JP4262238B2 - 光カチオン硬化性インクジェットインクおよび印刷物 - Google Patents

光カチオン硬化性インクジェットインクおよび印刷物 Download PDF

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Description

本発明は、光カチオン硬化性インクジェットインク、およびこれを用いた印刷物に関する。
従来から、地域広告や企業内配布資料、大型ポスターのようにある程度の部数を必要とする印刷物の製造には、版を利用した印刷機が用いられてきた。近年、こうした従来の印刷機に代わって、多様化するニーズに迅速に対応できるとともに、在庫を圧縮することが可能なオンデマンド印刷機が利用されつつある。そのようなオンデマンド印刷機としては、トナーや液体トナーを用いた電子写真印刷機や高速および高画質印刷が可能なインクジェットプリンタが期待されている。
インクジェットプリンタで使用されるインクの中でも、光によりインクを非流動化させる感光性インクは、金属やプラスチックなどの非浸透性の媒体にも定着できる。また、溶剤系インクのように乾燥に伴なう有機溶剤の揮発がないことから、近年注目されている。
感光性インクとしては、ラジカル重合性モノマーと光重合開始剤と顔料とを含有したものが代表的であり(例えば、特許文献1および特許文献2参照)、被印刷面に吐出された感光性インクは速やかに光硬化される。
しかしながら、ラジカル系の感光性インクの成分であるラジカル発生剤は、発癌性があることが知られている。ラジカル重合性モノマーとして用いられるアクリル酸誘導体も、皮膚刺激性などの毒性をもつものが多く臭気も大きい。さらに、ラジカル重合は空気中の酸素の存在によって著しく阻害されるため、インクの感度が低いという問題があった。
それに対して、酸素の影響が比較的小さいインクとして、光カチオン重合性の感光性インクが提案されている。
例えば、インクジェット吐出可能なCD−ROMのコーティング用カチオン硬化型感光性組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。実際にインクジェット吐出できた組成は、ビニルエーテルとビスフェノールA型エポキシとを主体とするものである。ビスフェノールA型エポキシは発癌性などの問題を有するため、こうした組成物が放出される環境への問題が大きい。
また、カチオン硬化性モノマーとして、エポキシ化合物を含む光カチオン重合性の感光性インクが提案されており(例えば、特許文献4〜6参照。)、主に低分子量の脂環式エポキシ化合物が例示されている。低分子量のエポキシ化合物は、硬化性能は優れているものの、変異原性を有するものがほどんどである。したがって、こうしたエポキシ化合物を主成分として用いた場合、安全性にやや問題があった。
また、ビニルエーテル化合物は、安全性が高く、硬化速度も速いため、注目されている材料である。一般に入手可能なビニルエーテル化合物の多くは、脂肪族骨格を有するものであり、インクの主成分として用いた場合には、十分な硬化硬度が得られない。しかも、インクの保存安定性が悪いため、ビニルエーテル化合物は、従来、インクの粘度調製が主な目的として用いられてきた。
インクの保存安定性には、光酸発生剤の含有量が影響を及ぼす。光酸発生剤とは、光の照射により酸を発生する化合物であり、光カチオン硬化型のインクジェットインクに必須成分として含まれる。比較的不安定であり、光照射のみならず、熱や経時的な変化によっても酸を発生する。そのため、インクを保存している間に酸が徐々に発生して、モノマーの重合が進行することによりインクの粘度が増加する。また、光酸発生剤として一般的に用いられるオニウム塩系化合物はイオン性のため、色成分として顔料を用いた場合、静電的な作用によって顔料の分散安定性を低下させる場合がある。
インクジェットインクの場合、粘度が変化すると、インクの飛翔形状が乱れて、印字再現性が減少する。最悪の場合には、吐出不良やインクづまりなどの致命的状態に陥りやすい。また、顔料の分散安定性が悪化すると、凝集した顔料がヘッドノズルにつまり、インクの吐出不良の原因となる。
このようなことから、光酸発生剤はできるだけ少量であることが望ましい。しかしながら、酸発生剤含量を減らすとインクの硬化速度、硬化硬度が低下してしまうため、保存安定性に優れ、なおかつ硬化性能の高い光カチオン硬化性インクジェットインクを得ることは困難であった。
特開平8−62841号公報 特開2001−272529号公報 特開平9−183928号公報 特開2001−220526号公報 米国特許第5889084号 特開2003−119414号公報
本発明は、安全性や保存安定性に優れ、高い硬化性を有する光カチオン硬化型インクジェットインク、およびこれを用いた印刷物を提供することを目的とする。
本発明の一態様にかかるインクジェットインクは、酸発生剤と、色成分と、少なくとも一部がビニルエーテル化合物であり残部がオキセタン化合物からなる酸重合性化合物とを含有し、前記ビニルエーテル化合物は、下記一般式(1)で表わされる環式骨格を有するビニルエーテル化合物と下記一般式(2)で表わされる脂肪族骨格を有するビニルエーテル化合物とを含み、前記酸重合性化合物100重量部に対して40重量部以上の割合で含有され、前記光酸発生剤は、前記酸重合性化合物100重量部に対して0.5重量部以上2重量部以下の割合で含有されていることを特徴とする。
Figure 0004262238
(前記一般式(1)中、R1は、ビニルエーテル基、ビニルエーテル骨格を有する基、アルコキシ基、水酸基置換体および水酸基から選択され、少なくとも1つはビニルエーテル基またはビニルエーテル骨格を有する基である。R2は、置換または非置換の環式骨格を有する(p+1)価の基であり、pは0を含む正の整数である。)
Figure 0004262238
(前記一般式(2)中、R1は、ビニルエーテル基、ビニルエーテル骨格を有する基、アルコキシ基、水酸基置換体および水酸基から選択され、少なくとも1つはビニルエーテル基またはビニルエーテル骨格を有する基である。R3は、脂肪族骨格を有する(p+1)価の基であり、pは0を含む正の整数である。)
本発明の一態様によれば、安全性や保存安定性に優れ、高い硬化性を有する光カチオン硬化型インクジェットインク、およびこれを用いた印刷物が提供される。
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明の一実施形態にかかるインクジェットインクは、光照射により酸を発生する光酸発生剤と、色成分と、酸の存在下で重合する酸重合性化合物とを含有する。すなわち、本実施形態にかかるインクジェットインクは、化学増幅型の感光性組成物である。ここでいう「インクジェットインク」とは常温で流動性のインクを意味し、具体的には25℃における粘度が50mPa・sec、より好ましくは30mPa・sec以下であるインクを意味する。通常、インクジェットヘッドの温調範囲は、常温乃至50℃程度の間であるので、こうした温度範囲内で、12mPa・sec以内の粘度を示すインクであってもよい。
このようなインクジェットインクを含むインク層に光が照射されると、まず、光酸発生剤から酸が発生する。この酸は、酸重合性化合物の架橋反応の触媒として機能するとともに、発生した酸はインク層内で拡散する。露光後のインク層では、酸を触媒とした架橋反応が進行し、インク層を加熱することによって、この架橋反応を加速することができる。ここでの架橋反応はラジカル重合とは異なって、酸素の存在によって阻害されることがない。そのため、1つの光子で複数の架橋反応を生じさせることができ、高い感度を実現することができる。しかも、インク層の深部や吸収性のメディア内部でも、架橋反応を速やかに進行させることができる。そのため、得られるインク層は、ラジカル重合系の場合と比較して密着性にも格段に優れたものとなる。
以下、本発明の実施形態にかかるインクジェットインクに含有される各成分を詳細に説明する。
光照射により酸を発生する光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩、ジアゾニウム塩、キノンジアジド化合物、有機ハロゲン化物、芳香族スルフォネート化合物、バイスルフォン化合物、スルフォニル化合物、スルフォネート化合物、スルフォニウム化合物、スルファミド化合物、ヨードニウム化合物、スルフォニルジアゾメタン化合物、およびそれらの混合物などを使用することができる。
これらの化合物の具体例としては、例えば、トリフェニルスルフォニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムトリフレート、2,3,4,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−4−ナフトキノンジアジドスルフォネート、4−N−フェニルアミノ−2−メトキシフェニルジアゾニウムスルフェート、4−N−フェニルアミノ−2−メトキシフェニルジアゾニウムp−エチルフェニルスルフェート、4−N−フェニルアミノ−2−メトキシフェニルジアゾニウム2−ナフチルスルフェート、4−N−フェニルアミノ−2−メトキシフェニルジアゾニウムフェニルスルフェート、2,5−ジエトキシ−4−N−4'−メトキシフェニルカルボニルフェニルジアゾニウム−3−カルボキシ−4−ヒドロキシフェニルスルフェート、2−メトキシ−4−N−フェニルフェニルジアゾニウム−3−カルボキシ−4−ヒドロキシフェニルスルフェート、ジフェニルスルフォニルメタン、ジフェニルスルフォニルジアゾメタン、ジフェニルジスルホン、α−メチルベンゾイントシレート、ピロガロールトリメシレート、ベンゾイントシレート、みどり化学社製MPI−103(CAS.NO.(87709−41−9))、みどり化学社製BDS−105(CAS.NO.(145612−66−4))、みどり化学社製NDS−103(CAS.NO.(110098−97−0))、みどり化学社製MDS−203(CAS.NO.(127855−15−5))、みどり化学社製Pyrogallol tritosylate(CAS.NO.(20032−64−8))、みどり化学社製DTS−102(CAS.NO.(75482−18−7))、みどり化学社製DTS−103(CAS.NO.(71449−78−0))、みどり化学社製MDS−103(CAS.NO.