JP4248313B2 - ガスバリア性容器の製造方法およびガスバリア性容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスバリア性に優れた容器の製造方法およびガスバリア性容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来食料品や飲料、医薬品、電子部品などの容器としては、内容物の劣化を防止するため、熱可塑性樹脂からなる容器の表面にガスバリア層を有するガスバリア性容器が用いられている。このようなガスバリア性容器の製造方法としては、熱可塑性樹脂からなる容器用プリフォームの表面に、ガスバリア性樹脂組成物を塗工した後、該プリフォームを加熱し容器形状に成形する方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。
しかしながらこのような方法で得られたガスバリア性容器は、ガスバリア性能が不十分であることが多かった。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−277437号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ガスバリア性に優れた容器の製造方法およびガスバリア性容器を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂からなる容器の表面に、金属アルコキシドおよび/またはアルキル金属化合物を含有する可燃性ガスを燃焼させた火炎を接触させて火炎処理を行なった後、該火炎処理面上に無機層状化合物および樹脂を含むガスバリア層を設けることを特徴とするガスバリア性容器の製造方法および該製造方法によって得られるガスバリア性容器である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において用いる容器を構成する熱可塑性樹脂は、ブロー成形、真空成形、圧空成形、射出成形、プレス成形、押し出し成形などの熱成形が可能な樹脂であれば特に限定されない。容器を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレン等のポリエチレン、エチレンとプロピレンやブテン等のα−オレフィンとのエチレン系共重合体、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等の極性基を有するポリオレフィン、脂肪族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン−6、ナイロン−6,6、メタキシレンジアミン/アジピン酸縮重合体、ポリメチルメタクリルイミド等のアミド系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリル等のスチレン系樹脂およびアクリロニトリル系樹脂、トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロース等の疎水化セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン等のハロゲン含有樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコール共重合体、セルロース誘導体等の水素結合性樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリメチレンオキシド樹脂等のエンジニアリングプラスチック系樹脂、ポリウレア樹脂、ポリヒドロキシアルカン酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリ(カプロラクトン/ブチレンサクシネート)、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)、ポリ(エチレンテレフタレート/サクシネート)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)、ポリ(テトラメチレンアジペート/テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)、ポリエチレンサクシネート、ポリグリコース酸、エステル化澱粉、酢酸セルロース、キトサンなどの生分解性樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂のうち1種類のみを用いてもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0007】
本発明において用いる容器は、公知の成形方法によって得られた容器であり、その製造方法や形状について特に限定されるものではない。容器の成形方法としては、押出ブロー成形、押出ストレッチブロー成形、インジェクションブロー成形、インジェクションダイレクトブロー成形、インジェクションストレッチブロー成形法などのブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、射出成形法、プレス成形法、押し出し成形法などがあげられる。押出し成形等によって得られたシートを真空成形等によって賦形した容器や、側壁や底部などの各部品を組み立てて得られた容器であってもよい。
【0008】
