JP4239617B2 - 対物光学素子及び光ピックアップ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、対物光学素子及び光ピックアップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
CD(コンパクトディスク)やDVD(デジタルビデオディスク)などの光情報記録媒体(光ディスクともいう)の情報記録面にレーザー光を集光させることにより情報の記録及び/又は再生を行なう光ピックアップ装置は、対物レンズ、カップリングレンズ、ビームエキスパンダー等、種々の光学素子を組み合わせて構成されている。
これら光学素子は軽量かつ安価なプラスチック製であることが多いが、プラスチックは温度変化により屈折率が変化するという特徴を有するため、例えばプラスチック製の対物レンズでは、温度上昇により球面収差がオーバー方向に発生するという問題が生じる。
【0003】
そこで、このような温度変化に対するレンズの特性(温度特性)を改善するべく、対物レンズの光学面に回折構造を設け、回折構造により球面収差をアンダー方向に発生させることにより、温度上昇によりオーバー方向に発生した球面収差を相殺する技術が知られている。
また、光源から出射される光束のパワーを上昇させる際に、光束の波長が瞬間的に変動する、いわゆるモードホップが生じると、光軸上に形成される集光スポットの位置が光ディスクの情報記録面からずれるという問題が生じる。
【0004】
そこで、このような波長変化に対するレンズ特性(波長特性)の補正(以下、「モードホップ補正」ともいう。)を行なうための手段としても、光学素子に設けた回折構造を利用する技術が知られている。
なお、モードホップ補正とは、上記波長変動前後での、集光スポットにおける収差(軸上色収差と球面色収差とを合わせた収差)を回折限界以下に補正することをいう。
また、例えば、レーザー光源の個体差に起因して、出射光束の波長がレーザー光源毎に異なる場合があるが、この場合、アクチュエータにより対物レンズの位置を光情報記録媒体に対して相対的に光軸方向に移動させることにより、上記収差のうち軸上色収差については補正可能であり、球面収差のみを回折構造を利用して補正することになる。
なお、モードホップ等の瞬間的変化以外の環境変化に対しては、上述のように、アクチュエータを用いて対物レンズを光情報記録媒体に対して相対的に移動させることにより、通常、光情報記録媒体の情報記録面の光軸方向の位置は、集光スポットの波面収差が最小となる位置に調節されている。
【0005】
また、1つの対物レンズを用いて、波長λ1とλ2の2種類の光束をそれぞれ異なる種類の光ディスクに集光させる、いわゆる互換性を有する光ピックアップ装置では、例えば、対物レンズの一部に回折構造を設けることにより、この回折構造を通過する波長λ2の光束をフレア化させ、光ディスクに集光させない構成とすることにより、波長λ2の光束に対する対物レンズの開口数を制限する機能(開口制限機能)を持たせる技術や、回折構造により回折作用を受ける波長λ1及び波長λ2の光束のうち、最も回折効率が高くなる次数の回折光を利用することで、情報の記録及び/又は再生に十分な光量を得る技術が知られている。
【0006】
また、対物レンズ以外の他の光学素子(カップリングレンズ、ビームエキスパンダー等)もプラスチック製である場合には、これら光学素子から構成される光学系全体の温度特性を、光学系の最後部に配置される対物レンズに設けた回折構造により補正する技術が知られている。
【0007】
このように、近年、回折構造は温度特性の改善以外に様々な用途に用いられており、これら全ての要求を満たすことが可能な対物レンズ及び光ピックアップ装置について研究開発が進められている。
例えば、CD/DVD互換用の光ピックアップ装置の対物レンズとして、プラスチック製の対物レンズの入射面に、光軸を中心とする同心円状の回折面(回折輪帯)を形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
各回折輪帯のピッチは、光軸からレンズの径方向の所定位置を占める中央領域(共有領域)内で単調に減少し、中央領域の周辺に位置する周辺領域(専用領域)内で減少している。そして、CD用の光束のうち、周辺領域を通る光束をフレアー光とすることで、CDの情報記録面上に集光させず、中央領域を通る光束をCDの情報記録面上に集光させるようになっている。
【0008】
そして、CD用の光束のフレアー光の割合(フレアー量)を多くするほど、DVDにおける波長特性が良くなり、フレアー量を少なくするほどDVDにおける温度特性が良くなる傾向があることを利用して、フレアー量を適切に調節することにより、DVDとCDとの互換性を確保しつつ、DVDの波長特性と温度特性とを両立させている。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−109775号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献1に開示された対物レンズや、一般的な光ピックアップ装置を構成する他の光学素子の多くはプラスチック製であるため、上記温度特性の改善が必須となる。従って、上述した温度特性を改善する機能と、波長特性を含む種々の問題を改善する機能とを、例えば、対物レンズに設けた回折構造に持たせるようなレンズ設計が困難であるという問題が生じている。
【0011】
