JP4242737B2 - レーザ治療装置及び細胞破壊方法 - Google Patents

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Description

本発明はレーザ治療装置及び細胞破壊方法に関し、特に、多光子吸収を起因とするイオン化によって細胞を破壊する、レーザ治療装置及び細胞破壊方法に関する。
近年、癌は最も比率の高い人の死亡原因の一つであり、様々な治療方法が長年にわたり研究されている。癌治療法の一つは、外科療法である。外科療法は、癌の発生部を外科手術によって切除する。癌組織を全て取り除くことができれば、癌を治癒することができる。しかし、外科手術による切除は、癌組織のみならず、周囲の組織を同時に切除することになる。このため、臓器の機能低下・機能不全を招きうることが問題となる。高周波、あるいは、レーザ光をメスの代わりに用いて癌組織を切除する外科療法は、従来の外科手術と比較して、出血量を抑えることができ、人体への影響を小さくすることができる。しかし、癌組織の周囲組織を同時に切除することは避けることはできない。
他の癌治療法は、放射線療法である。放射線療法は、癌組織に放射線を照射することによって癌細胞を殺し、治療するものである。外科手術による外科療法と異なり、比較的組織の欠損は少なくて済む。しかし、放射線が照射されることによって、体の免疫力や各臓器の機能低下を招きうることが問題となる。あるいは、他の癌治療法として、抗癌剤を投与することによって治療を行う化学療法が知られている。癌の種類によっては化学療法のみが可能であり、これらの癌の治療に特に有用である。しかし、抗癌剤には強い副作用があるため、癌細胞だけではなく正常な細胞まで機能を低下させ、場合によっては破壊してしまうことが問題となる。
このように、癌治療においては、癌組織を確実に破壊すると同時に、人体、あるいは健常細胞への副作用、悪影響を防ぐことが重要な要素となっている。このような点に鑑み、レーザを利用した非外科的療法が提案されている。その一つは、レーザ蒸散法である。レーザ蒸散法はレーザ焼灼術で、腫瘍に高出力レーザ光を照射して腫瘍を蒸散させる。腫瘍を直接蒸散させる点で優れているが、組織内部の治療を行う場合、組織表面に高出力レーザ光の作用が及び、腫瘍周辺の熱損傷を避けることはできない問題がある。
一方、他のレーザ治療法として、光動力学的治療法が提案されている(例えば特許文献1参照)。光動力学的治療法は、光感応剤と部位特異的照射の組み合わせであり、腫瘍のようなある種の組織で治療的応答をもたらす。その薬剤は光子を吸収すると励起状態となって有効となる。上記先行文献は、薬剤を励起するためのプロセスとして、単光子励起法に代えて、好ましい方法として、二光子励起法を提案している。二光子励起は、2つの光子を同時に吸収することによって誘起されるエネルギー準位間の励起である。癌細胞に存在する光感応剤が2つの光子エネルギーを同時吸収することによって、高いエネルギー準位に励起され、光感応剤は治療効果を発揮する。
二光子励起は、単光子励起と比較し、集光部位以外でのエネルギーの吸収が抑制され、組織の中の深くまで入り込むことができる。又、処理部の空間的コントロールも可能となる。このように、光動力学的治療法において二光子励起を使用すると、入り込みの深さ及び空間的なコントロールの問題が改善されるとともに、光動力学的治療剤の治療性能の改善および活性化部位の選択における疾患特異性の改善によって、付加的な改善が達成される。
しかし、光感応剤の二光子励起を利用した上記従来の治療方法は、腫瘍細胞に光動力学的治療剤を蓄積する必要があるため、病巣組織の治療に一定の制限が生ずる。例えば、いくつかの光動力学的治療剤は、副作用を人体へ及ぼしうる。あるいは、いくつかの光動力学的治療剤は、限定的な条件においてのみ治療効果を発揮しうる。このため、より効果的に、健常細胞あるいは人体への副作用を抑制し、病巣組織を選択的に破壊しうる治療方法を得ることが要求される。
特表2002−528472号公報
本発明は上記従来技術に鑑みてなされたものであって、本発明の一つの目的は、病巣細胞を効果的に選択破壊可能な治療装置、及び病巣細胞の破壊方法を提供することである。
