JP4274800B2 - モータの制御装置、その制御装置を用いた空気調和機および冷蔵庫 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、負荷によって変動する脈動が発生するモータを制御する技術に関し、特にモータに供給する電圧および電流のいずれかを制御する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、空気調和機や冷蔵庫などに用いられる圧縮機は、冷媒を圧縮して高温高圧状態にした上で熱交換を行う、冷凍サイクルの重要な構成部品である。通常この圧縮動作は、大きく3つの過程に分けられる。圧縮機の内部にあるシリンダ内に冷媒を満たす吸入過程、シリンダ内の冷媒を圧縮する圧縮過程、および圧縮した冷媒を圧縮機の外部に放出する吐出過程である。
【0003】
圧縮機はその圧縮機構により、ロータリ方式、レシプロ方式、スクロール方式などに分類される。なかでもロータリ方式は他の方式に比べ、構造が簡単、部品点数が少ない、低コスト、圧縮効率がよい(ただしシリンダ部分の構造の影響を受ける)、高効率化が容易という特徴を有する。
【0004】
ロータリ方式は、偏心したロータリピストンがシリンダ内部で回転することにより吸入・圧縮・吐出の各工程を行い、冷媒を圧縮する。このため1回転中の吸入・圧縮・吐出の各工程による負荷の変動と回転軸の偏心とにより、振動や騒音が大きくなるといった問題がある。
【0005】
シリンダ部分を2つとしてロータリピストンの回転を180度ずらし、互いの振動を打消す技術も実用化されているが、シリンダ部が1つのシングルロータリ方式に比べ構造が複雑、コストが高い、効率が低下するといった問題がある。
【0006】
特開平11−187692号公報(特許文献1)は、シングルロータリ方式の圧縮機において、モータトルクを制御して振動・騒音を抑制する技術を開示する。この公報に開示されたモータのトルクむら低減装置は、インバータにより駆動されるモータのロータ位置を所定の電気角ごとに検出して信号を出力する検出部と、この検出部より出力される信号の出力間隔を測定する測定部と、予め測定されたモータの負荷トルクの変動パターンの逆相パターンに基づいた通電信号レベルのパターンを記憶する記憶部と、測定部が測定した出力間隔が最小値もしくは最大値となるロータ位置を基準位置として決定し、この基準位置に基づいて記憶部に記憶されている通電信号レベルのパターンを読出してインバータに出力することによりモータを制御する制御部とを含む。
【0007】
この装置によると、モータは、負荷トルクの変動パターンの逆相パターンに基づいた通電信号により駆動されて、負荷トルクむらがキャンセルされる。これにより、簡単な構成でモータの負荷トルクむらを低減することができる。その結果、トルクむらが低減され、1回転中のロータ速度を一定にすることができる。その結果、振動を低減できるトルクむら低減装置を提供することができる。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−187692号公報(第3−6頁、第1図)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述の公報に記載された装置では、圧縮機の速度の変動がなるべく小さくなるようにモータの制御を行う。速度の変動が小さくなるようにモータを制御するので、モータ電流の振幅の脈動が大きくなり、モータ電流のピーク値が大きくなり、モータ部での銅損が増加し、効率が低下するという問題がある。
【0010】
本発明は上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的はシングルロータリ型圧縮機などに搭載された、回転に同期した脈動を有するモータを高い効率で駆動するモータの制御装置、その制御装置を用いた空気調和機および冷蔵庫を提供することにある。
【0011】
