JP4273157B2 - 抗アレルギー効果のあるケフィア様炭酸含有ヨーグルトおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
ケフィアは、酵母菌と乳酸菌から構成されるカリフラワー状の形をしたケフィア粒といわれる種菌を乳に加え、発酵させてつくられる酸乳で、適度な酸味に加え、さわやかな炭酸感が味わえることが特徴である。またケフィアは保健的機能性に富んだ食品としても良く認知されており、今までに抗アレルギー、胃腸病、糖尿病、高血圧、抗癌作用などの効用が見つかっている。
特に近年、先進国を中心にアトピー性皮膚炎、花粉症、食物アレルギーといったI型アレルギー疾患の患者が年々増加していることから、ケフィアによるアレルギー治療は大いに期待されるところである。
それは、ケフィア粒を構成している酵母菌の中には乳糖を資化してアルコール発酵をおこない、その結果多量のエタノールと炭酸ガスを生成する菌種が含まれていることである。そのため、過剰に生成された炭酸ガスが原因で、しばしば容器の膨張や破裂が生じることが問題となっている。
この場合、乳糖非発酵性酵母菌は、乳酸菌による乳酸発酵の過程で蓄積されたグルコースやガラクトースを利用することでアルコール発酵をおこない、僅かな量のエタノールと炭酸ガスを生成することになる。
本発明の第2の目的は、そのようなケフィア様炭酸含有ヨーグルトを工業的に容易に製造できる方法を提供することである。
馬乳酒由来のサッカロミセス・セレビシエS4−A株は、薬物塗布によって皮膚炎を誘発させたアトピー性皮膚炎発症モデルマウスに対して皮膚炎症状の改善および皮膚炎発症にともなう痒みの抑制をもたらす微生物として、本発明者らが中華人民共和国・内蒙古自治区で採取した馬乳酒から分離した株であり、アトピー性皮膚炎、花粉症、通年性鼻炎などI型アレルギーの改善に確実に有効である上、前記S4−A株と乳糖発酵性乳酸菌を併用して乳を発酵させることにより、前記S4−A株による乳糖を利用したアルコール発酵が抑えられる一方、前記乳糖発酵性乳酸菌によって生成された乳糖分解物であるグルコースおよびガラクトースを、前記S4−A株が利用することによってアルコール発酵が僅かに生ずることから、過剰な炭酸ガス生成のないケフィア様炭酸含有ヨーグルトを工業的に容易に生産可能となり、特に製造後の過剰なガス生成が抑えられ、そのためこのケフィア様炭酸含有ヨーグルトの保存中において、容器の膨張や破裂を防止する効果があるという顕著な効果を奏する。
前記酵母菌サッカロミセス・セレビシエと、前記乳糖発酵性乳酸菌として、少なくともラクトバチルス・ブルガリカスとストレプトコッカス・サーモフィルスを含む混合乳酸菌を種菌に用いることでヨーグルトのカード形成までの時間を短縮できるので生産効率を向上できるとともに、過剰な炭酸ガス生成を確実に抑制でき、しかもI型アレルギーの改善に有効であるというさらなる顕著な効果を奏する。
本発明のケフィア様炭酸含有ヨーグルトを工業的に容易に製造できるという顕著な効果を奏する。
両種菌の接種量が多すぎると乳酸や炭酸による酸味・発泡感が強くなる恐れがあり、接種量が少なすぎると発酵までの時間がかかったり、炭酸感が弱くなったりする恐れがあるが、この接種量の範囲内でより優れた本発明のケフィア様炭酸含有ヨーグルトを工業的に容易に製造できるというさらなる顕著な効果を奏する。
本発明で使用する酵母菌サッカロミセス・セレビシエは、乳糖非発酵性で、且つ抗アレルギー作用を有する菌株であれば特に限定されるものではない。
本発明で使用する酵母菌S4−A株は、本発明者らが中華人民共和国・内蒙古自治区において昔から伝統的製法でつくられている馬乳酒から分離した酵母菌であり、本発明において好ましく使用できる。
本菌株は、馬乳酒を適宜希釈したのち、その希釈液をポテトデキストロース寒天培地上に塗沫することによって分離できる。そしてこのようにして得られる菌株は、食経験が豊富なことから、安全性には何ら問題のない菌株である。
このことから酵母菌S4−A株は、IgE抗体量の上昇によって引き起こされるI型アレルギー反応を改善する機能をもった微生物であると云える。
特に本菌株は乳糖非発酵性であることから、乳糖発酵性乳酸菌と併用することで過剰な炭酸ガス生成を抑えたケフィア様炭酸含有ヨーグルトの製造に使用できる。
一方、コスト面を考慮するならば、酵母エキス1〜2%およびぶどう糖1〜5%から成る液体培地で培養することが望ましく、同組成の液体培地で培養したS4−A株はそのまま種菌として使用できる。
