JP4260284B2 - 難燃剤及び難燃性樹脂組成物 - Google Patents

難燃剤及び難燃性樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リン含有化合物と、芳香族環を有する化合物で構成された難燃剤とで構成された難燃剤、およびその難燃剤と熱可塑性樹脂とを含有する難燃性樹脂組成物、ならびに前記難燃性樹脂組成物で形成された成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂のうち、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂やスチレン系樹脂などは、優れた機械的特性、電気的特性、耐候性、耐水性、耐薬品性や耐溶剤性を有する。このため、電気・電子部品、機械機構部品、自動車部品など種々の用途に利用されている。一方、これら熱可塑性樹脂は、利用分野が拡大するにつれ、機械的特性の向上とともに、安全上、難燃性であることが要求される。一般には、熱可塑性樹脂に、ハロゲン化物やアンチモン化合物を用いた難燃剤を添加することにより、難燃化する方法が知られている。しかし、ハロゲン系難燃剤においては、燃焼分解時にダイオキシン系化合物を多量に発生する場合があり、環境問題上好ましくない。そこで、非ハロゲン系難燃剤として、リン系、窒素含有化合物などを使用して、難燃化する方法が提案されている。
【0003】
特開昭64−14277号公報には、熱可塑性樹脂(ポリプロピレン)に、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、及びリン含有窒素化合物(ポリリン酸アンモニウム)からなる難燃剤を特定量添加した難燃性樹脂組成物が開示されている。特開平9−111059号公報には、ポリオレフィン系樹脂に、特定量のフェノール樹脂と、リン含有化合物(赤リン)と、膨張性黒鉛とを配合した難燃性樹脂組成物が開示されている。
【0004】
しかし、非ハロゲン系難燃剤は、有害なハロゲンを含まないものの、ハロゲン系難燃剤と比較して、難燃性が劣るため、多量の難燃剤を必要とする。多量の難燃剤の添加は、ブリードアウトや樹脂の機械的特性の低下を引き起こす。そのため、難燃性とともに、機械的特性を向上させることができない。例えば、膨張性黒鉛を併用した場合には、成形時の外観が著しく低下する。
【0005】
特開平10−195283号公報には、特定の構造を有するリン酸エステルに特定化合物(ノボラック型フェノール樹脂および第4周期8属元素又は1B属元素の酸化物)を適量組み合わせて難燃化したポリエステル樹脂組成物が開示されている。また、Plastics Engineering, 1993, Nov., p29には、ポリブチレンテレフタレート(PBT)に、赤リン及びフェノール樹脂を添加して難燃化する方法が開示されている。
【0006】
これらの方法において、ポリエステル樹脂の難燃化が可能であるが、ブリードアウトや耐熱性の低下を防止するために、特殊な化合物を併用する必要がある。特に、難燃剤として赤リンおよびフェノール樹脂をPBTに使用した場合には、赤リンの使用量が増大するだけでなく、得られた樹脂組成物は、脆性破壊を起こし、機械的強度及び引張り伸度が大きく低下する。また、上記の難燃剤においては、特定の樹脂に対して難燃化可能であるものの、幅広い熱可塑性樹脂に対しては、高い難燃性を付与できない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、幅広い熱可塑性樹脂に対して、高い難燃性を付与可能な難燃剤、およびそれを用いた難燃性樹脂組成物、並びに前記樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、熱可塑性樹脂の特性を低下させることなく、高いレベルで難燃化可能な難燃剤、およびそれを用いた難燃性樹脂組成物、並びに前記樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、難燃性が改善された成形体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、所定の熱安定性を有する芳香族環を有する化合物と、リン含有化合物と組み合わせて難燃剤を構成すると、幅広い熱可塑性樹脂に対して、優れた難燃性を示すことを見いだし、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の難燃剤は、空気中で550℃まで昇温したとき、残存率が15重量%以上である芳香族環を有する化合物と、リン含有化合物とで構成されている。また、下記式により計算される摂動エネルギー(ΔE)において、被難燃化熱可塑性樹脂の1量体カチオンと熱可塑性樹脂の1量体(1)の各炭素原子との間の摂動エネルギーの内で最大のものと、前記熱可塑性樹脂の1量体カチオンと芳香族環を有する化合物の1量体(2)の芳香族炭素原子のうち少なくとも1つ以上との間の摂動エネルギーとの比(相対反応性)は、1.2以上である。
【0012】
ΔE=−(Qr・Qs/Rrs・ε)+2(cr・cs・Δβ)/|ELUMO(s)−EHOMO(r)
(式中、Qr、Qsは、それぞれ、1量体((1)又は(2))又は1量体カチオンの形式荷電を示す。Rrsは反応に関与する原子間の距離を、εは反応場の比誘電率を示す。cr、csは、それぞれ、1量体((1)又は(2))又は1量体カチオンのアトミックオービタル係数を示す。Δβは炭素原子間の重なり積分を示す。EHOMO(r)は、1量体((1)又は(2))のHOMOのエネルギー準位を示し、ELUMO(s)は、1量体カチオンのLUMOのエネルギー準位を示す。)
1量体カチオンは、例えば、ポリブチレンテレフタレートのカチオン性フラグメントである。このような芳香族環を有する化合物は、アラルキル樹脂、芳香族ビニル樹脂(ヒドロキシル基を有する芳香族ビニルモノマーの単独又は共重合体)、ポリアリレート系樹脂、芳香族ナイロンなどであってもよい。リン含有化合物は、赤リン、(ポリ)リン酸塩、リン酸エステルなどである。
【0013】
本発明には、前記難燃剤と熱可塑性樹脂とで構成される難燃性樹脂組成物も含まれる。難燃性樹脂組成物の酸素指数は25以上、好ましくは30以上である。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリアルキレンアリレート、又はアルキレンアリレートを主成分とするコポリエステルである。
【0014】
また、本発明には、熱可塑性樹脂と難燃剤とを混合する難燃性樹脂組成物の製造方法、及び難燃性樹脂組成物で形成された成形体も含まれる。
【0015】
【発明の実施の形態】
[難燃剤]
本発明では、難燃剤を、リン含有化合物と、芳香族環を有する化合物(以下、芳香族環含有化合物と称する)とで構成することにより、幅広い熱可塑性樹脂に対して、その特性を低下させることなく、高い難燃性を付与できる。
(リン含有化合物)
リン含有化合物としては、有機リン化合物(モノマー型有機リン化合物、ポリマー型有機リン化合物など)、無機リン化合物などがあげられる。
【0016】
前記有機リン化合物のうち、モノマー型有機リン化合物には、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスフィンオキシド(トリフェニルホスフィンオキシド、トリクレジルホスフィンオキシドなど)などが含まれる。リン酸エステルとしては、脂肪族リン酸エステル[リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリイソプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリイソブチルなどのリン酸トリC1-10アルキルエステル;リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジプロピル、リン酸ジブチル、リン酸ジ(2−エチルヘキシル)などのリン酸ジC1-10アルキルエステル;リン酸モノC1-10アルキルエステルなど]、芳香族リン酸エステル[リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシリル、リン酸ジフェニルクレジル、リン酸トリ(イソプロピルフェニル)、リン酸ジフェニルエチルクレジルなどのリン酸トリC6-20アリールエステルなど]、脂肪族−芳香族リン酸エステル(リン酸メチルジフェニル、リン酸フェニルジエチルなど)などが挙げられる。
【0017】
亜リン酸エステルとしては、例えば、芳香族亜リン酸エステル(亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリクレジル、亜リン酸トリキシリル、亜リン酸ジフェニルクレジルなどの亜リン酸トリC6-20アリールエステルなど)、脂肪族亜リン酸エステル(亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリプロピル、亜リン酸トリイソプロピル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリイソブチルなどの亜リン酸トリC1-10アルキルエステル;亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジプロピル、亜リン酸ジブチルなどの亜リン酸ジC1-10アルキルエステル;亜リン酸モノC1-10アルキルエステルなど)、脂肪族−芳香族亜リン酸エステル(例えば、メタンホスホン酸ジフェニル、メタンホスホン酸ジエチルなどのアルキルホスホン酸アリールエステルなど)などが含まれる。
【0018】
また、モノマー型有機リン化合物には、アルキル基又はアリール基が置換していてもよい次亜リン酸エステル、ホスホノカルボン酸エステル、含窒素リン酸エステルなども含まれる。
【0019】
前記ポリマー型有機リン化合物としては、前記モノマー型有機リン化合物の縮合物を用いることができる。前記縮合物は、下記式(1)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【0020】
【化1】
Figure 0004260284
【0021】
(式中、R1〜R4は置換基を有していてもよいアリール基を、Zはアリーレン基を示す。nは1〜5の整数を示す)
式(1)において、R1〜R4で示されるアリール基としては、フェニル、ナフチル基などのC6-20アリール基が挙げられ、アリール基の置換基としては、メチル基、エチル基などのアルキル基が挙げられる。また、アリーレン基としては、フェニレン、ナフチレン基などのC6-20アリーレン基が挙げられる。
【0022】
上記式(1)で表される縮合物としては、例えば、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジクレジルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジクレジルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノール−Aビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノール−Aビス(ジクレジルホスフェート)、ビスフェノール−Aビス(ジキシレニルホスフェート)などが挙げられる。
【0023】
また、前記ポリマー型有機リン化合物は、ヒドロキシル基を有するポリマー(フェノール樹脂など)のリン酸エステルであってもよい。このようなポリマーのリン酸エステルとしては、例えば、下記式(2)で表される構造単位を有するポリマーが挙げられる。
【0024】
【化2】
Figure 0004260284
【0025】
(式中、R5及びR6は置換基を有していてもよいアリール基を示す)
前記アリール基としては、C6-20アリール基、特にフェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基などが挙げられ、アリール基の置換基としては、メチル基、エチル基などのアルキル基が挙げられる。
【0026】
さらに、前記ポリマー型有機リン化合物には、ポリホスフィニコカルボン酸エステル、ポリホスホン酸アミドも含まれる。ポリホスホン酸アミドとしては、例えば、下記式(3)で表される構造単位を有するポリマーが例示できる。
【0027】
【化3】
Figure 0004260284
【0028】
(式中、R7はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を示し、R8はアルキレン基、アリーレン基、又はアラルキレン基を示す。R9及びR10は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、又はアリール基を示す。また、R9及びR10は、直結して環を形成してもよい)
前記無機リン化合物としては、例えば、赤リン、リン酸塩などが含まれる。リン酸には、オルトリン酸の他に、亜リン酸、ポリリン酸(メタリン酸、ピロリン酸など)、ポリ亜リン酸(メタ亜リン酸、ピロ亜リン酸など)なども含まれる。塩としては、アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩など)、周期表3B族金属の塩(アルミニウム塩など)、アンモニウム塩などが例示できる。また、前記塩には、アミン塩、例えば、グアニジン塩又はトリアジン系化合物の塩(例えば、メラミン塩、メレム塩など)なども含まれる。
