JP4244628B2 - 無細胞系タンパク質合成方法およびそのための抽出液 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転写および翻訳を経て外来鋳型DNAからタンパク質を合成する、新規な無細胞系のタンパク質合成方法およびそのための抽出液に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ヒトゲノムを始め多くの生物の遺伝情報が解読されてきている。このような中、ポストゲノム研究として、これらの遺伝情報に対応するタンパク質の機能解析やゲノム創薬が注目を集めている。これらの遺伝情報に対応するタンパク質を医薬品などに応用、利用するには、莫大な種類のタンパク質を短時間で簡単に合成することが必要となってくる。
【0003】
現在、タンパク質の生産方法には、遺伝子組換え技術によって酵母や昆虫細胞などの生細胞を用いる発現系(以下、「細胞系」ということがある)が広く利用されている。しかし、生細胞は自己機能を維持するために外来タンパク質を排除する傾向があり、また生細胞で細胞毒タンパク質を発現すると細胞が生育しないなど発現が困難なタンパク質も多い。
【0004】
一方、細胞系を使用しないタンパク質の生産方法として、細胞破砕液や抽出液に基質や酵素などを加えるなどして生物の遺伝情報翻訳系を試験管内に取り揃え、目的のタンパク質をコードするmRNAを用いて、アミノ酸を望みの順番に必要な残基数結合させることのできる合成系を再構築する、無細胞系のタンパク質合成が知られている。このような無細胞系タンパク質合成では、上記細胞系のタンパク質合成のような制約を受けにくく、生物の命を断つことなくタンパク質の合成を行うことができ、またタンパク質の生産に培養などの操作を伴わないため細胞系と比較して短時間にタンパク質の合成を行うことができる。さらに無細胞系タンパク質合成では、生命体が利用していないアミノ酸配列からなるタンパク質の大量生産も可能となることから、有望な発現方法であると期待されている。このような無細胞系のタンパク質合成としては、たとえば、小麦胚芽の抽出液や大腸菌の抽出液を用いる方法が知られている。
【0005】
しかし、小麦胚芽の抽出液を用いた無細胞系のタンパク質合成では、抽出液の抽出操作が一般に極めて煩雑であるという欠点がある。
小麦胚芽の抽出液の調製方法の一例として、たとえば、特許文献1には、以下のような手順が記載されている。小麦種子をミルに添加し、破砕した後、篩で粗胚芽画分を得、四塩化炭素とシクロヘキサン混液(四塩化炭素:シクロヘキサン=2.5:1)を用いた浮選によって、発芽能を有する胚芽を浮上する画分から回収し、室温乾燥によって有機溶媒を除去する。この胚芽画分に混在する種皮などの不純物を静電気帯電体を用いて吸着除去する。次に、この試料から小麦胚乳成分を完全に除去するため、非イオン性界面活性剤であるNP40の0.5%溶液に懸濁し、超音波洗浄器を用いて、洗浄液が白濁しなくなるまで洗浄を繰り返す。蒸留水の存在下に再度1回の超音波洗浄を行い、小麦胚芽を純化する。
このように小麦胚芽の抽出液を用いた無細胞系タンパク質合成では、抽出液の調製が煩雑であり、多大な時間と労力を要するという不具合がある。
【0006】
また大腸菌の抽出液を用いた無細胞系タンパク質合成では、大腸菌が原核生物であるため、タンパク質への糖鎖修飾を行うことができず、糖タンパク質を合成することができないという欠点がある。上記糖鎖修飾によりタンパク質に付加される糖鎖は、物質間や細胞間の認識や接着に関与するシグナルやリガンドとして、タンパク質自身の機能調節因子として、またはタンパク質の保護や安定化因子として機能しているものと考えられる。そのため、糖鎖修飾を受けるタンパク質について生体内の機能を解析するためには、糖鎖修飾を受けたタンパク質(糖タンパク質)を取得することが必要であり、タンパク質への翻訳の後に糖鎖修飾も行えるような無細胞系のタンパク質合成が望まれている。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−236896号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、反応液の調製が容易であり、糖タンパク質の合成も可能である無細胞系タンパク質合成方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下のとおりである。
(1)カイコ組織由来の抽出物と、RNAポリメラーゼと、外来鋳型DNAとを少なくとも含有する抽出液を用い、転写および翻訳を経て外来鋳型DNAからタンパク質を合成する無細胞系タンパク質合成方法であって、
カイコ組織由来の抽出物と、RNAポリメラーゼと、外来鋳型DNAとを少なくとも含有する抽出液は、
カイコ組織を凍結する工程、
凍結したカイコ組織をすり潰す工程、
すり潰したカイコ組織を抽出用液で抽出し、カイコ組織からの抽出物を含有する液状物を得る工程、
得られた液状物を10000×g〜50000×gで遠心分離し上清を得る工程、
得られた上清をゲル濾過し、280nmにおける吸光度が10以上の画分を分取する工程、及び
回収した画分にRNAポリメラーゼ及び外来鋳型DNAを添加する工程を少なくとも含む調製法によって得られる、無細胞系タンパク質合成方法。
(2)上記抽出液が、プロテアーゼインヒビターをさらに含有するものである、上記(1)に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
(3)上記抽出液に、アデノシン三リン酸、グアノシン三リン酸、シチジン5'−三リン酸、ウリジン5'−三リン酸、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、アミノ酸成分およびtRNAを少なくとも添加してなる反応液を用いるものである、上記(1)または(2)に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
(4)カイコ組織由来の抽出物と、RNAポリメラーゼと、プロテアーゼインヒビターとを少なくとも含有する液状組成物を用い、転写および翻訳を経て外来鋳型DNAからタンパク質を合成する無細胞系タンパク質合成方法であって、
カイコ組織由来の抽出物と、RNAポリメラーゼと、プロテアーゼインヒビターとを少なくとも含有する液状組成物は、
カイコ組織を凍結する工程、
凍結したカイコ組織をすり潰す工程、
すり潰したカイコ組織をプロテアーゼインヒビターを含有する抽出用液で抽出し、カイコ組織からの抽出物を含有する液状物を得る工程、
得られた液状物を10000×g〜50000×gで遠心分離し上清を得る工程、及び
得られた上清をゲル濾過し、280nmにおける吸光度が10以上の画分を分取する工程、及び
回収した画分にRNAポリメラーゼを添加する工程を少なくとも含む調製法によって得られる、無細胞系タンパク質合成方法。
(5)上記液状組成物に、外来鋳型DNA、アデノシン三リン酸、グアノシン三リン酸、シチジン5'−三リン酸、ウリジン5'−三リン酸、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、アミノ酸成分およびtRNAを少なくとも添加してなる反応液を用いるものである、上記(4)に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