本発明の課題は、上述の問題を考慮したものであり、温度特性を改善する必要が無い対物光学素子及び光ピックアップ装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、少なくとも、第1の光源から出射される波長λ1(350nm≦λ1≦450nm)の光束を第1の光情報記録媒体の情報記録面上に集光させることにより前記第1の光情報記録媒体に対する情報の再生及び/又は記録を行い、第2の光源から出射される波長λ2(630nm≦λ2≦680nm)の光束を第2の光情報記録媒体の情報記録面上に集光させることにより前記第2の光情報記録媒体に対する情報の再生及び/又は記録を行う光ピックアップ装置に用いられ、少なくとも、前記第1の光情報記録媒体に対する情報の再生及び/又は記録を行う際、及び、前記第2の光情報記録媒体に対する情報の再生及び/又は記録を行う際に共用される対物光学素子であって、
温度変化に対する屈折率変化dn/dtが、
−10.0×10−6/℃≦dn/dt≦−1.0×10−6/℃
を満たし、少なくとも1つの光学面に、前記波長λ1及び/又はλ2の光束に対して位相差を付与する位相差付与構造を有するガラスで形成され、該位相差付与構造が、前記各波長の光束に対する、前記対物光学素子の光学系倍率及び/又は波長の違いによって生じる球面収差を補正する機能を有するか、又は、該位相差付与構造を通過した前記波長λ2の光束を前記第2の光情報記録媒体の情報記録面上に集光させない開口制限機能を有することを特徴とする。
【0013】
ここで、本明細書中において光学素子には、光ピックアップ装置の集光光学系を構成する、例えば、対物光学素子(対物レンズ)、カップリングレンズ、ビームエキスパンダ、ビームシェイパ、補正板等の部材が該当する。
また、光学素子としては、単一のレンズのみで構成されているものに限定されず、複数のレンズを光軸方向に組み合わせて構成されるレンズ群をまとめて光学素子としてもよい。
また、対物光学素子(対物レンズ)とは、狭義には光ピックアップ装置に光情報記録媒体を装填した状態で、最も光情報記録媒体に近い位置において、光情報記録媒体と対向して配置される集光作用を有する光学素子を指す。また、広義にはその光学素子とともに、アクチュエータによって少なくともその光軸方向に移動可能な光学素子を指すものとする。
【0014】
また、光情報記録媒体とはCD、DVDの他に、光源波長や保護基板厚が異なる種々の規格の光ディスク、例えばCD−R,RW(追記型コンパクトディスク)、VD(ビデオディスク)、MD(ミニディスク)、MO(光磁気ディスク)などの一般的な光ディスクや、波長400nm程度の青色レーザー光を用いる高密度の光ディスク(以下、「高密度DVD」という。)も含む。
【0015】
また、位相差付与構造とは、入射光束に対して所定の位相差を付与することにより、この光束に対して特定の作用を与える構造を指すものであり、必ずしも回折作用に限定されるものではない。
位相差付与構造としては、例えば、光軸を含む平面(子午断面)でその断面をみた場合に鋸歯状あるいは光軸方向に沿った階段状となった構造などを指す。
【0028】
請求項1に記載の発明によれば、光ピックアップ装置が互換性を有するとともに、対物光学素子の温度変化に対する屈折率変化dn/dtが、−10.0×10−6/℃≦dn/dt≦−1.0×10−6/℃を満たし、少なくとも一つの光学面に、波長λ1又はλ2の光束に対して位相差を付与する位相差付与構造を有する。
従って、従来より用いられているプラスチック製の一般的な対物光学素子と比較して、温度変化に対する収差変化を小さくすることができる。従って、対物レンズ等の対物光学素子に対して温度依存性が低いガラスを用いることが可能となる。
【0029】
従って、従来のプラスチック製の対物レンズでは、温度特性と波長特性等、複数の特性の改善が可能となるように位相差付与構造を設計する必要があったが、本発明に係る対物光学素子によれば、ガラス材料で成形されることから、互換性を有する場合であっても、温度特性を考慮する必要が無くなり、位相差付与構造が温度特性を改善(補正)する必要が無くなり、各種収差補正の精度を向上できると共に、レンズ設計の自由度を増やすことができる。
また、高密度DVDとDVDとの互換性を有する光ピックアップ装置を得ることができる。
対物光学素子において、第1及び第2の光情報記録媒体の記録及び/又は再生に用いられる波長λ1とλ2の光が共通して通過する領域に位相差付与構造を設けると互換の機能を有することができ、第1の光情報記録媒体の記録及び/又は再生に用いられ、第2の光情報記録媒体の記録及び/又は再生に用いられない光が通過する領域に位相差付与構造を設けると開口制限機能を有することができる。
また、対物光学素子が開口制限機能を有するので、対物レンズの入射面側に絞りを配置する必要が無くなる、あるいは、絞りを配置した場合でも、開口制限機能と絞りを併用することにより、光情報記録媒体の種類に応じた適切な開口数を得られる。
【0030】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の対物光学素子であって、
前記波長λ1の光束に対する焦点距離f1と、前記波長λ1の光束により前記情報記録面上に形成される集光スポットの開口数NA1が、
0.2mm≦f1≦3.5mm
0.63≦NA1≦0.95
を満たすことを特徴とする。
【0031】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1と同様の効果を得られるとともに、波長λ1の光束としての青色レーザー光を適切に情報記録面上に集光させ、高密度DVDに対する情報の記録及び/又は再生を行ない、波長λ2の光束を適切に情報記録面上に集光させ、DVDに対する情報の記録及び/又は再生を行なう光ピックアップ装置を得ることができる。
【0033】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の対物光学素子であって、前記位相差付与構造が、光軸を中心とした複数の輪帯面が光軸にほぼ平行な段差を介して連続し、各輪帯を通過した波長λ1と波長λ2のうち少なくとも一方の光束は情報記録面上において位相がほぼ揃っていることを特徴とする。
