JP4270918B2 - 新規カルボニル還元酵素及びこれをコードする遺伝子、ならびにこれらを利用した光学活性アルコールの製造方法 - Google Patents

新規カルボニル還元酵素及びこれをコードする遺伝子、ならびにこれらを利用した光学活性アルコールの製造方法 Download PDF

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  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カルボニル基含有化合物を還元して、医薬、農薬等の中間体原料として産業上有用な化合物である光学活性アルコール類に変換する活性を有するポリペプチド、該ポリペプチドをコードするDNA、該DNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNA、該組換え体DNAを保有する形質転換体に関し、さらに該形質転換体、該形質転換体培養物または該形質転換体処理物を用いた光学活性アルコール類の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
(E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシ−ヘプト−6−エン酸エステル類を化学的に製造する方法としては、例えば、特許文献1に以下に示す製造ルートが知られている。
【0003】
【化7】
Figure 0004270918
【0004】
また、特許文献2には、光学活性なシッフ塩基を用いて製造する方法も報告されている。
またさらに、特許文献3には、(R)−3−tert-ブチルジメチルシリルオキシ−6−ジメトキシホスフィニル−5−オキソヘキサン酸メチルエステルを用いて極低温にて製造する方法も報告されている。
一方、より安価にまた副生産物の少ない方法として、微生物の菌体及び/または該菌体処理物を用いて、カルボニル基を有する化合物から立体選択的に還元し、光学活性なアルコール体を生成する方法を上記化合物の製造に応用する方法が考えられるが、カルボニル基の側鎖にキノリン骨格を有する化合物を用いる方法として、非特許文献1には、以下に示す反応をミクロバクテリウム キャンポクエマドエンシス(Microbacterium campoquemadoensis)MB5614株を用いて行えることが記載されている。
【0005】
【化8】
Figure 0004270918
【0006】
また、非特許文献2には、以下に示す反応をパン酵母を用いて行えることが記載されている。
【0007】
【化9】
Figure 0004270918
【0008】
しかしながら、(E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−キノリン−3−イル]−3,5−ジオキソヘプト−6−エン酸エステル類のように、カルボニル基のα位にオレフィンが存在する上に、カルボニル基が連続して存在する化合物については、微生物を用いて立体選択的に還元できるという例は知られていなかった。
【0009】
【非特許文献1】
Appl microbiol Biotechnol(1998)49:p.709-717
【非特許文献2】
Bioorg Med Chem Lett, vol8, p1403-(1998)
【特許文献1】
特開平1−279866号公報
【特許文献2】
特開平8−92217号公報
【特許文献3】
特開平8−127585号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、(3R,5S)−(E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エン酸エステル類を工業的に安価に製造できる新規な製造方法を開発することが望まれていた。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、(3R,5S)−(E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エン酸エステル類の製造方法について鋭意検討した結果、原料となるカルボニル基含有化合物の還元反応を触媒する新規酵素を単離し、組換え菌を用いて発現させた該酵素を、原料となるカルボニル基含有化合物に作用させることにより、高い光学純度かつ高濃度で目的物を得ることができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は、
(1) 下記(A)または(B)の何れかのアミノ酸配列を有するポリペプチド。
(A)配列番号1に記載のアミノ酸配列。
(B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1から複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されているアミノ酸配列であって、カルボニル還元酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列。;
(2) 下記(a)から(e)の何れかの塩基配列を有するDNA。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列。
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1から複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されているアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、カルボニル還元酵素活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列。
(c)配列番号2に記載の塩基配列。
(d)配列番号2に記載の塩基配列において、1から複数個の塩基が欠失、付加または置換されている塩基配列であって、カルボニル還元酵素活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列。
(e)配列番号2に記載の塩基配列もしくはその相補配列またはそれらの一部とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、カルボニル還元酵素活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列。;
(3) (2)に記載のDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNA。;
(4) (3)に記載の組換え体DNAを保有する形質転換体。;
(5) (2)に記載のDNAを染色体DNAに組み込んで得られる形質転換体。;
(6)(4)または(5)に記載の形質転換体細胞、該形質転換体細胞培養物、該形質転換体細胞処理物からなる群より選ばれるいずれかを用いてカルボニル基含有化合物を不斉還元することを特徴とする光学活性アルコールの製造方法。;
及び
(7)カルボニル基含有化合物が、下記式(II’)
【0013】
【化10】
Figure 0004270918
【0014】
(式中、Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を示す)及び下記式(III’)
【0015】
【化11】
Figure 0004270918
【0016】
(式中、Rは前記と同義である)で表される光学活性体であることを特徴とする(6)に記載の製造方法に存する。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するもの、又はそのホモログであってカルボニル還元酵素活性を有するものである。
本明細書において、カルボニル還元酵素活性とは、カルボニル基含有化合物中のカルボニル基を不斉還元して光学活性なアルコール類とする活性をいう。このような活性は、カルボニル基含有化合物を基質として含有し、さらにNADPHを補酵素として含有する反応系において、酵素として、目的のポリペプチド、形質転換体細胞、形質転換体細胞培養物または形質転換体細胞処理物を作用させてNADPH減少初速度を測定することにより測定することができる。
【0018】
本発明のポリペプチドは、本発明によってそのアミノ酸配列および該アミノ酸配列をコードする塩基配列が明らかになったので、後述するように本発明のポリペプチドのアミノ酸配列の一部又は全部をコードする塩基配列を元にして作製したプローブを用いて、カルボニル基の還元活性を有する任意の微生物から還元酵素をコードするDNAを単離した後、それを元に通常の遺伝子工学的手法を用いて得ることができる。また、本発明を完成するにあたってなされたように、カルボニル基の還元活性を有する微生物、すなわち、カルボニル還元酵素をコードするDNAを有する微生物、例えば、オガタエア属酵母の培養物より精製することも出来る。
