JP4263327B2 - 注入用具およびそれに用いる保持具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、翼状針等の注射針を介して生体内に薬剤を投与するための注入用具およびそれに用いる保持具に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体内への薬剤投与において期待される効能効果を得るためには、定められた用法用量に従って薬剤を投与する必要がある。特に少量の注射用薬剤を投与する場合は、この点が重要であり、注射針やそれと接続されたチューブ等に薬剤が残存すると効果が不十分になる可能性がある。
【0003】
また、注射針による薬剤の投与においては、薬剤が血管外に漏出することを防止する必要があるため、投与に先立ち、注射針の先端が正確に血管内に留置していることを確認する作業が行われる。この作業は、シリンジのプランジャーを僅かに引き、チューブやシリンジへの血液の逆流を確認することによって行われる。しかし、薬剤が暗色や血液の色に近い赤色を呈していると、逆流する血液と薬剤との区別がつきにくいため、正確に血管内に注射針の先端が留置されていることを確認するのが難しい場合がある。
【0004】
これらの問題を解決するため、従来より、薬剤の充填されたシリンジと、三方活栓と、生理食塩水等の充填されたシリンジとを用いた薬剤投与が行われている。具体的には、三方活栓の一の接続口に注射針のチューブを接続し、残りの二つの接続口に薬剤の充填されたシリンジの筒先と生理食塩水等の充填されたシリンジの筒先をそれぞれ押し込んで接続した状態で薬剤投与が行われる。
【0005】
従って、薬剤投与の前において、三方活栓のレバーを切り替えて、生理食塩水等の充填されたシリンジと注射針とのルートを開通すれば、生理食塩水等によって確認作業が行えるため、暗色や赤色の薬剤を投与する場合であっても、注射針の先端を血管内に正確に留置することができる。また、薬剤投与の後において、三方活栓のレバーを切り替えて生理食塩水等の充填されたシリンジと注射針とのルートを開通すれば、注射針やチューブ等に残存する薬剤の後押しを行うことができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の薬剤投与方法では、生理食塩水等の充填されたシリンジは薬剤の充填されたシリンジに対して向きが直交するように三方活栓に取り付けられているため、作業毎に、この二本のシリンジが接続された三方活栓を両手を使って持ち替える必要がある。さらに各シリンジの筒先は接続口に押し込まれているだけなので作業中に抜けてしまう場合がある。また筒先の強度が低い場合は、持ち替えや斜め方向からの注入等の作業中に筒先が折れてしまう危険性がある。
【0007】
このように上記の薬剤投与方法は非常に取り扱いが煩雑であり、また機構的な信頼性が低いといえる。このため、本発明の発明者らは、上記の薬剤投与方法は不完全な投与や医療事故を引き起こす要因となる可能性があるとの考えに至り、本発明の注入用具を完成させた。
【0008】
本発明の課題は、定められた用法用量に従って薬剤を安全・確実に生体内に投与でき、且つ、取り扱いの煩雑さと機構的信頼性の低さとを軽減し得る注入用具およびそれに用いる保持具を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の注入用具の第一の態様は、次の特徴を有するものである。
(1) 薬剤を注入するための第一シリンジと、血液の逆流の確認および薬剤の後押しをするための第二シリンジと、Y字形コネクターと、液の流れを許容または阻止する機能を有する弁手段と、これらを一体的に保持するための保持具とを少なくとも有し、
Y字形コネクターは三つの接続口と一方弁とを有し、一の接続口は第一シリンジに接続され、他の一の接続口は弁手段を介して第二シリンジに接続されており、一方弁はY字形コネクターの内部から第一シリンジに接続される接続口を経て液が流出するのを阻止するものであることを特徴とする注入用具。
【0010】
(2) 保持具が、第一シリンジを挟持するための第一挟持部と、第二シリンジを挟持するための第二挟持部とを有しており、
