JP4252638B2 - 高圧ガス容器用連結管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高圧ガス容器用連結管に関し、詳しくは、半導体産業において、電子デバイスの製造プロセスに使用される半導体材料ガスやパージガス,キャリアガス等の高純度ガスを供給する高圧ガス容器の容器弁とガス供給配管との間を連結するための連結管の構造に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
一般に、半導体プロセスガスの供給設備や製造設備に設けられているガス配管に高圧ガス容器(以下、シリンダーという)を連結する際には、容器弁の口金部が大気に曝されているため、口金部と配管との間に大気が混入してしまう。このとき混入した大気は、窒素やアルゴン等の不活性ガスによるパージや、真空排気により除去されるが、混入した不純物の除去が不十分であると、残留不純物がシリンダー容器内に混入したり、製造設備に流れ込んだりしてしまう。
【0003】
例えば、反応性を持つガスに酸素や水分等の大気成分ガスが混入すると、ガス濃度の経時変化を引き起こし、酸化反応により不純物が生成したり、接ガス部の金属表面に腐食が発生したりする。
【0004】
また、ガス供給時には、ガス供給設備から消費設備にかけての配管等に、残留不純物による汚染が発生する。ガス供給時における汚染の影響は、ガスシステムに対してだけでなく、製品の歩留まりの低下や電気的特性の不良としても現れる。
【0005】
一般に、シリンダーを設備側の配管に連結する場合、スパイラル状あるいは円弧状に曲げられた単管を容器弁の口金部に直接連結する方法が用いられている。しかし、この方法では、シリンダーの交換時に発生する大気成分やパーティクルの除去、プロセスガスによるパージを行う場合、容器弁の口金部からガス設備までの間の配管そのものがガス停滞部(デッドスペース)になり、有効なパージを行うことができなかった。
【0006】
大気成分やパーティクルの除去を行うパージの特性を向上させるための連結方法として、近年は、ブロック弁方式や二重管方式が採用されている。ブロック弁方式は、容器弁口金部と設備側配管との間のデッドスペースを小さくしたもので、複数のバルブ集合体を直接容器弁へ連結させる連結管であり、デッドスペースを小さくできるという特徴を有している。
【0007】
しかしながら、ブロック弁内のガス流路と容器弁口金部との間に存在するデッドスペースは、一方向性を持ったパージガス流でパージすることができないため、この部分のパーティクルを除去することができなかった。さらに、ブロック弁方式の連結管は、複数の弁を内蔵しているために大型になり、通常の連結管と比較して高額であるという欠点を有している。
【0008】
また、二重管方式は、太い配管(外管)の中に細い配管(内管)を設けて二重管構造としたものであり、内管からパージガスを噴出し、内管と外管との間からパージガスを排出することにより、大気成分やパーティクルを除去するようにしている。この方式は、大気成分やパージガス除去特性は優れているものの、内管からガスを噴出させる際に内管自体に微少な振動が発生し、容器弁内部の部品から金属粒子等のパーティクルが発生したり、発生したパーティクルが配管内に堆積するという欠点を有している。
【0009】
そこで本発明は、容器弁に取付ける際に混入するパーティクルや大気成分を速やかにかつ完全に除去することが可能であり、しかも、簡便に取付けることが可能なコンパクトで低コストな高圧ガス容器用連結管を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の高圧ガス容器用連結管は、高圧ガス容器弁とガス供給配管とを連結するための連結管において、該連結管のボディに、パージガス導入用の流路とパージガス排出用の流路となる2本の独立した流路を形成し、前記ボディの容器取付側端面に両流路の一端をそれぞれ開口し、前記ボディの配管接続側端面に前記パージガス導入用の流路の他端をパージガス導入口として開口するとともに、前記ボディの側面に前記パージガス排出用の流路の他端をパージガス排気口として開口し、前記パージガス排出用の流路の径が前記パージガス導入用の流路の径よりも大きく、かつ、前記パージガス導入用の流路と前記パージガス排出用の流路とが、連結管の軸線に対して20〜30度傾斜した状態で、互いに平行に設けられていることを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の高圧ガス容器用連結管の一形態例を示す断面図、図2は参考例を示す断面図である。この高圧ガス容器用の連結管1は、円筒状のボディ2の内部に、パージガス導入用流路3とパージガス排出用流路4とを形成し、ボディ2の容器弁取付側端面2aに両流路3,4の一端3a,4aをそれぞれ開口させるとともに、パージガス導入用流路3の他端(導入口)3bをボディ2の配管接続側端面2bに開口させて図示しない配管を固着し、パージガス排出用流路4の他端(排気口)4bをボディ2の側面に開口させて図示しない配管を固着するように形成したものである。なお、ボディ2の容器弁取付側外周には、連結管1を袋ナット5によって容器弁口金部6に取付けるためのフランジ7が形成されており、通常の連結管と同様にして容器弁口金部6に取付けられる。