【0019】
オガタエア属酵母としては、例えば、オガタエア・ミヌタ(Ogataea minuta)が特に本発明のカルボニル還元酵素の産生能に優れ、この酵母は、例えばIFO
1473株として財団法人発酵研究所より入手する事が出来る。
微生物の培養物からの本発明のポリペプチドの取得方法としては、通常の酵素の精製方法を用いることができ、例えば、以下の方法で行うことができる。上記微生物をYM培地等の真菌の培養に用いられる一般的な培地で培養することで十分に増殖させた後に回収し、DTT(Dithiothreitol)等の還元剤や、フェニルメタンスルホニルフルオリド(phenylmethansulfonyl fluoride;PMSF)の様なプロテアーゼ阻害剤を加えた緩衝液中で破砕して無細胞抽出液とする。無細胞抽出液から、タンパク質の溶解度による分画(有機溶媒による沈殿や硫安などによる塩析など)や、陽イオン交換、陰イオン交換、ゲル濾過、疎水クロマトグラフィー、キレート、色素、抗体等を用いたアフィニティークロマトグラフィー等を適宜組み合わせることにより精製することが出来る。例えば、DEAEセファロースを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー、オクチルセファロースを用いた疎水クロマトグラフィー、Q−セファロースを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー、スーパーデックス200を用いたゲル濾過等を経て電気泳動的にほぼ単一バンドまで精製することが出来る。
【0020】
このように精製されたオガタエア・ミヌタ(Ogataea minuta)に由来する本発明のポリペプチドは、典型的には以下の性状を備えたものである。
(1)至適pH
5.0〜6.0
(2)分子量
ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(以下、SDS−PAGEと省略)による分子量測定で約27,000Daである。
さらにこの酵素は以下の性状で特徴付ける事が出来る。
(3)安定pH範囲
pH5.5〜6.5 の範囲で比較的安定である
(4)作用適温の範囲
至適温度は60〜70℃である。
(5)温度安定性
40℃まで比較的安定である。
(6)阻害
本酵素は水銀(I)イオン、鉛(II)イオンにより阻害を受ける。
上記の方法で単離された本発明のポリペプチドは、単なるカルボニル基含有化合物だけでなく、ジカルボニル化合物も不斉還元する能力を有する優れた酵素である。
【0021】
本発明のポリペプチドのホモログとは、カルボニル還元酵素活性を害さない範囲内において配列番号1に記載のアミノ酸配列に1から複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されたアミノ酸配列を有するものである。ここで複数個とは、具体的には20個以下、好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下である
【0022】
ちなみに上記ポリペプチドのホモロジー検索は、例えば、DNA Databank of JAPAN(DDBJ)を対象に、FASTA programやBLAST programなどを用いて行うことができる。配列番号1に記載のアミノ酸配列を用いてDDBJを対象にBLAST programを用いてホモロジー検索を行った結果、既知のタンパク質の中でもっとも高いホモロジーを示したのは、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)のprobable short chain dehydrogenase(T41540)の37.4%であった。
【0023】
また、本発明のDNAは、上記ポリペプチドをコードするDNAまたはそのホモログであって、カルボニル還元酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAである。
上記ポリペプチドをコードするDNAとしては、具体的には配列番号2に記載の塩基配列を含むものが挙げられる。
【0024】
本発明のポリペプチドをコードするDNAは、例えば、以下のような方法によって単離することができる。
まず、本発明のポリペプチドを上記の方法等にて精製後、N末端アミノ酸配列を解析し、さらに、リジルエンドペプチダーゼ、V8プロテアーゼなどの酵素により切断後、逆相液体クロマトグラフィーなどによりペプチド断片を精製後、プロテインシーケンサーによりアミノ酸配列を解析することにより複数のアミノ酸配列を決める。
【0025】
決定したアミノ酸配列を元にPCR用のプライマーを設計し、カルボニル還元酵素生産微生物株の染色体DNAもしくは、cDNAライブラリーを鋳型とし、アミノ酸配列から設計したPCRプライマーを用いてPCRを行うことにより本発明のDNAの一部を得ることができる。さらに、得られたDNA断片をプローブとして、カルボニル還元酵素生産微生物株の染色体DNAの制限酵素消化物をファージ、プラスミドなどに導入し、大腸菌を形質転換して得られたライブラリーやcDNAライブラリーを利用して、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーションなどにより、本発明のDNAを得ることができる。また、PCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解析し、得られた配列から、既知のDNAの外側に伸長させるためのPCRプライマーを設計し、カルボニル還元酵素生産微生物株の染色体DNAを適当な制限酵素で消化後、自己環化反応によりDNAを鋳型として逆PCRを行うことにより(Genetics 120, 621-623 (1988))、また、RACE法(Rapid Amplification of cDNA End、「PCR実験マニュアル」p25-33, HBJ出版局)などにより本発明のDNAを得ることも可能である。
【0026】
なお本発明のDNAは、以上のような方法によってクローニングされるゲノムDNA、あるいはcDNAの他、本発明によりその塩基配列が明らかになったため、配列番号2に基づく化学合成等によって得ることもできる。本発明のポリペプチドをコードするDNAホモログとは、カルボニル還元酵素活性を害さない範囲内において配列番号1に記載のアミノ酸配列に1個から複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするDNAを含む。上記ポリペプチドをコードするDNAホモログとしては、具体的には配列番号2に記載の塩基配列がコードするポリペプチドにおいて、カルボニル還元酵素活性を害さない範囲内において、配列番号2に記載の塩基配列に1から複数個の塩基が欠失、付加または置換された塩基配列を含むものが挙げられる。ここで複数個とは、具体的には60個以下、好ましくは30個以下、より好ましくは10個以下である。
【0027】
当業者であれば、配列番号2に記載のDNAに部位特異的変異導入法(Nucleic Acid Res.10,pp.6487(1982)、Methodsin Enzymol.100,pp.448(1983)、Molecular Cloning 2ndEdt., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)PCR A Practical Approach IRL Press pp.200(1991))等を用いて適宜置換、欠失、挿入及び/または付加変異を導入することにより本発明のDNAホモログを得ることが可能である。
【0028】
また、本発明のDNAのホモログは、本発明のポリペプチドをコードするDNAまたはその一部をプローブとして用いて、カルボニル基の還元活性を有する任意の微生物から調整したDNAに対し、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等によりストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションを行い、ハイブリダイズするDNAを得ることによっても取得できる。本発明のポリペプチドをコードするDNAの「一部」とは、プローブとして用いるのに十分な長さのDNAのことであり、具体的には15bp以上、好ましくは50bp以上、より好ましくは100bp以上のものである。
【0029】
各ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989.( 以後 "モレキュラークローニング第2版" と略す)等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0030】
本明細書において「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列」とは、DNAをプローブとして使用し、ストリンジェントな条件下、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAの塩基配列を意味し、ストリンジェントな条件としては、例えば、コロニーハイブリダイゼーション法およびプラークハイブリダイゼーション法においては、コロニーあるいはプラーク由来のDNAまたは該DNAの断片を固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0Mの塩化ナトリウム存在下65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2×SSC溶液(1×SSCの組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄する条件を挙げることができる。
【0031】
上記のようにして単離された、本発明のポリペプチドをコードするDNAを公知の発現ベクターに発現可能に挿入することにより、カルボニル還元酵素発現ベクターが提供される。また、この発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養することにより、カルボニル還元酵素を該形質転換体から得ることができる。発現ベクターとしては、本発明のDNAを発現可能なベクターであれば特に限定されず、形質転換する宿主微生物の種類などに応じて適宜選択可能である。あるいは、形質転換体は、公知の宿主の染色体DNAに本発明のDNAを発現可能に組み込むことによっても得ることができる。
【0032】
形質転換体の作製方法としては、具体的には、微生物中において安定に存在するプラスミドベクターやファージベクター中に、本発明のDNAを導入し、構築された発現ベクターを該微生物中に導入するか、もしくは、直接宿主ゲノム中に本発明のDNAを導入し、その遺伝情報を転写・翻訳させることができる。
【0033】
このとき、本発明のDNAが宿主微生物中で発現可能なプロモーターを含んでいない場合には、適当なプロモーターを本発明のDNA鎖の5'-側上流に、より好ましくはターミネーターを3'-側下流にそれぞれ組み込むことができる。このプロモーター及びターミネーターとしては、宿主として利用する微生物中において機能することが知られているプロモーター及びターミネーターであれば特に限定されず、これら各種微生物において利用可能なベクター、プロモーター及びターミネーターなどに関しては、例えば「微生物学基礎講座8遺伝子工学・共立出版」、特に酵母に関しては、Adv. Biochem. Eng. 43, 75-102 (1990)、Yeast 8, 423-488(1992)、などに詳細に記述されている。
【0034】
本発明のカルボニル還元酵素を発現させるための形質転換の対象となる宿主微生物としては、宿主自体が本反応に悪影響を与えない限り特に限定されることはなく、具体的には以下に示すような微生物を挙げることができる。
【0035】
エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、セラチア(Serratia)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属などに属する宿主ベクター系の確立されている細菌;
ロドコッカス(Rhodococcus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属などに属する宿主ベクター系の確立されている放線菌;
サッカロマイセス(Saccharomyces)属、クライベロマイセス(Kluyveromyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、ピキア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属などに属する宿主ベクター系の確立されている酵母;
ノイロスポラ(Neurospora)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、トリコデルマ(Trichoderma)属などに属する宿主ベクター系の確立されているカビ。
【0036】
上記微生物の中で宿主として好ましくは、エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属であり、特に好ましくは、エシェリヒア(Escherichia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属である。
形質転換体の作製のための手順、宿主に適合した組換えベクターの構築および宿主の培養方法は、分子生物学、生物工学、遺伝子工学の分野において慣用されている技術に準じて行うことができる(例えば、Sambrookら、モレキュラー・クローニング、Cold Spring Harbor Laboratories)。
【0037】
以下、具体的に、好ましい宿主微生物、各微生物における好ましい形質転換の手法、ベクター、プロモーター、ターミネーターなどの例を挙げるが、本発明はこれらの例に限定されない。
エシェリヒア属、特に大腸菌エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)においては、プラスミドベクターとしては、pBR、pUC系プラスミドが挙げられ、lac(β-ガラクトシダーゼ)、trp(トリプトファンオペロン)、tac、 trc (lac、trpの融合)、λファージ pL、pRなどに由来するプロモーターなどが挙げられる。また、ターミネーターとしては、trpA由来、ファージ由来、rrnBリボソーマルRNA由来のターミネーターなどが挙げられる。
【0038】
バチルス属においては、ベクターとしては、pUB110系プラスミド、pC194系プラスミドなどを挙げることができ、また、染色体にインテグレートすることもできる。プロモーター及びターミネーターとしては、アルカリプロテアーゼ、中性プロテアーゼ、α−アミラーゼ等の酵素遺伝子のプロモーターやターミネーターなどが利用できる。
シュードモナス属においては、ベクターとしては、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)などで確立されている一般的な宿主ベクター系や、トルエン化合物の分解に関与するプラスミド、TOLプラスミドを基本にした広宿主域ベクター(RSF1010などに由来する自律的複製に必要な遺伝子を含む)pKT240(Gene, 26, 273-82(1983))を挙げることができる。
【0039】
ブレビバクテリウム属、特にブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)においては、ベクターとしては、pAJ43(Gene 39, 281 (1985))などのプラスミドベクターを挙げることができる。プロモーター及びターミネーターとしては、大腸菌で使用されている各種プロモーター及びターミネーターが利用可能である。
コリネバクテリウム属、特にコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)においては、ベクターとしては、pCS11(特開昭57-183799号公報)、pCB101(Mol. Gen. Genet. 196, 175 (1984)などのプラスミドベクターが挙げられる。
【0040】
サッカロマイセス(Saccharomyces)属、特にサッカロマイセス・セレビジアエ(Saccharomyces cerevisiae) においては、ベクターとしては、YRp系、YEp系、YCp系、YIp系プラスミドが挙げられる。また、アルコール脱水素酵素、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素、酸性フォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ホスホグリセレートキナーゼ、エノラーゼといった各種酵素遺伝子のプロモーター、ターミネーターが利用可能である。
シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属においては、ベクターとしては、Mol. Cell. Biol. 6, 80 (1986)に記載のシゾサッカロマイセス・ポンベ由来のプラスミドベクターを挙げることができる。特に、pAUR224は、宝酒造から市販されており容易に利用できる。
