JP4262900B2 - テトラターシャリーアルコキシシランの製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリカ含有酸化物膜を、化学気相成長法(CVD法)にて形成するための原料として好適なテトラターシャリーアルコキシシランの製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置製造において、SiO2含有膜をCVD法で形成するためのアルコキシシラン原料としては、主にテトラエトキシシランSi(OC2H5)4が用いられている。しかし、他の金属ターシャリーアルコキシドと合わせて使用する場合には、アルコキシ基の交換を防ぐためにSi源はテトラターシャリーアルコキシシランであることが望ましい。また、テトラエトキシシランの熱分解温度は高いので、より低い温度で熱分解したい場合には、テトラターシャリーアルコキシシランが好ましい。本発明者らは、特願2000−272283号において、ゲート絶縁膜として有用なジルコニア−シリカ含有酸化物膜を製造するためのCVD原料組成物として、Zr(OtBu)4とSi(OtBu)4との混合物を開示している(OtBuはターシャリーブトキシ基OC(CH3)3を表す)。
【0003】
しかし、Si(OtBu)4の製造は、SiCl4を原料とする場合、OtBuが嵩高いため4つ目のClと置換しにくく、厳しい反応条件が必要であるという問題があった。
M.G.VoronkovらZhur.Obshchei Khim.Vol.26,3072(1956)(抄録Chem.Ab.Vol.51,8643)は、Si(OtBu)3ClとNa(OtBu)とトルエン溶媒を鋼製オートクレーブに仕込み、220℃で18時間加熱し、生成物を蒸留し、粗Si(OtBu)4を47%の収率で得、次いでエタノールから再結晶し、融点51.5℃の精Si(OtBu)4を得ている。オートクレーブを使用し、かつ条件も厳しい。なお中間原料のSi(OtBu)3Clは、トルエン溶媒中、tBuOHとピリジンとSiCl4を加熱反応させ、濾過後、蒸留して得ている。
【0004】
H.BreederveldらRec.trav.chim.vol.73,871(1954)(抄録Chem.Ab.Vol.49,8792)は、反応性の高いSiBr4を原料として、Na(OtBu)と反応させ、Si(OtBu)3Brを得、これとtBuOHとを封管中220℃で10時間加熱し、濾過後、蒸留してSi(OtBu)4を得ている。ここでも4つ目のOtBuを入れるために厳しい条件を用いている。
以上述べたように、いずれもオートクレーブ中、220℃で10〜18時間という厳しい条件が必要であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
Si(OtBu)3ClやSi(OtBu)2Cl2を中間原料として用い、反応器にオートクレーブを用いないで、大気圧下で200℃以下の温和な条件で反応させて、Si(OtBu)4を製造する方法を提供することである。同様にしてSi(OtAm)4(ここでOtAmはターシャリーアミロキシ基OC(CH3)2C2H5を表す)を製造する方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、Si(OR)nCl4−nを原料としてSi(OR)4を製造する方法において、反応剤としてK(OR)(カリウムターシャリーアルコキシド)を用いることを特徴とするテトラターシャリーアルコキシシランの製法である。
ここでRはC(CH3)3またはC(CH3)2(C2H5)を、nは3または2を表す。
本発明は、Si(OR)nCl4−nとK(OR)との反応を、不活性有機溶媒中、130〜170℃、大気圧下で行うことを特徴とするテトラターシャリーアルコキシシランの製法である。
本発明は、Si(OR)nCl4−nに対するK(OR)の仕込量を、Clの当量である(4−n)の1.1〜1.5倍量とすることを特徴とするテトラターシャリーアルコキシシランの製法である。
本発明は、Si(OR)nCl4−nとK(OR)との反応に使用する不活性有機溶媒が沸点130〜170℃であることを特徴とするテトラターシャリーアルコキシシランの製法である。
本発明は、Si(OR)nCl4−nとK(OR)との反応に使用する不活性有機溶媒がキシレンであることを特徴とするテトラターシャリーアルコキシシランの製法である。
