JP4259785B2 - 成形用アルミニウム板及びそれを使用した成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶パネルの固定用フレーム及び背面カバー並びに記録媒体のドライブ装置のケース及びシャーシ等の電気製品の筐体又は構造部材用の素材である成形用アルミニウム板並びにそれを使用した成形品に関する。なお、本発明において、アルミニウム板というときは、純アルミニウム板の他に、アルミニウム合金板を含むものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ワープロ及びパソコン等のコンピュータ関連機器等に使用される記録装置においては、記録媒体を稼働させるドライブ装置のケース又はシャーシにアルミニウム板が使用されている。また、将来、テレビ及びAV機器に対して搭載が予想されている記録装置においても、そのドライブ装置のケース又はシャーシにアルミニウム板が使用されると考えられる。なお、このようなドライブ装置としては、ハードディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、MO、フレキシブルディスク、zip、MD等のドライブ装置をいう。
【0003】
このようなドライブ装置は、磁気ディスク又は光磁気ディスク等の記録媒体に情報を読み書きする装置、記録媒体を駆動する装置、及び情報をCPU等の外部装置へ伝達するインターフェース回路等と、これらの装置及び記録媒体を保護するためのケース及びシャーシとにより構成されている。そして、これらの記録媒体のドライブ装置は、ワープロ、パソコン、大型コンピュータ等のCRTの近傍に設置される場合が多いため、CRTから発生する電磁波ノイズ又は機器駆動時に生じる微小電流によって、情報の読み込み不良、又は書き込み不良等の重大誤動作が生じる場合がある。このような誤動作を最小限にとどめ、記録装置の信頼性を高めるために種々の電磁シールド対策が採用されているが、この電磁シールド対策の一つとしてドライブ装置にアースをとることにより、装置内への電磁波ノイズの侵入及び微小電流の流れ混みを防止する対策がとられている。アースの取り方としては、ドライブ装置のケース又はシャーシに直接アース線を接続する方法と、ドライブ装置のケース又はシャーシの表面に導電性が優れた部材(例えば、銅、真ちゅう若しくはSUS等の金属製板バネ又はスポンジに金属メッシュを巻きつけたガスケット)を接触させる方法等が実用化されている。このため、ドライブ装置のケース及びシャーシには、アースをとるのに必要な導電性が求められている。
【0004】
また、このドライブ装置のケース及びシャーシは、記録媒体駆動時に発生する熱を放熱するため、熱伝導性に優れていることが必要である。従って、このドライブ装置のケース及びシャーシ用素材として、従来から、ステンレス鋼(SUS)、鋼材、及びアルミニウム材等の金属素材が使用されてきた。しかも、近時、ノートパソコンを中心として、軽量化及び放熱特性向上の要求がますます高くなっており、金属素材の中でも軽量性及び熱伝導性が優れたアルミニウム製のドライブ装置のケース及びシャーシが増える傾向にある。
【0005】
一方、これらのドライブ装置は、ワープロ、パソコン及び大型コンピュータの本体に着脱されるカートリッジタイプの機構が主流となりつつあり、パソコン本体とは別のメーカーで生産する場合が増えつつある。このような方式の定着により、本来視覚にさらされることのない内部部品であるドライブ装置に対しても、外観に対し高いレベルの品質を要求する方向に進んでいる。例えば、情報の読み書き性能に何ら問題なくても、外観上に指紋又は微小な傷が付いているだけで返品となるような場合が増えつつある。
【0006】
このような外観上の品質を保つためには、ドライブ装置を作る製造工程の各工程で、厳しい品質管理を行う必要がある。しかし、例えばドライブ装置のケースを製造する工程だけを見ても、プレス加工、脱脂洗浄、二次加工、及び組立等、種々の工程が存在し、工程上の工夫だけでは、指紋及び傷等の外観不具合を完全に防止することは難しい。このため、ドライブ装置のケース及びシャーシの素材には、指紋及び傷が入りにくい表面特性(耐指紋性及び耐傷付き性)も要求される。
【0007】
一方、近時、消費電力が低く、且つ、軽量で持ち運びが容易な液晶ディスプレイが、各種業務用及び民生用電子機器分野で注目されている。このような液晶ディスプレイには、例えば、ノートブックタイプのパーソナルコンピュータ(以下、ノートパソコンという)用の液晶ディスプレイがある。液晶ディスプレイは、一般に、画像表示素子としての液晶パネル、この液晶パネルを保護するための背面カバー及び液晶パネルを背面カバーに固定するための液晶パネル固定用治具(以下、固定用フレームという)より構成されている。
【0008】
このような液晶パネルの固定用フレーム及び背面カバーには、次のような諸特性が求められている。即ち、液晶パネルを強固に固定するための強度、前述のドライブ装置の場合と同様に画像ノイズの原因となる静電気を除去するための導電性、液晶パネルから発生した熱を効率良く外部へ逃がすための熱伝導性である。また、このような固定用フレーム又は背面カバー用素材には上記特性の他に、長期間の使用に耐えるための耐食性、及び所定の固定用フレーム又は背面カバーに成形するための成形加工性も求められている。
【0009】
更に、液晶ディスプレイの組立時には、各工程で厳しい品質チェックが行なわれている。例えば、固定用フレーム又は背面カバーとして上記諸特性を満足したものであっても、その表面に微細な傷又は指紋が付いているだけで外観不良として返品となるケースが増えている。これらの外観不良は、プレス成形等の液晶ディスプレイ組立工程において発生するものであるが、細分化された各工程において工夫するだけでは、これらの不具合を完全に防止することは難しい。このため、液晶パネルの固定用フレーム及び背面カバーの素材には、傷又は指紋が付き難い耐傷付き性及び耐指紋性が高い材料が望まれている。
【0010】
従来、液晶パネルの固定用フレーム及び背面カバーの素材には、ステンレス鋼(SUS)が使用されている。ステンレス鋼を使用することにより、強度、耐食性及び成形加工性はある程度満足することができる。
【0011】
しかしながら、近時、ノートパソコン等の携帯用機器では、携帯性を高めるため、各種構成部品の軽量化が進められており、液晶ディスプレイも例外ではない。また、通常、机上に設置して使用するデスクトップタイプのパソコン(以下、デスクトップパソコンと称する)のディスプレイにはブラウン管ディスプレイが使用されるが、ブラウン管ディスプレイは奥行きが大きいため、机上の大部分がディスプレイに占有されてしまう。このため、机上の作業スペースを有効に活用するために、ディスプレイを小さくしてほしい、即ち、ディスプレイの奥行きを小さくしてほしいという要求がある。このような要求に応えるために、最近では、デスクトップパソコン用ディスプレイにおいても液晶ディスプレイが使われつつあり、特に、意匠性が優れた液晶ディスプレイが求められている。また、このような液晶ディスプレイは、PDA(Personal Digital Assistant)と呼ばれる携帯情報端末及び壁掛けテレビ等の次世代のテレビに使用される可能性も秘めている。