(127279−74−7))、みどり化学社製MDS−105(CAS.NO.(116808−67−4))、みどり化学社製MDS−205(CAS.NO.(81416−37−7))、みどり化学社製BMS−105(CAS.NO.(149934−68−9))、みどり化学社製TMS−105(CAS.NO.(127820−38−6))、みどり化学社製NB−101(CAS.NO.(20444−09−1))、みどり化学社製NB−201(CAS.NO.(4450−68−4))、みどり化学社製DNB−101(CAS.NO.(114719−51−6))、みどり化学社製DNB−102(CAS.NO.(131509−55−2))、みどり化学社製DNB−103(CAS.NO.(132898−35−2))、みどり化学社製DNB−104(CAS.NO.(132898−36−3))、みどり化学社製DNB−105(CAS.NO.(132898−37−4))、みどり化学社製DAM−101(CAS.NO.(1886−74−4))、みどり化学社製DAM−102(CAS.NO.(28343−24−0))、みどり化学社製DAM−103(CAS.NO.(14159−45−6))、みどり化学社製DAM−104(CAS.NO.(130290−80−1)、CAS.NO.(130290−82−3))、みどり化学社製DAM−201(CAS.NO.(28322−50−1))、みどり化学社製CMS−105、みどり化学社製DAM−301(CAS.No.(138529−81−4))、みどり化学社製SI−105(CAS.No.(34694−40−7))、みどり化学社製NDI−105(CAS.No.(133710−62−0))、みどり化学社製EPI−105(CAS.No.(135133−12−9))、およびダイセルUCB社製UVACURE1591などを挙げることができる。
また、光酸発生剤として、以下に示す化合物を用いることもできる。
Figure 0004262238
Figure 0004262238
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Figure 0004262238
Figure 0004262238
Figure 0004262238
上記一般式中、C1およびC2はそれぞれ単結合または二重結合を形成した炭素原子を示し、R14は水素原子、フッ素原子、フッ素原子、アルキル基、またはアリール基を示し、R15およびR16はそれぞれ1価の有機基を示す。R15とR16とは互いに結合して環構造を形成していてもよい。
光酸発生剤としては、オニウム塩を使用することが望ましい。使用可能なオニウム塩としては、例えば、フルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、ヘキサフルオロヒ素酸アニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン、パラトルエンスルホネートアニオン、あるいはパラニトロトルエンスルホネートアニオンを対イオンとするジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、およびスルホニウム塩を挙げることができる。特に、光酸発生剤は、下記一般式(4)および(5)に示すオニウム塩またはハロゲン化トリアジン化合物を含有していることが好ましい。この場合、感度と安定性との双方で有利である。
Figure 0004262238
上記一般式中、R5乃至R9は、それぞれ芳香族基およびカルコゲニド原子と芳香族とを有する官能基の何れか一方を示し、C3乃至C4はそれぞれカルコゲニド原子を示し、A1およびA2はそれぞれPF6 -、SbF6 -、BF4 -、AsF6 -、CF3SO3 -、C49SO3 -、およびCH3SO3 -からなる群より選択されるアニオン種を示し、mおよびnは整数を示す。なお、ここでいう「カルコゲニド原子」はカルコゲン原子とカルコゲン原子よりも陽性な原子を意味する。また、「カルコゲン原子」は、硫黄、セレン、テルル、ポロニウム、または沃素原子を意味する。
上記一般式(4)または(5)で表わされるオニウム塩は、硬化反応性が高く、しかも、常温での安定性に優れる。そのため、光を未照射の状態でインクジェットインクが硬化するのを抑制することができる。
上記一般式(4)または(5)で表わされる化合物を光酸発生剤として使用する場合、カルコゲニド原子として硫黄原子またはヨウ素原子が導入されていると、熱的安定性や水分に対する安定性が高められるので好ましい。この場合、アニオン種は非有機酸であることが好ましく、特にPF6 -であれば、酸性度や熱的安定性が高められる。熱的安定性および感光性能を考慮すると、フェニルスルフォニウム骨格を有するヘキサフルオロフォスフェート化合物が特に望ましい。
光酸発生剤は、酸重合性化合物100重量部に対して0.5重量部以上2重量部以下の量で配合される。0.5重量部未満では、酸重合性化合物の硬化反応が十分に進行しない。本発明の実施形態にかかる光カチオン硬化型インクジェットインクは、ビニルエーテル化合物を酸重合性化合物の主成分とするものであり、このビニルエーテル化合物の反応性は高い。したがって、光酸発生剤の含有量が2重量部以下でも、十分な硬化性能が得られる。また、2重量部を越えて過剰に配合されると、放射線照射時に発生する酸の量が多くなりすぎ、硬化物の分子量が小さくなって高い硬度が得られない。
光酸発生剤が過剰に含有された場合には、インクの粘度安定性、色材としての顔料の分散安定性などが低下する。さらに、配管やヘッドなどの部材が酸により腐食するのを避けるためにも、光酸発生剤の含有量は少ない方が望ましい。こうした理由から、本発明の実施形態にかかるインクジェットインクにおける光酸発生剤の含有量の上限は、酸重合性化合物100重量部に対して2重量部以下に規定される。
色成分としては、顔料および/または染料を含有することができる。ただし、本発明の実施形態にかかるインクジェットインクは、光酸発生剤を含有し、酸を触媒として酸重合性化合物が重合することによって硬化が進行する。このため、酸により退色しやすい染料よりも顔料を使用することが望まれる。
色成分として利用可能な顔料は、顔料に要求される光学的な発色・着色機能を有するものであれば特に限定されず、任意のものを用いることができる。ここで使用される顔料は、発色・着色性に加えて、磁性、蛍光性、導電性、あるいは誘電性等のような他の性質をさらに示すものであってもよい。この場合には、画像に様々な機能を付与することができる。また、耐熱性や物理的強度を向上させる粉体を加えてもよい。
使用可能な顔料としては、例えば、光吸収性の顔料を挙げることができる。そのような顔料としては、例えば、カーボンブラック、カーボンリファインド、およびカーボンナノチューブのような炭素系顔料、鉄黒、コバルトブルー、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化クロム、および酸化鉄のような金属酸化物顔料、硫化亜鉛のような硫化物顔料、フタロシアニン系顔料、金属の硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、およびリン酸塩のような塩からなる顔料、並びにアルミ粉末、ブロンズ粉末、および亜鉛粉末のような金属粉末からなる顔料が挙げられる。
また、例えば、染料キレート、ニトロ顔料、アニリンブラック、ナフトールグリーンBのようなニトロソ顔料、ボルドー10B、レーキレッド4Rおよびクロモフタールレッドのようなアゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む。)、ピーコックブルーレーキおよびローダミンレーキのようなレーキ顔料、フタロシアニンブルーのようなフタロシアニン顔料、多環式顔料(ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラノン顔料など)、チオインジゴレッドおよびインダトロンブルーのようなスレン顔料、キナクリドン顔料、キナクリジン顔料、並びにイソインドリノン顔料のような有機系顔料を使用することもできる。
黒インクで使用可能な顔料としては、例えば、コロンビア社製のRaven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700、キャボット社製のRegal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400、三菱化学社製のNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B、デグッサ社製のColor Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color Black S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、およびSpecial Black 4などのようなカーボンブラックを挙げることができる。
イエローインクで使用可能な顔料としては、例えば、Yellow 128、C.I.Pigment Yellow 129、C.I.Pigment Yellow 139、C.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 150、C.I.Pigment Yellow 154、C.I.Pigment Yellow 1、C.I.Pigment Yellow 2、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 14C、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 73、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 75、C.I.Pigment Yellow 83、C.I.Pigment Yellow 93、C.I.Pigment Yellow95、C.I.Pigment Yellow97、C.I.Pigment Yellow 98、C.I.Pigment Yellow 114、およびPigment Yellow 180等が挙げられる。特に、これらの黄色顔料の中でも、酸に対する色劣化が少ないPigment Yellow 180が好ましく用いられる。
