JP4242132B2 - 透明帯電防止板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば大型モニター画面などに装着する帯電防止加工された透明プラスチック板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
プラスチックの表面に埃などが付着しないようにするために、プラスチックの表面に電気伝導性材料を用いて電気抵抗値の低い層を形成する方法が採用されている。
しかしながら、このような電気伝導性の材料は、光透過性が低かったり、逆に光透過性が高い場合であっても、高屈折率に起因して反射率が高く一般には実用レベルに達していない。例えば、電気伝導性の材料として、酸化物を使用することができるが、このような酸化物には、透明性の高いものが少なくないが、屈折率が高いため反射率も高くなりがちである。さらに、電気伝導性の酸化物材料としてITO膜があるが、ITOはたいへん高価でかつ屈折率が大きく、帯電防止膜の形成材料としては適していない。またITOほど高い電気伝導率も必要でない。
【0003】
このような帯電防止膜には、帯電防止膜の反射率が低いこと、これに加えて表面硬度が高く、埃などの拭き取りなどによって傷がつかないこと、さらに、埃などを吸塵しないように、この帯電防止膜の表面電気抵抗が1012Ω/cm以下であることが最低限必要な特性である。
しかしながら、現在のところ、上記のような点を全て満足するような帯電防止膜を有する帯電防止板であって、低コストで製造可能であり、しかも恒久的に帯電防止性能を維持することができる帯電防止板は存在しない。
【0004】
【発明の目的】
本発明は、反射率が低く、表面硬度が高く、透明性に優れた透明帯電防止板およびその製造方法を提供することを目的としている。
【0005】
【発明の概要】
本発明の透明帯電防止板は、導電性酸化物を形成可能なフルオロ金属錯化合物が溶存している水溶液から、フッ素補足剤を混合してから30分以内に析出した、酸化チタン、酸化スズおよび酸化インジウムよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の金属酸化物( A )と、酸化ケイ素、酸化 ジルコニウム、酸化タンタルおよび酸化ニオブよりなる群から選ばれる少なくとも 1 種類の金属酸化物( B )とを含有する複数種類の金属酸化物からなり、金属酸化物( A )の含有率と金属酸化物( B )の含有率(モル%比,( A B ))が、99:1〜30:70の範囲内にある透明導電性酸化物膜が、透明プラスチック基板表面に形成されていることを特徴としている。
また、本発明の透明帯電防止板の製造方法は、複数のフルオロ金属錯化合物が溶存している水溶液と、フッ素捕捉剤が溶存している水溶液とを混合し、該混合水溶液からフルオロ金属錯化合物に対応する金属 酸化物を析出させる際に、該混合水溶液中に透明プラスチック基板を浸漬して、該透明プラスチック基板の表面に、フッ素補足剤を混合してから30分以内に析出する金属酸化物からなる透明導電 性酸化物膜を形成することを特徴としている。
【0006】
本発明の透明帯電防止板は、透明プラスチック基板表面に、特定の金属酸化物を水溶液から析出させて透明導電性酸化物を形成しているため、帯電防止膜の表面電気抵抗が1012Ω以下であると共に、帯電防止膜の反射率が低く、透明性に優れ、この帯電防止膜の表面硬度が高く、埃などの拭き取りなどによって傷がつきにくいという特性を有する。
【0007】
大型モニター画面など表面は、ブラウン管により発生する電子線や表面の拭き取り摩擦などによって容易に帯電し、埃が付着しやすい。こうした埃の付着を防止するためには、表面の静電電位を下げる必要があり、例えば表面に電気伝導性の薄膜を形成した透明プラスチック板などが使用されている。このような電気導電性薄膜は、例えば金属材料で形成することもできるが、このような金属材料を用いた場合、プラスチック板の透明性が損なわれてしまう。また、界面活性剤を塗布して表面に電気導電性薄膜を形成することもできるが、こうした薄膜は、恒久性および安定性が乏しい。
【0008】