(6)カイコ組織が、カイコ幼虫の絹糸腺を少なくとも含有する上記(1)〜(5)のいずれかに記載の無細胞系タンパク質合成方法。
(7)カイコ組織が、カイコ幼虫の脂肪体を少なくとも含有する上記(1)〜(5)のいずれかに記載の無細胞系タンパク質合成方法。
(8)カイコ組織が、カイコの胚を少なくとも含有する上記(1)〜(5)のいずれかに記載の無細胞系タンパク質合成方法。
(9)カイコ組織が、カイコ幼虫の後部絹糸腺を少なくとも含有する上記(6)に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
(10)カイコ組織由来の抽出物と、RNAポリメラーゼと、外来鋳型DNAとを少なくとも含有する無細胞系タンパク質合成用抽出液であって、
カイコ組織を凍結する工程、
凍結したカイコ組織をすり潰す工程、
すり潰したカイコ組織を抽出用液で抽出し、カイコ組織からの抽出物を含有する液状物を得る工程、
得られた液状物を10000×g〜50000×gで遠心分離し上清を得る工程、
得られた上清をゲル濾過し、280nmにおける吸光度が10以上の画分を分取する工程、及び
回収した画分にRNAポリメラーゼ及び外来鋳型DNAを添加する工程を少なくとも含む調製法によって得られる、無細胞系タンパク質合成用抽出液。
(11)さらにプロテアーゼインヒビターを含有するものである、上記(10)に記載の抽出液。
【0010】
なお本明細書において「カイコ」は、カイコガ科に属する鱗翅目昆虫(絹糸昆虫)と同義であり、その一生において「卵(胚)」(産卵直後より孵化直前までの間)、「幼虫」(孵化直後から繭の形成終了直前(1齢期〜5齢期に分けられる))、「蛹」(繭の形成終了直前から羽化する直前までの間)、ならびに「成虫(蛾)」(羽化直後より死亡までの間)の各状態を経るものであり、その一生にわたる形態のいずれをも含むものとする。
カイコは、卵より孵化した後の幼虫の状態では、桑を食べて発育する期間(齢)と、食べずに脱皮の準備をする期間(眠)を交互に繰り返す。カイコの幼虫において、孵化してから1回目の脱皮までを1齢期、1回目の脱皮から2回目の脱皮までを2齢期といい、通常、4回脱皮して5齢期で成熟する(この成熟した状態のカイコ幼虫は「熟蚕」とも呼ばれる)。カイコの幼虫は、熟蚕になると体が透明になり絹糸を吐いて繭を形成し、蛹化する。蛹の後、羽化して成虫となる。
【0011】
本明細書における「絹糸腺」は、カイコ幼虫の両体側において、頭部の下唇先端に位置する吐出口から盲管にまで連なる一対の管状の外分泌腺であり、前部絹糸腺、中部絹糸腺および後部絹糸腺に大きく分けられる。後部絹糸腺は、絹糸の中心部を為すフィブロインを分泌する。また中部絹糸腺は、セリシンを分泌する。フィブロインは中部絹糸腺に蓄積されるとともに、セリシンによってその外周を覆われて、ゲル状の絹物質となる。この絹物質は、前部絹糸腺を通って吐出口から排出され、固体化して絹糸となる。
【0012】
本明細書における「脂肪体」は、カイコ幼虫において、体内の至るところに分布し、白色の柔らかい扁平な帯状、ひも状あるいは葉状の組織である。脂肪体は、ヒトの肝臓に似て栄養、エネルギー源を貯蔵する役目を果たしているので、細胞内には脂肪球、タンパク質、グリコーゲンその他の新陳代謝に関係する種々の物質を含んでいる。
【0013】
本明細書における「胚」は、カイコの卵の状態の組織を指すものとする。
【0014】
本明細書における「無細胞系タンパク質合成」は、外来鋳型DNAよりmRNAを転写する転写工程と、該転写工程で得られたmRNAの情報を読み取ってタンパク質を合成する翻訳工程とを含む、無細胞転写翻訳系によるタンパク質合成を指すものとする。ここで、本発明の合成方法によって無細胞系で合成される「タンパク質」は、複数のアミノ酸残基から構成される任意の分子量のペプチド、すなわち低分子量のペプチドから高分子量のいずれをも包含するものとする。また本明細書でいう「タンパク質」は、糖鎖修飾されてなる糖タンパク質も含む。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の無細胞系タンパク質合成方法に用いる抽出液に含有される「カイコ組織由来の抽出物」は、カイコの一生のうちのどの状態(卵、幼虫(1齢期〜5齢期)、蛹、成虫)のいずれの組織由来であってもよい。またカイコ組織は、単一の状態における単一の組織(たとえば、5齢期のカイコ幼虫における後部絹糸腺のみ)由来に限らず、単一の状態における複数の組織(たとえば、5齢期のカイコ幼虫における後部絹糸腺および脂肪体)由来であってもよく、複数の状態における単一の組織(たとえば、3齢期、4齢期、5齢期の各カイコ幼虫における後部絹糸腺)由来であってもよいものとする。無論、複数の状態における複数の組織由来であってもよい。
なお上記「カイコ組織由来の抽出物」は、カイコの組織の全体(たとえば、後部絹糸腺全体)からの抽出物である必要はない。
【0016】
本発明における抽出液中のカイコ組織由来の抽出物の含有量に特に制限はないが、タンパク質濃度で1mg/mL〜200mg/mL含有するものであるのが好ましく、中でも10mg/mL〜100mg/mL含有するものであるのがより好ましい。当該抽出物の含有量がタンパク質濃度で1mg/mL未満であると、本発明の作用に必須な成分の濃度が低くなり、充分な合成反応が行えなくなる虞があるためであり、また当該抽出物の含有量がタンパク質濃度で200mg/mLを越えると、抽出液自体が高い粘性を有し、操作しずらい虞があるためである。
【0017】
なお上記範囲の量のカイコ組織由来の抽出物を含有する抽出液は、抽出液のタンパク質濃度測定を利用して、調製できる。当該タンパク質濃度測定は、当分野において通常行われているように、たとえばBCA Protein assay Kit(PIERCE製)を使用し、反応試薬2mLに対してサンプルを0.1mL加え、37℃で30分間反応させ、562nmにおける吸光度を測定する、といった手順によって行う。コントロールとしては、通常、ウシ血清アルブミン(BSA)を使用する。
【0018】
上記カイコ組織としては、カイコ幼虫の絹糸腺、脂肪体およびカイコの胚から選ばれる少なくともいずれかを含有していることが望ましい。抽出液中にカイコ幼虫由来の絹糸腺、脂肪体およびカイコの胚から選ばれる少なくともいずれかが含有されているか否かは、たとえばアルドラーゼについてのアイソザイム解析を行うことによって判別することができる(Nagaokaら(1995)、Insect Biochem Mol Biol. 25, 819-825)。
【0019】
カイコ幼虫の絹糸腺由来の抽出物、特には後部絹糸腺由来の抽出物を少なくとも含有すると、短時間で大量のタンパク質が合成可能であるというような特に優れた利点を有する無細胞系タンパク質合成用抽出液を実現できる上で好ましい。
【0020】
カイコ幼虫の脂肪体由来の抽出物は、脂肪体が柔らかい組織であるために、すり潰す作業が短時間で済み、結果として容易に抽出液を調製できる、というような特に優れた利点を有する無細胞系タンパク質合成用抽出液を実現できる上で好ましい。なお脂肪体については、上記アイソザイム解析以外に、抽出液をドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)にかけて脂肪体由来のタンパク質であるSP−1、SP−2などを検出することによっても、抽出液中に含有されているか否かを判別することができる。