本発明は、Si(OR)nCl4−nとK(OR)との反応をさせた後、副生したKCl結晶を濾過分離し、次いで減圧蒸留回収することを特徴とするテトラターシャリーアルコキシシランの製法である。
本発明は、Si(OR)nCl4−nとK(OR)との反応をさせた後、副生したKCl結晶を濾過分離し、次いで減圧蒸留回収して得られるSi(OR)4中のCl含量が10ppm以下、K含量が1ppm以下であることを特徴とするテトラターシャリーアルコキシシランの製法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下はSi(OtBu)4の場合について述べるが、Si(OtAm)4でも同様である。
本発明に使用する中間原料は、Si(OtBu)3ClまたはSi(OtBu)3ClとSi(OtBu)2Cl2の混合物である。これらは、前述のM.G.Voronkovらの方法により得られる。すなわち、tBuOH4モルとピリジン4モルのトルエン溶液中にSiCl41モルを滴下し水浴加熱で10時間反応させた後、濾過し、蒸留してSi(OtBu)3Clを43.4%の収率で得ている。Si(OtBu)3Clの大気圧下の沸点は202〜203℃である。
本発明者らの検討結果では、反応の温度と時間を温和な条件にすると、Si(OtBu)3ClとSi(OtBu)2Cl2の混合物となるが、本発明の中間原料として充分使用できる。Si(OtBu)3ClとSi(OtBu)2Cl2の比率は、ガスクロマトグラフィーにより容易に分析できるので、好ましい仕込みK(OtBu)の量を計算できる。
【0008】
本発明に使用するK(OtBu)は、tBuOH中に金属カリウムKを室温で投入し反応させ、次いで未反応原料tBuOHを減圧留去することにより容易に得られる。KはNaよりかなり活性が高いので反応時間は短くてよい。また、K(OtBu)は工業的に市販されているのでそれを使うこともできる。
【0009】
本発明で使う反応式は次式である。
【0010】
【化1】
【0011】
Si(OtBu)nCl4−nに対するK(OtBu)の仕込量は、Clの当量である(4−n)の1.1〜1.5倍量とすることが好ましい。1.1倍以下では、Clが残りやすく好ましくなく、1.5倍以上では多く使用するに足りる利点がなくなる。
【0012】
反応は不活性有機溶媒中、130〜170℃で2〜10時間行う。反応器に溶媒とK(OtBu)を仕込み、攪拌分散させ、室温付近で油状のSi(OtBu)nCl4−nを滴下していくと、まずSi(OtBu)2Cl2が反応しその発熱反応で液温度が80℃付近まで上昇する。Si(OtBu)3Clの本格的な反応は150℃付近で急激に起こる。その反応温度制御のため、溶媒がリフラックスして除熱できるとよい。Si(OtBu)4の大気圧下の沸点は222℃であるので、蒸留で溶媒を分離するためには、溶媒の沸点は、170℃以下のものが好ましい。また、大気圧下で130℃以上の反応条件が必要なので、溶媒がリフラックスして除熱、反応温度制御できるとよいので、その沸点は130℃以上のものが好ましい。よって用いる溶媒は沸点130〜170℃のものが好ましい。好ましい不活性有機溶媒としては、キシレンである。キシレンの場合は、そのリフラックスを利用して、反応温度を150℃付近に制御できる。キシレンであれば、オルトキシレン(沸点144.4℃)、メタキシレン(139.1℃)、パラキシレン(138.4℃)のいずれか、またはそれらの混合物でよい。
【0013】
上記溶媒を用い大気圧下の反応でSi(OtBu)4を製造できるが、時間短縮や溶媒分離の容易さに着目して、オートクレーブで130〜170℃の反応を行ってもよい。その場合には溶媒としてトルエンなども使える。この場合でも、K(OtBu)を使うことにより、Na(OtBu)より、反応条件が温和になり、収率が向上する。
【0014】
Si(OtBu)3ClとK(OtBu)との反応をさせた後、副生したKCl結晶を濾過分離し、次いで減圧蒸留で、溶媒を初留として除き、Si(OtBu)4を主留分として得る。減圧蒸留は5〜100Torrで行う。一例として、15TorrでSi(OtBu)4の留出温度は105℃付近である。上記工程を経て得られたSi(OtBu)4中のCl含量は10ppm以下と非常に小さくできる。またK(OtBu)は昇華圧が非常に小さいので、蒸留により除かれ、K含量を1ppm以下にできる。ClとKが少ないことは半導体装置製造の原料としては非常に好ましいことである。