【0012】
このような状況において、ステンレス鋼により形成された液晶パネルの固定用フレーム及び背面カバーは、重量が大きいという問題点がある。また、軽量化を図るために素材の板厚を薄くすると、固定用フレーム及び背面カバーの加工が難しくなる。特に、液晶ディスプレイのサイズを大きくしたり、商品の差別化を図るために意匠性を高めようとしたりする場合に、成形加工が極めて困難になるという問題点がある。更に、低コスト化を図るため、液晶ディスプレイの組立作業は人件費が低い東南アジア及び中国等において行われることが主流となりつつあるが、この場合、組立時に作業者が直接固定用フレーム及び背面カバーの素材並びに成形後の固定用フレーム及び背面カバーに触れる工程が多くなり、指紋の付着による歩留り低下が生じている。このため耐指紋性の向上が望まれている。しかしながら、固定用フレーム及び背面カバーの素材として従来のステンレス鋼を使用する限り、上述の軽量化、成形加工性及び耐指紋性の改善は難しい。また、ステンレス鋼は導電性及び熱伝導性(放熱特性)も不十分であり、コストも高価である。
【0013】
そこで、固定用フレーム及び背面カバーの素材としてアルミニウム板を使用することが考えられる。アルミニウム製の固定用フレーム及び背面カバーは、ステンレス鋼製の固定用フレーム及び背面カバーに比べて大幅な軽量化が可能となる。また、アルミニウム板を使用することにより、導電性及び熱伝導性を向上させることができる。しかし、アルミニウム板の耐指紋性については、ステンレス鋼の耐指紋性と同等であり、不十分である。このように、液晶パネルの固定用フレーム又は背面カバーの素材としてアルミニウム板を使用する場合においても、前述のドライブ装置のケース及びシャーシの素材にアルミニウム板を使用する場合と同様に、耐指紋性及び耐傷付き性が問題となる。
【0014】
そこで、近時、前述の固定用フレーム及び背面カバー並びにドライブ装置のケース及びシャーシ等の電気製品の筐体又は構造部材用の素材として、金属板の表面に予め特殊な表面処理を施すことにより、傷及び指紋を目立たなくさせる表面処理アルミニウム板が広がりつつある。例えば、特開平4−330683号公報には、アルミニウム板に潤滑剤を含有した樹脂をコーティングするという技術が提案されている。
【0015】
しかし、通常、樹脂コーティングを施した材料の表面は絶縁性となってしまい、前記電気製品の筐体又は構造部材からアースを取る必要がある場合には、アースを取るために皮膜の一部を削り取る等の後工程が必要となる。
【0016】
このような導電性の問題を解決する手段としては、特開平5−57239号公報、特開平5−320934号公報、特開平7−313930号公報、特開平7−290253号公報及び特開平7−314601号公報等に、導電性物質を含有する樹脂をコーティングする技術が提案されている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように導電性物質を樹脂に分散させる方法においては、有機皮膜中の導電性物質の粒子間接触を確保できないと、十分な導電性が得られないという難点がある。従って、十分な導電性を得るためには、必然的に導電性物質の添加量を多くすることが必要である。しかしながら、導電性物質を塗膜樹脂中に多量に添加すると、有機皮膜が硬く、もろくなるため、プレス加工時に、皮膜が割れたり、剥がれたりするという欠点がある。
【0018】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、液晶パネルの固定用フレーム及び背面カバー並びに記録媒体のドライブ装置のケース及びシャーシ等の電気製品の筐体及び構造部材に要求される導電性を維持しつつ、傷及び指紋による外観不具合を大幅に低減し、表面潤滑性が優れていてプレス成形しても皮膜の割れ及び剥離が生じることがなく、前記電気製品の筐体又は構造部材用素材として好適な成形用アルミニウム板及びそれを使用した成形品を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る成形用アルミニウム板は、電気製品の筐体又は構造部材用の素材である成形用アルミニウム板において、表面粗度がRaで0.1乃至2μmのアルミニウム又はアルミニウム合金からなる素板と、この素板の少なくとも片側の表面に0.01乃至1g/m2 の付着量で形成されコロイダルシリカ及び潤滑剤としてのポリエチレンワックスを含む有機皮膜からなる皮膜と、前記皮膜と前記素板との間にクロム量に換算して5乃至50mg/m 2 の付着量で形成されたリン酸クロメート皮膜とを有し、前記コロイダルシリカの添加量が全皮膜質量に対し1乃至5質量%であり、前記ポリエチレンワックスの添加量が全皮膜質量に対し0.5乃至20質量%であり、前記皮膜が形成されている側の表面の摩擦係数が0.2以下であり、前記皮膜が形成されている側の表面に先端が半径10mmの球状端子を0.392Nの荷重で押付けたときの前記球状端子と前記素板との間の表面抵抗値が10Ω以下であることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、前記素板の表面粗度をRaで0.1乃至2μmとし、この素材の少なくとも片側の表面に皮膜を形成することにより、表面の傷及び指紋が目立たないと共に、素板の成形加工時に皮膜の割れ及び剥離が生じない成形用アルミニウム板を得ることができる。また、この皮膜の付着量を0.01乃至1g/m2とすることにより、良好な導電性と、良好な耐指紋性、耐傷付き性及び潤滑性とを両立させることができる。更に、皮膜が形成されている側の表面の摩擦係数を0.2以下とすることにより良好な成型加工性が得られ、表面抵抗値を10Ω以下とすることにより、良好な導電性を得ることができる。なお、本発明においては、皮膜の厚さ以外に皮膜の種類による抵抗値の変化も含めて表面抵抗値を規定している。前記摩擦係数及び表面抵抗値の測定方法については後述する。
【0021】
本願請求項2に係る発明は、上記成形用アルミニウム板において、前記素板が2.0乃至6.0質量%のMgを含むことを特徴とする。これにより、前記素板の強度を確保すると共に、良好な成形性を得ることができる。
【0022】
本願請求項4に係る発明は、前記素板の圧延直交方向における平均反り量が、前記素板の圧延直交方向の板幅に対して2%以下であることを特徴とする。これにより、前記素板を成形する際に、成形品の形状にねじれが生じることを防止でき、成形用アルミニウム板の成形加工性をより向上させることができる。なお、前記成形加工とは、プレス加工、打抜加工及び曲げ加工等、金属板に対するあらゆる成形加工をいう。
【0023】