容器表面には、金属アルコキシドおよび/またはアルキル金属化合物を含有する可燃性ガスを燃焼させた火炎を接触させて火炎処理を行なう。このようにして容器の表面処理を行なうことにより、熱可塑性樹脂からなる容器表面に存在する有機不純物が酸化により消失し、容器表面に付着していた水も失われ、可燃性ガス中の金属アルコキシドおよび/またはアルキル金属化合物により、容器表面に金属酸化物層が形成されると推測される。例えば金属アルコキシドとしてテトラメトキシシランを使用した場合は、酸化珪素層が容器表面に形成されるが該酸化珪素層は反応性OH基の密度が高いため、火炎処理した後の容器表面にガスバリア層を設けることにより、該ガスバリア層と容器との密着性を強めることができ、これによりガスバリア性に優れた容器を得ることができるものと思われる。
【0009】
可燃性ガス中に含まれる金属アルコキシドやアルキル金属化合物としては、公知のものを用いることができる。
金属アルコキシドやアルキル金属化合物中の金属は、例えばNa、Ba、Cu、Al、Si、Ti、Ge、Zr、V、W、Yなどであり、好ましくはSi、Ti、Al、Zrのいずれかであり、容器とガスバリア層との密着性向上の観点から、Siであることがより好ましい。金属アルコキシドにおける炭化水素部分やアルキル金属化合物中のアルキル基は、例えばCH3、C2H5、C3H7、C4H9、C5H11、C6H13などである。
金属アルコキシドの例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン,ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、クロロトリメトキシシラン、トリエトキシアルミニウム、イソプロポキシジルコニウム、トリメトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、メチルプロピルアクリルトリエトキシシラン、グリシジルプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシランなどがあげられる。
アルキル金属化合物の例としては、テトラメチルジシロキサン、テトラエチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ジメチルシロキサンなどがあげられる。
可燃性ガス中には、金属アルコキシドのみ、あるいはアルキル金属化合物のみを含んでいてもよく、金属アルコキシドとアルキル金属化合物とを共に含んでいてもよい。また用いる金属アルコキシドやアルキル金属化合物は1種類でもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0010】
可燃性ガスとしては公知の可燃性ガスを用いることができ、例えばメタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガスおよびそれらが混合された天然ガス、都市ガス、液化石油ガス(LPガス)、ペンタン、ヘキサン、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタリン、シクロプロパン、シクロヘキサン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどの炭化水素系ガスや、これらの炭化水素系ガスと酸素および水素との混合ガスなどがあげられる。
【0011】
金属アルコキシドおよび/またはアルキル金属化合物を含有する可燃性ガスを燃焼させる際には、通常空気のような酸素を含む気体と可燃性ガスとを混合して燃焼させる。可燃性ガスと空気とを混合する際の体積比率は、可燃性ガス1に対して空気3〜80が好ましい。
【0012】
可燃性ガスと空気との混合気体中に含まれる金属アルコキシドおよび/またはアルキル金属化合物の量は、その合計が10- 1〜10- 7のモル分率であることが好ましく、10- 2〜10- 6のモル分率であることがさらに好ましい。混合気体中の金属アルコキシドおよびアルキル金属化合物の含有量が少なすぎるとガスバリア層と容器との密着性が悪くなり、それに伴いガスバリア性が低下する傾向があり、金属アルコキシドおよびアルキル金属化合物の含有量が多すぎると形成される金属酸化物の厚みが不均一になる傾向がある。
【0013】
火炎処理には通常ガスバーナーが用いられる。火炎処理を行なう際の火炎の温度や処理時間は、容器を構成する熱可塑性樹脂の種類や容器形状、容器厚みなどによって異なるが、通常容器表面が50〜100℃になるように適宜設定される。また火炎処理によって設けられる金属酸化物層の厚さが好ましくは60nm以下、さらに好ましくは5〜50nm、とりわけ好ましくは10〜30nmとなるように処理条件を設定することがのぞましい。
火炎の温度は通常900〜2000℃である。火炎を照射する時間は通常0.1〜5秒であり、好ましくは0.1〜1秒である。熱による容器変形を防ぐため、火炎照射時間は必要最小限に留める必要がある。
【0014】
ボトルなど対称軸を有する形状の容器に火炎処理を行なう場合には、容器の対称軸を中心に容器を5〜500回転/分の速度で回転させながら、火炎の酸化炎部分で処理を行なう。容器の回転数が遅すぎる場合や速すぎる場合には、容器表面の処理が不均一になる傾向がある。
非対称性容器や大型容器に火炎処理を行なう場合は、容器形状に沿って火炎の酸化炎部分で処理を行なうことが好ましい。
【0015】
容器がポリエチレンやエチレン共重合体、ポリプロピレン等のポリオレフィンから構成されている場合には、本発明の火炎処理を行なうことにより容器表面へのガスバリア層の密着性の改良効果が著しく、他の表面処理を行なった場合と比較して格段にガスバリア性に優れた容器を得ることができる。よって本発明においてポリオレフィンからなる容器を用いることが好ましい。
【0016】