また、マゼンタインクで使用可能な顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 123、C.I.Pigment Red 168、C.I.Pigment Red 184、C.I.Pigment Red 202、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48(Ca)、C.I.Pigment Red 48(Mn)、C.I.Pigment Red 57(Ca)、C.I.Pigment Red 57:1、C.I.Pigment Violet 19およびC.I.Pigment Red 112等が挙げられる。
さらに、シアンインクで使用可能な顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:34、C.I.Pigment Blue 16、C.I.Pigment Blue 22、C.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Blue 1、C.I.Pigment Blue 2、C.I.Pigment Blue 3、C.I.Vat Blue 4、およびC.I.Vat Blue 60等が挙げられる。
天然クレイ、鉛白や亜鉛華や炭酸マグネシウムなどの金属炭酸化物、バリウムやチタンなどの金属酸化物のような白色顔料も、色成分として有用である。白色顔料を含有したインクジェットインクは、白色印刷に使用可能なだけでなく、重ね書きによる印刷訂正や下地補正に使用することができる。
また、本実施形態にかかるインクジェットインクにおいては、顔料の補助成分として染料を添加することが可能である。例えば、アゾイック染料、硫化(建材)染料、分散染料、蛍光増白剤、油溶染料のような、酸性、塩基性が低く、溶媒に対して溶解性の高い染料が通常用いられる。なかでもアゾ系、トリアリールメタン系、アントラキノン系、アジン系などの油溶染料が好適に用いられる。例えば、C.I.Slovent Yellow−2、6、14、15、16、19、21、33,56,61,80など、Diaresin Yellow−A、F、GRN、GGなど、C.I.Solvent Violet−8,13,14,21,27など,C.I.Disperse Violet−1、Sumiplast Violet RR、C.I.Solvent Blue−2、11、12、25、35など、Diresin Blue−J、A、K、Nなど、Orient Oil Blue−IIN、#603など、Sumiplast Blue BGなどを挙げることができる。
上述した顔料や染料は、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。また、吸光性、彩度、色感などを高めるために、顔料と染料とを併用することもできる。さらに、顔料の分散性を高めるために、高分子バインダとの結合やマイクロカプセル化処理などを施してもよい。
インクジェットインクにおいては、色成分や粉体の平均粒径は可能な限り小さいことが望まれる。一般に、色成分や粉体の粒径は、通常、インクジェットインクを吐出するノズルの開口径の1/3以下であり、より好ましくは1/10以下程度である。このサイズは典型的には10μm以下であり、1μm以下であることが好ましい。分散不良による沈降を考慮すると、印刷用インクジェットインクとして好適な粒子径は0.35μm以下となり、通常は0.1〜0.3μmの間の平均粒子径を有する。
酸の存在下で重合する化合物は、本発明の実施形態にかかるインクジェットインクにおいて溶媒として用いられる。溶媒は、こうした特性を有する重合性化合物から実質的になる。「溶媒は重合性化合物から実質的になる」ことは、「溶媒が重合性化合物のみからなる」ことと、「重合性化合物と不可避的に混入した微量の不純物とからなる」こととを包含する。「不可避的に混入した微量の不純物」は、全溶媒中に最大で10重量%以下の濃度で存在することができる。これを越えると、実質的に残りの溶剤が空気中に飛散し、安全上の問題が低下したり、硬化物内部に残存したりして、硬化性能が低下するおそれがある。好ましくは、「不可避的に混入した微量の不純物」の含有量は、通常5重量%以下である。
酸重合性化合物は、ビニルエーテル化合物を含有し、その割合は酸重合性化合物100重量部に対して40重量部以上に規定される。こうした量でビニルエーテル化合物が含まれるので、硬化速度及び硬化硬度が高められる。ビニルエーテル化合物の含有量は、60重量部以上が好ましく、酸重合性化合物の全量がビニルエーテル化合物であることがより好ましいビニルエーテル化合物のみによって酸重合性化合物が構成される場合には、硬化硬度がさらに向上する。
ビニルエーテル化合物には、環式骨格を有するビニルエーテル化合物と脂肪族骨格を有するビニルエーテル化合物とが含まれる。
環式ビニルエーテル化合物は、具体的には、下記一般式(1)で表わされる化合物が挙げられる。
Figure 0004262238
前記一般式(1)中、R1は、ビニルエーテル基、ビニルエーテル骨格を有する基、アルコキシ基、水酸基置換体および水酸基から選択され、少なくとも1つはビニルエーテル基またはビニルエーテル骨格を有する基である。R2は置換または非置換の環式骨格を有する(p+1)価の基であり、pは0を含む正の整数である。ただし、R2がシクロヘキサン環骨格であり、pが0の場合には、揮発性の観点から、このシクロヘキサン骨格は酸素を含む構造であることがより好ましい。具体的には、環上の少なくとも一つの炭素原子はケトン構造を有する構造、酸素原子に置換されている構造、あるいは酸素含有置換基を有する構造などである。
1に導入されるビニルエーテル基の数は、硬化性の観点からは多い方が望ましく、特に制限されない。ただし、硬化後のインク層に再溶解性を付与するには、多くとも2乃至3程度の価数とすることが望まれる。
(p+1)価の有機基R2としては、例えば、ベンゼン環やナフタレン環、ビフェニル環などの芳香環を含む(p+1)価の基が挙げられる。あるいは脂環式骨格、例えばシクロアルカン骨格や、ノルボルナン骨格、アダマンタン骨格、トリシクロデンカン骨格、テトラシクロドデカン骨格、テルペノイド骨格、およびコレステロール骨格などの誘導される(p+1)価の基などでもよい。こうした環式骨格の少なくとも一つの水素原子は、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、エステル基、あるいはハロゲン基等により置換されていてもよい。
かかる脂環式骨格が橋かけ構造を有する場合、硬化物の硬度が上昇するためより望ましい。さらに、揮発性の観点からは、含酸素構造であることがより望ましい。具体的には、環状の一部の炭素がケトン構造を有する構造、酸素原子に置換されている構造、あるいは酸素含有置換基を有する構造などである。
上記一般式(1)で表わされる化合物は、通常、粘度が1mPa・secないし30mPa・sec程度である。したがって、これら化合物の使用は、インクジェットインクの粘度を十分に低下させるのに有効である。
一般式(1)で表わされる化合物のなかでも、少なくとも1つ以上のビニルエーテル基が環に直接結合している場合には、カチオン硬化性に優れる。顔料が配合された場合も、硬化性に優れるため望ましいものとなる。
環式骨格が芳香族骨格を含む場合には、硬化物に硬度を付与したり、感光剤等の溶解性を向上できるため望ましいものとなる。
また、環式骨格が脂環式骨格の場合、臭気、安全性の観点で、芳香族ビニルエーテルよりも好ましいものとなる。かかる脂環式骨格を有するビニルエーテル化合物としては、環式骨格が4〜6員環によって構成される単環、あるいはそれらが結合し橋かけ構造を有する脂環式骨格が望ましい。例えば、次の脂環式アルコール化合物の水酸基を、ビニルエーテルやプロペニルエーテルに置換した化合物等が挙げられる。シクロペンタンモノ(ジ)オール、シクロペンタンモノ(ジ)メタノール、シクロヘキサン(ジ)オール、シクロヘキサンモノ(ジ)メタノール、ノルボルナンモノ(ジ)オール、ノルボルナンモノオールモノメタノール、ノルボルナンモノ(ジ)メタノール、トリシクロデカンモノ(ジ)オール、トリシクロデカンモノ(ジ)メタノール、およびアダマンタンモノ(ジ)オールなどである。
脂環式骨格は、より具体的には下記一般式(VE1−a)または(VE1−b)で表わされる。
Figure 0004262238
(上記一般式中、X1,Z1は原子数1以上5以下のアルキレン基、Y1は原子数1以上2以下のアルキレン基であり、kは0または1である。)
上述してきた化合物の具体的としては、次のアルコール化合物の水酸基をビニルエーテルやプロペニルエーテルに置換した化合物等が挙げられる。例えば、4−シクロヘキサンジオール、ジシクロペンタジエンメタノール、イソボルネオール、1−tertブチル−4−ビニロキシシクロヘキサノールトリメチルシクロヘキサノール、ジヒドロキシオクタヒドロフェニル、ヒドロキシトリシクロデカンモノエン、メントール、1,3ジヒドロキシシクロヘキサン、デカヒドロ−2−ナフタレノール、ビニロキシシクロドデカノール、およびノルボルナンジオールなどのアルコールが挙げられる。
より具体的なビニルエーテル化合物の例を、下記Ali1〜Ali12に示す。
Figure 0004262238
Figure 0004262238
ビニルエーテル化合物が橋かけ構造を有する場合には、得られる硬化物の硬度が上昇するため、より望ましい。また、アイエスピージャパン社製のRAPI-CURE CHVE:シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、RAPI-CURE CHMVE:シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテルも一般に知られている。酸重合性を考慮すると、ビニルエーテル基が環状骨格に直接結合している化合物が好ましい。
上述した脂環式骨格を有する化合物が、構造中に酸素原子を含む場合には、揮発性や顔料分散性が高められる。例えば、脂環の一部の炭素が酸素原子に置換された構造、あるいは酸素含有置換基を有する構造などである。
