JP4264302B2 - 銀合金スパッタリングターゲットとその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スパッタリング法で薄膜を形成する際に使用される銀合金スパッタリングターゲットに関し、詳細には、膜厚や成分組成の均一な薄膜を形成することのできる銀合金スパッタリングターゲットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
純銀または銀合金の薄膜は、高反射率かつ低電気抵抗率という特性を有するため、光学記録媒体の反射膜や、反射型液晶ディスプレイの電極・反射膜等に適用されている。
【0003】
しかし純銀の薄膜は、空気中に長時間曝された場合や高温高湿下に曝された場合等に薄膜表面が酸化されやすく、また銀結晶粒が成長したり、銀原子が凝集したりする等の現象が生じやすく、これらに起因して、導電性の劣化や反射率の低下が生じたり、基板との密着性が劣化したりするといった問題が発生する。従って、最近では純銀本来の高い反射率を維持しつつ、耐食性等を向上させるべく合金元素添加による改善が多数試みられている。そして、この様な薄膜の改善に併せて、銀合金薄膜形成に用いるターゲットについても検討がなされており、例えば、特許文献1には、Agを主成分とし、耐候性を向上させるためPdを0.1〜3wt%含有させ、更にPd添加による電気抵抗率の増加を抑制すべくAl、Au、Pt、Cu、Ta、Cr、Ti、Ni、Co、Siよりなる群から選択される複数の元素を0.1〜3wt%の範囲内で含有させたスパッタリングターゲットが電子部品用金属材料の一つとして示されている。
【0004】
特許文献2には、スパッタリング時のガス雰囲気中の酸素等による悪影響を防止し、かつ耐湿性を改善すべく金を0.1〜2.5at%添加し、更に金添加による光透過率の低下を抑制するため銅を0.3〜3at%の範囲内で含有させた銀合金スパッタリングターゲット、または銀ターゲットの一部に金および銅を該比率となるよう埋め込んだ複合金属からなるスパッタリングターゲットが提案されている。
【0005】
更に特許文献3には、銀または銀合金のスパッタリングターゲットであって、スパッタリングによる成膜の際にターゲットのスパッタレートを高めて、効率よくスパッタリングを行うため、ターゲットの結晶構造を面心立方構造とし、かつ結晶配向が((111)+(200))/(220)面配向度比で2.20以上となるようにすることが提案されている。
【0006】
ところで、スパッタリング法で形成された薄膜を、例えば片面2層構造のDVDにおける半透過反射膜として使用する場合、膜厚は、100Å程度と非常に薄く、該薄膜の膜厚の均一性が、反射率、透過率等の特性に大きな影響を与えることから、特に膜厚のより均一な薄膜を形成することが重要視されている。また次世代の光学記録媒体の反射膜として使用する場合、記録時のレーザーパワーによる熱を速く伝導させなければならないことから、優れた光学特性のみならず、熱伝導率が面内で均一でかつ高いことも要求されているが、該特性を満たすには、薄膜の膜厚が均一であること、更には薄膜の成分組成が均一であることが条件として挙げられる。
【0007】
この様に光学記録媒体の反射膜や半透過反射膜等として用いられる薄膜をスパッタリング法で形成するにあたっては、従来技術の如くターゲットの組成や結晶配向度比を制御したとしても、光学記録媒体の反射膜として高反射率や高熱伝導率等の特性を発揮し得る、膜厚や成分組成の均一な薄膜を確実に得ることができないことから、ターゲットの更なる改善を要すると考える。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−192752号公報
【特許文献2】
特開平9−324264号公報
【特許文献3】
特開2000−239835号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、膜厚や成分組成の均一な薄膜をスパッタリング法で形成するのに有用な銀合金スパッタリングターゲットを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る銀合金スパッタリングターゲットとは、任意の4箇所についてX線回折法によって結晶配向強度を求め、最も高い結晶配向強度(Xa)を示す方位が4測定箇所で同一であり、かつ各測定箇所における最も高い結晶配向強度(Xa)と2番目に高い結晶配向強度(Xb)との強度比(Xb/Xa)のばらつきが4測定箇所で20%以下であるところに特徴を有するものである。前記2番目に高い結晶配向強度(Xb)を示す方位が、4測定箇所で同一であることを好ましい形態とする。
【0011】
尚、前記「最も高い結晶配向強度(Xa)と2番目に高い結晶配向強度(Xb)の強度比(Xb/Xa)のばらつき」とは、次の様にして求める。即ち、任意の4箇所についてX線回折法で結晶配向強度を求め、各測定箇所にて、最も高い結晶配向強度(Xa)と2番目に高い結晶配向強度(Xb)の強度比(Xb/Xa)の4測定箇所の平均:AVE(Xb/Xa)を求める。次に4測定箇所の(Xb/Xa)の最大値をMAX(Xb/Xa)とし、(Xb/Xa)の最小値をMIN(Xb/Xa)として求めた下記(2)または(3)の絶対値のうち、大きい方を%で示したものである。