第一挟持部と第二挟持部とは、第一シリンジの中心軸と第二シリンジの中心軸とのなす角度が0度〜60度となるように、配置されている上記(1)記載の注入用具。
【0011】
(3) Y字形コネクターの三つの接続口のうちの、第一シリンジに接続される接続口及び第二シリンジに接続される接続口以外の接続口に、フィルターが設けられている上記(1)記載の注入用具。
【0012】
(4) 第一シリンジに暗色または赤色の造影剤が充填されており、第二シリンジに生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液または注射用水のうちのいずれかが充填されている上記(1)記載の注入用具。
【0013】
また、本発明の注入用具の第二の態様は、次の特徴を有するものである。
(5) 薬剤を注入するための第一シリンジと、血液の逆流の確認および薬剤の後押しをするための第二シリンジと、三方活栓と、これらを一体的に保持するための保持具とを有し、
三方活栓の三つの接続口のうちの二つの接続口はそれぞれ第一シリンジまたは第二シリンジに接続されていることを特徴とする注入用具。
【0014】
(6) 保持具が、第一シリンジを挟持するための第一挟持部と、第二シリンジを挟持するための第二挟持部とを有しており、
第一挟持部と第二挟持部とは、第一シリンジの中心軸と第二シリンジの中心軸とのなす角度が0度〜60度となるように、配置されている上記(5)記載の注入用具。
【0015】
(7) 三方活栓の三つの接続口のうちの、第一シリンジに接続される接続口及び第二シリンジに接続される接続口以外の接続口に、フィルターが設けられている上記(5)記載の注入用具。
【0016】
(8) 第一シリンジに暗色または赤色の造影剤が充填されており、第二シリンジに生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液または注射用水のうちのいずれかが充填されている上記(5)記載の注入用具。
【0017】
また、本発明の保持具は、次の特徴を有するものである。
(9) 二本のシリンジと三つの接続口を有するY字形コネクターと液の流れを許容または阻止する機能を有する弁手段とを少なくとも一体的に保持でき、Y字形コネクターの一の接続口と一方のシリンジとが接続され、他の一の接続口と他方のシリンジとが弁手段を介して接続された状態とし得る保持具。
【0018】
(10) 二本のシリンジと三つの接続口を有する三方活栓とを少なくとも一体的に保持でき、三方活栓の一の接続口が一方のシリンジに接続され、他の一の接続口が他方のシリンジに接続された状態とし得る保持具。
【0019】
(11) 一方のシリンジを挟持するための第一挟持部と、他方のシリンジを挟持するための第二挟持部とを有しており、
第一挟持部と第二挟持部とは、一方のシリンジの中心軸と他方のシリンジの中心軸とのなす角度が0度〜60度となるように、配置されている上記(9)または(10)いずれかに記載の保持具。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の注入用具の第一の態様および本発明の保持具の一例を示す図である。図2は、第一の態様の注入用具を構成するY字形コネクター3の詳細を示す図であり、断面で示している。
図1の例に示すように、本発明の注入用具は、薬剤を注入するための第一シリンジ1と、血液の逆流の確認および薬剤の後押しをするための第二シリンジ2と、Y字形コネクター3と、液の流れを許容または阻止する機能を有する弁手段4と、これらを一体的に保持するための保持具5とを少なくとも有している。
【0021】
図1および図2の例に示すようにY字形コネクター3は、三つの接続口(第一接続口3a、第二接続口3bおよび第三接続口3c)と一方弁34とを有したものである。三つの接続口のうち、第一接続口3aは第一シリンジ1に接続されている。第二接続口3bは弁手段4を介して第二シリンジ2に接続されている。第三接続口3cには後述するようにフィルター部材8を介して注射針が接続される。
【0022】
図1および図2の例では、Y字形コネクター3は三つの接続管(第一接続管31、第二接続管32、第三接続管33)と基部30とで構成されており、三つの接続管(31〜33)における基部側と反対側(外側)の開口が接続口となっている。即ち、第一接続管31の外側開口が第一接続口3a、第二接続管32の外側開口が第二接続口3b、第三接続管33の外側開口が第三接続口3cとなっている。