酸素含有置換基を有する環構造を含んだビニルエーテル化合物としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。すなわち、4〜6員環によって構成される単環の脂環式骨格を有するアルコール化合物の水酸基を、所定の置換基で置換した化合物である。脂環式骨格は、橋かけ構造を有していてもよい。具体的には、少なくとも1つの水酸基をメトキシ基やメトキシエトキシ基、アルコキシ基、アセトキシ基やアルキルエステル基などのエーテルあるいはエステルで置換し、残りの水酸基をビニルエーテルやプロペニルエーテルに置換した化合物等などが挙げられる。例えば、そのようなアルコール化合物としては、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジ(トリ)オール、シクロヘキサンジ(トリ)メタノール、ノルボルナンジ(トリ)オール、ノルボルナンモノ(ジ)オールモノ(ジ)メタノール、ノルボルナンジ(トリ)メタノール、トリシクロデカンジ(トリ)オール、トリシクロデカンジ(トリ)メタノール、およびアダマンタンジ(トリ)オールなどが例示される。
酸素原子が脂環式骨格内に含まれる場合、さらに粘度安定性が向上するためより望ましい。かかる化合物としては、下記一般式(VE2−a)または(VE2−b)で表わされる化合物が例示される。
Figure 0004262238
(上記一般式中、X2,Y2、Z2のいずれかに少なくとも1個の酸素原子を含み、X2,Z2は原子数1以上5以下のアルキレン基または酸素原子をエーテル結合として含む2価の有機基、Y2は、酸素原子、原子数1以上2以下のアルキレン基または酸素原子をエーテル結合として含む2価の有機基を示し、kは0または1である。)
脂環式骨格は、安全性および硬化性能に優れ、環構成原子として酸素原子を有する環状炭化水素骨格は高表面張力を示す。このため、上述の化合物は、高い溶解性および分散性を備えている。なお、比較的親水性の印刷媒体に記録を行なう場合には、インクがはじかれるといった現象が生じることがある。これを低減するためにも、前述の性能を有するビニルエーテル化合物が最も好ましく用いられる。
こうした構造の環式骨格を有するビニルエーテル化合物としては、環式骨格が4〜6員環の環状エーテル骨格を有する化合物が望ましい。例えば、次のアルコール化合物の水酸基を、ビニルエーテルまたはプロペニルエーテルに置換した化合物等が挙げられる。具体的には、オキセタンモノオール、オキセタンモノメタノール、オキサペンタンモノ(ジ)オールや、オキサシクロヘキサンモノ(ジ)オール、イソソルビトールやマンニトール、オキサノルボルナンモノ(ジ)オール、オキサノルボルナンモノオールモノメタノール、オキサノルボルナンモノ(ジ)メタノール、オキサトリシクロデカンモノ(ジ)オール、オキサアダマンタンモノ(ジ)オール、およびジオキソランメンタノールなどが挙げられる。こうしたアルコール化合物においては、少なくとも1つの水素原子は、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、エステル基、あるいはハロゲン基等により置換されていてもよい。
前記一般式(VE2−a)または(VE2−b)で表わされる環状骨格において、酸素原子数と炭素原子数の比(酸素原子数/炭素原子数)は、0.08を越えることが好ましい。こうしたビニルエーテル化合物が用いられると、溶解性や印刷媒体との濡れ性などの極性に関係する物性で特徴を発揮するインクが得られる。(酸素原子数/炭素原子数)は、0.15以上が好ましく、0.25以上がより好ましい。
具体的なビニルエーテル化合物としては、CasNo.22214−12−6,CasNo.20191−85−9などが挙げられる。こうした化合物のように、オキセタン環や、ヒドロフラン環のような、歪んだ環状エーテル構造をもつ化合物が、反応性も向上するため望ましい。なかでもヒドロフラン環は揮発性の観点で望ましい。さらに硬化硬度が高まるため、かかる環式構造は橋かけ構造を有する場合、最も望ましいものとなる。より具体的には、以下に示すビニルエーテルが最も望ましい。
Figure 0004262238
上述したような酸重合性化合物に含まれる脂環式骨格がテルペノイド骨格を有する場合には、インクジェットインクまたは硬化後のインク層の人体や環境に対する安全性が向上するので好ましい。例えば、ビニルエーテルの場合、ミルセン、オシメン、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトロレノール、シトラール、メンテン、リモネン、ジペンテン、テルピノレン、テルピネン、フェランドレン、シルベストレン、ピペリトール、テルピネオール、テルピネオール、メンテンモノオール、イソプレゴール、ペラリアルデヒド、ピペリトン、ジヒドロカルボン、カルボン、ピノール、アスカリドール、ザビネン、カレン、ピメン、ボルネン、フェンケン、カンフェン、カルベオール、セスキテルペン類、ジテルペン類、トリテルペン類などの誘導体で、上述した骨格を有するアルコールの水素原子をビニル基で置換させたようなビニルエーテル化合物が挙げられる。
あるいは、上述したような骨格を有するアルコールを、オキセタン骨格を有するアルコールと脱水縮合してエーテル結合させた脂環オキセタン化合物なども好ましい。天然に多く存在するノルボルネン骨格を有するビニルエーテル化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物は、コストの面で良好である。したがって、こうした化合物もまた、好適に用いることができる。
本発明の実施形態にかかるインクジェットインクにおいては、上述したような環式構造を有するビニルエーテル化合物とともに、脂肪族骨格を有するビニルエーテル化合物が酸重合性化合物として用いられる。脂肪族骨格を有するビニルエーテル化合物としては、具体的には下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0004262238
前記一般式(2)中、R1は、ビニルエーテル基、ビニルエーテル骨格を有する基、アルコキシ基、水酸基置換体および水酸基から選択され、少なくとも1つはビニルエーテル基またはビニルエーテル骨格を有する基である。R3は、脂肪族骨格を有する(p+1)価の基であり、pは0を含む正の整数である。
上述の分子骨格に導入されるビニルエーテル基の数は、硬化性の観点からは多い方が望ましく、特に制限されない。硬化後のインク層に再溶解性を付与するには、多くとも2乃至3程度の価数とすることが望ましい。
脂肪族骨格には、アルキレン骨格、およびアルキレンエステル骨格等に加えて、アルキレングリコール骨格が含まれる。前記一般式(2)で表わされる化合物として、具体的には、トリエチレングリコールジビニルエーテル(Rapi−CureDVE3:ISP社)、ジエチレングリコールジビニルエーテル(Rapi−CureDVE2:ISP社)、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル(Rapi−CureDVB1D:ISP社)、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(Rapi−CureHBVE:ISP社)、トリプロピレングリコールジビニルエーテル(Rapi−CureDPE3:ISP社)、ドデシルビニルエーテル(Rapi−CureDDVE:ISP社)、ジプロピレングリコールジビニルエーテル(Rapi−CureDPE2:ISP社)、ヘキサンジオールジビニルエーテル(Rapi−CureHDDVE:ISP社)、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE:丸善石油化学製)、およびジエチレングリコールモノビニルエーテル(DEGV:丸善石油化学製)などが挙げられる。
以下に、脂肪族骨格を有するビニルエーテル化合物の例を示す。
Figure 0004262238
一般式(2)で示される化合物の中でも、重合性および可撓性を考慮すると、アルキレングリコール骨格を有するビニルエーテル化合物が特に好ましい。こうした性能に加えて硬化硬度および揮発性なども備えていることから、トリエチレングリコールジビニルエーテルが最も望ましい。
また、一般式(2)で示される化合物の中でも、R1の一つが水酸基である場合には、記録媒体へのインクの密着性が向上するため好ましい。
本発明の実施形態においては、上述したように環式構造を有するビニルエーテル化合物と、脂肪族骨格を有するビニルエーテル化合物とが混合して用いられる。これによって、前者の高反応性、高硬度、および高耐溶剤性などの特性と、後者の可撓性および低コスト性などの特性とを兼ね備えたインクジェットインクを得ることが可能となった。
上述してきた一連のビニルエーテル化合物は、例えば、J.Chem.Soc.,1965(2)1560−1561やJ.Am.Chem.Soc.Vol.124,No.8,1590−1591(2002)などに記載されている方法によって、好適に合成することができる。かかる方法を用いた場合、相当する芳香族アルコールや脂環アルコール化合物を出発原料とし、ハロゲン化イリジウムなどの触媒下、ビニルエーテルやプロペニルエーテルの酢酸エステルを作用させる。これによって、目的とするビニルエーテルやプロペニルエーテル化合物を容易に得ることができる。例えば、メントールと酢酸ビニルとを、イリジウム化合物を触媒として炭酸ナトリウムのトルエン混合液中で、アルゴン雰囲気の下、加熱攪拌することにより、メントールビニルエーテル(MTVE)を得ることができる。
こうした方法は、本明細書に例示されるいかなるビニルエーテル化合物の合成にも、好適に用いることができる。
本発明の実施形態にかかるインクジェットインクにおいては、酸重合性化合物の全量が上述したようなビニルエーテル化合物で占められている場合、最も優れた硬化特性が得られる。ビニルエーテル化合物の含有量は、酸重合性化合物100重量部に対して40重量部以上に規定され、その硬化特性を著しく低下させない範囲であれば、酸で重合する他の化合物がさらに配合されてもよい。これによって、インクジェットインクの保存安定性や感光剤の溶解性を高めることができる。さらに、印刷物に適当な可撓性、密着性、および光沢などの性状を付与することができる。