【0041】
アスペルギルス(Aspergillus)属においては、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger) 、アスペルギルス・オリジー (Aspergillus oryzae) などがカビの中で最もよく研究されており、プラスミドや染色体へのインテグレーションが利用可能であり、菌体外プロテアーゼやアミラーゼ由来のプロモーターが利用可能である(Trends in Biotechnology 7, 283-287 (1989))。
【0042】
また、上記以外でも、各種微生物に応じた宿主ベクター系が確立されており、それらを適宜使用することができる。
また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が確立されており、特に蚕を用いた昆虫などの動物中(Nature 315, 592-594 (1985))や菜種、トウモロコシ、ジャガイモなどの植物中に大量に異種タンパク質を発現させる系、及び大腸菌無細胞抽出液や小麦胚芽などの無細胞タンパク質合成系を用いた系が確立されており、好適に利用できる。
【0043】
さらに本発明は、上記の方法などで得られる本発明の形質転換体細胞、該形質転換体細胞培養物、該形質転換体細胞処理物を、反応基質である下記一般式(I)、(II)及び(III)で表される化合物に作用させることにより、該化合物のカルボニル基を不斉還元させ、光学活性アルコールを製造する方法に関する。形質転換体細胞、該形質転換体細胞培養物、該形質転換体細胞処理物はいずれかを単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
下記式(I)
【0044】
【化12】
Figure 0004270918
【0045】
(式中、Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を示す)
で表される化合物、下記式(II)
【0046】
【化13】
Figure 0004270918
【0047】
(式中、Rは前記と同義である)
で表される化合物、及び、下記式(III)
【0048】
【化14】
Figure 0004270918
【0049】
(式中、Rは前記と同義である)
本発明の製造方法に用いられる原料である、上記式(I)〜(III)で表される化合物において、Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基等の、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基である。
アリール基としては、フェニル基、メシチル基、ナフチル基等の、アルキル基で置換されていても良いフェニル基又はナフチル基が挙げられる。
上記Rとして好ましくは、C1〜C4のアルキル基、ベンジル基又はフェニル基であり、より好ましくはC1〜C4のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0050】
本発明の製造方法において、上記式(II)および(III)で表される化合物は少なくとも下記式(II')および下記式(III')で表される光学活性体を含む。上記式(II)および(III)で表される化合物のうち下記式(II')および下記式(III')の含有量が多いことが好ましい。さらに上記式(II)および(III)で表される化合物は下記式(II')および下記式(III')からなることが好ましい。下記式(II')および下記式(III')で表される化合物においてRは前記と同義である。
【0051】
【化15】
Figure 0004270918
【0052】
(式中、Rは前記と同義である)
【0053】
【化16】
Figure 0004270918
【0054】
(式中、Rは前記と同義である)
なお、本発明の製造方法により式(I)〜(III)及び(II')〜(III')で表される化合物から得られる産物は混合物でもよいが、少なくとも下記式(IV)を含む。下記式(IV)で表される化合物においてRは前記と同義である。
【0055】
【化17】
Figure 0004270918
【0056】
(式中、Rは前記と同義である)
式(I)〜(III)及び(II')〜(III')で表される化合物は、特開平1−279866号公報、特開平8−127585号公報、特開平5−178841号公報等に記載された方法と公知の方法を組み合わせることによって、任意に製造することができる。これらの化合物は1種あるいは2種以上を組み合わせて原料として使用することができる。
【0057】
原料として、式(I)で表される化合物を用いて式(IV)で表される化合物を製造する場合には、その製造中間体として、式(II')で表される化合物を経由する場合と、式(III')で表される化合物を経由する場合がある。
ついては、式(I)で表される化合物から、あらかじめ式(II')で表される化合物及び式(III')で表される化合物を製造し、それを単離し、さらに式(IV)で表される化合物へ誘導してもよいし、式(II')で表される化合物及び式(III')で表される化合物を単離することなく、そのまま式(IV)で表される化合物を製造してもよい。
【0058】
また、反応基質は、通常、基質濃度が0.01〜90w/v%、好ましくは0.1〜30w/v%の範囲で用いられる。これらは、反応開始時に一括して添加しても良いが、酵素の基質阻害があった場合の影響を減らすと言う点や生成物の蓄積濃度を向上させるという観点からすると、連続的もしくは間欠的に添加することが望ましい。
【0059】
本発明の製造方法において、カルボニル基含有化合物に上記形質転換体を作用させるに当たっては、該形質転換体細胞をそのまま、該形質転換体細胞培養物、あるいは該形質転換体細胞を公知の方法によって処理して得られる該形質転換体細胞処理物、例えば、該形質転換体細胞をアセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン等の有機溶媒や界面活性剤により処理したもの、凍結乾燥処理したもの、物理的または酵素的に破砕したもの等の菌体処理物、該形質転換体細胞中の本発明の酵素画分を粗製物あるいは精製物として取り出したもの、さらには、これらをポリアクリルアミドゲル、カラギーナンゲル等に代表される担体に固定化したものを用いることができる。
【0060】
また、本発明の製造方法においては、補酵素NADP+もしくはNADPHを添加するのが好ましく、通常、0.001mM〜100mM、好ましくは0.01〜10mM添加する。
上記補酵素を添加する場合には、NADPHから生成するNADP+をNADPHへの再生させることが生産効率向上のため好ましく、再生方法としては、1)宿主微生物自体のNADP+還元能を利用する方法、2)NADP+からNADPHを生成する能力を有する微生物やその処理物、あるいは、グルコース脱水素酵素、ギ酸脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、アミノ酸脱水素酵素、有機酸脱水素酵素(リンゴ酸脱水素酵素など)などのNADPHの再生に利用可能な酵素(再生酵素)を反応系内に添加する方法、3)形質転換体を製造するに当たり、NADPHの再生に利用可能な酵素である上記再生酵素類の遺伝子を本発明のDNAと同時に宿主に導入する方法が挙げられる。
【0061】
このうち、上記1)の方法においては、反応系にグルコースやエタノール、ギ酸などを添加する方が好ましい。
また、上記2)の方法においては、上記再生酵素類を含む微生物、該微生物菌体をアセトン処理したもの、凍結乾燥処理したもの、物理的または酵素的に破砕したもの等の菌体処理物、該酵素画分を粗製物あるいは精製物として取り出したもの、さらには、これらをポリアクリルアミドゲル、カラギーナンゲル等に代表される担体に固定化したもの等を用いてもよく、また市販の酵素を用いても良い。
この場合、上記再生酵素の使用量としては、具体的には、本発明のカルボニル還元酵素に比較して、酵素活性で0.01〜100倍、好ましくは0.5〜20倍程度となるよう添加する。
【0062】
また、上記再生酵素の基質となる化合物、例えば、グルコース脱水素酵素を利用する場合のグルコース、ギ酸脱水素酵素を利用する場合のギ酸、アルコール脱水素酵素を利用する場合のエタノールもしくはイソプロパノールなど、の添加も必要となるが、その添加量としては、反応原料であるカルボニル基含有化合物に対して、0.1〜20倍モル当量、好ましくは1〜5倍モル当量添加する。
【0063】
