JP4245406B2 - ゲル発泡体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は医療、建築、土木、機械、運輸、電子部材、家庭用品、衛生用品などの分野で用いられる多孔質なゲル発泡体、その製造方法及びゲル発泡体の乾燥物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ゲル、特に高分子を基材とした高分子ゲルが、土木・建築、自動車、住宅、農業、電子・情報機器、医療、医療機器など多くの分野で用いられている(非特許文献1参照)。この中で、例えば振動吸収材や衝撃吸収材、吸水材、充填材、表面被覆材などを始めとする多くの用途で、ゴムと同等の高い伸縮性を有し、且つ軽量(低密度)性や高度の柔軟性を有する高分子ゲルが必要とされていた。これまで、特定の有機モノマーの重合物に対して発泡剤等を用いて発泡させることによりヒドロゲル発泡体が得られることが知られている(特許文献1及び2参照)。また最近、崩壊剤と呼ぶ吸水性の有機高分子粒子を有機モノマー及び有機架橋剤と共に共存させて重合させることにより、強度の向上したヒドロゲル発泡体が得られることが報告されている(特許文献3参照)。しかし、いずれも有機架橋剤を用いて架橋される従来型ヒドロゲルを発泡させたものであり、水を吸収した状態(ヒドロゲル)において十分な軽量性(低密度)、高伸縮性及び柔軟性をを併せ持つ材料は得られていなかった。
最近、本発明者らは、水溶性有機高分子と膨潤性粘土鉱物からなるゲルが優れた伸縮性(力学物性)を有するゲルとなることを報告した(特許文献4参照)。しかし、このゲルは、水溶性有機高分子と膨潤性粘土鉱物とが三次元的に結合されてはいるものの、種々の用途に有用な発泡体でなく、ソフト感を有する柔軟性を有し、且つ低密度化及び高伸縮性を併せ持つ材料は実現されていなかった。
【0003】
【特許文献1】
米国特許第5,338,766号
【特許文献2】
米国特許第5,451,613号
【特許文献3】
特表2002−501563号
【特許文献4】
特開2002−53629号公報
【非特許文献1】
長田義仁、梶原莞爾編、ゲルハンドブック、「エヌ・ティー・エヌ」(1997)
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、軽量性と、高い伸縮性及び柔軟性を併せ持つ高分子ゲル発泡体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究に取り組んだ結果、特に水溶性有機モノマーの重合物と層状剥離した粘土鉱物と溶媒からなるゲルにおいて、効果的にゲル内部に発泡による空孔を生じさせることにより、軽量性と優れた伸縮性及び柔軟性を併せ持つゲル発泡体が得られること、またそれを乾燥することにより低密度のゲル発泡体乾燥物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、水溶性有機モノマーの重合物(A)と膨潤性粘土鉱物(B)と溶媒(C)からなり、(C)/{(A)+(B)}の質量比が1〜100、(B)/(A)の質量比が0.01〜3であって、前記水溶性有機モノマーの重合物(A)が、水溶性のアクリルアミド誘導体の重合物又は水溶性のアクリルアミド誘導体と他のモノマーの共重合物であり、且つ発泡倍率が1.01以上であるゲル発泡体を提供する。
また、本発明は、アクリルアミド誘導体を含む水溶性有機モノマー、膨潤性粘土鉱物、溶媒、発泡剤または気体を混合し、層状に剥離した膨潤性粘土鉱物の共存下で該水溶性有機モノマーを重合して発泡することからなる発泡倍率1.01以上のゲル発泡体の製造方法を提供する。