添加することのできる酸の存在下で重合する重合性化合物は、特に限定されず、酸重合性化合物として一般に知られている任意の化合物を用いることができる。例えば、エポキシ基、オキセタン基、およびオキソラン基などのような環状エーテル基を有する化合物、上述した置換基を側鎖に有するアクリルまたはビニル化合物、カーボネート系化合物、低分子量のメラミン化合物、ビニルカルバゾール類、スチレン誘導体、アルファ−メチルスチレン誘導体、ビニルアルコールとアクリル、メタクリルなどのエステル化合物をはじめとするビニルアルコールエステル類など、カチオン重合可能なビニル結合を有するモノマー類が挙げられる。2種以上の化合物を用いる場合には、得られるインクの硬化特性が損なわないように組み合わせを選択することが望まれる。
例えば、エポキシ化合物が挙げられる。エポキシ化合物としては、炭素数1ないし15程度の2価の脂肪族骨格または脂環式骨格を有する炭化水素基、あるいは、脂肪族鎖または脂環式骨格を一部に有する2価の基の一方あるいは両方に、エポキシ基あるいは脂環式エポキシ基を有する以下の一般式(6)または(7)で表わされる化合物を挙げることができる。
Figure 0004262238
上記一般式(6)、(7)において、R21ないしR23は、それぞれエポキシ基または脂環骨格を有するエポキシ基を示す。A21およびA22は炭素数1ないし15の2価の脂肪族骨格または脂環式骨格を有する炭化水素基、あるいは、脂肪族鎖または脂環式骨格を示す。かかる化合物における脂肪鎖や脂環の炭素原子のうち、一部が酸素原子に置換されていたり、ケトン骨格を有していてもかまわない。
上記一般式(6)または(7)で表わされる化合物は、通常、粘度が5mPa・secないし100mPa・sec程度であり、配合により吐出が損なわれることが少ない。特に、脂環式エポキシ化合物は、酸重合性を高め、感光剤の溶解性を付与することができる。
硬化後のインクに可撓性、光沢度などを付与することが要求される場合には、下記一般式(8)で表わされるエポキシ化合物を用いることもできる。下記一般式(8)で表わされる脂環式エポキシ化合物は、通常、50mPa・secないし10000mPa・sec以上の高い粘度を有する。
Figure 0004262238
上記一般式(8)において、R24およびR25はそれぞれエポキシ基または脂環骨格を有するエポキシ基であり、A23はアルキレン基および/または脂環式骨格を少なくとも有するm+1価の官能基(mは自然数)である。
例えば、酸重合性化合物100重量部に対して、ビニルエーテル化合物が50重量部ないし90重量部の割合で含有される場合には、上述の高粘度エポキシ化合物は、10重量部ないし40重量部の割合で添加されることが望まれる。これによって、吐出に必要な最低限の流動性25℃で50mPa・sec以下の粘度を確保することが可能となる。
ビニルエーテル化合物と高粘度エポキシ化合物との配合比は、重量でほぼ1:1ないし10:1とすることが好ましい。ビニルエーテル化合物と高粘度エポキシ化合物とをこのように組み合わせる場合には、光酸発生剤としては、上述した一般式(4)または(5)で表わされる化合物を用い、顔料の含有量は、酸重合性化合物100重量部に対して1重量部以上25重量部以下とすることが望ましい。なかでも、500mPa・sec以上の高粘度、高分子量のエポキシ化合物を添加した場合には、可撓性および光沢度が高められる。これによって、吐出に適切な流動性を有し、かつ所望の可撓性および光沢度を備えた硬化物を形成可能なインクジェットインクが調整可能となる。
また、下記一般式(9)で表わされるエポキシ化合物を併用して用いた場合には、インクジェットインクの保存性、およびインク層の可撓性を向上させることができる。
Figure 0004262238
上記一般式(9)中、R31はグリシジルエーテル基、R32は炭素数1ないし6のアルキレン基または水酸基置換アルキレン基、または炭素数6ないし15の脂環式骨格または水酸基置換の脂環式骨格を有するアルキレン基であり、jは1ないし3である。なかでも、適当な粘度、酸重合性、保存安定性の観点から、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル化合物が好ましい。かかるジグリシジルエーテル化合物を用いることによって、特異的といえるほど良好な性能が得られる。しかしながら、これらの化合物が過剰に添加されると、硬化性能の低下を引き起こすおそれがある。したがって、酸重合性化合物100重量部に対して、ビニルエーテル化合物が50重量部ないし90重量部の割合で含有される場合には、上述のエポキシ化合物は10重量部ないし40重量部の割合で含有されることが望まれる。
上述したようなエポキシ化合物の具体例としては、例えば、ダイセル化学社製のセロキサイド2021、セロキサイド2021A、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2000、セロキサイド3000に例示される脂環式エポキシ、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物であるサイクロマーA200、サイクロマーM100、MGMAのようなメチルグリシジル基を有するメタクリレート、低分子エポキシ化合物であるグリシドール、β−メチルエピコロルヒドリン、α−ピネンオキサイド、C12〜C14のα−オレフィンモノエポキシド、C16〜C18のα−オレフィンモノエポキシド、ダイマックS−300Kのようなエポキシ化大豆油、ダイマックL−500のようなエポキシ化亜麻仁油、エポリードGT301、およびエポリードGT401のような多官能エポキシなどを挙げることができる。
また、次のような化合物も挙げられる。例えば、サイラキュアのような米国ダウケミカル社の脂環式エポキシや、水素添加するとともに脂肪族化した低分子フェノール化合物の水酸基末端をエポキシを有する基で置換した化合物、エチレングリコールやグリセリン、ネオペンチルアルコールやヘキサンジオール、トリメチロールプロパンなどの多価脂肪族アルコール/脂環アルコールなどのグリシジルエーテル化合物、エチレンオキサイド系ポリマーの末端にグリシジルエーテル基を有する化合物などである。さらに、不飽和結合を有するテルペン系化合物を出発物質とし、その不飽和結合を酸化してエポキシ化した化合物、ヘキサヒドロフタル酸や、水添芳香族の多価カルボン酸のグリシジルエステルなどを使用することができる。
また、酸重合性化合物の一部として、オキセタン化合物を用いることができる。例えば数十m毎分という高速な印字が求められる場合や、さらに溶剤への耐性が要求される場合には、オキセタン化合物を配合することが好ましい。従来のインクジェットインクの主溶媒としてオキセタン化合物を用いた場合には、通常、粘度が著しく上昇して、他の溶媒との粘度調整が困難であった。しかしながら、ビニルエーテル化合物と組み合わせて使用する場合には、容易にインク化することが可能である。すでに説明したように、ビニルエーテル化合物は、通常、粘度が30mPa・sec以下と非常に低粘度なためである。
オキセタン化合物としては、芳香族または脂肪族、脂環式オキセタン化合物などが挙げられ、構造内に一部エーテル結合を有していてもよい。芳香族オキセタン化合物が用いられる場合には、酸重合性化合物100重量部に対して40重量部以下とすることが、溶剤耐性の点から好ましい。粘度を考慮すると、ビニルエーテル化合物の含有量が60重量部以上であることが望まれる。また、硬化促進の観点から、かかるインク内のオキセタン化合物の総添加量は、酸重合性化合物100重量部に対して40重量部以上であることが望ましい。硬化硬度の観点からは、脂環式骨格と芳香族骨格を有する化合物の総量が、酸重合性化合物100重量部に対して30重量部以上であることが望ましい。
これらの範囲を逸脱すると、硬化速度、吐出性能、および溶剤耐性といった特性全てを十分に満足することが困難となるおそれがある。
脂肪族または脂環式オキセタン化合物としては、例えば、(ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、[(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]シクロヘキサン、ビス[(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]シクロヘキサンや、ビス[(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ノルボルナンなどの脂環に1以上のオキセタン含有基が導入された化合物などが挙げられる。また、エチレングリコールやプロピレンゴリコール、ネオペンチルアルコールなどの脂肪族多価アルコールに、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンのようなオキセタン含有アルコールを脱水縮合させたエーテル化合物などを用いることもできる。
また、芳香族骨格を含むオキセタン化合物としては、例えば1,4−ビス((1−エチル−3オキセタニル)メトキシ)ベンゼン、1,3−ビス((1−エチル−3オキセタニル)メトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス((3−エチル−3オキセタニル)メトキシ)ビフェニル、およびフェノールノボラックオキセタン類が挙げられる。
ただし、過剰の添加は粘度の増大をきたし、吐出不能となる場合があるため、例えば、酸重合性化合物100重量部に対して、ビニルエーテル化合物が50重量部ないし90重量部の割合で含有される場合には、上述のオキセタン化合物は10重量部ないし60重量部の割合で添加されることが望まれる。500mPa・sec以上の高粘度、高分子量のオキセタン化合物を添加した場合には、可撓性および光沢度に優れた硬化物を得ることができる。
酸重合性を有する他の化合物として、環状カーボネート,環状エステル化合物などを添加することもできる。具体的には、プロピレンカーボネートプロペニルエーテル、ジメチルカーボネート、およびジフェニルカーボネートなどが挙げられる。これらの化合物が過剰に存在した場合には、硬化性能が低下するおそれがある。例えば、酸重合性化合物100重量部に対して、ビニルエーテル化合物が50重量部ないし90重量部の割合で含有される場合には、上述の環状化合物は5重量部ないし40重量部の割合で添加されることが望まれる。