【0029】
なお、無機リン化合物は、アルキル基又はアリール基が置換していてもよい亜リン酸、次亜リン酸、ホスホノカルボン酸、ホスフィニコカルボン酸(例えば、3−メチルホスフィニコプロピオン酸、3−フェニルホスフィニコプロピオン酸など)、含窒素リン酸などの酸の金属塩などであってもよい。
【0030】
好ましいリン酸塩は、ポリリン酸の塩、特にポリリン酸アンモニウム及びポリリン酸メラミンである。
【0031】
好ましいリン含有化合物としては、リン酸エステル(脂肪族リン酸エステル、芳香族リン酸エステルなど)、無機リン化合物(ポリリン酸アンモニウムなどのポリリン酸塩、赤リンなど)など、特に赤リンが挙げられる。
【0032】
赤リンは、難燃効果が高く、少量で効果が得られるため、樹脂の特性(例えば、機械的特性や電気的特性)を損うことなく難燃化できる。赤リンとしては、通常、安定化処理を施した安定化赤リンが好ましく用いられる。特に、赤リンの粉砕を行わず、赤リン表面に水や酸素との反応性が高い粉砕面を形成させずに微粒子化した赤リン、さらには赤リンの表面が、樹脂(例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂)、金属、金属化合物(例えば、金属水酸化物、金属酸化物など)などにより単独で又は2種以上組み合わせて被覆された赤リンが好ましい。
【0033】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、アルキッド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられ、熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂などが挙げられる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタンなどが挙げられ、金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化銅、酸化鉄、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化スズなどが挙げられる。
【0034】
さらに、赤リンの表面を金属で被覆し安定化する方法としては、無電解メッキ法により、金属(鉄、ニッケル、銅、アルミニウム、亜鉛、マンガン、スズ、チタン、ジルコニウムなど)又はこれらの合金で被覆する方法が挙げられる。その他の赤リン表面の被覆方法として、金属塩(アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、チタン、銅、銀、鉄、ニッケルなどの塩)の溶液で赤リンを処理し、赤リンの表面に金属リン化合物を形成させて安定化する方法も含まれる。
【0035】
特に、赤リン表面に破砕面を形成させないで赤リンを微粒子化する方法を用い、金属成分(金属水酸化物や金属酸化物)の皮膜と樹脂の皮膜とを組み合わせて複数層で被覆処理、特に金属成分の皮膜で被覆した上に樹脂皮膜で多重に被覆処理した赤リンが好ましい。これらの安定化赤リンは、耐熱安定性、耐加水分解性に優れており、水分の存在下や高温下での分解反応によりホスフィンの生成が著しく少なく、本発明の樹脂組成物を製造する際、および成形品を製造する際の安全上の観点から使用が好ましい。
【0036】
これらの安定化赤リンの調製は、特開平5−229806号公報、特開平3−259956号公報、特開平2−209991号公報、特開平1−150309号公報、特開昭62−21704号公報、特開昭52−125489号公報、EP296501A1号公報、EP249723A2号公報などを参照できる。
【0037】
赤リンとしては、通常、安定化赤リンを粉粒状で使用できる。安定化赤リンの平均粒子径としては、例えば、0.01〜100μm、好ましくは0.1〜50μm、さらに好ましくは0.1〜30μm程度である。また、平均粒子径が、0.01〜5μm、好ましくは0.05〜4.8μm、さらに好ましくは0.1〜4.8μm程度である微粒子状(例えば、微細球状など)の安定化赤リンを使用してもよい。
【0038】
また、安定化赤リンは、エポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物、クロム系化合物などの表面改質剤によって処理してもよい。
【0039】
前記安定化赤リンは、単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。例えば、被覆処理の異なる赤リン、粒径の異なる赤リンなどを任意に組み合わせて使用できる。
【0040】
難燃剤中のリン含有化合物の使用量は、難燃性を付与できる範囲で選択され、芳香族環含有化合物100重量部に対して、リン含有化合物1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、さらに好ましくは10〜60重量部程度である。
(芳香族環含有化合物)
本発明では、燃焼時の高温まで、蒸発や分解揮発の程度が小さく、残存物の割合が大きな芳香族環含有化合物を組み合わせて用いる。
【0041】
なお、残存率は、熱重量分析(TGA)により測定でき、本発明では、芳香族環化合物を空気中で550℃まで昇温(昇温速度10℃/min)し、残存成分の残存量を芳香族環化合物に対する割合(重量基準)として算出することにより求めることができる。
【0042】
芳香族環化合物の残存率は、通常、15重量%以上(例えば、17〜60重量%)、好ましくは20重量%以上(例えば、25〜60重量%以上)、さらに好ましくは30重量%以上(例えば、33〜60重量%以上)程度である。
【0043】
また、本発明では、芳香族化合物を用いて熱可塑性樹脂を難燃化する場合、下記式(I-1)により計算される摂動エネルギー(ΔE)において、熱可塑性樹脂の1量体カチオン(特に、1量体カルボカチオン)と熱可塑性樹脂の1量体のモデル化合物(1)の反応部位(各炭素原子)との間の摂動エネルギーのうち、最大のものを基準(ΔEstandard)としたとき、熱可塑性樹脂の1量体カチオンと芳香族環化合物の1量体のモデル化合物(2)の芳香族炭素原子のうち少なくとも1つ以上との間の摂動エネルギー(ΔEaroma)との比(ΔEaroma/ΔEstandard)(相対反応性)は、通常、1.2以上(1.2〜3程度)、好ましくは1.3以上(1.3〜2.5程度)、さらに好ましくは1.4以上(1.4〜2程度)となるような芳香族化合物を用いることができる。摂動エネルギーは、活性化エネルギーと関連する数値であり、摂動エネルギーが大きい程、反応性に富む。従って、熱可塑性樹脂よりも高い摂動エネルギーを有する芳香族環化合物を用いると、芳香族環化合物は、熱可塑性樹脂よりも高い反応性(求核反応性など)を有する。このため、熱可塑性樹脂の燃焼(熱分解)により生じる熱分解フラグメント(特に、カチオン性熱分解フラグメント)は、熱可塑性樹脂よりも芳香族環化合物と優先的に反応するため、熱可塑性樹脂との連鎖的分解反応を抑制でき、熱可塑性樹脂を高度に難燃化できる。
【0044】
Figure 0004260284
(式中、Qr、Qsは、それぞれ、モデル化合物((1)又は(2))又は1量体カチオンの形式荷電を示す。Rrsは反応に関与する原子間の距離を、εは反応場の比誘電率を示す。cr、csは、それぞれ、モデル化合物((1)又は(2))又は1量体カチオンのアトミックオービタル係数を示す。Δβは炭素原子間の重なり積分を示す。EHOMO(r)は、モデル化合物((1)又は(2))のHOMOのエネルギー準位を示し、ELUMO(s)は、1量体カチオンのLUMOのエネルギー準位を示す。)
前記計算式(I-1)において、形式荷電Qr、Qs、アトミックオービタル係数cr、cs、LUMO又はHOMOのエネルギー準位EHOMO(r)、ELUMO(s)(フロンティア軌道エネルギーレベル)は、経験的(単純HMO法など)、半経験的、又は非経験的量子化学計算により求めることができる。計算結果の信頼性、及び計算の速度(効率)等の観点から、MINDO法、AM1法、PM3法などの半経験的SCF計算を利用する場合が多い。なお、電子計算機の計算速度は飛躍的に向上してきており、非経験的量子化学計算であっても、効率的に計算できる場合もある。
【0045】
重なり積分Δβは、反応系に対応した種々の既知の値を用いることができる。また、反応場の非誘電率εとしては、燃焼反応の場合、反応温度が高く、反応場に介在する媒体物質を考慮する必要がないと考えられるため、真空の非誘電率1を用いてもよい。なお、必要に応じて、より反応系に適した値を用いてもよい。
【0046】
この方法は、幅広い熱可塑性樹脂の難燃化に利用できる。例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)の難燃化では、PBTのカチオン性熱分解フラグメントの1種である1量体カルボカチオン(CH2=CHCH2CH2OCOC6H6C+=O)とポリブチレンテレフタレートモノマーとの間の摂動エネルギーを基準として、これよりも大きな摂動エネルギーを示す芳香族化合物を用いる場合が多い。なお、PBTなど、1量体カチオンがカルボカチオンの場合、重なり積分Δβは、炭素−炭素原子の重なり積分として、Houk et. al., J. Amer. Chem. Soc., 95, 7301(1973)に開示されている値(2.63)を使用できる。また、遷移状態の原子間距離Rrsは、遷移状態において、1量体カルボカチオンは芳香族環の垂直方向に位置すると考えられるため、2.5Åとすることができる。
【0047】
本発明で用いる芳香族環化合物としては、例えば、フェノール樹脂、アラルキル樹脂、芳香族ビニル樹脂、ポリアリレート系樹脂、芳香族ナイロン、芳香族エポキシ樹脂、エーテル基を有する芳香族樹脂などが例示できる。これらの樹脂は、単独又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0048】
(1)フェノール樹脂
フェノール樹脂としては、ノボラック樹脂などのフェノール誘導体とアルデヒド類との反応により得られる樹脂が挙げられる。フェノール類としては、例えば、フェノール、p−又はm−クレゾール、3,5−キシレノール、アルキルフェノール(例えば、t−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、ノニルフェノールなどのC1-20アルキルフェノール)、アリールフェノール(例えば、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クミルフェノール)などが挙げられる。これらのフェノール類は、1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0049】
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド、フェニルアセトアルデヒドなどの芳香族アルデヒドなどが挙げられる。好ましいアルデヒド類としては、ホルムアルデヒドなどが挙げられる。また、パラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒドの縮合体も使用できる。
【0050】
フェノール類とアルデヒド類との割合は、前者/後者=1/0.5〜1/1(モル比)程度である。
【0051】
前述のノボラック樹脂(特に、ランダムノボラック樹脂)の他に、本発明では、ノボラック樹脂として、オルソ/パラ比が1以上のハイオルソノボラック樹脂も使用できる。ノボラック樹脂のメチレン結合の仕方としては、各々の芳香族環の水酸基に対して、(1)オルソ位同士で結合している場合、(2)オルソ位とパラ位で結合している場合、(3)パラ位同士で結合している場合がある。
【0052】
オルソ/パラ比とは、(パラ位同士で結合しているメチレン結合数:Mp)と(オルソ位とパラ位で結合しているメチレン結合数:MOP)の1/2との和に対する、(オルソ位同士結合しているメチレン結合数:MO)と(オルソ位とパラ位で結合しているメチレン数:MOP)の1/2との和の比を意味し、下記のように表される。
【0053】
オルソ/パラ比=(MO+(1/2)MOP)/(MP+(1/2)MOP
具体的には、例えば、13C−NMRスペクトル測定から得られたメチレン結合数から、上式よりオルソ/パラ比が算出できる。
【0054】
特に、本発明のノボラック樹脂としては、オルソ/パラ比が、1以上、例えば、1〜20(特に1〜15)程度であるノボラック樹脂、すなわち、いわゆるハイオルソノボラック樹脂が好ましく用いられる。
【0055】
また、フェノール樹脂(ランダムノボラック樹脂及びハイオルソノボラック樹脂など)のフェノール性水酸基の一部又は全部が、リン化合物(例えば、リン酸、リン酸エステル、亜リン酸、亜リン酸エステル、リン酸塩化物、亜リン酸塩化物などのリン酸化合物や亜リン酸化合物など)、ホウ素化合物(例えば、ホウ酸、ホウ酸エステル、ホウ酸塩化物などのホウ酸化合物など)、及びアルカリ又はアルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど)から選択された少なくとも1種を用いて変性された変性フェノール樹脂(例えば、リン酸変性フェノール樹脂、ホウ酸変性フェノール樹脂、ナトリウム変性フェノール樹脂、カリウム変性フェノール樹脂など)も使用できる。変性フェノール樹脂において、通常、フェノール樹脂の水酸基は、アルカリ又はアルカリ土類金属(特に、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属)で変性されている。