第1の発明にかかるモータの制御装置は、回転子を有するモータに電力を供給するための電力供給手段と、回転子の機械角を検知するための検知手段と、電力の電圧および電流のいずれかを補正する、機械角に対応する複数の補正値を予め記憶するための記憶手段と、記憶手段が予め記憶する複数の補正値の内から1の補正値を選択する選択手段と、選択手段が選択した補正値に基づき、電力における電圧および電流のいずれかを制御するための制御手段とを含み、記憶手段が予め記憶する複数の補正値は、トルク制御時のトルク補償量が、トルク制御を行わない場合の負荷トルクに起因する電流の脈動を平準化させる、第1トルクパターンに基づいて定められる第1補正値と、トルク制御時のトルク補償量が、トルク制御を行わない場合の負荷トルクと一致するように設定されている、第2トルクパターンに基づいて定められる第2補正値とを含む。
【0012】
第1の発明によると、制御手段は、記憶手段に記憶され、選択手段が選択した、機械角に対応する補正値に基づき、電圧や電流を制御する。この補正値は、トルク制御時のトルク補償量が、トルク制御を行わない場合の負荷トルクに起因する電流の脈動を平準化させる、第1トルクパターンに基づいて定められる第1補正値と、トルク制御時のトルク補償量が、トルク制御を行わない場合の負荷トルクと一致するように設定されている、第2トルクパターンに基づいて定められる第2補正値とを含む。たとえば第1補正値によれば、脈動電流による電流の変動を予め推定し、その推定された変動を補償するように定められる。これにより、トルク制御を行わない場合の負荷トルクに起因する電流の脈動を抑制することができる。負荷トルクによる電流脈動が抑制されるので、電流の変化パターンが一定に近づく。モータの効率は、電圧および電流の変化パターンが一定に近づくほど高くなるので、負荷トルクによる脈動が打ち消されることで、モータの効率は高くなる。その結果、回転に同期した脈動を有するモータを高い効率で駆動するモータの制御装置を提供することができる。また、第2補正値によれば、モータおよび負荷装置の振動や音が小さくなるモータの制御装置を提供することができる。
【0015】
第2の発明にかかるモータの制御装置は、第1の発明の構成に加えて、第1補正値は、該第1補正値によるトルク制御時のトルク補償量が発生させる電流の脈動の位相と、トルク制御を行わずにモータを運転させる場合の負荷トルクに起因する電流の脈動を上下反転させた脈動の位相とのずれが予め定められた範囲になる、第1トルクパターンに基づいて定められる値である。
第2の発明によると、第1補正値によるトルク制御時のトルク補償量が発生させる電流の脈動の位相は、予め定められた範囲内でトルク制御を行わずにモータを運転させる場合の負荷トルクに起因する電流の脈動を上下反転させた電流脈動の位相からずれる。予め定められた範囲とは、たとえば実用上モータの騒音を問題としなくてよい範囲である。電流脈動の位相がずれるので、第1補正値によるトルク制御時のトルク補償量が発生させる電流の脈動がトルク制御を行わずにモータを運転させる場合の負荷トルクに起因する電流の脈動をある程度打ち消す。電流脈動を打ち消すので、モータの効率が向上する。一方、制御手段が電圧や電流に脈動を与えるようにそれらを制御することは、回転子の角速度の脈動を抑制する効果も有する。これにより、モータが駆動することで生じる騒音や振動がある程度抑制される。その結果、騒音や振動をある程度抑制しつつ、回転に同期した脈動を有するモータを高い効率で駆動するモータの制御装置を提供することができる。
第3の発明にかかるモータの制御装置は、第1の発明の構成に加えて、第2補正値は、該第2補正値によるトルク制御時の機械角に対応するトルク補償量の位相と、トルク制御を行わない場合の機械角に対応する負荷トルクの位相とのずれが予め定められた範囲になる、第2トルクパターンに基づいて定められる値である。
【0016】
第3の発明によると、第2補正値によるトルク制御時のトルク補償量の位相は、予め定められた範囲内でトルク制御を行わない場合の負荷トルクの位相からずれる。予め定められた範囲とは、たとえば実用上モータの騒音を問題としなくてよい範囲である。第2補正値によるトルク制御時のトルク補償量の位相がトルク制御を行わない場合の負荷トルクの位相からずれるが、ある程度一致する。トルク補償量の位相がトルク制御を行わない場合の負荷トルクの位相とある程度一致するので、回転子の角速度の脈動を抑制する効果を有する。これにより、モータが駆動することで生じる騒音や振動がある程度抑制される。
【0017】
第4の発明にかかるモータの制御装置は、第1から第3のいずれかの発明の構成に加えて、電力供給手段は、インバータであって、制御手段は、インバータに供給される直流電力の電圧および電流のいずれかを制御するための手段を含む。