【0034】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2と同様の効果を得られるとともに、位相差付与構造の各輪帯を通過した波長λ1と波長λ2のうち少なくとも一方の光束は情報記録面上において位相がほぼ揃うので、波面収差を補正することができる。また、回折光を利用しないので、位相差付与構造に入射した光束の光量の低下を抑えて情報記録面上に集光させることができる。
【0055】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の対物光学素子であって、
前記位相差付与構造が、回折構造であることを特徴とする。
【0056】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の対物光学素子であって、
前記位相差付与構造が、光軸を中心とした複数の回折輪帯と、これら回折輪帯のうち少なくとも一つの回折輪帯の光学面に形成される光軸方向に沿った複数の階段状の不連続面とからなることを特徴とする。
【0057】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれか一項と同様の効果を得られるとともに、階段状の不連続面が回折構造であれば、対物光学素子に形成した回折輪帯と階段状の不連続面との二段階で波長λの光束の回折次数を実質的に変化させることができるので、回折次数を適宜変化させて、光情報記録媒体に対する情報の記録及び/又は再生に応じた十分な光量を有する回折光を得ることができる。また、回折効率や回折次数に対する設計の自由度を増やすことができる。
また、階段状の不連続面が、光軸を中心とした複数の輪帯面であり、かつ、光軸にほぼ平行な段差を介して連続する構造であれば、各輪帯を通過した光束は情報記録面上において位相がほぼ揃うので、波面収差を補正することができる。また、回折光を利用しないので、位相差付与構造に入射した光束の光量の低下を抑えて情報記録面上に集光させることができる。
【0058】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の対物光学素子であって、
光学材料の分散ν、屈折率nが、
65≦ν≦75
1.48≦n≦1.52
を満たすことを特徴とする。
【0059】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の対物光学素子であって、
光学材料の融点Tが、
250℃≦T≦300℃
を満たすことを特徴とする。
【0060】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1〜6のいずれか一項と同様の効果を得られるとともに、融点が一般的なガラス材料と比較して低い光学材料を用いるので、加工性が高くなり、従来では困難であったガラスレンズに対しても位相差付与構造を比較的容易に成形することが可能となる。
【0061】
請求項8に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の対物光学素子を備えることを特徴とする。
【0075】
【発明の実施の形態】
[第1の実施の形態]
本発明の光学素子、対物光学素子及び光ピックアップ装置の第1の実施の形態を、図面を参照して説明する。
本実施の形態においては、本発明に係る光学素子を対物レンズに適用し、この対物レンズと、ビームスプリッタ等の他の光学素子を組み合わせて光ピックアップ装置10が構成されている。
【0076】
図1に示すように、光ピックアップ装置10は、光源11としての半導体レーザ、半導体レーザから出射された波長λ(350nm≦λ≦450nm)の光束を通過させると共に光情報記録媒体13(本実施の形態においては高密度DVD)で反射した光束を分岐するビームスプリッタ12、光束を光情報記録媒体13の情報記録面14上に集光させる対物レンズ20(対物光学素子)、対物レンズ20を所定の方向に移動させる2次元アクチュエータ(図示せず)、凹レンズ15、光情報記録媒体13からの反射光を検出する光検出器16等から概略構成される。
本実施の形態においては、光源11から光束が発散光として対物レンズ20に入射するいわゆる有限系の構成となっている。なお、コリメータ等を配置することにより平行光が対物レンズ20に入射する無限系の構成としても良い。
符合17は、光情報記録媒体13の情報記録面14を保護するために情報記録面14上に形成される保護基板を指す。
【0077】
このように構成された光ピックアップ装置10の動作については周知であるため詳しい説明は省略するが、光源11から出射された波長λの光束はビームスプリッタ12を通過して対物レンズ20の入射面21に至り、後述する位相差付与構造30により回折作用を受けて出射され、光情報記録媒体13の情報記録面14上に収束し、光軸L上にスポットPを形成する。そして、スポットに集光した光束は情報記録面14で情報ピットにより変調されて反射される。反射した光束は再び対物レンズ20を通過して、ビームスプリッタ12で反射して分岐される。
【0078】
そして、分岐された光束は凹レンズ15を経て光検出器16に入射し、光検出器16は入射光のスポットを検出して信号を出力し、その出力された信号を用いて光情報記録媒体13に記録された情報の読み取り信号を得るようになっている。
また、光検出器16上でのスポットの形状変化や位置変化による光量変化等を検出して合焦検出やトラック検出が行われる。この検出結果に基づいて2次元アクチュエータは光束がスポットとして情報記録面14上に結像するように、対物レンズ20をフォーカス方向及びトラッキング方向に移動させるようになっている。