本発明の第1の態様は、病巣細胞を破壊するレーザ治療装置であって、パルス・レーザ光を出力するレーザ光源と、前記パルス・レーザ光を病巣細胞に導く光学手段と、前記レーザ光源を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記パルス・レーザ光が照射される前記病巣細胞内において、分子が多光子吸収を起因としてイオン化することによって前記病巣細胞が破壊されるように、前記レーザ光源を制御する。この構成を有することによって、病巣細胞を効果的に選択破壊可能である。
前記治療装置は、レーザ光の1パルスで前記病巣細胞を破壊する。これによって、周辺細胞への望ましくない熱損傷を防止することができる。
あるいは、前記病巣細胞内において、複数分子のイオン化によってプラズマが発生し、前記病巣細胞を形成する膜が破壊される。さらに、前記パルス・レーザ光照射によって、前記病巣細胞内の分子の相互作用によるイオン化がカスケード的に誘起されることによってプラズマが発生する。これによって光エネルギーの吸収が大きく増加し、病巣細胞を効果的に破壊することができる。
前記制御部は、前記病巣細胞に照射されているパルス・レーザ光のピーク・エネルギーが、10KW以上であるように前記レーザ光源を制御することが好ましい。パルス・レーザ光のピーク・エネルギーが、20KW以上であることがさらに、好ましい。これによって、細胞内分子のイオン化を効果的に誘起することができる。
前記制御部は、前記病巣細胞に照射されているパルス・レーザ光のパルス幅が、10ps以下であるように、前記レーザ光源を制御することが好ましい。パルス・レーザ光のパルス幅が、1ps以下であることがさらに好ましい。これによって、他細胞への熱損傷を抑制し、細胞内分子のイオン化を効果的に誘起することができる。
前記光学手段はパルス・レーザ光を伝送する光ファイバを備え、前記制御部は、前記レーザ光源から出力されるパルス・レーザ光のパルス幅が、1ps以上10ps以下であるように制御することが好ましい。これによって、光ファイバを使用した場合にも、細胞内分子のイオン化を効果的に誘起することができる。
前記制御部は、前記病巣細胞に照射されているパルス・レーザ光の波長が、700nm以上900nm以下であるように、前記レーザ光源を制御することが好ましい。パルス・レーザ光の波長が、750nm以上850nm以下であることがさらに好ましい。これによって、細胞内分子のイオン化を効果的に誘起することができる。
本発明の第2の態様は、パルス・レーザ光を照射することによって、病巣細胞を破壊する、病巣細胞の破壊方法であって、前記病巣細胞のパルス・レーザ光を照射するステップと、前記病巣細胞内の複数分子を、多光子吸収を起因としてイオン化するステップと、前記複数のイオン化した複数の分子を有する病巣細胞の光吸収によって、当該病巣細胞を破壊するステップと、を備える。この構成を有することによって、病巣細胞を効果的に選択破壊可能である。
本発明によれば、病巣部を効果的に治療することができる治療装置を提供することができる。
以下に、本発明を適用可能な実施の形態が説明される。以下の説明は、本発明の実施形態を説明するものであり、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。説明の明確化のため、以下の記載は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、当業者であれば、以下の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能であろう。
図1は、本発明の実施形態に係るレーザ治療装置100の概略構成を示すブロック図である。本形態のレーザ治療装置100は癌細胞などの病巣細胞にパルス・レーザ光を照射し、病巣細胞内分子の多光子吸収を引き起こす。多光子吸収によって細胞内分子がイオン化し、病巣細胞は選択的に破壊される。多光子吸収過程は、分子が2以上の複数個の光子を同時に吸収して、電子状態が励起される過程である。病巣細胞に所定条件においてレーザ光を照射することによって、病巣細胞内の分子がイオン化し、病巣細胞を選択的に破壊、治療することができる。本形態の治療装置は、様々な病巣細胞の治療に適用することができるが、癌細胞の治療に特に好適である。
図1において、レーザ治療装置100は、病巣細胞にレーザ照射を行うレーザ照射系、病巣部を照明する照明系、および、病巣部を観察する観察系を備えている。使用者は、照明系によって照明された病巣部を観察系によって観察しながら、病巣細胞をレーザ照射系によって選択的に治療することができる。レーザ照射系は、レーザ光源101、レーザ光源101からの光を集光する集光レンズ102、光ファイバを複数本束ねたライト・ガイド・ファイバ103、及び、病巣細胞にレーザ光を集光する集光レンズ104を備えている。レーザ光源101は、病巣細胞をイオン化によって選択的に破壊できる条件でのレーザ光を出力できるものが使用される。