モニター画面への埃の付着を防止するための帯電防止板には、静電気を効率よく放電させるために電気伝導性が必要になると共に、優れた透明性が必要であり、さらに、耐傷性が必要になる。
このような特性を発現させることができる素材として透明導電性酸化物があるが、このような透明導電性酸化物であるITOはコストが高く、大型モニター画面の帯電防止部材のように汎用性の高い部材にそのまま使用することはできない。また、帯電防止剤として使用する場合、ITOほどの電気導電性は必ずしも必要ではなく、一般には1010〜1012Ω程度の電気導電性があれば足りる。さらに、ITOは、素材自体の屈折率が高いために、ITO薄膜の反射率が高くなり、透明性が低くなりやすく、また、ITOは硬度がそれほど高くはなく、耐傷性にも問題がある。
【0009】
こうした状況下に種々の酸化物を用いて薄膜を形成してこの薄膜の電気伝導性および透明性について検討したところ、酸化スズ、酸化インジウムまたは酸化チタン(アナターゼ)の内の少なくとも一種類の酸化物を用いることにより、電気伝導性に優れた酸化物膜を形成することができるとの知見を得た。しかしながら、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタンを従来の水溶液析出法で透明プラスチック基板表面に、これらの析出物の析出させてもこれらの酸化物の屈折率が高いために、それほど高い透明性を発現させることは困難であると共に、これらの酸化物の膜自体の耐久性も高くはなく、例えばワイヤーウールなどで擦っただけでも容易に傷がついてしまう。
【0010】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものである。
そこで、まず上記のような酸化物に、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化ジルコニウムおよび酸化ニオビウムの内のいずれかの酸化物を複合させることにより、酸化物複合膜の耐擦傷性を向上させることが可能となる。
例えば複数のフルオロ金属錯化合物を溶解させた水溶液と、フッ素捕捉剤としてホウ素化合物を溶解させた水溶液とを用意し、両液を一度に混合攪拌した後、反応性の高い水溶液中に直ちに透明プラスチック基板を浸漬し、30分以内、好ましくは10分以内に、浸漬した透明プラスチック基板の表面に析出した酸化物複合体によって膜形成をはかる。
【0011】
このように本発明においては、反応性を有する複数の化学種を水溶液中で反応させることによって成膜が開始される。
一般には単一種或いは複数種のフルオロ錯化合物塩を水溶液中に溶解させて作成した溶液と、フッ素捕捉剤としての酸化ホウ素或いはホウ酸を溶解させた水溶液とを、所定の温度下で混合することによって開始される。
即ち両溶液の混合攪拌直後の高い反応性を利用し、比較的短時間で緻密な球形微粒子集積体より構成される酸化物複合膜を形成することができる。
【0012】
反応初期の球形微粒子は、数ナノ〜数十ナノメートルクラスの比較的径の揃ったものから構成され、これらのほぼ単一層からなる形成膜は、酸化物複合物の本来有する屈折率から推定される反射率よりも、遥かに低い反射率を示す。
これらを利用することによって、酸化物複合膜本来の帯電防止性に加えて反射防止機能,耐擦傷性機能を有する多機能性酸化物複合膜をプラスチック基材上にコートすることが可能となる。
【0013】
【発明の具体的な説明】
次に本発明の透明帯電防止板およびその製造方法について具体的に説明する。本発明の透明導電防止板は、透明プラスチック基板と、この表面に形成された透明導電性酸化物膜とからなる。
本発明の透明帯電防止板を構成する透明プラスチック基板は、透明性の高い合成樹脂からなり、このような合成樹脂の例としては、ポリアクリレート、ポリカーボネートおよび塩化ビニールを挙げることができる。このような合成樹脂からなる透明プラスチック基板の抵抗値は、通常は1013Ω以上、多くの場合1015Ω以上であり、このような透明プラスチック基板は絶縁体である。このような透明プラスチック基板の厚さに特に制限はないが、大画面モニターの帯電防止板として使用することから、その厚さは通常は0.1〜2.5mm、好ましくは0.5〜1.5mmである。