|MAX(Xb/Xa)−AVE(Xb/Xa)|/AVE(Xb/Xa) …(2)
|MIN(Xb/Xa)−AVE(Xb/Xa)|/AVE(Xb/Xa) …(3)
また、本発明の銀合金スパッタリングターゲットは、平均結晶粒径が100μm以下で、最大結晶粒径が200μm以下を満たすものであれば、該ターゲットを用いて形成される薄膜の特性が均一となるので好ましい。特に、結晶粒界または/および結晶粒内に、銀と合金元素の化合物相が存在する銀合金スパッタリングターゲットの場合、該化合物相の円相当直径が、平均で30μm以下であり、かつ該円相当直径の最大値が50μm以下であることを好ましい形態とする。
【0012】
尚、前記「平均結晶粒径」とは、次の様な測定方法で求められるものである。即ち、▲1▼50〜100倍の光学顕微鏡観察写真に、図1に示すように顕微鏡観察写真の縁の端から端まで直線を複数本引く。直線数は4本以上とすることが定量精度の観点から望ましく、直線の引き方は、例えば図1(a)の様な井桁状や図1(b)の様な放射状とすることができる。次に▲2▼直線上にある結晶粒界の数nを測定する。そして▲3▼下記式(4)から平均結晶粒径dを求め、複数本の直線のdから平均値を求める。
【0013】
d=L/n/m …(4)
[式中、dは1本の直線から求めた平均結晶粒径を示し、Lは1本の直線の長さを示し、nは1本の直線上の結晶粒界の数を示し、mは倍率を示す]
また、前記「最大結晶粒径」は、50〜100倍の光学顕微鏡の視野で任意に5箇所以上を観察し、全視野の合計20mm2の範囲内で最大の結晶についてその粒径を円相当直径換算して求めたものである。
【0014】
前記「結晶粒界または/および結晶粒内に存在する銀と合金元素の化合物相の円相当直径の平均」とは、100〜200倍の光学顕微鏡の視野で任意に5箇所以上を観察し、全視野で合計20mm2の範囲内にある各化合物相を円相当直径に換算し、これらの平均値を求めたものである。また「銀と合金元素の化合物相の円相当直径の最大値」とは、前記合計20mm2の範囲内の最大化合物相の円相当直径をいう。
【0015】
本発明は、上記規定の結晶配向を満たす銀合金スパッタリングターゲットを製造する方法も規定するものであって、加工率30〜70%で冷間加工または温間加工を行い、その後、保持温度:500〜600℃、かつ保持時間:0.75〜3時間の条件で熱処理を行うことを要件とする。尚、結晶粒径の小さな銀合金スパッタリングターゲットを得るには、前記熱処理を、
保持温度:500〜600℃、かつ
保持時間:下記式(1)の範囲内で行うことが推奨される。
【0016】
(−0.005×T+ 3.5)≦t≦(−0.01×T+ 8) …(1)
[式(1)中、Tは保持温度(℃)、tは保持時間(時間)を示す]
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前述した様な状況の下で、スパッタリングにて膜厚や成分組成の均一な薄膜を形成することのできる銀合金スパッタリングターゲット(以下、単に「ターゲット」ということがある)を得るべく様々な観点から検討を行った。その結果、ターゲットの結晶配向を制御することが特に有効であることを見出し、本発明に想到した。以下、本発明でターゲットの結晶配向を規定した理由について詳述する。
【0018】
まず本発明は、ターゲットの任意の4箇所で結晶配向強度をX線回折法で求めた場合の、最も高い結晶配向強度(Xa)を示す方位が4測定箇所で同一であることを必須要件とする。
【0019】
即ち、本発明は、最も高い結晶配向強度を示す方位を特に規定せず、(111)面、(200)面、(220)面、(311)面等のいずれが最も高い結晶配向強度を示す方位であってもよいが、この最高結晶配向強度を示す方位が任意の4測定箇所で同一である必要がある。この様に、任意の位置における最高結晶配向強度を示す方位が同一であれば、スパッタリング時に基板に到達する原子数が基板面内で均一となり、膜厚の均一な薄膜を得ることができる。
【0020】
尚、最も高い結晶配向強度を示す方位が(111)面であれば、スパッタリング時の成膜速度を高めることができるので好ましい。
【0021】
更に、各測定箇所における最も高い結晶配向強度(Xa)と2番目に高い結晶配向強度(Xb)の強度比(Xb/Xa)のばらつきが4測定箇所で20%以下であることが好ましい。
【0022】
上記の様に最も高い結晶配向強度を示す方位がターゲットの任意の位置において同一であったとしても、最も高い結晶配向強度(Xa)と2番目に高い結晶配向強度(Xb)の強度比(Xb/Xa)のばらつきが大きすぎる場合には、スパッタリング時に基板に到達する原子数が基板面内で不均一となりやすく、均一な膜厚の薄膜が得られにくいからである。前記強度比のばらつきが10%以下であることがより好ましい。