【0018】
第4の発明によると、インバータはモータに電力を供給する。制御手段は、インバータに供給される直流電力の電圧や電流を制御する。インバータに供給される前の電力の電圧や電流を制御するので、電流の変化パターンが一定に近づく。これにより、モータの効率をより改善することができる。その結果、回転に同期した脈動を有するモータをより高い効率で駆動するモータの制御装置を提供することができる。
【0019】
第5の発明にかかるモータの制御装置は、第1から第4のいずれかの発明の構成に加えて、記憶手段は、第1補正値、第2補正値以外の他の補正値をもさらに記憶し、該記憶される他の補正値は、制御手段が電圧および電流のいずれかを制御することにより発生する電流脈動の位相と、トルク制御を行わない場合の負荷トルクに起因する電流脈動の位相とのずれが、予め定められた範囲に含まれるように定められ、選択手段は、予め定められた条件に応じて、第1補正値、第2補正値および他の補正値の中のいずれかの値を選択する。
【0020】
第5の発明によると、電流の脈動を適切に抑制する補正値は、モータを駆動する際のさまざまな条件に基づいて変化する。選択手段は、たとえばモータを駆動する時間といった、予め定められた条件に基づいて補正値のいずれかを選択する。これにより、モータを駆動する条件に変化が生じても、制御手段はその変化に応じて電圧や電流を制御し、トルクによる脈動電流を抑制することができる。その結果、回転に同期した脈動を有するモータをより高い効率で駆動するモータの制御装置を提供することができる。
【0021】
第6の発明にかかるモータの制御装置は、第5の発明の構成に加えて、条件は、モータに加わる負荷の影響を受ける条件である。
【0022】
第6の発明によると、モータに加わる負荷は、モータに供給される電圧や電流の脈動に影響を及ぼす。選択手段はモータに加わる負荷の影響を受ける条件に応じて補正値を選択する。これにより、より的確に電流の脈動を抑制することができる。その結果、回転に同期した脈動を有するモータをより的確に駆動するモータの制御装置を提供することができる。
【0023】
第7の発明にかかるモータの制御装置は、第6の発明の構成に加えて、モータに加わる負荷の影響を受ける条件は、モータの負荷トルクに基づいて定められる条件である。
【0024】
第7の発明によると、モータの負荷トルクは、モータに供給される電力の電圧や電流の脈動に影響を及ぼす。選択手段はモータの負荷トルクに基づいて補正値を選択する。これにより、一層的確に電流の脈動を抑制することができる。その結果、回転に同期した脈動を有するモータを一層的確に駆動するモータの制御装置を提供することができる。
【0025】
第8の発明にかかるモータの制御装置は、第6の発明の構成に加えて、制御装置は、検知手段により検知された回転子の角速度に基づいて、回転子の角速度を算出するための算出手段をさらに含む。モータに加わる負荷の影響を受ける条件は、回転子の角速度に基づいて定められる。
【0026】
第8の発明によると、選択手段はモータの回転子の角速度に基づいて定められる条件に応じて補正値を選択する。負荷に接続されたモータの回転子の角速度は、そのモータが発生する騒音や振動の大小に直接影響を及ぼす。これにより、的確に騒音や振動を抑制することができる。その結果、回転に同期した脈動を有するモータについて、必要に応じて騒音や振動の抑制と効率の向上とを達成するモータの制御装置を提供することができる。
【0027】
第9の発明にかかる空気調和機は、第1から第8のいずれかの発明にかかるモータの制御装置を含む。
【0028】
第9の発明によると、モータの制御装置は、モータの電圧や電流を制御する。これにより、モータの効率が向上するので、空気調和機の効率も向上する。その結果、より高い効率で稼動する空気調和機を提供することができる。
【0029】
第10の発明にかかる冷蔵庫は、第1から第8のいずれかの発明にかかるモータの制御装置を含む。
【0030】
第10の発明によると、モータの制御装置は、モータの電圧や電流を制御する。これにより、モータの効率が向上するので、冷蔵庫の効率も向上する。その結果、より高い効率で稼動する冷蔵庫を提供することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0032】