また、上記3)の方法においては、本発明のDNAと上記再生酵素類のDNAを染色体に組み込む方法、単一のベクター中に両DNAを導入し、宿主を形質転換する方法及び両DNAをそれぞれ別個にベクターに導入した後に宿主を形質転換する方法を用いることができるが、両DNAをそれぞれ別個にベクターに導入した後に宿主を形質転換する方法の場合、両ベクター同士の不和合性を考慮してベクターを選択する必要がある。
【0064】
単一のベクター中に複数の遺伝子を導入する場合には、プロモーター及びターミネーターなど発現制御に関わる領域をそれぞれの遺伝子に連結する方法やラクトースオペロンのような複数のシストロンを含むオペロンとして発現させることも可能である。
【0065】
本発明の製造方法は、反応基質及び本発明の形質転換体細胞、該形質転換体細胞培養物または該形質転換体処理物、並びに、必要に応じて添加された各種補酵素及びその再生システムを含有する水性媒体中もしくは該水性媒体と有機溶媒との混合物中で行われる。上記水性媒体としては、リン酸ナトリウムやリン酸カリウムなどを用いた緩衝液などを用いることができ、その緩衝液に有機溶媒や、界面活性剤などの通常の酵素反応に用いられる任意成分を適宜加えたものを用いることができる。有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)やテトラヒドロフラン(THF)等の水溶性溶媒や酢酸ブチルやヘキサン等の非水溶性有機溶媒などが挙げられ、反応基質の溶解度が高い物を好ましく使用することができる。界面活性剤としてはTween80やシュガーエステルなどが挙げられる。
【0066】
本発明の方法は、通常、4〜60℃、好ましくは10〜45℃の反応温度で、通常pH3〜11、好ましくはpH5〜8で行われる。また、膜リアクターなどを利用して行うことも可能である。
本発明の方法により生成する光学活性アルコールは、反応終了後、反応液中の菌体やタンパク質を遠心分離、膜処理などにより分離した後に、酢酸エチル、トルエンなどの有機溶媒による抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、晶析等のなどを適宜組み合わせることにより精製を行うことができる。
【0067】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、その要旨を越えない限り本発明の技術分野における通常の変更をすることができる。
尚、(E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エン酸エステル類は、目的とする3R,5S体の他に異性体として、3S,5R体、3R,5R体及び3S,5S体が存在し、(E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エン酸エチルエステル(以後、DOLEと略す)を例として示すと、その構造式は以下の通りである。
【0068】
3S,5R−DOLE及び3R,5S−DOLEはシン(Syn)体のDOLEであり、 3S,5S−DOLE及び3R,5R−DOLEはアンチ(anti)体のDOLEである。
実施例中、目的生成物である3R,5S体の純度をエナンチオマー過剰率で示すことがあるが、本実施例中では、エナンチオマー過剰率を(3R,5S体 - 3S,5R体)/(3R,5S体 + 3S,5R体)(%e.e.)で示した。
【0069】
【化18】
Figure 0004270918
【0070】
<製造例1> (E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−キノリン−3−イル]−3,5−ジオキソヘプト−6−エン酸エチルエステル(以後、DOXEと略す)の合成
攪拌機、滴下ロートおよび温度計を付けた500mLの四つ口フラスコに、(E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−キノリン−3−イル]−5−ヒドロキシ−3−オキソヘプト−6−エン酸エチルエステル(以後、5−MOLEと略す)5.02g(11.22mmol)およびアセトン420mLを加え攪拌する。調製されたJones酸化剤(濃硫酸3mLと酸化クロム3.35gを混合させた後、水で25mLまで希釈することにより得られた試剤)10.5mLを0℃で20分を要して滴下し、氷冷下で2時間攪拌を行った後、メタノール10mLをゆっくり加えて反応を停止した。次に反応混合液を減圧下、アセトンを留去させた後、酢酸エチル250mLを加え、得られた溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液60mLで2回、引き続き飽和食塩水溶液60mLで2回抽出・分液した後、酢酸エチル溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製して、標記化合物3.03g(収率:60.6%)を得た。
【0071】
1H-NMR(300MHz, CDCl3, δppm): 7.79-7.19(8H, m), 7.71(1H, d), 6.03(1H, d), 5.51(1H,s), 4.21(2H, q), 3.40(2H, s), 2.35-2.40(1H, m), 1.39-1.41 (2H, m), 1.28(3H, t), 1.07-1.09(2H, m).
【0072】
<製造例2> 5S-(E)−7−〔2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−キノリン−3−イル〕−5−ヒドロキシ−3−オキソ−ヘプト−6−エン酸エチルエステル(以後、5S−MOLEと略す)の合成
減圧下加熱乾燥した後に窒素ガスを導入したシュレンク管に、(S)−2−〔N−3―メチル−5−tert-ブチルサリチデン)アミノ〕−3−メチル−1−ブタノ−ル0.87g(3.3mmol)、塩化メチレン5mlおよびチタンテトラエトキシド0.63ml(6.0mmol)を添加した後、室温で1時間攪拌混合した。該シュレンク管を−50℃に冷却後、(E)−3−〔2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)- キノリン−3−イル〕− プロプ−2−エン−1−ア−ル0.95g(3.0mmol)を塩化メチレン2mlに溶解して滴下し、5分間攪拌した後、更にジケテン0.51g(6mmol)を添加し、−50℃を保ちながら22時間攪拌して反応させた。得られた反応混合液を、塩化メチレン25mlと0.24M重曹水25mlの混合溶液中に添加し、2時間、室温で、激しく攪拌し2層溶液を得た。得られた2層溶液は分液し、水層については塩化メチレン10mlで抽出を2回行った。塩化メチレン層と塩化メチレン抽出液とを合わて塩化メチレン溶液を得た。該塩化メチレン溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィ−(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=3:2)で精製して、5S-(E)−7−〔2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−キノリン−3−イル〕−5−ヒドロキシ−3−オキソ−ヘプト−6−エン酸エチルエステル(5S−MOLE)0.75gを得た(光学純度:73%ee、(E)−3−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−キノリン−3−イル]−プロプ−2−エン−1−ア−ルに対する収率:56%)。
【0073】
<実施例1> カルボニル還元酵素の単離
オガタエア・ミヌタ 変種ノンファーメンタス(Ogataea minuta var nonfermentans)IFO 1473株を20LのYM培地(グルコース24g、酵母エキス3g、麦芽エキス3g、ペプトン5g/L、 pH 6.0)で培養し、遠心分離により菌体を調製した。得られた湿菌体のうち300gを50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0、1mM DTT)で澱懸し、ダイノーミル(Dyno−Mill社製)により破砕後、遠心分離により菌体残渣を除去し、無細胞抽出液を得た。この無細胞抽出液に12%w/vのポリエチレングリコール(PEG)6000を添加し、遠心分離により上清を得た。その上清を標準緩衝液(10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、1mM DTT)で平衡化したDEAEセファロース6FF(2.6cmx28cm)に添加した。標準緩衝液でカラムを洗浄した後、さらに0.07M塩化ナトリウムを含む標準緩衝液で洗浄後、0.07〜0.18M塩化ナトリウムの勾配溶出を行った。溶出した画分を回収し、カルボニル還元酵素活性測定を行った。