更に、本発明は、上記ゲル発泡体から溶媒を除去した低密度のゲル発泡体乾燥物を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明は、水溶性有機モノマーの重合物と膨潤性粘土鉱物と溶媒からなるゲルを形成し、発泡によりそれらが均一にまたは十分に低密度化できること、且つ得られたゲル発泡体が優れた伸縮性や柔軟性を有し、軽量性(低密度)と高伸縮性と柔軟性を併せ持つ材料となることを見出した点にある。これに対してメチレンビスアクリルアミドなどの有機架橋剤を用いて化学架橋して得られる従来型高分子ゲルは、同じ条件ではゲル発泡体とすることが困難であり、たとえ一部の方法で発泡を達成したとしても伸縮性を有さない脆い材料であり、軽量で、高伸縮性や柔軟性を併せ持つ材料とはならない。更に本発明では、得られたゲル発泡体から殆ど収縮を伴わず溶媒が除去されることにより、超低密度のゲル発泡体乾燥物が得られる。
【0007】
本発明での水溶性有機モノマーの重合物(A)(以下、単に重合体(A)という)としては、膨潤性粘土鉱物(B)と相互作用により三次元網目を形成可能なものであり、好ましくはアミド基、アミノ基、エステル基、水酸基、カチオン基の一つまたは複数を側鎖または主鎖に含有し、親水性または両親媒性を示すものであり、特に好ましくは水または水と有機溶剤との混合溶媒に膨潤したり溶解する性質を有するものである。かかる重合物(A)の好ましいものとしては、水溶性アクリルアミド誘導体の重合物やそれを少なくとも一部含む共重合物があげられる。水溶性アクリルアミド誘導体としては、例えば炭素数1以上のアルキル基を有する水溶性のN−アルキルアクリルアミドまたはN,N−ジアルキルアクリルアミドが例示される。
【0008】
重合体(A)に用いられる水溶性有機モノマーとしては、前記アクリルアミド誘導体の他、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、炭素数1以上のアルキル基を有するアルキルメタクリルアミド、アルキルアクリレートの中から選択される一つ又は複数が用いられる。ここでN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、アルキルメタクリルアミド、アルキルアクリレートの具体例としては、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリディン、N−アクリロイルピペリディン、N−アクリロイルメチルホモピペラディン、N−アクリロイルメチルピペラディン、2−メトキシエチルアクリレートなどが例示される。またこれらモノマーにその他の有機モノマーをあわせて用いることも、本発明にいうゲル発泡体が形成される限りにおいて可能である。
【0009】
本発明における膨潤性粘土鉱物(B)としては、水または水溶液中で膨潤するものであることが好ましく、より好ましくは水溶性有機モノマーを含む溶液中で層状剥離し、微細且つ均一に分散可能なものである。本発明のゲル発泡体において、膨潤性粘土鉱物(B)は好ましくは10層以下、より好ましくは3層以下、特に好ましくは1層または2層のナノメーターレベル(の厚み)で分散しているものである。かかる膨潤性粘土鉱物の分散は発泡ゲルを乾燥したものの超薄切片を透過型電子顕微鏡により観察することによって確認されるほか、同様な試料を用いた小角X線回折測定によっても確認され、回折角(2θ)が好ましくは3度〜8度で、より好ましくは2度〜8度で、特に好ましくは1度〜8度で粘土鉱物の積層に基づく明確な回折ピークが観測されないことによって確認される。また、本発明における膨潤性粘土鉱物(B)は、水溶性有機モノマーの重合物(A)と三次元網目を形成できるものであることが好ましく、より好ましくはメチレンビスアクリルアミド等の有機架橋剤を用いないで(A)と(B)からなる三次元網目を形成できるものである。かかる膨潤性粘土鉱物(B)としては、例えば、水膨潤性スメクタイトや水膨潤性雲母などの水中で膨潤し、層状剥離した状態で微分散することが可能な膨潤性の無機粘土鉱物が用いられ、具体的には、ナトリウムを層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト、水膨潤性合成雲母などが挙げられる。また、水溶性有機モノマーと共に溶媒中で層状剥離可能であれば、界面活性剤などにより部分的に有機化した粘土鉱物を用いることもできる。