【0021】
カイコの胚由来の抽出物は、胚が1つの個体であるために、他の組織とは異なり摘出する作業を要さず、結果として容易に抽出液を調製できる、というような特に優れた利点を有する無細胞系タンパク質合成用抽出液を実現できる上で好ましい。なおカイコの胚については、上記アイソザイム解析以外に、抽出液をSDS−PAGEにかけて胚由来のタンパク質である30K、ESP、Vitellin(H)、Vitellin(L)などを検出することによっても、抽出液中に含有されているか否かを判別することができる。
【0022】
抽出物がカイコ幼虫の後部絹糸腺または脂肪体由来である場合、カイコ幼虫の1齢期〜5齢期のものであれば、特に制限なく本発明に使用できるが、当該後部絹糸腺または脂肪体は、5齢期のカイコ幼虫由来であるのが好ましい。これは、5齢期のカイコ幼虫においては、後部絹糸腺および脂肪体が1齢期〜5齢期のうちで最も成熟しており、これを用いることで他の齢期のものと比べて短時間で大量のタンパク質合成可能である、というような利点を有する。
中でも特に、絹糸の主成分である絹フィブロインを活発につくり、高いタンパク質合成能を有しているという観点から、本発明における抽出液は、5齢期のカイコ幼虫の後部絹糸腺、中でも5齢期の3日目〜7日目のカイコ幼虫の後部絹糸腺からの抽出物を必須成分として含有していることが好ましい。
【0023】
また本発明に使用する抽出液においては、外来鋳型DNAが、上記のカイコ組織由来の抽出物、及び後述のRNAポリメラーゼとともに必須成分として含有される。外来鋳型DNAは、プラスミドDNAなどの環状DNAであってもよいし、PCR産物などの直鎖状DNAであってもよい。上記外来鋳型DNAは、カイコ組織に由来しない鋳型DNAを指し、目的タンパク質をコードする塩基配列と、その5’上流側に位置するプロモーター配列とを少なくとも有する。本発明に用いる外来鋳型DNAは、カイコ組織に由来しない鋳型DNAであるならば、コードするタンパク質(ペプチドを含む)に特に制限はなく、生細胞で細胞毒となるタンパク質をコードする塩基配列を有するものであってもよいし、また糖タンパク質をコードする塩基配列を有するものであってもよい。また本発明に用いる外来鋳型DNAにおけるプロモーター配列としては、特に制限されるものではないが、たとえば、従来公知のT7プロモーター配列、SP6プロモーター配列、T3プロモーター配列などが挙げられる。
なお本発明に用いる外来鋳型DNAは、塩基数に特に制限はなく、目的とするタンパク質を合成し得るならば鋳型DNA全てが同じ塩基数でなくともよい。また、目的とするタンパク質を合成し得る程度に相同な配列であれば、各外来鋳型DNAは、複数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加されたものであってよい。なお、抽出液において、含有される鋳型DNAが外来鋳型DNAであるかカイコ組織に由来する鋳型DNAであるかは、抽出液中より、フェノール−クロロホルム抽出を行ってその鋳型DNAを抽出し、その塩基配列を解析することによって判別することができる。
【0024】
また、本発明に用いる外来鋳型DNAは、上記目的タンパク質をコードする塩基配列の3’下流側に転写を終結させる機能を有するターミネーター配列、および/または、合成されたmRNAの安定性などの観点からポリA配列を有しているのが好ましい。上記ターミネーター配列としては、たとえば、従来公知のT7ターミネーター配列、SP6ターミネーター配列、T3ターミネーター配列などが挙げられる。
【0025】
また上記抽出液中において、外来鋳型DNAは、タンパク質合成の速度の観点から、1μg/mL〜10mg/mL含有されることが好ましく、10μg/mL〜1000μg/mL含有されることがより好ましい。外来鋳型DNAが1μg/mL未満の場合、該外来鋳型DNAが抽出液中で不安定となり、また10mg/mLを越える場合には、粘性があがり操作性が悪くなる。また、外来鋳型DNAが1μg/mL未満または10mg/mLを越えると、これを用いたタンパク質合成の際にタンパク質合成の速度が低下する傾向にある。
【0026】
このようなカイコ組織由来の抽出物と外来鋳型DNAと後述のRNAポリメラーゼとを含有する抽出液を用いて、転写および翻訳を経て外来鋳型DNAからタンパク質を合成することによって、如何なるタンパク質、例えば生細胞で細胞毒となるタンパク質であっても、短時間にて合成することが可能となる。また、真核生物であるカイコ由来の抽出物を用いているため、糖タンパク質を無細胞系で合成することも可能であり、特に制限されることなく多くの種類のタンパク質を合成することができる。
さらに、本発明に用いる抽出液は、後述するように従来の小麦胚芽からの抽出液の調製と比較して格段に容易に調製することができ、効率的な無細胞系タンパク質合成を実現できる。
また本発明の無細胞系タンパク質合成方法は、DNAをそのまま鋳型としてタンパク質合成反応に使用し転写工程をも無細胞系で行うものである。これにより本発明においては、従来一般的であった無細胞系での翻訳工程のみによってmRNAからタンパク質を合成する方法とは異なり、使用するmRNAの調製のための作業(たとえば、外来鋳型DNAを生細胞に導入しmRNAを合成させる、または、インビトロ転写系によりmRNAを合成した後、得られたmRNAを精製するなどの作業)が不要であり、容易に反応液の調製を行うことができる。またmRNAはDNAと比較して分解され易く、これを用いた無細胞系タンパク質合成用の反応液は保存安定性に劣るが、本発明においては分解されにくく安定なDNAを使用するので、安定な反応液を調製することができるという利点もある。
【0027】
また本発明に使用する抽出液は、上記のカイコ組織由来の抽出物および外来鋳型DNAと、後述のRNAポリメラーゼとに加えて、プロテアーゼインヒビターをさらに含有することが好ましい。プロテアーゼインヒビターをさらに含有することによって、調製が容易であり、タンパク質(糖タンパク質も含む)の合成を効率的に行うことができる。これは、プロテアーゼインヒビターによりカイコ組織由来の抽出物に含有されるプロテアーゼの活性が阻害され、当該プロテアーゼによる抽出物中の活性タンパク質の不所望な分解を防止でき、結果としてカイコ組織由来の抽出物が有するタンパク質合成能を有効に引き出すことができるようになるためであると考えられる。
【0028】
このようなプロテアーゼインヒビターとしては、プロテアーゼの活性を阻害し得るものであるならば特に制限はなく、たとえば、フェニルメタンスルホニルフルオリド(以下、「PMSF」ということがある。)、アプロチニン、ベスタチン、ロイペプチン、ペプスタチンA、E−64(L−trans−エポキシスクシニルロイシルアミド−4−グアニジノブタン)、エチレンジアミン四酢酸、ホスホラミドンなどを使用することができるが、カイコ組織由来の抽出物を含有する抽出液にはセリンプロテアーゼが含まれることから、上記中でも、セリンプロテアーゼに対して特異性の高いインヒビターとして働くPMSFを使用するのが好ましい。