【0014】
このような透明プラスチック基板は、その表面がアクリル系或いはシリコン系ハードコート処理されたものであることが好ましい。
このような透明プラスチック基板の波長589nmの可視光線の屈折率は、通常は1.40〜1.60である。
上記のような透明プラスチック基板表面に形成される透明導電性酸化物膜は、電気導電性を有し、製膜した際の膜の反射率の低い酸化物から形成することができれば望ましい。電気伝導性酸化物として、酸化チタン(アナターゼ)、酸化スズおよび酸化インジウムよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の金属酸化物(A)を挙げることができる。このような金属酸化物(A)は、単独の金属の酸化物であってもよいし、さらに複数の金属の酸化物である酸化物複合体であってもよい。
【0015】
このような金属酸化物(A)は一般に屈折率が高く、しかも柔らかなものが多い。そこで、本発明の透明帯電防止板では、透明導電性酸化物膜を形成する金属酸化物として、上記の金属酸化物(A)に加えて、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化タンタルおよび酸化ニオブよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属酸化物(B)を複合させる。これらの金属酸化物(B)は単独であるいは組み合わせて用いることができる。これらの金属酸化物(B)のうち、酸化ジルコニウム、酸化タンタルは、膜の硬度を高くすることができ、酸化ケイ素は、膜の屈折率を低下させることができる。
【0016】
特に本発明では、金属酸化物(A)として、酸化スズを用い、金属酸化物(B)として酸化ケイ素および酸化タンタルを使用することが好ましく、また、金属酸化物(A)として酸化チタン(アナターゼ)を用い、金属酸化物(B)として、酸化ジルコニウムおよび酸化タンタルを使用することが好ましい。
透明導電性酸化物膜中において、上記金属酸化物(A)と金属酸化物(B)とは、原子比で通常は99:1〜30:70の範囲内、好ましくは99:1〜70:30の範囲内、特に好ましくは99:1〜85:15の範囲内の量で使用される。このような量比で金属酸化物(A)と金属酸化物(B)とを使用することにより、透明導電性酸化物膜の特性のバランス、即ち、導電性、屈折率、透明性、耐擦傷性のバランスが非常に良くなる。
【0017】
この透明導電性酸化物膜は、好適には上記の金属酸化物(A)と金属酸化物(B)との複合体である酸化物微細粒子が多数集合した集合体が面方向に連結されて形成される膜状物である。
このような透明導電性酸化物膜の平均の厚さは通常は5〜400nm、好ましくは10〜200nmの範囲内にある。このように透明導電性酸化物膜の平均厚さを設定することにより、この膜を透過する際に光が殆ど減衰しない。
【0018】
このような透明導電性酸化物膜の波長589nmの可視光線の屈折率は、通常は1.80〜2.50であり、この透明導電性酸化物膜の本来の屈折率は、基板である透明プラスチック基板の屈折率よりもかなり高い値を示す。
また、上記のような酸化物複合体からなる透明導電性酸化物膜の抵抗値は、通常は1012Ω以下、好ましくは1010〜1012Ωの範囲内にあり、このような抵抗値を有する透明導電性酸化物膜を有する本発明の透明帯電防止板では、静電気などは放電される。
【0019】
このような本発明の透明帯電防止板の製造に際しては、フルオロ金属錯化合物(A')として、6フッ化チタニウムアンモニウム((NH4)2TiF6)、6フッ化スズアンモニウム((NH4)2SnF6)および6フッ化インジウムアンモニウム((NH4)2InF6)よりなる群から選ばれる少なくとも一種類のフルオロ金属錯化合物(A')と、6フッ化ケイ素アンモニウム((NH4)2SiF6)、6フッ化ジルコニウムアンモニウム((NH4)2ZrF6)、7フッ化タルタンアンモニウム((NH4)2TaF7)および7フッ化ニオビウムアンモニウム((NH4)2NbF7)よりなる群から選ばれる少なくとも一種類のフルオロ金属錯化合物(B')とを含有する水溶液を調製する。