【0023】
尚、ターゲットの任意の位置において上記ばらつきが規定範囲内であれば、2番目に高い結晶配向強度(Xb)の方位が測定箇所間で異なっていてもよいが、前記2番目に高い結晶配向強度(Xb)を示す方位が、4測定箇所で同一である方が、基板に到達する原子数が基板面内で均一となりやすく、膜厚の均一な薄膜が得られ易いので好ましい。
【0024】
この様に結晶配向を規定するとともに、銀結晶の結晶粒径や結晶粒界または/および結晶粒内に存在する銀と合金元素の化合物相のサイズを制御すれば、スパッタリングで膜厚や成分組成の均一な薄膜を形成できるので好ましい。
【0025】
具体的には、ターゲットの平均結晶粒径を100μm以下とし、かつ最大結晶粒径を200μm以下とするのがよい。
【0026】
上記平均結晶粒径の小さいターゲットとすることで、膜厚の均一な薄膜を容易に形成でき、結果として光学記録媒体等の性能を高めることができる。前記平均結晶粒径は、75μm以下とするのがより好ましく、更に好ましくは50μm以下である。
【0027】
また、平均結晶粒径が100μm以下であっても、極端に粒径の大きい結晶粒が存在する場合には、形成された薄膜の膜厚が局所的に不均一となりやすい。従って、性能の局所的な劣化が抑制された光学記録媒体を得るには、薄膜形成に用いるターゲットの結晶粒径を最大でも200μm以下に抑えるのがよく、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
【0028】
銀合金スパッタリングターゲットの結晶粒界または/および結晶粒内に、銀と合金元素の化合物相が存在する場合には、該化合物相のサイズも併せて制御するのがよい。
【0029】
上記化合物相のサイズがより小さい方が、形成された薄膜の成分組成が均一となり易いため望ましく、化合物相のサイズを円相当直径で示した場合に、その平均が30μm以下であるのがよい。より好ましくは円相当直径換算で平均20μm以下である。
【0030】
またそのサイズが平均で30μm以下であっても、極端に大きい化合物相が存在する場合には、スパッタリングの放電状態が不安定となりやすく、成分組成の均一な薄膜が得られ難くなる。従って最大化合物相は、円相当直径で50μm以下であるのがよく、より好ましくは30μm以下である。
【0031】
尚、本発明は、前記化合物相の成分組成等まで特定するものでなく、例えばAg−Nd系合金ターゲットに存在するAg51Nd14やAg2Nd等、Ag−Y系合金ターゲットに存在するAg51Y14やAg2Y等、Ag−Ti系合金ターゲットに存在するAgTi等が、制御の対象となる化合物相として挙げられる。
【0032】
上記規定の結晶配向を満たすターゲットを得るには、製造工程において、加工率30〜70%で冷間加工または温間加工を行うのがよい。この様に冷間加工または温間加工を施すことによって、ほぼ製品形状となるまで成形できるとともに、加工歪が蓄積され、その後の熱処理で再結晶させて結晶配向の均一化を図ることができる。
【0033】
加工率が30%未満の場合には付与する歪量が不足するため、その後に熱処理を施したとしても部分的にしか再結晶されず、結晶配向の均一化を十分に達成できない。好ましくは35%以上の加工率で冷間加工または温間加工を行うのがよい。一方、加工率が70%を超えると、熱処理時の再結晶速度が速くなりすぎ、この場合も結果として、結晶配向のばらつきが生じ易くなる。好ましくは加工率65%以下の範囲で行うのがよい。
【0034】
尚、前記加工率とは、[(加工前の材料の寸法−加工後の材料の寸法)/加工前の材料の寸法]×100(%)をいい(以下同じ)、例えば、板状材料を用いて鍛造や圧延を行い、板状のものを製造する場合には、前記「寸法」として板厚を用いて加工率を算出することができる。また、円柱状材料を用いて板状のものを製造する場合には、加工方法によって加工率の算出方法が異なり、例えば、円柱状材料の高さ方向に力を加えて鍛造や圧延を行う場合には、[(加工前の円柱状材料の高さ−加工後の板状材料の厚さ)/加工前の円柱状材料の高さ]×100(%)から加工率を求めることができ、また、円柱状材料の径方向に力を加えて鍛造や圧延を行う場合には、[(加工前の円柱状材料の直径−加工後の板状材料の厚さ)/加工前の円柱状材料の直径]×100(%)から加工率を求めることができる。
【0035】
また冷間加工または温間加工後に、保持温度:500〜600℃、かつ保持時間:0.75〜3時間の条件で熱処理を行う。この様に熱処理を施すことによって、結晶配向の均一化を図ることができる。
【0036】
前記保持温度が、500℃を下回ると再結晶されるまでの所要時間が長くなり、一方、保持温度が600℃を超えると再結晶速度が速くなり、材料の歪量にばらつきがある場合には、歪量の大きい箇所で再結晶が促進されて、均一な結晶配向を得るのが困難となるので好ましくない。より好ましくは520〜580℃の範囲内で熱処理を行う。
【0037】