好ましいレーザ光源101は、mode locked Ti:Sapphireレーザである。mode locked Ti:Sapphireレーザは、出力レーザ光の特性、あるいは、その制御の観点から本形態のレーザ光源として好適である。レーザ光源101から所定条件において出力されたパルス・レーザ光は、集光レンズ102によって集光され、ライト・ガイド・ファイバ103に入射する。パルス・レーザ光はライト・ガイド・ファイバ103によって伝送され、集光レンズ104に入射する。パルス・レーザ光は集光レンズ104によって病巣部内150のターゲットとなっている病巣細胞に集光される。
照明系は、照明用光源111、ライト・ガイド・ファイバ112、及び照明用レンズ113を備えている。照明用光源111はキセノンランプなどの照明用ランプ114及び集光用のレンズ115を有している。ライト・ガイド・ファイバ112は光ファイバを複数本束ねて形成され、照明用光源111からの光を病巣部150へ伝送する。照明用レンズ113は、ライト・ガイド・ファイバ112の先端部に配置され、病巣部150を広範囲に照明する。照明用ランプ114からの光は集光レンズ115によって集光され、ライト・ガイド・ファイバ112に入射する。照明光はライト・ガイド・ファイバ112によって伝送され、照明用レンズ113に入射する。照明用レンズ113は入射した光を拡散し、病巣部150を広く照射する。
本形態の観察系は、ファイバ・スコープを使用している。観察系は、物体の像を結像させる対物レンズ121、対物レンズ121によって形成された像を系の後部へ伝送する像伝送系としてのイメージ・ガイド・ファイバ122、及び、イメージ・ガイド・ファイバ122によって伝送された光学像を電気信号に変換し、画像表示を行う画像処理装置123を有している。画像処理装置123は病巣部150の様子をモニタに映し出すことによって、病巣部150の観察を可能とする。あるいは、病巣部150の画像データを光/磁気記録再生装置(不図示)に記録することができる。
画像処理装置123は、イメージ・ガイド・ファイバ122からの光信号を電気信号に変換する撮像部124、変換された電気信号について所定の信号処理を行う画像処理部125、及び病巣部150の画像を表示するディスプレイを備えるモニタ部126を有している。撮像部124は、CCD(Charge Coupled Device)カメラ、CMOSセンサ、あるいはフォトダイオード・アレイなどを使用することができる。撮像部124は、イメージ・ガイド・ファイバ122からの入射光を検出し、強度に従って入射光をビデオ信号に変換し、画像処理部125にビデオ信号を送信する。
画像処理部125は受信したビデオ信号について必要な画像処理を行い、画像表示のための信号をモニタ部126に送信する。モニタ部126は、撮像された画像をディスプレイ上に表示する。尚、画像処理装置123に代えて、もしくは加えて、接眼装置を使用することができる。観察系は、レーザ治療装置100の利用形態に応じて、リレーレンズを利用した硬性内視鏡や、固体撮像素子と電気信号線を利用したビデオ内視鏡など、他のタイプの観察系を利用することができる。また、レーザ治療装置100は、レーザ照射用ライト・ガイド・ファイバ103、照射用ライト・ガイド・ファイバ112及び観察系イメージ・ガイド・ファイバ122の各先端部へ、洗浄水、洗浄エアーを送給/排出し、各ファイバの先端部を洗浄する構成とすることができる。
130は制御部であって、レーザ治療装置100の各部へ制御信号を送信することによって、レーザ治療装置100を制御する。制御部130は入出力部を有する使用者・インターフェースを備え、使用者からの入力あるいは予め登録された登録データに応じて、各部を制御するための設定、及び、動作時の各部の制御を行うことができる。例えば、制御部130はレーザ光源101からのレーザ光出力制御、あるいは出力条件の設定及び制御を行うことができる。また、照明用光源111のON/OFFあるいは光量制御、もしくは、画像処理装置123の画像データの編集、制御などを、制御部130を介して使用者は行うことができる。使用者は、モニタ部126に表示された画像を参照することによって、制御部130を介して、パルス・レーザ光の照射位置の設定あるいは、パルス・レーザ光の照射などを操作することによって、病巣部の治療を行うことができる。