このフルオロ金属錯化合物を含有する水溶液中において、フルオロ金属錯化合物の濃度は、それぞれ独立に、通常は10-4〜10-1mol/L、好ましくは10-3〜10-1mol/Lの範囲内に設定される。特に本発明では6フッ化スズアンモニウムと6フッ化ケイ素アンモニウムと7フッ化タンタルアンモニウムとの組み合わせ、6フッ化チタンアンモニウムと6フッ化ジルコニウムアンモニウムと7フッ化タンタルアンモニウムとの組み合わせが好ましい。特に本発明では、上記フルオロ金属錯化合物(A'+B')が溶存している水溶液中におけるフルオロ金属錯化合物(A')のモル濃度とフルオロ金属錯体(B')のモル濃度との比(A':B')は、99:1〜40:60の範囲内にあることが好ましい。
【0020】
これとは別に、フッ素捕捉剤を含有する水溶液を調製する。ここで使用するフッ素捕捉剤としては、ホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸ナトリウム等のホウ素化合物を挙げることができる。このフッ素捕捉剤を含有する水溶液中におけるフッ素捕捉捕捉剤の適宜設定することができるが、本発明では、この濃度を通常は10-2〜1mol/Lの範囲内、好ましくは10-1〜0.5mol/Lの範囲内に設定する。
【0021】
このフッ素捕捉剤を含有する水溶液は、上記フルオロ金属錯化合物が溶存している水溶液中のフッ素原子の少なくとも一部を捕捉してこのフルオロ金属錯化合物を溶存している水溶液から金属酸化物を析出させることができる量で使用される。通常は、フルオロ金属錯化合物が溶存している水溶液中のフッ素原子1モルに対して、ホウ素原子の量が通常は5〜20モル、好ましくは10〜15モルの範囲内になるようにホウ素化合物が溶存している水溶液を添加する。
【0022】
このようにしてホウ素化合物が溶存している水溶液を混合することにより、フルオロ金属錯化合物が溶存している水溶液中のフッ素原子の少なくとも一部が捕捉 され、この水溶液は反応性が高い状態となり、フルオロ金属錯化合物を形成していた金属がナノメートルサイズの酸化物微粒子として析出する。
本発明では、フルオロ金属錯化合物が溶存している水溶液とフッ素捕捉剤が溶存している水溶液とを混合することにより高い反応性を有する状態を利用して、混合から30分以内、好ましくは3分〜30分以内、より好ましくは3分〜10分以内に透明プラスチック基板の表面に金属酸化物を析出させる。この析出反応は、両液を混合すれば開始されるので、両液を混合後速やかに透明プラスチック基板を混合液中に浸漬し、好ましくは30分間以内、特に好ま しくは3〜30分間、さらに好ましくは3〜10分間透明プラスチック板をこの混合液中に留め置く。このようにフッ素捕捉反応が開始することにより、高い反 応性を有する水溶液中で析出した金属酸化物は、その粒子径がナノサイズであり、透明プラスチック基板表面に緻密な薄膜を形成する。なお、上記混合液は30 分間以上放置しても金属酸化物の析出が続くが、このように反応開始から30分間を超えて析出した金属酸化物を用いたとしても、ナノサイズの酸化物微粒子からなる緻密な透明導電性薄膜を形成するのが著しく困難になり、得られる透明帯電防止板の特性も良好ではない。
【0023】
上記のような金属酸化物を析出させる際の水溶液の温度に特に制限はないが、30〜60℃程度に加温した水溶液を使用することにより、比較的短時間で緻密な薄膜を形成することができる。
なお、30分以上経過しても反応は続き反応液は白濁し続けるが、このように反応開始から30分間を超えて析出した金属酸化物を用いたとしても、ナノサイズの酸化物微粒子からなる緻密な透明導電性薄膜を形成するのが著しく困難になり、30分を経過した後に透明プラスチック基板に導電性酸化物を析出させても、良好な帯電防止性、透明性、耐擦傷性を有する薄膜を形成することはできない。
【0024】