【0010】
本発明におけるゲル発泡体においては、ゲル発泡体を構成する粘土鉱物の比率を広い範囲で設定でき、特に高い粘土鉱物比率を有するゲル発泡体が得られることが特徴である。本発明のゲル発泡体に含まれる水溶性有機モノマーの重合物(A)と膨潤性粘土鉱物(B)の量比は、溶媒(C)の中で両者が三次元網目を形成する範囲が好ましく、(B)/(A)の質量比として0.01〜3、好ましくは0.1〜3、特に好ましくは0.3〜2.5である。(B)/(A)の質量比が0.01未満では、有効な(A)と(B)の三次元網目を形成することが困難となり、一方、3を越えると均一な(B)の層状剥離した分散が困難となる場合が多い。
なお、(B)/(A)の質量比に於ける膨潤性粘土鉱物(B)としては、粘土鉱物の少なくとも一部が有機化されている場合には有機成分を除いた無機質量で計算される。これは、例えば空気中、800℃までの加熱による熱重量分析により求められる。
【0011】
本発明では、水溶性有機モノマーの重合物(A)と膨潤性粘土鉱物(B)の三次元網目形成には、(B)の表面と(A)の末端の相互作用や、(B)の表面と(A)の主鎖または側鎖の官能基との相互作用などが単独または組み合わせて用いられる。相互作用の種類としては(A)と(B)との種類、組み合わせにより種々のものが選択可能であり、例えば、イオン相互作用、配位結合、水素結合、共有結合、疎水相互作用などの単独または複数が組み合わせて用いられる。
【0012】
本発明における溶媒(C)としては、主に水が用いられ、水溶性化合物、即ち水と混和可能な有機溶剤や有機または無機の塩を含んでいることも可能である。また、必要に応じて全量を、水と混和可能な有機溶剤に置き換えることもできる。含まれる溶媒量としては、得られるゲル発泡体としての用途に合わせて広い範囲で設定することが可能であるが、(C)/{(A)+(B)}で表される質量比が1〜200であり、好ましくは1〜100、より好ましくは5〜50である。かかる質量比が1未満ではゲルとしての柔軟性が低下し、200を越えると機械的性質が弱くなる場合が多い。
【0013】
本発明におけるゲル発泡体は、その内部に気孔を含有することで、ゲルとしての伸縮性を保ったままで低密度化され、柔軟性を向上させたものである。気孔を形成するための発泡倍率は目的に応じて変化させられるが、水溶性有機モノマーの重合物(A)と膨潤性粘土鉱物(B)と溶媒(C)からなる発泡前の体積に比べて1.01以上、好ましくは1.2〜50、より好ましくは1.3〜30、特に好ましくは1.5〜15である。かかる発泡倍率が1.01未満であると、軽量性が不十分となり好ましくない。本発明のゲル発泡体については、かさ密度で示すこともできるが、好ましくは0.02g/cm3〜0.9g/cm3、より好ましくは0.03g/cm3〜0.8g/cm3、特に好ましくは0.07g/cm3〜0.7g/cm3である。尚、気孔の大きさ、及び独立気孔/連続気孔の種類及びその比率は目的に応じて選択して用いられ、特に限定されない。
【0014】
本発明のゲル発泡体には、無機充填材、液状充填剤、難燃剤、繊維状強化材、着色剤、保水剤などを含有していてもよい。かかる添加剤については、好ましくはゲル発泡体の製造時に予め水溶性有機モノマーに混合し、場合によっては発泡後に該発泡体に注入することもできる。
【0015】