【0056】
好ましいフェノール樹脂としては、フェノールホルアルデヒドノボラック樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂(例えば、t−ブチルフェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂、p−オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂)、およびこれらの共縮合体、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0057】
フェノール樹脂(ランダムノボラック樹脂及びハイオルソノボラック樹脂など)の数平均分子量は、特に制限されず、例えば、300〜5×104、好ましくは300〜1×104、さらに好ましくは300〜8000(特に、300〜5000)程度の範囲から選択できる。
【0058】
(2)アラルキル樹脂
アラルキル樹脂は、ジアルキルベンゼンの反応性誘導体(例えば、アルキル部位に、アルコキシ基、アシルオキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子などの反応性基が置換した誘導体)とフェノール類との反応により得ることができる。
【0059】
ジアルキルベンゼンの反応性誘導体としては、例えば、キシリレングリコールC1-4アルキルエーテル(p−キシリレングリコールジメチルエーテル、p−キシリレングリコールジエチルエーテルなど)などのアラルキルエーテル類、p−キシリレン−α,α’−ジクロライド、p−キシリレン−α,α’−ジブロマイドなどのアラルキルハライド類が挙げられる。
【0060】
フェノール類としては、例えば、フェノール、アルキルフェノール(例えば、クレゾール、キシレノール、t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノールなどのC1-20アルキルフェノール)が挙げられる。これらフェノール類は、1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0061】
ジアルキルベンゼン誘導体とフェノール類との割合は、例えば、前者/後者=1/1〜1/3(モル比)程度、好ましくは1/1〜1/2.5(モル比)程度である。
【0062】
ジアルキルベンゼン誘導体とフェノール類との反応は、必要に応じて、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、塩化スズ、塩化アルミニウムなどのフリーデルクラフツ触媒の存在下で行ってもよい。なお、ジアルキルベンゼン誘導体としてアラルキルハライド類を用いた場合、触媒の非存在下で反応できる。
【0063】
なお、アラルキル樹脂は、アニリンアラルキル樹脂であってもよい。アニリンアラルキル樹脂は、前記フェノール類に代えて、アニリン類を用いることにより得ることができる。アニリン類としては、例えば、アニリン、アルキルアニリン(例えば、トルイジン、キシリジン、オクチルアニリン、ノニルアニリンなどのC1-20アルキルアニリン)、及びN−アルキルアニリン(例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンなどのN−C1-4アルキルアニリン)などを用いることができる。
【0064】
また、アラルキル樹脂としては、フェノール類又はアニリン類由来のヒドロキシル基又はアミノ基の少なくとも一部が、リン化合物、ホウ素化合物、アルカリ又はアルカリ土類金属から選択された少なくとも1種を用いて変性された変性アラルキル樹脂も使用できる。リン化合物、ホウ素化合物、アルカリ又はアルカリ土類金属としては、前記フェノール樹脂のフェノール性水酸基の変性基と同様の化合物が使用できる。
【0065】
このようにして得られたアラルキル樹脂の軟化点は、例えば、40〜160℃程度、好ましくは50〜150℃程度、さらに好ましくは55〜140℃程度である。
【0066】
また、アラルキル樹脂は必要に応じて硬化又は変性してもよい。硬化又は変性は、通常、ポリアミン(ヘキサメチレンテトラミンなど)によるメチレン架橋、エポキシ化合物(多環エポキシドなど)によるエポキシ架橋などの慣用の方法により行うことができる。
【0067】
さらに、アラルキル樹脂は、必要に応じてエラストマー変性されていてもよい。エラストマー変性は、合成ゴム、ポリオレフィン(ポリイソブチレン、ポリエチレンなど)などのエラストーマーにより化学的に行うことができる。
【0068】
アラルキル樹脂のうち、フェノールアラルキル樹脂は、商品名「ミレックス」(三井化学(株)製)、または「Xylok」(Albright & Wilson(株)製)として入手できる。また、アニリンアラルキル樹脂は商品名「アニリックス」(三井化学(株)製)として入手できる。
【0069】
(3)芳香族ビニル樹脂
芳香族ビニル樹脂としては、ヒドロキシル基を有する芳香族ビニルモノマー(ビニルフェノール、ジヒドロキシスチレン、ビニルナフトールなど)の単独又は共重合体、または他の共重合性モノマーとの共重合体などが挙げられる。
【0070】
他の共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系モノマー[(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなど)、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなど] 、スチレン系モノマー(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルナフタリン、ビニルシクロヘキサンなど)、重合性多価カルボン酸(フマル酸、マレイン酸など)、マレイミド系モノマー(フェニルマレイミドなど)、ジエン系モノマー(イソプレン、1,3 −ブタジエン、1,4 −ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなど)、ビニル系モノマー(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;メチルビニルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類;ビニルイソブチルエーテル、ビニルメチルエーテルなどのビニルエーテル類;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾールなどの窒素含有ビニルモノマーなど)などが挙げられる。これらの共重合性モノマーは1種又は2種以上使用できる。
【0071】
ビニルモノマーと共重合性モノマーとの割合は、例えば、10/90〜100/0(重量比)、好ましくは30/70〜100/0(重量比)、さらに好ましくは50/50〜100/0(重量比)程度である。
【0072】
また、芳香族ビニル樹脂としては、ヒドロキシル基含有芳香族ビニルモノマー由来のヒドロキシル基の少なくとも一部が、リン化合物、ホウ素化合物、アルカリ又はアルカリ土類金属から選択された少なくとも1種を用いて変性された変性芳香族ビニル樹脂も使用できる。リン化合物、ホウ素化合物、アルカリ又はアルカリ土類金属としては、前記フェノール樹脂のフェノール性水酸基の変性基と同様の化合物が使用できる。なお、芳香族ビニル樹脂のヒドロキシル基は、オルガノシロキサンや遷移金属で変性されていてもよい。
【0073】
好ましい芳香族ビニル樹脂は、ビニルフェノール単独重合体(ポリヒドロキシスチレン)、特にp−ビニルフェノール単独重合体である。
【0074】
芳香族ビニル樹脂の数平均分子量は、特に制限されず、例えば、300〜50×104、好ましくは400〜30×104、さらに好ましくは500〜5×104程度の範囲から選択できる。
【0075】
(4)ポリアリレート系樹脂
ポリアリレート系樹脂は、芳香族ポリオール成分とポリカルボン酸成分(芳香族ポリカルボン酸成分、脂肪族ポリカルボン酸成分、脂環式ポリカルボン酸成分など)とを反応することにより得ることができる。
【0076】
芳香族ポリオール成分としては、単環式芳香族ジオール、多環式芳香族ジオールなどのジオールが挙げられる。単環式芳香族ジオールとしては、例えば、ベンゼンジオール(レゾルシノール、ハイドロキノン、m−キシリレングリコール、p−キシリレングリコールなど)、ナフタレンジオールなどの炭素数6〜20程度の芳香族環ジオールが挙げられる。
【0077】
多環式芳香族ジオールとしては、ビス(ヒドロキシアリール)類(ビスフェノール類)、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ビフェノール、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン[例えば、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、ビス(ヒドロキシフェニル)エタン(例えば、ビスフェノールADなど)、ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン(例えば、ビスフェノールAなど)などのビス(ヒドロキシアリール)C1-6アルカンなど]、ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン[例えば、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)C3-12シクロアルカンなど]、ビス(ヒドロキシアリール)カルボン酸[例えば、ビス−4,4−(ヒドロキシフェニル)ブタン酸などのビス(ヒドロキシアリール)C2-6カルボン酸など]などが挙げられる。また、その他の多環式芳香族ジオールには、ビス(ヒドロキシアリール)骨格を有する化合物、例えば、ジ(ヒドロキシフェニル)エーテル、ジ(ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ジ(ヒドロキシフェニル)ケトン、ジ(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、テルペンジフェノール類なども含まれる。これら芳香族ポリオールは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0078】
好ましい芳香族ポリオールには、ビスフェノール類、例えば、ビス(ヒドロキシアリール)C1-6アルカン(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールADなど)などが含まれる。
【0079】
芳香族ポリカルボン酸成分としては、例えば、単環式芳香族ジカルボン酸、多環式芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸などが挙げられる。
【0080】
単環式芳香族環ジカルボン酸成分には、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのベンゼンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸などの炭素数8〜20程度のアリールジカルボン酸が挙げられる。
【0081】
多環式芳香族ジカルボン酸としては、ビス(アリールカルボン酸)類、例えば、ビフェニルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)メタン、ビス(カルボキシフェニル)エタン、ビス(カルボキシフェニル)プロパンなどのビス(カルボキシアリール)C1-6アルカン;ビス(カルボキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(カルボキシアリール)C3-12シクロアルカン;ビス(カルボキシフェニル)ケトンなどのビス(カルボキシアリール)ケトン;ビス(カルボキシフェニル)スルホキシドなどのビス(カルボキシアリール)スルホキシド;ビス(カルボキシフェニル)エーテルなどのビス(カルボキシアリール)エーテル;ビス(カルボキシフェニル)チオエーテルなどのビス(カルボキシアリール)チオエーテルなどが挙げられる。
【0082】
好ましい芳香族ポリカルボン酸成分には、単環式芳香族ジカルボン酸(特に、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのベンゼンジカルボン酸)、ビス(カルボキシアリール)C1-6アルカンなどが含まれる。
【0083】
脂肪族ポリカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンニ酸などのC2-20脂肪族ジカルボン酸が挙げられ、ジカルボキシメチルシクロヘキサンなどのC3-10脂肪族環を有するジカルボン酸であってもよい。
【0084】