【0074】
カルボニル還元酵素活性測定は以下の反応液組成:酵素活性測定画分 200μL、にNADPH 8mMの水酸化カリウム 0.1mMの水溶液10μL、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)25μL、20g/L DOXE(DMSO溶液)10μL添加したものを30℃、一夜振とう反応させることで行った。活性検出は以下方法で行った。反応終了後の反応液に酢酸エチルを0.5mL加え激しく混合し、遠心分離にて有機層と水層とに分離した。有機層を別の容器に移し、溶媒を濃縮遠心機で留去し、乾固された生成物を酢酸エチル0.01mLで溶解し、薄層クロマトグラフィー(TLC)をおこなった。TLCはシリカゲルプレート(メルク社製silica gel 60 F 254)を用い、展開溶媒はヘキサン/酢酸エチル=1/1を用いた。展開終了後、UVランプにて生成物の確認をした。化合物(I)はRf=0.76〜0.86、化合物(II)および化合物(III)は0.54〜0.61、化合物(IV)(式中、R=エチル基の化合物:DOLE)はRf=0.33である。
【0075】
カルボニル還元酵素活性は、0.13M塩化ナトリウム付近にピークが見られた。溶出した活性画分を回収し、硫安を終濃度0.3Mになるまで添加し、0.3M硫安を含む標準緩衝液(10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、1mM DTT)で平衡化したオクチルセファロースCL4B(0.8cm×20cm)に添加し、硫安濃度を0.3〜0Mの勾配溶出を行った。カルボニル還元酵素活性は、0M硫安付近にピークが見られた。
【0076】
溶出したピーク部分を回収し、限外濾過により標準溶液まで脱塩、濃縮した後同緩衝液で平衡化したMonoQ HR5/5に添加し、同緩衝液及び0.05M 塩化ナトリウムを含む同緩衝液で洗浄後、0.05M〜0.25M塩化ナトリウムの濃度勾配溶出を行った。カルボニル還元酵素活性は、0.17M 塩化ナトリウム画分に溶出したため、この画分を回収し、濃縮した。濃縮した酵素液をスーパーデックス200 HR10/30を用い、0.15M塩化ナトリウムを含む標準緩衝液でゲル濾過を行った。ゲル濾過により得られた活性画分の分子量は、約10.7万Daであった。
【0077】
また、上記活性画分をポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により解析した結果、ほぼ単一バンドであり、その分子量は約2.7万Daであった。
また、該酵素を種々のケトンやアルデヒドと反応させることにより、具体的には、基質100mMのイソプロパノール溶液を5μL、NADPH 8mM及び水酸化カリウム 0.1mMの水溶液10μLを0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で総量250μLの反応液としたものの中でのNADPH減少初速度を測定することにより、その還元活性を測定した。このときの2,2,2−トリフルオロアセトフェノンでの吸光度変化量を100としたときの比活性を表1に示した。
【0078】
【表1】
Figure 0004270918
【0079】
該酵素の至適pHは、pHの異なる複数の緩衝液中で、2,2,2−トリフルオロアセトフェノン還元活性を測定することで求めた。具体的には、0.1Mのリン酸カリウム緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液及びクエン酸緩衝液において、それぞれpHの異なるものを用意し、活性測定した。反応の至適pHは5.0〜6.5であった。
また、反応温度だけを変化させて、2,2,2−トリフルオロアセトフェノン還元活性を測定し、カルボニル還元酵素の作用至適温度を測定したところ、至適温度は60〜70℃であった。
【0080】
該酵素のpH安定性は、0.1Mのリン酸カリウム緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液及びクエン酸緩衝液において異なるpHのものを複数用意し、それぞれ30℃、30分間インキュベートし、残存活性を測定したところ、pH5.5〜6.5において最も安定であった。
該酵素の温度安定性は、pH7.0で20mMのリン酸緩衝液中、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃及び80℃の温度でそれぞれ10分間放置した後、2,2,2−トリフルオロアセトフェノン還元活性を測定することにより調べた。それによると本発明の酵素は40℃まで79%以上の残存活性を示し、50℃以上で急速に失活しはじめ、70℃では活性が全くなくなることがわかった。
【0081】
また、該酵素を種々の試薬中で30℃、10分間処理した後、2,2,2−トリフルオロアセトフェノン還元活性を測定したところ、該酵素は、硝酸水銀や塩化鉛のような水銀(I)イオン、鉛(II)イオン存在下で活性が顕著に阻害された。
【0082】
<実施例2> カルボニル還元酵素の部分アミノ酸配列の解析
実施例1で得られたカルボニル還元酵素を含む画分を脱塩、濃縮後、リジルエンドペプチダーゼを用いて、30℃で終夜処理を行った。消化したペプチドを逆相HPLC (アマシャム-ファルマシア製uRPC C2/C18、 46mm × 100mm) を用い、0.1% トリフルオロ酢酸 (TFA) 中でアセトニトリルのグラジエント溶出によりペプチドを分離し、分取した。分取したペプチドピーク3種をFrac20,27及び30とし、それぞれエドマン法によりアミノ酸配列の解析を行った。Frac20,27及び30のそれぞれのアミノ酸配列は配列番号3、4及び5に示した。同様にカルボニル還元酵素を含む画分を脱塩後エドマン法によりN末端アミノ酸の解析を行い、結果を配列番号6で示した。
【0083】
<実施例3> オガタエア・ミヌタ 変種ノンファーメンタス(Ogataea minuta var nonfermentans)IFO 1473株由来の本発明のDNAの配列解析及び形質転換体の作製
オガタエア・ミヌタ 変種ノンファーメンタス(Ogataea minuta var nonfermentans)IFO 1473株をYM培地で培養し、菌体を調製した。
菌体からの総RNAの精製は、MagExtractor(東洋紡社製)を用いて行った。精製したRNAをもとにしてSuperScriptII(Life Technology社製)を用いてFirst−Strand cDNAを合成した。方法はそれぞれ添付の説明書通りに行った。
【0084】
実施例2で得られたN末端アミノ酸配列を元にセンスデジェネレイト(degenerate)プライマー及び配列番号3、4及び5のアミノ酸配列を元にそれぞれアンチセンスのデジェネレイト(degenerate)プライマーを計4種類合成した。それぞれの塩基配列を配列番号7、8、9、10に示した。N末端と3つの部分アミノ酸配列の組み合わせ(3通り)でプライマーを選び、 プライマーを各400pmol、dNTP 0.4mmol、上記で合成したオガタエア・ミヌタ 変種ノンファーメンタス(Ogataea minuta var nonfermentans)IFO 1473株のcDNA1μL、TaKaRa Taq用10×緩衝液 (宝酒造社製)5μL及び耐熱性DNAポリメラーゼ2ユニット(宝酒造社製、商品名「TaKaRa Taq」)を含む50μLの反応液を用い、変性(94℃、30秒) 、アニール(50℃、30秒)、伸長(72℃、1分)を30サイクル、PTC-200 Peltier Thermal Cycler (MJ Research社製)を用いて行った。PCR反応液の一部をアガロースゲル電気泳動により解析した結果、配列番号7のプライマーと配列番号8のプライマー、配列番号7のプライマーと配列番号9のプライマー、配列番号7のプライマーと配列番号10との組み合わせにおいて特異的と思われるバンドが検出できた。
【0085】