本願請求項5に係る発明は、上記成形用アルミニウム板において、前記皮膜と前記素板との間に、クロム量に換算して5乃至50mg/m2の付着量で形成されたリン酸クロメート皮膜を有することを特徴とする。これにより、成形加工時における皮膜の割れをより確実に防止でき、成形用アルミニウム板の成形加工性をより一層向上させることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の実施例に係るアルミニウム板を示す断面図である。アルミニウム素板1の表面上に、中間層2が形成されており、この中間層2の上に潤滑性が良好な皮膜3が形成されている。一方、アルミニウム素板1の裏面上に、裏面層4が形成されている。なお、この中間層2及び裏面層4は必ずしも必要ではない。
【0025】
素板1の表面粗度は、Ra値で0.1乃至2μmである。アルミニウム素板1はMgを2.0乃至6.0質量%の範囲で含有していることが好ましい。アルミニウム素板1はコイルから切り出されたものであり、アルミニウム素板1の圧延直交方向における平均反り量は、アルミニウム素板1の圧延直交方向の長さ、即ち板幅に対して2%以下であることが好ましい。
【0026】
図2(a)及び(b)はアルミニウム素板を示す模式図であり、(a)はアルミニウム素板の圧延直交方向を示す斜視図であり、(b)はアルミニウム素板の反り量の測定方法を示す断面図である。図2(a)に示すように、アルミニウム素板1はコイル5に巻き取られている。図2(a)に示す方向Aがアルミニウム素板1の圧延直交方向、即ち、幅方向である。図2(b)は、コイル5を圧延直交方向に沿って切断してアルミニウム素板1を切り出し、このアルミニウム素板1を定盤6上に載置した状態を示す。切り出したアルミニウム素板1の圧延方向の長さは300mmとする。アルミニウム素板1の圧延直交方向における端部に反りが発生している場合は、アルミニウム素板1の圧延直交方向中央部が定盤6に接触するように、即ち、反りの方向が上方に向くように、アルミニウム素板1を定盤6上に載置する。このとき、アルミニウム素板1の圧延直交方向における端縁と定盤6の表面との間の距離をアルミニウム素板1の両端縁で等しくし、この距離を反り量dとする。この反り量dをアルミニウム素板1の圧延方向に平行に伸びる端縁の中央、即ち、切断された端縁からの距離が150mmである点において測定する。そして、5枚のアルミニウム素板1についてこのような測定を行い、これらの5枚の測定値の平均値を求める。そして、アルミニウム素板1の板幅、即ち、圧延直交方向における長さをLとするとき、(dの平均値/L)の比が平均反り量である。本実施例において、平均反り量は0.02以下である。
【0027】
また、皮膜3の付着量は、0.01乃至1g/m2である。更に、中間層2は、例えば、リン酸クロメート皮膜であり、その付着量は、クロム量に換算して5乃至50mg/m2である。更にまた、皮膜3は、例えば、潤滑剤を含む有機皮膜であり、例えば、前記潤滑剤は、添加量が0.5乃至20質量%のポリエチレンワックスである。そして、前記有機皮膜は、一例として、ポリエステル系樹脂皮膜であり、この有機皮膜に1乃至30質量%のコロイダルシリカが添加されている。皮膜3を形成することにより、アルミニウム板の表面を直接素手で触れた場合でも、手の水分又は油分がアルミニウム板に転写し難くなり、指紋が目立たなくなる。これにより、耐指紋性が向上する。また、樹脂皮膜を硬質なものとすることにより、耐傷付き性も向上する。なお、本実施例に係る成形用アルミニウム板の引張強度は、150N/mm2以上であることが好ましい。
【0028】
以下、本発明の成形用アルミニウム板の各層の組成及び数値限定理由について説明する。アルミニウム素板1の表面粗度は主に製品外観に影響する。本発明においては、素板1の表面粗度をRa値にて規定しており、Ra値が0.1μmを下回ると表面の光沢度が強くなりすぎるため、指紋及び傷が目立ちやすくなる。一方、Ra値が2μmを超えると、曲げ加工時に素材に割れが生じやすくなるため、加工部の皮膜は剥離が生じやすくなる。更に、加工部の皮膜は、スジ模様が目立つ外観となり、本発明のような液晶パネルの固定用フレーム若しくは背面カバー又は記録媒体のドライブ装置のケース若しくはシャーシへの適用が不適となる。従って、アルミニウム板の表面のRa値は、0.1乃至2μmとする。
【0029】
また、Mgはアルミニウム素板1の強度を高めることを目的として添加される。Mgの含有量が2.0質量%より少ないと、本発明の成形用アルミニウム板を成形加工した場合、成形品としての強度が不足する場合がある。例えば、本発明の成形用アルミニウム板を加工して液晶パネルの固定用フレームを成形する場合、この固定用フレームにおいて、液晶パネルを背面カバーに強固に固定するための強度が得られない場合がある。また、成形品の形状によっては、強度が不足し、成形品の形状が安定しないことがある。一方、Mgの含有量が6.0質量%より多くなると、アルミニウム素板1の強度が高くなりすぎるため、成形加工条件によっては、成形加工時にアルミニウム素板1に割れを生じる場合がある。また、皮膜3に剥離が生じる場合もある。このため、Mgの含有量は、2.0乃至6.0質量%とすることが好ましい。
【0030】
更に、アルミニウム素板1の圧延直交方向における平均反り量は、アルミニウム素板1の圧延直交方向の板幅に対して2%以下とすることが好ましい。前記平均反り量が板幅に対して2%より大きいと、成形品のサイズが大きい場合に、成形品の形状に狂いが生じる場合がある。例えば、成形前の前記平均反り量が板幅に対して2%より大きなアルミニウム素板を使用して、サイズが大きい液晶パネルの固定用フレームにプレス成形した場合、固定用フレームの両端がねじれてしまい、液晶パネルを背面カバーに固定することが難しくなる。また、軽量性と共に薄さが要求されるノートパソコンにおいては、液晶ディスプレイの厚さが要求数値内に収まらないといった不具合が発生する。このような問題は、アルミニウム素板の板幅方向の平均反り量を、板幅に対して2%以下とすることにより解決することができる。従って、アルミニウム素板1の圧延直交方向における平均反り量は、アルミニウム素板1の圧延直交方向の板幅に対して2%以下とすることが好ましい。
【0031】
更にまた、成形用アルミニウム板における皮膜3が形成されている側の表面の摩擦係数を0.2以下とする。これにより、前記表面の潤滑性を確保し、アルミニウム板の成形加工性を良好にすることができる。この皮膜の潤滑性はアルミニウム板を、例えば、プレス加工して成形品とするときに、金型内を材料が円滑に流れるために極めて重要な働きをする。この表面の摩擦係数を0.2以下とするためには、皮膜3に潤滑剤を添加してもよく、又は、皮膜3としてフッ素樹脂皮膜若しくはシリコン樹脂皮膜等の潤滑剤を含まなくても単独で高い潤滑性を示す皮膜を使用してもよい。皮膜3に潤滑性を与える潤滑剤としては、ポリアルキレン系ワックス、酸化ポリアルキレン系ワックス、マイクロクリスタリンワックス、フッ素系ワックス、PTFE系ワックス、ラノリンワックス、カルナウバワックス、パラフィンワックス、及びグラファイト等、種々の種類のものを使用することができるが、中でもポリエチレンワックスが望ましい。
【0032】