即ち、本発明で利用する製膜技術は、化学反応開始直後の著しく高い反応性を析出の駆動力として利用し、形成され始めた金属酸化物のナノ粒子を透明プラスチック基板表面に緻密に接合配列させることによって、透明プラスチック基板の表面にナノサイズ球形微粒子の集積体からなる酸化物複合体の超薄膜を形成するものである。このようにして形成された超薄膜は、厚膜には見られないような特異的な性質を示すようになる。即ち、透明プラスチック基板が本来有する硬度を超薄膜に有利に作用させることができるばかりか、超薄膜自体の本質的な硬さもあいまって、超薄膜の特性を著しく増大することができる。
【0025】
一般には電気伝導性酸化物は高屈折率を有するが、これらの高屈折率酸化物もこれを径100nm程度の大きさに微粒子化し、基材表面に一層コートできればこれら本来の反射率を10分の1程度にまで低減できることが判っている。実際上 遠藤、小野らはテレビのブラウン管の表面に約100nmのシリカ微粒子一層でコートし、通常のガラス表面における4.2%の反射率を10分の1程度まで押さえることに成功した。(粉体工学誌32、170(1995))
一方膜自体を超薄膜化することで本来厚膜では得られない機械的強度をも発現させることが可能になる。
【0026】
しかしながら従来法では、室温下でこのような微粒子超薄膜をプラスチックのような基材上に成膜することは出来なかった。そこで本発明による水溶液中で複数種のフルオロ金属錯化合物にフッ素捕捉剤を反応させ早期に金属酸化物を析出させる方法によって、これらを実現することが可能となった。
即ち従来法による成膜技術によるよりも、緻密でかつ薄く機械的強度に富んだ膜を室温下でプラスチック表面にコートすることができる。
【0027】
例えば、従来の水溶液法で作成した酸化チタン主体の複合物の厚膜は、付着強度はそこそこ良好であるが、一般に柔らかく、ワイヤーウールで擦ると容易に傷が付くが、本発明の方法によって製造した超薄膜は同一の酸化チタン主体であるにも拘わらず、ワイヤーウールで擦っても殆ど傷は付かず、非常に耐擦傷性に優れている。
【0028】
しかも、このようにして形成された超薄膜である透明導電性酸化物膜は、抵抗値が1012Ω以下、好ましくは1010〜1012Ωの範囲内にあり、上記のような超薄膜であっても優れた帯電防止性を有する。
このようにして形成された透明導電性酸化物膜は、さらに耐久性を向上させるために、通常は50〜60℃の温度で15分〜180分程度乾燥処理する。
【0029】
本発明の透明帯電防止板は、上記のような構成を有するが、その目的を逸しない範囲でさらに改変することができる。
例えば、透明プラスチック基板として、予め表面に反射防止膜を形成してある透明プラスチック基板を使用し、この反射防止膜付き透明プラスチック基板の表面に、上述のようにして透明帯電防止膜を形成することにより、より帯電防止膜の反射率を低く抑えることができる。
【0030】
このように本発明の透明帯電防止板は、優れた帯電防止性能を有し、かつ低反射率で、高耐擦傷性を有しており、大型画面テレビモニター用の帯電防止部材として有効に利用することができる。
【0031】
【発明の効果】
本発明の透明帯電防止板は、反射率が低く透明性に優れ、表面硬度が高く耐擦傷性に優れ、しかも表面に形成されている透明導電性酸化物膜の抵抗値は1012Ω以下であり、良好な電気伝導性を示し、埃などの静電気付着を防止することができる。
【0032】
このような透明帯電防止板は、フルオロ金属錯化合物が溶存している水溶液にフッ素捕捉剤を添加した直後の高い反応性の状態から金属酸化物を透明プラスチック基板表面に析出させることにより製造することができる。
【0033】
【実施例】
次に本発明の透明帯電防止板およびその製造方法について実施例を示して説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0034】
【実施例1】
基本成分が酸化スズであり、副成分が酸化ケイ素および酸化タンタルである透明導電性酸化物膜を有する透明帯電防止板帯電防止膜。
6フッ化スズアンモニウムを2.7g(1.00×10-2mol)、6フッ化ケイ素アンモニウムを0.3g(1.69×10-4mol)および7フッ化タンタルアンモニウムを0.1g(2.68×10-4mol)量り取り、それぞれを純水中に溶解した後混合して0.2リットルの第1水溶液を調製した。これとは別に、酸化ホウ素15g(2.16×10-1mol)を純水に溶解して0.8リットルの第2水溶液を調製した。この酸化ホウ素の量は、フルオロ金属錯化合物を溶存している水溶液中のフッ素原子1モルに対して1〜50モルに相当する。