また酵母菌サッカロミセス・セレビシエS4−A株の種菌は乳を成分とする培地でもつくることができ、その場合は、10%脱脂乳に酵母エキス1〜2%と本菌株の資化性糖であるグルコース、ガラクトースあるいはスクロースを1〜5%の範囲で任意に添加すればよい。
酵母菌S4−A株は、乳中の主たる糖である乳糖を分解してアルコール発酵をおこなうことはできないが、乳糖発酵性乳酸菌による乳酸発酵の過程で分解され乳中に蓄積される乳糖分解物、すなわちグルコースとガラクトースを資化することでアルコール発酵をおこない、その結果ヨーグルトに炭酸ガスとアルコールを付与することができる。
一方、前発酵タイプのヨーグルトは、種菌を接種したヨーグルトミックスをタンク内にて適温で発酵させたのち、冷却撹拌、容器充填の工程を経てつくることができる。
試験方法:アレルギー抑制効果
(酵母菌体の調製)
ポテトデキストロース寒天培地上で増殖した酵母菌サッカロミセス・セレビシエS4−A株のコロニーを、バクトトリプトン1.0%、酵母エキス0.5%、麦芽エキス0.3%、ぶどう糖5.0%から成る液体培地100mlに接種し、30℃で24時間振とう培養した。
続いてこの培養液を同じ成分組成の液体培地10リットルに移し、30℃で24時間通気撹拌培養した。培養終了後、遠心分離によって菌体を集め、さらに蒸留水で2回洗浄した。その後、この洗浄菌体を凍結乾燥処理することで粉末化し、得られた粉末菌体をマウスの投与試験に供した。
NC/Ngaマウス 雌性 5週齢 32匹
各群のマウスには、固型飼料(オリエンタル酵母工業(株))および水を自由摂取させた。
(1)対照群:蒸留水0.3ml/匹/日を74日間強制経口投与した群(8匹)
(2)S4−A株 0.1mg群:S4−A菌体0.1mg/匹/日を74日間強制経口投与した群(8匹)
(3)S4−A株 1.0mg群:S4−A菌体1.0mg/匹/日を74日間強制経口投与した群(8匹)
(4)S4−A株 10.0mg群:S4−A菌体10.0mg/匹/日を74日間強制経口投与した群(8匹)
S4−A株の粉末菌体は蒸留水で懸濁したのち、経口ゾンデで強制投与した。期間は、ピクリルクロライド[PCl:2, 4, 6 − trinitrochlorobenzene、東京化成工業(株)]で感作する14日前から感作後60日目まで連続投与した(計74日間)。
あらかじめ背部と腹部を毛狩りしておいたマウスの背部、腹部、後脚フットパットに、5%PCl溶液をそれぞれ50μl、50μl、25μlずつマイクロピペットで滴下し、塗布した(感作0日目)。
初回感作から4日目に1%PCl溶液を左右耳介部の表裏に10μlずつ計40μl、さらに背部に150μl塗布し、その後は7日毎に同じ感作を8回(56日間)繰り返した。
皮膚炎症状の観察は、Leung らのClinical Skin Condition Scoreをもとに評価した。
すなわち、PCl塗布後の耳介部および背部皮膚について(1)紅斑・発赤・出血、(2)浮腫・丘疹、(3)痂皮・乾燥、(4)組織剥離・糜爛の状態を各々4段階評価し(スコア0 ;無症状、スコア1 ;皮膚面積の25%未満の範囲で発症、スコア2 ;皮膚面積の25%以上50%未満の範囲で発症、スコア3 ;皮膚面積の50%以上の範囲で発症)、これらスコアの合計点数を臨床スコアとした。
背部および耳介部の臨床スコアの測定は、PCl溶液を塗布したのち、2日目および7日目に実施した。また耳介部については臨床スコアによる評価に加え、肥厚(耳の厚さ)の測定もThickness Dial Gage を用いて実施した。なお、耳介肥厚はPCl溶液塗布後1日目および6日目に測定した。
皮膚症状の悪化に伴う痒み度合いを調べるため、マウス用自動掻痒測定装置(MicroAct)を用いてマウスの背部引っかき行動を測定した。
最初に、マウスの後肢に小型強力磁石(横1mm、縦3mm)を埋め込む手術を行った。この手術は引っかき行動測定の最低1日以上前に行った。観察箱に入れたマウスが後肢で引っかき行動を起こすと後肢に埋め込まれた磁石の動きにより、観察箱内の磁場が変化する。その磁場の変化を観察箱の電磁コイルが感知して、情報をconnection boxに伝える。
Connection boxは送られてきた情報を整理して、パソコンの画面上に波形として表示する。この波形を解析することにより引っかき行動回数を測定することができる。
引っかき行動はPCl溶液塗布後24時間後に測定し、S4−A株菌体の投与は引っかき行動測定60分前に行い、続いて投与50分後にマウスを観察箱に移して10分間順化させのち、引っかき行動を60分間測定した。
(S4−A株による皮膚炎症状の緩和)
背部および耳介の皮膚炎症状の観察結果はそれぞれ図1と図2に示した。