本発明のゲル発泡体の製造法については必ずしも限定されないが、好ましくは以下の方法が用いられる。
水中または水と水溶性化合物との混合溶液中で層状剥離して均一に微分散した膨潤性粘土鉱物の共存下で水溶性有機モノマーを重合させる過程において、水溶性有機モノマーと膨潤性粘土鉱物と溶媒との混合物、場合により他の添加剤を含有する混合物に、発泡剤または気体を導入し、重合して発泡することによりゲル発泡体を製造する。または、該モノマーの重合後に発泡を行うこともできる。その際、水溶性有機モノマーを含有する溶液には予め、重合開始剤や触媒を添加し、重合する。
【0016】
前記発泡剤としては、ヘプタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン等の低沸点の炭化水素化合物、塩素化炭化水素化合物、フロン、NaHCO3、Na2CO3、CaCO3等の炭酸塩などが好ましく、操作が容易であり、環境に与える影響が小さいことから特に炭化水素化合物や炭酸塩は好ましく用いられる。また、前記気体としては、不活性なガスが好ましく、例えば窒素ガス、炭酸ガスなどを挙げることができる。発泡剤の添加量は、所望の発泡体の発泡倍率、用いる発泡剤の種類、発泡時の条件(例:温度や圧力)によって異なり、適宜選択される。例えばペンタンの場合、水溶性有機モノマー及び膨潤性粘土鉱物に対して好ましくは50〜1000質量%が用いられる。また、気体の導入量も、所望の発泡体の発泡倍率によって適宜選択される。発泡剤として、例えばペンタンを使用する場合は、ペンタンを重合過程で撹拌しながら加えてゲルを調製する。得られたゲルを大気中、室温または必要に応じて加温して保持することにより、発泡が生じ、均一なゲル発泡体を得ることができる。また気体を用いる場合には、例えば窒素ガスを重合過程で、好ましくは粘度が30mPa・s以上に上昇した時点で微細な泡となるように導入し、重合してゲル発泡体を得ることができる。
【0017】
具体的な重合開始剤としては、水溶性の過酸化物、例えばペルオキソ二硫酸カリウムやペルオキソ二硫酸アンモニウム、水溶性のアゾ化合物、例えば、和光純薬工業株式会社製のVA−044、V−50、V−501などが好ましく用いられる。その他、ポリエチレンオキシド鎖を有する水溶性のラジカル開始剤なども用いられる。また触媒としては、3級アミン化合物であるN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンやβ−ジメチルアミノプロピオニトリルなどが好ましく用いられる。重合温度は、用いる水溶性有機高分子、重合触媒および開始剤の種類などに合わせて0℃〜100℃の範囲に設定する。
重合時間も触媒、開始剤、重合温度、重合溶液量(厚み)などの重合条件によって異なり、一概に規定できないが、一般に数十秒〜十数時間の間で行う。
【0018】
上記ゲル発泡体の製造時に、例えばカーボンブラックやシリカ微粒子などの固形フィラーをモノマー水溶液に添加することができ、重合によって緻密で均一なゲルを得た後、少なくとも1回以上、冷凍及び解凍を行う方法によって、均一なゲル発泡体を得ることもできる。また、液状充填剤として水と混和しない液状物、例えば流動パラフィンやヘキサンなどを、重合過程で、好ましくは粘度が2000mPa・s以下の時点で撹拌、振動、超音波などを用いて重合液と混合し、重合後に液状充填剤を加熱、溶剤、乾燥などの処理により除くことでゲル発泡体を得ることもできる。
【0019】
