅は約0.1mm、溝間隔(ピッチ)は約5mmで、溝方向は圧延方向にほぼ直角方向に形成した。
また、一方向性電磁鋼板の表層に歪を形成した鋼板(表1の試料No.12)は、鋼板表面に1パルスあたり約3mJのエネルギーを持つパルスレーザーを圧延方向に約5mmピッチの間隔で照射し作成した。このときレーザ照射領域は、圧延方向にほぼ直角方向になるようにした。
表1に示すように、試料No.1〜6の発明例は、高磁気異方性物質の磁気異方性定数(Feの磁気異方性定数に対する相対比)、少なくとも1つの磁化容易軸方向(溝側面の法線方向に対する角度)、溝深さに対する高磁気異方性物質の厚み比率及び高磁気異方性物質の幅の条件が、本発明の規定範囲内であるため、鋼板の鉄損値(W17/50 )が0.65(W/kg)未満に充分低減され、良好な鉄損特性を有する一方向電磁鋼板が得られた。
また、これらの発明例のうち、本発明で規定するさらに好ましい条件、つまり、高磁気異方性物質の少なくとも1つの磁化容易軸方向が溝側面の法線方向に平行、高磁気異方性物質の幅(溝側面から略圧延方向への範囲)が12μm以上の条件を満足する試料No.1〜4の発明例は、それらの条件を外れた試料No.5〜6の発明例に比べて鋼板の鉄損値(W17/50 )がより低減し、鉄損特性が飛躍的に改善された。
これに対して、試料No.7〜10の比較例は、それぞれ高磁気異方性物質の磁気異方性定数(Feの磁気異方性定数に対する相対比)が低く、全ての磁化容易軸方向(鋼板面の法線方向に対する角度)が高く、溝深さに対する高磁気異方性物質の厚みの比率が低く、或いは高磁気異方性物質の幅(溝側面から略圧延方向への範囲)が低く、何れかの条件が本発明の規定範囲から外れているため、鋼板の鉄損値(W17/50 )が0.75(W/kg)以上と高くなり、一方向電磁鋼板の鉄損特性が劣る結果であった。
また、試料No.11,12の比較例は、従来の鋼板表層に溝を形成した鋼板または鋼板表層に歪を形成した鋼板であるが、それぞれの鋼板の鉄損値(W17/50 )が0.69、0.66(W/kg)と高くなり、一方向電磁鋼板の鉄損特性が劣る結果であった。
Figure 0004276618
上記表1の試料No.1の本発明例と、同試料No.12の比較例(鋼板表面に歪形成)のそれぞれの一方向性電磁鋼板を、約800℃の加熱温度で歪取り焼鈍を行った後、それぞれの鋼板の鉄損値を測定した。その結果を表2に示す。
表2から、本発明例の一方向性電磁鋼板は、歪取り焼鈍後でも良好な鉄損値をほぼ維持できた。
これに対して、比較例の鋼板表面に歪を形成した一方向性電磁鋼板は、歪取り焼鈍後に歪による磁区細分化効果は消失し、鉄損値W17/50 が0.65から0.9に大幅に増加した。
Figure 0004276618
表面に溝及び歪を形成し低鉄損化した一方向性電磁鋼板における表面張力と鉄損値との関係を示すグラフ。 鋼板に生じる磁区構造を示す概念図。 従来鋼板(溝形成)における磁区構造を示す概念図。 本発明鋼板における磁区構造の再編成を示す概念図。 本発明の高磁気異方性物質を付与した鋼板の一実施形態を示す概念図。 電磁鋼板の母材元素であるFeの3つの磁化容易軸を示す概念図。 鋼板に付与した高磁気異方性物質の磁化容易軸方向及び磁気異方性定数と、鉄損値との関係を示すグラフ。 鋼板に付与した高磁気異方性物質の厚みと鉄損値との関係を示すグラフ。 鋼板に付与した高磁気異方性物質の磁化容易軸方向及び幅と、鉄損値との関係を示すグラフ。

Claims (2)

  1. 鋼板表裏層の何れか一方又は両方における1箇所又は複数箇所に溝を有し、該溝側面の片側面または両側面から4μm以上の幅方向範囲で、かつ鋼板表面から溝深さの0.75倍以上の厚み方向範囲に、磁気異方性定数がFeの磁気異方性定数の2倍以上であり、前記溝側面の法線方向に対して±12°以内(0°を含む)の角度をなす向きに少なくとも1つの磁化容易軸を有するCo系金属またはFeNiO系化合物を含有することを特徴とする一方向性電磁鋼板。
  2. 前記Co系金属またはFeNiO系化合物が前記溝側面の片側面または両側面から12μm以上の幅方向範囲に含有することを特徴とする請求項1に記載の一方向性電磁鋼板。
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