【0035】
次いで、上記第1水溶液および第2水溶液を40℃に加温し、両者を混合してよく攪拌し、予めアクリル系或いはシリコン系ハードコート処理されたアクリル板(反射率:6%、表面抵抗値:1015Ω/cm)をこの混合液に速やかに浸漬した。
第1水溶液と第2水溶液との混合後、約2分後にこの混合液が白濁し始めた。アクリル板を混合から約4分で混合液から引き上げた。
【0036】
引き上げたアクリル板を純水で洗浄した後、約55℃で2時間乾燥させて、透明帯電防止板を製造した。
こうして製造した透明帯電防止板には、平均厚さが5〜100nmの透明導電性酸化物膜が形成されており、この透明導電性酸化物膜の組成は、金属換算で、酸化スズ80モル%、酸化ケイ素15モル%、酸化タンタル5モル%であった。この透明導電性酸化物膜中における酸化物(A)である金属スズと酸化物(B)である酸化ケイ素と酸化タンタルとの含有比率は、金属換算モル%比((A):(B))で、80:20であった。こうして製造した透明帯電防止板の反射率は、3%であり、外観上やや白っぽさは残るものの、この透明導電性酸化物膜の反射率はアクリル基板の反射率を超えるものではなかった。
【0037】
このようにして製造した透明帯電防止板の表面をワイヤーウールで擦ってみたが、傷つくことはなかった。
また、この透明帯電防止板の表面抵抗値は1011Ω/cmであり、この透明帯電防止板をナイロン製の布で充分擦ったが、紙の小片を吸い寄せるような帯電現象は見られなかった。
【0038】
【実施例2】
基本成分(A)が酸化チタンであり、副成分(B)が酸化ジルコニウムおよび酸化タンタルである透明導電性酸化物膜を有する透明帯電防止板帯電防止膜。
6フッ化チタンアンモニウムを2.5g(1.27×10-2mol)、6フッ化ジルコニウムアンモニウムを0.3g(1.25×10-3mol)および7フッ化タンタルアンモニウムを0.1g(2.86×10-4mol)量り取り、それぞれを純水中に溶解した後混合して0.2リットルの第1水溶液を調製した。これとは別に、酸化ホウ素15g(2.16×10-1mol)を純水に溶解して0.8リットルの第2水溶液を調製した。この酸化ホウ素の量は、フルオロ金属錯化合物を溶存している水溶液中のフッ素原子1モルに対して1〜50モルに相当する。
【0039】
次いで、上記第1水溶液および第2水溶液を40℃に加温し、両者を混合してよく攪拌し、予めハードコート処理されたアクリル板(反射率:6%、表面抵抗値:10-15Ω/cm)をこの混合液に速やかに浸漬した。
第1水溶液と第2水溶液との混合後、約3分後にこの混合液が白濁し始めた。アクリル板を混合から約7分で混合液から引き上げた。
【0040】
引き上げたアクリル板を純水で洗浄した後、約55℃で2時間乾燥させて、透明帯電防止板を製造した。
こうして製造した透明帯電防止板には、平均厚さが5〜100nmの透明導電性酸化物膜が形成されており、この透明導電性酸化物膜の組成は、金属換算で、酸化チタン90モル%、酸化ジルコニウム7モル%、酸化タンタル3モル%であった。この透明導電性酸化物膜中における酸化物(A)である金属チタンと酸化物(B)である酸化ジルコニウムおよび酸化タンタルとの含有比率は、金属換算モル%比((A):(B))で、90:10であった。こうして製造した透明帯電防止板の反射率は、1.5%であり、外観上やや白っぽさは残るものの、この透明導電性酸化物膜の反射率はアクリル基板の反射率を超えるものではなかった。
【0041】
このようにして製造した透明帯電防止板の表面をワイヤーウールで擦ってみたが、傷つくことはなかった。
また、この透明帯電防止板の表面抵抗値は1012Ωであり、この透明帯電防止板をナイロン製の布で充分擦ったが、紙の小片を吸い寄せるような帯電現象は見られなかった。
【0042】