なお、膨潤性粘土鉱物を含有しないで有機架橋剤により架橋された従来の有機架橋型ゲルを発泡しようとしても、伸縮性に優れたゲル発泡体を得ることはできない。例えば、膨潤性粘土鉱物を含まず、代わりにメチレンビスアクリルアミドを水溶性有機モノマーの1モル%を添加して調製される有機架橋型ヒドロゲルの場合、予めペンタンを加えてゲル発泡体を調製する方法によっては殆ど発泡せず、低密度のゲル発泡体は得られない。また、重合過程での気体の混入法等により発泡がある程度達成された場合でも、有機架橋型ゲルの場合は、延伸、圧縮などにより容易に破壊し、伸縮性に優れたゲル発泡体は得られなかった。また発泡させない高分子ゲルは、密度が1g/cm3以上で軽量性が無く、また柔軟性(柔らかさ:例えば20%圧縮変形時の応力で表される)が不十分であることが多かった。
【0020】
本発明におけるゲル発泡体は、気孔を内部に含有するにもかかわらず、水溶性有機モノマーの重合物(A)と膨潤性粘土鉱物(B)との三次元網目が形成されているため、優れた伸縮性を示し、圧縮や延伸において好ましくは元の長さの50%以上の可逆的な変形が可能な特徴を有する。かかるゲル発泡体は、より好ましくは圧縮で70%以上、延伸で100%以上の可逆的な変形が可能であり、特に好ましくは、圧縮で80%以上、延伸で300%以上の可逆的な変形が可能である。なお、伸縮性以外の機械的性質は、重合物(A)と膨潤性粘土鉱物(B)の種類、及び両者の比率、また溶媒量、更にはフィラーの添加量などにより異なり、広い範囲から目的に応じて設定することが可能であるが、特に僅かの応力で変形が可能な高い柔軟性を有するものが含まれることが特徴である。また本発明におけるゲル発泡体は、より優れた吸水性を示すこともできる。また本発明におけるゲル発泡体の乾燥物は広い範囲で密度を変化させることが可能であり、特に0.02g/cm3以下の超低密度とすることが可能である。
【0021】
本発明におけるゲル発泡体から溶媒(C)を除去することにより、低密度のゲル発泡体の乾燥物が得られる。特に本発明では得られたゲル発泡体から殆ど収縮を伴わず溶媒が除去されることにより、0.02g/cm3以下の超低密度のゲル発泡体乾燥物が得られることが特徴である。ゲル発泡体乾燥物の密度は、ゲル発泡体の密度や溶媒除去時の収縮度合い等によって変化するが、好ましくは1g/cm3以下、より好ましくは0.8g/cm3〜0.001g/cm3、更に好ましくは0.1g/cm3〜0.001g/cm3、特に好ましくは0.02g/cm3〜0.002g/cm3である。本発明におけるゲル発泡体の乾燥物では、水溶性有機モノマーの重合物が層状に剥離した粘土鉱物と三次元網目を形成していること、または少なくとも一部の粘土鉱物層が発泡体の壁面に沿って配向していることなどから、該重合物が粘土鉱物層により強化され、低密度でもしっかりした強度を有することが可能である。ゲル発泡体からの溶媒の除去方法は公知の方法が用いられ、特に限定されない。具体的には、0〜100℃での加温、真空脱気、凍結乾燥などが用いられる。また、得られたゲル発泡体の乾燥物は、再度、溶媒を含ませることにより、可逆的にゲル発泡体へとすることができる。
【0022】
本発明におけるゲル発泡体及びその乾燥物は、種々の厚みのフィルム、塗膜、センチメーターからマイクロメーターレベルの直径を有する球、ロッドや板、中空のチューブや繊維状形態を有するものとすることが可能であり、いずれの形態においてもゲル発泡体及びその乾燥物として用いることができる。
【0023】
【実施例】
次いで本発明を実施例により、より具体的に説明するが、もとより本発明は、以下に示す実施例にのみ限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
