JP4264159B2 - ビタミンk2高生産性納豆菌、その育種方法及び納豆 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、細菌の育種及びその利用に係り、更に詳細には、本発明は、ビタミンK(vitamin K)、特にビタミンK2の生産性を向上させた変異納豆菌の育種、その変異納豆菌、それを使用したビタミンK2を多く含む納豆の製造方法及びその変異納豆菌を用いて製造されたビタミンK2をより高濃度に含有した納豆に関する。
【0002】
【従来の技術】
天然物中から単離されたビタミンKとしては、主に植物体が生合成するビタミンK1(フィロキノンphylloquinone)と、主として微生物が生合成するビタミンK2(メナキノンmenaquinone)などがある。さらにビタミンK2としては、メナキノン(MK)のキノン骨格に結合するポリプレノイド側鎖の長さによってMK−1〜MK−14までの14種類が知られており、微生物の種類によって主に生産されるメナキノンの種類が異なっている(Microbiol. Rev., Vol.45, p.316-354, 1981)。また、ビタミンK3すなわちメナジオン(menadione)(2−メチル−1,4−ナフトキノン)はビタミンK1及びビタミンK2生合成の中間物質であって、かつ化学合成もされており、さらにビタミンK3のハイドロキノン型であるビタミンK4も化学合成されている。
【0003】
ビタミンKはもともと血液凝固因子の1つとして発見され、その血液凝固作用に対する1日当たりの必要量は約1μg/体重kgとされている。この程度の必要量であれば、腸内細菌によってビタミンKが生産されるので、食品などで特別に供給しなくても充分である。従って通常は血液凝固作用に関するビタミンK欠乏病はほとんど観察されておらず、抗生物質の多量投与後や生後7〜10日の新生児のように腸内細菌の数が少ない時に発生することがある程度である。
【0004】
しかし、最近そのビタミンKに骨強化作用があることが解明されてきている。例えばビタミンK2の一種であるMK−4について骨粗しょう症治療薬としての臨床試験が行われ、成人1日当たり15〜45mgの投与で骨粗しょう症改善効果が認められている。また、骨粗しょう症で見られる大腿骨頚部の骨折患者の血清中のMK−7やMK−8の濃度は、骨折していない患者に比べて、有意に低い値を示す事などから、日常からビタミンKを摂取して血液中のビタミンK濃度を高濃度に維持することが、骨粗しょう症の予防すなわち骨強化につながるものと考えられている。
【0005】
なお、MK−4の骨強化作用は、全てのビタミンKに共通する基本骨格部分がオステオカルシンを活性化することによる骨合成の促進効果と、MK−4の側鎖部分であるゲラニルゲラニオール部分の作用による骨吸収(骨の分解)の抑制効果の両方の効果によるものであることが解明されつつある。
【0006】
そしてビタミンKの骨強化作用の発現には、従来から言われている血液凝固作用の場合よりも多量のビタミンKが必要であり、腸内細菌等による生産量だけでは不足すると推定されることから、食品などによる供給が必要になるものと考えられている。
【0007】
ビタミンKを含有する食品としては、ビタミンK1を含有する緑黄色野菜類や海藻類、ビタミンK2を含有する納豆などが知られており、これらの食品を摂取することでビタミンKを補給することができる。
【0008】
なかでも納豆はビタミンK2を最も多く含有しており、例えば第4訂食品成分表によれば納豆中のビタミンK2は納豆100g当たり864μgの濃度であるとされている。また、疫学的な研究からは、納豆の消費量が多いと大腿骨頚部の骨折頻度は少ないとの関係が見出されており、さらに納豆中の主要なビタミンK2であるMK−7がMK−4と同程度の能力でカルシウムを骨芽細胞へ沈着させることができるという報告もあって、骨強化作用を期待する際のビタミンKの供給源として納豆は優良な食品であると考えられている。
【0009】
しかし、骨強化作用を期待するためには、納豆の現状のビタミンK2含有量のままでは不足していると考えられることから、さらに高濃度にビタミンK2を含有する納豆を開発することが求められているが、納豆中のビタミンK2含有量を高めようとする工夫は非常に少なく、天然物から抽出したビタミンK2を亜鉛とともに納豆などの食品に添加する方法(特開平10−36256)や発酵方法を改良して納豆菌による生産量を増加させる方法(特開平8−9916)が知られている程度であった。