【0023】
第一接続管31および第二接続管32の内面には一般的なルアーテーパが設けられている(以下、このように内面にルアーテーパが設けられたものを「メスアダプター」という。) 。一方、第三接続管33においては、外面に一般的なルアーテーパが設けられている(以下、このように外面にルアーテーパが設けられたものを「オスアダプター」という)。
【0024】
第一シリンジ1の筒先はオスアダプターとなっており、Y字形コネクター3の第一接続管31に密接に挿入できるようになっている。第一接続口3aと第一シリンジ1との接続は、第一シリンジ1の筒先を第一接続管31に挿入し、これらを接合することによって行われている。
【0025】
弁手段4とY字形コネクターとの接続にはパイプ部材11が用いられている。パイプ部材11の第二接続管側はオスアダプターとなっており、第二接続管32に密接に挿入できるようになっている。パイプ部材11の弁手段側はメスアダプターとなっている。弁手段4は、二つの接続管(41、42)と基部40とで構成された二方活栓であり、接続管41がオスオスアダプター、接続管42がメスアダプターとなっている。接続管41はパイプ部材11の弁手段側に密接に挿入できるようになっている。また、第二シリンジ2の筒先はオスアダプターとなっており、接続管42に密接に挿入できるようになっている。
【0026】
弁手段4を介した第二接続口3bと第二シリンジ2との接続は、第二シリンジの筒先を弁手段4の接続管42に挿入し、弁手段4の接続管41をパイプ部材11の弁手段側に挿入し、パイプ部材の第二接続管側をY字形コネクター3の第二接続管32に挿入して、これらを接合することによって行われている。12は弁手段4のレバーを示している。
【0027】
フィルター部材8は第三接続口側がメスアダプター、反対側はオスアダプターとなったものである。フィルター部材8と第三接続管33との接合にはルアーロックが採用されており、フィルター部材8の第三接続口側の端部には、ルアーロックのための外側に向けて突出した突起(図示せず)が設けられている。9は、第三接続管33とフィルター部材8とをルアーロックによって接合するための締具である。締具9は、第三接続管33に回転可能に取り付けられており、内側に螺旋状の溝が設けられている。従って、フィルター部材8に設けられた突起を溝にひっかけて締具9を回転させると、第三接続管33はフィルター部材8に押し込まれていき、フィルター部材8と第三接続管33とは強固に接合された状態で保持される。
【0028】
本態様においては、締具9と保持具5とを一体的に形成することもできる。この場合は、フィルター部材8を回転させることで、フィルター部材8と第三接続管33とは強固に接続される。フィルター部材8の先端に設けられた筒状の先端部8aは、後述するようにフィルター部材8と注射針の接続部とをルアーロックによって接合する際に締具として用いられる。なお、第一シリンジや第二シリンジによる注入圧力が低圧の場合においては、ルアーロックを採用しなくても良い。
【0029】
上記のように図1の例では、各部材間の接続には全てルアーテーパーが採用されているが、本態様はこの例に限定されるものではない。本態様においては、一部の接続にのみルアーテーパーを採用しても良い。
【0030】
本態様においてY字形コネクター3としては、従来より薬剤の投与や輸液の分野において用いられているものを利用することもできる。本態様のY字形コネクター3の材料(一方弁を除く)としては、Y字形コネクター内部を通過する薬剤に影響を及ぼさない材料を用いるのが良く、例えば、ステンレスといった金属や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、エチレン−酢酸ビニル(EVA)、 シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー(COC)といった樹脂材料等が挙げられる。このうち、Y字形コネクターを透明にして内部を通過する液が見えるようにでき、なおかつ必要な強度を確保できる点からポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー(COC)が好ましいものとして挙げられる。