本発明のガスバリア性容器の製造方法では、容器表面に火炎処理を行なった後、無機層状化合物および樹脂を含むガスバリア層を設ける。ガスバリア層を設ける方法は特に限定されるものではないが、火炎処理した容器表面に、無機層状化合物および樹脂を含む塗工液を塗布し、乾燥する方法が生産性の点から好ましい。無機層状化合物とは、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を有している無機化合物であり、溶媒中で膨潤しへき開する性質を有するものである。
【0017】
用いる無機層状化合物は、ガスバリア性の観点から特開平11−315222号公報に開示された膨潤性試験による膨潤値が5以上のものが好ましく、膨潤値が20以上のものがより好ましい。また特開平11−315222号公報に開示されたへき開性試験によるへき開値が5以上のものが好ましく、へき開値が20以上のものがより好ましい。
【0018】
使用する無機層状化合物はガスバリア性の観点から、へき開した状態において粒径が5μm以下であることが好ましい。また透明性が求められる容器の場合には、粒径が3μm以下のものを用いることが好ましく、1μm以下のものを用いることがより好ましい。
【0019】
本発明における無機層状化合物の粒径とは、公知の回折/散乱法によって求められる平均粒径である。回折/散乱法による粒度分布・平均粒径測定は、無機層状化合物が膨潤しへき開した分散液について光を通過させたときに得られる回折/散乱パターンを、ミー散乱理論などを用いてパターンに最も矛盾のない粒度分布を計算して得られた値である。測定装置としては、公知のレーザー回折・光散乱法による粒度測定装置やレーザー回折式粒度分布測定装置を用いることができる。
【0020】
用いる無機層状化合物は、へき開した状態でのアスペクト比が50以上5000以下であることが好ましく、アスペクト比が200以上3000以下であることがより好ましい。
アスペクト比が小さすぎるとガスバリア性に劣る傾向があり、大きすぎると技術的に難しく、経済的にも高価なものとなる。
【0021】
無機層状化合物のアスペクト比(Z)とは、Z=L/aの関係から求められる比である。Lは、無機層状化合物を溶媒に分散させた溶液について、前記した回折/散乱法による粒径測定法により求めた無機層状化合物の粒径(体積基準のメジアン径)であり、aはへき開した単位結晶層の単位厚さである。この「単位厚さa」は、特開平11−315222号公報に記載の粉末X線回折法によって求められる値である。
【0022】
本発明のガスバリア層に含まれる無機層状化合物は公知の無機層状化合物であり、例えば特開平7−247374号公報に記載されたようなグラファイト、リン酸ジルコニウム系化合物のようなリン酸塩系誘導体型化合物、カルコゲン化物、粘土系鉱物、ハイドロタルサイト類化合物などが挙げられる。中でも、粘土系鉱物が好ましい。なお、上記カルコゲン化物とは、周期律表のIV族(Ti,Zr,Hf)、V族(V,Nb,Ta)およびVI族(Mo,W)のジカルコゲン化物であって、化学式MX2で表される化合物(Mは前記元素、Xはカルコゲン(S、Se、Te))である。
【0023】
上記粘土系鉱物の中でも、スメクタイト族、バーミキュライト族、およびマイカ族の粘土系鉱物が好ましく、スメクタイト族が特に好ましい。スメクタイト族の好ましい粘土鉱物としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライト、これらの粘土系鉱物を有機物で処理したものなどが挙げられる。
【0024】
本発明においてガスバリア層を構成する樹脂としては、公知の樹脂を1種類または2種類以上混合して用いることができる。本発明においてガスバリア性の観点から好ましく用いられる樹脂としては、水素結合性基またはイオン性基を有する高水素結合性樹脂が挙げられる。高水素結合性樹脂中の水素結合性基またはイオン性基の含有量(両者を含む場合は、両者の合計量)は、通常20〜60重量%であり、好ましくは30〜50重量%である。水素結合性基やイオン性基の含有量は、たとえば1H−NMRや13C−NMRのような核磁気共鳴測定法等によって測定することができる。
【0025】
上述した水素結合性基としては水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基などが挙げられ、イオン性基としてはカルボキシレート基、スルホン酸イオン基、燐酸イオン基、アンモニウム基、ホスホニウム基などが挙げられる。水素結合性基またはイオン性基の内、さらに好ましいものとしては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、カルボキシレート基、スルホン酸イオン基、アンモニウム基などが挙げられる。
【0026】
高水素結合性樹脂の具体例としては、たとえば、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール分率が40モル%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体、多糖類、ポリアクリル酸およびそのエステル類、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコールと(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸の部分中和物の混合物、ポリスルホン酸、ポリスルホン酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンおよびその4級アンモニウム塩、ポリビニルチオール、ポリグリセリンなどが挙げられる。上述した樹脂の中でも、さらに好ましいものとしては、ポリビニルアルコール、多糖類が挙げられる。
【0027】