また、保持温度が適正範囲であっても、保持時間が短すぎる場合には十分に再結晶が行われず、一方、保持時間が長すぎる場合には再結晶が進みすぎて、均一な結晶配向を得るのが困難となる。従って保持時間は、0.75〜3時間の範囲内とするのがよい。
【0038】
結晶粒の微細化を図るには、
保持温度:500〜600℃(より好ましくは520〜580℃)、かつ
保持時間:下記式(1)の範囲内で熱処理を行うのが好ましい。
【0039】
(−0.005×T+ 3.5)≦t≦(−0.01×T+ 8) …(1)
[式(1)中、Tは保持温度(℃)、tは保持時間(時間)を示す]
保持時間は、上記式(1)の範囲の中でも、特に下記式(5)で規定する範囲内とすることが推奨される。熱処理における上記保持時間および保持温度の好ましい範囲およびより好ましい範囲について図2に示す。
【0040】
(−0.005×T+ 3.75)≦t≦(−0.01×T+ 7.5) …(5)
[式(5)中、Tは保持温度(℃)、tは保持時間(時間)を示す]
本発明では、ターゲットの製造におけるその他の条件まで厳密に規定するものでなく、例えば次の様にしてターゲットを得ることができる。即ち、所定の成分組成を有する銀合金材料を溶解し、鋳造して鋳塊を得た後、必要に応じて熱間鍛造または熱間圧延等の熱間加工を施す。次に上記条件で、冷間加工または温間加工と熱処理を行い、その後、機械加工を施して所定の形状とすることが推奨される方法の一つとして挙げられる。
【0041】
前記銀合金材料の溶解は、抵抗加熱式電気炉による大気溶解や真空または不活性雰囲気での誘導溶解等を適用すればよい。銀合金の溶湯は、酸素の溶解度が高いため、前記大気溶解の場合には、黒鉛るつぼを用いかつ溶湯表面をフラックスで覆い、酸化防止を充分に図る必要がある。酸化防止の観点からは、真空または不活性雰囲気下で溶解を行うことが好ましい。また、前記鋳造方法は、特に限定するものではなく、金型や黒鉛鋳型を用いて行う鋳造のみならず、銀合金材料と反応しないことを条件に、耐火物や砂型等を使用した徐冷鋳造を適用することも可能である。
【0042】
熱間加工は必須ではないが、形状が円柱状のものを直方体状や板状にする場合など、必要に応じて熱間鍛造または熱間圧延等を行ってもよい。ただし、熱間加工における加工率は、次工程の冷間加工または温間加工で規定の加工率を確保できる範囲内とする必要がある。冷間加工または温間加工での加工が不十分だと、歪が不足して再結晶化を図ることができず、結果として結晶配向が均一化されないからである。熱間加工を行う場合のその他の条件については特に限定されず、加工温度や加工時間は通常行われている範囲内とすればよい。
【0043】
尚、これらの製造条件は、操業するにあたって予め予備実験を行い、合金元素の種類や添加量に応じた最適な加工・熱処理条件を求めておくことが望ましい。
【0044】
本発明はターゲットの成分組成まで特定するものではないが、上記ターゲットを得るにあたっては、例えば、下記の様な成分組成のものを用いることが推奨される。
【0045】
即ち、前掲の様に、本発明のターゲットは銀をベースに下記の元素が添加されているものであり、合金元素として、形成される薄膜の結晶粒径を微細化し、熱に対して安定化させるのに有効なNdを1.0at%(原子比の意味、以下同じ)以下、Ndと同様の効果を発揮する希土類元素(Y等)を1.0at%以下、形成される薄膜の耐食性を向上させる効果を有するAuを2.0at%以下、Auと同様に、得られた薄膜の耐食性を向上させる効果を有するCuを2.0at%以下の範囲内で、また、その他の元素としてTiやZnが、1種または2種以上添加されたものがよい。また、本発明のターゲットは、ターゲットの製造に用いる原料あるいはターゲット製造時の雰囲気に起因する不純物等が、本発明で規定する結晶組織の形成に影響を与えない範囲内で含まれていてもよい。
【0046】
本発明のターゲットは、例えばDCスパッタリング法、RFスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、反応性スパッタリング法等のいずれのスパッタリング法にも適用でき、約20〜5000Åの銀合金薄膜を形成するのに有効である。尚、ターゲットの形状は、用いるスパッタリング装置に応じて適宜設計変更すればよい。
【0047】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0048】
実施例1
・銀合金材:Ag−1.0at%Cu−0.7at%Au
・製造方法:
▲1▼本発明例
誘導溶解(Ar雰囲気)→鋳造(金型を用いて板状に鋳造)→冷間圧延(加工率50%)→熱処理(520℃×2時間)→機械加工(直径200mm、厚さ6mmの円板形状)
▲2▼比較例
誘導溶解(Ar雰囲気)→鋳造(金型を用いて板状に鋳造)→熱間圧延(圧延開始時の温度700℃、加工率70%)→熱処理(500℃×1時間)→機械加工(直径200mm、厚さ6mmの円板形状)