水溶性有機モノマーとしてN−イソプロピルアクリルアミド(興人株式会社製)を1.13g、膨潤性粘土鉱物として水膨潤性ヘクトライト(商標ラポナイトXLG、英国ロックウッド株式会社製)を0.381g、溶媒として純水を9.47g含む均一透明な溶液を30mlのガラス容器中で撹拌しながら調製した。該溶液を氷浴に入れ、テトラメチレンジアミン8μlを加え、次いで、純水10gとペルオキソ二硫酸カリウム0.2gからなる開始剤水溶液0.5gを撹拌して加え、無色透明溶液を得た。これにペンタン8mlを撹拌しながら加えた。次いで、容器を密閉し20℃の恒温水槽中で15時間保持して、水溶性有機モノマーを重合させ、ゲルを調製した。以上の工程は全て酸素を除いた状態にて行った。重合後、容器の密栓をとり、室温にて24時間保持することにより、ゲルは発泡し、ゲル発泡体が得られた。発泡倍率は約10倍、かさ密度は0.12g/cm3であった。得られたゲル発泡体を一片が1cmの立方体に切り出して圧縮試験を、また1cm×1cmの断面で長さが7cmの直方体に切り出して延伸試験を行った。圧縮及び延伸試験には、島津製作所製卓上型万能試験機AGS−Hを用い、変形速度30mm/分及び50mm/分にて行った。その結果、圧縮試験において80%圧縮(元の長さの20%迄圧縮)しても破壊することなく、また延伸試験において200%まで延伸しても破壊することなくいずれも可逆的な繰り返し変形が可能であった。なお、50%圧縮時の応力は1.5kPaであった。
【0025】
(実施例2)
水溶性有機モノマーとしてN,N−ジメチルアクリルアミド(興人株式会社製)を0.99g用いる以外は、実施例1と同様にして水溶性有機モノマー、水膨潤性ヘクトライト、純水、テトラメチレンジアミン、開始剤水溶液からなる無色透明溶液を調製し、これを20℃の恒温水槽中に保持した。液の粘度が30mPa・sとなった時点で、窒素ガスを微小キャピラリーを通して導入し、粘度の上昇により導入が困難となるまで継続して微小な窒素ガスを導入した。計15時間恒温槽に保持して、水溶性有機モノマーの重合を行いゲルを調製した。得られたゲルは発泡倍率が約1.5倍、かさ密度が0.75g/cm3のゲル発泡体であった。実施例1と同様にして圧縮及び延伸試験を行ったが、80%圧縮、及び200%延伸を行っても破壊することなく、可逆的な変形が可能な伸縮性のあるゲルであった。
(実施例3)
実施例1で得られたゲル発泡体を25℃、常圧で溶媒を除去することにより、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)と層状に剥離した膨潤性ヘクトライトの三次元架橋体からなるゲル発泡体の乾燥物が得られた。ゲル発泡体の乾燥物は多くの均一な気孔を含む軽量の固い均一材料であり、密度は0.013g/cm3であった。実施例1と同様にして一片が1cmの立方体のゲル発泡体乾燥物の圧縮試験を行った。最初に破壊が観測された点は圧縮率が12%で、その時の応力は170kPaであった。また、圧縮率80%まで170〜210kPaの圧縮応力が観察された。ゲル発泡体の乾燥物を粉砕し、小角X線回折測定(理学機器株式会社製、X線回折装置RINTULTIMAを使用)を行ったが、2θが1.5度から8度において、膨潤性ヘクトライトの層間距離に由来する反射ピークは観測されず、ヘクトライトが層状に剥離していることが確認された
【0026】
(実施例4)
溶媒として純水9.47gを用い、これに水膨潤性ヘクトライト(ラポナイトXLG)0.153gを加えて均一透明液を調製した。次いで、オゾン処理により親水化したカーボンブラック(アセチレンブラック)0.26g、及び水溶性有機モノマーとしてN−イソプロピルアクリルアミド1.13gを加えた均一分散液を30mlのガラス容器中に調製した。該溶液を氷浴に入れ、テトラメチレンジアミン8μlを加え、次いで、純水10gとペルオキソ二硫酸カリウム0.2gからなる開始剤水溶液0.5gを加え、均一分散液を得た。次いで、容器を密閉し20℃の恒温水槽中で15時間保持して、水溶性有機モノマーを重合させ、均一、黒色のゲルを調製した。以上の工程は全て酸素を除いた状態にて行った。重合後、ゲルを容器から取り出し、−20℃にて24時間保持して冷凍し、次いで25℃の密栓した容器内で解凍した。この冷凍及び解凍の操作を3回繰り返した。最終的に得られたゲルは、数十ミクロンから数百ミクロンの気孔をほぼ均一に含む、発泡倍率が約1.5倍、かさ密度が0.75g/cm3のゲル発泡体であった。得られたゲル発泡体を用いて実施例1と同様にして圧縮及び延伸試験を行ったが、80%圧縮、及び200%延伸を行っても破壊することなく、可逆的な変形が可能な伸縮性のあるゲルであった。