ポリビニルアルコールとは、たとえば、酢酸ビニル重合体の酢酸エステル部分を加水分解ないしエステル交換(けん化)して得られるポリマー(すなわち、ビニルアルコールと酢酸ビニルの共重合体となったもの)や、トリフルオロ酢酸ビニル重合体、ギ酸ビニル重合体、ピバリン酸ビニル重合体、t−ブチルビニルエーテル重合体、トリメチルシリルビニルエーテル重合体などをけん化して得られるポリマーが挙げられる。
【0028】
ポリビニルアルコールにおけるけん化の程度は、モル百分率で70%以上が好ましく、さらには85%以上のものが好ましく、98%以上のいわゆる完全けん化品が特に好ましい。またポリビニルアルコールの重合度は、100以上5000以下が好ましく、200以上3000以下がより好ましい。またポリビニルアルコールは、本発明の目的が阻害されない程度に少量の共重合モノマーで変性されていてもよい。変性ポリビニルアルコール系樹脂とは、例えば特開平11−315222号公報に開示されたものである。
【0029】
多糖類とは、種々の単糖類の縮重合によって生体系で合成される生体高分子であり、ここではそれらをもとに化学修飾したものも含まれる。たとえば、セルロースおよびヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、アミロース、アミロペクチン、プルラン、カードラン、ザンタン、キチン、キトサンなどが挙げられる。
【0030】
ガスバリア層の耐水性を改良するため、塗工液に水素結合性基用架橋剤を含有させることが好ましい。架橋剤としては、公知の架橋剤を用いることができる。
架橋剤の好適な例としては、チタン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、メラミン系カップリング剤、エポキシ系カップリング剤、イソシアネート系カップリング剤等のカップリング剤、水溶性エポキシ化合物、銅化合物、ジルコニウム化合物、有機金属化合物等が挙げられる。
【0031】
架橋剤の架橋反応性が高すぎると塗工液中で架橋反応が進行し、塗工が不可能となることがある。適度な架橋反応性を有することから、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機珪素化合物が水素結合性基用架橋剤としてとりわけ好ましく用いられる。
【0032】
ガスバリア層には、前記の高水素結合性樹脂以外の熱可塑性樹脂、帯電防止剤、紫外線吸収剤、着色剤(顔料、染料)、充填剤、難燃剤、安定剤、可塑剤、滑剤等が本発明の効果を阻害しない程度に含有されていてもよい。
【0033】
ガスバリア性の観点から、塗工液中に界面活性剤が0.001〜5重量%含有されていることが好ましい。界面活性剤としてはアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤等の公知の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤含有量は、0.003〜0.5重量%がより好ましく、0.005〜0.1重量%が特に好ましい。
【0034】
アニオン性界面活性剤としては、脂肪族モノカルボン酸塩、N−アシロイルグルタミン酸塩などのカルボン酸型、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物、スルホこはく酸ジアルキルエステルなどのスルホン酸型、硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩などの硫酸エステル型、リン酸アルキル塩などのリン酸エステル型、ホウ酸アルキル塩などのホウ酸エステル型などの炭化水素系アニオン性界面活性剤、パーフルオロデカン酸ナトリウム、パーフルオロオクチルスルホン酸ナトリウムなどのフッ素系アニオン性界面活性剤、ポリジメチルシロキサン基とカルボン酸金属塩とを有する重合体など陰イオン性基を有するシリコーン系アニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0035】
カチオン性界面活性剤としては、たとえば、アルキルアミン塩などのアミン塩型、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩などの第四級アンモニウム塩型などが挙げられる。
両性イオン性界面活性剤としては、N,N-ジメチル−N-アルキルアミノ酢酸ベタインなどのカルボキシベタイン型、1-アルキル−1-ヒドロキシエチル−1-カルボキシメチルイミダゾリニウムベタインなどのグリシン型などが挙げられる。
【0036】
非イオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどのエステル型、ポリジメチルシロキサン基とアルキレンオキシド付加物の縮重合体、ポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのエーテル型、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのエステルエーテル型、脂肪族アルカノールアミドなどのアルカノールアミド型、パーフルオロデカン酸−ジグリセリンエステルやパーフルオロアルキルアルキレンオキサイド化合物などのフッ素型等が挙げられる。
【0037】
前記界面活性剤の中では、特に、炭素数6以上24以下のアルキル鎖を有するカルボン酸のアルカリ金属塩、ポリジメチルシロキサン−ポリオキシエチレン共重合体などのエーテル型の非イオン性界面活性剤(シリコーン系非イオン性界面活性剤)や、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド化合物などのフッ素型非イオン性界面活性剤(フッ素系非イオン性界面活性剤)が好ましい。
【0038】