得られたターゲットの結晶配向について次の様にして調べた。即ち、ターゲット表面の任意の4箇所について、下記の条件でX線回折を行い、結晶配向強度を調べたところ、本発明例について図3の測定結果が得られ、比較例について図4の測定結果が得られた。この様な測定結果から、最も高い結晶配向強度(Xa)を示す方位および2番目に高い結晶配向強度(Xb)を示す方位を調べ、更に上述の様にして、各測定箇所における最も高い結晶配向強度(Xa)と2番目に高い結晶配向強度(Xb)の強度比(Xb/Xa)のばらつきを求めた。尚、最も高い結晶配向強度(Xa)を示す方位が4箇所で異なる場合は、上記ばらつきを求めていない(以下の実施例についても同じ)。
【0049】
X線回折装置:理学電機製 RINT 1500
ターゲット:Cu
管電圧:50kV
管電流:200mA
走査速度:4°/min
試料回転:100回/min
また、得られたターゲットの金属組織を次の様にして調べた。即ち、機械加工後のターゲットから10mm×10mm×10mmの立方体形状の試料を採取し、観察面を研磨後、光学顕微鏡にて50〜100倍で観察し、写真撮影を行い、上述の方法で、ターゲットの平均結晶粒径と最大結晶粒径を求めた。尚、前記顕微鏡観察では、結晶粒が容易に観察できるよう光学顕微鏡にて適宜偏光をかけた。これらの結果を表1に示す。
【0050】
次に得られた各ターゲットをそれぞれ用いて、DCマグネトロンスパッタリング法[Arガス圧:0.267Pa(2mTorr)、スパッタパワー:1000W、基板温度:室温]で、膜厚が平均1000Åの薄膜を直径12cmのガラス基板上に形成した。そして、得られた薄膜の任意の中心線の端から順に5箇所の膜厚を測定した。その結果を表1に併記する。
【0051】
更に得られた薄膜について、円板状の薄膜形成基板の任意の中心線の端から順に、X線マイクロアナリシス法(EPMA)で、合金元素の含有量分布を測定したところ、図5に示す結果が得られた。
【0052】
【表1】
【0053】
これらの結果より、本発明の要件を満たすターゲットをスパッタリングすれば、膜厚分布が一定で、安定した特性を発揮し得る銀合金薄膜が得られることがわかる。尚、上記成分組成のターゲットの場合、上記図5から、本発明例と比較例とで成分組成分布の相違はほとんどみられなかった。
【0054】
実施例2
・銀合金材:Ag−0.8at%Y−1.0at%Au
・製造方法:
▲1▼本発明例
真空誘導溶解→鋳造(金型を用いて円柱状インゴットを製造)→熱間鍛造(700℃、加工率30%、スラブを製造)→冷間圧延(加工率50%)→熱処理(550℃×1.5時間)→機械加工(実施例1と同じ形状に加工)
▲2▼比較例
真空誘導溶解→鋳造(金型を用いて円柱状インゴットを製造)→熱間鍛造(650℃、加工率60%、スラブを製造)→熱処理(400℃×1時間)→機械加工(実施例1と同じ形状に加工)
得られたターゲットについて、実施例1と同様にして結晶配向強度を測定し、最も高い結晶配向強度(Xa)を示す方位、2番目に高い結晶配向強度(Xb)を示す方位、および各測定箇所における最も高い結晶配向強度(Xa)と2番目に高い結晶配向強度(Xb)との強度比(Xb/Xa)のばらつきを求めた。
【0055】
また得られたターゲットの金属組織を前記実施例1と同様にして調べた。尚、本実施例で用いた銀合金材は、結晶粒界/結晶粒内に銀と合金元素の化合物相が存在するものであり、該化合物相のサイズは次の様にして調べた。
【0056】
即ち、前記結晶粒径の測定と同様の試料の観察面を研磨後、化合物の輪郭を明確にするため硝酸等で試料表面を腐食するなど適当なエッチングを施した後、上述した通り、光学顕微鏡にて100〜200倍で任意に5箇所以上を観察し、全視野で合計20mm2の範囲内に存在する各化合物相の円相当直径を求め、その平均値を得た。また該合計視野における最大化合物相の円相当直径を求めた。
【0057】
上記化合物相を認識し難い場合には、前記光学顕微鏡観察の代わりにEPMAによる面分析(マッピング)を行い、通常の画像解析法で該化合物相サイズの平均値および最大値を求めるようにしてもよい。これらの結果を表2に示す。
【0058】
次に得られた各ターゲットを用いて、前記実施例1と同様にして薄膜を形成し、得られた薄膜の膜厚分布と成分組成分布を評価した。膜厚分布を表2に示し、成分組成分布を図6に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
これらの結果より、本発明の要件を満たすターゲットをスパッタリングすれば、膜厚分布が一定で、安定した特性を発揮し得る銀合金薄膜が得られることがわかる。また図6から、ターゲットの結晶粒径を本発明で好ましい範囲内とすれば、成分組成分布のより均一な薄膜を形成できることがわかる。
【0061】
実施例3
・銀合金材:Ag−0.4at%Nd−0.5at%Cu
・製造方法:
▲1▼本発明例
真空誘導溶解→鋳造(金型を用いて円柱状インゴットを製造)→熱間鍛造(700℃、加工率35%、スラブを製造)→冷間圧延(加工率50%)→熱処理(550℃×1時間)→機械加工(実施例1と同じ形状に加工)
▲2▼比較例
真空誘導溶解→鋳造(金型を用いて円柱状インゴットを製造)→熱処理(500℃×1時間)→機械加工(実施例1と同じ形状に加工)