図2は、病巣部150におけるレーザ光照射の様子を示す概念図である。パルス・レーザ光は集光レンズ104によってターゲットの病巣細胞210に集光される。本形態のレーザ治療装置100は、多光子吸収を利用して病巣細胞210を破壊する。非線形光学効果である多光子吸収は、超短パルス・レーザを用いることで引き起こすことができる。線形光学効果である1光子吸収において、レーザ光が照射された部位全体が光エネルギーの吸収を行う。これに対し、非線形光学効果である多光子吸収は、その発生確率が光強度の累乗に比例するため、パルス・レーザ光の集光部位においてのみ多光子吸収が引き起こされる。
この特性を利用することによって、病巣細胞210にパルス・レーザ光を集光することによって、選択的に、病巣細胞210を破壊することができる。集光部位手前あるいは集光部後部など、レーザ光が照射されている周辺細胞部分は、レーザ光の光子密度が小さいために、細胞内分子による多光子吸収は誘起されない。これは、従来のYAGレーザを利用したレーザメスのように、病巣細胞手前の細胞を含む周辺の健常細胞を同時に熱損傷によって破壊してしまうレーザ治療装置と比較して、大きな利点である。
本形態のレーザ治療装置100は、病巣細胞内の分子をイオン化することによって、病巣細胞を破壊する。図3は、分子のイオン化によって、病巣細胞が破壊される過程を説明するための図である。病巣細胞内において、水やたんぱく質の分子が、多光子吸収によってパルス・レーザ光のエネルギーを吸収してイオン化する。以下において、図3及び図4を参照して、水分子を例としたイオン化過程及びそれによる細胞破壊の過程を説明する。
パルス・レーザ光照射による水分子のイオン化の一つの過程は、多光子イオン化による直接的なイオン化である。連続発振レーザを用いた場合、1光子吸収では自由電子が発生するには十分な光子密度が得られない。一方、パルス・レーザ光が集光され、光子密度が所定値以上となると、多光子吸収が誘起される。多光子吸収によるイオン化は、超短パルス・レーザ照射によるイオン発生の鍵となっている。図3(a)は、多光子吸収による一つの水分子のイオン化の過程を示している。図3(a)に示すように、n状態の水分子は、多光子吸収によってパルス・レーザ光のエネルギーを吸収し、束縛電子の一つが状態遷移を起こし、水分子はσ*状態に遷移する。
非共有電子対の束縛電子の一つが光子エネルギーを吸収して準自由電子となることによって、水分子はイオン化する。電子の基底状態と自由電子状態の遷移は多くのエネルギーを必要とするため、通常近赤外域の波長を用いた場合、1光子吸収では起こらない。しかし、図4に示すように、蛍光発光や無輻射遷移時間ほどの短い時間に、瞬間的に複数の光子が分子によって吸収されると、分子の基底状態にある電子はバンドギャップに相当するエネルギーを得て、準自由状態に遷移する。準自由状態の電子は分子には強く結合していない状態となる。
このため、準自由状態の電子は、図3(b)に示すように、逆制動放射と呼ばれる過程によって、1光子吸収を繰り返す。準自由状態の電子は、逆制動放射によって電場から十分な運動エネルギーを得て、隣接する束縛電子と衝突することによって、束縛電子のインパクト・イオン化を誘起し、隣接束縛電子を準自由状態に励起する。このように、励起された分子とされていない分子の相互作用によって、イオン化が進む。図4に示すように、準自由電子が逆制動放射によって1光子吸収を繰り返し、k個の光子を吸収して総エネルギー量がエネルギー・バンド・ギャップの大きさになると、隣接する束縛電子とエネルギーを共有することによって、新たに準自由電子を生成することができる。
多光子イオン化による準自由電子の生成と、インパクト・イオン化による準自由電子の生成がレーザ照射によって繰り返し誘起される。特に、図3(c)及び図4に示すように、多数の準自由電子がインパクト・イオン化を繰り返すことによって、カスケード的にイオン化が誘起され(カスケード・イオン化)、多数の準自由電子が生成される。カスケード・イオン化によって、準自由電子は累乗に従って増加する。多光子吸収は準自由電子が存在しなくとも誘起される。多光子イオン化は、レーザ・パルスの続く間続き、カスケード・イオン化の「種」として働く準自由電子を生成する。