このような潤滑剤の添加量としては、全皮膜量に対し0.5乃至20質量%の範囲内にするのが望ましい。潤滑剤の添加量が0.5質量%を下回ると、十分な潤滑性が得られにくくなり、プレス加工時に成形品の一部が局部変形し、くびれ及びクラックの原因となる。また、潤滑剤を20質量%を超えて添加しても、これ以上の潤滑性向上効果はほとんどなく、むしろ皮膜の造膜性を低下させて耐傷付き性が低下する原因となったり、プレス加工時に皮膜のかすが剥離して金型内に堆積するという悪影響を及ぼすことになる。
【0033】
図3は摩擦係数の測定装置を示す模式図である。本実施例においては、バウデン法により摩擦係数を測定する。即ち、平面の一軸方向に移動可能なテーブル13の上に試験用アルミニウム合金板10を重ねて載置し、先端に直径が4.76mm((3/16)インチ)の鋼球14を設けたアーム15を試験用アルミニウム合金板10の上に配置する。このアーム15を介してアルミニウム合金板10の表面に十分に脱脂処理された鋼球14を所定の荷重で押圧する。また、このアーム15には鋼球14にかかる荷重を検出する検出器16が設けられている。摩擦係数は鋼球14を垂直方向に1.96N(200gf)の荷重にて試験用アルミニウム合金板10に押し付けて接触させ、200m/分の速度でテーブル13を一軸方向に移動させて鋼球14を試験用アルミニウム合金板10上で滑らせたときに鋼球14に印加される水平方向の荷重を測定し、前記水平方向の荷重と前記垂直方向の荷重との比の値を求めることにより算出する。なお、摩擦係数の測定は3回行い、その平均値を採用する。
【0034】
更にまた、成形用アルミニウム板における皮膜3が形成されている側の表面の表面抵抗値を10Ω以下とする。この表面抵抗値が10Ωを超えるとアルミニウム板の導電性が著しく低下し、アースが取れなくなり上述のような諸問題が発生する。図4は表面抵抗値の測定装置(SANWA ELECTRON INSTRUMENT社製アナログテスター MODEL CP−70)を示す模式図である。この表面抵抗値測定装置においては、テスター11の端子の一方を、試験用アルミニウム合金板10におけるサンドペーパーを使用した研磨によって皮膜が除去された部分に接続し、他方を先端が半径10mmの球状の真ちゅう棒12を介して試験用アルミニウム合金板10における皮膜部分に接続する。試験用アルミニウム合金板10の皮膜表面に真ちゅう棒12の先端を0.392N(40gf)の荷重で接触させ、この状態で各試験用アルミニウム合金板の表面抵抗値を測定する。なお、真ちゅう棒12の表面の酸化膜は表面抵抗値の測定値にばらつきを与えるため、測定前に真ちゅう棒の表面をサンドペーパーにて研磨する。また、テスターの内部抵抗の影響を取り除くため、測定前に真ちゅう棒12の先端の測定部と反対電極とを接触させた状態でゼロ点補正を行う。測定にはテスター11における最も敏感なレンジを使用し、テスター11の表示針が止まったときにこの表示針が指した値を測定値とする。測定は10ヶ所について行い、その平均値を採用する。
【0035】
表面抵抗値は、アルミニウム素板1の表面粗度並びに皮膜3の膜厚及び組成等により変化する。例えば、皮膜3が薄くなれば、局所的に下地のアルミニウム素板1が露出する部分がでてくる。上述の表面抵抗値の測定方法は、このように局所的に素板が露出している部分も含めて真ちゅう棒12の球状先端部が接触する領域の抵抗値を表面抵抗値とする。従って、皮膜3が薄い場合、導電体であるアルミニウム素板1が真ちゅう棒12の球状先端部と接触する領域の面積が増大し、この結果、表面抵抗値は小さくなる。
【0036】
皮膜3の付着量は0.01乃至1g/m2の範囲である。皮膜の付着量が0.01g/m2未満であると、指紋の付着が目立ち、耐傷付き性も低下するため、外観品質が低下する。また、皮膜3の付着量が0.01g/m2未満であると、潤滑性を十分に得られないため、プレス加工時に上述のようなくびれ及びクラックが発生する原因となる。一方、皮膜3の付着量が1g/m2を超えた場合には、アルミニウム素板1の表面粗度及び皮膜3の組成等の条件によっては、成形用アルミニウム板の表面抵抗値が10Ωを超えてしまい導電性が不十分となり、成形品とした場合にアースを取るための二次加工が必要となる。
【0037】
皮膜3の種類としては、潤滑剤を含む有機皮膜及び潤滑剤を含むシリカ系の皮膜等を使用することができる。又は、潤滑剤を含まなくても単独で高い潤滑性を示すフッ素樹脂皮膜若しくはシリコン樹脂皮膜等の潤滑性が良好な皮膜を使用してもよい。本発明の成形用アルミニウム板は、プレス加工して塑性変形を加えることが前提であるので、比較的変形に追従しやすい有機皮膜の方が、皮膜の割れ及び剥がれが生じにくいため、望ましい。このような有機皮膜としては、ウレタン系樹脂皮膜、エポキシ系樹脂皮膜、ポリエステル系樹脂皮膜、及びビニル系樹脂皮膜等が挙げられるが、なかでも分子内に活性水素を有するウレタン系樹脂を架橋剤で架橋させた有機皮膜は緻密な皮膜を形成し、耐傷付き性が優れた皮膜を得ることができる。本発明においては、分子内に活性水素を有するウレタン系樹脂の架橋剤として、例えば、アジリジン系、エポキシ系、メラミン系、及びイソシアネート系等を使用できる。また、ポリエステル系樹脂皮膜は加工性が優れることから、前記用途には特に好適である。
【0038】
本発明では、潤滑剤を含む有機皮膜に、更にコロイダルシリカを含有させてもよい。コロイダルシリカを含有させると、皮膜に硬さを与えて耐傷付き性を向上させることができる。このコロイダルシリカの添加量としては全皮膜量に対し1乃至30質量%であることが望ましく、1質量%を下回ると皮膜を硬くする効果が認められず、30質量%を超えると皮膜が硬くなり過ぎて、プレス成形時に皮膜の割れ及び剥離が生じる場合がある。
【0039】
本発明では、皮膜3とアルミニウム素板1との間の中間層2及び裏面層4は必ずしも必要ではなく、またその組成及び量は特には規定しない。但し、中間層2については、皮膜3とアルミニウム素板1との間の接着性を高めるために有効である。このような性能を有する中間層2の例としては、十分脱脂を施したアルミニウム板表面層、リン酸クロメート皮膜、クロム酸クロメート皮膜、リン酸ジルコニウム皮膜、塗布型クロメート皮膜、塗布型ジルコニウム系皮膜、化学エッチング又は電解エッチングにより粗面化したアルミニウム板表面層、ブラシ研磨法又はショットブラスト法により粗面化したアルミニウム板表面層、有機接着剤皮膜、カップリング材を塗布したアルミニウム板表面層、コロナ放電加工を施したアルミニウム板表面層、及び火炎処理を施したアルミニウム板表面層等が例として挙げられる。中でもリン酸クロメート皮膜は密着性及び耐食性の両方が優れており、特に望ましい。
【0040】
クロメート皮膜を形成する場合には、皮膜の量としてはクロム量換算で5乃至50mg/m2であることが望ましい。これはクロム付着量が5mg/m2を下回るか、又は50mg/m2を超えると、皮膜3との間の接着性が弱くなるためである。
【0041】