さらに、次のような高分子量の化合物も、酸重合性化合物として添加することができる。具体的には、長鎖アルキレン基などによって結合されたエポキシ基、オキセタン基、オキソラン基などのような環状エーテル基を有する分子量5000以下の化合物、上述した置換基を側鎖に有するアクリルまたはビニル化合物、カーボネート系化合物、低分子量のメラニン化合物、ビニルエーテル類やビニルカルバゾール類、スチレン誘導体、アルファ−メチルスチレン誘導体、ビニルアルコールとアクリル、メタクリルなどのエステル化合物をはじめとするビニルアルコールエステル類など、カチオン重合可能なビニル結合を有するモノマーおよびそのモノマー1種以上が重合したオリゴマーが挙げられる。
本発明の実施形態にかかるインクジェットインクには、下記一般式(3)で表わされる化合物をさらに添加してもよい。かかる化合物は、光増感剤として作用する。
Figure 0004262238
(上記一般式(3)中、R10は炭素数1〜5の1価の有機基、R11およびR12は同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アルキルスルホニル基またはアルコキシ基である。)
一般式(3)で表わされる化合物としては、例えば、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン(、2,3−ジエチル−9,10−ジエトキシアントラセン)のようなジアルコキシアントラセンや、9,10−ジフェノキシアントラセン、9,10−ジアリルオキシアントラセン、9,10−ジ(2−メチルアリルオキシ)アントラセン、9,10−ジビニルオキシアントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−メトキシエトキシ)アントラセンなどが挙げられる。これらの化合物は、いずれを用いても十分な効果を発揮するが、化合物もしくはその合成原料の入手コストや、化合物の安全性を考慮すると、9,10−ジブトキシアントラセン、および9,10−ジビニルオキシアントラセンが特に好ましい。
本発明の実施形態にかかるインクジェットインクにおいて、光増感剤は、光酸発生剤100重量部に対して10〜50重量部の割合で添加されるのが望ましい。10重量部未満の場合には、十分な光増感効果が得られず、50重量部を越えて過剰に加えても、格別に効果が高められるわけではない。光増感剤の含有量は、使用する顔料や色によって最適量を調整する必要があるが、一般的には、20〜40重量部の範囲内が好ましい。光増感剤を添加することにより、印字物の密着性が向上する。
また、色成分として顔料を用いた場合、顔料の分散性を高めるため、さらに、少なくとも1種類以上の高分子分散剤を添加することが可能である。
高分子分散剤としては、例えば、ビニル系ポリマーおよびコポリマー、アクリル系ポリマーおよびコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、およびエポキシ樹脂等から選択される一種以上を主成分とするものが挙げられる。分散剤として作用するために、こうしたポリマーにおいては、ポリマー末端は、顔料に対する結合性や親和力を有することが好ましい。こうした高分子分散剤が顔料粒子の表面に吸着または結合し、凝集の障壁となって顔料粒子同士の凝集を妨げるため、顔料の分散性が向上し、保存安定性に優れたインクジェットインクが得られる。
また、本発明にかかるインクジェットインクは、さらにもう一種類の高分子分散剤を添加することで顔料の分散性が向上する。添加する分散剤としてはアミノ基などの塩基性基を末端に有する樹脂が最も好ましい。具体的には、アミノ末端を有するポリオレフィン、アミノ末端を有するポリエステル、およびアミノ末端を有するエポキシ樹脂などが挙げられる。
本発明の実施形態にかかるインクジェットインクは、塩基性添加剤や、界面活性剤、ラジカル重合性モノマーや、ラジカル発生剤、酸重合性でない溶剤などをさらに含むことが可能である。
塩基性添加剤としては、例えば、アンモニアやアンモニウム化合物、置換または非置換のアルキルアミンや芳香族アミン、ピリジンなどのヘテロ環骨格を有する有機アミン等が挙げられる。界面活性剤としては、例えば、脂肪族アルコール硫酸塩、アルキルアリールスルホン酸などのアニオン界面活性剤、脂肪族アミン塩類、第四級アンモニウム塩などのカチオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンエステルなどのノニオン界面活性剤等が挙げられる。また、ラジカル重合性モノマーとしては、例えばアクリルまたはメタクリル系モノマー、スチレン系モノマー、あるいはそれらのビニル系の重合性基を複数有する化合物等が挙げられる。ラジカル発生剤としては、例えば、ミヒラーケトン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、およびチオキサントン等が挙げられる。さらに、酸重合性でない溶剤としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチルなどのエステル類等が挙げられる。
本発明の実施形態にかかるインクジェットインクは感光性インクであり、安全性や臭気の観点からインクの揮発性は低いことが望まれる。具体的には、80℃における揮発速度が、0.2mg/cm2・min以下であることが望ましい。ここでの揮発量は、例えば開口面積10cm2の容器を加熱した場合、毎分あたりの揮発量(mg)を示す。この値は、容器の開口に依存するが、通常6cm直径のシャーレに4gのインクを収容して常圧下、加熱した際の値と定義している。揮発速度が大きすぎる場合には、安全性が損なわれるとともに臭気の問題が著しいものとなる。一方、揮発性が著しく乏しい、例えば0.00001mg/cm2・min以下のインクでは、通常は粘度が高くなりすぎて、インクジェット吐出が困難となる場合が多い。
すでに説明したように、本発明の実施形態にかかるインクジェットインクは、少なくとも常温で30mPa・secの流動性を有していることが望まれる。こうした性能を確保するため、上述してきたようなビニルエーテル化合物を含むn種の酸重合性化合物が混合して含有される場合、下記数式(A)式で表わされるηtが3(mPa・sec)以上30(mPa・sec)以下であることが好ましく、5(mPa・sec)以上25(mPa・sec)以下の範囲内の組成であることがより望ましい。
Figure 0004262238
(上記数式(A)中、χ1,χ2,χ3,・・・,χnは、各成分の重量組成比率であり、η1,η2,η3・・・,ηnは、各成分単独の常温常圧での粘度である。)
この範囲を逸脱すると、インクの吐出が著しく困難になるか、吐出の乱れによる像の乱れが生じやすい。さらに、かかる値が、常温で12mPa・sec以下である場合、ヘッドを加熱することなく、インクジェット吐出が可能となる。その結果、インクの保存性が向上するとともにヘッドからの揮発が低減されるため、より好ましいものとなる。
上述したように、本発明の実施形態にかかるインクジェットインクは、その像形成能力を化学増幅機構に依存している。すなわち、露光によって光酸発生剤から酸が発生し、この酸が加熱によって拡散して架橋反応の触媒として機能する。このため、このインクジェットインクでは、著しい塩基性イオンの存在は感度低下の要因となる。したがって、インクジェットインクの調製過程はもちろん、構成成分のそれぞれの製造過程でも大量の塩基性イオンが混入しないよう留意することが望ましい。
本発明の実施形態にかかるインクジェットインクは、例えば、図1に示すようなインクジェット記録装置に適用することができる。図示するインクジェット記録装置1は、記録媒体2を搬送する搬送機構3を備えている。搬送機構3の移動方向に沿って上流側から下流側には、インクジェット式の記録ヘッド4、光源5、および加熱手段としてのヒーター6が順次配置されている。
記録媒体(あるいは、被印刷物)2は、印刷可能な媒体であれば特に限定されるものではない。記録媒体2としては、例えば、紙、OHPシート、樹脂フィルム、不織布、多孔質膜、プラスチック板、回路基板、および金属基板などを使用することができる。
搬送機構3は、例えば、記録媒体2が記録ヘッド4、光源5、およびヒーター6の正面を順次通過するように媒体2を搬送する。ここでは、搬送機構3は、記録媒体2を、図中、右側から左側へ向けて搬送する。搬送機構3は、例えば、記録媒体2を移動させるベルトおよび/またはローラと、それを駆動する駆動機構とによって構成することができる。また、搬送機構3には、記録媒体2の移動を補助するガイド部材などをさらに設けてもよい。
記録ヘッド4は、画像信号に対応して記録媒体2上にインクジェットインクを吐出し、インク層を形成する。記録ヘッド4としては、例えば、キャリッジに搭載されたシリアル走査型ヘッドや、記録媒体2の幅以上の幅を有するライン走査型ヘッドを使用することができる。高速印刷の観点では、通常、後者のほうが前者に比べて有利である。記録ヘッド4からインクジェットインクを吐出する方法は、特に制限されない。例えば、発熱体の熱により発生する蒸気の圧力を利用して、インク滴を記録ヘッド4から飛翔させることができる。あるいは、圧電素子によって発生する機械的な圧力パルスを利用してインク滴を飛翔させてもよい。
光源5は、記録媒体2上のインク層に光を照射して、インク層中に酸を発生させる。光源5としては、例えば、低、中、高圧水銀ランプのような水銀ランプ、タングステンランプ、アーク灯、エキシマランプ、エキシマレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、レーザと非線形光学結晶とを組み合わせたレーザシステム、高周波誘起紫外線発生装置、電子線照射装置、X線照射装置などを使用することができる。なかでも、システムを簡便化できるため、高周波誘起紫外線発生装置、高・低圧水銀ランプや半導体レーザなどを使用することが望ましい。また、光源5に集光用ミラーや走引光学系を設けてもよい。
ヒーター6は、記録媒体2上のインク層を加熱して、酸を触媒とした架橋反応を促進する。本発明の実施形態にかかるインクジェットインクは、必ずしも露光後加熱を行なわなくても硬化させることができるが、より迅速な硬化のためには加熱を行なうことが望まれる。ヒーターとしては、例えば、赤外ランプ、発熱体を内蔵したローラ(熱ローラ)、温風または熱風を吹き出すブロワなどを使用することができる。