塗工液は通常、無機層状化合物および樹脂に加えて、無機層状化合物を膨潤させ、かつ樹脂を溶解させる溶媒が選択されて用いられる。容器表面に塗布した後に容易に乾燥できることから、蒸発しやすい溶媒が好ましく用いられる。
【0039】
塗工液に含まれる無機層状化合物と樹脂との比は、ガスバリア性の観点から無機層状化合物と樹脂との重量比(無機層状化合物の重量/樹脂の重量)が、通常1/100〜100/1の範囲であり、1/20〜10/1であることが好ましく、耐屈曲性の観点から、1/20〜2/1であることがさらに好ましい。
【0040】
塗工液中の無機層状化合物と樹脂の固形分濃度の合計は通常0.1〜70重量%であり、生産性の観点から好ましくは1〜15重量%であり、より好ましくは4〜10重量%である。
【0041】
無機層状化合物と樹脂とを含む塗工液の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば樹脂を溶媒に溶解させた液と、無機層状化合物を溶媒により予め膨潤またはへき開させた分散液とを混合する方法、無機層状化合物を膨潤またはへき開させた分散液に、樹脂を溶解させる方法、樹脂を溶媒に溶解させた液に無機層状化合物を加え、無機層状化合物を膨潤またはへき開させる方法などがあげられる。
【0042】
無機層状化合物と樹脂とを含む塗工液を高圧分散処理することが、無機層状化合物の分散性の観点から好ましい。高圧分散処理とは、塗工液同士を高圧条件下で衝突させた後に圧力開放する処理方法である。高圧分散処理を行なうために用いられる装置としては、公知の超高圧ホモジナイザーやマントンゴーリン型高圧分散装置等が挙げられる。
【0043】
火炎処理した容器表面に、無機層状化合物および樹脂を含有する塗工液を塗布する方法は特に限定されるものではない。例えばディップ法や、スプレーコート法、オフセット印刷法等が挙げられる。均一なガスバリア層を容易に設けることができるため、スプレーコート法によって塗工液を容器に塗布することが好ましい。
【0044】
スプレーコート法とは、圧縮空気を用いて、スプレーガンのノズル部から塗工液を霧状に噴出させて容器表面に塗布する方法である。スプレーガンの引き金を引くと、空気バルブと塗工液用ニードルバルブが同時に開き、塗工液用ノズルから塗工液の霧が噴出し、ノズル先端にある空気キャップから噴出する空気でさらに霧が微粒化されて容器表面に付着し、塗工膜が形成される。塗工液を霧状化する空気の圧力(以下霧化エアー圧と記載)が0.02〜0.25MPa、エアー消費量が15〜1000Nl/min、塗工液吐出量が0.5〜120ml/minの条件で塗工することが好ましい。
霧化エアー圧が0.02MPaより低い場合や、エアー消費量が15Nl/minより少ない場合には、塗工液の霧化が困難であり、ガスバリア層の厚みが不均一になる傾向がある。霧化エアー圧が0.25MPaより高い場合や、エアー消費量が1000Nl/minより多い場合には、塗工液が飛散しロスが多くなる傾向がある。また吐出量が上記範囲外の場合にも、ガスバリア層の厚みが不均一になる傾向がある。吐出量が10〜50ml/minであることがガスバリア性の面から、より好ましい。
【0045】
容器とスプレーガンのノズルとの最短距離が5mmから200mmとなるようにして塗布することが好ましく、10mmから150mmとすることがより好ましく、50mmから100mmとすることがさらに好ましい。容器とスプレーガンのノズルとの距離が近すぎると均一なガスバリア層を設けることが困難となる傾向があり、遠すぎると塗工液のロスが多くなる傾向がある。
塗布に用いるスプレーガンの数は、容器の形状や大きさによって適宜選択され、1個で塗布してもよく、複数個を用いて1つの容器に塗布してもよい。市販の500ml飲料ボトル形状の容器に塗布する場合には、2から4個のスプレーガンを用いて、例えばボトル上部方向、ボトルサイドの中央部、ボトル下方の角部方向の3方向から塗布することが好ましい。
【0046】
塗工液を塗布する際の容器の回転数は50〜1000回転/分が好ましく、100〜500回転/分がより好ましい。回転速度が遅すぎる場合には均一な厚みのガスバリア層を形成することが困難となる傾向があり、速すぎる場合には容器表面に塗布した塗工液に働く遠心力により塗工液が飛ばされ、塗工液のロスが多くなる傾向がある。
【0047】
火炎処理した容器表面に塗工液を均一に塗布した後、その塗膜から溶媒を乾燥して除去することによりガスバリア層が設けられ、本発明のガスバリア性容器が得られる。ガスバリア層の厚みは、塗工液の粘度、容器の回転数および吐出量で制御される。塗工液の粘度は、ザ−ン(Zahn)カップ粘度(#2)で5秒から60秒が好ましく、10秒から40秒がさらに好ましい。ザーンカップ粘度が速すぎる場合は、液の粘性が低いため塗膜にはじきが発生する傾向があり、遅すぎる場合は均一な厚みの塗膜を形成することが困難となり、ガスバリア性が悪くなる傾向がある。
【0048】
スプレーコート法を適用するにあたり、静電を利用して塗工液を吹き付け塗布する静電塗装法により塗工液を塗布することにより、塗工液のロスを低減することができる。
【0049】
ディップ法とは、表面に前記火炎処理された容器を塗工液中に浸漬する方法である。浸漬後容器を塗工液から引き上げ、容器の対称軸方向に回転させて塗工液を容器表面に均一に薄膜化した後、その塗膜から溶媒を乾燥して除去することにより、本発明のガスバリア性容器が得られる。ガスバリア層の厚みは塗工液の粘度と、容器の回転数で制御される。
【0050】
容器表面に塗工液を塗布した後、熱風等によって溶媒を蒸発させて除去することにより、ガスバリア層が設けられる。ガスバリア層の厚みは求められるガスバリア性能に応じて適宜選択されるが、通常1nm〜10μmである。高湿度下でのガスバリア性を向上させるため、乾燥後にさらに110℃以上220℃以下で熱エージングすることが好ましい。