また、1種類のプロテアーゼインヒビターのみならず、数種類のプロテアーゼインヒビターの混合物(プロテアーゼインヒビターカクテル)を用いてもよい。
【0029】
プロテアーゼインヒビターは、上記抽出液中において、本発明の作用に必須な酵素類の分解阻害能を好適に発揮できる観点から、1μM〜50mM含有されることが好ましく、0.01mM〜5mM含有されることがより好ましい。プロテアーゼインヒビターが1μM未満であると、プロテアーゼの分解活性を充分抑えることができない傾向にあるためであり、またプロテアーゼインヒビターが50mMを越えると、タンパク質合成反応を阻害する傾向にあるためである。
【0030】
本発明の無細胞系でのタンパク質合成においては、上記カイコ組織由来の抽出物と外来鋳型DNAとRNAポリメラーゼとを少なくとも含有し、好ましくはプロテアーゼインヒビターをさらに含有する抽出液に、アデノシン三リン酸、グアノシン三リン酸、シチジン5'−三リン酸、ウリジン5'−三リン酸、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、アミノ酸成分およびtRNAを少なくとも添加してなる反応液を用いて行うのが好ましい。
【0031】
上記反応液は、上述した抽出液が10(v/v)%〜80(v/v)%、特には30(v/v)%〜60(v/v)%含有されるように調製されるのが好ましい。
すなわち、上記反応液の全体において、カイコ組織由来の抽出物の含有量が、タンパク質濃度で0.1mg/mL〜160mg/mLとなるように調製されるのが好ましく、3mg/mL〜60mg/mLとなるように調製されるのがより好ましい。当該抽出物の含有量がタンパク質濃度で0.1mg/mL未満または160mg/mLを越えると、反応速度が低下する傾向にあるためである。
また、反応液の全体において、外来鋳型DNAは、0.1μg/mL〜8000μg/mL含有されることが好ましく、3μg/mL〜600μg/mL含有されることがより好ましい。外来鋳型DNAが0.1μg/mL未満または8000μg/mLを越えると、タンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためである。
【0032】
本発明に使用するRNAポリメラーゼは、外来鋳型DNAが有するプロモーター配列に応じて適宜選択することができる。たとえば、外来鋳型DNAがT7プロモーター配列を有している場合は、その配列を認識するT7 RNAポリメラーゼを使用することが好ましい。また、外来鋳型DNAが、SP6またはT3プロモーター配列を有している場合は、それぞれ、SP6 RNAポリメラーゼまたはT3 RNAポリメラーゼを使用することが好ましい。
【0033】
RNAポリメラーゼは、当該反応液中において、mRNA合成の速度およびタンパク質合成の速度の観点から、0.01U/μL〜100U/μL含有されることが好ましく、0.1U/μL〜10U/μL含有されることがより好ましい。RNAポリメラーゼが0.01U/μL未満であると、mRNAの合成量が少なくなり、結果としてタンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためであり、またRNAポリメラーゼが100U/μLを越えると、タンパク質合成反応を阻害する傾向にあるためである。
【0034】
当該反応液中におけるアデノシン三リン酸(以下、「ATP」ということがある。)は、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において0.01mM〜10mM含有されることが好ましく、0.1mM〜5mM含有されることがより好ましい。ATPが0.01mM未満または10mMを越えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
【0035】
当該反応液中におけるグアノシン三リン酸(以下、「GTP」ということがある。)は、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において0.01mM〜10mM含有されることが好ましく、0.1mM〜5mM含有されることがより好ましい。GTPが0.01mM未満または10mMを越えると、タンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためである。
【0036】
当該反応液中におけるシチジン5'−三リン酸(以下、「CTP」ということがある。)は、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において0.01mM〜10mM含有されることが好ましく、0.1mM〜5mM含有されることがより好ましい。CTPが0.01mM未満または10mMを越えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
【0037】
当該反応液中におけるウリジン5'−三リン酸(以下、「UTP」ということがある。)は、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において0.01mM〜10mM含有されることが好ましく、0.1mM〜5mM含有されることがより好ましい。UTPが0.01mM未満または10mMを越えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
【0038】
当該反応液中におけるクレアチンリン酸は、タンパク質を継続的に合成するための成分であって、ATPとGTPを再生する目的で配合される。クレアチンリン酸は、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において1mM〜200mM含有されることが好ましく、10mM〜100mM含有されることがより好ましい。クレアチンリン酸が1mM未満であると、充分な量のATPとGTPが再生されにくく、結果としてタンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためであり、またクレアチンリン酸が200mMを越えると、阻害物質として働き、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
【0039】
当該反応液中におけるクレアチンキナーゼは、タンパク質を継続的に合成するための成分であって、クレアチンリン酸と共にATPとGTPを再生する目的で配合される。クレアチンキナーゼは、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において1μg/mL〜1000μg/mL含有されることが好ましく、10μg/mL〜500μg/mL含有されることがより好ましい。クレアチンキナーゼが1μg/mL未満であると、充分な量のATPとGTPが再生されにくく、結果としてタンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためであり、またクレアチンキナーゼが1000μg/mLを越えると、阻害物質として働き、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
【0040】