得られたターゲットについて、実施例1と同様に結晶配向強度を測定し、最も高い結晶配向強度(Xa)を示す方位、2番目に高い結晶配向強度(Xb)を示す方位、および各測定箇所における最も高い結晶配向強度(Xa)と2番目に高い結晶配向強度(Xb)の強度比(Xb/Xa)のばらつきを求めた。また得られたターゲットの金属組織を前記実施例1および2と同様にして調べた。これらの結果を表3に示す。
【0062】
更に得られた各ターゲットを用い、前記実施例1と同様にして薄膜を形成し、得られた薄膜の膜厚分布および成分組成分布を評価した。膜厚分布を表3に示し、成分組成分布を図7に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
これらの結果より、本発明の要件を満たすターゲットをスパッタリングすれば、膜厚分布および成分組成分布が一定で、安定した特性を発揮し得る銀合金薄膜が得られることがわかる。
【0065】
実施例4
次に、表4に示す成分組成の銀合金材料を用い、表4に示す種々の方法でターゲットを製造して、得られたターゲットの結晶配向強度を前記実施例1と同様にして測定し、最も高い結晶配向強度(Xa)を示す方位、2番目に高い結晶配向強度(Xb)を示す方位、および各測定箇所における最も高い結晶配向強度(Xa)と2番目に高い結晶配向強度(Xb)との強度比(Xb/Xa)のばらつきを求めた。更に、得られたターゲットの金属組織を前記実施例1および2と同様にして調べた。
【0066】
また各ターゲットを用いて、前記実施例1と同様に薄膜を形成し、得られた薄膜の膜厚分布および成分組成分布を評価した。
【0067】
本実施例では、膜厚分布の評価を、形成された薄膜の任意の中心線の端から順に5箇所の膜厚を測定して最小膜厚と最大膜厚の比(最小膜厚/最大膜厚)を求めて行い、該比が0.90以上の場合を膜厚がほぼ均一であると判断した。また、成分組成分布については次の様にして評価した。即ち、銀と合金元素1種類の2元系銀合金の場合には、薄膜の任意の中心線の端から順に5箇所の合金元素の含有量を求めて、合金元素の(含有量最小値/含有量最大値)で成分組成分布の評価を行い、また銀と合金元素2種類の3元系銀合金の場合には、該2種の合金元素のうち(含有量最小値/含有量最大値)の最低値を示す合金元素の(含有量最小値/含有量最大値)で評価を行い、該比が0.90以上の場合を成分組成分布がほぼ均一であると判断した。これらの測定結果を表5に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
表4および表5から次のように考察することができる。尚、以下のNo.は表4および表5における実験No.を示す。
【0071】
No.1〜7のターゲットは、本発明の要件を満足するものであることから、スパッタリング法で薄膜の形成に用いた場合に、膜厚分布および成分組成分布が均一で、安定した高反射率、優れた熱伝導性等の特性を発揮し得る薄膜が得られたことがわかる。尚、最も高い結晶配向強度(Xa)を示す方位が4測定箇所で同一であることに加えて、2番目に高い結晶配向強度(Xb)を示す方位も4測定箇所で同一であるターゲットの場合には、膜厚分布のより均一な薄膜が得られることがわかる。
【0072】
これに対し、No.8〜10は、本発明の要件を満足せず、最も高い結晶配向強度(Xa)を示す方位が測定箇所全てにおいて同一でなく、各測定箇所における最も高い結晶配向強度(Xa)と2番目に高い結晶配向強度(Xb)の強度比(Xb/Xa)のばらつきが大きく、また結晶粒径も大きいため、得られた薄膜はいずれも膜厚分布や成分組成分布が一定でなく、安定した前記特性の発揮を期待することができない。
【0073】
実施例5
・銀合金材:Ag−0.4at%Nd−0.5at%Cu
・製造方法:
▲1▼本発明例
誘導溶解(Ar雰囲気)→鋳造(金型を用いて板状に鋳造)→熱間圧延(圧延開始時の温度650℃、加工率70%)→冷間圧延(加工率50%)→熱処理(500℃×2時間)→機械加工(直径200mm、厚さ6mmの円板形状)
▲2▼比較例
誘導溶解(Ar雰囲気)→鋳造(金型を用いて板状に鋳造)→熱間圧延(圧延開始時の温度700℃、加工率40%)→熱処理(500℃×1時間)→機械加工(直径200mm、厚さ6mmの円板形状)
得られたターゲットの結晶配向強度を実施例1と同様にして測定して、最も高い結晶配向強度(Xa)を示す方位、2番目に高い結晶配向強度(Xb)を示す方位、および各測定箇所における最も高い結晶配向強度(Xa)と2番目に高い結晶配向強度(Xb)との強度比(Xb/Xa)のばらつきを求めた。更に、得られたターゲットの金属組織を前記実施例1および2と同様にして調べた。これらの結果を表6に示す。
【0074】
また該ターゲットを用い、前記実施例1と同様の方法で薄膜を形成し、得られた薄膜の膜厚分布および成分組成分布を前記実施例1と同様にして評価した。薄膜の膜厚分布を下記表6に示し、成分組成分布を図8に示す。
【0075】
【表6】
【0076】