【0051】
本発明のガスバリア性容器が500mlポリプロピレン製ガスバリア性ボトル(樹脂厚さ0.7mm、0.81mL/day・0.2atm・bottle(500ml))の場合、その酸素透過度が0.1mL/day・0.2atm・bottle(500ml)以下であることが好ましく、より好ましくは0.01mL/day・0.2atm・bottle(500ml)以下、さらに好ましくは0.005mL/day・0.2atm・bottle(500ml)以下である。一般にポリプロピレンのようなポリオレフィンに塗工液を均一に塗布することは困難である。本発明においては、容器表面に金属アルコキシドおよび/またはアルキル金属化合物を含有する可燃性ガスを燃焼させた火炎を照射して火炎処理を行なうことにより、容器がポリオレフィンからなる場合においても、容器とガスバリア層との密着性を高めることができ、これにより優れたガスバリア性容器を得られるのである。例えばポリプロピレン製ガスバリア性ボトルの場合、ガスバリア層を設けない場合と比較して100倍以上のガスバリア性改良効果が見られる。そのため容器内部に外気から酸素などの侵入が極めて少なく、内容物の劣化をより効果的に抑制し、長期間の保存が可能となる。
【0052】
ガスバリア層の上にさらに保護層を設けることが、ガスバリア層の傷つきを防止する観点から好ましい。保護層は通常樹脂を溶剤に溶かした溶液を塗布して形成されるものであり、使用される樹脂や溶剤は特に限定されるものではない。樹脂としては例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、オレフィン系脂、キシレン樹脂、オリゴエステルアクリレート樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、レゾルシノール系樹脂、エポキシアクリレート樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、マレイン酸樹脂、ユリア樹脂などがあげられる。
【0053】
ガスバリア層上にモノマーを塗布した後に重合させて、保護層を形成させてもよい。このようなモノマーとしては、2重結合を有し、熱や電子線、紫外線で重合するモノマーであれば特に限定されない。たとえばメチルアクリレート、メチルアクリレート誘導体、エチルアクリレート、エチルアクリレート誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、スチレン、スチレン誘導体、エチレン誘導体、プロピレン誘導体、ブテン誘導体、ブタジエン誘導体、イソプレン誘導体などがある。ここで誘導体とは重合可能な化合物を示す。たとえばアクリル酸とトリプロピレングリコールの化合物のトリプロピレングリコールジアクリレートは2重結合を2個有するものであるが、これをガスバリア層上に塗布した後電子線を照射すると重合し、保護層を形成することができる。
【0054】
接着剤や金属缶内面コーティングに使用される樹脂なども保護層として使用することができる。例えば、1液硬化型エポキシ樹脂、2液硬化型エポキシ樹脂、エポキシ/アクリル硬化型樹脂、1液硬化型イソシアネート樹脂、2液硬化型イソシアネート樹脂があげられる。また、トリメチロールメラミンなどの反応性水酸基を有する有機化合物、ホルムアルデヒド、ブチルアルデヒドのようなアルデヒド基を有する有機化合物およびプロピオン酸のようなカルボキシル基を有する有機化合物をガスバリア層上にコーティングして重合することによっても保護層を設けることができる。
【0055】
保護層となる樹脂やモノマーを溶解させる溶媒は、使用する樹脂やモノマーによって適宜選択される。水、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素類等が例示でき、これらを単独または2種類以上を混合して用いることができる。
保護層の厚みは特に限定されるものではないが、耐屈曲性およびリサイクル性と、ガスバリア層保護とのバランスから、乾燥後の厚みが1nm〜10μmであることが好ましく、より好ましくは10nm〜5μm、さらに好ましくは0.1μm〜3μmである。
【0056】
保護層には必要に応じて、顔料や染料といった着色剤、架橋剤、難燃剤、安定剤、可塑剤、滑剤、強化繊維、充填剤、帯電防止剤等を適宜含有させることができる。
ビール、ワイン、油脂性食品など紫外線によって劣化しやすいものを包装するガスバリア性容器を製造する場合には、300nmから400nmの光線透過度が10%以下となるように、染料または顔料を保護層に含有させることが好ましい。特に、グリーン色またはアンバー色に着色することが好ましい。また用途に応じて保護層全体または一部分を着色することにより意匠性を付与することもできる。
【0057】
本発明にかかるガスバリア性容器の形状は特に限定されるものではない。具体的形状としては、たとえば、トレイ、カップ、ボトル、バッグインボックス、ブリック形状容器、ゲーブルトップ、ラミチューブ、角底袋容器などがあげられ、具体的用途としてはコーヒー、紅茶、緑茶など嗜好品用;香辛料、ケチャップ、マヨネーズ、ソース、醤油、からし、わさび、しょうがなどの調味料用;ヨーグルト、ゼリー、プリンなどのデザート用;肉、魚肉の刺身、切り身などの生鮮品用;ウインナー、ソーセージ、ハム、ハンバーグなど畜産加工食品用;かまぼこ、ちくわなどの水産加工食品用;チーズなどの乳製品用;玄米、発芽米、小麦、大麦など穀物用;もち、炊飯米、ピラフ、インスタントラーメン、ボイル食品、レトルト食品、漬物、味噌、カレー、珍味、スナック菓子、和菓子、洋菓子などの加工食品用:果汁飲料、炭酸飲料、茶飲料、健康飲料、ビール、発泡酒、ワイン、日本酒などの飲料用;L-システイン,アミノ酢酸,グリチルリチン酸アンモニウム塩を含むアミノ酸含有薬液、目薬、輸液、サプリメント錠剤、汚物貯留用袋(オストミーバッグ)など医療用;化粧品用;液体洗剤用;押花など色素退色防止用途;電子材料包装用;水素、メタノール、ガソリン、メタノールとガソリンの混合物などの水素および炭化水素系燃料タンク用などを挙げることができる。ヨーグルトカップ、飲料ボトル、スクイズボトル、ガソリンタンクなどが特に好ましい。