【0079】
図2に示すように、対物レンズ20は入射面21と出射面22の両面が非球面の単レンズである。
入射面21の全域には、入射光束に対して所定の位相差を付与する位相差付与構造30が形成されている。
本実施の形態においては、位相差付与構造30は、光軸Lを中心としたほぼ同心円状に形成されて入射光束を回折させる作用を有する複数の回折輪帯31により構成されている。
【0080】
各回折輪帯31は光軸Lに沿った平面(子午断面)でみた場合に鋸歯状に形成されており、各回折輪帯31に入射する特定波長の光束に対して所定の位相差を付与することにより光束に回折作用を与えるようになっている。
各回折輪帯31の始点31aと終点31b(図2に一箇所だけ示す)は図2に示す所定の非球面S(以下、「母非球面S」という。)上に位置しており、各回折輪帯31の形状は母非球面Sに対する光軸L方向への変位量で規定することができる。
【0081】
また、母非球面Sは光軸Lを回転中心とする光軸Lからの距離に関する関数で規定することができる。なお、回折輪帯31の設計手法については周知であるため説明を省略する。また、このような位相差付与構造30を出射面22のみに設けても良く、あるいは、入射面21と出射面22の両面に設けても良い。
また、図2の対物レンズ20は、1つの光学素子で構成された対物レンズ20であるが、2つ以上の光学素子を組み合わせて対物レンズ20を構成する場合であっても、位相差付与構造30を設ける光学面(入射面及び出射面)は適宜選択可能である。
【0082】
対物レンズ20は、光学材料として、温度変化に対する屈折率変化dn/dt(温度依存性)が、−10.0×10-6/℃≦dn/dt≦−1.0×10-6/℃を満たすガラス材料により設計されている。
また、そのガラスの分散ν、屈折率n、融点Tは、65≦ν≦75、1.48≦n≦1.52、250℃≦T≦300℃を満たす。
【0083】
光学材料が上記条件を満たす場合、従来より用いられている一般的な光学材料と比較して、レンズの加工性が高くかつ温度変化に対する屈折率変化を小さくすることができる。従って、対物レンズ20を温度依存性が低いガラスで成形でき、かつ、加工性が高いので、従来では困難であったガラスレンズに対しても回折構造も設けることが可能となる。
【0084】
従って、従来のプラスチック製の対物レンズ20では、温度特性と波長特性等、複数の特性の改善が可能となるように位相差付与構造30を設計する必要があったが、本発明に係る光学素子によれば、ガラス材料で成形されることから、温度特性を考慮する必要が無くなり、位相差付与構造30が温度特性を改善(補正)する必要が無くなり、各種収差補正の精度を向上できると共に、レンズ設計の自由度を増やすことができる。
【0085】
また、位相差付与構造30は、例えばモードホップにより、光源11からの出射光束の波長がλから1nm変動した場合の当該波長変動前後における、光軸L方向に同じ位置での収差変動量を0.05λrms以下に補正する機能か、又は、温度変化時に光源11から光情報記録媒体13に至る光路上に配置された光学素子の総合により生じる、情報記録面14上の集光スポットにおける収差を補正する機能を有する。
【0086】
本実施の形態においては、上述のように対物レンズ20に発散光が入射するいわゆる有限系の光ピックアップ装置10を用いており、対物レンズ20の波長λの光束に対する光学系倍率mが、−0.25≦m≦−0.1の範囲内となるように設計することが好ましい。
また、波長λの光束の焦点距離fを、0.2mm≦f≦3.5mmとし、波長λの光束により情報記録面14上に形成される集光スポットの開口数NA(波長λの光束の像側の開口数)が、0.63≦NA≦0.95の範囲内となるように設計することが好ましい。
これら各条件を満たすことにより、青色レーザー光を用いる高密度DVDに対する情報の記録及び/又は再生を行なう光ピックアップ装置10を得ることができる。
【0087】
また、波長λを350nm≦λ≦450nmの範囲内、光学系倍率mを負(好ましくは−0.25≦m≦−0.1の範囲内)、波長λの光束の焦点距離fを、0.2mm≦f≦1.0mmの範囲内、波長λの光束により情報記録面14上に形成される集光スポットの開口数NA(波長λの光束の像側の開口数)を、0.55≦NA≦0.70の範囲内に設計することにより、対物レンズ20の径を小さくすることができ、青色レーザー光を、従来の光ピックアップ装置10よりも小型の装置に用いることができる。
【0088】
また、波長λを630nm≦λ≦680nmの範囲内、光学系倍率mを負(好ましくは−0.30≦m≦−0.1の範囲内)、波長λの光束の焦点距離fを好ましくは0.2mm≦f≦3.5mmの範囲内、波長λの光束により情報記録面14上に形成される集光スポットの開口数NA(波長λの光束の像側の開口数)を好ましくは0.55≦NA≦0.75の範囲内に設計することにより、本発明に係る光学素子(対物レンズ20)及び光ピックアップ装置10を、DVD及びMOに好適に用いることが可能となる。
【0089】
なお、上記実施の形態においては、位相差付与構造30として回折輪帯31を複数形成した構造について説明したが本発明に係る位相差付与構造30はこれに限定されるものではなく、例えば、図3に示すようなものであっても良い。
【0090】
図3に示す対物レンズ20は、位相差付与構造30が、光軸Lを中心とした複数の輪帯面32を、光軸Lにほぼ平行な段差33を介して連続させて構成されている。