【0031】
本態様において一方弁34は、第二接続口3b及び/又は第三接続口3cから流入した液が第一接続口3aを経て(第一シリンジ1に)流出するのを阻止し得るものであれば良い。図2の例では、一方弁34は、円盤34aとそれを支持する支持板34bとで構成されている。円盤34aは第一接続管31の基部側開口を塞ぐように取り付けられている。また、円盤34aは、柔軟性に優れた材料、例えばシリコーン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル(EVA)等で形成されており、可撓性を有している。支持板34bは第三接続管33の基部側開口を跨いだ状態で配置されている。
【0032】
従って、図2中の矢印に示すように液が第一接続口3aから流入した場合は、円盤34aは点線で示すように変形し、液は基部30内へと流入する。逆に、第二接続口3bまたは第三接続口3cから液が流入した場合は、円盤34aは流入した液によって押し上げられるので、第一接続管31の基部側開口を塞ぎ、第一接続口3aを経て液が流出するのを阻止する。
【0033】
本態様において一方弁は図2に示すものに限定されない。その他の一方弁としては、第一接続管31の基部側開口に板状の弾性体をその一端のみが固定されるように取り付けて構成したものや、ボールとコイルスプリングとを組み合わせて構成したもの等が挙げられる。また、図2の例では、一方弁34はY字形コネクターの基部30内に取り付けられるものであるが、本態様においてはY字形コネクター3の第一接続口3aに取り付けられるものであっても良い。
【0034】
図1及び図2の例では、第三接続口3cと第一接続口3aとは一直線上に位置しているが、本態様はこの例に限定されるものではない。また、本態様において第一接続口3aと第二接続口3bとがなす角度は特に限定されるものではなく、使用されるシリンジの大きさや本発明の注入用具が用いられる状況等に応じて適宜設定することができる。
【0035】
一般に薬剤が透明であるときは、シリンジ内の微粒子等の異物を視覚・光学検査することで、薬剤を薬局方の微粒子基準に適合させることができるが、暗色や赤色の薬剤においては視覚・光学検査は困難である。このため、図1の例では、上述のようにY字形コネクター3の第三接続口3cに、内部にフィルター(図示せず)を備えたフィルター部材8が取り付けられている。
【0036】
フィルター部材8は、フィルターとなる繊維の束(図示せず)を外装となる筒体に挿入して構成されている。なお、フィルターの第三接続口3cへの取り付けは図1に示す例に限定されず、例えば第三接続口3cに直接フィルターを挿入しても良い。本態様においてフィルターとしては、ポリアミド、ポリプロピレン、アクリル、酢酸セルロース等の繊維などが挙げられる。
【0037】
このように第三接続口3cにフィルターを設ければ、注入される薬剤に微粒子等の異物が入っていても該薬剤を薬局方の微粒子基準に適合したものとできる。従って、薬剤が暗色や赤色であって、異物の混入を視覚的又は光学的に確認するのが難しい場合であっても、安心して薬剤の投与を行うことができる。本態様で用いられるフィルターは、10μm以下のものが好ましく、特には5μm以下のものが好ましい。
【0038】
本態様において保持具は、二本のシリンジとY字形コネクターと弁手段とを少なくとも一体的に保持でき、Y字形コネクターの一の接続口と一方のシリンジとが接続され、他の一の接続口と他方のシリンジとが弁手段を介して接続された状態とできるものであれば良い。図1の例では、保持具5は、薬剤用1シリンジを挟持するための第一挟持部6と、第二シリンジ2を挟持するための第二挟持部7とを有している。第一挟持部6及び第二挟持部7の断面はC字形に形成されており、C字の内側で各シリンジを挟み込んでいる。本態様において保持具の形状は特に限定されるものではない。但し、各シリンジの取付けが容易で、筒先と側面とでシリンジを確実に固定してプランジャーを動かしたときのシリンジの横方向の振れを抑制できる点から、図1に示す形状とするのが好ましい。さらに、図1に示す形状では、シリンジに付された目盛りが隠れてしまわない点でも好ましい形状である。