この2つのイオン化過程はレーザ・パルスが照射されている間起こり、イオン化過程はレーザのパルス幅や細胞内分子の物理的性質に依存する。逆制動放射による吸収は、他の粒子の存在に依存して発生する。これは、カスケード・イオン化過程は粒子と粒子とが衝突する平均時間と同じ程度の時間を必要とすることと関係する。フェムト秒レーザなどの短い時間のレーザ照射が起こる場合、細胞内においては多光子吸収が支配的に発生する。これに対し、ピコ秒レーザなどの比較的長いレーザ照射の場合、カスケード・イオン化が支配的になる。
これらイオン化過程によってレーザ集光部位の準自由電子密度が大きく増加し、準自由電子が所定密度以上になると、レーザ光の集光部位においてプラズマが発生する。プラズマが形成されると、膨大なエネルギー吸収係数の増加を導き、レーザ光の電場から分子への急速なエネルギーの移動を引き起こす。この光誘電破壊によってタンパク質の分子結合が破壊され、細胞膜もしくは細胞内小器官が破壊される。以上の過程によって、病巣細胞を選択的に破壊することができる。
プラズマの発生に必要な自由電子密度は、光の波長によって変化するが、およそ、1021cm−3(フェムト秒・ピコ秒レーザ)、1020cm−3(ナノ秒レーザ)である。このように、本形態の細胞破壊過程は、熱による病巣細胞破壊と異なり、分子のイオン化に基づいて誘起されるものであるので、周辺細胞への熱損傷を引き起こすことなく、効果的に病巣細胞の選択破壊が可能となる。あるいは、分子のイオン化は、特定の薬剤や色素を要することなく誘起することができる点で治療装置として優れた特徴を備えている。
本形態のレーザ治療装置100は、病巣細胞を選択的にイオン化することで細胞破壊を行う一方、他の細胞の不要な熱損傷を防ぐことができるように制御される。レーザ治療装置100は、レーザ光として近赤外光を使用し、好ましくは約700−約900nmの波長の光を利用する。さらに好ましくは、約750−850nmの波長の光を使用する。図5は、水の光吸収強度と光の波長のおよその関係を示している。図5に示すように、水は、800nm近傍において光の吸収が低下する特性を備えている。このため、上記波長範囲のレーザ光を使用することによって、周辺細胞による望ましくない光エネルギーの吸収及び熱損傷を抑制することができ、病巣細胞の選択的破壊を効果的に行うことができる。
レーザ治療装置100は、パルス・レーザ光を使用する。連続発振レーザ光と異なり、パルス・レーザ光によって局所的にエネルギー密度を大きくすることができるため、多光子吸収によって誘起されるイオン化によって、病巣細胞を3次元的に選択破壊することが可能となる。パルス・レーザ光を使用することによって、レーザ光が集光された病巣細胞を効果的に選択して破壊することができる。パルス・レーザ光の平均強度は数十〜数百mWだが、集光部においては、非常に強度の大きい光を得ることができる。
パルス・レーザ光のピーク強度は、集光レンズ104下において、好ましくは10kW以上である。さらに好ましくは、パルス・レーザ光のピーク強度は15kW以上、最も好ましくは20kW以上である。細胞内分子のイオン化過程は、パルス・レーザのピーク強度に大きく依存する。そのため、パルス・レーザ光のピーク強度制御は重要である。イオン化によって効果的に細胞を破壊するため、上記範囲のパルス・レーザ光が利用される。
多光子イオン化は、3光子以上の光子吸収を行うことが好ましい。3光子以上の多光子吸収によって、イオン化のための一光子の持つエネルギーを低くすることができる。こにより、試料の1光子吸収によるダメージを大きく低減することが可能となる。
レーザ治療装置100は、一つのレーザ・パルスによって、病巣細胞を破壊することができる。病巣細胞に複数回のパルス・レーザ光を照射し、細胞が破壊された後にも続けてパルス・レーザ光を照射することは、実質的な問題が生じない範囲で可能である。しかし、不要なレーザ光の照射は周囲の細胞への熱的影響を発生することになるので、レーザ光照射時間は短くすることが好ましい。好ましくは、1回のパルス・レーザ光照射が病巣部の病巣細胞に適用される。
パルス・レーザ光のパルス幅は、集光レンズ104下において、10ps以下であることが好ましい。さらに好ましくは、1ps以下のパルス幅を有するレーザが使用される。病巣細胞以外の他の細胞への熱的影響などを抑制するためにも、パルス幅の小さいパルス・レーザ光を使用することが必要とされる。病巣細胞を効果的にイオン化し、さらに、周囲細胞へ不要な損傷を与えないためには、大きなピーク強度と、小さいパルス幅を有するパルス光を照射することが必要とされる。