当該反応液中におけるアミノ酸成分は、20種類のアミノ酸、すなわち、バリン、メチオニン、グルタミン酸、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、グリシン、プロリン、イソロイシン、トリプトファン、アスパラギン、セリン、トレオニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、チロシン、リシン、グルタミン、シスチン、アルギニン、の20種類のアミノ酸を少なくとも含有する。このアミノ酸には、ラジオアイソトープ標識されたアミノ酸も含まれる。さらに、必要に応じて、修飾アミノ酸を含有していてもよい。当該アミノ酸成分は、通常、各種類のアミノ酸を概ね等量ずつ含有してなる。
本発明においては、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において上記のアミノ酸成分が1μM〜1000μM含有されることが好ましく、10μM〜500μM含有されることがより好ましい。アミノ酸成分が1μM未満または1000μMを越えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
【0041】
当該反応液中におけるtRNAは、上記20種類のアミノ酸に対応した種類のtRNAを概ね等量ずつ含有してなる。本発明においては、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において1μg/mL〜1000μg/mL含有されることが好ましく、10μg/mL〜500μg/mL含有されることがより好ましい。tRNAが1μg/mL未満または1000μg/mLを越えると、タンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためである。
【0042】
本発明における反応液は、さらに、カリウム塩、マグネシウム塩、ジチオトレイトール、RNaseインヒビター、スペルミジンおよび緩衝剤を含有するのが好ましい。
【0043】
上記カリウム塩としては、本発明の作用を阻害するようなものでなければ特に制限はなく、たとえば酢酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、クエン酸水素二カリウム、硫酸カリウム、リン酸二水素カリウム、ヨウ化カリウム、フタル酸カリウムなど一般的な形態で使用することができ、中でも酢酸カリウムを使用するのが好ましい。カリウム塩は、タンパク質合成反応における補助因子として作用する。
【0044】
カリウム塩は、当該反応液中において、保存安定性の観点から、たとえば酢酸カリウムなど1価のカリウム塩である場合、10mM〜500mM含有されることが好ましく、50mM〜150mM含有されることがより好ましい。カリウム塩が10mM未満または500mMを越えると、タンパク質合成に必須な成分が不安定になる傾向にあるためである。
【0045】
上記マグネシウム塩としては、本発明の作用を阻害するようなものでなければ特に制限はなく、たとえば酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、乳酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウムなど一般的な形態で使用することができ、中でも酢酸マグネシウムを使用するのが好ましい。マグネシウム塩も、タンパク質合成反応における補助因子として作用する。
【0046】
マグネシウム塩は、当該反応液中において、保存安定性の観点から、たとえば酢酸マグネシウムなど2価の塩である場合、0.1mM〜10mM含有されることが好ましく、0.5mM〜3mM含有されることがより好ましい。マグネシウム塩0.1mM未満または10mMを越えると、タンパク質の合成に必須な成分が不安定になる傾向にあるためである。
【0047】
上記ジチオトレイトール(以下、「DTT」ということがある。)は、酸化防止の目的で配合されるものであり、当該反応液中において0.1mM〜100mM含有されることが好ましく、0.2mM〜20mM含有されることがより好ましい。DTTが0.1mM未満または100mMを越えると、タンパク質の合成に必須な成分が不安定になる傾向にあるためである。
【0048】
当該反応液中におけるRNaseインヒビターは、抽出液に混在するカイコ由来のRNaseによって、本発明の無細胞系タンパク質合成の際にmRNAやtRNAが不所望に消化されて、タンパク質の合成を妨げるのを防ぐ目的で添加されるものであり、当該反応液中において0.1U/μL〜100U/μL含有されることが好ましく、1U/μL〜10U/μL含有されることがより好ましい。RNaseインヒビターが0.1U/μL未満であると、RNaseの分解活性を充分抑えることができない傾向にあるためであり、またRNaseインヒビターが100U/μLを越えると、タンパク質合成反応を阻害する傾向にあるためである。
【0049】
上記スペルミジンは、転写における伸張反応を促進する目的で添加されるものであり、当該反応液中において0.01mM〜100mM含有されることが好ましく、0.05mM〜10mM含有されることがより好ましい。スペルミジンが0.01mM未満であると、mRNAの合成速度が低下し生成するmRNAの量が少なくなり、結果としてタンパク質合成の速度が低下するというような傾向にあるためであり、またスペルミジンが100mMを越えると、タンパク質合成反応を阻害する傾向にあるためである。
【0050】
上記緩衝剤は、抽出液に緩衝能を付与し、たとえば酸性または塩基性物質の添加などによって起こる抽出液のpHの急激な変化による抽出物の変性を防止する目的で配合される。このような緩衝剤としては、特に制限はなく、たとえば、HEPES−KOH、Tris−HCl、酢酸−酢酸ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム、リン酸、ホウ酸、MES、PIPESなどを使用することができる。
緩衝剤は、当該抽出液のpHが好ましくは4〜10、より好ましくは6〜8に保持されるようなものを使用するのが好ましい。抽出液のpHが4未満またはpHが10を越えると、本発明の反応に必須な成分が変性する虞があるためである。このような観点より、上記中でもHEPES−KOH(pH7.4)を使用するのが好ましい。
【0051】
緩衝剤は、当該抽出液中において好適な緩衝能を保持するという観点から、1mM〜200mM含有されることが好ましく、5mM〜50mM含有されることがより好ましい。緩衝剤が1mM未満であると、酸性または塩基性物質の添加によりpHの急激な変動を引き起こし、抽出物が変性する傾向にあるためであり、また緩衝剤が200mMを越えると、塩濃度が高くなり過ぎ、タンパク質合成に必須な成分が不安定になる傾向にあるためである。
【0052】
本発明に使用される反応液は、グリセロールを含有するのがより好ましい。グリセロールを添加すると、タンパク質合成反応においてタンパク質合成に必須な成分を安定化できるというような利点があるためである。グリセロールを添加する場合、通常、5(v/v)%〜20(v/v)%となるように添加する。
【0053】
