JP3871477B2 - 難燃性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂と、リン含有化合物および側鎖にヒドロキシル基含有芳香族環を有する樹脂で構成された難燃剤とを含有する難燃性樹脂組成物およびその製造方法、ならびにこの難燃性樹脂組成物で形成された成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂のうち、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂やスチレン系樹脂などは、優れた機械的特性、電気的特性、耐候性、耐水性、耐薬品性や耐溶剤性を有するため、電気・電子部品、自動車部品など種々の用途に利用されている。一方、利用分野が拡大するにつれ、難燃特性の向上が検討されている。
【0003】
そこで、ハロゲン化合物やアンチモン化合物を用いた難燃剤を添加することにより、熱可塑性樹脂を難燃化する方法が提案されている。例えば、特開昭63−150349号公報には、ポリアミド樹脂とナイロン66からなる混合樹脂に、ガラス繊維、有機ハロゲン系難燃剤、三酸化アンチモン、及びアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を配合して難燃化された樹脂組成物が開示されている。また、臭素化したポリマーとして、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリp−ビニルフェノールなどが高分子量難燃剤として市販されている。しかし、ハロゲン系難燃剤においては、燃焼分解時にダイオキシン系化合物を発生する場合があり、環境問題上好ましくない。そこで、非ハロゲン系難燃剤として、リン系、窒素含有化合物などを使用して、難燃化する方法が提案されている。
【0004】
特開平6−25506号公報には、芳香族ビニル化合物とビニル単量体との共重合体、ゴム質重合体とのグラフト共重合体、およびノボラック樹脂からなる熱可塑性樹脂に、リン系化合物を添加した難燃性樹脂組成物が開示されている。特開平9−111059号公報には、ポリオレフィン系樹脂に、特定量のフェノール樹脂、リン含有化合物(赤リン)、および膨張性黒鉛を配合してなる難燃性樹脂組成物が開示されている。また、特開平10−195283号公報には、特定の構造を有するリン酸エステルに特定化合物(ノボラック型フェノール樹脂および鉄、コバルト、ニッケル又は銅の酸化物)を適量組み合わせて、難燃化したポリエステル樹脂組成物が開示されている。
【0005】
しかし、非ハロゲン系難燃剤は、有害なハロゲンを含まないものの、ハロゲン系難燃剤と比較して、難燃効果が劣るため、多量の難燃剤を必要とする。多量の難燃剤の添加は、ブリードアウトや樹脂の機械的特性の低下を引き起こす。そのため、難燃性とともに、機械的特性を向上させることができない。例えば、膨張性黒鉛を併用した場合には、成形時の外観が著しく低下する。特に、リン含有化合物としてリン酸エステルを使用した場合には、ブリードアウトや耐熱性の低下を引き起こす。
【0006】
このように、従来の方法では、樹脂の特性を低下させることなく、高い難燃性を付与することは困難である。また、上記の難燃剤においては、特定の樹脂に対して難燃化可能であるものの、熱可塑性樹脂全般に対しては、その難燃効果が充分でない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、少量の難燃剤であっても、高いレベルで難燃化された非ハロゲン含有難燃性樹脂組成物およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、熱可塑性樹脂の特性を低下させることなく、難燃化された難燃性樹脂組成物およびその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、難燃性が改善された成形体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討の結果、熱可塑性樹脂に、特定の非ハロゲン系難燃性組成物を添加することにより、高いレベルで難燃化できることを見いだし、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の難燃性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と難燃剤とを含有する難燃性樹脂組成物であって、前記熱可塑性樹脂がポリエステル系樹脂であり、前記難燃剤が、リン含有化合物および側鎖にヒドロキシル基含有芳香族環を有する樹脂としてのビニルフェノールの単独又は共重合体で構成され、かつ前記リン含有化合物の割合が、前記側鎖にヒドロキシル基含有芳香族環を有する樹脂100重量部に対して1〜100重量部である。この組成物は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、難燃剤0.1〜100重量部を含有してもよい。
【0013】
リン含有化合物は、赤リン、(ポリ)リン酸塩、リン酸エステルなどが含まれる。
【0016】
さらに、本発明の難燃性樹脂組成物は、フッ素系樹脂、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系安定剤、窒素含有難燃剤及び充填剤などの添加剤を単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0017】
また、本発明には、熱可塑性樹脂と難燃剤とを混合して難燃性樹脂組成物を製造する方法、および上記難燃性樹脂組成物で形成された成形体も含まれる。
【0018】
なお、本明細書は、前記リン化合物と側鎖にヒドロキシル基含有芳香族環を有する樹脂との組み合わせで構成された難燃剤(又は難燃性組成物)も開示する。
【0019】
【発明の実施の形態】
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂としては、成形用として利用される種々の樹脂、例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ビニル系樹脂などが挙げられる。
(1)オレフィン系樹脂
オレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン(特に、α−C2-10オレフィン)の単独又は共重合体が挙げられる。好ましいオレフィン系樹脂としては、エチレン単位を主成分(例えば、75〜100重量%)として含有するエチレン系樹脂(例えば、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体など)、プロピレン単位を主成分(例えば、75〜100重量%)として含有するプロピレン系樹脂(例えば、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−(メタ)アクリル酸共重合体など)などが挙げられる。オレフィン系樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0020】
(2)アクリル系樹脂
アクリル系樹脂には、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸C1-10アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなど(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体、あるいは(メタ)アクリル系単量体と他の共重合可能な単量体との共重合体(例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)などが含まれる。好ましいアクリル系樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、アクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸メチル共重合体、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体などが挙げられる。これらのアクリル系樹脂は、単独又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0021】
(3)スチレン系樹脂
スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン系単量体(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロスチレンなど)の単独又は共重合体;スチレン系単量体とビニル単量体(例えば、アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸などのα,β−モノオレフィン性不飽和カルボン酸又は酸無水物あるいはそのエステルなど)との共重合体;スチレン系グラフト共重合体、スチレン系ブロック共重合体などが挙げられる。
【0022】