このため、パルス幅は上記のような値を有することが好ましい。尚、本形態のように、光ファイバ103を使用してパルス・レーザ光を伝送する場合、レーザ光源101からの出力光は、そのパルス幅が約1−10psであるように制御されることが好ましい。フェムト秒パルス光は、ファイバ内を伝播することによってパルス幅がピコ秒に広がってしまうため、必要なレーザ・パワーをえることができなくなるからである。尚、レーザ出力は、病巣細胞のイオン化による破壊を誘起するために、対象細胞あるいは使用装置に従って、上記条件に基づいた適切な条件が選択される。
以上のように、本形態のレーザ治療装置は、細胞内分子のイオン化によって、病巣細胞を3次元的に、細胞レベルでの選択的破壊を行うことができる。イオン化による細胞破壊を利用することによって、他の細胞への熱損傷がなく、細胞レベルの治療装置として、大きな利点を備えている。
レーザ治療装置の概略構成を示すブロック図である。 病巣部へのレーザ光の照射の様子を示す概念図である。 細胞内分子のイオン化過程を説明する図である。 細胞内分子のイオン化過程のエネルギー関係説明する図である。 水の光吸収強度と波長との関係を説明する図である。
符号の説明
100 治療装置、101 レーザ光源、102 集光レンズ、103 ライト・ガイド・ファイバ、104 集光レンズ、111 照明用光源、112 ライト・ガイド・ファイバ、113 照明用レンズ、114 照明用ランプ、115 集光用のレンズ、121 対物レンズ、122 イメージ・ガイド・ファイバ、123 画像処理装置、124 撮像部、125 画像処理部、126 モニタ部、130 制御部、150 病巣部

Claims (11)

  1. 病巣細胞を破壊するレーザ治療装置であって、
    パルス・レーザ光を出力するレーザ光源と、
    前記パルス・レーザ光を病巣細胞に導く光学手段と、
    前記レーザ光源を制御する制御部と、を備え、
    前記制御部は、前記パルス・レーザ光が照射される前記病巣細胞内において、分子が多光子吸収を起因としてイオン化することによって前記病巣細胞が破壊されるように、前記レーザ光源を制御し、レーザ光の1パルスで前記病巣細胞を破壊するレーザ治療装置。
  2. 前記病巣細胞内において、複数分子のイオン化によってプラズマが発生し、前記病巣細胞を形成する膜が破壊される、請求項1に記載のレーザ治療装置。
  3. 前記パルス・レーザ光照射によって、前記病巣細胞内の分子の相互作用によるイオン化がカスケード的に誘起されることによってプラズマが発生する、請求項に記載のレーザ治療装置。
  4. 前記制御部は、前記病巣細胞に照射されているパルス・レーザ光のピーク・エネルギーが、10KW以上であるように前記レーザ光源を制御する、請求項に記載のレーザ治療装置。
  5. 前記制御部は、前記病巣細胞に照射されているパルス・レーザ光のピーク・エネルギーが、20KW以上であるように前記レーザ光源を制御する、請求項に記載のレーザ治療装置。
  6. 前記制御部は、前記病巣細胞に照射されているパルス・レーザ光のパルス幅が、10ps以下であるように、前記レーザ光源を制御する、請求項1、4又は5に記載のレーザ治療装置。
  7. 前記制御部は、前記病巣細胞に照射されているパルス・レーザ光のパルス幅が、1ps以下であるように、前記レーザ光源を制御する、請求項1、4又は5に記載のレーザ治療装置。
  8. 前記光学手段はパルス・レーザ光を伝送する光ファイバを備え、
    前記制御部は、前記レーザ光源から出力されるパルス・レーザ光のパルス幅が、1ps以上10ps以下であるように制御する、請求項1、4又は5に記載のレーザ治療装置。
  9. 前記制御部は、前記病巣細胞に照射されているパルス・レーザ光の波長が、700nm以上900nm以下であるように、前記レーザ光源を制御する、請求項1、6、7、8に記載のレーザ治療装置。
  10. 前記制御部は、前記病巣細胞に照射されているパルス・レーザ光の波長が、750nm以上850nm以下であるように、前記レーザ光源を制御する、請求項1、6、7、8、又は9に記載のレーザ治療装置。
  11. 前記多光子吸収は、3以上の光子を同時に吸収する、請求項1、6、7、8、9、又は10に記載のレーザ治療装置。
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