図1を参照して、本実施の形態にかかる圧縮機170用のモータの制御装置100は、交流電源110と、力率改善回路120と、全波整流回路130と、平滑回路140と、インバータ部150と、3相ブラシレスモータ160と、圧縮機170と、ベースドライバ部180と、コンパレータおよび抵抗などにより構成される検出部190と、マイクロプロセッサ200とを含む。力率改善回路120は、リアクタなどにより構成され、突入電流を防止する回路も兼ねる。全波整流回路130は、ダイオードブリッジなどにより構成される。平滑回路140は、電解コンデンサなどにより構成される。インバータ部150は、3相バイポーラ接続されたスイッチング素子やフライホイール・ダイオードなどにより構成され、U相上側に接続されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)151と、V相上側に接続されたIGBT152と、W相上側に接続されたIGBT153と、U相下側に接続されたIGBT154と、V相下側に接続されたIGBT155と、W相下側に接続されたIGBT156とを含む。3相ブラシレスモータは、圧縮機170を駆動する。圧縮機170は、空気調和機または冷蔵庫(図示せず)に内蔵される、シングルロータリ型の圧縮機である。ベースドライバ部180は、電圧レベル変換IC(Integrated Circuit)などにより構成される。検出部190は、コンパレータおよび抵抗などにより構成される。マイクロプロセッサ200は、制御演算を行う。
【0033】
図2を参照して、マイクロプロセッサ200で実行されるプログラムは、モータに供給する電力の制御に関し、以下のような制御構造を有する。
【0034】
ステップ100(以下、ステップをSと略す。)にて、マイクロプロセッサ200は、交流電源110を用いてモータの制御装置100に交流電力を供給する。S102にて、マイクロプロセッサ200は、全波整流回路130と平滑回路140とを用いて交流電力を直流化し、インバータ部150へ入力させる。
【0035】
S104にて、マイクロプロセッサ200は、検出部190を用いてロータの位置を表わす位置信号を検出する。図3を参照して、誘起電圧によりロータの位置を検出する方法を説明する。
【0036】
図3(A)は、ブラシレスモータの各巻線からの誘起電圧の波形と基準電圧とを示す。ただし図3(A)の誘起電圧の波形と図3(B)のロータ位置信号の波形とは同位相になるように示しているが、実際は誘起電圧を検出する方法により、誘起電圧とロータ位置信号とには位相の遅れが発生する。本実施の形態においては、ブラシレスモータは3相スター結線されており、各々の巻線で発生した誘起電圧の波形は、120°ずつ位相がずれた状態になる。
【0037】
図3(B)は、誘起電圧と基準電圧とを比較した結果を表わす波形である。誘起電圧が基準電圧より大きい時を「HIGH」と、小さい時を「LOW」とすると、磁極が変化する点すなわち誘起電圧の波形がゼロクロスする点で立ち上がりまたは立ち下がりのエッジがあるパルスを得ることができる。各巻線ごとのパルスの「HIGH」および「LOW」の組合せは、ロータの位置に同期しているので、各巻線ごとのパルスの組合せを検出することによりロータの位置を検出することができる。図4に、各巻線のON/OFFとステートとの対応関係を示す。単位時間ごとに、ロータの位置の変化を把握すると、ロータの角速度や回転数を検出することもできる。
【0038】
S106にて、マイクロプロセッサ200は、自身の内部の記憶回路に記憶されたトルクパターンを読み出し、PWM(Pulse-Width Modulation)デューティを決定する。PWMデューティとは信号がON/OFFされている時間をいう。図5を参照して、マイクロプロセッサ200の内部の記憶回路に記憶されたトルクパターンの例を説明する。本実施の形態においては、3相ブラシレスモータ160の回転数に応じて選択される6種類のトルクパターンが記憶されている。各トルクパターンは、3相ブラシレスモータ160のステートに対応する補償量からなり、この補償量を補正値として、各ステートごとにPWMデューティを決定する。ステートとはロータ1回転を各通電モードすなわち転流ごとに分割したものである。言い換えれば、モータの極数と相数との積である。たとえば、4極ブラシレスモータでは12分割され、ステート0〜ステート11までの12ステートを持つ。ただし、ステートNとステートN+6(N:0〜5の整数)の通電モードは同一である。本実施の形態において、最終的なPWMデューティの決定値は、基準値および前述した補償量を用いて次式のように計算する。