【0010】
前記のビタミンK2を添加する方法については、天然物からのビタミンK2の抽出作業が煩雑であり、費用もかかる上に、納豆に食品添加物を添加すること自体が品質上好ましいことではなく、従って納豆製造工程の工夫などにより自然な形でビタミンの含有量を高めることが求められている。
【0011】
その点で、発酵方法を改良する特開平8−9916号明細書に開示の方法はより優れた方法であると考えられるが、この方法は、一般に納豆は高圧釜で蒸煮した大豆に対して納豆菌胞子を植菌し、高湿度下で温度を37〜45℃に制御して15〜18時間程度発酵させる工程を経て製造されるのに対して、比較的高温(42〜50℃)で長時間(24〜48時間)発酵させることによってビタミンK2の含有量を通常の納豆の約7倍程度まで高める方法である。
【0012】
この方法によってビタミンKの含有量が高くなるとすれば、一応ビタミンK高含有納豆としては目的が果たされていることになる。しかし、この方法は比較的高温で長時間発酵させることが特徴であり、このような発酵を行うといわゆる過発酵の状態となってしまい、出来上がった納豆の香りが悪化し、豆色も黒くなるし、いわゆるシャリが発生するなど、納豆そのものの品質がかなり劣化してしまうため、おいしく食べて健康を維持するという食品に本来期待されるべき姿からは、逸脱してしまうなどの充足できない点があった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、納豆の品質は通常のものと変わりなく風味豊かで、かつ骨強化作用があると期待できるビタミンK2をより高濃度で含有する納豆を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、納豆の発酵条件などを変化させる従来の方法ではなく、納豆菌自体の生産能力を高めてやる方が、発酵条件や発酵設備などを大きく変える必要がなくて、品質は通常のものと変わりなく風味豊かで、かつビタミンK2を高濃度で含有する納豆を効率よく製造することができると考えて本発明を進めた。
【0015】
納豆菌は、枯草菌バチルス・サチリス(Bacillus subtilis)に分類されているが、粘質物(糸引物質)などの納豆としての特徴をつくり出すことができ、納豆発酵での主体をなす細菌であって、また、生育にビオチンを要求するとされるなどの特性を有していることなどから、バチルス・ナットウ(Bacillus natto)として分類されたり、枯草菌の変種としてBacillus subtilis var. nattoあるいはBacillus subtilis(natto)などと枯草菌と区別して分類している文献もある。納豆菌としては、Bacillus natto IFO3009、Bacillus subtilis IFO3335、同IFO3336、同IFO3936、同IFO13169などがあり、また市販の納豆種菌である高橋菌(T3株、東京農業大学菌株保存室)や宮城野菌(宮城野納豆製造所)など各種の納豆菌がある。
【0016】
この納豆菌のビタミンK2生合成経路は完全に解明されておらず、かつビタミンK2生産能力を向上させる試みも全く行われていないのが現状であった。
一方、納豆菌以外の微生物でのビタミンK2の生産については、生産性の高い微生物を自然界から選抜した結果として、フラボバクテリウム(Flavobacterium)を取得した例(J. Ferment. Technol., Vol.62, p.321-327, 1984)、及びコリネバクテリウム(Corynebacterium)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、ミクロバクテリウム(Microbacterium)、クルトバクテリウム(Curtobacterium)、オーレオバクテリウム(Aureobacterium)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)などの細菌を取得した例(特開昭61−173792)などがある。
【0017】
しかし、これらの微生物により生産されるビタミンK2はMK−4、MK−5やMK−6であって納豆菌が生産するMK−7とは異なっていることや、かつ納豆菌ではビタミンK2生合成経路が不明であることなどから、前記の各種の方法が納豆菌のビタミンK2の生産能向上に有効かどうかは全く不明であった。