【0012】
前記両流路3,4の径は、少なくとも1mm以上とし、パージガス導入用流路3は2mm以上、パージガス排出用流路4は4mm以上とすることが好ましい。特に、パージガス排出用流路4の径をパージガス導入用流路3の径よりも大きくすることにより、ガス容器の真空引きを行う際のコンダクタンス低下やパージガス流通時の圧力損失を抑えることができる。
【0013】
パージガス導入用流路3及びパージガス排出用流路4は、図2の参考例に示すように、ボディ2の中心線(連結管の軸線)に平行に配置したものに比べて、図1に示すように、ボディ2の中心線に対して両流路3,4をボディ2の中心線に対して20〜30度の範囲に傾斜させることにより、ボディ2内のデッドスペースを少なくすることがで、したがって、ボディ2をコンパクトな形状とすることができる。特に、一般的な連結管としての大きさを考慮すると、両流路3,4をボディ2の中心線に対して30度傾斜させた状態で平行に形成し、かつ、パージガス導入用流路3の径を2mm、パージガス排出用流路4の径を4mmとすることが最適である。
【0015】
なお、本形態例とは逆に、パージガス導入用流路3の導入口3bをボディ2の側面に開口させ、パージガス排出用流路4の排気口4bをボディ2の配管接続側端面2bに開口させるようにしてもよい。
【0016】
次に、上記構造の連結管1をシリンダーに連結するときのパージ操作について説明する。まず、連結管1は、容器弁口金部6との間にパッキン8を介して連結され、袋ナット5により締付けられて接続され、連結部分の外部リークが抑止される。このとき、ガス容器口金部6と連結管1との間に混入した大気は、パージガス導入口3bからパージガス導入用流路3を通って容器弁に向けて導入されるパージガスに同伴され、パージガス排出用流路4を通過してパージガス排気口4bから排気除去される。
【0017】
このときのパージ方法としては、パージガスを導入して系内を加圧し、その後大気圧以下に排気する(加圧−排気)回分式パージを繰返す方法が好ましい。この回分式パージの回数は、多いほど、また、パージガスの導入圧力と放出圧力との差が大きいほど効果的である。一般に、回分回数は10回以上、導入圧力は0.5MPa以上、放出圧力は1Pa以下とすることが好ましい。
【0018】
次いで、パージガス導入用流路3からパージガスを導入し、容器弁部分を通過させてパージガス排出用流路4から排出する流通式パージを行う。このとき、パージガス導入用流路3から導入するパージガスを乱流域のガス流とすることにより、接ガス部の表面やデッドスペースに沈着,滞留しているパーティクルを効率よく除去することができる。特に、パージガス流のレイノルズ数を20000以上とすることが効果的である。
【0019】
連結管1を上述のような構造に形成すると、デッドスペースが小さくなり、流通パージを行う場合は、完全にガスの流れに一方向性を持たせることができるので、パーティクルや大気成分の除去を従来より良好に行うことが可能となる。
【0020】
さらに、パージガス排出用流路4の径をパージガス導入用流路3の径より大きくすることにより、パージガスの導入圧力と放出圧力との差を大きくすることができるので、酸素や水分等の大気成分ガスの除去効率をより向上させることができる。
【0021】
また、パージガスとしては、窒素,アルゴン,ヘリウム等の不活性ガスが好適であり、水分0.1ppm以下、酸素0.1ppm以下、0.3μm以上のパーティクルが100個/cf以下の純度を有するものが好ましく、さらに、水分1ppb以下、酸素1ppb以下、パーティクル10個/cf以下のガスが最適である。
【0022】
【実施例】
実施例1
図1に示す構造の連結管1をSUS316L材を加工することにより製作した。パージガス導入用流路3の径は2mm、パージガス排出用流路4の径は4mmとし、両流路は、ボディ2の中心線に対して30度傾斜させた状態で互いに平行に形成した。また、接ガス部表面には電解研磨を施した。
【0023】
図3に示すように、シリンダー10の容器弁11に連結管1を装着し、パージガスの導入圧力を0.5MPa、放出圧力を1Paとして前述の手順で回分式パージを50回行った。
【0024】