各輪帯面32は光軸Lから離れるに従って光源11側に突出するように形成されており、各輪帯面32に入射する波長λの光束に対して所定の光路差を付与することにより、各光束に位相差が生じ、結果として各輪帯を通過した光束の位相が、情報記録面14上でほぼ揃うようになっている。なお、各段差33の形状は母非球面Sに対する光軸L方向への変位量で規定することができる。
【0091】
図4に示す対物レンズ20は、位相差付与構造30が、光軸Lを中心とした複数の回折輪帯34と、これら回折輪帯34の光学面に形成される光軸L方向に沿った階段状の不連続面35とから構成されている。
【0092】
具体的には、対物レンズ20には、光軸Lを中心とした、所定の非球面形状の光学面(母非球面S)に対して実質的な傾きをもつ鋸歯状の不連続面である複数の回折輪帯34が形成されており、さらに、各回折輪帯34の光学面上には、これら回折輪帯34を通過する光束に対して所定の光路差を付与する、光軸Lに沿った階段状の不連続面35が形成されている。
【0093】
図5(a)、(b)中に一点鎖線で示す線は、各回折輪帯34の始点を結んでできる仮想の非球面形状からなる光学面(母非球面S)を表すものであり、二点鎖線で示す線は、光軸Lを中心として光軸Lから離れるにしたがってその厚みが増すように形成された、従来より周知の同心円状の鋸歯状の回折輪帯34の外形を表すものである。
【0094】
図5(a)、(b)中に実線で示す線は、各回折輪帯34の光学面上に形成されている、各回折輪帯34を通過する光束に対して所定の光路差を付与する階段状の不連続面35の外形を含む、実際のレンズ形状を表すものである。
各不連続面35の深さd1(光軸L方向の長さ)は、波長λの光束に対する対物レンズ20の屈折率をnとした場合に、λ/(n−1)で表される値とほぼ等しくなっており、一つの不連続面35を通過する波長λの光束と、その隣の不連続面35を通過する波長λの光束との間に、ほぼ1波長(λ)に相当する光路差が生じ、かつ波面のずれが生じない長さに設定されている。
また、各不連続面35の形状は、図5中に二点鎖線で示した鋸歯状の回折輪帯34の表面の形状を、各不連続面35に対応する区間で分割して、光軸L方向に平行移動させた形状に近似したものとなっている。
【0095】
このように、図4、5に示す位相差付与構造30により、対物光学素子(対物レンズ20)を通過する波長λの光束に対して所定の光路差を付与する機能を有すると共に、各不連続面35の表面形状を、回折輪帯34を各段差33に対応する区間で分割して、光軸L方向に平行移動させた形状とすることにより、波長λの光束のうち最大の回折効率を有する回折光を抽出する機能を有することになる。
そして、対物光学素子に形成した回折輪帯34と階段状の不連続面35の二段階で波長λの光束の回折次数を実質的に変化させることができるので、例えば、回折次数を適宜変化させて、光情報記録媒体13に対する情報の記録及び/又は再生に応じた十分な光量を有する回折光を得ることができる。また、回折効率や回折次数に対する設計の自由度を増やすことができる。
【0096】
なお、本実施の形態においては、本発明の光学素子を対物レンズ20に適用した場合について説明したが、これに限らず、光ピックアップ装置10の光学系を構成する光学素子であれば良く、例えば、ビームエキスパンダ、カップリングレンズ、入射光束の光強度分布とは異なったほぼ均一な光強度分布となるように整形して出射するように構成された光学素子に適用しても良い。
【0097】
[第2の実施の形態]
次に、図面を参照して本発明の第2の実施の形態を説明する。
本実施の形態においては光ピックアップ装置40が、波長λ1とλ2の2種類の光束を、2種類の光情報記録媒体13に対して用いる、いわゆる互換性を有する装置であり、対物レンズ20の構成、焦点距離、開口数等が上記第1の実施の形態との主な相違点であるため、以下、この相違点についておもに説明する。
【0098】
図6に示すように、光ピックアップ装置40は、第1の光源11aから出射される波長λ1(350nm≦λ1≦450nm)の光束を第1の光情報記録媒体13としての高密度DVDの情報記録面14上に集光させることにより、第1の光情報記録媒体13に対する情報の再生及び/又は記録を行い、第2の光源11bから出射される波長λ2(630nm≦λ2≦680nm)の光束を第2の光情報記録媒体13としてのDVDの情報記録面14上に集光させることにより、第2の光情報記録媒体13に対する情報の再生及び/又は記録を行うようになっている。
半導体レーザ光源11は、波長λ1の光束を出射する第1の光源11aと波長λ2の光束を出射する第2の光源11bとが一体(1パッケージ)に構成されている。なお、当然これら光源11a、11bを別体に配置してもよい。
波長λ1とλ2の各光束の光路は、上記第1の実施の形態で説明したものとほぼ同様であり、また、従来より周知であるため説明を省略する。
【0099】
図7に示すように、対物レンズ20は入射面21と出射面22の両面が非球面の単レンズであり、入射面21のほぼ全域に位相差付与構造30が形成されている。
位相差付与構造30としては、図2に示した上記第1の実施の形態における回折輪帯31と同様のものを用いている。
そして、回折輪帯31を通過する波長λ1と波長λ2の光束のいずれか一方のみ、あるいは、両方に対して回折作用を与えることで、これら各波長の光束に対する、光学系倍率及び/又は波長の違いによって生じる球面収差を補正する機能を位相差付与構造が有することになる。
【0100】
対物レンズ20は、光学材料として、温度変化に対する屈折率変化dn/dt(温度依存性)が、−10.0×10-6/℃≦dn/dt≦−1.0×10-6/℃を満たすガラス材料により設計されている。
また、そのガラスの分散ν、屈折率n、融点Tは、65≦ν≦75、1.48≦n≦1.52、250℃≦T≦300℃を満たす。
【0101】