【0058】
本発明のガスバリア性容器中に、とりわけ酸素による劣化がおこりやすい内容物を保存する場合には、容器のガスバリア層より内側に酸素吸収層を設けることが好ましい。本発明のガスバリア性容器がビールなどのボトルである場合には、、クロージャーやキャップに酸素吸収性を付与することが好ましい。酸素吸収剤としては特に限定されるものではなく、例えばMXD-6ナイロン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等とコバルト触媒との混合物(必要に応じ、紫外線増感剤としてのベンゾフェノンをこれらに添加してもよい)や、アスコルビン酸またはエリソルビン酸およびそれらの塩、鉄粉または亜硫酸塩第一鉄塩などの還元鉄などがあげられる。これら酸素吸収剤と内容物とが直接接しないようにライナーを設けてもよい。
【0059】
本発明のガスバリア性容器を印刷したシュリンクラベルなどで被覆してもよい。シュリンクラベルにより、商品の意匠性を付与するとともに、ガスバリア層の保護も兼ねることが可能である。シュリンクラベルを用いず、ガスバリア層または保護層に直接印刷して意匠性を付与することも可能である。印刷方法としては、オフセット印刷、インクジェット印刷などがあげられる。使用される印刷インキとしては、溶剤インキ、水性インキ、生分解性インキがあげられる。
【0060】
本発明の容器に蓋を設ける場合には、ガスバリア性の蓋を用いることが好ましい。蓋としてはキャップ形状のものやフィルム形状のものを用いることができる。フィルム形状の蓋の場合には、イージーピール性能を有していてもよい。
【0061】
【発明の効果】
本発明の、金属アルコキシドおよび/またはアルキル金属化合物を含有する可燃性ガスを燃焼させた火炎を容器表面に接触させて火炎処理を行なうことにより、容器表面の濡れ指数が大きく向上し、ガスバリア層と容器との密着性が高められ、結果としてガスバリア性に優れた容器が得られる。すなわち本発明のガスバリア性容器の製造方法により、ガスバリア性に優れた容器を製造することができる。
【0062】
【実施例】
以下実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお本実施例において、ガスバリア性容器の各種物性は次のようにして測定した。
【0063】
[厚み測定]容器断面の透過電子顕微鏡観察によりガスバリア層の膜厚を求めた。
【0064】
[粒径測定]レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA910、堀場製作所(株)製)を使用し、媒体の樹脂マトリックス中に存在する無機層状化合物とみられる粒子の体積基準のメジアン径を粒径Lとして測定した。測定には後述する樹脂組成物混合液を用い、フローセル法にて光波長4mmで行なった。
【0065】
[アスペクト比計算]X線回折装置(XD−5A、(株)島津製作所製)を用い、無機層状化合物単独と樹脂組成物の粉末法による回折測定を行った。測定には後述する樹脂組成物混合液から溶媒を蒸発させて得られた樹脂組成物を用いた。これにより無機層状化合物の単位厚さaを求め、さらに樹脂組成物の回折測定から、無機層状化合物の面間隔dが広がっている部分があることを確認した。上述の方法で求めた粒径Lを用いて、アスペクト比Zを、Z=L/aの式により算出した。
【0066】
[酸素透過度測定]JIS K7126に基づき、酸素透過度測定装置(OX−TRANML:MOCON社製)にて23℃、50%RH条件で測定した。容器口をエポキシ接着剤で金属板に固定し、金属板にガス配管をセットすることにより、大気中で測定を実施した(23℃、酸素分圧0.208atm)。酸素透過度が小さいほどガスバリア性に優れ容器として適している。
【0067】
[実施例]
分散釜(商品名:デスパMH−L、浅田鉄工(株)製)にイオン交換水(比電気伝導率0.7μS/cm以下)を1410g入れ、さらにポリビニルアルコール(PVA117H;(株)クラレ製,ケン化度;99.6%,重合度1700)を50g入れ、低速攪拌下(1500rpm,周速度4.10m/min)で95℃に昇温して1時間攪拌し、PVAをイオン交換水に溶解させた。
【0068】
次に、攪拌したまま60℃に温度を下げた後、1-ブタノール15gを滴下して、最終的な1−ブタノール分率が重量にして1%となるようにした。さらに天然モンモリロナイト(クニピアF;クニミネ工業(株)製)を粉末のまま25g添加し、モンモリロナイトが液中にほぼ沈殿したことを確認し、高速攪拌(3100rpm,周速度8.47m/min)を90分間行い、トータル固形分濃度5wt%の樹脂組成物混合液を得た。へき開したモンモリロナイトの粒径は560nm、粉末X線回折から得られたa値は1.2156nmであり、アスペクト比(Z)は461であった。
前記樹脂組成物混合液に、1−ブタノール92g、イソプロピルアルコール277gおよび非イオン性界面活性剤SH3746(ポリオキシエチレン−メチルポリシロキサン共重合体、東レ・ダウコーニング(株)製)0.18gを混合した液を、低速攪拌下(1500rpm,周速度4.10m/min)で徐々に添加し、次いでチタンアセチルアセトナート(TC100,松本製薬工業(株)製)3.3gを徐々に添加して、高圧分散処理前の塗工液を得た。