好ましいスチレン系樹脂としては、ポリスチレン(GPPS)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、ゴム成分にスチレン系単量体が重合した耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリスチレン系グラフト又はブロック共重合体などが含まれる。ポリスチレン系グラフト共重合体としては、ゴム成分に少なくともスチレン系単量体および共重合性単量体がグラフト重合した共重合体(例えば、ポリブタジエンにスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合したABS樹脂、アクリルゴムにスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合したAAS樹脂、塩素化ポリエチレンにスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合したACS樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体にスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合した重合体、エチレン−プロピレンゴムにスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合した重合体、ポリブタジエンにスチレンとメタクリル酸メチルをグラフト重合したMBS樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムにスチレン、アクリルニトリルがグラフト重合した樹脂などが挙げられる。ブロック共重合体としては、ポリスチレンブロックとジエン又はオレフィンブロックとで構成された共重合体(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)ブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレン−スチレン(SEPS)ブロック共重合体)などが挙げられる。
【0023】
(4)ポリアミド系樹脂
ポリアミドには、ジアミンとジカルボン酸とから誘導されるポリアミド;アミノカルボン酸、必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸を併用して得られるポリアミド;ラクタム、必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸との併用により誘導されたポリアミドが含まれる。ポリアミドには、少なくとも2種の異なったポリアミド形成成分により形成されるコポリアミドも含まれる。
【0024】
ジアミンとしては、例えば、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン;フェニレンジアミン、メタキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン;ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンなどの脂環族ジアミンが挙げられる。これらのジアミンは1種又は2種以上使用できる。
【0025】
ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸やテレフタル酸、ナフタレンカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸やシクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、オクタデカン二酸などのC4-20脂肪族ジカルボン酸;二量体化脂肪酸(ダイマー酸)などが挙げられる。
【0026】
アミノカルボン酸としては、例えば、アミノヘプタン酸、アミノノナン酸、アミノウンデカン酸などのC4-20アミノカルボン酸が例示される。アミノカルボン酸も一種又は二種以上使用できる
ラクタムとしては、例えば、ブチロラクタム、ビバロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、ドデカラクタムなどのC4-20ラクタムが挙げられる。これらのラクタムも1種又は2種以上組み合せて使用できる。
【0027】
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸および/又はイソフタル酸)と脂肪族ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)とから得られるポリアミド、脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸)と芳香族ジアミン(例えば、メタキシリレンジアミン)とから得られるポリアミド、芳香族および脂肪族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸とアジピン酸)と脂肪族ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)とから得られるポリアミドなどが挙げられる。これらのポリアミドは単独で又は混合して使用できる。好ましいポリアミドには、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ジアミン成分およびジカルボン酸成分のうち、少なくとも一方の成分が芳香族化合物であるポリアミドなどが含まれる。
【0028】
(5)ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合、オキシカルボン酸又はラクトンの重縮合、またはこれらの成分の重縮合などにより得られるホモポリエステル又はコポリエステルである。好ましいポリエステル系樹脂は、通常、飽和ポリエステル系樹脂、特に芳香族飽和ポリエステル系樹脂が含まれる。
【0029】
ジカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸などの炭素数6〜40程度のジカルボン酸、好ましくは炭素数1〜14程度のジカルボン酸)、脂環式ジカルボン酸(例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸などの炭素数8〜12程度のジカルボン酸)、芳香族ジカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンカルボン酸、4,4’−ジフェニルカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエーテルカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルケトンジカルボン酸などの炭素数8〜16程度のジカルボン酸)、又はこれらの誘導体(例えば、低級アルキルエステル、酸無水物などのエステル形成可能な誘導体)が挙げられる。
【0030】
さらに、必要に応じて、トリメット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸などを併用してもよい。
【0031】
好ましいジカルボン酸成分には、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が含まれる。
【0032】
ジオール成分には、例えば、脂肪族アルキレンジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオールなどの炭素数2〜12程度の脂肪族グリコール、好ましくは炭素数2〜10程度の脂肪族グリコール)、ポリオキシアルキレングリコール[アルキレン基の炭素数が2〜4程度であり、複数のオキシアルキレン単位を有するグリコール、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど]、脂環族ジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAなど)、芳香族ジオール[例えば、ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、キシリレングリコールなど]などが挙げられる。
【0033】
さらに、必要に応じて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのポリオールを併用してもよい。
【0034】
好ましいジオール成分には、C2-6アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの直鎖状アルキレングリコール)、繰返し数が2〜4程度のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコール[ジエチレングリコールなどのポリ(オキシ−C2-4アルキレン)単位を含むグリコール]、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが含まれる。
【0035】
オキシカルボン酸には、例えば、オキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸、ヒドロキシフェニル酢酸、グリコール酸、オキシカプロン酸などのオキシカルボン酸又はこれらの誘導体などが含まれる。
【0036】
ラクトンには、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(例えば、ε−カプロラクトンなど)などのC3-12ラクトンなどが含まれる。