【0039】
図1の例では、第一シリンジ1と第二シリンジ2とが互いに平行な位置関係となるように、第一挟持部6と第二挟持部7とが配置されている。このため、各シリンジのプランジャーの動作方向も互いに平行となっており、作業者は保持具5を持ち替える必要がない。但し、本態様においては、第一シリンジ1と第二シリンジ2とは、作業者が保持具5を持ち替える必要がない程度の角度をなした位置関係、具体的には第一シリンジ1の中心軸と第二シリンジ2の中心軸とのなす角度が0度〜60度、特には0度〜30度となる位置関係にあっても良い。
【0040】
図1の例に示すように、保持具5により、第一シリンジ1、第二シリンジ2、Y字形コネクター3、弁手段4およびパイプ部材11は、接合が簡単に外れない状態にある。このように保持具5を用いることで本態様の注入用具は機構的な信頼性が高められている。なお、さらなる信頼性の向上のため、上記部材間の接合にも、フィルター部材8と第三接続管33との接合のようにルアーロックを採用することもできる。
【0041】
本態様において保持具5の材料は特に限定されるものではないが、成形の容易さの点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリカーボネート等の樹脂材料であるのが好ましい。さらにこのうち放射線滅菌が可能で、コストの低い点から、ポリエチレンを用いるのが特に好ましい。
【0042】
本態様において弁手段4は、第二シリンジ2に充填された液の流れを許容または阻止する機能を有したものであれば良く、特に限定されるものではない。弁手段4としては、図1の例で示したように、従来より薬剤投与や輸液において用いられている二方活栓を利用することができる。また、三方活栓の一の接続口を塞いだものを利用しても良い。
【0043】
パイプ部材11としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリカーボネート等の樹脂材料で形成されたパイプや、ステンレススチール等の金属材料で形成されたパイプを用いれば良い。パイプ部材11の屈曲角度は、Y字形コネクター3の形状と各シリンジの位置に合わせて適宜設定すれば良い。
【0044】
図4は本発明の注入用具の第二の態様および本発明の保持具の他の例を示す図である。図4の例に示すように、本発明の注入用具は、薬剤を注入するための第一シリンジ1と、血液の逆流の確認および薬剤の後押しをするための第二シリンジ2と、三方活栓18と、これらを一体的に保持するための保持具15とを有している。三方活栓18の三つの接続口のうちの二つの接続口(18a、18b)はそれぞれ第一シリンジ1または第二シリンジ2に接続されている。残りの接続口(図示せず)には、後述の図5に示すようにフィルター部材8を介して注射針(図示せず)が接続される。
【0045】
図4の例では、三方活栓18は三つの接続管(181〜183)と基部180とで構成されており、三つの接続管(181〜183)における基部側と反対側(外側)の開口が接続口となっている。接続管181および接続管182はメスアダプター、接続管183はオスアダプターとなっている。19は液の流路を切り替えるためのレバーである。
【0046】
第一シリンジ1および第二シリンジ2は、図1に示したものと同様のものである。21は、接続口18bと第二シリンジ2とを接続するためのパイプ部材である。パイプ部材21の三方活栓側はオスアダプター、第二シリンジ側はメスアダプターとなっている。
【0047】
接続口18aと第一シリンジ1との接続は、第一シリンジ1の筒先を接続管181に挿入し、これらを接合することによって行われている。接続口18bと第二シリンジ2との接続は、第二シリンジ2の筒先をパイプ部材21の第二シリンジ側に挿入し、パイプ部材21の三方活栓側を接続管182に挿入して、これらを接合することによって行われている。
【0048】
フィルター部材8および締具9も図1の例に示したものと同様のものであり、フィルター部材8と接続管183との接合にはルアーロックが採用されている。本態様においても第一の態様と同様に締具9と保持具15とは一体的に形成できる。第一シリンジ1や第二シリンジ2による注入圧力が低圧の場合においては、ルアーロックを採用しなくても良い。