光学材料が上記条件を満たす場合、従来より用いられている一般的な光学材料と比較して、レンズの加工性が高くかつ温度変化に対する屈折率変化を小さくすることができる。従って、対物レンズ20を温度依存性が低いガラスで成形でき、かつ、加工性が高いので、従来では困難であったガラスレンズに対しても回折構造も設けることが可能となる。
従って、上記第1の実施の形態と同様に、対物レンズ20がガラス材料で成形されることから、温度特性を考慮する必要が無くなり、位相差付与構造30が温度特性を改善(補正)する必要が無くなり、各種収差補正の精度を向上できると共に、レンズ設計の自由度を増やすことができる。
【0102】
なお、対物レンズ20の波長λ1の光束に対する焦点距離f1を0.2mm≦f1≦3.5mmとし、波長λ1の光束により情報記録面14上に形成される集光スポットの開口数NA1(波長λ1の光束の像側の開口数)が、0.63≦NA1≦0.95の範囲内となるように設計することが好ましい。
これら各条件を満たすことにより、波長λ1の光束としての青色レーザー光を適切に情報記録面14上に集光させ、高密度DVDに対する情報の記録及び/又は再生を行ない、波長λ2の光束を適切に情報記録面14上に集光させ、DVDに対する情報の記録及び/又は再生を行なう光ピックアップ装置10を得ることができる。
【0103】
また、波長λ1を630nm≦λ1≦680nmの範囲内、波長λ2を750nm≦λ2≦800nmの範囲内、波長λ1の光束に対する光学系倍率m1をm1≠0(好ましくは−0.3≦m1≦−0.1の範囲内)、波長λ2の光束に対する光学系倍率m2をm2≠0とし、波長λ1の光束の焦点距離f1を好ましくは0.5mm≦f1≦3.5mmの範囲内、波長λ1の光束により情報記録面14上に形成される集光スポットの開口数NA1(波長λ1の光束の像側の開口数)を好ましくは0.55≦NA1≦0.75の範囲内に設計することが好ましい。
これら各条件を満たすことにより、波長λ1の光束を適切に情報記録面14上に集光させ、DVDに対する情報の記録及び/又は再生を行ない、波長λ2の光束を適切に情報記録面14上に集光させ、CDに対する情報の記録及び/又は再生を行なう光ピックアップ装置10を得ることができる。
【0104】
なお、上記実施の形態においては、位相差付与構造30として回折輪帯31を複数形成した構造について説明したが、本発明に係る位相差付与構造30はこれに限定されるものではなく、第1の実施の形態において示したような構造(図2〜図5を参照。)であってもよい。
【0105】
また、図8に示すように、対物レンズ20の入射面21を、光軸Lを中心とした高さh以下の範囲(以下、「中央領域A1」という。)と、この中央領域A1の周囲を覆う周辺領域A2の2つの領域に区分し、周辺領域A2にのみ、あるいは中央領域A1と周辺領域A2の両方に上記位相差付与構造30を設けるものとしても良い。なお、入射面21を2つ以上の領域に区分しても良い。
【0106】
このように、入射面21を複数の領域に区分して、各領域を通過する光束に対して異なる回折作用を与えるようにレンズ設計を行なうことにより、例えば、波長λ1の光束は中央領域A1と周辺領域A2を通過する際に回折作用を受けてDVDの情報記録面14上に収束させ、波長λ2の光束のうち、中央領域A1を通過する光束は回折作用を受けてCDの情報記録面14上に収束させ、周辺領域A2を通過する光束はフレア光となるように回折作用を与えて、CDの情報記録面14上に収束させない構成とすることができる。
このような構成とすることにより、波長λ2の光束の一部を情報記録面14上に集光させないといういわゆる開口制限機能を対物レンズ20に持たせることが可能となる。
【0107】
本実施の形態においては、波長λ1が350nm〜450nm、波長λ2が630〜680nmの高密度DVD/DVD互換に用いる場合には、位相差付与構造は、上述した、λ1とλ2の各波長の光束に対する、光学系倍率及び/又は波長の違いによって生じる球面収差を補正する機能と、位相差付与構造を通過した第2の波長λ2の光束を第2の光情報記録媒体の情報記録面上に集光させない開口制限機能の両方を有する。
また、波長λ1が630nm〜680nm、波長λ2が750〜800nmのDVD/CD互換に用いる場合には、位相差付与構造は、各波長の光束に対する、主に基板厚の違いによって生じる球面収差を補正する機能を有するか、又は、該位相差付与構造を通過した波長λ2の光束を第2の光情報記録媒体の情報記録面上に集光させない開口制限機能のいずれかを有する。
なお、後述する実施例1及び3では位相差付与構造は互換機能と開口制限機能の両方を有し、実施例2では位相差付与構造は互換機能のみを有している。
【0108】
【実施例】
[実施例1]
次に、対物レンズ及び光ピックアップ装置の第1の実施例について説明する。本実施例においては、図6に示したものと同様に、波長λ1の光束と波長λ2の光束をそれぞれDVDとCDに対して用いることが可能な、互換性を有する光ピックアップ装置の構成となっている。
【0109】
また、図8に示したものと同様に、両面非球面の単レンズである対物レンズの一方の光学面(入射面)上であって、光軸Lからの高さhが1.16mm以下の中央領域A1と1.16mm以上の周辺領域A2にそれぞれ位相差付与構造としての回折輪帯を備えている。
また、対物レンズは、光学材料として、温度変化に対する屈折率変化dn/dt(温度依存性)が、−10.0×10-6/℃≦dn/dt≦−1.0×10-6/℃を満たすガラス材料により設計されている。
また、そのガラスの分散ν、屈折率n、融点Tは、65≦ν≦75、1.48≦n≦1.52、250℃≦T≦300℃を満たす。
【0110】
なお、図8は本実施例で使用する対物レンズの概略図を示すものである。従って、回折輪帯31の数や、レンズ径に対する中央領域A1と周辺領域A2が径方向に占める割合などは、本実施例の対物レンズと必ずしも一致するものではない。