【0018】
そこで本発明者らは、変異剤処理して得た変異納豆菌をp−フルオロ−D,L−フェニルアラニン含有培地で培養し得られた耐性株についてその性質を検討したところ、全く予期せざることに、該耐性株はビタミンK2の生産性が向上しているという新知見を得、更に、上記アミノ酸アナログのみでなく上記m−フルオロ体その他のチロシン、フェニルアラニンのアナログ耐性株は、いずれも上記した特性を有することも見出した。
【0019】
すなわち本発明者らは、選択培地としてチロシン、フェニルアラニンのアナログ含有培地を使用するビタミンK2高生産性納豆菌の育種に成功しただけでなく、本育種方法は納豆菌のみでなく他のバチルス属細菌にも適用可能である点にも着目し、本発明を完成させるに至った。そしてチロシン、フェニルアラニンのアナログに対する耐性を有する変異納豆菌はビタミンK2のうちのMK−7を多く含む品質良好な納豆を発酵生産することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち本発明は、チロシン、フェニルアラニンのアナログを含有する選択培地を用いて、ビタミンK2生産性が向上した納豆菌その他のバチルス属細菌を育種、分離する方法に係り、更に具体的態様は次のとおりである。
【0021】
本発明は、本質的には、チロシン、フェニルアラニンのアナログに対する耐性を有し、且つ、ビタミンK2を高濃度に生産するバチルス・サチルス(Bacillus subtilis)に属する納豆菌に関し、更には、p−フルオロ−D,L−フェニルアラニン、m−フルオロ−D,L−フェニルアラニン、β−2−フェニルアラニン、β−2−チエニルアラニン、フェニルアラニンヒドロキサム酸、から選ばれる少なくともひとつのアナログ耐性を有し、且つ、ビタミンK2を高濃度に生産するバチルス・サチルス(Bacillus subtilis)に属する納豆菌に関するものである。
また、本発明は、バチルス・サチリス(Bacillus subtilis)に属する納豆菌を、突然変異処理または自然変異処理によってビタミンK2生産性を向上させた後、チロシン、フェニルアラニンのアナログを含有する選択培地を用いて分離したビタミンK2を高濃度に生産する納豆菌に関するものである。
そして、本発明は、ビタミンK2を高濃度に生産する納豆菌を使用することを特徴とする納豆の製造方法に関する。
さらに、本発明は、ビタミンK2を高濃度に生産する納豆菌を用いて製造されたビタミンK2高含有納豆に関する。
また、ビタミンK2を高生産し且つ優良な納豆を製造できる納豆菌は、従来未知の新規微生物であって、本発明は、上記選択方法のみに限定されることなく、他の方法で分離された該納豆菌をすべて包含するものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明において、変異納豆菌を得るための変異方法としてはいかなる変異方法を用いてもよい。納豆菌は特別に人工的な変異処理を施さなくてもある程度の確率で自然に変異を起こすので、このような自然変異によって目的のビタミンK2の生産性が向上した変異納豆菌を取得することが可能である。また、人工的な手段による突然変異を起こさせて取得する方法もある。突然変異には物理的方法と化学的方法が用いられる。突然変異の物理的方法としては、紫外線照射、放射線照射などがあり、化学的方法としては、例えばエチルメタンスルホン酸(EMS)やN−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)などの変異剤の溶液に菌体を懸濁させる方法などがあり、これらの方法を単独または組み合わせて適宜実施することができる。
【0023】
本発明では、変異納豆菌の選抜培地に特色を有するものである。即ち、選択培地にフェニルアラニン、チロシンのアナログを添加することが望ましい。これらのアナログとしては多くのものが知られており、任意のものが使用できるが、特にβ−2−フェニルアラニン、フェニルアラニンヒドロキサム酸などを用いるのが望ましい。また、p−フルオロ−D,L−フェニルアラニン、m−フルオロ−D,L−フェニルアラニン、β−2−チエニルアラニン等も使用可能である。更に望ましくは、これら芳香族アミノ酸のアナログを2以上添加した選択培地を用いて、フェニルアラニンのアナログ及びチロシンのアナログに対する同時耐性株を取得することが良く、これにより効率良くビタミンK2を高生産する納豆菌を得ることができる。