【0039】
D=A×D(0)(D:決定値、A:補償量、D(0):基準値)
基準値とは、モータの速度制御装置(=マイクロプロセッサ200)が決定した平均回転数によりモータを駆動する場合のPWMデューティをいう。
【0040】
S108にて、マイクロプロセッサ200は、ロータの位置に基づきブラシレスモータを駆動する信号を作成し、PWM波形を用いてPWMチョッピングする。この場合PWMチョッピングとは、モータを駆動するための信号を細かくON/OFFすることをいう。信号を細かくON/OFFすると、PWMデューティに応じてブラシレスモータの各相に印加する電圧や電流を制御し、これらに脈動を生じさせることができる。電圧や電流を制御することができるので、出力トルクを制御することができる。電圧や電流はトルクパターンにしたがって制御されているので、出力トルクはトルクパターンにしたがって制御されていることになる。
【0041】
図3(C)は、その信号に基づいてブラシレスモータを制御した場合の各巻線の信号のON/OFFを表わす図である。たとえばロータ位置信号HUの立ち上がりエッジが検出されれば、U相上側のスイッチング素子IGBT151をONにする。次にロータ位置信号HVの立ち上がりエッジが検出されると、IGBT151をOFFにし、V相上側のスイッチング素子IGBT152をONにする。ロータ位置信号HWの立ち下がり信号が検出されると、V相下側のスイッチング素子からW相下側のスイッチング素子を転流させる。このようにロータ位置信号のエッジを検出するごとに順次インバータ回路のスイッチング素子を転流させて、ブラシレスモータを駆動する。本実施の形態においては信号をONする際のみにPWMチョッピングしているが、OFFする側にPWMチョッピングしてもよいし、ON/OFF両側であってもよい。
【0042】
S110にて、マイクロプロセッサ200は、ブラシレスモータを駆動する信号を作成し、PWMチョッピングすると、PWMチョッピングされた信号をベースドライバ部180へ出力する。
【0043】
S112にて、ベースドライバ部180は、出力された信号をIGBTの駆動用に変換する。S114にて、インバータ部150は、変換された信号に基づいてIGBT151、152、153、154、155、156のIGBTスイッチングを行う。S116にて、IGBTスイッチングにより、インバータ部150はモータ16へ電力を供給し、圧縮機170を駆動するので空気調和機が運転される。
【0044】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、制御装置100の動作について説明する。
【0045】
空気調和機を運転するための電力は、モータ駆動装置に接続された交流電源110から供給される(S100)。交流電力が供給されると、全波整流回路130と平滑回路140により直流化され、インバータ部150へ入力される(S102)。
【0046】
マイクロプロセッサ200は、検出部190を用いてロータの位置を表わす位置信号を検出する(S104)。位置信号を検出すると、マイクロプロセッサ200は、自身の内部の記憶回路に記憶されたトルクパターンを読み出し、PWMデューティを決定する(S106)。
【0047】
PWMデューティを決定すると、マイクロプロセッサ200は位置信号に基づいてブラシレスモータを駆動する信号を作成し、PWM波形を用いてPWMチョッピングする(S108)。
【0048】
ブラシレスモータを駆動する信号を作成し、PWMチョッピングすると、マイクロプロセッサ200は、PWMチョッピングされた信号をベースドライバ部180へ出力する(S110)。ベースドライバ部180は、出力された信号をIGBTの駆動用に変換する(S112)。インバータ部150は、変換された信号に基づいてIGBT151、152、153、154、155、156のIGBTスイッチングを行う(S114)。IGBTスイッチングにより、インバータ部150よりモータ16へ電力が供給され、圧縮機170が駆動されるので空気調和機が運転される(S116)。