また、本発明では、プレス成形後に、液晶パネルの固定用フレーム若しくは背面カバー又はドライブ装置のケース若しくはシャーシ等の電気製品の筐体又は構造部材の外面となるアルミニウム板の表面については、導電性のみならず、耐指紋性及び耐傷付き性を兼ね備える必要があるため、本発明にて規定する表面処理をして皮膜3を形成する必要がある。しかし、プレス成形後に前記筐体又は構造部材の内面側となるアルミニウム板の裏面は導電性があれば良いともいえるため、本発明の表面処理は必ずしも必要ではない。しかしながら、本発明の表面処理をアルミニウム板の表面にしか施さない場合、裏面は潤滑性が不十分なため、プレス加工時に焼き付きが生じることがある。従って、裏面にも本発明に記載の表面処理を施して裏面層4を形成することが望ましい。
【0042】
本発明において使用されるアルミニウム素板1の合金成分、調質及び板厚は、特に規制されるものではない。しかし、液晶パネルの固定用フレームとして液晶パネルを固定するため、また、ドライブ装置のケースとして内部の記録媒体のドライブ装置を保護するためには十分な強度をもつことが要望されると共に、併せてプレス加工性が優れたものであることが必要である。このため、アルミニウム−マグネシウム系合金のように、強度が優れている材料を使用することが、本発明の用途には最適なものと考えられる。
【0043】
次に、本実施例に係るアルミニウム板の製造方法について説明する。先ず、アルミニウムに必要に応じてマグネシウム(Mg)を2.0乃至6.0質量%添加したアルミニウム合金を溶解し、鋳造、熱間圧延、冷間圧延及び熱処理を行い、樹脂皮膜が形成される前のアルミニウム素板1をコイル状に作製する。このとき、アルミニウム素板1の表面粗度を、Ra値で0.1乃至2μmとする。その後、アルミニウム素板1の片側の表面上に中間層2を形成し、この中間層2上に潤滑性が良好な皮膜3を形成する。更に、アルミニウム素板1の裏面上に裏面層4を形成する。
【0044】
前述の工程において、溶解時にアルミニウムに各種元素を添加することにより所望の組成を有するアルミニウム合金の鋳塊が得られ、この鋳塊を圧延する際に、圧延と熱処理の諸条件を変更することにより、板厚、強度、表面粗さ等の変更が可能である。また、例えば、テンションレベラーによる矯正により、コイルから切り出したアルミニウム素板1の圧延直交方向における平均反り量を、アルミニウム素板1の圧延直交方向の板幅に対して2%以下とする。これにより、本実施例におけるアルミニウム素板を製造することができる。
【0045】
アルミニウム素板への皮膜の形成方法については、特に制限はないが、コイル状のアルミニウム素板に連続的に塗布することが可能なロールコート法が望ましい。より詳細には、処理液をためておくコーターパンと、処理液を持ち上げるピックアップロールと、持ち上げた処理液をアルミニウム板に塗布するアプリケーターロールとにより構成される2ロールタイプのロールコート法、及びピックアップロールとアプリケーターロールとの間にトランスファーロールが入った3ロールタイプのロールコート法等が望ましい。これらのロールコーターにより塗布された処理液は、連続式オーブン内を通過する際に焼き付けが行われて皮膜を形成する。
【0046】
【実施例】
以下、本発明の特許請求の範囲を満たす実施例の効果について、特許請求の範囲から外れる比較例と比較して説明する。
▲1▼アルミニウム素板の表面粗度
先ず、アルミニウム素板の表面粗度の影響について説明する。素板1として、アルミニウム−マグネシウム系合金板(いずれも板厚0.5mm、品種−調質AA5052−H34(Mg含有量:2.2乃至2.8質量%))を仕上圧延ロールにて仕上圧延し、この仕上げ圧延ロールの表面粗度を変更することにより、仕上圧延により得られた素板1の表面粗度をRaにて0.05、0.1、0.5μmに調節した。また、同じくアルミニウム−マグネシウム系合金板を圧延後にエッチング処理して、表面粗度がRaにて2.0及び3.0μmとなるように調節した。これらの素板1をアルカリ脱脂した後、クロム付着量が20mg/m2となるようにリン酸クロメート処理して中間層2を形成した。このアルミニウム板1及び中間層2を母材とした。
【0047】
この母材に対して、皮膜3として、▲1▼潤滑剤としてポリエチレンワックスを5質量%とコロイダルシリカを5質量%含むウレタン系樹脂皮膜、▲2▼潤滑剤としてポリエチレンワックスを5質量%とコロイダルシリカを5質量%含むエポキシ系樹脂皮膜、▲3▼潤滑剤としてポリエチレンワックスを5質量%含むポリエステル系樹脂皮膜、▲4▼潤滑剤としてポリエチレンワックスを5質量%含むシリカ系皮膜を、夫々皮膜量が0.1g/m2となるように形成した。
【0048】
これらの試験用アルミニウム板を使用し、導電性の指標となる表面抵抗値と耐指紋性の指標となる指紋付着前後の色差(△E)を測定し、更に曲げ加工性として曲げ加工を施した場合の加工部の皮膜剥離状態を試験した。また、皮膜の潤滑性の指標として摩擦係数を測定し、皮膜の耐傷付き性の指標として鉛筆硬度を測定した。この結果を下記表1に示す。
【0049】
次に、各測定項目の測定方法について説明する。色差(ΔE)はミノルタ社製色彩色差計(CR−300)を使用して測定した。曲げ加工試験はJIS H4001 6.4項に記載の屈曲試験に準じて180°曲げにて行った。但し、内側半径は板厚と同じ(1T曲げ)にして試験した。皮膜の剥離状態の判定基準は、皮膜に割れがないものを○とし、皮膜に極微小な割れがあるものを△とし、皮膜に割れがあるものを×とした。鉛筆硬度はJIS K5400 8.4項に記載の鉛筆引っかき試験にて測定した。この鉛筆引っかき試験はJIS K5400 8.4.1項に記載の試験機法にて行い、鉛筆硬度を測定した。なお、試験は9.8N(1kgf)の荷重で実施した。
【0050】
次に、各測定結果について説明する。表1に示すように、導電性については、表1に示す全ての実施例(実施例1乃至12)及び全ての比較例(比較例1乃至8)において表面抵抗値が1Ω以下となり、目標値である10Ωよりも低く、良好な導電性を示した。耐指紋性については、実施例の全部と、比較例の内、表面粗度がRaにて2μmを超える比較例5乃至8については△E値が目標の0.5を下回り、良好な外観となった。しかし、表面粗度がRaにて0.1μmを下回る比較例1乃至4については、△E値が0.5を超え、若干指紋が目立つ結果となった。曲げ加工性については、実施例の全部と、比較例の内、表面粗度がRaにて0.1μmを下回る比較例1乃至4については加工部の皮膜剥離は認められなかった。しかし、表面粗度がRaにて2μmを超える比較例5乃至8については、微小な皮膜剥離が認められた。摩擦係数については、全ての実施例と比較例において0.20を下回っており、良好な潤滑性を示した。鉛筆硬度については、実施例の全部と、比較例の内、表面粗度がRaにて2μmを超える比較例5乃至8については、鉛筆硬度が3H以上であり、耐傷付き性が良好であった。しかし、表面粗度がRaにて0.1μmを下回る比較例1乃至4については、鉛筆硬度が2Hにとどまり、傷が目立ちやすい結果となった。
【0051】
以上の結果から、指紋及び傷を目立たなくするためには表面粗度がRaにて0.1μm以上必要であり、曲げ加工時の皮膜剥離を防ぐためには表面粗度がRaにて2μm以下であることが必要であることがわかる。