上記で得られた3種類のDNA断片を、アガロースゲル電気泳動を行い、目的とするバンドの部分を切り出しGel Extraction kit(QIAGEN社製)にて精製して回収した。得られたDNA断片を、pGEM-T Vector System(Promega社製)によりTAクローニングし、大腸菌DH5α株(東洋紡社製)を形質転換した。形質転換株を1%バクトトリプトン、0.5%バクト酵母エキス及び1%塩化ナトリウムを含む培地(以下、LB培地と略す)にアンピシリン(100μg/mL)を加え、1.5%バクトアガーでプレート化したもの上で生育させ、いくつかのコロニーを用いて、ベクターの配列より合成された配列番号11及び12をプライマーとしてコロニーダイレクトPCRを行い、挿入断片のサイズを確認した。目的とするDNA断片が挿入されていると考えられるコロニーを100μg/mLアンピシリンを含む液体LB培地で培養し、Mini-Prep (QIAGEN製) によりプラスミドを精製した。配列番号7のプライマーと配列番号8のプライマー、配列番号7のプライマーと配列番号9のプライマー、配列番号7のプライマーと配列番号10のプライマーとの組み合わせから得られたプラスミドをそれぞれphir21-23、phir21-25、phir21-27とした。
【0086】
精製したプラスミドを用いて、挿入DNAの塩基配列をダイターミネーター法により解析した。決定されたphir21-23、phir21-25、phir21-27の各挿入断片部分の塩基配列をそれぞれ配列番号:13、14、15として示した。
上記塩基配列を元に設計したプライマーを用いて、オガタエア・ミヌタ 変種ノンファーメンタス(Ogataea minuta var nonfermentans)IFO 1473株から調製された総RNAに対し、5’RACE法及び3’RACE法を行った。
【0087】
5’RACE法は、配列番号16、17で示される塩基配列のプライマーをGene Specific Primer(以下GSPと略す)1,2として用い、5’RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends、ver2.0(Life Technology社製)にて行った後、それをテンプレートとして再度配列番号18で示される塩基配列のプライマーをGSPとして5’RACE法を行った。
3’RACE法については、配列番号19で示される塩基配列のプライマーをGSPとして用い、3’RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends(Life Technology社製)を用いて行った。なお、各RACE法はおのおの添付されている取扱説明書に基づいておこなった。
【0088】
得られたDNA断片はpGEM-T Vector System(Promega社製)によりTAクローニングし、大腸菌DH5α株(東洋紡社製)を形質転換した。形質転換株を100μg/mLアンピシリンを含むLB培地プレート上で生育させ、いくつかのコロニーを用いて、ベクターの配列より合成された配列番号11、12をプライマーとして用いてコロニーダイレクトPCRを行い、挿入断片のサイズを確認した。目的とするDNA断片が挿入されていると考えられるコロニーを100μg/mLアンピシリンを含む液体LB培地で培養し、Mini-Prep (QIAGEN製) によりプラスミドを精製した後に、ダイターミネーター法によりDNA塩基配列の解析を行った。
【0089】
上記5’RACE及び3’RACEで得られたphir21-25の5'上流の塩基配列及び3'下流の塩基配列と、配列番号14に記載の塩基配列情報とを元に作成したDNA配列についてGenetyx(ソフトウェア開発株式会社製)を用いてORF検索を行い、本発明のDNA配列及びコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:20に示される塩基配列及びアミノ酸配列に仮決定した。
【0090】
配列番号20に記載のアミノ酸配列を用いてDDBJを対象にBLAST programを用いてホモロジー検索を行った結果、既知のタンパク質の中でもっとも高いホモロジーを示したのは、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)のprobable short chain dehydrogenase(T41540)の37.4%であった。引き続き、上記配列番号20に記載の配列を元に、クローニング用のプライマーとして配列番号:21に記載の塩基配列及び配列番号:22に記載の塩基配列を合成し、上記プライマーを各50pmol、dNTP200nmol、オガタエア・ミヌタ 変種ノンファーメンタス(Ogataea minuta var nonfermentans)IFO 1473株のcDNA 1μL 、KOD-DNApolymerase用10×緩衝液 (東洋紡社製)5μL、KOD-DNA polymerase2.5ユニット(東洋紡社製)を含む50μLの反応液を用い、変性(96℃、30秒)、アニール(54℃、30秒)、伸長(74℃、1分)を30サイクル、PTC-200 Peltier Thermal Cycler (MJ Research社製) を用いて行った。PCR反応液の一部をアガロースゲル電気泳動により解析した結果、特異的と思われるバンドが検出できた。
【0091】
上記で検出されたバンド部分をQIAGEN Gel Extraction kit(キアゲン社製)にて回収した。回収したDNA断片を制限酵素HindIIIとEcoRIで消化し、アガロースゲル電気泳動を行い、目的とするバンドの部分を切り出し、再度、Qiagen Gel Extraction kit (キアゲン社製) により精製後回収した。得られたDNA断片を、EcoRI、及びHindIIIで消化したpKK223-3(ファルマシア社製)とTakara Ligation Kitを用いて、ライゲーションし、大腸菌JM109株を形質転換した。
【0092】
形質転換体をアンピシリン(50μg/mL)を含むLB培地プレート上で生育させ、いくつかのコロニーを用いて、ベクターの配列より合成された配列番号23で示される塩基配列のプライマー及び配列番号24で示される塩基配列のプライマーを用いてコロニーダイレクトPCRを行い、挿入断片のサイズを確認した。目的とするDNA断片が挿入されていると考えられる形質転換体を50μg/mLのアンピシリンを含む液体LB培地で培養し、Qiagen 500(キアゲン社製)を用いてプラスミドを精製し、pKK223-3OCR1とした。
プラスミドに挿入したDNAの塩基配列をダイターミネーター法により解析したところ、挿入されたDNA断片は、配列番号:2で表される塩基配列からなる遺伝子の5'上流にクローニングのための6塩基が、3'下流にオガタエア・ミヌタ変種ノンファーメンタス(Ogataea minuta var nonfermentans)IFO 1473株由来のダブルストップコドン(TAGTAAT)とクローニングのため6塩基が付与されたDNA断片であった。
pKK233−3OCR1に挿入されたDNA断片の塩基配列を配列番号:25に、該DNA断片がコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:1に示した。
【0093】
<実施例5> 本発明のDNAによって形質転換した大腸菌を用いたDOXEからのDOLEの製造
実施例4で得られた形質転換体をアンピシリン(50μg/mL)、0.1mM イソプロピル β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を含むLB培地で37℃で17時間生育させ、得られた菌体ブロス2mLを遠心分離により集菌後、180μLの100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に懸濁した後に、下記に示す方法により、(E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−キノリン−3−イル]−3,5−ジオキソヘプト−6−エン酸エチルエステル(DOXE)を基質として還元活性を確認した。
【0094】
上記菌体懸濁物に2g/L NADP+ (オリエンタル酵母社製)10μL、トルエン 1μLを添加後、5分間ボルテックスミキサーで攪拌した。50%グルコース 10μL、グルコースデヒドロゲナーゼ溶液(天野製薬社製;25U/mL) 10μL、上記基質をDMSOに20g/Lで溶解させたもの50μL(基質 1mg分)を添加後40℃で20時間振とう反応させた。反応終了後の反応懸濁液にアセトニトリル1.75mLを添加して希釈後遠心し、上清上の生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。HPLCの条件は以下の通りである。
カラム:MCIGEL CHP2MGM(三菱化学社製)
溶離液:メタノール/アセトニトリル/水/リン酸=800/100/100/1
流速:0.6ml/min
検出:UV254nm
温度:60℃
この結果、収量は319μgであり、収率は31.9%であった。
【0095】