【0049】
図6はトルク制御を行わない場合における負荷トルク、トルク補償量およびDC(Direct Current)電流波形を示す。図7は回転数変動がなるべく小さくなるようにトルク制御を行うトルク制御時の負荷トルク、トルク補償量およびDC電流波形を示す。図8は効率がなるべく高くなるようにトルク制御を行う本実施の形態にかかるトルク制御時の負荷トルク、トルク補償量およびDC電流波形を示す。図6に示すようにトルク制御を行わない場合のトルク補償量は、回転角に関係なく一定である。図7に示すように従来例のトルク制御時のトルク補償量は、負荷トルクと一致するように設定されている。図8に示すように本実施の形態にかかるトルク制御時のトルク補償量は、DC電流の脈動を小さくするため、トルク制御を行わない場合のDC電流の脈動とは逆位相で電流に脈動が生じるトルクパターンを使用している。
【0050】
図9を参照して、それぞれの場合について、圧縮機の振動振幅と効率とを比較した結果を示す。本実施の形態にかかる制御装置100により、DC電流の脈動が、トルク制御を行わない場合や従来のトルク制御の場合に比べはるかに小さくなる。DC電流の脈動が小さくなるので、損失が低減し図9(B)に示すように効率が向上する。振動についても、トルク制御なしの場合より、はるかに小さい。図9(A)に示すようにトルク制御時よりは振動が大きくなっているが、通常シングルロータリ型圧縮機は、空気調和機に組み込まれる際に、ゴムなどの弾性体により支持される。しかも、バネ効果を持たせた形状の冷媒配管によって熱交換器に接続されているので、これらの最適設計を行うことにより、振動のかなりの部分が弾性体、冷媒配管によって吸収される。そのため、従来例のトルク制御ほど圧縮機の振動を低減しなくても、振動が実用上問題とならない範囲内に収まればよい。
【0051】
以上のようにして、本実施の形態にかかる制御装置は、負荷トルクによる電流の脈動を打ち消す処理をすることができる。脈動を打ち消すことができるので、トルク制御を行わない場合に比べ、シングルロータリ型圧縮機の振動と騒音とを実用上問題とならない範囲内に抑えた上で高い効率でモータを駆動させることができる。振動と騒音とを抑えた上、高い効率でモータを駆動させるので、空気調和機などの大幅な省エネルギーと低振動化・低騒音化とを実現できる。その結果、回転に同期した脈動を有するモータを高い効率と低振動・低騒音とを両立して的確に駆動できるモータの制御装置を提供することができる。
【0052】
<変形例>
記憶回路には2種類のトルクパターンを記憶してもよい。2種類のトルクパターンとは、トルク制御を行わない場合に比べ効率が高くなる第1トルクパターンおよび第1トルクパターンほど効率は高くならないがモータおよび負荷装置の振動や音が小さくなる第2トルクパターンである。これにより、夏場の日中など電力使用量を抑えた高効率運転が要求される運転時は第1トルクパターンを使用し、睡眠時など低振動、低騒音が要求される運転時は第2トルクパターンを切換えて使用することができる。その結果、ユーザの希望にあわせて最適な条件で稼働できるモータの制御装置を提供することができる。
【0053】
トルクパターン切換時について、切換え後一定の時間が経過するまで、トルクパターンの切換またはモータの回転数の目標値の変更を禁止してもよい。これにより、モータの異常停止などが発生しないので、安定して切換えることができる。その結果、より安全に稼働できるモータの制御装置を提供することができる。
【0054】
各トルクパターンは、モータの負荷に応じて記憶されていてもよい。複数のトルクパターンから負荷トルクに応じたトルクパターンを選択してもよい。これにより、負荷トルクに応じて電圧や電流を制御するので、モータの効率を一層的確に向上させることができる。その結果、一層的確に駆動できるモータの制御装置を提供することができる。
【0055】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態にかかる制御装置のブロック図である。
【図2】 本発明の実施の形態にかかる電流などを制御する処理の制御の手順を示すフローチャートである。
【図3】 本発明の実施の形態にかかる検出部が誘起電圧によりロータ位置信号を検出する方法を示す図である。