【0049】
このように、図4の例においても、図1の例と同様に各部材間の接続には全てルアーテーパーが採用されている。但し、本態様においても第一の態様と同様にこの例に限定されるものではない。
【0050】
本態様において三方活栓18は、三つの接続口を有し、液の流路を切り替える機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、また従来より薬剤の投与や輸液において用いられているものを利用することもできる。
【0051】
本態様の三方活栓の材料としては、上述のY字形コネクターと同様に、三方活栓内部を通過する薬剤に影響を及ぼさない材料を用いるのが良く、例えば、ステンレスといった金属や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、エチレン−酢酸ビニル(EVA)、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー(COC)といった樹脂材料等が挙げられる。このうち、三方活栓を透明にして内部を通過する液が見えるようにでき、なおかつ必要な強度を確保できる点からポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー(COC)が好ましいものとして挙げられる。
【0052】
図4の例においても第一の態様と同様の理由から、注射針と接続される接続口に図1で示したものと同様のフィルター部材8が取り付けられている。従って、薬剤が暗色や赤色であって、異物の混入を視覚的又は光学的に確認するのが難しい場合であっても、安心して薬剤の投与を行うことができる。本態様においてもフィルターの取り付けは図4に示す例に限定されない。フィルターとしては、第一の態様と同様にポリアミド、ポリプロピレン、アクリル、酢酸セルロース等の繊維などが挙げられ、10μm以下のものが好ましく、特には5μm以下のものが好ましい。
【0053】
本態様において保持具は、二本のシリンジと三方活栓とを少なくとも一体的に保持でき、三方活栓の一の接続口が一方のシリンジに接続され、他の一の接続口が他方のシリンジに接続された状態とできるものであれば良い。図4の例においても第一の態様と同様に、保持具15は、第一シリンジ1を挟持するための第一挟持部16と、第二シリンジ2を挟持するための第二挟持部17とを有している。第一挟持部16及び第二挟持部17の断面は、第一の態様と同様に、C字形に形成されており、C字の内側で各シリンジを挟み込んでいる。本態様においても保持具の形状は特に限定されるものではない。但し、各シリンジの取付けが容易で、筒先と側面とでシリンジを確実に固定してプランジャーを動かしたときのシリンジの横方向の振れを抑制できる点から、図4に示す形状とするのが好ましい。
【0054】
また、第一挟持部16と第二挟持部17も図1に示した第一の態様と同様に、第一シリンジ1と第二シリンジ2とが互いに平行な位置関係となるように、配置されている。このため、本態様においても各シリンジのプランジャーの動作方向は互いに平行となり、作業者は保持具5を持ち替える必要がない。但し、本態様においても第一の態様と同様に、第一シリンジ1と第二シリンジ2とは、作業者が保持具5を持ち替える必要がない程度の角度をなした位置関係、具体的には第一シリンジの中心軸と第二シリンジの中心軸とのなす角度が0度〜60度、特には0度〜30度となる位置関係にあっても良い。
【0055】
図4の例に示すように、本態様においても保持具15により、第一シリンジ1、第二シリンジ2、三方活栓18およびパイプ部材21は、接合が簡単に外れない状態にある。このように保持具15を用いることで本態様の注入用具も機構的な信頼性が高められている。なお、さらなる信頼性の向上のため、上記部材間の接合にも、フィルター部材8と接続管183との接合のようにルアーロックを採用することもできる。保持具15の材料としても上述の保持具5の材料を用いることができる。
【0056】