大気圧下の蒸留では釜の加熱温度が250℃と高くなりすぎ、一部Si(OtBu)4の熱分解が起こり、生成したtBuOHなどが主留分に混入してくる。
【0015】
【実施例】
Si(OtBu)4の製造
リフラックスコンデンサー、温度計、攪拌器の付いた5Lフラスコに脱水tBuOH741g(10.0mol)と脱水ピリジン791g(10.0mol)とトルエン0.7Lを仕込み攪拌しながら、脱水トルエン0.5Lで希釈されたSiCl4425g(2.5mol)を室温で滴下した。次いで昇温し75℃に4時間保った。冷却後濾過し、溶媒を減圧留去した。次いで15Torrで蒸留し、50〜90℃の留分400gを回収した。この留分をガスクロマトグラフィーで分析したところSi(OtBu)2Cl252%とSi(OtBu)3Cl48%の混合物であった(Siとして1.52mol、収率61%)。
【0016】
次いでリフラックスコンデンサー、温度計、攪拌器の付いた3Lフラスコにキシレン0.35LとK(OtBu)274g(2.44mol)を仕込み、攪拌し、分散させた。次いで上記回収留分300g(Siとして1.14mol、Clとして1.77molを含んでいるのでK/Cl=1.38となる)を室温からゆっくり滴下すると発熱反応し液温は80℃程度まで上昇した。この時点でSi(OtBu)2Cl2はSi(OtBu)3Clへ変化していた。次いで加熱昇温していくと、130℃程度から激しい発熱反応がおこり、リフラックスが起こり、液温を150℃付近に制御した。150℃で7時間攪拌保持した後、冷却し、濾過した。
【0017】
次いで、濾液を減圧蒸留装置に仕込み、15Torrで蒸留を行った。初留として40〜80℃で主にキシレンを回収した。次いでSi(OtBu)4が凝固しないように、温水で冷却し、蒸留温度105℃付近で主留分Si(OtBu)4210g(0.66mol)を得た。後工程のSi基準の収率は58%であった。融点51℃。
この主留分のトルエン溶液での測定結果、ガスクロマトグラフィー純度は99.5%であった。この測定結果を図1に示す。
不純物分析の結果、Cl<10ppm、K<1ppm、Na<1ppm、Fe<1ppm、Ca<1ppm、その他の金属元素もすべて1ppm以下であり、高純度であった。
【0018】
【発明の効果】
Si(OtBu)3Clを中間原料とし、反応剤としてK(OtBu)を使うことにより、大気圧下の反応で、150℃の温和な条件でSi(OtBu)4が製造できる。反応装置として、オートクレーブを必要としない。得られたSi(OtBu)4はCl、Kなどの不純物含量が小さいので、半導体装置製造用の原料として使える。
【図面の簡単な説明】
【図1】主留分Si(OtBu)4のトルエン溶液のGC−FIDによる測定結果を示す図である。
Claims (7)
- Si(OR)nCl4−nを原料としてSi(OR)4を製造する方法において、反応剤としてK(OR)を用いることを特徴とするテトラターシャリーアルコキシシランの製法。
ここでRはC(CH3)3またはC(CH3)2(C2H5)、nは3または2を表す。 - Si(OR)nCl4−nとK(OR)との反応を、不活性有機溶媒中、130〜170℃、大気圧下で行うことを特徴とする請求項1記載のテトラターシャリーアルコキシシランの製法。
- K(OR)の仕込量を、Clの当量である(4−n)の1.1〜1.5倍量とすることを特徴とする請求項2記載のテトラターシャリーアルコキシシランの製法。
- 不活性有機溶媒が沸点130〜170℃であることを特徴とする請求項2記載のテトラターシャリーアルコキシシランの製法。
- 不活性有機溶媒がキシレンであることを特徴とする請求項2記載のテトラターシャリーアルコキシシランの製法。
- Si(OR)nCl4−nとK(OR)との反応をさせた後、副生したKCl結晶を濾過分離し、次いで減圧蒸留回収することを特徴とする請求項1、2、3、4、5記載のテトラターシャリーアルコキシシランの製法。
- 得られたSi(OR)4のCl含量が10ppm以下、K含量が1ppm以下であることを特徴とする請求項6記載のテトラターシャリーアルコキシシランの製法。
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