脂環式ポリカルボン酸(モノマー)としては、脂環式ジカルボン酸、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸などのC3-20脂環式ジカルボン酸が含まれる。
【0085】
好ましいポリアリレート系樹脂には、芳香族ポリオールがビスフェノール類であるポリアリレート樹脂、例えば、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールFなど)とベンゼンジカルボン酸(イソフタル酸、テレフタル酸など)とのポリエステル、ビスフェノール類とビス(アリールカルボン酸)類[例えば、ビス(カルボキシフェニル)メタン、ビス(カルボキシフェニル)エタン、ビス(カルボキシフェニル)プロパンなどのビス(カルボキシアリール)C1-4アルキル]とのポリエステルなどが挙げられる。これらポリアリレート系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0086】
また、ポリアリレート系樹脂は、芳香族ジオール及び芳香族ジカルボン酸に加えて、必要に応じて、芳香族トリオール、芳香族テトラオール[例えば、1,1,2,2−テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタンなど]、芳香族トリカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸などを併用してもよい。
【0087】
また、ポリアリレート系樹脂の末端は、アルコール類、カルボン酸類など(特に、一価のアルコール類、一価のカルボン酸類など)で封鎖(結合)されていてもよい。
【0088】
なお、難燃剤を構成するポリアリレート系樹脂は、後述の被難燃化熱可塑性樹脂のポリエステル樹脂とは異種の樹脂が使用される。
【0089】
このようにして得られたポリアリレート系樹脂の数平均分子量は、例えば、300〜30×104程度、好ましくは500〜10×104程度、さらに好ましくは500〜5×104程度である。
【0090】
(5)芳香族ナイロン
芳香族ナイロンとしては、ジアミンとジカルボン酸とから誘導されるポリアミドであって、ジアミン成分およびジカルボン酸成分のうち、少なくとも一方の成分が芳香族又は脂環族化合物であるポリアミドが挙げられる。
【0091】
ジアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、ジアミノトルエン、2,4−ジアミノメシチレン、3,5−ジエチル−2,6−ジアミノトルエン、キシリレンジアミン(特に、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン)、ビス(2−アミノエチル)ベンゼン、ビフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルビフェニル、ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3−エチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)メタン、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、1,4−ナフタレンジアミンなどの芳香族ジアミンおよびそれらのN−置換芳香族ジアミン;1,3−シクロペンタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン;トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンなどの脂肪族アミンが挙げられる。これらのジアミンは1種又は2種以上使用できる。ジアミンとしては、芳香族ジアミン(特に、キシリレンジアミン、N,N’−ジアルキル置換キシリレンジアミン)を使用するのが好ましい。
【0092】
ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸などのC2-20脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸やシクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;二量体化脂肪酸(ダイマー酸)などが挙げられる。これらのジカルボン酸は1種又は2種以上使用できる。ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸(特に、アジピン酸)を使用するのが好ましい。
【0093】
芳香族ナイロンには、ジアミン成分が芳香族化合物であるポリアミド(例えば、ジアミン成分としてキシリレンジアミンを含むポリアミド又はコポリアミド)、芳香族ジアミンとα,ω−C4-12ジカルボン酸とから得られるポリアミド(例えば、アジピン酸とメタキシリレンジアミンとから得られるポリアミド(MXD6)、スベリン酸とメタキシリレンジアミンとから得られるポリアミド、アジピン酸とパラキシリレンジアミンとから得られるポリアミド(PMD6)、スベリン酸とパラキシリレンジアミンとから得られるポリアミド、アジピン酸とN,N’−ジメチルメタキシリレンジアミンとから得られるポリアミド、スベリン酸とN,N’−ジメチルメタキシリレンジアミンとから得られるポリアミド、アジピン酸と1,3−フェニレンジアミンとから得られるポリアミド、アジピン酸と4,4’−ジアミノジフェニルメタンとから得られるポリアミド、アジピン酸とメタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンとから得られるコポリアミド、アジピン酸とメタキシリレンジアミン及びN,N’−ジメチルメタキシリレンジアミンとから得られるコポリアミド、4,4’−ジアミノビフェニレンとアジピン酸とから得られるポリアミドなど)などが挙げられる。好ましい芳香族ナイロンは、芳香族ジアミン(特に、キシリレンジアミン)とα,ω−C6-12脂肪族ジカルボン酸から得られるポリアミド(特に、MXD6)が挙げられる。これらのポリアミドは単独で又は混合して使用できる。
【0094】
芳香族ナイロンの数平均分子量は、特に制限されず、例えば、300〜5×104、好ましくは500〜1×104、さらに好ましくは500〜8000(特に、500〜5000)程度の範囲から選択できる。
【0095】
なお、難燃剤を構成する芳香族ナイロンは、後述の被難燃化熱可塑性樹脂のポリアミド系樹脂とは異種の樹脂が使用される。
【0096】
(6)芳香族エポキシ樹脂
芳香族エポキシ樹脂には、エーテル系エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂など)、芳香族アミン成分を用いたアミン系エポキシ樹脂などが含まれる。
【0097】
ビスフェノール型エポキシ樹脂を構成するビスフェノールは、前記ポリアリレート系樹脂のビス(ヒドロキシアリール)類に同じである。好ましいビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビス(ヒドロキシアリール)C1-6アルカン、特にビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールFなどのグリシジルエーテルが挙げられる。また、ビスフェノール型エポキシ樹脂には、分子量の大きな前記ビスフェノールグリシジルエーテル(すなわち、フェノキシ樹脂)も含まれる。
【0098】
ノボラック型エポキシ樹脂を構成するノボラック樹脂としては、芳香族環にアルキル基(例えば、C1-20アルキル基、好ましくはメチル基、エチル基などのC1-4アルキル基)が置換していてもよいノボラック樹脂(例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂など)を挙げることができる。
【0099】
好ましいノボラック型エポキシ樹脂には、C1-2アルキル基が置換していてもよいノボラック樹脂のグリシジルエーテルが含まれる。
【0100】
アミン系エポキシ樹脂を構成する芳香族アミン成分には、単環式芳香族アミン(アニリン、トルイジンなど)、単環式芳香族ジアミン(ジアミノベンゼン、キシリレンジアミンなど)、単環式芳香族アミノアルコール(アミノヒドロキシベンゼンなど)、多環式芳香族性ジアミン(ジアミノジフェニルメタンなど)、多環式芳香族性アミンなどが挙げられる。
【0101】
エポキシ樹脂の数平均分子量は、例えば、200〜50,000程度、好ましくは300〜10,000程度、さらに好ましくは400〜6,000程度(例えば、400〜5,000程度)である。また、フェノキシ樹脂の数平均分子量は、例えば、500〜50,000程度、好ましくは1,000〜40,000程度、さらに好ましくは3,000〜35,000程度である。
【0102】
エポキシ樹脂は、アミン系硬化剤(例えば、エチレンジアミンなどの脂肪族アミン、メタフェニレンジアミン、キシリレンジアミンなどの芳香族アミンなど)、ポリアミノアミド系硬化剤硬化剤、酸および酸無水物系硬化剤などの硬化剤により硬化して用いてもよい。
【0103】
(7)エーテル基を有する芳香族樹脂
エーテル基を有する芳香族樹脂としては、例えば、ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルフォン系樹脂などが挙げられる。
【0104】
(i)ポリエーテル系樹脂
ポリエーテル系樹脂としては、繰り返し単位に1個又は複数のエーテル基を有する芳香族樹脂が挙げられる。繰り返し単位に1個のエーテル基を有する芳香族樹脂はヒドロキシル基含有芳香族化合物、例えば、フェノール、o−、m−又はp−クレゾール、3,5−キシレノール、2,6−キシレノール、アルキルフェノール(例えば、t−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、ノニルフェノールなどのC1-20アルキルフェノール)、アリールフェノール(例えば、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クミルフェノール)などのフェノール誘導体;ナフトール、メチルナフトール、ジメチルナフトールなどのナフトール誘導体を単独又は共重合することにより得ることができる。このような芳香族樹脂としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)オキシド、ポリ(2ーメチル−6−エチル−1,4−フェニレン)オキシド、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレンオキシド、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレンオキシド、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)オキシドなどが挙げられる。
【0105】
繰り返し単位に複数のエーテル基を有する芳香族樹脂、特に繰り返し単位に2個のエーテル基を有する芳香族樹脂は、芳香族ジオール成分と芳香族ジハロゲン成分との反応により得ることができる。なお、芳香族ジオールのヒドロキシル基は、オルガノシロキサン、アルカリ又はアルカリ土類金属などにより活性化されていてもよい。芳香族ジオール成分としては、ポリアリレート系樹脂の単環式芳香族ジオール、多環式芳香族ジオールなどが使用できる。また、芳香族ジハロゲン成分も、前記単環式芳香族ジオール及び多環式芳香族ジオールのうち、ヒドロキシル基がハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素など)に置換した化合物が使用できる。このような芳香族樹脂としては、例えば、ベンゼンジオール(特に、レゾルシノール)とベンゼンジハライド(特に、2,6−ジクロロベンゾニトリル)との縮合体(PENなど、出光(株))、ビス(ヒドロキシアリール)類(特に、ビスフェノールA)とジハロビフェニル(特に、4,4’−ジブロモビフェニル)との縮合体などが挙げられる。
【0106】
ポリエーテル系樹脂は、必要に応じて、スチレン系樹脂(ポリスチレン、ABS樹脂など)、ポリアミド系樹脂(特に、m−キシリレンアジペート(MXD−6))、飽和ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリオレフィン系樹脂などのグラフト重合などにより変性されていてもよい。
【0107】
ポリエーテル系樹脂のうち、例えば、ポリフェニレンオキサイド(PPO)や変性ポリフェニレンオキサイドは、ゼネラルエレクトリック社(商品名:ノリル)、旭化成化学工業(株)(商品名:ザイロン)、三菱ガス化学(商品名:ユピエース)などから市販されている。
【0108】
(ii)ポリエーテルケトン系樹脂
ポリエーテルケトン系樹脂としては、求電子性ベンゾフェノン誘導体(ジハロゲノベンゾフェノン類、ジニトロベンゾフェノン類など)と求核性ベンゾフェノン誘導体(ジヒドロキシベンゾフェノン類又はそのアルカリ金属塩など)との反応により得られる芳香族樹脂、例えば、ポリエーテルケトン(PEK)が含まれる。
【0109】