これらの結果より、本発明の要件を満たす金属組織のターゲットをスパッタリングに用いると、薄膜面内の膜厚分布が一定であり、安定した特性を発揮し得る銀合金薄膜が得られることがわかる。尚、図8から、本発明例のターゲットの成分組成分布は比較例よりも均一であることがわかる。
【0077】
実施例6
・銀合金材:Ag−0.8at%Y−1.0at%Au
・製造方法:
▲1▼本発明例
真空誘導溶解→鋳造(金型を用いて円柱状インゴットを製造)→熱間鍛造(700℃、加工率35%)→熱間加工(圧延開始時の温度700℃、加工率35%)→冷間圧延(加工率50%)→熱処理(550℃×1.5時間)→機械加工(実施例1と同じ形状に加工)
▲2▼比較例
真空誘導溶解→鋳造(金型を用いて円柱状インゴットを製造)→熱間鍛造(650℃、加工率40%、円柱状に成形)→熱処理(400℃×1時間)→機械加工(実施例1と同じ形状に加工)
得られたターゲットの結晶配向強度を前記実施例1と同様にして測定し、最も高い結晶配向強度(Xa)を示す方位、2番目に高い結晶配向強度(Xb)を示す方位、および各測定箇所における最も高い結晶配向強度(Xa)と2番目に高い結晶配向強度(Xb)との強度比(Xb/Xa)のばらつきを求めた。更に、得られたターゲットの金属組織を実施例1および2と同様にして調べた。これらの結果を表7に示す。
【0078】
また得られた各ターゲットを用いて、前記実施例1と同様の方法で薄膜を形成し、得られた薄膜の膜厚分布および成分組成分布を評価した。薄膜の膜厚分布を下記表7に示し、成分組成分布を図9に示す。
【0079】
【表7】
【0080】
これらの結果より、本発明の要件を満たす金属組織のターゲットをスパッタリングすると、膜厚分布および成分組成分布が一定で、安定した特性を発揮し得る銀合金薄膜が得られることがわかる。
【0081】
実施例7
・銀合金材:Ag−0.5at%Ti
・製造方法:
▲1▼本発明例
真空誘導溶解→鋳造(金型を用いて円柱状インゴットを製造)→熱間鍛造(700℃、加工率25%)→熱間圧延(圧延開始時の温度650℃、加工率40%)→冷間圧延(加工率50%)→熱処理(550℃×1時間)→機械加工(実施例1と同じ形状に加工)
▲2▼比較例
真空誘導溶解→鋳造(金型を用いて円柱状インゴットを製造)→熱処理(500℃×1時間)→機械加工(実施例1と同じ形状に加工)
実施例1と同様にして得られたターゲットの結晶配向強度を測定し、最も高い結晶配向強度(Xa)を示す方位、2番目に高い結晶配向強度(Xb)を示す方位、および各測定箇所における最も高い結晶配向強度(Xa)と2番目に高い結晶配向強度(Xb)との強度比(Xb/Xa)のばらつきを求めた。更に、得られたターゲットの金属組織を前記実施例1および2と同様にして調べた。これらの結果を表8に示す。
【0082】
また得られた各ターゲットを用い、前記実施例1と同様の方法で薄膜を形成し、得られた薄膜の膜厚分布および成分組成分布を前記実施例1と同様にして測定した。薄膜の膜厚分布を下記表8に示し、成分組成分布を図10に示す。
【0083】
【表8】
【0084】
これらの結果より、本発明の要件を満たす金属組織のターゲットをスパッタリングすると、膜厚分布および成分組成分布が一定で、安定した特性を発揮し得る銀合金薄膜が得られることがわかる。
【0085】
実施例8
次に、表9に示す成分組成の銀合金材料を用い、表9に示す種々の方法でターゲットを製造し、前記実施例1と同様にして、得られたターゲットの最も高い結晶配向強度(Xa)を示す方位、2番目に高い結晶配向強度(Xb)を示す方位、および各測定箇所における最も高い結晶配向強度(Xa)と2番目に高い結晶配向強度(Xb)との強度比(Xb/Xa)のばらつきを求めた。更に、得られたターゲットの金属組織を前記実施例1および2と同様にして調べた。これらの結果を表10に示す。
【0086】
また該ターゲットを用い、前記実施例1と同様の方法で薄膜を形成し、得られた薄膜の膜厚分布および成分組成分布を前記実施例4と同様にして評価した。
【0087】
【表9】
【0088】
【表10】
【0089】
表9および表10から次のように考察することができる。尚、以下のNo.は表9および表10における実験No.を示す。
【0090】
No.1〜7のターゲットは、本発明の要件を満足するものであることから、スパッタリング法で薄膜の形成に用いた場合に、膜厚分布および成分組成分布が均一で、安定した高反射率、高熱伝導率等の特性を発揮しうる薄膜が得られていることがわかる。これに対し、No.8,9は、本発明の要件を満足するものでなく、得られた薄膜は、いずれも膜厚分布や組成分布が均一でなく、安定した前記特性の発揮を期待することができない。
【0091】
実施例9
本発明者らは、更に表11に示す成分組成の銀合金材料を用い、表11に示す種々の方法でターゲットを製造し、得られたターゲットの最も高い結晶配向強度(Xa)を示す方位、2番目に高い結晶配向強度(Xb)を示す方位、および各測定箇所における最も高い結晶配向強度(Xa)と2番目に高い結晶配向強度(Xb)との強度比(Xb/Xa)のばらつきを求めた。更に、得られたターゲットの金属組織を前記実施例1および2と同様にして調べた。これらの結果を表12に示す。