【図4】 本発明の実施の形態にかかるステートと機械角および電気角との関係ならびに通電モードを示す図である。
【図5】 本発明の実施の形態にかかるマイクロプロセッサの記憶回路に記憶されたトルクパターンの例を表わす図である。
【図6】 トルク制御を行わない場合の負荷トルク、トルク補償量およびDC電流波形を示す図である。
【図7】 従来例のトルク制御を行う場合の負荷トルク、トルク補償量およびDC電流波形を示す図である。
【図8】 本発明の実施の形態にかかるトルク制御を行う場合の負荷トルク、トルク補償量およびDC電流波形を示す図である。
【図9】 本発明の実施の形態にかかるトルク制御を行う場合の圧縮機の振動振幅と効率と表わす図である。
【符号の説明】
100 制御装置、110 交流電源、120 力率改善回路、130 全波整流回路、140 平滑回路、150 インバータ部、160 3相ブラシレスモータ、170 圧縮機、180 ベースドライバ部、190 検出部、200マイクロプロセッサ。
Claims (10)
- 回転子を有するモータに電力を供給するための電力供給手段と、
前記回転子の機械角を検知するための検知手段と、
前記電力の電圧および電流のいずれかを補正する、前記機械角に対応する複数の補正値を予め記憶するための記憶手段と、
前記記憶手段が予め記憶する複数の補正値の内から1の補正値を選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した補正値に基づき、前記電力における電圧および電流のいずれかを制御するための制御手段とを含み、
前記記憶手段が予め記憶する複数の補正値は、
トルク制御時のトルク補償量が、前記トルク制御を行わない場合の負荷トルクに起因する電流の脈動を平準化させる、第1トルクパターンに基づいて定められる第1補正値と、
前記トルク制御時のトルク補償量が、前記トルク制御を行わない場合の負荷トルクと一致するように設定されている、第2トルクパターンに基づいて定められる第2補正値とを含む、モータの制御装置。 - 前記第1補正値は、該第1補正値によるトルク制御時のトルク補償量が発生させる電流の脈動の位相と、前記トルク制御を行わずにモータを運転させる場合の負荷トルクに起因する電流の脈動を上下反転させた脈動の位相とのずれが予め定められた範囲になる、前記第1トルクパターンに基づいて定められる値である、請求項1に記載のモータの制御装置。
- 前記第2補正値は、該第2補正値によるトルク制御時のトルク補償量の位相と、前記トルク制御を行わない場合の負荷トルクの位相とのずれが予め定められた範囲になる、前記第2トルクパターンに基づいて定められる値である、請求項1に記載のモータの制御装置。
- 前記電力供給手段は、インバータであって、
前記制御手段は、前記インバータに供給される直流電力の電圧および電流のいずれかを制御するための手段を含む、請求項1から3のいずれかに記載のモータの制御装置。 - 前記記憶手段は、前記第1補正値、前記第2補正値以外の他の補正値をもさらに記憶し、該記憶される他の補正値は、前記制御手段が前記電圧および電流のいずれかを制御することにより発生する電流脈動の位相と、前記トルク制御を行わない場合の負荷トルクに起因する電流脈動の位相とのずれが、予め定められた範囲に含まれるように定められ、
前記選択手段は、予め定められた条件に応じて、前記第1補正値、前記第2補正値および前記他の補正値の中のいずれかの値を選択する、請求項1から4のいずれかに記載のモータの制御装置。 - 前記条件は、前記モータに加わる負荷の影響を受ける条件である、請求項5に記載のモータの制御装置。
- 前記モータに加わる負荷の影響を受ける条件は、前記モータの負荷トルクに基づいて定められる条件である、請求項6に記載のモータの制御装置。
- 前記制御装置は、前記検知手段により検知された前記回転子の機械角に基づいて、前記回転子の角速度を算出するための算出手段をさらに含み、
前記モータに加わる負荷の影響を受ける条件は、前記回転子の角速度に基づいて定められる、請求項6に記載のモータの制御装置。 - 請求項1から8のいずれかに記載のモータの制御装置を含む、空気調和機。
- 請求項1から8のいずれかに記載のモータの制御装置を含む、冷蔵庫。
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