すなわち、本発明の無細胞系タンパク質合成方法に用いる反応液は、上述したプロテアーゼインヒビターを含む抽出液を30(v/v)%〜60(v/v)%含有するとともに、さらに0.1U/μL〜10U/μLのRNAポリメラーゼ、0.1mM〜5mMのATP、0.1mM〜5mMのGTP、0.1mM〜5mMのCTP、0.1mM〜5mMのUTP、10mM〜100mMのクレアチンリン酸、10μg/mL〜500μg/mLのクレアチンキナーゼ、10μM〜500μMのアミノ酸成分、10μg/mL〜500μg/mLのtRNAを含有するのが好ましい。さらには、50mM〜150mMの酢酸カリウム、0.5mM〜3mMの酢酸マグネシウム、0.2mM〜20mMのDTT、1U/μL〜10U/μLのRNaseインヒビター、0.05mM〜10mMのスペルミジン、5mM〜50mMのHEPES−KOH(pH7.4)、5(v/v)%〜20(v/v)%のグリセロールを含有するように実現されるのが好ましい。
【0054】
本発明の無細胞系タンパク質合成方法は、上記のような本発明における抽出液を含有する反応液を用いて、従来公知のたとえば低温恒温槽にて行う。
【0055】
転写工程の反応温度は、通常、10℃〜60℃、好ましくは20℃〜50℃の範囲内である。転写工程の反応温度が10℃未満であると、転写の速度が低下する傾向にあり、また転写工程の反応温度が60℃を越えると、反応に必須な成分が変性する傾向にあるためである。
また翻訳工程の温度は、通常、10℃〜40℃、好ましくは20℃〜30℃の範囲内である。翻訳工程の反応温度が10℃未満であると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあり、また翻訳工程の反応温度が40℃を越えると、反応に必須な成分が変性する傾向にあるためである。
本発明では、転写、翻訳工程を連続して実施し得るという観点から両工程に好適な20℃〜30℃の範囲で反応を行うことが特に好ましい。反応の時間は、全工程あわせて、通常、1時間〜72時間、好ましくは3時間〜24時間である。
【0056】
本発明の無細胞系タンパク質合成方法にて合成されたタンパク質の量は、酵素の活性の測定、SDS−PAGE、免疫検定法などによって測定できる。本発明の無細胞系のタンパク質合成方法にて合成できるタンパク質に特に制限はない。
【0057】
本発明の無細胞系タンパク質合成方法に使用する抽出液は、上述したようにカイコ組織由来の抽出物と、外来鋳型DNAと、RNAポリメラーゼとを少なくとも含有するものであるが、本発明は、この無細胞系タンパク質合成用の抽出液も提供するものである。本発明の抽出液は、上述した理由によりプロテアーゼインヒビターをさらに含有するものであるのが好ましい。さらには、カリウム塩、マグネシウム塩、DTTおよび緩衝剤を含有すると、本発明の作用に必須な成分を安定に保つことができる、というような利点があるため好ましい。
【0058】
当該抽出液中におけるカリウム塩としては、反応液の成分として上述した各種のカリウム塩、好適には酢酸カリウム、を好ましく使用できる。カリウム塩は、上述した反応液におけるカリウム塩の場合と同様の観点から、当該抽出液中に10mM〜500mM含有されることが好ましく、50mM〜200mM含有されることがより好ましい。
【0059】
当該抽出液中におけるマグネシウム塩としては、反応液の成分として上述した各種のマグネシウム塩、好適には酢酸マグネシウム、を好ましく使用できる。マグネシウム塩は、上述した反応液におけるマグネシウム塩の場合と同様の観点から、当該抽出液中に0.1mM〜10mM含有されることが好ましく、0.5mM〜5mM含有されることがより好ましい。
【0060】
当該抽出液中におけるDTTは、上述した反応液におけるDTTの場合と同様の観点から、当該抽出液中に0.1mM〜10mM含有されることが好ましく、0.5mM〜5mM含有されることがより好ましい。
【0061】
抽出液に含有される緩衝剤としては、上述した反応液と同様のものが好適に使用でき、同様の理由から、HEPES−KOH(pH7.4)を使用するのが好ましい。また、緩衝剤は、上述した反応液における緩衝剤の場合と同様の観点から、当該抽出液中に5mM〜200mM含有されることが好ましく、10mM〜50mM含有されることがより好ましい。
【0062】
本発明の抽出液は、カイコ組織から抽出用液を用いて抽出したカイコ組織由来の抽出物に、外来鋳型DNA及びRNAポリメラーゼを添加して抽出液とする方法によって調製される。かかる調製方法においては、カイコ組織からの抽出を行う処理を少なくとも含有し、カイコ組織からの抽出後、精製を行う。具体的には、[1]このカイコ組織からの抽出を行う処理、[2][1]の処理で抽出して得られた液状物の上清をゲル濾過する処理、[3]ゲル濾過後の抽出液より280nmにおける吸光度が10以上の画分を分取する処理、を少なくとも含有する調製方法によって調製できる。
【0063】
上記[1]の処理では、まず、常法にしたがって、たとえばハサミ、ピンセット、メスなどの器具を使用して、カイコより所望の組織を摘出する。この摘出によって得る後述の抽出に使用する組織量としては、特に制限はないが、通常、1g〜100gの範囲内である。
【0064】
次に、摘出した組織を、たとえば液体窒素で凍結した後、−80℃で凍結させた乳鉢を用いてすり潰し、抽出用液で抽出する。ここで使用する抽出用液は、従来公知の抽出に用いる緩衝液を特に制限なく使用することができるが、好ましくは、プロテアーゼインヒビター、カリウム塩、マグネシウム塩、DTTおよび緩衝剤を含有するものを使用する。特に好ましくは、0.1mM〜1mMのPMSF、50mM〜200mMの酢酸カリウム、0.5mM〜5mMの酢酸マグネシウム、0.5mM〜5mMのDTT、5mM〜50mMのHEPES−KOH(pH7.4)を含有する抽出用液を使用する。
【0065】
[2]の処理では、まず、上記[1]の処理で得た液状物を遠心分離にかける。当該遠心分離は、当分野において通常行われている条件(10000×g〜50000×g、0℃〜10℃、10分間〜60分間)で行い上清を回収し、再度、上記の条件で行えばよい。遠心分離後、上清をゲル濾過する。ゲル濾過は、たとえば脱塩カラム PD−10(アマシャム バイオサイエンス社製)を好適に使用することができ、常法にしたがって、ゲル濾過用緩衝液にてカラムを平衡化した後、試料を供給し、上記ゲル濾過用緩衝液にて溶出する、というような条件にて行えばよい。上記ゲル濾過用緩衝液は、上記抽出用液にグリセロールを添加したものであることが好ましい。これにより、タンパク質合成に必須な成分を安定化できるというような利点がある。グリセロールは、通常、5(v/v)%〜40(v/v)%(好ましくは、20(v/v)%)となるように添加すればよい。
【0066】
ゲル濾過して得られる濾液は、通常のゲル濾過で行われているように、0.1mL〜1mLを1画分とすればよく、高いタンパク質合成能を有する画分を効率よく分取するという観点より、0.4mL〜0.6mLを1画分とするのが好ましい。
【0067】