【0037】
好ましいポリエステル系樹脂には、アルキレンテレフタレート、アルキレンナフタレートなどのアルキレンアリレートを主成分(例えば、50〜100重量%、好ましくは75〜100重量%程度)とするホモポリエステル又はコポリエステル、例えば、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリ1,4−シクロへキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2-4アルキレンテレフタレート)、ポリアルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリC2-4アルキレンナフタレート)などのホモポリエステル;アルキレンテレフタレート及び/又はアルキレンナフタレート単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含有するコポリエステル;ジカルボン酸成分及びジオール成分の双方の成分が芳香族化合物である完全芳香族ポリエステル(例えば、ポリアリレートなど)が含まれる。特に好ましいポリエステル系樹脂には、ブチレンテレフタレート単位を主成分として含有するポリブチレンテレフタレート系樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートコポリエステル)が含まれる。なお、これらのポリエステル系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0038】
また、コポリエステルにおいて、共重合可能な単量体としては、C2-6アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの直鎖状アルキレングリコールなど)、繰返し数が2〜4程度のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコール(ジエチレングリコールなどのポリ(オキシ−C2-4アルキレン)単位を含むグリコールなど)、C6-12脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸など)、芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸など)などが挙げられる。
【0039】
なお、ポリエステル系樹脂は、溶融成形性などを損なわない限り、直鎖状のみならず分岐鎖構造を有していてもよく、また架橋されていてもよい。また、液晶ポリエステルであってもよい。
【0040】
ポリエステル系樹脂は、慣用の方法、例えば、エステル交換反応、直接エステル化法などにより製造できる。
【0041】
(6)ポリカーボネート系樹脂
ポリカーボネート系樹脂には、ジヒドロキシ化合物と、ホスゲン又はジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとの反応により得られる重合体が含まれる。ジヒドロキシ化合物は、脂環族化合物などであってもよいが、好ましくはビスフェノール化合物である。
【0042】
ビスフェノール化合物としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタンなどのビス(ヒドロキシアリール)C1-6アルカン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)C4-10シクロアルカン;4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル;4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン;4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド;4,4′−ジヒドロキシジフェニルケトンなどが挙げられる。
【0043】
好ましいポリカーボネート系樹脂には、ビスフェノールA型ポリカーボネートが含まれる。
【0044】
(7)ポリフェニレンオキシド系樹脂
ポリフェニレンオキシド系樹脂には、単独重合体および共重合体が含まれる。単独重合体としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)オキシド、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)オキシド、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)オキシド、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)オキシド、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)オキシド、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)オキシドなどが挙げられる。
【0045】
ポリフェニレンオキシドの共重合体としては、ベンゼンホルムアルデヒド樹脂やアルキルベンゼンホルムアルデヒド樹脂に、クレゾール、p−tert−ブチルフェノールなどのアルキルフェノールを反応させて得られるアルキルフェノール変性ベンゼンホルムアルデヒド樹脂ブロックと、主体構造としてのポリフェニレンオキシドブロックとで構成された変性ポリフェニレンオキシド共重合体、ポリフェニレンオキシド又はその共重合体にスチレン系重合体がグラフトしている変性グラフト共重合体などが挙げられる。
【0046】
(8)ビニル系樹脂
ビニル系樹脂としては、ビニル系単量体(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、クロトン酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニルエステル;塩素含有ビニル単量体(例えば、塩化ビニル);フッ素含有ビニル単量体(例えば、フルオロエチレン、クロロプレンなど);メチルビニルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドンなどのビニルアミン類など)の単独又は共重合体、あるいは他の共重合可能なモノマーとの共重合体などが含まれる。
【0047】
前記ビニル系樹脂の誘導体(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)も使用できる。
【0048】
好ましいビニル系樹脂には、ハロゲン含有ビニル系樹脂、例えば、ポリ塩化ビニルなどの塩化ビニル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体などのフッ素系樹脂が例示できる。
【0049】
(9)その他の樹脂
その他の樹脂としては、ポリアセタール系樹脂、脂肪族ポリケトン系樹脂(ケトン樹脂);ポリフェニレンスルフィド系樹脂(例えば、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリビフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなど);ポリスルホン(例えば、熱可塑性ポリスルホン、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(4,4′−ビスフェノールエーテルスルホンなど);ポリエーテルイミド;ポリエーテルケトン;ポリ(エーテルエーテルケトン);熱可塑性ポリウレタン系樹脂(例えば、トリレンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物と、前記グリコール及び/又は前記ジアミンとの反応により得られる重合体、ポリテトラメチレングリコールなどのセグメントを有していてもよいポリウレタンエラストマーなど);熱可塑性ポリイミド;ポリオキシベンジレン;熱可塑性エラストマーなどが例示できる。
【0050】
これらの高分子化合物を、単独または二種以上組合わせて使用してもよい。
【0051】
好ましい熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、液晶ポリエステルであってもよいポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ビニル系樹脂などが挙げられ、さらに好ましくは、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン系樹脂が挙げられ、特にPBT系樹脂が好ましい。
【0052】
上記の熱可塑性樹脂の数平均分子量は、特に制限されず、樹脂の種類や用途に応じて適宜選択され、例えば、5×103〜200×104、好ましくは1×104〜150×104、さらに好ましくは1×104〜100×104程度の範囲から選択できる。また、熱可塑性樹脂がポリエステル系樹脂の場合、数平均分子量は、例えば、5×103〜100×104、好ましくは1×104〜70×104、さらに好ましくは1.2×104〜30×104程度であってもよい。
【0053】
[難燃剤]
本発明の難燃剤は、リン含有化合物と側鎖にヒドロキシル基含有芳香族環を有する樹脂とで構成されている。
(リン含有化合物)