パイプ部材21としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリカーボネート等の樹脂材料で形成されたパイプや、ステンレススチール等の金属材料で形成されたパイプを用いれば良い。パイプ部材21の屈曲角度は、三方活栓18の形状と各シリンジの位置に合わせて適宜設定すれば良い。
【0057】
本発明において第一シリンジ及び第二シリンジとしては、バレルとプランジャーとで構成された一般的なものを用いれば良い。また、通常ディスポシリンジと呼ばれる何も充填されていないシリンジを用いても良いし、既に液(第一シリンジの場合は薬剤、第二シリンジの場合は生理食塩水等)が充填されたプレフィルドシリンジを用いても良い。前者の場合は液を充填してから保持具にセットすれば良い。これらシリンジの外形、長さ、形成材料といった仕様も特に限定されるものではなく、薬剤の種類等に応じて適宜設定すれば良い。また、これらシリンジの筒先は、図1及び図4に示す第一シリンジ1のように中心(中口)にあっても良いし、第二シリンジ2のように中心からオフセットされた位置(横口)にあっても良い。
【0058】
本発明の注入用具において第一のシリンジに充填する薬剤は特に限定されるものではなく、例えば、造影剤等の診断薬や治療用注射薬等が挙げられる。但し、本発明の注入用具は、第二シリンジによって薬剤の後押しと注射針の位置確認とを行うことができるので、特に、少量で用いられて生理食塩水等による後押しが必要な薬剤や、暗色または赤色の透明性を欠く薬剤に有効である。
【0059】
本発明の第二シリンジには、血液が混入したことを確認することができ、且つ、生体内に流入しても有害反応を起こさない液が充填される。例えば、無色や血液と区別し易い淡色の液であって、体内に流入することが許容される液体が挙げられる。より具体的には、生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液、注射用水等が挙げられる。
【0060】
次に、本発明の注入用具の使用方法を説明する。図3は図1に示す本発明の注入用具10を用いて患者14に薬剤を注入する状態を示している。図5は図4に示す本発明の注入用具20を用いて患者14に薬剤を注入する状態を示している。なお、図3及び図5の例では、注射針としてはチューブの付いた翼状針13が用いられている。翼状針13の接続部13aはメスアダプターとなっており、またルアーロックのため突起(図示せず)も設けられている。そのため接続部13aはフィルター部材8にルアーロック方式によって強固に取り付けられている。
【0061】
なお、本発明において注射針の接続部はルアーロックための突起が設けられていないものであっても良いし、更にルアーテーパが設けられていないものであっても良い。本発明において注射針の種類や大きさは特に限定されるものではなく、チューブの付いたものであっても良いし、付いていないものであっても良い。第二シリンジ2には生理食塩水が充填されている。
【0062】
図3の例においては、まず作業者は一方の手で保持具5を持ち、他方の手で第一シリンジ1のプランジャーを押して、第一シリンジ1内に充填された薬剤を該シリンジ内の空気を抜きながらY字形コネクター3の基部まで充填する。次に、他方の手で弁手段4のレバー12を第二シリンジ2からの生理食塩水の流入を許容する位置にセットし、生理食塩水が充填され空気が抜かれた第二シリンジ2のプランジャーをゆっくりと押し込み、フィルター部分までを生理食塩水で充填する。
【0063】
その後、翼状針13を取り付け、さらに第二シリンジ2のプランジャーをゆっくりと押し込んで、注射針及びチューブの内部を生理食塩水で充填して空気を完全に排除する。さらに、注射針を患者14の静脈に穿刺し(図3に示す状態)、他方の手で第二シリンジ2のプランジャーをゆっくりと引いて血液の逆流を確認する。
【0064】
確認の後、弁手段4のレバー12を生理食塩水の流入が阻止される位置にセットし、第一シリンジ1のプランジャーを押し込んで薬剤を注入する。最後に、再度レバー12の位置を変えて第二シリンジ2のプランジャーを押し込んで、Y字形コネクター3や、翼状針13の注射針及びチューブに残存する薬剤を生理食塩水によって後押し、薬剤の全量の投与を完了する。
【0065】