【0027】
(比較例1)
発泡剤ペンタンを用いないこと、及び発泡工程がないことを除くと、実施例1と同様にしてゲルを調製した。しかし、ゲルの密度は1.04g/cm3であった。また、50%圧縮時の応力は19.2kPaであった。
【0028】
(比較例2)
水膨潤性粘土鉱物ラポナイトXLGの代わりに、有機架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド0.07gを用いること以外は、実施例1と同様にしてゲルを調製した。しかし、発泡倍率は1.2倍以下であり、最終的に得られたゲルのかさ密度は0.91g/cm3であった。このように低密度化の程度は小さく、得られたゲルは50%圧縮、50%延伸においていずれも破壊し、伸縮性を示さない脆い材料であった。
【0029】
(比較例3)
水膨潤性粘土鉱物ラポナイトXLGの代わりに、有機架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド0.014gを用いること以外は、実施例3と同様にしてゲルを調製した。得られたゲルの発泡倍率は約1.2倍(かさ密度は0.89g/cm3)であったが、50%圧縮、及び50%延伸の試験においていずれもゲルは破壊し、伸縮性を示さない脆い材料であった。
【0030】
【発明の効果】
本発明は、軽量性(低密度)、高伸縮性及び柔軟性を兼ね備えたゲル発泡体、及び超低密度を有するゲル発泡体の乾燥物をもたらすことができる。また、得られたゲル発泡体は、広範囲の機械的物性また優れた吸収性なども併せ持つことができる。
Claims (8)
- 水溶性有機モノマーの重合物(A)と膨潤性粘土鉱物(B)と溶媒(C)からなり、(C)/{(A)+(B)}の質量比が1〜100、(B)/(A)の質量比が0.01〜3であって、前記水溶性有機モノマーの重合物(A)が、水溶性のアクリルアミド誘導体の重合物又は水溶性のアクリルアミド誘導体と他のモノマーの共重合物であり、且つ発泡倍率が1.01以上であるゲル発泡体。
- 前記溶媒(C)が水または水と水溶性化合物との混合溶液であり、前記膨潤性粘土鉱物(B)が溶媒(C)中で層状剥離した状態で微分散しており、且つ該(B)と前記水溶性有機モノマーの重合物(A)とが三次元網目を形成している請求項1記載のゲル発泡体。
- 発泡倍率が、1.2〜50である請求項1又は2に記載のゲル発泡体。
- (B)/(A)の質量比が、0.1〜3である請求項1〜3のいずれか一つに記載のゲル発泡体。
- アクリルアミド誘導体を含む水溶性有機モノマー、膨潤性粘土鉱物、溶媒、発泡剤または気体を混合し、層状に剥離した膨潤性粘土鉱物の共存下で該水溶性有機モノマーを重合して発泡することからなる発泡倍率1.01以上のゲル発泡体の製造方法。
- 溶媒/(アクリルアミド誘導体を含む水溶性有機モノマー+膨潤性粘土鉱物)の質量比が1〜100で、且つ膨潤性粘土鉱物/アクリルアミド誘導体を含む水溶性有機モノマーの質量比が0.01〜3である請求項5記載のゲル発泡体の製造方法。
- 発泡剤が、低沸点の炭化水素化合物である請求項5または6のいずれか一つに記載のゲル発泡体の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか一つに記載のゲル発泡体から溶媒を除去して得られるゲル発泡体の乾燥物。
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