リン含有化合物としては、有機リン化合物(モノマー型有機リン化合物、ポリマー型有機リン化合物など)、無機リン化合物などがあげられる。
【0054】
前記有機リン化合物のうち、モノマー型有機リン化合物には、リン酸エステル、亜リン酸エステル、次亜リン酸エステル、ホスフィンオキシド(トリフェニルホスフィンオキシド、トリクレジルホスフィンオキシドなど)、リン酸アミド、亜リン酸アミド、次亜リン酸アミドなどが含まれる。リン酸エステルとしては、脂肪族リン酸エステル[リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリイソプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリイソブチルなどのリン酸トリC1-10アルキルエステル;リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジプロピル、リン酸ジブチル、リン酸ジ(2−エチルヘキシル)などのリン酸ジC1-10アルキルエステル;リン酸モノC1-10アルキルエステルなど]、芳香族リン酸エステル[リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシリル、リン酸ジフェニルクレジル、リン酸トリ(イソプロピルフェニル)、リン酸ジフェニルエチルクレジルなどのリン酸トリC6-20アリールエステルなど]、脂肪族−芳香族リン酸エステル(リン酸メチルジフェニル、リン酸フェニルジエチルなど)などが挙げられる。
【0055】
亜リン酸エステルとしては、例えば、芳香族亜リン酸エステル(亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリクレジル、亜リン酸トリキシリル、亜リン酸ジフェニルクレジルなどの亜リン酸トリC6-20アリールエステルなど)、脂肪族亜リン酸エステル(亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリプロピル、亜リン酸トリイソプロピル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリイソブチルなどの亜リン酸C1-10アルキルエステル;亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジプロピル、亜リン酸ジブチルなどの亜リン酸ジC1-10アルキルエステル;亜リン酸モノC1-10アルキルエステルなど)、脂肪族−芳香族亜リン酸エステル(メタンホスホン酸ジフェニルなどのアルキルホスホン酸アリールエステル、メタンホスホン酸ジエチルなどのアルキルホスホン酸アルキルエステルなど)などが含まれる。
【0056】
また、モノマー型有機リン化合物には、アルキル基又はアリール基が置換していてもよい次亜リン酸エステル、ホスホノカルボン酸エステル、ホスフィニコカルボン酸エステル、含窒素リン酸エステルなども含まれる。
【0057】
前記ポリマー型有機リン化合物としては、前記モノマー型有機リン化合物の縮合物を用いることができる。前記縮合物は、下記式(2)で表される構造単位を有していてもよい。
【0058】
【化3】
【0059】
(式中、R3〜R6は置換基を有していてもよいアリール基を、Zは二価の芳香族性基を示す。aは1〜5の整数を示す)
式(2)において、R3〜R6で示されるアリール基としては、フェニル、ナフチル基などのC6-20アリール基が挙げられ、アリール基の置換基としては、メチル基、エチル基などのアルキル基が挙げられる。また、二価の芳香族性基としては、アリーレン基(例えば、フェニレン、ナフチレン基などのC6-20アリーレン基など)、複数の前記アリーレン基を有する基[ビスフェノール残基(ビスフェノールA残基、ビスフェノールD残基、ビスフェノールAD残基)などのビスフェノール類からヒドロキシル基が除かれた基、ビフェニレン基など]であってもよい。
【0060】
上記式(2)で表される縮合物としては、例えば、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジクレジルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジキシリルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジクレジルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジキシリルホスフェート)、ビスフェノール−Aビス(ジフェニルホスフェート、ビスフェノール−Aビス(ジクレジルホスフェート)、ビスフェノール−Aビス(ジキシリルホスフェート)などが挙げられる。
【0061】
また、前記ポリマー型有機リン化合物は、ヒドロキシル基を有するポリマー(フェノール樹脂など)のリン酸エステルであってもよい。このようなポリマーのリン酸エステルとしては、例えば、下記式(3)で表される構造単位を有するポリマーが挙げられる。
【0062】
【化4】
【0063】
(式中、R7及びR8は置換基を有していてもよいアリール基を示す)
前記アリール基としては、C6-20アリール基、特にフェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基などが挙げられ、アリール基の置換基としては、メチル基、エチル基などのアルキル基が挙げられる。
【0064】
さらに、前記ポリマー型有機リン化合物には、ポリホスフィニコカルボン酸エステル、ポリホスホン酸アミドも含まれる。ポリホスホン酸アミドとしては、例えば、下記式(4)で表される構造単位を有するポリマーが例示できる。
【0065】
【化5】
【0066】
(式中、R9はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を示し、R10はアルキレン基、アリーレン基、又はアラルキレン基を示す。R11及びR12は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、又はアリール基を示す。また、R11及びR12は、直結して環を形成してもよい)
前記無機リン化合物としては、例えば、赤リン、リン酸塩などが含まれる。リン酸には、オルトリン酸の他に、亜リン酸、ポリリン酸(メタリン酸、ピロリン酸など)、ポリ亜リン酸(メタ亜リン酸、ピロ亜リン酸など)なども含まれる。塩としては、アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩など)、周期表3B族金属の塩(アルミニウム塩など)、アンモニウム塩などが例示できる。また、前記塩には、アミン塩、例えば、グアニジン塩又はトリアジン系化合物の塩(例えば、メラミン塩、メレム塩など)なども含まれる。
【0067】
なお、無機リン化合物は、アルキル基又はアリール基が置換していてもよい亜リン酸、次亜リン酸、ホスホノカルボン酸、ホスフィニコカルボン酸(例えば、3−メチルホスフィニコプロピオン酸、3−フェニルホスフィニホスフィニコプロピオン酸など)、含窒素リン酸などの酸の金属塩などであってもよい。
【0068】
好ましいリン酸塩は、ポリリン酸の塩、特にポリリン酸アンモニウム及びポリリン酸メラミンである。
【0069】
好ましいリン含有化合物としては、リン酸エステル(脂肪族リン酸エステル、芳香族リン酸エステルなど)、無機リン化合物[(ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミンなどの(ポリ)リン酸塩、赤リンなど)など、特に赤リンが挙げられる。
【0070】
赤リンは、難燃効果が高く、少量であっても樹脂に難燃性を付与できる。また、少量で効果が得られるため、樹脂の特性(例えば、機械的特性や電気的特性)を損うことなく難燃化できる。赤リンとしては、特に、安定化処理を施したもの(安定化赤リン)が好ましく用いられる。特に、赤リンの粉砕を行わず、赤リン表面に水や酸素との反応性が高い破砕面を形成せずに赤リンを微粒子化する方法、さらには、赤リンの表面が、樹脂(例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂)、金属、金属化合物(例えば、金属水酸化物、金属酸化物など)などにより単独で又は二種以上組み合わせて被覆された赤リンが好ましい。
【0071】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、アルキッド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられ、熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂などが挙げられる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタンなどが挙げられ、金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化銅、酸化鉄、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化スズなどが挙げられる。
【0072】