フェニルアラニンやチロシンのアナログの添加は、変異処理をする納豆菌の耐性度を勘案して実施する必要があるが、0.3〜50、好ましくは0.5〜10、更に好ましくは数μg/ml程度の濃度で選択培地に添加しておくとよい。
【0024】
変異処理される元の納豆菌としては、基本的に優れた納豆生産能を有している必要があるが、その他の性質として栄養源要求性や薬剤抵抗性などを有していても構わない。具体的には、通常的に納豆工業で使用されている発酵能力に優れた納豆菌や、新たに自然界から分離取得された優れた納豆菌、市販の納豆から分離した納豆菌、及びさらに改良を重ねた納豆菌などを用いることができ、市販納豆から分離されたO−2株や、市販の種菌である高橋菌(T3株、東京農業大学菌株保存室)、宮城野菌(宮城野納豆製造所)などが適宜使用できる。
【0025】
これらの各種納豆菌から適宜選択した納豆菌を変異処理した後、フェニルアラニンのアナログ及びチロシンのアナログを両方含む固体培地に塗抹して、37℃で2日間程度培養し、そこで生じたコロニーを単コロニー分離した後、納豆を製造した際にビタミンK2を多く含有し、かつ風味豊かで物性的にも優れた品質の納豆を生産する納豆菌を取得することによって目的の変異納豆菌が取得できる。
【0026】
このようにして開発されたビタミンK2高生産性の変異納豆菌の納豆生産への利用は、従来から実施されている方法を採用すれば良く、何ら制限がない。このようにして、従来納豆と品質的に差異はなく風味豊かで、かつビタミンK2を高濃度で含有する納豆が生産可能となる。
【0027】
以下に本発明の実施例について述べる。
【0028】
【実施例1】
納豆菌の培養には、表1及び表2に記載のNutrient Broth及び改変Spizizen培地を用い、常法に従って実施した。
【0029】
【0030】
【0031】
市販納豆から分離した納豆菌O−2株を常法により紫外線照射(生存率1〜10%)で変異処理し、ジヒドロキシナフトエン酸のアナログである1−ハイドロキシ−2−ナフトエン酸を含有(50mg/l)する選択培地で選択し、さらに紫外線照射(生存率1〜10%)と選択培地(80mg/l)での選択を繰り返した後に得たOUV23−HNA9004株を上記Nutrient Brothに白金耳で植菌し、一晩37℃で振とう培養した後、遠心分離して滅菌生理食塩水で洗浄した。
【0032】
この約107cfu/mlの濃度の洗浄菌体に、100mg/lとなるようにN−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグアニジンを添加し、20分間振とうして、変異処理を行った。この時の生存率は10%前後であった。
【0033】
変異処理した菌体を上記Nutrient Brothで培養して形質を発現させ、その後に滅菌生理食塩水で洗浄し、さらに改変Spizizen培地に3mg/lとなるようにp−フルオロ−D,L−フェニルアラニン、m−フルオロ−D,L−フェニルアラニン、β−2−チエニルアラニンを添加した固体培地に塗沫した。
【0034】
37℃で2〜3日間培養した後、得られたコロニーを、固体Nutrient Brothで単コロニー分離し、さらに上記のチロシン、フェニルアラニンのアナログを添加した改変固体Spizizen培地にてアナログ耐性を再確認した。このようにして得られたアナログ耐性株の中からOUV23481株を得た。この菌株は、FERMBP−6659として、工業技術院生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センターに寄託されている。
【0035】
この変異納豆菌OUV23481株の胞子液と親株であるOUV23−HNA9004株の胞子液及び市販納豆菌胞子液を用いて、常法通り納豆を作製した。すなわち、浸漬した大豆を水切りし、1.8kgf/cm2で18分間蒸煮した。蒸煮大豆1gあたり3,000〜4,000個の胞子を植菌し、50gずつPSPトレーにいれ、薄いフィルムで表面を覆い、蓋をした後に、バッチ式納豆発酵室へ入れ、室温40〜45℃で高湿度下で発酵を行った。発酵終了後、熟成させ、その後に納豆中のビタミンK2の含量を評価した。
表3には、ビタミンK2の含量とチロシン、フェニルアラニンのアナログへの耐性を示す。