その後、パージガス導入用流路3に接続した配管12からステンレス製オールメタルフィルター13で0.1μm以上のパーティクルを1個/cf以下に除去した窒素ガスを毎分100リットルの流量で導入して流通パージを行い、容器弁11内を通過させてパージガス排出用流路4から排出された窒素ガスを配管14から等速吸引サンプラー15に導入し、毎分2.8リットルを配管16に分流してパーティクルカウンター17に導入することにより、0.1μm以上のパーティクルを計測した。
【0025】
比較例として、従来の二重管式の連結管を用いて同様の操作を行い、パージ効果の評価を行った。両者の結果を図4に示す。
【0026】
この結果から、従来の二重管式連結管では除去しきれないパーティクルが、本実施例の連結管では、流通パージ22分経過後からは完全にゼロカウントとなることが分かる。
【0027】
実施例2
図5に示すように、連結管1の下流に大気圧イオン化質量分析計(API−MS)21を接続し、パージガス中の水分と酸素とを測定することにより、連結管1を容器弁11に取付たときに混入した大気成分の除去性能の評価を行った。なお、API−MS21の前後には、API−MS21を流れるガス量を一定(毎分1.2リットル)に保つための流量制御器22,23及びバイパス管24を設けた。
【0028】
まず、配管25からのパージガス(高純度窒素ガス)を連結管1のパージガス導入用流路3に流しながら、連結管1を容器弁11の口金部に装着した。次に、弁26,27を閉じた状態で0.5MPaの圧力のパージガスを連結管1の部分に導入して加圧し、弁28を閉じて弁26を開き、連結管1の部分の圧力を減圧して大気圧まで放出する回分式パージを50回行った。
【0029】
その後、水分1ppb以下、酸素1ppb以下、パーティクル10個/cf以下の高純度窒素ガスを導入して流通パージを行い、パージガス排出用流路4から排出されるパージガス中の水分と酸素とをAPI−MS21で測定した。定量した質量数は、水分がZ/M=18、酸素がZ/M=32とした。水分及び酸素の結果を図6に示す。なお、高純度窒素ガス中の水分及び酸素の濃度(バックグランド濃度)は、それぞれ1ppb,0.2ppbであった。
【0030】
図6から明らかなように、酸素濃度は、回分パージの効果によって流通パージ開始直後からバックグランド濃度に達し、水分の濃度は、初期に80ppbであったものが、流通パージ45分経過後には10ppbにまで低減したことが分かる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の高圧ガス容器用連結管によれば、連結管内に流通パージの際のデッドスペースがないため、シリンダーをガス設備に取付ける際に混入したパーティクルを速やかにかつ完全にパージ除去することができる。また、同様に大気成分についても良好な除去特性が得られる。したがって、従来より高品質なガスを供給することが可能となる。
【0032】
また、シリンダーを取外す時も、連結管を大気開放する前に、半導体プロセスガスを略完全に除去できるので、可燃性ガスや毒性ガスによる人体への危険性低減や腐食性ガスによるガス設備配管の劣化を防ぐことができ、保安の確保やメンテナンスコストの低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の高圧ガス容器用連結管の一形態例を示す断面図である。
【図2】 参考例を示す断面図である。
【図3】 実施例1における機器の接続状態を示す系統図である。
【図4】 流通パージの時間経過とパーティクル量との関係を示す図である。
【図5】 実施例2における機器の接続状態を示す系統図である。
【図6】 流通パージの時間経過と水分及び酸素の濃度変化を示す図である。
【符号の説明】
1…連結管、2…ボディ、3…パージガス導入用流路、4…パージガス排出用流路、6…容器弁口金部
Claims (1)
- 高圧ガス容器弁とガス供給配管とを連結するための連結管において、該連結管のボディに、パージガス導入用の流路とパージガス排出用の流路となる2本の独立した流路を形成し、前記ボディの容器取付側端面に両流路の一端をそれぞれ開口し、前記ボディの配管接続側端面に前記パージガス導入用の流路の他端をパージガス導入口として開口するとともに、前記ボディの側面に前記パージガス排出用の流路の他端をパージガス排気口として開口し、前記パージガス排出用の流路の径が前記パージガス導入用の流路の径よりも大きく、かつ、前記パージガス導入用の流路と前記パージガス排出用の流路とが、連結管の軸線に対して20〜30度傾斜した状態で、互いに平行に設けられていることを特徴とする高圧ガス容器用連結管。
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