さらに、赤リンの表面を金属で被覆し安定化する方法としては、無電解メッキ法により、金属(鉄、ニッケル、銅、アルミニウム、亜鉛、マンガン、スズ、チタン、ジルコニウムなど)又はこれらの合金で被覆する方法が挙げられる。その他の赤リン表面の被覆方法として、金属塩(アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、チタン、銅、銀、鉄、ニッケルなどの塩)の溶液で赤リンを処理し、赤リンの表面に金属リン化合物を形成させて安定化する方法も含まれる。
【0073】
特に、赤リン表面に破砕面を形成させずに赤リンを微粒子化する方法を用い、金属成分(金属水酸化物や金属酸化物)の被膜と樹脂の皮膜とを組み合わせて複数層で被覆処理、特に金属成分の被膜で被覆した上に樹脂被覆で多重に被覆処理した赤リンが好ましい。これらの安定化赤リンは、耐熱安定性、耐加水分解性に優れており、水分の存在下や高温下での分解反応によりホスフィンの生成が著しく少なく、本発明の樹脂組成物を製造する際、また、成形品を製造する際の安全上及び成形体の品質上の観点から使用が好ましい。
【0074】
これらの安定化赤リンの調製は、特開平5−229806号公報、特開平3−259956号公報、特開平2−209991号公報、特開平1−150309号公報、特開昭62−21704号公報、特開昭52−125489号公報、EP296501A1号公報、EP249723A2号公報などを参照できる。
【0075】
赤リンとしては、通常、安定化赤リンを粉粒状で使用できる。安定化赤リンの粒子径としては、例えば、0.01〜100μm、好ましくは0.1〜70μm、さらに好ましくは0.1〜50μm程度である。
【0076】
また、安定化赤リンは、エポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物、クロム系化合物などの表面改質剤によって処理されていてもよい。
【0077】
前記安定化赤リンは、単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、被覆処理の異なるもの、粒径の異なるものを任意に組み合わせることができる。
(側鎖にヒドロキシル基含有芳香族環を有する樹脂)
側鎖にヒドロキシル基含有芳香族環を有する樹脂(以下、単に芳香族環樹脂という)としては、例えば、下記式(1)で表される構造単位を有する樹脂が使用できる。
【0078】
【化6】
【0079】
(式中、R1は水素原子又はC1-3のアルキル基、R2は芳香族環を示し、nは1〜3の整数である)
式(1)において、芳香族環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン環などのC6-20芳香族環があげられる。また、芳香族環は、置換基(例えば、ヒドロキシル基;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル基などのアルキル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ基などのアルコキシ基など)を有していてもよい。
【0080】
式(1)において、ヒドロキシル基の水素原子は、金属イオン、シリル基もしくはアルコキシ基、アルキル基、アルカノイル基、ベンゾイル基などの有機基(保護基)で保護されていてもよい。
【0081】
このような誘導体から得られる樹脂は、例えば、下記式(5)に示される構造単位を有する。
【0082】
【化7】
【0083】
(式中、R1は水素原子又はC1-3のアルキル基であり、R13は−OH,−OSi(R14)3及び−OM(Mは金属カチオン、OR14及びOCOR14であり、R14は炭素原子1〜5個のアルキル基又はアリール基である)からなる群より選ばれる基である。また、nは1〜3の整数である。)
前記式において、Mは一価のアルカリ金属カチオン(ナトリウム、リチウム、カリウムなど)、又は二価のアルカリ土類金属カチオン(マグネシウム、カルシウムなど)もしくは遷移金属カチオンのいずれかであってもよい。
【0084】
前記式の置換基R13は、オルト位、パラ位及びメタ位のいずれか一つに位置していればよい。さらに、置換基R13に加えて、ペンダント芳香族環はC1-4のアルキル基で置換されていてもよい。
【0085】
芳香族環樹脂には、前記構造単位(1)に対応するヒドロキシル基を有する芳香族環ビニルモノマー(以下、単に芳香族環ビニルモノマーという)の単独又は共重合体、または他の共重合性モノマーとの共重合体などが含まれる。
【0086】
芳香族環ビニルモノマーとしては、例えば、ビニルフェノール、ジヒドロキシスチレン、ビニルナフトールなどのヒドロキシル基含有芳香族ビニルモノマーなどが含まれる。
【0087】
芳香族環ビニルモノマーとしては、例えば、ビニルフェノール、ジヒドロキシスチレン、ビニルナフトールなどのヒドロキシル基含有芳香族ビニルモノマーなどが含まれる。
【0088】
共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系モノマー[(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなど)、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなど]、スチレン系モノマー(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルナフタリン、ビニルシクロヘキサンなど )、重合性多価カルボン酸(フマル酸、マレイン酸など)、マレイミド系モノマー(フェニルマレイミドなど)、ジエン系モノマー(イソプレン、1,3−ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなど)、ビニル系モノマー(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;メチルビニルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類;塩化ビニル、フルオロエチレン、クロロプレンなどのハロゲン含有ビニルモノマー;ビニルイソブチルエーテル、ビニルメチルエーテルなどのビニルエーテル類;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾールなどのビニルアミン類など)などが挙げられる。好ましい共重合性モノマーには、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー、及びビニル系モノマーなどが含まれる。
【0089】
これらの共重合性モノマーは1種又は2種以上使用できる。
【0090】
芳香族環樹脂は必要により一部を水素添加してもよい。
【0091】
芳香族環ビニルモノマーと共重合性モノマーとの割合は、例えば、10/90〜100/0(重量%)、好ましくは30/70〜100/0(重量%)程度である。
【0092】
好ましい芳香族環樹脂は、ビニルフェノール単独重合体(ポリヒドロキシスチレン)、及びビニルフェノール共重合体(ヒドロキシスチレン−スチレン共重合体など)であり、特にp−ビニルフェノール単独重合体が好ましい。
【0093】
芳香族環樹脂の数平均分子量は、特に制限されず、例えば、300〜50×104、好ましくは400〜30×104、さらに好ましくは500〜5×104程度の範囲から選択できる。特に、500〜10000の範囲の芳香族樹脂が好ましく用いられる。分子量が300未満では樹脂組成物の耐熱性を低下させる。
(リン含有化合物と芳香族環樹脂の割合)
難燃剤中のリン含有化合物の使用量は、難燃性を付与できる範囲で選択され、前記芳香族環樹脂100重量部に対して、リン含有化合物1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、さらに好ましくは10〜60重量部程度である。
(難燃剤の使用割合)
本発明の難燃剤は、リン含有化合物と芳香族環樹脂を組み合わせることにより、熱可塑性樹脂に対して、少量の添加であっても高い難燃性を付与できる。前記熱可塑性樹脂中に含まれる前記難燃剤の割合は、樹脂の特性を損わない限り特に制限されず、熱可塑性樹脂100重量部に対して、難燃剤0.1〜100重量部、好ましくは1〜80重量部、さらに好ましくは5〜60重量部(特に5〜40重量部)程度である。難燃剤が0.1重量部未満では、難燃化が困難であり、100重量部を超えると、樹脂の機械的強度を低下させる。
[添加剤]
なお、本発明の難燃性樹脂組成物は、必要に応じて種々の添加剤(例えば、他の難燃剤、ドリップ防止剤、酸化防止剤又は安定剤など)を含んでいてもよく、これら添加剤の全体の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01〜50重量部、好ましくは、0.1〜30重量部、さらに好ましくは0.5〜20重量部程度である。
[その他の難燃剤]
本発明の難燃性樹脂組成物は、さらに高度な難燃性を付与するため、他の難燃剤、例えば,窒素含有難燃剤、硫黄含有難燃剤、ケイ素含有難燃剤、アルコール系難燃剤、無機系難燃剤(金属酸化物、金属水酸化物など)などを含んでいてもよい。
【0094】
窒素含有難燃剤としては、アミン類、例えば、尿素類、グアニジン類、トリアジン系化合物(例えば、グアナミン、メラミン、メラム、メレム、アンメリン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンなど)、トリアジン系化合物とシアヌール酸又はイソシアヌール酸との塩(前者:後者(モル比)=1:1〜1:2程度の塩、例えば、メラミンシアヌレート、グアナミンシアヌレート、アセトグアナミンシアヌレート、ベンゾグアナミンシアヌレートなど)などが挙げられる。