【0036】
【0037】
変異納豆菌OUV23481株は、親株であるOUV23−HNA9004株や市販納豆菌に比較して、チロシン、フェニルアラニンのアナログに対する耐性を獲得しており、それと同時にビタミンK2生産性が約1.7倍に向上しているのが確認された。
【0038】
【実施例2】
常法に従い、120kgの浸漬大豆を1.8kgf/cm2で22分間加圧釜で蒸煮した。蒸煮大豆1gあたり3,000〜4,000個の変異納豆菌OUV23481株の胞子を植菌し、以下常法に従って50gずつPSPトレーにいれ、薄いフィルムで表面を覆い、蓋をした後連続式発酵装置へ入れ、室温40〜44℃で高湿度下で発酵を行った。発酵終了後、熟成されて得られた納豆のビタミンK2を分析し、さらに2つの市販納豆製品と比較して、官能的な評価を行った。その結果を表4及び図1に示す。
なお、官能評価は納豆を常用するパネル80名にて5段階評価法にて行い、その平均値を示した。
5点を良い、4点をやや良い、3点をどちらでもない、2点をやや悪い、1点を悪いと評価した。それぞれの評価項目を下表に示す。
【0039】
【0040】
【0041】
変異納豆菌OUV23481株で製造した納豆は、市販の納豆と比べてもほとんど遜色のない品質であり、かつビタミンK2含量が向上した納豆であることが確認された。
【0042】
【実施例3】
市販納豆菌胞子液とビタミンK2高生産性の変異納豆菌OUV23481株の胞子液を用い、市販納豆菌胞子液を用いた場合は、特開平8−9916号公報に開示の方法に準じ、室温42℃と一定にして発酵時間を18時間(条件1)、24時間(条件2)、48時間(条件3)と変化させた以外は実施例1に記載の方法と同様にして、また変異納豆菌OUV23481株の胞子液を用いた場合は、室温40〜45℃、高湿度下で発酵時間を18時間とする実施例1と同様の方法で、バッチ式納豆発酵室で納豆製造を行った。
【0043】
すなわち、4℃で一晩浸漬した大豆を1.8kgf/cm2で18分間蒸煮した。蒸煮大豆1gあたり3,000〜4,000個の胞子を植菌し、50gずつPSPトレーにいれ、薄いフィルムで表面を覆い、蓋をした後にバッチ式納豆発酵室で18〜48時間発酵を行った。発酵終了後、熟成して得られた納豆のビタミンK2を分析を行い、さらに官能的な評価を行った結果を表5に示す。
【0044】
【0045】
【0046】
長時間発酵させることによって、確かに納豆中のビタミンK2含量は増加することが確認されたが、発酵時間を24時間、48時間と長くすることによって、アンモニア濃度が増加するとともに、アンモニア臭の強い納豆となり、またシャリが発生して食感が低下するとともに、豆色が黒くなって菌膜も溶解して外観が悪くなるなど品質は劣化することが確認された。
これに対して、変異納豆菌OUV23481株で発酵したものは、18時間と通常の発酵時間であっても、市販納豆菌で長時間の発酵を行ったものと同程度の高濃度のビタミンK2を含有しており、かつ品質的にも通常の納豆とほぼ同等の品質であることが確認された。すなわち、ビタミンK2を高濃度で含有する高品質の納豆を通常の納豆と同程度の発酵時間で効率良く製造できることが確認された。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、通常の品質とほとんで変わりなく風味豊かで、かつ骨強化作用があると期待できるビタミンK2をより高濃度で含有する納豆を提供することができる。また、納豆菌その他バチルス属菌において、ビタミンK2高生産株をきわめて効率よく育種、分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ビタミンK2高含有納豆と市販納豆の品質評価を示す。
Claims (3)
- チロシン、フェニルアラニンのアナログ、及びジヒドロキシナフトエン酸のアナログに対する耐性を有し、且つ、ビタミンK2を高濃度に生産するバチルス・サチルス(Bacillus subtilis)に属する納豆菌OUV23481株(FERM BP−6659)。
- 請求項1に記載のビタミンK2高生産性納豆菌を使用すること、を特徴とするビタミンK2高含有納豆の製造方法。
- 請求項1に記載のビタミンK2高生産性納豆菌を用いて製造されたビタミンK2高含有納豆。
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