このように本発明の帯電防止板は、優れた帯電防止性を有すると共に、透明性および耐擦傷性に優れたおり、しかも水溶液から反応初期に短時間析出する透明酸化物を用いて透明導電性金属酸化物薄膜を形成することにより、透明帯電防止板に必要な表面抵抗値、透明性、耐擦傷性などの大型モニターの透明帯電防止板として必要でかつ充分な条件を満たすことができる。しかも、このような優れた特性を有しているにもかかわらす、その製造方法は、非常に容易である。

Claims (9)

  1. 導電性酸化物を形成可能なフルオロ金属錯化合物が溶存している水溶液から、フッ素補足剤を混合してから30分以内に析出した、酸化チタン、酸化スズおよび酸化インジウムよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の金属酸化物(A)と、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化タンタルおよび酸化ニオブよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属酸化物(B)とを含有する複数種類の金属酸化物からなり、金属酸化物(A)の含有率と金属酸化物(B)の含有率(モル%比,(A:B))が、99:1〜30:70の範囲内にある透明導電性酸化物膜が、透明プラスチック基板表面に形成されていることを特徴とする透明帯電防止板。
  2. 複数のフルオロ金属錯化合物が溶存している水溶液と、フッ素捕捉剤が溶存している水溶液とを混合し、該混合水溶液からフルオロ金属錯化合物に対応する金属酸化物を析出させる際に、該混合水溶液中に透明プラスチック基板を浸漬して、該透明プラスチック基板の表面に、フッ素補足剤を混合してから30分以内に析出する金属酸化物からなる透明導電性酸化物膜を形成することを特徴とする透明帯電防止板の製造方法。
  3. 上記複数のフルオロ金属錯化合物が、6フッ化チタンアンモニウム、6フッ化スズアンモニウムおよび5フッ化インジウムアンモニウムよりなる群から選ばれる少なくとも一種類のフルオロ金属錯化合物(A')と、6フッ化ケイ素アンモニウム、6フッ化ジルコニウムアンモニウム、7フッ化タンタルアンモニウムおよび7フッ化ニオビウムアンモニウムよりなる群から選ばれる少なくとも一種類のフルオロ金属錯化合物(B')とを含むことを特徴とする請求項第2項記載の透明帯電防止板の製造方法。
  4. 上記記載の製造方法において、サイズが5〜200nmである単一或いは複数の金属酸化物微粒子を、プラスチック表面に薄層析出させ、金属酸化物の屈折率を低減させることを特徴とする請求項第2項記載の透明帯電防止板の製造方法。
  5. 上記複数のフルオロ金属錯化合物(A'+B')が溶存している水溶液中における各フルオロ金属錯化合物(A',B')の濃度が、それぞれのフルオロ金属錯化合物について独立に、10-4〜10-1mol/Lの範囲内にあり、上記フッ素捕捉剤が溶存している水溶液中におけるフッ素捕捉剤の濃度が10-2〜1mol/Lの範囲内にあることを特徴とする請求項第3項記載の透明帯電防止板の製造方法。
  6. 上記フルオロ金属錯化合物(A'+B')が溶存している水溶液中におけるフルオロ金属錯化合物(A')のモル濃度とフルオロ金属錯体(B')のモル濃度との比(A':B')が、99:1〜40:60の範囲内にあることを特徴とする請求項第3項記載の透明帯電防止板の製造方法。
  7. 上記複数のフルオロ金属錯化合物(A'+B')が溶存している水溶液と、フッ素捕捉剤が溶存している水溶液とを35〜45℃の温度で混合した後、該混合水溶液中に透明プラスチック基板を浸漬して、水溶液の混合直後に透明プラスチック基板の表面に金属酸化物を析出させて透明導電性酸化物膜を形成することを特徴とする請求項第3項記載の透明帯電防止板の製造方法。
  8. 上記透明導電性酸化物膜が形成された透明プラスチック基板を、55〜90℃の温度で15〜180分間かけて乾燥させることを特徴とする請求項第2項記載の透明帯電防止板の製造方法。
  9. 上記透明プラスチック基板が、ハードコート処理が施された透明プラスチック基板であることを特徴とする請求項第2項記載の透明帯電防止板の製造方法。
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