インク層を加熱するための加熱手段は、図1に示したように光源の下流に配置されたヒーター6に限定されるものではない。例えば、インク層への露光の際、被印刷面を損なわない程度に光源5を記録媒体2に近づけることによって、光源5を熱源としても利用することができる。コールドミラーのような除熱機構を光源に設けないことによって、同様に光源を熱源として利用してもよい。数百ワットの高出力バルブの場合には、冷却機構を同時に有しているので、その排熱機構の一部を変更して、意図的にその熱を紙面に還元する機構を設ける。これによって、光源から発生する熱によりインク層を加熱することができる。
より具体的には、光源を冷却した気流を紙面や搬送/保持機構内に再導入して、加熱に用いる機構を有する百w以上の出力の光源がそれに該当する。光源の熱の還元による記録媒体の到達温度は、上述したヒーターによる加熱と同程度の効果が得られる温度とすればよい。好ましい温度は、加熱される時間に依存して変化するが、通常少なくとも60℃以上、より好ましくは80℃から100℃である。また、露光速度が数m/秒と高速な場合には、瞬間的に加熱されるために180℃程度の高温としてもよい。
光源5として、例えば可視光に加えて赤外光を発生し得るものを使用した場合には、光照射と同時に加熱を行なうことができる。この場合には、硬化を促進させることができるので好ましい。
インク層に光を照射すると、光源5から発生する熱によってインク層が加熱されるため、加熱手段は、ヒーター6のように必ずしも独立した部材として設ける必要はない。しかしながら、光源5からの熱のみで常温で放置してインク層を完全に硬化させるには長時間を要する。したがって、常温放置は、完全硬化までに充分に長い時間を確保できる用途に適用することが望まれる。例えば、翌日に配布される新聞公告のような印刷物は、硬化までに要する時間を一昼夜程度と長く確保することができるので、常温放置でも完全硬化させることができる。
上述したように、本発明の実施形態にかかるインクジェットインクは、カチオン硬化型モノマーの中でも硬化速度の速いビニルエーテル化合物を主成分としているため、高い硬化硬度を維持しつつ、光酸発生剤の添加量を低減することが可能となった。それにより、粘度安定性や顔料分散性に優れるとともに、硬度、可撓性等の特性に優れた印刷物を形成可能なインクジェットインクが得られる。
以下、具体例を示して本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
まず、環式骨格を有するビニルエーテル化合物(成分1)として、下記化学式で表わされる化合物を用意した。
Figure 0004262238
脂肪族骨格を有するビニルエーテル化合物(成分2)としては、下記化学式で表される化合物を用意した。
Figure 0004262238
成分1と成分2とを、下記表1に示す処方で配合して、溶媒M1〜M11を得た。さらに、成分1を配合せずに溶媒M12とした。
Figure 0004262238
また、ビニルエーテル以外の酸重合性化合物を成分3としてさらに用い、下記表2に示す処方で配合して、溶媒M13〜M20を得た。また、成分3のみを用いて溶媒21とした。
Figure 0004262238
上記表中のビニルエーテルは、以下の化合物である。
4CHDV:1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル
HQDV:p−ビニロキシベンゼン
IBVE:イソボルネオールビニルエーテル
M−CHDV:2−メトキシ−1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル
ISB−DVE:イソソルバイドジビニルエーテル
ONB−DVE:ヒドロキシメチル−ヒドロキシオキサノルボルナンジオールジビニルエーテル
DVE3:トリエチレングリコールジビニルエーテル(丸善石油化学製)
DVB1D:ブタンジオールジビニルエーテル(ISP社製)
HBVE:4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(ISP社製)
また、上記表中、OXT221は、オキセタン化合物(東亞合成製)であり、C3000は、リモネンジオキサイド(ダイセル化学社製)であり、C2021は、セロキサイド2021(ダイセル化学社製)である。
得られた溶媒を用い、以下の手法でインクジェットインクを調製した。
まず、顔料としてのカーボンブラックを、アクリル樹脂系分散剤と予め混練してミルベースを得た。さらに、200ppmのノニオン系界面活性剤(住友3M社製)と市販の分散剤(味の素ファインテクノ製、製品名アジスパー)とを添加した。こうして得られた顔料を含むミルベースと光酸発生剤とを溶媒M1に加えて、ペイントシェーカで一昼夜分散処理した。
なお、顔料としてのカーボンブラックは、酸重合性化合物100重量部に対して5重量部の割合となるように配合した。光酸発生剤としてはUVACURE1591を用い、酸重合性化合物100重量部に対して2重量部の割合で用いた。ここで用いたUVACURE1591は、下記化学式で表わされるPAG1とPAG2との混合物であり、50wt%のプロピレンカーボネート溶液である。なお、本実施例で記載する光酸発生剤の割合は、有効成分のみの値で表示している。
Figure 0004262238
分散処理後の混合物を5μmのPTFEフィルタで濾過することによって、インクジェットインクNo.1を得た。さらに、溶媒M2〜21を用いた以外は上述と同様の処方により、No.2〜21のインクジェットインクを調製した。
得られたインクジェットインクの性能は、図1に示したインクジェット記録装置を用いて評価した。記録媒体2としては、通常の光沢紙またはOHPシートなどの樹脂系の記録媒体を使用し、光源5としては出力230Wの超高圧水銀ランプを使用した。加熱手段6としてのヒーターは設けず、紫外線照射のみによってインク層の硬化を試みた。こうした条件で記録を行なって、印刷物であるインク硬化膜を形成し、鉛筆硬度、印字品質、耐溶剤性、および記録媒体との密着性を調べた。
なお、鉛筆硬度は、それぞれ以下の条件でのインク層について測定した結果である。
露光直後:露光直後のインク層
ストッカー:露光後、ストッカー内で80℃の温度に3分間維持したインク層
印字品質は、印字画像を目視により確認して評価した。抜けの認められないものを“A(極めて良好)”とし、5ヶ所以下の抜けが存在するものを“B(良好)”とした。6ヶ所以上抜けが認められたものは、“C(不良)”である。
耐溶剤性は、エタノール、アセトン等の有機溶媒を含浸させた布で印字画像を擦ることにより擦過性試験を行なって、次のように評価した。
A(きわめて良好):変化なし
B(良好):布にインクが付着
C(やや不良):インク層の色が薄くなった
D(不良):インク層の一部が完全に剥がれた。
また、密着性は、クロスカットテープ剥離試験を行なって、インク膜の剥がれた面積の割合に応じて次のように評価した。
A(極めて良好):全体の5%未満
B(良好):全体の10%未満
C(不良):全体の10%以上。
インク層の可撓性は、インク硬化膜の割れ試験により評価した。具体的には、インク硬化膜を50℃から−50℃に急冷して、割れの発生を目視により評価した。割れの発生が全く認められない場合は“A(極めて良好)”とし、スジ状のひび割れが1〜3本認められるものを“B(良好)”とした。
各インクジェットインクの評価結果を、下記表3および表4にまとめる。なお、評価サンプルは、OHPシートを媒体として用いて形成した。
Figure 0004262238
Figure 0004262238
インクジェットインクNo.1〜11は、環式骨格を有するビニルエーテル化合物と脂肪族骨格を有するビニルエーテル化合物とを含有する酸重合性化合物が溶媒として用いられているので、本発明の実施形態にかかるインクジェットインクである。
No.12は、環式骨格を有するビニルエーテル化合物を含有しない酸重合性化合物が溶媒として用いられているので、比較例のインクである。
インクジェットインクNo.13〜16および18、19は、ビニルエーテル化合物の割合が酸重合性化合物100重量部に対して40重量部以上であるので、本発明の実施形態にかかるインクジェットインクである。
No.17、20は、ビニルエーテル化合物の割合が酸重合性化合物100重量部に対して40重量部未満であり、No.21は、ビニルエーテル化合物を全く含まないので、いずれも比較例である。
上記表3に示されるように、インクジェットインクNo.1〜11を用いて形成された印刷物においては、硬化直後でF以上、ストッカー内保管後でH〜2Hと高い硬度が得られた。また、No.1〜No.3の結果から、脂肪族骨格を有するビニルエーテル化合物の比率が高いほど、可撓性および密着性が向上することが示された。また、No.10に含有される脂肪族エーテル化合物としてのHBVEは水酸基を有しているため、密着性に寄与していると考えられる。
さらに、No.9、10および11の結果を比較すると、印刷物の耐溶剤性および硬度を高めるためには、脂肪族骨格を有するビニルエーテル化合物として、DVE3が特に優れていることがわかる。一方、硬度および耐溶剤性の優れた印刷物を得るためには、環式骨格を有するビニルエーテル化合物としては、ISB−DVEまたはONB−DVEを用いることが好ましい。これは、No.1とNo.7及びNo.3とNo.8の比較からわかる。
比較例であるNo.12のように、環式骨格を有するビニルエーテル化合物が含まれない場合には、得られる印刷物の硬度は不十分であり、耐溶剤性も乏しい。これに対して、環式骨格を有するビニルエーテル化合物とともに用いることによって、環式骨格を有するビニルエーテル化合物の長所と、脂肪族骨格を有するビニルエーテル化合物の長所との両方を兼ね備えたインクジェットインクが得られる。
また、酸重合性化合物100重量部に対して40重量部以上の割合でビニルエーテル化合物が含有されている場合には、その他の酸重合性化合物が併用されても、良好な印刷物を形成することができる。すなわち、高い硬度を有する印刷物が得られることは、インクジェットインクNo.13〜16および18、19の結果として、表4に示されている。しかしながら、ビニルエーテル化合物の割合が40重量部未満の場合には、ビニルエーテルの特性がうまく発現せず、硬化速度が低下する。このため、No.17、20および21のように、得られる印刷物は硬度が低く、溶剤耐性や密着性も乏しい。