図1に示すように、背部の皮膚炎症状を観察した結果、対照群では感作32日目以降症状の悪化が見られ臨床スコアが増加した。一方、S4−A株投与群の場合、0.1mg投与群では対照群に比べ臨床スコアの有意な低減効果は見られなかったものの、1mg投与群では感作41日目以降、10mg投与群では感作39日目以降、臨床スコアの増加が有意に抑制された。
引っかき行動回数の測定結果を図4に示した。対照群では感作初日に比べ、5日目以降で引っかき行動回数が有意に増加したのに対してS4−A株投与群では、0.1mg投与群において感作後26日目以降、1mg投与群においては感作後47日目以降で感作初日に比べ引っかき行動回数が有意に増加した。そして、10mg投与群では試験期間を通して引っかき行動の有意な増加は認められなかった。
次に、酵母菌サッカロミセス・セレビシエS4−A株および混合乳酸菌を種菌とする抗アレルギー作用のあるケフィア様炭酸含有ヨーグルトの製造実施例を示す。
濃度0.5%量の酵母エキスおよび1%量のぶどう糖を成分とする液体培地100mlにサッカロミセス・セレビシエS4−A株のコロニーを接種し、30℃で20時間浸とう培養した。こうして得られたS4−A株の種菌は6×107 コロニー/mlの生菌数であった。
ラクトバチルス・ブルガリカス菌およびストレプトコッカス・サーモフィルス菌の種菌は、いずれも定法に従い10%還元脱脂乳培地にて37℃、16時間培養したものを用いた。またラクトバチルス・アシドフィルス菌の種菌は、濃度0.1%量の酵母エキスを含む10%還元脱脂乳培地で37℃、16時間培養したものを用いた。
牛乳1000g、脱脂粉乳250g、生クリーム250g、キシリトール100g、水3200gを成分とするヨーグルトミックスを均質化(150Kg/ml)、殺菌処理(95℃、40秒)したのち、40℃まで冷却した。
次にこのミックスに酵母菌S4−A株の種菌50g、ラクトバチルス・ブルガリカス菌の種菌50g、ストレプトコッカス・サーモフィルス菌の種菌50g、ラクトバチルス・アシドフィルス菌の種菌50gを加えて10分間撹拌した後、鉄製スクリュー蓋付ガラス瓶に90gずつ充填し、蓋をした。
なお発酵は37℃の恒温室内で10時間おこない、発酵後は冷蔵庫内にて冷却・保存した。
このようにして出来上がったヨーグルトの品質は、酸度:1.0%、酵母菌数:3.5×106 コロニー/ml、乳酸菌数:1.5×109 コロニー/mlであった。さらにヨーグルト中のエタノール濃度をエタノール測定用Fキット(ロッシュ)で測定したところ、0.17%であった。
また、缶テスター(横山計器)を用いて容器内圧力を測定した結果、0.05MPaであった。
10人のパネラーを対象にした味覚試験では、全員がヨーグルト本来の酸味と風味に加え、酵母菌による炭酸味とアルコール味を感じた。
本発明の製造方法により本発明のケフィア様炭酸含有ヨーグルトを工業的に容易に製造できるという顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。
Claims (4)
- 乳糖非発酵性で、且つ抗アレルギー作用を有する酵母菌サッカロミセス・セレビシエである馬乳酒由来のサッカロミセス・セレビシエS4−A株(特許生物寄託センター寄託番号FERM AP−21124)と乳糖発酵性乳酸菌を含有することを特徴とする、製造後の過剰な炭酸ガス生成を抑えた、I型アレルギー症状の改善に有効なケフィア様炭酸含有ヨーグルト。
- 前記乳糖発酵性乳酸菌が、少なくともラクトバチルス・ブルガリカスとストレプトコッカス・サーモフィルスを含む混合乳酸菌であることを特徴とする請求項1記載のケフィア様炭酸含有ヨーグルト。
- 獣乳に対して、必要に応じて生クリーム、脱脂粉乳、乳清パウダーを含む乳成分、酵母菌サッカロミセス・セレビシエである馬乳酒由来のサッカロミセス・セレビシエS4−A株(特許生物寄託センター寄託番号FERM AP−21124)の非発酵性糖、保型剤、離水防止剤を適量添加混合して調製される原料を主成分として含む主原料に対して、必須の種菌として乳糖非発酵性で且つ抗アレルギー作用を有する前記酵母菌サッカロミセス・セレビシエと乳糖発酵性乳酸菌を併用して所定量接種して醗酵せしめることを特徴とする製造後の過剰な炭酸ガス生成を抑えた、I型アレルギー症状の改善に有効なケフィア様炭酸含有ヨーグルトの製造方法。
- 前記酵母菌サッカロミセス・セレビシエと乳糖発酵性乳酸菌の接種量が、前記主原料に対してそれぞれ0.5〜10質量%であることを特徴とする請求項3記載のケフィア様炭酸含有ヨーグルトの製造方法。
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