【0052】
【表1】
【0053】
▲2▼中間層の影響
次に、中間層2の影響を試験した結果について説明する。表面粗度がRaにて0.5μmのアルミニウム−マグネシウム系合金板(板厚0.5mm、品種−調質AA5052−H34)に対し、アルカリ脱脂を施した後、クロム付着量を変化させたリン酸クロメート処理又は塗布型クロメート処理を行って中間層を形成し、これを母材として準備した。
【0054】
この母材に対し、▲1▼潤滑剤としてポリエチレンワックスを5質量%とコロイダルシリカを5質量%含むウレタン系樹脂皮膜、▲2▼潤滑剤としてポリエチレンワックスを5質量%とコロイダルシリカを5質量%含むエポキシ系樹脂皮膜、▲3▼潤滑剤としてポリエチレンワックスを5質量%含むポリエステル系樹脂皮膜、▲4▼潤滑剤としてポリエチレンワックスを5質量%含むシリカ系皮膜を、皮膜量が0.1g/m2となるように形成した。
【0055】
これらの試験用アルミニウム板を使用し、導電性の指標となる表面抵抗値と耐指紋性の指標となる指紋付着前後の色差(△E)を測定し、更に曲げ加工性として曲げ加工を施した場合の加工部の皮膜剥離状態を試験した。また、摩擦係数と鉛筆硬度を測定した。下記表2はリン酸クロメート処理の結果を示し、下記表3は塗布型クロメートの結果を示す。
【0056】
表2及び表3に示すように、導電性については、表2及び表3に示す全ての実施例(実施例13乃至52)において表面抵抗値が1Ω以下となり、目標値である10Ωを下回る結果となった。耐指紋性については、全ての実施例において△E値が目標の0.5を下回った。曲げ加工性については、リン酸クロメートの場合、皮膜量がクロム量換算で5mg/m2を下回る実施例13乃至16と、クロメート皮膜量が50mg/m2を超える実施例29乃至32については、微小な皮膜割れが認められた。また、塗布型クロメートの場合、皮膜量がクロム量換算で5mg/m2を下回る実施例33乃至36と、クロメート皮膜量が20mg/m2を超える実施例45乃至52については、微小な皮膜割れが認められた。
【0057】
摩擦係数については、全ての実施例において0.20を下回っており、良好な潤滑性を示した。鉛筆硬度については、全ての例において鉛筆硬度が3H以上であった。
【0058】
また、塗布型クロメートとリン酸クロメートとを比較すると、リン酸クロメートの方がより広いクロム量の範囲で良好な曲げ加工性が得られているため、リン酸クロメートの方が望ましい。以上の結果から、中間層としてはリン酸クロメート皮膜を形成することが望ましく、特に皮膜量がクロム量換算にて5乃至50mg/m2の範囲内であることがより望ましい。
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
▲3▼潤滑剤添加量の影響
次に、潤滑剤の添加量の影響を試験した結果について説明する。表面組度がRaにて0.5μmのアルミニウム−マグネシウム系合金板(板厚0.5mm、品種−調質AA5052−H34)を使用し、アルカリ脱脂を施した後、クロム付着量が20mg/m2となるように、リン酸クロメート処理を行った板を母材として準備した。
【0062】
この母材に対し、▲1▼潤滑剤としてのポリエチレンワックスの含有量を変化させると共に、コロイダルシリカを5質量%含むウレタン系樹脂皮膜、▲2▼潤滑剤としてポリエチレンワックス含有量を変化させると共に、コロイダルシリカを5質量%含むエポキシ系樹脂皮膜、▲3▼潤滑剤としてポリエチレンワックスの含有量を変化させたポリエステル系樹脂皮膜、▲4▼潤滑剤としてポリエチレンワックス含有量を変化させたシリカ系皮膜を、皮膜量が0.1g/m2となるように形成した試験用アルミニウム板を作製した。
【0063】
これらの試験用アルミニウム板を使用し、導電性の指標となる表面抵抗値と耐指紋性の指標となる指紋付着前後の色差(△E)を測定し、更に曲げ加工性として曲げ加工を施した場合の加工部の皮膜剥離状態を試験した。また、摩擦係数と鉛筆硬度を測定した。その結果を下記表4に示す。
【0064】
表4に示すように、導電性については、表4に示す全ての実施例及び比較例(実施例53乃至76及び比較例9乃至12)において表面抵抗値が1Ω以下となり、目標値である10Ωを下回る結果となった。耐指紋性については、全ての実施例及び比較例において、△E値が目標の0.5を下回った。曲げ加工性については、実施例は全て皮膜剥離は認められなかった。しかし、潤滑剤を含まない比較例9乃至12については、微小な皮膜剥離が認められた。摩擦係数については、実施例は全て0.20を下回っており、良好な潤滑性を示した。特に、潤滑剤含有量が0.5乃至10質量%の範囲内においては、潤滑剤含有量が多くなるほど摩擦係数が小さくなるという傾向が認められた。しかし、潤滑剤含有量が10乃至50質量%の範囲内では、もはや潤滑剤含有量を大きくしても殆ど摩擦係数の向上は認められなかった。一方、潤滑剤を含まない比較例9乃至12においては、摩擦係数が0.20を大きく上回っており、十分な潤滑性は得られなかった。
【0065】
鉛筆硬度については、実施例は全て鉛筆硬度が3H以上であった。但し、潤滑剤含有量が50質量%の実施例73乃至76では、潤滑剤含有量が0.5乃至20質量%の実施例53乃至72よりわずかに鉛筆硬度が低めに出ていることから、潤滑剤含有量としてより望ましいのは0.5乃至20質量%の範囲である。また、潤滑剤を添加していない比較例9乃至12については、鉛筆硬度が2Hにとどまり、傷が目立ちやすい結果となった。
【0066】
以上の結果から曲げ加工時の皮膜剥離を防ぐためには、潤滑剤を添加している必要がある。更に、良好な潤滑性と耐傷付き性をバランス良く得るためには、潤滑剤含有量を0.5乃至20質量%の範囲で制御しておくことがより望ましい。
【0067】
【表4】
【0068】
▲4▼皮膜量の影響
次に、皮膜3の量の影響について説明する。表面粗度がRaにて0.5μmのアルミニウムーマグネシウム系合金板(板厚0.5mm、品種−調質AA5052−H34)を使用し、アルカリ脱脂を施した後、クロム付着量が20mg/m2となるように、リン酸クロメート処理を行った。
【0069】
この母材に対し、▲1▼潤滑剤としてポリエチレンワックス量を5質量%とコロイダルシリカを5質量%含むウレタン系樹脂皮膜、▲2▼潤滑剤としてポリエチレンワックスを5質量%とコロイダルシリカを5質量%含むエポキシ系樹脂皮膜、▲3▼潤滑剤としてポリエチレンワックスを5質量%含むポリエステル系樹脂皮膜、▲4▼潤滑剤としてポリエチレンワックスを5質量%含むシリカ系皮膜を、夫々皮膜量を変化させて形成した試験用アルミニウム板を作製した。
【0070】
これらの試験用アルミニウム板を使用し、導電性の指標となる表面抵抗値と耐指紋性の指標となる指紋付着前後の色差(△E)を測定し、更に、曲げ加工性として、曲げ加工を施した場合の加工部の皮膜剥離状態を調査した。また、摩擦係数と鉛筆硬度を測定した。その結果を下記表5に示す。
【0071】