また、ポリエーテルケトン系樹脂は、前記求電子性ベンゾフェノン誘導体(4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノンなどのジハロゲノベンゾフェノン類、4,4’−ジニトロベンゾフェノンなどのジニトロベンゾフェノン類など)と、前記単環式芳香族ジオール(ハイドロキノンなどのベンゼンジオールなど)、多環式芳香族ジオール(ビスフェノールAなどのビス(ヒドロキシアリール)類など)又はそれらのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)とを縮合することにより得られる芳香族樹脂、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。
【0110】
(iii)ポリエーテルスルフォン系樹脂
ポリエーテルスルフォン系樹脂としては、以下のような芳香族樹脂が挙げられる。
【0111】
A)ヒドロキシル基を有するジフェニルスルフォン誘導体(ハロゲノ誘導体、ニトロ誘導体など)又はそのアルカリ金属塩の単独重合体、例えば、4−フルオロ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンのカリウム塩の縮合体(ポリエーテルスルフォン(PES)など)
B)芳香族ジスルフォン酸ハライド(単環式芳香族ジスルフォン酸ハライド、多環式芳香族ジスルフォン酸ハライドなど)と芳香族エーテル(ジフェニルエーテル、フェニルナフチルエーテル、ジナフチルエーテルなどのジC6-20アリールエーテルなど)との反応により得られる芳香族樹脂、例えば、4,4’−ビフェニルジスルフォニルクロリドとジフェニルエーテルとの縮合体、
C)求電子性ジフェニルスルフォン誘導体(ジハロゲノジフェニルスルフォン類、ジニトロジフェニルスルフォン類など)と、前記単環式芳香族ジオール、多環式芳香族ジオール又はそれらのアルカリ金属塩との反応により得られる芳香族樹脂、例えば、4,4’−ジクロロジフェニルスルフォンとベンゼンジオールとハイドロキノンとの縮合体、ジクロロジフェニルスルフォンとビスフェノールAとの縮合体(ポリスルフォン(PSF)など)、
D)エーテル基とスルフォン基とを有するモノマー(4,4’−ジ(1−ナフトキシ)ジフェニルスルフォンなどの(ジアリールオキシ)ジフェニルスルフォン類)の単独又は共重合体などが挙げられる。
【0112】
エーテル基を有する芳香族樹脂の数平均分子量は、特に制限されず、例えば、300〜30×104、好ましくは400〜10×104、さらに好ましくは500〜5×104程度の範囲から選択できる。
【0113】
これらの芳香族環含有化合物は、単独または二種以上組合わせて使用してもよい。
【0114】
好ましい芳香族環含有化合物には、アルカリ金属又はアルカリ土類金属変性された芳香族環含有化合物(変性フェノール樹脂、変性アラルキル樹脂、変性芳香族ビニル樹脂など)、エーテル基を有する芳香族樹脂(ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルフォン系樹脂)などが挙げられる。
[熱可塑性樹脂]
上述のような難燃剤を用いると、熱可塑性樹脂を高いレベルで難燃化できる。このため、このような難燃剤と熱可塑性樹脂とを組み合わせて難燃性樹脂組成物を構成すると、難燃剤が少量であっても、難燃性樹脂組成物に高い難燃性を付与でき、ブリードアウトや耐熱性が低下することがない。難燃性樹脂組成物の酸素指数(JIS K 7201)は、例えば、25以上、好ましくは30以上である。
【0115】
熱可塑性樹脂と難燃剤の割合は、例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対して、難燃剤0.1〜100重量部程度、好ましくは1〜80重量部、さらに好ましくは5〜60重量部程度である。難燃剤が0.1重量部未満では、難燃化が困難であり、100重量部を越えると、樹脂の機械的強度を低下させる。
【0116】
熱可塑性樹脂としては、成形用として利用される種々の樹脂、例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ビニル系樹脂などが挙げられる。
【0117】
(1)オレフィン系樹脂
オレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン(特に、α−C2-10オレフィン)の単独又は共重合体が挙げられる。好ましいオレフィン系樹脂としては、エチレン単位を主成分(例えば、75〜100重量%)として含有するエチレン系樹脂(例えば、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−(メタ) アクリル酸共重合体など)、プロピレン単位を主成分(例えば、75〜100重量%)として含有するプロピレン系樹脂(例えば、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−( メタ) アクリル酸共重合体など)などが挙げられる。オレフィン系樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。好ましいオレフィン系樹脂は、結晶性オレフィン樹脂(特に、プロピレン系樹脂)である。
【0118】
(2)アクリル系樹脂
アクリル系樹脂には、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸C1-10アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなど(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体、あるいは(メタ)アクリル系単量体と他の共重合可能な単量体との共重合体(例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−(メタ) アクリル酸エステル共重合体など)などが含まれる。好ましいアクリル系樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、アクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸メチル共重合体、( メタ) アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ) アクリル酸メチル−スチレン共重合体などが挙げられる。これらのアクリル系樹脂は、単独又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0119】
(3)スチレン系樹脂
スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン系単量体(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロスチレンなど)の単独又は共重合体;スチレン系単量体とビニル単量体(例えば、アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル、(メタ) アクリル酸エステル、(メタ) アクリル酸、無水マレイン酸などのα,β−モノオレフィン性不飽和カルボン酸又は酸無水物あるいはそのエステルなど)との共重合体;スチレン系グラフト共重合体、スチレン系ブロック共重合体などが挙げられる。
【0120】
好ましいスチレン系樹脂としては、ポリスチレン(GPPS)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ) アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、ゴム成分にスチレン系単量体が重合した耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリスチレン系グラフト又はブロック共重合体などが含まれる。ポリスチレン系グラフト共重合体としては、ゴム成分に少なくともスチレン系単量体および共重合性単量体がグラフト重合した共重合体(例えば、ポリブタジエンにスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合したABS樹脂、アクリルゴムにスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合したAAS樹脂、塩素化ポリエチレンにスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合したACS樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体にスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合した重合体、エチレン−プロピレンゴムにスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合した重合体、ポリブタジエンにスチレンとメタクリル酸メチルをグラフト重合したMBS樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムにスチレン、アクリルニトリルがグラフト重合した樹脂などが挙げられる。ブロック共重合体としては、ポリスチレンブロックとジエン又はオレフィンブロックとで構成された共重合体(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)ブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレン−スチレン(SEPS)ブロック共重合体) などが挙げられる。
【0121】
(4)ポリアミド系樹脂
ポリアミドには、ジアミンとジカルボン酸とから誘導されるポリアミド;アミノカルボン酸、必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸を併用して得れるポリアミド;ラクタム、必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸との併用により誘導されたポリアミドが含まれる。ポリアミドには、少なくとも2種の異なったポリアミド形成成分により形成されるコポリアミドも含まれる。
【0122】
ジアミンとしては、例えば、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン;フェニレンジアミン、メタキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン;ビス(4−アミノシクロハキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンなどの脂環族ジアミンが挙げられる。これらのジアミンは1種又は2種以上使用できる。
【0123】
ジカルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、オクタデカン二酸などのC4-20脂肪族ジカルボン酸;二量体化脂肪酸(ダイマー酸);シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸やシクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸やテレフタル酸、ナフタレンカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0124】
アミノカルボン酸としては、例えば、アミノヘプタン酸、アミノノナン酸、アミノウンデカン酸などのC4-20アミノカルボン酸が例示される。アミノカルボン酸も一種又は二種以上使用できる
ラクタムとしては、例えば、ブチロラクタム、ビバロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、ドデカラクタムなどのC4-20ラクタムが挙げられる。これらのラクタムも1種又は2種以上組み合せて使用できる。
【0125】
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸および/又はイソフタル酸)と脂肪族ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)とから得られるポリアミド、脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸)と芳香族ジアミン(例えば、メタキシリレンジアミン)とから得られるポリアミド、芳香族および脂肪族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸とアジピン酸)と脂肪族ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)とから得られるポリアミドなどが挙げられる。これらのポリアミドは単独で又は混合して使用できる。好ましいポリアミドには、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ジアミン成分およびジカルボン酸成分のうち、少なくとも一方の成分が芳香族化合物であるポリアミドなどが含まれる。
【0126】
(5)ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合、オキシカルボン酸又はラクトンの重縮合、またはこれらの成分の重縮合などにより得られるホモポリエステル又はコポリエステルである。
【0127】
ジカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸などの炭素数6〜40程度のジカルボン酸、好ましくは炭素数1〜14程度のジカルボン酸)、脂環式ジカルボン酸(例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸などの炭素数8〜12程度のジカルボン酸)、芳香族ジカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4' −ジフェニルケトンジカルボン酸などの炭素数8〜16程度のジカルボン酸)、又はこれらの誘導体(例えば、低級アルキルエステル、酸無水物などのエステル形成可能な誘導体)が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独又は二種以上組み合わせて使用してもよい。さらに、必要に応じて、トリメット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸などを併用してもよい。
【0128】
好ましいジカルボン酸成分には、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が含まれる。
【0129】
ジオール成分には、例えば、脂肪族アルキレンジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオールなどの炭素数2〜12程度の脂肪族グリコール、好ましくは炭素数2〜10程度の脂肪族グリコール)、ポリオキシアルキレングリコール[アルキレン基の炭素数が2〜4程度であり、複数のオキシアルキレン単位を有するグリコール、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど]、脂環族ジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAなど)、芳香族ジオール[例えば、ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、キシリレングリコールなど]などが挙げられる。これらのジオール成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。さらに、必要に応じて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのポリオールを併用してもよい。
【0130】
好ましいジオール成分には、C2-6アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの直鎖状アルキレングリコール)、繰返し数が2〜4程度のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコール[ジエチレングリコールなどのポリ(オキシ−C2-4アルキレン)単位を含むグリコール]、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが含まれる。
【0131】
オキシカルボン酸には、例えば、オキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸、ヒドロキシフェニル酢酸、グリコール酸、オキシカプロン酸などのオキシカルボン酸又はこれらの誘導体などが含まれる。
【0132】
ラクトンには、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(例えば、ε−カプロラクトンなど)などのC3-12アルキルラクトンなどが含まれる。
【0133】
好ましいポリエステル系樹脂には、アルキレンテレフタレート、アルキレンナフタレートなどのアルキレンアリレートを主成分(例えば、50〜100重量%、好ましくは75〜100重量%程度)とするホモポリエステル又はコポリエステル、例えば、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2-4アルキレンテレフタレート)、ポリアルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリC2-4アルキレンナフタレート)などのホモポリエステル;アルキレンテレフタレート及び/又はアルキレンナフタレート単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含有するコポリエステルが含まれる。特に好ましいポリエステル系樹脂には、ブチレンテレフタレート単位を主成分として含有するポリブチレンテレフタレート系樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートコポリエステル)が含まれる。なお、これらのポリエステル系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0134】
また、コポリエステルにおいて、共重合可能な単量体としては、C2-6アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの直鎖状アルキレングリコールなど)、繰返し数が2〜4程度のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコール(ジエチレングリコールなどのポリ(オキシ−C2-4アルキレン)単位を含むグリコールなど)、C6-12脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸など)、芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸など)などが挙げられる。
【0135】
なお、ポリエステル系樹脂は、溶融成形性などを損なわない限り、直鎖状のみならず分岐鎖構造を有していてもよく、また架橋されていてもよい。また、液晶ポリエステルであってもよい。
【0136】
ポリエステル樹脂は、慣用の方法、例えば、エステル交換、直接エステル化法などにより製造できる。
【0137】
(6)ポリカーボネート系樹脂
ポリカーボネート系樹脂には、ジヒドロキシ化合物と、ホスゲン又はジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとの反応により得られる重合体が含まれる。ジヒドロキシ化合物は、脂環族化合物などであってもよいが、好ましくはビスフェノール化合物である。
【0138】
ビスフェノール化合物としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタンなどのビス(ヒドロキシアリール)C1-6アルカン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)C4-10シクロアルカン;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド;4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトンなどが挙げられる。
【0139】
好ましいポリカーボネート系樹脂には、ビスフェノールA型ポリカーボネートが含まれる。
【0140】
(7)ビニル系樹脂
ビニル系樹脂としては、ビニル系単量体(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、クロトン酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニルエステル;塩素含有ビニル単量体(例えば、塩化ビニル);フッ素含有ビニル単量体(例えば、フルオロエチレン、クロロプレンなど);メチルビニルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドンなどのビニルアミン類など)の単独又は共重合体、あるいは他の共重合可能なモノマーとの共重合体などが含まれる。
【0141】
前記ビニル系樹脂の誘導体(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)も使用できる。
【0142】
(8)その他の樹脂
その他の樹脂としては、ポリアセタール系樹脂、脂肪族ポリケトン系樹脂(ケトン樹脂);ポリフェニレンスルフィド系樹脂(例えば、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリビフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなど);ポリスルホン(例えば、熱可塑性ポリスルホン;熱可塑性ポリウレタン系樹脂(例えば、トリレンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物と、前記グリコール及び/又は前記ジアミンとの反応により得られる重合体、ポリテトラメチレングリコールなどのセグメントを有していてもよいポリウレタンエラストマーなど);熱可塑性ポリイミド;ポリオキシベンジレン;熱可塑性エラストマーなどが例示できる。
【0143】
これらの高分子化合物を、単独または二種以上組合わせて使用してもよい。
【0144】
好ましい熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、液晶ポリエステルであってもよいポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ビニル系樹脂などが挙げられ、さらに好ましくは、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン系樹脂が挙げられ、特にPBT系樹脂が好ましい。
【0145】
上記の熱可塑性樹脂の数平均分子量は、特に制限されず、樹脂の種類や用途に応じて適宜選択され、例えば、5×103〜200×104、好ましくは1×104〜150×104、さらに好ましくは1×104〜100×104程度の範囲から選択できる。また、熱可塑性樹脂がポリエステル系樹脂の場合、数平均分子量は、例えば、5×103〜100×104、好ましくは1×104〜70×104、さらに好ましくは1.2×104〜30×104程度であってもよい。
【0146】
[添加剤]
本発明の難燃剤及び難燃性樹脂組成物は、必要に応じて、種々の添加剤を含んでいてもよい。難燃剤の添加剤としては、他の難燃剤、ドリッピング防止剤などが挙げられる。
【0147】
他の難燃剤には、例えば、窒素含有難燃剤、硫黄含有難燃剤、ケイ素含有難燃剤、アルコール系難燃剤、無機系難燃剤(金属酸化物、金属水酸化物など)などが含まれる。
【0148】
窒素含有難燃剤としては、アミン類、例えば、尿素類、グアニジン類、トリアジン系化合物(例えば、メラミン、メラム、メレム、アンメリン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなど)、トリアジン系化合物とシアヌール酸又はイソシアヌール酸との塩(前者:後者(モル比)=1:1〜1:2程度の塩、例えば、メラミンシアヌレート、グアナミンシアヌレート、アセトグアナミンシアヌレート、ベンゾグアナミンシアヌレートなど)などが挙げられる。
【0149】
硫黄含有難燃剤としては、硫酸エステルの他に、有機スルホン酸、スルファミン酸、有機スルファミン酸、及びそれらの塩、エステル、アミドなどが挙げられる。
【0150】
ケイ素含有難燃剤には、(ポリ)オルガノシロキサンが含まれる。(ポリ)オルガノシロキサンとしては、ジアルキルシロキサン(例えば、ジメチルシロキサンなど)、アルキルアリールシロキサン(フェニルメチルシロキサンなど)、ジアリールシロキサンなどのモノオルガノシロキサン及びこれらの単独重合体(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサンなど)、又は共重合体などが含まれる。また、(ポリ)オルガノシロキサンとしては、分子末端や主鎖に、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エーテル基などの置換基を有する変性(ポリ)オルガノシロキサン(例えば、変性シリコーンなど)なども使用できる。
【0151】
アルコール系難燃剤としては、多価アルコール、オリゴマーの多価アルコール、エステル化された多価アルコール、置換されたアルコール、糖類(単糖類、多糖類など)などが挙げられる。
【0152】
無機系難燃剤のうち、金属酸化物としては、例えば、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化銅、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化マンガン、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどが挙げられる。金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化スズ、水酸化ジルコニウムが挙げられる。
【0153】
また、前記無機系難燃剤には、金属スズ酸塩(例えば、ズズ酸亜鉛など)、金属ホウ酸塩(例えば、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸亜鉛など)、膨張性黒鉛なども含まれる。