表1、表2に対物レンズのレンズデータを示す。
【0111】
【表1】
【表2】
【0112】
表1に示すように、本実施例の対物レンズは、第1の光源から出射される波長λ1=670nmのときの焦点距離f1=2.22mm、像側開口数NA1=0.60、結像倍率m1=−1/10に設定されており、第2の光源から出射される波長λ2=789nmのときの焦点距離f2=2.23mm、像側開口数NA2=0.46、結像倍率m2=−1/10に設定されている。
表1中の面番号2、2´はそれぞれ対物レンズの入射面のうち光軸Lからの高さhが1.16mm以下の中央領域A1、hが1.16mm以上の周辺領域A2、面番号3は出射面を示している。また、riは曲率半径、diは第i面から第i+1面までの光軸L方向の位置、niは各面の屈折率を表している。
【0113】
対物レンズの第2面、第2´面、第3面は、それぞれ次式(数1)に表1及び表2に示す係数を代入した数式で規定される、光軸Lの周りに軸対称な非球面に形成されている。
また、第2面の回折構造に関するブレーズ化波長は1mm、第2´面の回折構造に関するブレーズ化波長も1mmである。
【0114】
【数1】
【0115】
ここで、X(h)は光軸L方向の軸(光の進行方向を正とする)、κは円錐係数、A2iは非球面係数である。
【0116】
また、第2面と第2´面に形成される回折輪帯のピッチは数2の光路差関数に、表2に示す係数を代入した数式で規定される。
【0117】
【数2】
ここで、B2iは光路差関数の係数である。
【0118】
図9は、波長λ1=670nmの光束を用いた、DVDにおける球面収差量を示すグラフであり、図10は、波長λ2=789nmの光束を用いた、CDにおける球面収差量と開口数を示すグラフである。
図9及び図10から、DVDとCD共に必要開口数内において球面収差が良好に補正されていることが分かる。
【0119】
[実施例2]
次に、対物レンズ及び光ピックアップ装置の第2の実施例について説明する。本実施例においても、図6に示したものと同様に、波長λ1の光束と波長λ2の光束をそれぞれDVDとCDに対して用いることが可能な、互換性を有する構成となっている。
【0120】
また、図示は省略するが、両面非球面の単レンズである対物レンズの一方の光学面(入射面)上であって、光軸Lからの高さhが0.78mm以下の中央領域と0.78mm〜1.16mmの中間領域と、1.16mm以上の周辺領域に区分され、中間領域に位相差付与構造としての回折輪帯を備えている。
【0121】
また、対物レンズは、光学材料として、温度変化に対する屈折率変化dn/dt(温度依存性)が、−10.0×10-6/℃≦dn/dt≦−1.0×10-6/℃を満たすガラス材料により設計されている。
また、そのガラスの分散ν、屈折率n、融点Tは、65≦ν≦75、1.48≦n≦1.52、250℃≦T≦300℃を満たす。
表3、表4に対物レンズのレンズデータを示す。
【0122】
【表3】
【表4】
【0123】
表3に示すように、本実施例の対物レンズは、第1の光源から出射される波長λ1=670nmのときの焦点距離f1=2.22mm、像側開口数NA1=0.60、結像倍率m1=−1/10に設定されており、第2の光源から出射される波長λ2=789nmのときの焦点距離f2=2.23mm、像側開口数NA2=0.46、結像倍率m2=−1/10に設定されている。
表1中の面番号2、2´、2´´はそれぞれ対物レンズの入射面の中央領域、中間領域、周辺領域、面番号3は出射面を示している。また、riは曲率半径、diは第i面から第i+1面までの光軸L方向の位置、niは各面の屈折率を表している。
【0124】
対物レンズの第2面、第2´、第2´´面、第3面は、それぞれ上記数1に表3及び表4に示す係数を代入した数式で規定される、光軸Lの周りに軸対称な非球面に形成されている。
また、第2´面の回折構造に関するブレーズ化波長は1mmである。
【0125】
また、回折輪帯のピッチは上記数2の光路差関数に、表4に示す係数を代入した数式で規定される。
【0126】
図11は、波長λ1=670nmの光束を用いた、DVDにおける球面収差量を示すグラフであり、図12は、波長λ2=789nmの光束を用いた、CDにおける球面収差量を示すグラフである。
図11及び図12から、DVDとCD共に必要開口数内において球面収差が良好に補正されていることが分かる。
【0127】
[実施例3]
次に、対物レンズ及び光ピックアップ装置の第3の実施例について説明する。
本実施例においては、図1に示したものと同様に、青色レーザー光を用いて高密度DVDに対して情報の再生及び/又は記録を行なうものである。
また、図2に示すように、対物レンズの入射面のほぼ全域に、位相差付与構造としての回折輪帯を設けることにより、例えばモードホップにより、光源からの出射光束の波長が変化した際に生じる色収差を、この位相差付与構造により補正する機能を有している。
【0128】
また、対物レンズは、光学材料として、温度変化に対する屈折率変化dn/dt(温度依存性)が、−10.0×10-6/℃≦dn/dt≦−1.0×10-6/℃を満たすガラス材料により設計されている。
また、そのガラスの分散ν、屈折率n、融点Tは、65≦ν≦75、1.48≦n≦1.52、250℃≦T≦300℃を満たす。
表5、表6に対物レンズのレンズデータを示す。
【0129】
【表5】
【表6】
【0130】
表5に示すように、本実施例の対物レンズは、光源から出射される波長λ=405nmのときの焦点距離f=1.76mm、像側開口数NA=0.85、結像倍率m=0に設定されている。