【0069】
前記高圧分散処理前の塗工液2000gを高圧分散装置(商品名:超高圧ホモジナイザーM110−E/H、Microfluidics Corporation製)を用いて1750kgf/cm2で1回処理し、分散性良好で均一な塗工液を得た。
【0070】
[実施例1]
ポリプロピレン製ボトル(500ml容器,容器高さ210mm、容器厚み0.7mm)の外表面に、テトラメトキシシロキサン含有LPガスを燃焼させて照射し、火炎処理を行った。火炎照射はボトルを200rpm/分で回転させながら、火炎の酸化炎部分をボトルのトップ部からボトム部まで毎秒200mmの速度で走査させて行った。火炎処理後のボトル表面の濡れ指数は64dyn/cmであった。さらにボトルを200rpm/分で回転させながら、該火炎処理面上にスプレーガン((株)メサック製低圧低風量ガンG05−23平吹き、ノズル口径1.0mm)にて、ガンノズルとボトル表面との距離を80mmに保ちながら、ガンノズルをボトルのトップ部からボトム部まで毎秒200mmの速度で走査させ、塗工液をスプレーコート法により塗布した。塗工液の粘度はザーンカップ#3で19秒であった。塗布時のスプレー条件は、霧化エアー0.11MPa、パターン化エアー0.10MPa、塗出量18.8g/min、ガン速度90mm/secであった。塗膜にはじき等の不良現象は見られず、均一なガスバリア層を設けることができた。乾燥後のガスバリア層厚みは0.7μmであった。該ボトルの酸素透過度を測定したところ、0.0058cc/bottle・day・0.2atmであった。さらに保護層として、ウレタン樹脂溶液(東洋モートン(株)製、AD335/cat10、固形分2wt%、トルエン:MEK=1:1液で稀釈)をスプレーガンで、ガスバリア層の上に乾燥膜圧が1μmとなるように塗布した。
[実施例2]
ポリエチレンテレフタレート製ボトル(PET,容器高さ210mm、容器厚み0.7mm)を用いた以外は、実施例1と同じ条件で火炎処理を行なった。火炎処理後のボトル表面の濡れ指数は64dyn/cmであった。次いで実施例1と同様にして塗工液の塗布を行った。ガスバリア層厚みは0.7μmであった。該ボトルの酸素透過度を測定したところ、0.0008cc/bottle・day・0.2atmであった。さらに保護層として、アクリル樹脂溶液をスプレーガンでガスバリア層の上に乾燥膜厚が1μmとなるように塗布した。このようにして得られたガスバリア性容器は透明性に優れるものであった。
【0071】
[比較例1]
実施例1で用いたものと同じ形状のポリプロピレン製ボトルに火炎処理を実施しないで、実施例1と同様にして塗工液を塗布した。塗工液を塗布する前のボトル表面の濡れ指数は40dyn/cm以下であった。塗膜にはじきが見られ、均一なガスバリア層を設けることができなかった。該ボトルの酸素透過度を測定したところ、0.52cc/bottle・day・0.2atmであった。
[比較例2]
実施例1で用いたものと同じ形状のポリプロピレン製ボトルに、テトラメトキシシロキサン化合物を含まないLPガスのみを用いた以外は実施例1と同様の条件で火炎処理を行なった。塗工液を塗布する前のボトル表面の濡れ指数は50dyn/cm以下であった。続いて実施例1と同様の条件で塗工液を塗布したが、塗膜にはじきが見られ、均一なガスバリア層を設けることができなかった。該ボトルの酸素透過度を測定したところ、0.27cc/bottle・day・0.2atmであった。
[比較例3]
実施例2で用いたものと同じ形状のポリエチレンテレフタレート製ボトルに、テトラメトキシシロキサン化合物を含まないLPガスのみを用いた以外は実施例1と同様の条件で火炎処理を行なった。塗工液を塗布する前のボトル表面の濡れ指数は52dyn/cm以下であった。続いて実施例1と同様の条件で塗工液を塗布したが、塗膜にはじきが見られ、均一なガスバリア層を設けることができなかった。塗膜にはじきが見られ、均一なガスバリア層を設けることができなかった。該ボトルの酸素透過度を測定したところ、0.023cc/bottle・day・0.2atmであった。
[比較例4]
実施例1で用いたものと同じ形状のポリプロピレン製ボトルのみの酸素透過度を測定したところ、0.81cc/bottle・day・0.2atmであった。
[比較例5]
実施例2で用いたものと同じ形状のポリエチレンテレフタレート製ボトルのみの酸素透過度を測定したところ、0.054cc/bottle・day・0.2atmであった。
Claims (5)
- 熱可塑性樹脂からなる容器の表面に、金属アルコキシドおよび/またはアルキル金属化合物を含有する可燃性ガスを燃焼させた火炎を接触させて火炎処理を行なった後、該火炎処理面上に無機層状化合物および樹脂を含むガスバリア層を設けることを特徴とするガスバリア性容器の製造方法。
- ガスバリア層の上にさらに保護層を設けることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性容器の製造方法。
- 金属アルコキシドおよび/またはアルキル金属化合物に含まれる金属が、Si、Ti、Al、Zrのいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性容器の製造方法。
- 熱可塑性樹脂がポリオレフィンであることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載のガスバリア性容器の製造方法。
- 請求項1から4いずれかに記載の製造方法によって得られるガスバリア性容器。
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