また、光学純度の測定は、反応終了後の反応液に酢酸エチルを0.5mL加え激しく混合し、遠心分離にて有機層と水層とに分離した。有機層を別の容器に移し、溶媒を濃縮遠心機で留去し、乾固された生成物を酢酸エチル0.01mLで溶解し、薄層クロマトグラフィー(TLC)をおこなった。TLCはシリカゲルプレート(メルク社製silica gel 60 F 254)を用い、展開溶媒はヘキサン/酢酸エチル=1/1を用いた。
【0096】
展開終了後、UVランプにて生成物の確認をした。化合物(I)はRf=0.76〜0.86 、化合物(II)および化合物(III)は0.54〜0.61、化合物(IV)(式中、R=エチル基の化合物:以下、DOLEと略す)はRf=0.33である。DOLEのTLC上のスポットを掻き取りイソプロパノール0.25mLで溶出し、遠心分離後上清を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて光学純度およびTLC掻き取りサンプルの濃度を分析した。
HPLCの条件は以下の通りである。
カラム:ダイセルCHIRALCEL AD
溶離液:ヘキサン/エタノール/トリフルオロ酢酸=900/100/1
流速:1ml/min
検出:UV254nm
温度:室温
その結果、光学純度は100%e.e.、anti体は0.6%であった。
また該遺伝子を含まないプラスミドpKK223-3を持つ大腸菌を0.1mMIPTGを添加したLB培地で終夜培養した菌体を、同様に反応させてみたが上記生成物は認められなかった。
【0097】
<実施例6> 本発明のDNAによって形質転換した大腸菌を用いた5S−MOLEからのDOLEの製造
実施例4で得られた形質転換体をアンピシリン(50μg/mL)、0.1mM イソプロピル β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を含むLB培地で37℃で17時間生育させ、得られた菌体ブロス2mLを遠心分離により集菌後、180μLの100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に懸濁した後に、下記に示す方法により、5S−(E)−7−〔2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−キノリン−3−イル〕−5−ヒドロキシ−3−オキソ−ヘプト−6−エン酸エチルエステル(5S−MOLE)を基質として還元活性を確認した。
【0098】
上記菌体懸濁物に2g/L NADP+ (オリエンタル酵母社製)10μL、トルエン 1μLを添加後、5分間ボルテックスミキサーで攪拌した。50%グルコース 10μL、グルコースデヒドロゲナーゼ溶液(天野製薬社製;25U/mL) 10μL、上記基質をDMSOに20g/Lで溶解させたもの50μL(基質 1mg分)を添加後40℃で20時間振とう反応させた。反応終了後の反応懸濁液をアセトニトリルで希釈後遠心し、上清上の生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。HPLCの条件は以下の通りである。
カラム:コスモシル 5C18MS−II 4.6x250mm(ナカライ社製)
溶離液:メタノール/アセトニトリル/水/リン酸=350/150/500/1
流速:0.6ml/min
検出:UV254nm
温度:50℃
この結果、収量は 807μgであり、収率は 80.7%、anti体は 15.3%であった。
【0099】
また、光学純度の測定は、反応終了後、反応液に酢酸エチルを0.5mL加え激しく混合し、遠心分離にて有機層と水層とに分離した。有機層を別の容器に移し、溶媒を濃縮遠心機で留去し、乾固された生成物を酢酸エチル0.01mLで溶解し、薄層クロマトグラフィー(TLC)をおこなった。TLCはシリカゲルプレート(メルク社製silica gel 60 F 254)を用い、展開溶媒はヘキサン/酢酸エチル=1/1を用いた。
展開終了後、UVランプにて生成物の確認をした。化合物(I)はRf=0.76〜0.86 、化合物(II)および化合物(III)は0.54〜0.61、化合物(IV)(式中、R=エチル基の化合物:以下、DOLEと略す)はRf=0.33である。DOLEのTLC上のスポットを掻き取りイソプロパノール0.25mLで溶出し、遠心分離後上清を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて光学純度およびTLC掻き取りサンプルの濃度を分析した。
HPLCの条件は以下の通りである。
カラム:ダイセルCHIRALCEL AD
溶離液:ヘキサン/エタノール=95/5
流速:1ml/min
検出:UV254nm
温度:50℃
その結果、光学純度は97%e.e.、anti体は15.2%であった。
また該遺伝子を含まないプラスミドpKK223-3を持つ大腸菌を0.1mMIPTGを添加したLB培地で終夜培養した菌体を、同様に反応させてみたが上記生成物は認められなかった。
【発明の効果】
医薬、農薬等の中間体原料として産業上有用な化合物である光学活性アルコール類を高光学純度かつ高収率で得ることができる製造方法を提供する。
【配列表】
Figure 0004270918
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Claims (7)

  1. 下記(A)または(B)の何れかのアミノ酸配列を有するポリペプチド。
    (A)配列番号1に記載のアミノ酸配列。
    (B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1から複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されているアミノ酸配列であって、カルボニル還元酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列。
  2. 下記(a)から(d)の何れかの塩基配列を有するDNA。
    (a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列。
    (b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1から複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されているアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、カルボニル還元酵素活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列。
    (c)配列番号2に記載の塩基配列。
    (d)配列番号2に記載の塩基配列において、1から複数個の塩基が欠失、付加または置換されている塩基配列であって、カルボニル還元酵素活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列。
  3. 請求項2に記載のDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNA。
  4. 請求項3に記載の組換え体DNAを保有する形質転換体。
  5. 請求項2に記載のDNAを染色体DNAに組み込んで得られる形質転換体。
  6. 下記式(I)
    Figure 0004270918
    (式中、Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を示す)で表される化合物、下記式(II)
    Figure 0004270918
    (式中、Rは前記と同義である)で表される化合物、及び、下記式(III)
    Figure 0004270918
    (式中、Rは前記と同義である)で表される化合物からなる群より選ばれるカルボニル基含有化合物に、請求項4または5に記載の形質転換体、該形質転換体培養物、該形質転換体処理物からなる群より選ばれるいずれかを作用させてカルボニル基含有化合物を不斉還元させることを特徴とする下記式(IV)
    Figure 0004270918
    (式中、Rは前記と同義である)で表される化合物の製造方法。
  7. 式(II)及び式(III)で表される化合物が、それぞれ下記式(II')
    Figure 0004270918
    (式中、Rは前記と同義である)及び下記式(III')
    Figure 0004270918
    (式中、Rは前記と同義である)で表される光学活性体であることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
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