図5の例においては、まず作業者は一方の手で保持具15を持ち、他方の手で第一シリンジ1のプランジャーを押して、第一シリンジ1内に充填された薬剤を該シリンジ内の空気を抜きながら三方活栓18の基部まで充填する。次に、他方の手で三方活栓18のレバー19を第二シリンジ2と翼状針13との間のルートが開通する位置にセットし、生理食塩水が充填され空気が抜かれた第二シリンジ2のプランジャーをゆっくりと押し込み、フィルター部分までを生理食塩水で充填する。
【0066】
その後、翼状針13を取り付け、さらに第二シリンジ2のプランジャーをゆっくりと押し込んで、注射針及びチューブの内部を生理食塩水で充填して空気を完全に排除する。さらに、注射針を患者14の静脈に穿刺し(図5に示す状態)、他方の手で第二シリンジ2のプランジャーをゆっくりと引いて血液の逆流を確認する。
【0067】
確認の後、三方活栓18のレバー19を第一シリンジ1と翼状針13との間のルートが開通する位置にセットし、第一シリンジ1のプランジャーを押し込んで薬剤を注入する。最後に、再度レバー19の位置を変えて第二シリンジ2のプランジャーを押し込んで、三方活栓18や、翼状針13の注射針及びチューブに残存する薬剤を生理食塩水によって後押し、薬剤の全量の投与を完了する。
【0068】
このように、本発明の注入用具を用いれば、第一シリンジ1、第二シリンジ2及びこれら以外の薬剤の投与に必要な部材を一体化できるので、作業者はこれら全てを片手で保持することができ、持ち替えるといった煩雑な作業から開放される。また、本発明の注入用具を用いれば機構的な信頼性を高めることもできる。これらの点から本発明の注入用具を用いることで、薬剤投与における不完全な投与や医療事故の発生の可能性を減少させることができると言える。
【0069】
【発明の効果】
以上の説明のように、本発明を用いれば、煩雑な作業なしに、安心して薬剤の全量を生体内に投与でき、また確実な注射針の位置確認を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の注入用具の第一の態様および本発明の保持具の一例を示す図である。
【図2】第一の態様の注入用具を構成するY字形コネクター3の詳細を示す図である。
【図3】図1に示す本発明の注入用具10を用いて患者14に薬剤を注入する状態を示している。
【図4】本発明の注入用具の第二の態様および本発明の保持具の他の例を示す図である。
【図5】図4に示す本発明の注入用具20を用いて患者14に薬剤を注入する状態を示している。
【符号の説明】
1 第一シリンジ
2 第二シリンジ
3 Y字形コネクター
3a 第一接続口
3b 第二接続口
3c 第三接続口
31 第一接続管
32 第二接続管
33 第三接続管
41 弁手段の接続管
42 弁手段の接続管
4 弁手段
5 保持具
Claims (4)
- 薬剤を注入するための第一シリンジと、血液の逆流の確認および薬剤の後押しをするための第二シリンジと、Y字形コネクターと、液の流れを許容または阻止する機能を有する二方活栓と、これらを一体的に保持するための保持具とを少なくとも有し、
Y字形コネクターは三つの接続口と一方弁とを有し、一の接続口は第一シリンジに接続され、他の一の接続口は二方活栓を介して第二シリンジに接続されており、一方弁はY字形コネクターの内部から第一シリンジに接続される接続口を経て液が流出するのを阻止するものであることを特徴とする注入用具。 - 保持具が、第一シリンジを挟持するための第一挟持部と、第二シリンジを挟持するための第二挟持部とを有しており、
第一挟持部と第二挟持部とは、第一シリンジの中心軸と第二シリンジの中心軸とのなす角度が0度〜60度となるように、配置されている請求項1記載の注入用具。 - Y字形コネクターの三つの接続口のうちの、第一シリンジに接続される接続口及び第二シリンジに接続される接続口以外の接続口に、フィルターが設けられている請求項1記載の注入用具。
- 第一シリンジに暗色または赤色の造影剤が充填されており、第二シリンジに生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液または注射用水のうちのいずれかが充填されている請求項1記載の注入用具。
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