【0095】
硫黄含有難燃剤としては、硫酸エステルの他に、有機スルホン酸、スルファミン酸、及びそれらの塩、エステル、アミドなどが挙げられる。
【0096】
ケイ素含有難燃剤には、(ポリ)オルガノシロキサンが含まれる。(ポリ)オルガノシロキサンとしては、ジアルキルシロキサン(例えば、ジメチルシロキサンなど)、アルキルアリールシロキサン(フェニルメチルシロキサンなど)、ジアリールシロキサンなどのモノオルガノシロキサン及びこれらの単独重合体(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサンなど)、又は共重合体などが含まれる。また、(ポリ)オルガノシロキサンとしては、分子末端や主鎖に、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エーテル基などの置換基を有する変性(ポリ)オルガノシロキサン(例えば、変性シリコーンなど)なども使用できる。
【0097】
アルコール系難燃剤としては、多価アルコール、オリゴマーの多価アルコール、エステル化された多価アルコール、置換されたアルコール、糖類(単糖類、多糖類など)などが挙げられる。
【0098】
無機系難燃剤のうち、金属酸化物としては、例えば、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化銅、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、酸化鉄、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどが挙げられる。また、金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化スズ、水酸化ジルコニウムなどが挙げられる。
【0099】
また、前記無機系難燃剤には、金属スズ酸塩(例えば、スズ酸亜鉛など)、金属ホウ酸塩(例えば、四ホウ酸ナトリウム、ホウ酸亜鉛など)、膨張性黒鉛なども含まれる。
【0100】
これら他の難燃剤は、一種又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0101】
他の難燃剤の含有量は、例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01〜50重量部程度、好ましくは0.05〜30重量部程度、特に0.1〜20重量部程度の範囲から選択できる。
[ドリップ防止剤]
さらに、本発明の難燃性樹脂組成物は、フッ素系樹脂などのドリップ防止剤を添加してもよい。ドリップ防止剤により、燃焼時の火種及び融液の滴下(ドリップ)を抑制できる。フッ素系樹脂には、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルなどのフッ素含有モノマーの単独又は共重合体;前記フッ素含有モノマーと、エチレン、プロピレン、アクリレートなどの共重合性モノマーとの共重合体が含まれる。このようなフッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライドなどの単独重合体;テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体などの共重合体が例示される。これらのフッ素系樹脂は、一種又は二種以上混合して使用できる。
【0102】
前記フッ素系樹脂は、粒子状で使用してもよく、平均粒径は、例えば、10〜5000μm程度、好ましくは100〜1000μm程度、さらに好ましくは200〜700μm程度であってもよい。
【0103】
フッ素系樹脂は、単独で又は二種以上使用できる。フッ素系樹脂の含有量は、例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部程度、好ましくは0.1〜5重量部程度、さらに好ましくは0.1〜3重量部程度である。[酸化防止剤又は安定剤]
また、本発明の難燃性樹脂組成物は、長期間安定に耐熱性を維持するために酸化防止剤又は安定剤を含んでいてもよい。酸化防止剤又は安定剤には、例えば、フェノール系(ヒンダードフェノール類など)、アミン系(ヒンダードアミン類など)、リン系、イオウ系、ヒドロキノン系、キノリン系酸化防止剤などが含まれる。
【0104】
フェノール系酸化防止剤には、ヒンダードフェノール類、例えば、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−オクタデシル−3−(4′,5′−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、n−オクタデシル−3−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、ステアリル−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート、ジステアリル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタンなどが含まれる。
【0105】
ヒンダードフェノール類の中でも、特に、例えば、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC2-10アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのジ又はトリオキシC2-4アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];例えば、グリセリントリス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC3-8アルキレントリオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC4-8アルキレンテトラオールテトラキス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などが好ましい。
【0106】
アミン系酸化防止剤には、ヒンダードアミン類、例えば、トリ又はテトラC1-3アルキルピペリジン又はその誘導体[例えば、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなど]、ビス(トリ、テトラ又はペンタC1-3アルキルピペリジン)C2-20アルキレンジカルボン酸エステル[例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オギサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート]、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)エタン、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、N,N′−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−シクロヘキシル−1,4−フェニレンジアミンなどが含まれる。
【0107】
リン系安定剤(又は酸化防止剤)には、例えば、トリイソデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイト、トリス(分岐C3-6アルキルフェニル)ホスファイト[例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス[2−(1,1−ジメチルプロピル)−フェニル]ホスファイト、トリス[2,4−(1,1−ジメチルプロピル)−フェニル]ホスファイトなど]、ビス(2−t−ブチルフェニル)フェニルホスファイト、、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−フェニルフェニル)ホスファイト、ビス(C3-9アルキルアリール)ペンタエリスリトールジホスファイト[例えば、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなど]、トリフェニルホスフェート系安定剤(例えば、4−フェノキシ−9−α−(4−ヒドロキシフェニル)−p−クメニルオキシ−3,5,8,10−テトラオキサ−4,9−ジホスファピロ[5,5]ウンデカン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェートなど)、ジホスフォナイト系安定剤(例えば、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル)−4,4'−ビフェニレンジホスフォナイトなど)などが含まれる。リン系安定剤は、通常、分岐C3-6アルキルフェニル基(特に、t−ブチルフェニル基)を有している。
【0108】