【0154】
これら他の難燃剤は、一種又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0155】
他の難燃剤の含有量は、例えば、芳香族環含有化合物100重量部に対して、0.1〜50重量部程度、好ましくは1〜30重量部程度の範囲から選択できる。
【0156】
さらに、本発明の難燃剤は、フッ素系樹脂などのドリッピング防止剤を添加してもよい。ドリッピング防止剤により、燃焼時の火種及び融液の滴下(ドリップ)を抑制できる。フッ素系樹脂組成物には、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルなどのフッ素含有モノマーの単独又は共重合体;前記フッ素含有モノマーと、エチレン、プロピレン、アクリレートなどの共重合性モノマーとの共重合体が含まれる。このようなフッ素系樹脂組成物としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライドなどの単独重合体;テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体などの共重合体が例示される。これらのフッ素系樹脂は、一種又は二種以上混合して使用できる。
【0157】
前記フッ素系樹脂は、粒子状で使用してもよく、平均粒径は、例えば、10〜5000μm程度、好ましくは100〜1000μm程度、さらに好ましくは200〜700μm程度であってもよい。
【0158】
フッ素系樹脂の含有量は、芳香族環含有化合物100重量部に対して、例えば、0.01〜30重量部程度、好ましくは0.1〜10重量部程度である。
【0159】
また、本発明の難燃性樹脂組成物も種々の添加剤(例えば、他の難燃剤、ドリッピング防止剤、酸化防止剤など)を含んでいてもよい。添加剤の全体の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、例えば、0.01〜50重量部程度、好ましくは0.1〜30重量部程度、さらに好ましくは1〜20重量部程度である。
【0160】
難燃性樹脂組成物の他の難燃剤、ドリッピング防止剤(フッ素系樹脂など)には、前記難燃剤の他の難燃剤、ドリッピング防止剤が使用できる。他の難燃剤の含有量は、例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01〜50重量部程度、好ましくは0.05〜30重量部程度、特に0.1〜20重量部程度の範囲から選択できる。また、フッ素系樹脂の含有量は、例えば、熱可塑性樹脂と芳香族環含有化合物との合計100重量部に対して、0.01〜10重量部程度、好ましくは0.1〜5重量部程度、さらに好ましくは0.1〜3重量部程度の範囲から選択できる。
【0161】
酸化防止剤又は安定剤には、例えば、フェノール系(ヒンダードフェノール類など)、アミン系(ヒンダードアミン類など)、リン系、イオウ系、ヒドロキノン系、キノリン系酸化防止剤などが含まれる。酸化防止剤又は安定剤を添加することにより、難燃性樹脂組成物は、長期間に亘って安定に耐熱性を維持できる。
【0162】
フェノール系酸化防止剤には、ヒンダードフェノール類、例えば、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−オクタデシル−3−(4’,5’−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、ステアリル−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート、ジステアリル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタンなどが含まれる。
【0163】
ヒンダードフェノール類の中でも、特に、例えば、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC2-10アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのジ又はトリオキシC2-4アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];例えば、グリセリントリス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC3-8アルカントリオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC4-8アルカンテトラオールテトラキス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などが好ましい。
【0164】
アミン系酸化防止剤には、ヒンダードアミン類、例えば、トリ又はテトラC1-3アルキルピペリジン又はその誘導体[ 例えば、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなど] 、ビス(トリ、テトラ又はペンタC1-3アルキルピペリジン)C2-20アルキレンジカルボン酸エステル[ 例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オギサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート] 、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)エタン、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−シクロヘキシル−1,4−フェニレンジアミンなどが含まれる。
【0165】
リン系安定剤(又は酸化防止剤)には、例えば、トリイソデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイト、トリス(分岐C3-6アルキルフェニル)ホスファイト[ 例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス[2−(1,1−ジメチルプロピル)−フェニル]ホスファイト、トリス[2,4−(1,1−ジメチルプロピル)−フェニル]ホスファイトなど] 、ビス(2−t−ブチルフェニル)フェニルホスファイト、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−フェニルフェニル)ホスファイト、ビス(C3-9アルキルアリール)ペンタエリスリトールジホスファイト[例えば、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなど]、トリフェニルホスフェート系安定剤(例えば、4−フェノキシ−9−α−(4−ヒドロキシフェニル)−p−クメニルオキシ−3,5,8,10−テトラオキサ−4,9−ジホスファピロ[ 5,5] ウンデカン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェートなど)、ジホスフォナイト系安定剤(例えば、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル)−4,4' −ビフェニレンジホスフォナイトなど)などが含まれる。リン系安定剤は、通常、分岐C3-6アルキルフェニル基(特に、t−ブチルフェニル基)を有している。
【0166】
ヒドロキノン系酸化防止剤には、例えば、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノンなどが含まれ、キノリン系酸化防止剤には、例えば、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどが含まれ,イオウ系酸化防止剤には、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどが含まれる。
【0167】
これらの酸化防止剤は単独で、又は二種以上組み合わせて使用できる。酸化防止剤の含有量は、例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜2.5重量部、特に0.1〜1重量部程度の範囲から選択できる。
【0168】
なお、熱可塑性樹脂としてポリエステル系樹脂又はポリカーボネート系樹脂を用いる場合、無機リン化合物を添加すると、熱安定性がさらに向上する。無機リン化合物としては、例えば、無機リン酸(リン酸、亜リン酸、ホスフォン酸、ホスフィン酸、ポリリン酸、ポリ亜リン酸、ホスホノカルボン酸、含窒素リン酸など)及びそれらの酸性金属塩などが挙げられる。
【0169】
無機リン酸の酸性金属塩には、例えば、無機リン酸水素アルカリ金属類(例えば、NaH2PO4、Na2HPO4、KH2PO4、K2HPO4などのリン酸水素アルカリ金属類)、無機リン酸水素アルカリ土類金属類(例えば、CaHPO4、Ca(H2PO42、MgHPO4、Mg(H2PO42、などのリン酸水素アルカリ土類金属類など)、無機リン酸水素アルミニウム(例えば、Al(H2PO43など)などが挙げられる。
【0170】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、機械的強度、剛性、耐熱性及び電気的性質などをさらに向上させるため、充填剤により改質されていてもよい。充填剤には、繊維状充填剤、非繊維状充填剤(粉粒状充填剤、板状充填剤など)が含まれる。
【0171】
繊維状充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、金属繊維、高融点有機質繊維(例えば、脂肪族又は芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、フッ素系樹脂、ポリアクリロニトリルなどのアクリル樹脂など)などが例示できる。
【0172】
非繊維状充填剤のうち、粉粒状充填剤には、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ミルドファイバー(例えば、ミルドガラスファイバーなど)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、ケイ藻土、ウォラストナイトなどのケイ酸塩;酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなどの金属酸化物;水酸化アルミニウムなどの水酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属の硫酸塩、炭化ケイ素などの金属粉末が含まれる。
【0173】
板状充填剤には、例えば、マイカ、ガラスフレーク、各種金属箔などが挙げられる。
【0174】
好ましい繊維状充填剤としては、ガラス繊維、カーボン遷移が挙げられ、好ましい非繊維状充填剤としては、粉粒状又は板状充填剤、特に、ガラスビーズ、ミルドファイバー、カオリン、タルク、マイカ、及びガラスフレークが挙げられる。
【0175】
また、特に好ましい充填剤には、高い強度・剛性を有するガラス繊維が含まれる。
【0176】
充填剤を用いる場合、難燃性樹脂組成物中の充填剤の割合は、例えば、5〜60重量%程度、好ましくは5〜50重量%程度、さらに好ましくは5〜35重量%程度である。
【0177】
これら充填剤の使用に当たっては、必要ならば収束剤又は表面処理剤を使用することが望ましい。このような収束剤又は表面処理剤としては、官能性化合物、例えば、エポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物など、好ましくはエポキシ系化合物など、特にビスフェノールA型またはノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0178】
充填剤は、前記収束剤又は表面処理剤により、収束処理又は表面処理されていてもよい。処理の時期については、充填剤の添加と同時に処理してもよく、添加前に予め処理していてもよい。
【0179】
収束剤又は表面処理剤(特に、官能性表面処理剤)の使用量は、充填剤に対して5重量%以下、好ましくは0.05〜2重量%程度である。
【0180】
さらに、本発明の難燃剤及び難燃性樹脂組成物は、目的に応じて他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤としては、安定剤(紫外線吸収剤、耐熱安定剤、耐候安定剤など)、滑剤、離型剤、着色剤、可塑剤、核剤、衝撃改良剤、摺動剤などが挙げられる。
【0181】
[難燃性樹脂組成物の製造方法]
本発明の難燃性樹脂組成物は、粉粒体混合物や溶融混合物であってもよく、熱可塑性樹脂と、難燃剤と、必要により難燃助剤、他の難燃剤、ドリッピング防止剤、酸化防止剤、充填剤又は他の添加剤などとを慣用の方法で混合することにより調製できる。例えば、▲1▼各成分を混合して、一軸又は二軸の押出機により混練し押出してペレットを調製した後、成形する方法、▲2▼一旦、組成の異なるペレット(マスターバッチ)を調製し、そのペレットを所定量混合(希釈)して成形に供し、所定の組成の成形品を得る方法、▲3▼成形機に各成分の1又は2以上を直接仕込む方法などが採用できる。また、成形品に用いられる組成物の調製において、熱可塑性樹脂の粉粒体の一部又は全部と、他の成分(難燃剤など)とを混合して溶融混練すると、他の成分の分散を向上させるのに有利である。