[3]の処理では、ゲル濾過後の濾液より280nmにおける吸光度が10以上の画分を分取する。当該処理は、たとえばUltrospec3300pro(アマシャム バイオサイエンス社製)などの機器を用いて、各画分について上記280nmにおける吸光度を測定し、この吸光度が10以上の画分を分取する。このようにして得られる画分に外来鋳型DNAを添加して、抽出液を得る。外来鋳型DNAの添加は、外来鋳型DNAの含有量が上記した本発明の抽出液として好適な範囲内になるように実現される。すなわち、該抽出液中、外来鋳型DNAが好ましくは1μg/mL〜10mg/mL、より好ましくは10μg/mL〜1000μg/mL含有されるように添加される。なお本発明における抽出液は、上記280nmにおける吸光度が10以上の複数の画分を混合したものに外来鋳型DNAを添加したものであっても当然よい。
【0068】
所望の量の上記抽出物を含有する抽出液を得るためには、通常、複数体のカイコより抽出する必要がある。抽出に供するカイコの数は、使用するカイコの状態や個体差によっても異なるが、カイコ幼虫については、繭の形成期に近づくにつれて組織の成熟に伴って、同量の抽出物を得るために要する数は少なくて済む。特に絹糸腺は、5齢期のカイコ幼虫において日を追うごとに著しく成熟するため、たとえば、5齢期の1日目で30匹程度のカイコ幼虫からと同程度の量を5齢期の7日目では6匹〜7匹程度のカイコ幼虫から得ることができる。
【0069】
なお本発明の抽出液は、上記の調製方法で得られると、上述したような利点を有する上で好ましいが、必ずしも上記調製方法で得られたものでなくともよい。
【0070】
また本発明は、カイコ組織由来の抽出物と、RNAポリメラーゼと、プロテアーゼインヒビターとを少なくとも含有する液状組成物を用い、転写および翻訳を経て外来鋳型DNAからタンパク質を合成する無細胞系タンパク質合成方法も提供する。この液状組成物に含有されるカイコ組織由来の抽出物、RNAポリメラーゼ及びプロテアーゼインヒビターは、本発明における抽出液について上述したのと同様である。また、本発明の液状組成物も、外来鋳型DNAを含有しない以外は上述したのと同様の含有量にて、カリウム塩、マグネシウム塩、DTTおよび緩衝剤をさらに含有するのが好ましい。かかる液状組成物を用いた無細胞系タンパク質合成反応に際しては、反応液に外来鋳型DNAをさらに添加する以外は、上述した抽出液からの反応液の調製と同様にして行えばよい。
【0071】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
実施例1
(1)カイコ幼虫の後部絹糸腺由来の抽出液の調製
5齢期4日目のカイコ幼虫15匹よりハサミ、ピンセット、メスを使用して、後部絹糸腺3.07gを摘出し、これを−80℃で凍結させた乳鉢ですり潰し、下記組成の抽出用液を用いて、抽出を行った。
〔抽出用液の組成〕
・20mM HEPES−KOH(pH7.4)
・100mM 酢酸カリウム
・2mM 酢酸マグネシウム
・2mM DTT
・0.5mM PMSF
抽出後、得られた液状物を遠心分離機(himacCR20B3(日立工機社製)にて、30000×g、30分間、4℃の条件にて遠心分離を行った。
遠心分離後、上清のみを単離し、再び30000×g、10分間、4℃の条件にて遠心分離を行った。遠心分離後、上清のみを単離した。脱塩カラム PD−10(アマシャム バイオサイエンス社製)に、20%グリセロールを含む抽出用液を加えカラムを平衡化した後、上清を供給し、上記抽出用液にて溶出することによりゲル濾過を行った。
ゲル濾過後の濾液の画分を、分光光度計(Ultrospec3300pro、アマシャム バイオサイエンス社製)を用いて、280nmにおける吸光度が10以上の画分を分取して、これに40μg/mLの外来鋳型DNAを添加し、5齢期のカイコ幼虫の後部絹糸腺由来の無細胞系タンパク質合成用抽出液を得た。外来鋳型DNAとしては、下記(2)の手順にて調製したものを用いた。
得られた抽出液について、BCA Protein assay Kit(PIERCE社製)を用い、タンパク質濃度を測定した。まず反応試薬2mLに対してサンプルを0.1mL加え、37℃で30分間反応させ、分光光度計(Ultrospec3300pro、アマシャム バイオサイエンス社製)を用いて、562nmにおける吸光度を測定した。コントロールとして、BSAを用い、検量線を作成した。
抽出液中におけるカイコ幼虫の後部絹糸腺の含有量は、タンパク質濃度で17.5mg/mLであった。
【0072】
(2)外来鋳型DNAの調製
以下の手順にしたがって、外来鋳型DNAを調製した。
まず、TNT T7 Coupled Reticulocyte Lysate System(プロメガ社製)に付属のルシフェラーゼT7コントロールDNAを用いて、大腸菌JM109(東洋紡績社製)を、常法に従い形質転換した。形質転換後の大腸菌をLB培地80mlで37℃、12時間培養し、得られた菌体から、Plasmid Midi Kit(QIAGEN社製)を用いて、プロトコルに従いプラスミドDNAを調製した。
【0073】
(3)無細胞系タンパク質合成
上記(1)で調製した抽出液を用いて、下記の組成の反応液を調製した。
〔反応液の組成〕
・50(v/v)% 抽出液(反応液中における外来鋳型DNA:20μg/mL)
・40mM HEPES−KOH(pH7.4)
・100mM 酢酸カリウム
・1mM 酢酸マグネシウム
・10mM DTT
・10(v/v)% グリセロール
・0.2mM ATP
・0.2mM GTP
・0.2mM UTP
・0.2mM CTP
・25mM クレアチンリン酸
・400μg/mL クレアチンキナーゼ
・200μM アミノ酸(20種)
・0.1mM スペルミジン
・1U/μL RNaseインヒビター
・200μg/mL tRNA
・1U/μL T7 RNAポリメラーゼ
ATP(シグマ社製)、GTP(シグマ社製)、CTP(シグマ社製)、UTP(シグマ社製)、アミノ酸(20種)(シグマ社製)、T7 RNAポリメラーゼ(プロメガ社製)、RNaseインヒビター(宝酒造社製)、tRNA(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)をそれぞれ用いた。
各々調製した反応液を用いて、反応装置として低温アルミブロック恒温槽MG−1000(東京理化器械社製)を用い、無細胞系のタンパク質(ルシフェラーゼ)の合成反応を行った。反応液量は25μLとした。反応温度は20℃とし、反応時間ごとにサンプリングを行い、合成されたルシフェラーゼ量を測定した。
合成されたルシフェラーゼは、ルシフェラーゼアッセイキット(E−1500、プロメガ製)を用いて各々定量した。ルシフェラーゼアッセイ試薬50μLに反応液2.5μLを添加し、ルミノメーター(Turner Designs TD−20/20、プロメガ社製)を用いて、ルシフェラーゼによる発光を測定した。
【0074】
図1は、実施例1についての、反応時間に対するルシフェラーゼの合成量を示すグラフである。図1において、縦軸はルシフェラーゼ合成量(ng/mL)を示し、横軸は反応時間(分)を示す。
図1に示すように、5齢期4日目のカイコ幼虫の後部絹糸腺由来の抽出物を含有する抽出液を用いた、転写および翻訳を経て外来鋳型DNAからタンパク質を合成する無細胞系タンパク質合成反応では、反応時間300分間で約21ng/mLのルシフェラーゼが合成されていた。
【0075】
実施例2
外来鋳型DNAを80μg/mL添加した以外は上記実施例1の(1)と同様にして調製した抽出液を用いて、下記の最適化した組成の反応液を調製した。
〔反応液の組成〕