ヒドロキノン系酸化防止剤には、例えば、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノンなどが含まれ、キノリン系酸化防止剤には、例えば、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどが含まれ,イオウ系酸化防止剤には、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどが含まれる。
【0109】
これらの酸化防止剤は単独で、又は二種以上使用できる。酸化防止剤の含有量は、例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜2.5重量部、特に0.1〜1重量部程度の範囲から選択できる。
【0110】
なお、熱可塑性樹脂としてポリエステル系樹脂又はポリカーボネート系樹脂を用いる場合、無機リン化合物を添加すると、熱安定性がさらに向上する。無機リン化合物としては、例えば、無機リン酸(リン酸、亜リン酸、ホスフォン酸、ホスフィン酸、ポリリン酸、ポリ亜リン酸、ホスホノカルボン酸、含窒素リン酸など)及びそれらの酸性金属塩などが挙げられる。
【0111】
無機リン酸の酸性金属塩には、例えば、無機リン酸水素アルカリ金属類(例えば、NaH2PO4、Na2HPO4、KH2PO4、K2HPO4などのリン酸水素アルカリ金属類)、無機リン酸水素アルカリ土類金属類(例えば、CaHPO4、Ca(H2PO4)2、MgHPO4、Mg(H2PO4)2、などのリン酸水素アルカリ土類金属類など)、無機リン酸水素アルミニウム(例えば、Al(H2PO4)3などが挙げられる。
【0112】
さらに、本発明の難燃性樹脂組成物は、目的に応じて他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤としては、安定剤(紫外線吸収剤、耐熱安定剤、耐候安定剤など)、滑剤、離型剤、着色剤、可塑剤、核剤、衝撃改良剤、摺動剤などが挙げられる。
【0113】
本発明の難燃剤は、燃焼時に樹脂表面の炭化を促進するためか、樹脂を高度に難燃化できる。また、リン含有化合物と、芳香族環樹脂とを組み合わせることにより、少量であっても熱可塑性樹脂を効果的に難燃化でき、ブリードアウトや耐熱性を低下させることもない。特に、難燃剤成分としてポリヒドロキシスチレンを使用した場合、付加縮合反応により製造される一般的なフェノールノボラック樹脂などに比べて樹脂変性の自由度が高く、また基本特性(安定性、相溶性)において通常のフェノール樹脂などより優れている。
[充填剤]
また、本発明の難燃性樹脂組成物は、機械的強度、剛性、耐熱性及び電気的性質などをさらに向上させるため、充填剤により改質されていてもよい。充填剤には、繊維状充填剤、非繊維状充填剤(板状充填剤、粉粒状充填剤など)が含まれる。
【0114】
繊維状充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、金属繊維、高融点有機質繊維(例えば、脂肪族又は芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、フッ素系樹脂、ポリアクリロニトリルなどのアクリル樹脂など)などが例示できる。
【0115】
非繊維状充填剤のうち、粉粒状充填剤には、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ミルドファイバー(ミルドガラスファイバーなど)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、ケイ藻土、ウォラストナイトなどのケイ酸塩;酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなどの金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属の硫酸塩、炭化ケイ素などの金属粉末が含まれる。
【0116】
板状充填剤には、例えば、ガラスフレーク、マイカ、グラファイト、各種金属箔などが挙げられる。
【0117】
好ましい繊維状充填剤としては、ガラス繊維、カーボン繊維が挙げられ、好ましい非繊維状充填剤としては、粉粒状又は板状充填剤、特に、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ミルドファイバー、タルク、マイカ及びカオリンが挙げられる。
【0118】
また、特に好ましい充填剤には、高い強度及び剛性を有するガラス繊維が含まれる。
【0119】
充填剤を用いる場合、難燃性樹脂組成物中の充填剤の割合は、例えば、5〜60重量%程度、好ましくは5〜50重量%程度、さらに好ましくは5〜35重量%程度である。
【0120】
また、これらの充填剤の使用にあたっては、必要ならば収束剤又は表面処理剤を使用することが望ましい。このような収束剤または表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物が用いられる。好ましくは、エポキシ系化合物、特に、ビスフェノールA型又はノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0121】
充填剤は、前記収束剤又は表面処理剤により、表面処理又は収束処理されていてもよい。処理の時期については、充填剤の添加と同時に処理してもよく、添加前に予め処理していてもよい。
【0122】
表面処理を行う場合、官能性表面処理剤の使用量は、例えば、充填剤に対して5重量%以下、好ましくは0.05〜2重量%程度である。
【0123】
[難燃性樹脂組成物の製造方法]
本発明の難燃性樹脂組成物は、粉粒体混合物や溶融混合物であってもよく、熱可塑性樹脂と、難燃剤と、必要によりドリップ防止剤や他の添加剤などとを慣用の方法で混合することにより調製できる。例えば、▲1▼各成分を混合して、一軸又は二軸の押出機により混練し押出してペレットを調製した後、成形する方法、▲2▼一旦、組成の異なるペレット(マスターバッチ)を調製し、そのペレットを所定量混合(希釈)して成形に供し、所定の組成の成形品を得る方法、▲3▼成形機に各成分の1又は2以上を直接仕込む方法などが採用できる。また、成形品に用いられる組成物の調製において、熱可塑性樹脂の粉粒体(例えば、ポリエステル系樹脂の一部又は全部を粉砕した粉粒体)と、他の成分(難燃剤など)とを混合して溶融混練すると、他の成分の分散を向上させるのに有利である。
【0124】
なお、ハンドリングの観点から、熱可塑性樹脂、芳香族環樹脂及びリン含有化合物から選ばれた少なくとも二種の成分を一旦溶融混合することにより、マスターバッチを調製すると便利である。特に、リン含有化合物として赤リンを用いる場合、マスターバッチを調製する場合が多い。なお、マスターバッチを構成する成分のうち、少なくとも一種の成分は樹脂成分である。また、樹脂成分でマスターバッチを構成する場合、熱可塑性樹脂の一部をマスターバッチに用いることが多い。
【0125】
前記マスターバッチとしては、例えば、(1)熱可塑性樹脂の一部とリン含有化合物とで構成されたマスターバッチ、(2)芳香族環樹脂とリン含有化合物とで構成されたマスターバッチ、(3)熱可塑性樹脂の一部と、芳香族環樹脂とリン化合物とで構成されたマスターバッチなどが挙げられる。
【0126】
なお、前記マスターバッチは、必要に応じて、種々の添加剤、例えば、フッ素系樹脂、酸化防止剤、リン系安定剤、充填剤などを含有していてもよい。
【0127】
このようにして得られたマスターバッチと、熱可塑性樹脂と必要に応じて残りの成分とを溶融混合することにより、難燃性樹脂組成物を製造できる。
【0128】
また、本発明の難燃性樹脂組成物を溶融混練したのち、押出成形、射出成形、圧縮成形などの慣用の方法で形成された成形品は、難燃性および成形加工性に優れているため、種々の用途に使用できる。例えば、機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品、包装材料やケースなどに好適に用いることができる。
【0129】
【発明の効果】
本発明では、熱可塑性樹脂と、リン含有化合物および側鎖にヒドロキシル基含有芳香族環を有する樹脂で構成された難燃剤とを組み合わせるので、ハロゲン系難燃剤を使用することなく、少量であっても難燃化できる。さらに、本発明の難燃性樹脂組成物は、ブリードアウトを抑制でき、特別な化合物を使用することなく機械的特性を高いレベルで維持できる。
【0130】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0131】
なお、下記の試験により樹脂組成物の難燃性、物性などを評価した。
(燃焼性試験)
UL 94に準拠して、試験片の厚み0.8mmで燃焼性を評価した。
(引張り試験)
ASTM D−638に準拠して、引張り特性を評価した。
(成形外観)
燃焼試験片をギヤーオーブン中、120℃で24時間処理した後、外観の評価を行った。評価基準を以下に示す。
【0132】
○=ブリードアウトはほとんど認められない
△=ブリードアウトがわずかに認められる
×=ブリードアウトが多量に認められる
実施例及び比較例では、下記の熱可塑性樹脂、難燃剤などを使用した。
[熱可塑性樹脂A]
A−1:ポリブチレンテレフタレート(ジュラネックス、固有粘度=0.83、ポリプラスチックス(株)製)
A−2:12.5モル%イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレート
A−3:ポリエチレンテレフタレート(ベルペット EFG10、鐘紡(株)製)