続いて、光酸発生剤の含有量と硬化性能、印字性能、および保存性能などとの関係について検討を行なった。まず、溶媒M8、19および20を用いて、光酸発生剤の含有量の異なるインクジェットインクNo.22〜33を作製した。各インクジェットインクを用いて、印刷物であるインク硬化物を形成し、硬化硬度、耐溶剤性、および印字品質について比較した。得られた結果を、溶媒の種類および光酸発生剤(PAG)の含有量とともに下記表5にまとめる。表中、光酸発生剤の含有量は、酸重合性化合物100重量部に対する割合である。
Figure 0004262238
酸重合性化合物および光酸発生剤の条件を満たしているので、インクジェットインクNo.23、24、8、27、28、および19は、本発明の実施形態にかかるインクジェットインクである。
No.22、25、26および29は、光酸発生剤の含有量が0.5重量部未満または2.0重量部を越えているので、比較例のインクである。溶媒M20は、酸重合性化合物100重量部に対するビニルエーテル化合物の割合が40重量部未満であるので、本発明の範囲外である。比較のために、こうした溶媒を用いて含有量を変えて光酸発生剤を加えることにより、インクジェットインクNo.30〜33、20を調製した。
上記表5に示されるように、酸重合性化合物100重量部に対して0.5〜2.0重量部の割合で光酸発生剤が含有されたインクジェットインクは、硬度、印字品質ともに優れた印刷物を形成することができる。光酸発生剤の含有量が0.5重量部未満のインクでは、No.22、26のように高い硬度が得られ難い。これは、光照射時に発生する酸の量が足りず硬化反応が十分進行していないためであると考えられる。一方、光酸発生剤の含有量が2.0重量部を超えると、No.25、29のように、2.0重量部の場合よりも硬度が低下する。これらは、ストッカーで加熱しても、十分に硬度を印刷物の高めることができなかった。過剰の酸がインク層中に発生して、酸重合性化合物の分子量が十分に上がらないためであると考えられる。さらに、No.25、29では、印字画像にやや抜けが見られた。
また、酸重合性化合物100重量部に対するビニルエーテル化合物の割合が40重量部未満の場合には、光酸発生剤の含有量が1.0重量部以下では、硬化反応はほとんど進行しない。このことから、ビニルエーテル化合物が主成分であるインクジェットインクにおいて、光酸発生剤の含有量は、酸重合性化合物100重量部に対して0.5〜2.0重量部が最適であることが確認された。
続いて、溶媒M8およびM12を用いて、光酸発生剤含有量の異なるインクジェットインクNo.34〜39を作製し、これらのインクを用いて保存安定性の評価を行なった。保存安定性の評価は、インクを常温の条件下で6ヶ月放置して、放置前後の粘度および顔料粒子の粒径を比較することで行なった。顔料粒子の粒径の増加率によって、顔料分散性を判断できる。評価基準は、それぞれ以下の通りである。
保存後の粘度変化率
A:10%未満
B:10%以上20%未満
保存後の粒径増加率(顔料分散性)
A:1.05未満
B:1.05以上1.3未満
C:1.3以上
保存後の粘度変化が10%未満であり、かつ、粒径変化率が1.05未満であれば、良好な保存安定性を有しているということができる。すなわち、粘度変化および粒径増加率は、いずれも“A”であれば、合格範囲である。得られた結果を、下記表6にまとめる。
Figure 0004262238
酸重合性化合物および光酸発生剤の条件を満たしているので、インクジェットインクNo.34および8は、本発明の実施形態にかかるインクジェットインクである。
No.35および36は、光酸発生剤の含有量が0.5重量部未満または2.0重量部を越えているので、比較例のインクである。また、溶媒M12は環式骨格を有するビニルエーテル化合物が含まれないので、インクジェットインクNo.37〜39、12は比較例のインクである。
上記表6に示されるように、溶媒M8を用いたインクジェットインクは溶媒M12を用いたインクより、粘度安定性および顔料の分散安定性に優れていた。環式ビニルエーテルであるONB−DVEは、優れた保存安定性を有するからであり、この特性は、DVE3などの脂肪族ビニルエーテルを混合しても、何等損なわれることはない。しかしながら、溶媒M8を用いたインクにおいても、光酸発生剤の含有量が2重量部を超えると、粘度安定性や顔料分散性が悪化する。保存安定性を確保するためにも、光酸発生剤の含有量は、酸重合性化合物100重量部に対して2重量部以下に制限される。
続いて、光増感剤を添加したインクジェットインクについて評価を行なった。まず、溶媒M18に対して、顔料としてのカーボンブラック(5重量部)、および光酸発生剤としてのUVACURE1591(2重量部)を添加した。さらに光増感剤として、下記化学式で表わされる化合物を、光酸発生剤に対して30重量部添加し、ペイントシェーカで一昼夜分散処理した。分散処理後の混合物を、5μmのPTFEフィルタで濾過することによって、増感剤含有インクジェットインクNo.40および41を得た。
Figure 0004262238
得られたインクを用いて印刷物を形成し、硬度、硬化速度、印字品質、密着性および耐溶剤性を調べた。得られた結果を、増感剤の種類とともに下記表7にまとめる。なお、表7には、光増感剤を添加しない以外は同様の組成のインクジェットインクを用いた結果も併せて示す。
Figure 0004262238
上記表7に示されるように、光増感剤を添加することによって、さらに硬化硬度が向上し、耐溶剤性にも優れたインクジェットインクが得られることが示された。
本発明の一実施形態にかかるインクジェットインクを使用し得る記録装置の概略図。
符号の説明
1…インクジェット記録装置; 2…記録媒体; 3…搬送機構
4…インクジェット式記録ヘッド; 5…光源; 6…ヒーター。

Claims (9)

  1. 光酸発生剤と、色成分と、少なくとも一部がビニルエーテル化合物であり残部がオキセタン化合物からなる酸重合性化合物とを含有し、
    前記ビニルエーテル化合物は、下記一般式(1)で表わされる環式骨格を有するビニルエーテル化合物と下記一般式(2)で表わされる脂肪族骨格を有するビニルエーテル化合物とを含み、前記酸重合性化合物100重量部に対して40重量部以上の割合で含有され、前記光酸発生剤は、前記酸重合性化合物100重量部に対して0.5重量部以上2重量部以下の割合で含有されていることを特徴とするインクジェットインク。
    Figure 0004262238
    (前記一般式(1)中、R1は、ビニルエーテル基、ビニルエーテル骨格を有する基、アルコキシ基、水酸基置換体および水酸基から選択され、少なくとも1つはビニルエーテル基またはビニルエーテル骨格を有する基である。R2は、置換または非置換の環式骨格を有する(p+1)価の基であり、pは0を含む正の整数である。)
    Figure 0004262238
    (前記一般式(2)中、R1は、ビニルエーテル基、ビニルエーテル骨格を有する基、アルコキシ基、水酸基置換体および水酸基から選択され、少なくとも1つはビニルエーテル基またはビニルエーテル骨格を有する基である。R3は、脂肪族骨格を有する(p+1)価の基であり、pは0を含む正の整数である。)
  2. 前記一般式(1)で表わされる化合物における前記環式骨格は、下記一般式(VE1−a)または(VE1−b)で表わされることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。
    Figure 0004262238
    (上記一般式中、X1,Z1は原子数1以上5以下のアルキレン基、Y1は原子数1以上2以下のアルキレン基であり、kは0または1である。)
  3. 前記一般式(1)で表わされる化合物における前記環式骨格は、下記一般式(VE2−a)または(VE2−b)で表わされることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。
    Figure 0004262238
    (上記一般式中、X2,Y2、Z2のいずれかに少なくとも1個の酸素原子を含み、X2,Z2は原子数1以上5以下のアルキレン基または酸素原子をエーテル結合として含む2価の有機基、Y2は、酸素原子、原子数1以上2以下のアルキレン基または酸素原子をエーテル結合として含む2価の有機基を示し、kは0または1である。)
  4. 前記一般式(1)で表わされる化合物は、下記化学式で表わされるいずれかの化合物であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。
    Figure 0004262238
  5. 前記一般式(2)で表わされる化合物における前記脂肪族骨格は、アルキレングリコール骨格であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。
  6. 前記一般式(2)で表わされる化合物は、下記化学式で表わされる化合物であることを特徴とする請求項5に記載のインクジェットインク。
    Figure 0004262238
  7. 下記一般式(3)で表わされる化合物をさらに含有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
    Figure 0004262238
    (上記一般式(3)中、R10は炭素数1〜5の1価の有機基、R11およびR12は同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アルキルスルホニル基またはアルコキシ基である。)
  8. 少なくとも1種の高分子分散剤をさらに含有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
  9. 請求項1ないし8のいずれか1項に記載のインクジェットインクを硬化させてなる硬化物を含むことを特徴とする印刷物。
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