【0092】
また得られた各ターゲットを用いて、前記実施例1と同様の方法で薄膜を形成し、得られた薄膜の膜厚分布および成分組成分布を前記実施例4と同様に評価した。
【0093】
【表11】
【0094】
【表12】
【0095】
表11および表12から次のように考察することができる。尚、以下のNo.は表11および表12における実験No.を示す。
【0096】
No.1〜5のターゲットは、本発明の要件を満足するものであることから、スパッタリング法で薄膜の形成に用いた場合に、膜厚分布および成分組成分布が均一で、安定した高反射率、高熱伝導率等の特性を発揮しうる薄膜が得られた。
【0097】
特に、結晶配向とともに、ターゲットの結晶粒径や結晶粒界/結晶粒内の銀と合金元素との化合物相を、本発明で好ましいとする範囲内に制御すれば、膜厚分布や成分組成分布のより均一な薄膜を形成できることがわかる。
【0098】
これに対し、No.6,7は、本発明の要件を満足するものでなく、得られた薄膜は、いずれも膜厚分布や成分組成分布が均一でなく、安定した前記特性の発揮を期待することができない。
【0099】
【発明の効果】
本発明は上記のように構成されており、膜厚分布や成分組成分布の均一な銀合金薄膜をスパッタリング法で形成するのに有用なターゲットを提供するものである。この様なターゲットを用い、スパッタリング法で形成された銀合金薄膜は、安定した高反射率や高熱伝導率等の特性を発揮し、片面2層構造のDVDにおける半透過反射膜や次世代光学記録媒体の反射膜といった光学記録媒体の反射膜や、反射型液晶ディスプレイの電極・反射膜等に適用した場合に、これらの性能をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ターゲットの平均結晶粒径を光学顕微鏡観察写真から求める方法を示す図である。
【図2】本発明で規定する熱処理条件の範囲を示す図である。
【図3】実施例1の本発明例で得られたターゲットのX線回折法による結晶配向強度の測定結果を示す図である。
【図4】実施例1の比較例で得られたターゲットのX線回折法による結晶配向強度の測定結果を示す図である。
【図5】実施例1にて得られたAg合金薄膜中の合金元素の含有量分布(成分組成分布)を示す図である。
【図6】実施例2にて得られたAg合金薄膜中の合金元素の含有量分布(成分組成分布)を示す図である。
【図7】実施例3にて得られたAg合金薄膜中の合金元素の含有量分布(成分組成分布)を示す図である。
【図8】実施例5にて得られたAg合金薄膜中の合金元素の含有量分布(成分組成分布)を示す図である。
【図9】実施例6にて得られたAg合金薄膜中の合金元素の含有量分布(成分組成分布)を示す図である。
【図10】実施例7にて得られたAg合金薄膜中の合金元素の含有量分布(成分組成分布)を示す図である。
Claims (6)
- Nd:1.0at%以下またはY:1.0at%以下を含む銀合金からなるものであって、
任意の4箇所についてX線回折法によって結晶配向強度を求めた場合に、
最も高い結晶配向強度(Xa)を示す方位が4測定箇所で(111)面と同一であり、かつ各測定箇所における最も高い結晶配向強度(Xa)と2番目に高い結晶配向強度(Xb)の強度比(Xb/Xa)のばらつきが20%以下であることを特徴とする銀合金スパッタリングターゲット。 - 更に、Au:2.0at%以下またはCu:2.0at%以下を含む銀合金からなる請求項1に記載の銀合金スパッタリングターゲット。
- 2番目に高い結晶配向強度(Xb)を示す方位が4測定箇所で同一である請求項1または2に記載の銀合金スパッタリングターゲット。
- 平均結晶粒径が100μm以下で、最大結晶粒径が200μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の銀合金スパッタリングターゲット。
- 結晶粒界または/および結晶粒内に存在する銀と合金元素の化合物相の円相当直径が、平均で30μm以下であり、かつ該円相当直径の最大値が50μm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の銀合金スパッタリングターゲット。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の銀合金スパッタリングターゲットを製造する方法であって、加工率30〜70%で冷間加工または温間加工を行い、その後、保持温度:500〜600℃、かつ保持時間:0.75〜3時間かつ下記式(1)の範囲内の条件で熱処理を行うことを特徴とする銀合金スパッタリングターゲットの製造方法。
(− 0.005 ×T+ 3.5 )≦t≦(− 0.01 ×T+ 8 ) …(1)
[式(1)中、Tは保持温度(℃)、tは保持時間(時間)を示す]
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