A−4:PBTエラストマー(PBTセグメント60重量%、ポリ(テトラメチレンオキサイドグリコール)テレフタレートセグメント40重量%)
A−5:PET系液晶ポリマー
ポリエチレンテレフタレート(PET)とp−アセトキシ安息香酸とを溶融混合してアシドリシス反応によりポリエステルフラグメントを形成させた後、重縮合反応を行って高重合度化した液晶ポリエステル。下記の構造単位を有する。
【0133】
【化8】
【0134】
なお、kとlとmとの割合は、k/l/m=80/20/20(モル比)である。
【0135】
A−6:ポリカーボネート(パンライトL1250、帝人化成(株)製)
A−7:ナイロン−6,6(ポリプラナイロン66、ポリプラスチックス(株)製)
A−8:ABS樹脂(スチレン41重量%、アクリロニトリル14重量%、ブタジエン45重量%)
A−9:ポリブチレンテレフタレート(ジュラネックス、固有粘度=1.0、ポリプラスチックス(株)製)
A−10:ポリブチレンテレフタレート(ジュラネックス、固有粘度=0.75、ポリプラスチックス(株)製)
[難燃剤]
(リン含有化合物B)
B−1:赤リン(ノーバエクセル140、燐化学工業(株)製)
B−2:赤リン(ノーバエクセルF5、燐化学工業(株)製)
B−3:赤リンマスターバッチ
ベント付き2軸押出機を用いて、赤リン(B−1)とポリブチレンテレフタレート(A−1)から調製した(B−1)/(A−1)=30/70(重量比)の赤リンマスターバッチ。
【0136】
B−4:赤リンマスターバッチ
ベント付き2軸押出機を用いて、赤リン(B−2)とポリブチレンテレフタレート(A−1)から調製した(B−2)/(A−1)=30/70(重量比)の赤リンマスターバッチ。
【0137】
B−5:縮合リン酸エステル(PX−200、大八化学工業(株)製)
B−6:ポリリン酸アンモニウム(テラージュC60、チッソ(株)製)
B−7:縮合リン酸エステル(PX−201、大八化学工業(株)製)
B−8:縮合リン酸エステル(ファイロールフレックスRDP、アクゾノーベル(株)製)
B−9:縮合リン酸エステル(ファイロールフレックスBDP、アクゾノーベル(株)製)
B−10:ビスフェノールAビス(ジクレジルホスフェート)
B−11:ポリリン酸メラミン(MPP−A、(株)三和ケミカル製)
(芳香族環樹脂C)
C−1:ポリp−ビニルフェノール(マルカリンカーM S-1P、数平均分子量=1100、丸善石油化学(株)製)
C−2:ポリp−ビニルフェノール(マルカリンカーM S-4P、数平均分子量=4300、丸善石油化学(株)製)
C−3:p−ビニルフェノール−スチレン共重合体(マルカリンカーCST50、p−ビニルフェノールの共重合比:約50モル%、数平均分子量2100、丸善石油化学(株)製)
C−4:p−ビニルフェノール−スチレン共重合体(マルカリンカーCST15、p−ビニルフェノールの共重合比:約15モル%、丸善石油化学(株)製)
C−5:p−ビニルフェノール−メタクリル酸 2−ヒドロキシエチル共重合体(マルカリンカーCHM、p−ビニルフェノールの共重合比:約50モル%、数平均分子量=3600、丸善石油化学(株)製)
C’−1:フェノールノボラック樹脂(スミライトレジンPR−53195、住友デュレズ(株)製)
[窒素含有難燃剤D]
D−1:メラミンシアヌレート(MC610、日産化学工業(株)製)
[酸化防止剤E]
E−1:ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](イルガノックス1010、チバガイギー(株)製)
[リン系安定剤F]
F−1:テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスフォナイト(サンドスタブP−EPQ、サンド(株)製)
F−2:第一リン酸カルシウム
F−3:ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(アデカスタブPEP36、アデカア−ガス(株)製)
[ドリップ防止剤G]
G−1:ポリテトラフルオロエチレン
[充填剤H(ガラス繊維)]
H−1:直径10μm、長さ3mmのチョップドストランド
実施例1〜14、参考例1および比較例1〜5
ポリブチレンテレフタレート(A−1)に、上記成分を表1〜3の割合で混合し、押出機により混練し、押出して樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を射出成形し、試験用成形品を作製し、燃焼性、引張り特性および成形外観(ブリードアウト)を評価した。
【0138】
結果を表1〜3に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
【表3】
【0142】
実施例15〜19、参考例2〜5および比較例6〜19
熱可塑性樹脂Aに、上記成分を表4〜6の割合で混合し、押出機により混練し、押出して樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を射出成形し、試験用成形品を作製し、燃焼性及び成形外観(ブリードアウト)を評価した。
【0143】
結果を表4〜6に示す。
【0144】
【表4】
【0145】
【表5】
【0146】
【表6】
【0147】
実施例20〜24、参考例6〜10および比較例20〜28
熱可塑性樹脂Aに、上記成分を表7及び表8の割合で混合し、押出機により混練し、押出して樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を射出成形し、試験用成形品を作成し、燃焼性及び成形外観(ブリードアウト)を評価した。
【0148】
結果を表7及び表8に示す。
【0149】
【表7】
【0150】
【表8】
Claims (17)
- 熱可塑性樹脂と難燃剤とを含有する樹脂組成物であって、前記熱可塑性樹脂がポリエステル系樹脂であり、前記難燃剤が、リン含有化合物および側鎖にヒドロキシル基含有芳香族環を有する樹脂としてのビニルフェノールの単独又は共重合体で構成され、かつ前記リン含有化合物の割合が、前記側鎖にヒドロキシル基含有芳香族環を有する樹脂100重量部に対して1〜100重量部である難燃性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂100重量部に対して、難燃剤0.1〜100重量部を含有する請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂が、アルキレンテレフタレートおよびアルキレンナフタレートから選択された少なくとも1種の単位を有するホモ又はコポリエステルである請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂が、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、エチレンナフタレートおよびブチレンナフタレートから選択された少なくとも1種の単位を有するホモ又はコポリエステルである請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂が、ポリブチレンテレフタレート、又はブチレンテレフタレートを主成分とするコポリエステルである請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- リン含有化合物が、赤リン、(ポリ)リン酸塩およびリン酸エステルから選択された少なくとも1種である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- リン含有化合物が安定化赤リンである請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- さらに窒素含有難燃剤を含む請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- さらにフッ素系樹脂を含む請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- さらにヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- さらにリン系安定剤を含む請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- さらにトリアジン系化合物と、シアヌール酸又はイソシアヌール酸との塩を含む請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- さらに充填剤を含む請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂と請求項1記載の難燃剤とを混合して請求項1記載の難燃性樹脂組成物を製造する方法。
- 請求項1記載の側鎖にヒドロキシル基含有芳香族環を有する樹脂、リン含有化合物及び熱可塑性樹脂から選ばれた少なくとも2種の成分で構成されたマスターバッチと、熱可塑性樹脂とを溶融混合する請求項14記載の難燃性樹脂組成物を製造する方法。
- 請求項1記載の難燃性樹脂組成物で形成された成形体。
- 成形体が、機械機構部品、電気・電子部品又は自動車部品である請求項16記載の成形体。
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