【0182】
なお、ハンドリングの観点から、熱可塑性樹脂、芳香族環含有樹脂、及びリン含有化合物から選ばれた少なくとも二種の成分を一旦溶融混合することにより、マスターバッチを調製すると便利である。特に、リン含有化合物として赤リンを用いる場合、マスターバッチを調製する場合が多い。なお、マスターバッチを構成する成分のうち、少なくとも一種の成分は樹脂成分である。また、樹脂成分でマスターバッチを構成する場合、熱可塑性樹脂の一部をマスターバッチに用いることが多い。
【0183】
前記マスターバッチとしては、例えば、(1)熱可塑性樹脂の一部とリン含有化合物とで構成されたマスターバッチ、(2)難燃剤を構成する樹脂成分とリン含有化合物とで構成されたマスターバッチ、(3)難燃剤を構成する樹脂成分と熱可塑性樹脂と、リン含有化合物とで構成されたマスターバッチなどが挙げられる。
【0184】
なお、前記マスターバッチは、必要に応じて、種々の添加剤、例えば、難燃助剤、フッ素系樹脂、酸化防止剤、リン安定剤、充填剤などを含有していてもよい。
【0185】
このようにして得られたマスターバッチと、熱可塑性樹脂と、必要に応じて、残りの成分とを溶融混合することにより、難燃性樹脂組成物を製造できる。
【0186】
また、本発明の難燃性樹脂組成物を溶融混練し、押出成形、射出成形、圧縮成形などの慣用の方法で成形でき、形成された成形品は、難燃性および成形加工性に優れているため、種々の用途に使用できる。例えば、電気・電子部品、機械機構部品、自動車部品などに好適に用いることができる。
【0187】
【発明の効果】
本発明では、所定の残存率を有する芳香族環化合物を用いるため、リン含有化合物と組み合わせることで、高い難燃化能を有する難燃剤を効率的に構成できる。このため、ハロゲン系難燃剤を使用することなく、熱可塑性樹脂を高度に難燃化できる。さらに、本発明の難燃性樹脂組成物は、ブリードアウトを抑制でき、特別な化合物を使用することなく機械的特性を高いレベルで維持できる。
【0188】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0189】
なお、下記の試験により芳香族環化合物又は樹脂組成物の物性を評価した。
(残存率)
熱重量分析計(パーキンエルマー社製 TGA7)を用い、空気中で、試料を昇温速度10℃/minで550℃まで昇温した。試料の重量(W1)と550℃到達時点での残存成分の重量(W2)とから、下記式に基づいて残存率を算出した。
【0190】
残存率(重量%)=W2/W1
(燃焼性試験)
UL94に準拠して、試験片の厚み0.8mmについて燃焼性を評価した。
(酸素指数)
JIS K 7201に準拠して酸素指数を測定した。
【0191】
実施例及び比較例では、下記の熱可塑性樹脂、難燃剤を使用した。
【0192】
[熱可塑性樹脂A]
A−1:ポリブチレンテレフタレート(ジュラネックス、固有粘度=0.83、ポリプラスチックス(株)製)
[難燃剤]
(リン含有化合物B)
B−1:赤リン(ノーバエクセル140、燐化学工業(株)製)
(化合物C:芳香族環含有化合物又は比較化合物)
C−1:ポリp−ビニルフェノール(マルカリンカーM S−1P、数平均分子量1100、丸善石油化学(株)製)
C−2:ナイロンMXD6(レニー6002、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)
C−3:ノボラック樹脂(PR−53195、住友デュレズ(株)製)
C−4:ポリブチレンテレフタレート(ジュラネックス、固有粘度=0.83、ポリプラスチックス(株)製)
C−5:ポリスチレン(ダイセルスチロール60、ダイセル化学工業(株)製)
C−6:ポリフェニレンスルフィド(フォートロン0220A9、ポリプラスチックス(株)製)
C−7:フェノール
C−8:ビスフェノールA
参考例1
(PBT1量体カチオンとPBTモノマー間の摂動エネルギーΔEstandard
半経験的分子軌道法計算パッケージMOPACのPM3法により、ポリブチレンテレフタレート(PBT)の1量体カチオン(CH2=CHCH2CH2OCOC6H6C+=O)とPBTの1量体(1繰り返し単位化合物)との間の電子状態を算出したところ、次のような値が得られた。なお、PBT1量体の反応部位(反応性芳香族炭素)は全て等価であるため、PBTモノマーのアトミックナンバーによらず、同一の計算結果となる。
【0193】
s=0.5471、Qr=−0.0632
s=0.6155、cr 2=0.2490
LUMO(s)=−6.649(eV)、EHOMO(r)=−10.071(eV)
従って、PBT1量体カチオンとPBT1量体との摂動エネルギー(ΔEstandard)は、前記式(I-1)において、原子間距離Rrsを2.5Å、比誘電率εを1、ΔEstandard=0.3675となる。なお、重なり積分Δβは、文献(Houk et. al., J. Amer. Chem. Soc., 95, 7301(1973))の値(2.63)を利用した。
(芳香族環含有化合物の相対反応性)
PBTに対する芳香族環化合物の相対反応性は、PBT1量体カチオンと芳香族環化合物の1量体のモデル化合物との間の摂動エネルギーをΔEaromaとすると、下記式(I-2)で表される。
【0194】
Figure 0004260284
(式中、Qr、Qsは、それぞれ、1量体モデル化合物、又はPBT1量体カチオンの形式荷電を示し、cr、csは、それぞれ、1量体モデル化合物、又はPBT1量体カチオンの反応部位炭素のアトミックオービタル係数を示す。EHOMO(r)は、1量体モデル化合物のHOMOのエネルギー準位を示し、ELUMO(s)は、PBT1量体カチオンのLUMOのエネルギー準位を示す。Rrs、ε、及びΔβは前記に同じ)
s、cs、ELUMO(s)、及びΔEstandardに、上述の計算結果を代入し、各項の単位を(eV)に統一すると、相対反応性は、下記式(I-3)で表される。
【0195】
相対反応性=−0.596・Qr+14.26cr 2/|-6.649−EHOMO(r)| (I-3)
(ポリp−ビニルフェノールの相対反応性)
芳香族環化合物がポリp−ビニルフェノールである場合、1量体モデル化合物としてp−エチルフェノールが使用できる。p−エチルフェノールの電子状態は次のようにして算出する。
【0196】
▲1▼p−エチルフェノールの初期構造として、表1に示す原子座標を用いた。なお、アトミックナンバーに対応する原子は、下記式(4)に示す。MOPAC(Ver.6)のPM3法により、構造最適化を行い、固有ベクトル、アトミックチャージを計算した。
【0197】
【化4】
Figure 0004260284
【0198】
【表1】
Figure 0004260284
【0199】
固有ベクトル計算結果のうち、HOMOに対応する24番目のエネルギーレベル(EHOMO(r))、芳香族原子のPZ方向のAO係数(cr)、アトミックチャージ(Qr)は、反応性芳香族原子、すなわちアトミックナンバー(ATOM No.)2、3、4、7の炭素原子において、それぞれ、以下の様になる。
【0200】
ATOM No.2:EHOMO(r)=-8.953eV、cr= 0.3398、Qr=-0.1402
ATOM No.3:EHOMO(r)=-8.953eV、cr=-0.2145、Qr=-0.0646
ATOM No.4:EHOMO(r)=-8.953eV、cr= 0.3056、Qr=-0.1883
ATOM No.7:EHOMO(r)=-8.953eV、cr=-0.2705、Qr=-0.0676
上記計算結果と式(I-3)により、各アトミックナンバーにおける相対反応性は、以下のようになる。
【0201】
ATOM No.2:相対反応性=1.24
ATOM No.3:相対反応性=0.55
ATOM No.4:相対反応性=1.46
ATOM No.7:相対反応性=0.66
以上より、ポリp−ビニルフェノール(モデル化合物:p−エチルフェノール)の相対反応性の最大値は、1.46となる。
【0202】
同様にして種々の芳香族化合物又はモデル化合物の相対反応性を計算した。結果を表2に示す。
【0203】
【表2】
Figure 0004260284
【0204】
実施例1〜3及び比較例1〜5
ポリブチレンテレフタレート(A−1)100重量部、赤リン(B−1)8.7重量部、及び表3に示す化合物C 27重量部を混合し、押出機により混練し、押出して樹脂組成物を調製した。得られた樹脂の難燃性、酸素指数を表3に示す。
【0205】
【表3】
Figure 0004260284
【0206】
表3から明らかなように、比較例に比べ、実施例では相対反応性及び残存率の大きい芳香族環含有化合物を用いているため、難燃性樹脂組成物は高い難燃性を有している。

Claims (17)

  1. リン含有化合物と、芳香族環を有する化合物とで構成される難燃剤であって、前記芳香族環を有する化合物が、
    (i)空気中で550℃まで昇温したときの残存率が15重量%以上であり、
    (ii)下記式により計算される摂動エネルギー(ΔE)において、被難燃化熱可塑性樹脂の1量体カチオンと熱可塑性樹脂の1量体(1)の各炭素原子との間の摂動エネルギーの内で最大のものと、前記熱可塑性樹脂の1量体カチオンと芳香族環を有する化合物の1量体(2)の芳香族炭素原子のうち少なくとも1つ以上との間の摂動エネルギーとの比(相対反応性)が1.2以上であるとともに、
    ΔE=−(Qr・Qs/Rrs・ε)+2(cr・cs・Δβ)/|ELUMO(s)−EHOMO(r)
    (式中、Qr、Qsは、それぞれ、1量体((1)又は(2))又は1量体カチオンの形式荷電を示す。Rrsは反応に関与する原子間の距離を、εは反応場の比誘電率を示す。cr、csは、それぞれ、1量体((1)又は(2))又は1量体カチオンのアトミックオービタル係数を示す。Δβは炭素原子間の重なり積分を示す。EHOMO(r)は、1量体((1)又は(2))のHOMOのエネルギー準位を示し、ELUMO(s)は、1量体カチオンのLUMOのエネルギー準位を示す。)
    前記芳香族環を有する化合物が、アラルキル樹脂、ヒドロキシル基を有する芳香族ビニルモノマーの単独又は共重合体、ポリアリレート系樹脂、及び芳香族ナイロンから選ばれた少なくとも1種である難燃剤。
  2. 1量体カチオンが、ポリブチレンテレフタレートのカチオン性フラグメントである請求項1記載の難燃剤。
  3. リン含有化合物が、赤リン、(ポリ)リン酸塩、及びリン酸エステルから選択された少なくとも1種である請求項1又は2記載の難燃剤。
  4. リン含有化合物が安定化赤リンである請求項1〜3のいずれかに記載の難燃剤。
  5. 芳香族環を有する化合物100重量部に対して、リン含有化合物1〜100重量部を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の難燃剤。
  6. さらに窒素含有難燃性化合物を含む請求項1〜5のいずれかに記載の難燃剤。
  7. さらにフッ素系樹脂を含む請求項1〜6のいずれかに記載の難燃剤。
  8. 請求項1記載の難燃剤と熱可塑性樹脂とで構成され、かつ酸素指数が25以上である難燃性樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂が、ポリアルキレンアリレート、又はアルキレンアリレートを主成分とするコポリエステルである難燃性樹脂組成物
  9. 熱可塑性樹脂が、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、エチレンナフタレートおよびブチレンナフタレートから選択された少なくとも1種の単位を有するホモ又はコポリエステルである請求項記載の難燃性樹脂組成物。
  10. 熱可塑性樹脂が、ポリブチレンテレフタレート、又はブチレンテレフタレートを主成分とするコポリエステルである請求項8又は9記載の難燃性樹脂組成物。
  11. 熱可塑性樹脂100重量部に対して、難燃剤0.1〜100重量部を含有する請求項8〜10のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
  12. さらにヒンダードフェノール系酸化防止剤及びリン系安定剤の少なくともいずれか一方を含む請求項8〜11のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
  13. さらに充填剤を含む請求項8〜12のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
  14. ポリアルキレンアリレート、又はアルキレンアリレートを主成分とするコポリエステルからなる熱可塑性樹脂と請求項1記載の難燃剤とを混合して難燃性樹脂組成物を製造する方法。
  15. 熱可塑性樹脂、難燃剤を構成する樹脂成分、及びリン含有化合物から選ばれた少なくとも2種の成分で構成されたマスターバッチと、熱可塑性樹脂とを溶融混合する請求項14記載の難燃性樹脂組成物を製造する方法。
  16. 請求項記載の難燃性樹脂組成物で形成された成形体。
  17. 成形体が、電気・電子部品、機械機構部品又は自動車部品である請求項16記載の成形体。
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