表5に示すように、導電性については、表5に示す実施例の全て(実施例77乃至88)と皮膜量が0.01g/m2を下回る比較例13乃至17において、表面抵抗値が目標値である10Ω以下となった。しかし、皮膜量が1g/m2を超える比較例18乃至21においては、表面抵抗値は目標値を上回る結果となった。耐指紋性については、実施例の全てと皮膜量が1g/m2を超える比較例18乃至21において、△E値が目標値である0.5を下回る結果となった。しかし、皮膜量が0.01g/m2を下回る比較例13乃至17においては、△E値が目標の0.5を上回る結果となった。曲げ加工性については、皮膜を形成してない比較例13を除き、全ての実施例と比較例において、皮膜剥離は認められなかった。摩擦係数については、全ての実施例及び皮膜量が1g/m2を超える比較例18乃至21において0.20を下回っており、良好な潤滑性を示した。しかし、皮膜量が0.01g/m2を下回る比較例13乃至17については、摩擦係数が0.20を上回っており、十分な潤滑性は得られなかった。鉛筆硬度については、皮膜を形成してない比較例13を除き、全ての実施例と比較例において、鉛筆硬度が3H以上であった。
【0072】
以上の結果から、十分な導電性を得るためには、皮膜量が1g/m2以下である必要がある。また、良好な耐指紋性、潤滑性及び耐傷付き性を得るためには、皮膜量が0.01g/m2以上であることが必要である。従って、これらのバランスをとるために、皮膜量としては0.01乃至1g/m2である必要がある。
【0073】
【表5】
【0074】
▲5▼コロイダルシリカ含有量の影響
次に、コロイダルシリカの含有量の影響について説明する。表面粗度がRaにて0.5μmのアルミニウム−マグネシウム系合金板(板厚0.5mm、品種−調質AA5052−H34)を使用し、アルカリ脱脂を施した後、クロム付着量が20mg/m2となるようにリン酸クロメート処理を行った。
【0075】
この母材に対し、▲1▼潤滑剤としてポリエチレンワックスを5質量%含み、コロイダルシリカの含有量を変化させたウレタン系樹脂皮膜、▲2▼潤滑剤としてポリエチレンワックスを5質量%含み、コロイダルシリカの含有量を変化させたエポキシ系樹脂皮膜、▲3▼潤滑剤としてポリエチレンワックスを5質量%含み、コロイダルシリカの含有量を変化させたポリエステル系樹脂皮膜を、皮膜量が0.1g/m2となるように形成した試験用アルミニウム板を作製した。
【0076】
これらの試験用アルミニウム板を使用し、導電性の指標となる表面抵抗値と耐指紋性の指標となる指紋付着前後の色差(△E)を測定し、更に曲げ加工性として曲げ加工を施した場合の加工部の皮膜剥離状態を調査した。また、摩擦係数と鉛筆硬度を測定した。その結果を下記表6に示す。
【0077】
表6に示すように、導電性については、表6に示す全ての実施例(実施例89乃至103)において、表面抵抗値が1Ω以下となり、目標値である10Ωを下回る良好な結果が得られた。耐指紋性については、全ての実施例において、△E値が目標値である0.5を下回る良好な結果が得られら。曲げ加工性については、全ての実施例において皮膜剥離は認められなかった。但し、コロイダルシリカ添加量が30質量%を超える実施例101乃至103においては、剥離に至る手前の微細な皮膜割れが認められた。従って、コロイダルシリカ含有量として、より望ましいのは30質量%以下である。摩擦係数については、全ての実施例において0.20を下回っており、良好な潤滑性を示した。鉛筆硬度については、全ての実施例において鉛筆硬度が3H以上であった。但し、含有量が1質量%を下回る実施例89乃至91は、含有量が1質量%以上である実施例92乃至103より若干硬度が低い結果となっており、コロイダルシリカの含有量としてより、望ましいのは1質量%以上である。
【0078】
以上の結果からコロイダルシリカを添加する方が耐傷付き性を向上させる効果があるが、曲げ加工性とのバランスから添加量として望ましいのは1乃至30質量%であることがわかる。
【0079】
【表6】
【0080】
▲6▼潤滑剤の種類の影響
次に、潤滑剤の種類の影響について説明する。表面粗度がRaにて0.5μmのアルミニウム−マグネシウム系合金板(板厚0.5mm、品種−調質AA5052−H34)を使用し、アルカリ脱脂を施した後、クロム付着量が20mg/m2となるようにリン酸クロメート処理を行った板を母材として準備した。
【0081】
この母村に対し、▲1▼各種潤滑剤を5質量%とコロイダルシリカを5質量%含むウレタン系樹脂皮膜、▲2▼各種潤滑剤5質量%とコロイダルシリカを5質量%含むエポキシ系樹脂皮膜、▲3▼各種潤滑剤を5質量%含むポリエステル系皮膜、▲4▼各種潤滑剤を5質量%含むシリカ系皮膜を、皮膜量を変化させて形成した試験用アルミニウム板を作製した。潤滑剤の種類としては、ポリエチレンワックス(記号A)、パラフィンワックス(記号B)、カルナウバワックス(記号C)、ラノリンワックス(記号D)を使用した。
【0082】
これらの試験用アルミニウム板を使用し、導電性の指標となる表面抵抗値と耐指紋性の指標となる指紋付着前後の色差(△E)を測定し、更に曲げ加工性として曲げ加工を施した場合の加工部の皮膜剥離状態を調査した。また、摩擦係数と鉛筆硬度を測定した。結果を表7に示す。
【0083】
表7に示すように、導電性については、表7に示す全ての実施例(実施例104乃至119)において、表面抵抗値が1Ω以下となり、目標値である10Ωを下回る良好な結果が得られた。耐指紋性については、全ての実施例において△E値が目標値である0.5を下回る良好な結果が得られた。曲げ加工性については、全ての実施例において、曲げ加工後の皮膜剥離は認められなかった。摩擦係数については、全ての実施例において0.20を下回っており、良好な潤滑性を示した。
【0084】
また、鉛筆硬度については、全ての実施例において鉛筆硬度が3H以上であった。但し、潤滑剤がポリエチレンワックスである実施例104乃至107は、その他の潤滑剤を使用している実施例108乃至119より若干硬度が高くなっている。
【0085】
以上の結果から潤滑剤の種類としてはポリエチレンワックスであることが望ましい。
【0086】
【表7】
【0087】
▲7▼皮膜種類の影響
前述の実施例119例のうち、4種類の潤滑剤を含む皮膜について比較が可能な実施例1乃至88と実施例104乃至119について、4種類の皮膜種類別に鉛筆硬度の値を比較した。3種類の皮膜しか比較していない実施例89乃至103と、本発明の範囲外である比較例は除外した。その結果を下記表8に示す。
【0088】
この表8から明らかなように、有機系皮膜の方が無機系皮膜よりも平均硬度が高くなっている。更に、有機系皮膜の中でもポリエステル系皮膜及びウレタン系皮膜が相対的に硬度が高くなっている。
【0089】
以上の結果から皮膜の種類としては有機系皮膜である方が望ましく、ポリエステル系樹脂皮膜及びウレタン系樹脂皮膜であることがより望ましい。
【0090】
【表8】
【0091】
▲9▼アルミニウム合金素板のMg含有量及び平均反り量の影響