・50(v/v)% 抽出液(反応液中における外来鋳型DNA:40μg/mL)
・10mM HEPES−KOH(pH7.4)
・100mM 酢酸カリウム
・1mM 酢酸マグネシウム
・1mM DTT
・10(v/v)% グリセロール
・0.2mM ATP
・0.2mM GTP
・0.2mM UTP
・0.2mM CTP
・25mM クレアチンリン酸
・200μg/mL クレアチンキナーゼ
・40μM アミノ酸(20種)
・0.1mM スペルミジン
・2U/μL RNaseインヒビター
・200μg/mL tRNA
・1U/μL T7 RNAポリメラーゼ
ATP(シグマ社製)、GTP(シグマ社製)、CTP(シグマ社製)、UTP(シグマ社製)、アミノ酸(20種)(シグマ社製)、T7 RNAポリメラーゼ(プロメガ社製)、RNaseインヒビター(宝酒造社製)、tRNA(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)をそれぞれ用いた。
各々調製した反応液を用いて、反応装置として低温アルミブロック恒温槽MG−1000(東京理化器械社製)を用い、無細胞系のタンパク質(ルシフェラーゼ)の合成反応を行った。反応液量は25μLとした。反応温度は20℃とし、反応時間ごとにサンプリングを行い、合成されたルシフェラーゼ量を測定した。
合成されたルシフェラーゼは、ルシフェラーゼアッセイキット(E−1500、プロメガ製)を用いて各々定量した。ルシフェラーゼアッセイ試薬50μLに反応液2.5μLを添加し、ルミノメーター(Turner Designs TD−20/20、プロメガ社製)を用いて、ルシフェラーゼによる発光を測定した。
【0076】
図2は、実施例2についての、反応時間に対するルシフェラーゼの合成量を示すグラフである。図2において、縦軸はルシフェラーゼ合成量(ng/mL)を示し、横軸は反応時間(分)を示す。
図2に示すように、5齢期4日目のカイコ幼虫の後部絹糸腺由来の抽出物を含有し、最適化した組成の反応液を用いた無細胞系タンパク質合成反応では、反応時間420分間で約146ng/mLのルシフェラーゼが合成されていた。
【0077】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、反応液の調製が容易であり、糖タンパク質の合成も可能である、転写工程を含む無細胞系タンパク質合成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1についての、反応時間に対するルシフェラーゼの合成量を示すグラフであり、縦軸はルシフェラーゼ合成量(ng/mL)を示し、横軸は反応時間(分)を示す。
【図2】実施例2についての、反応時間に対するルシフェラーゼの合成量を示すグラフであり、縦軸はルシフェラーゼ合成量(ng/mL)を示し、横軸は反応時間(分)を示す。
Claims (11)
- カイコ組織由来の抽出物と、RNAポリメラーゼと、外来鋳型DNAとを少なくとも含有する抽出液を用い、転写および翻訳を経て外来鋳型DNAからタンパク質を合成する無細胞系タンパク質合成方法であって、
カイコ組織由来の抽出物と、RNAポリメラーゼと、外来鋳型DNAとを少なくとも含有する抽出液は、
カイコ組織を凍結する工程、
凍結したカイコ組織をすり潰す工程、
すり潰したカイコ組織を抽出用液で抽出し、カイコ組織からの抽出物を含有する液状物を得る工程、
得られた液状物を10000×g〜50000×gで遠心分離し上清を得る工程、
得られた上清をゲル濾過し、280nmにおける吸光度が10以上の画分を分取する工程、及び
回収した画分にRNAポリメラーゼ及び外来鋳型DNAを添加する工程を少なくとも含む調製法によって得られる、無細胞系タンパク質合成方法。 - 上記抽出液が、プロテアーゼインヒビターをさらに含有するものである、請求項1に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
- 上記抽出液に、アデノシン三リン酸、グアノシン三リン酸、シチジン5'−三リン酸、ウリジン5'−三リン酸、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、アミノ酸成分およびtRNAを少なくとも添加してなる反応液を用いるものである、請求項1または2に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
- カイコ組織由来の抽出物と、RNAポリメラーゼと、プロテアーゼインヒビターとを少なくとも含有する液状組成物を用い、転写および翻訳を経て外来鋳型DNAからタンパク質を合成する無細胞系タンパク質合成方法であって、
カイコ組織由来の抽出物と、RNAポリメラーゼと、プロテアーゼインヒビターとを少なくとも含有する液状組成物は、
カイコ組織を凍結する工程、
凍結したカイコ組織をすり潰す工程、
すり潰したカイコ組織をプロテアーゼインヒビターを含有する抽出用液で抽出し、カイコ組織からの抽出物を含有する液状物を得る工程、
得られた液状物を10000×g〜50000×gで遠心分離し上清を得る工程、及び
得られた上清をゲル濾過し、280nmにおける吸光度が10以上の画分を分取する工程、及び
回収した画分にRNAポリメラーゼを添加する工程を少なくとも含む調製法によって得られる、無細胞系タンパク質合成方法。 - 上記液状組成物に、外来鋳型DNA、アデノシン三リン酸、グアノシン三リン酸、シチジン5'−三リン酸、ウリジン5'−三リン酸、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、アミノ酸成分およびtRNAを少なくとも添加してなる反応液を用いるものである、請求項4に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
- カイコ組織が、カイコ幼虫の絹糸腺を少なくとも含有する請求項1〜5のいずれかに記載の無細胞系タンパク質合成方法。
- カイコ組織が、カイコ幼虫の脂肪体を少なくとも含有する請求項1〜5のいずれかに記載の無細胞系タンパク質合成方法。
- カイコ組織が、カイコの胚を少なくとも含有する請求項1〜5のいずれかに記載の無細胞系タンパク質合成方法。
- カイコ組織が、カイコ幼虫の後部絹糸腺を少なくとも含有する請求項6に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
- カイコ組織由来の抽出物と、RNAポリメラーゼと、外来鋳型DNAとを少なくとも含有する無細胞系タンパク質合成用抽出液であって、
カイコ組織を凍結する工程、
凍結したカイコ組織をすり潰す工程、
すり潰したカイコ組織を抽出用液で抽出し、カイコ組織からの抽出物を含有する液状物を得る工程、
得られた液状物を10000×g〜50000×gで遠心分離し上清を得る工程、
得られた上清をゲル濾過し、280nmにおける吸光度が10以上の画分を分取する工程、及び
回収した画分にRNAポリメラーゼ及び外来鋳型DNAを添加する工程を少なくとも含む調製法によって得られる、無細胞系タンパク質合成用抽出液。 - さらにプロテアーゼインヒビターを含有するものである、請求項10に記載の抽出液。
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