表5中の面番号2は対物レンズの入射面、面番号3は出射面を示している。また、riは曲率半径、diは第i面から第i+1面までの光軸L方向の位置、niは各面の屈折率を表している。
【0131】
対物レンズの第2面、第3面は、それぞれ上記数1に表5及び表6に示す係数を代入した数式で規定される、光軸Lの周りに軸対称な非球面に形成されている。
また、第2面の回折構造に関するブレーズ化波長は1mmである。
【0132】
また、回折輪帯のピッチは上記数2の光路差関数に、表6に示す係数を代入した数式で規定される。
【0133】
図13は、波長λ=405nmの光束を用いた、高密度DVDにおける球面収差量及びモードホップにより波長λが404nm(−1nm)と406nm(+1nm)に変動した場合の縦球面収差図である。横軸は、波長405nmの場合に波面収差が最小となる位置を0にとっている。
図13から、モードホップにより波長が変動した場合でも、必要開口数内において波面収差が良好に補正されていることが分かる。
【0134】
【発明の効果】
本発明によれば、光学素子をガラス材料で成形することが可能となることから、プラスチック性の光学素子を用いる場合と比較して、位相差付与構造に温度特性を補正する機能を持たせる必要が無くなり、収差補正の精度を向上できると共に、レンズ設計の自由度を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光ピックアップ装置の構成を示す要部平面図である。
【図2】対物レンズの構造を示す要部横断面図である。
【図3】対物レンズの構造を示す要部横断面図である。
【図4】対物レンズの構造を示す要部横断面図である。
【図5】対物レンズの構造を示す要部横断面図(a)及び拡大図(b)である。
【図6】光ピックアップ装置の構成を示す要部平面図である。
【図7】対物レンズの構造を示す要部横断面図である。
【図8】対物レンズの構造を示す要部横断面図である。
【図9】実施例1におけるDVDの縦球面収差図である。
【図10】実施例1におけるCDの縦球面収差図である。
【図11】実施例2におけるDVDの縦球面収差図である。
【図12】実施例2におけるCDの縦球面収差図である。
【図13】実施例3におけるモードホップ時の縦球面収差図である。
【符号の説明】
L 光軸
10 光ピックアップ装置
13 光情報記録媒体
14 情報記録面
20 光学素子(対物光学素子)
30 位相差付与構造
32 輪帯面
33 段差
34 回折輪帯
35 不連続面
40 光ピックアップ装置
Claims (8)
- 少なくとも、第1の光源から出射される波長λ1(350nm≦λ1≦450nm)の光束を第1の光情報記録媒体の情報記録面上に集光させることにより前記第1の光情報記録媒体に対する情報の再生及び/又は記録を行い、第2の光源から出射される波長λ2(630nm≦λ2≦680nm)の光束を第2の光情報記録媒体の情報記録面上に集光させることにより前記第2の光情報記録媒体に対する情報の再生及び/又は記録を行う光ピックアップ装置に用いられ、少なくとも、前記第1の光情報記録媒体に対する情報の再生及び/又は記録を行う際、及び、前記第2の光情報記録媒体に対する情報の再生及び/又は記録を行う際に共用される対物光学素子であって、
温度変化に対する屈折率変化dn/dtが、
−10.0×10−6/℃≦dn/dt≦−1.0×10−6/℃
を満たし、少なくとも1つの光学面に、前記波長λ1及び/又はλ2の光束に対して位相差を付与する位相差付与構造を有するガラスで形成され、該位相差付与構造が、前記各波長の光束に対する、前記対物光学素子の光学系倍率及び/又は波長の違いによって生じる球面収差を補正する機能を有するか、又は、該位相差付与構造を通過した前記波長λ2の光束を前記第2の光情報記録媒体の情報記録面上に集光させない開口制限機能を有することを特徴とする対物光学素子。 - 請求項1に記載の対物光学素子であって、
前記波長λ1の光束に対する焦点距離f1と、前記波長λ1の光束により前記情報記録面上に形成される集光スポットの開口数NA1が、
0.2mm≦f1≦3.5mm
0.63≦NA1≦0.95
を満たすことを特徴とする対物光学素子。 - 請求項1または2記載の対物光学素子であって、
前記位相差付与構造が、光軸を中心とした複数の輪帯面が光軸にほぼ平行な段差を介して連続し、各輪帯を通過した波長λ1と波長λ2のうち少なくとも一方の光束は情報記録面上において位相がほぼ揃っていることを特徴とする対物光学素子。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の対物光学素子であって、
前記位相差付与構造が、回折構造であることを特徴とする対物光学素子。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の対物光学素子であって、
前記位相差付与構造が、光軸を中心とした複数の回折輪帯と、これら回折輪帯のうち少なくとも一つの回折輪帯の光学面に形成される光軸方向に沿った複数の階段状の不連続面とからなることを特徴とする対物光学素子。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載の対物光学素子であって、
光学材料の分散ν、屈折率nが、
65≦ν≦75
1.48≦n≦1.52
を満たすことを特徴とする対物光学素子。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の対物光学素子であって、
光学材料の融点Tが、
250℃≦T≦300℃
を満たすことを特徴とする対物光学素子。 - 請求項1〜7のいずれか一項に記載の対物光学素子を備える光ピックアップ装置。
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