次に、アルミニウム合金素板のMg含有量及び平均反り量の影響について説明する。Mgを夫々1、3、5及び7質量%含有する組成に調整されたアルミニウム合金板を作製した。この合金板の板厚は0.6mm、板幅は400mm、表面平均粗さRaは0.3μmとした。なお、このアルミニウム合金板の作製において、圧延後にテンションレベラーを通すことにより、板幅方向の平均反り量を制御し、このアルミニウム合金板の板幅方向の平均反り量を、板幅に対して1%、2%、3%又は5%とした。このアルミニウム合金板についてアルカリ脱脂を施した後、クロム付着量が20mg/m2となるようにリン酸クロメート処理を行った板を母材として使用した。次に、このアルミニウム合金板の両面に、付着量が0.3g/m2のポリエステル系樹脂皮膜を形成した。
【0092】
これらの試験用アルミニウム合金板を使用し、導電性の指標となる表面抵抗値、耐指紋性の指標となる指紋付着前後の色差(△E)及び耐傷付き性の指標となる鉛筆硬度を測定した。
【0093】
また、前記試験用アルミニウム合金板を打抜いた後、プレス成形し、15インチサイズの液晶パネルの固定用フレームを作製した。図5は液晶パネルの固定用フレームの形状を示す斜視図である。図5に示すように、液晶パネルの固定用フレーム17は四角形状の枠体であり、開口部18を有する正面部19と、この正面部19の外縁に沿って正面部19に直交するように設けられた側面部20とから構成されている。液晶パネルの固定用フレーム17を成形した後、成形加工性の評価として、加工部の状態を目視にて観察し、素材の損傷が全く認められないものを特に良好(◎)、素材の割れが僅かに認められたものを普通(△)、大きな割れが認められたものを不良(×)とした。また、液晶パネルの固定用フレーム17について形状精度を目視により観察し、ねじれ等が認められず形状が完全に安定であったものを特に良好(◎)、形状がやや不安定であるか又は軽微なねじれが認められたが実際上は問題がないレベルであり、従って歩留が100%であったものを良好(○)、ねじれが認められ、歩留が70乃至80%であったものをやや不良(△)、大きなねじれが認められたものを不良(×)とした。液晶パネルの固定用フレーム17の加工部の状態及び形状の観察結果を表9に示す。
【0094】
Mg含有量が6質量%以下である実施例120乃至131は、加工部の状態が特に良好であった。これに対して、Mgの含有量が7質量%である実施例132乃至135は、アルミニウム合金板の強度が高く、加工が困難であったため、素材の割れが僅かに認められた。また、Mg含有量が2質量%以上であり、板幅に対する平均反り量が2%以下である実施例124、125、128、129、132、133は固定用フレームにねじれ等が認められずその形状が完全に安定であった。これに対して、Mg含有量が1質量%である実施例120乃至123、及びMg含有量が3質量%以上であっても、板幅に対する平均反り量が2%を超える実施例126、127、130、131、134、135は形状がやや不安定であるか、固定用フレームのねじれが認められ、上述の板幅に対する平均反り量が2%以下である実施例(124、125、128、129、132、133)と比較して加工成形性がやや劣っていた。また、表9に示す全ての実施例について、導電性、耐指紋性及び耐傷付き性は良好であった。
【0095】
以上の結果から、加工成形性の観点から、アルミニウム合金板のMg含有量は2乃至6質量%であることが好ましく、板幅に対する平均反り量は2%以下であることが好ましい。
【0096】
【表9】
【0097】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、液晶パネルの固定用フレーム及び背面カバー並びに記録媒体ドライブ装置のケース及びシャーシ等の電気製品の筐体及び構造部材に要求される導電性を維持しつつ、傷及び指紋による外観不具合を大幅に低減し、表面潤滑性が優れており、プレス成形しても皮膜の割れ及び剥離が生じない電気製品の筐体及び構造部材用アルミニウム板を得ることができる。更に、本発明では、製造工程における不良率を低減し、歩留まりが向上する。これにより、成形品の全体的なコストが安価となり、パソコン及びAV機器のコストダウンに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す断面図である。
【図2】(a)及び(b)はアルミニウム素板の平均反り量を示す模式図であり、(a)はアルミニウム素板の圧延直交方向を示す斜視図であり、(b)はアルミニウム素板の平均反り量の測定方法を示す断面図である。
【図3】摩擦係数の測定装置を示す模式図である。
【図4】表面抵抗値の測定装置を示す模式図である。
【図5】液晶パネルの固定用フレームの形状を示す斜視図である。
【符号の説明】
1;アルミニウム素板
2;中間層
3;皮膜
4;裏面層
5;コイル
6;定盤
10;試験用アルミニウム合金板
11;テスター
12;真ちゅう棒
13;テーブル
14;鋼球
15;アーム
16;検出器
17;液晶パネルの固定用フレーム
18;開口部
19;正面部
20;側面部
A;圧延直交方向
L;板幅
d;反り量
Claims (7)
- 電気製品の筐体又は構造部材用の素材である成形用アルミニウム板において、表面粗度がRaで0.1乃至2μmのアルミニウム又はアルミニウム合金からなる素板と、この素板の少なくとも片側の表面に0.01乃至1g/m2の付着量で形成されコロイダルシリカ及び潤滑剤としてのポリエチレンワックスを含む有機皮膜からなる皮膜と、前記皮膜と前記素板との間にクロム量に換算して5乃至50mg/m2の付着量で形成されたリン酸クロメート皮膜とを有し、前記コロイダルシリカの添加量が全皮膜質量に対し1乃至5質量%であり、前記ポリエチレンワックスの添加量が全皮膜質量に対し0.5乃至20質量%であり、前記皮膜が形成されている側の表面の摩擦係数が0.2以下であり、前記皮膜が形成されている側の表面に先端が半径10mmの球状端子を0.392Nの荷重で押付けたときの前記球状端子と前記素板との間の表面抵抗値が10Ω以下であることを特徴とする成形用アルミニウム板。
- 前記素板が2.0乃至6.0質量%のMgを含有することを特徴とする請求項1に記載の成形用アルミニウム板。
- 引張強度が150N/mm2以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の成形用アルミニウム板。
- 前記素板の圧延直交方向における平均反り量が、前記素板の圧延直交方向の板幅に対して2%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の成形用アルミニウム板。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の成形用アルミニウム板を使用して成形されたものであることを特徴とする成形品。
- 液晶パネルの固定用フレーム又は背面カバーであることを特徴とする請求項5に記載の成形品。
- 記録媒体のドライブ装置のケース又はシャーシであることを特徴とする請求項5に記載の成形品。
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