JP4238463B2 - ヒートパイプの加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏平加工や曲げ加工等の変形加工を施すヒートパイプの加工方法に関し、特に、偏平加工や曲げ加工等の変形加工を施した後も、平滑な面を維持でき、これによりヒートパイプ自体の熱伝達性能の低下を防ぐことができるヒートパイプの加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、銅管等の金属管内に凝縮性の流体を作動流体として封入したヒートパイプは、その熱伝導率が銅やアルミニウム等の金属単体に比較して数倍から数百倍程度優れていることから、冷却用素子として各種電子機器や熱関連機器等に多用されている。
【0003】
このヒートパイプの形状としては、一般に断面円形のものが主流であるが、ノートパソコン等の携帯用小型電子機器に組み込まれる場合には、小型・軽量化のためにその形状が断面偏平型をしたヒートパイプが用いられる。近年、電子機器の薄型化の要求が著しいことから、ヒートパイプにも従来にも増して多様な曲げや偏平加工が要求されている。更により大きな熱を輸送するため、偏平広幅なヒートパイプが要求されるようになってきている。
【0004】
従来のヒートパイプの加工方法は、例えば、断面偏平型のヒートパイプを得る場合は、断面円形を有するヒートパイプをそのまま径方向に押し漬すことで、偏平加工を施す方法を採っており、また、曲げ部を有する断面偏平型のヒートパイプを得る場合は、断面円形を有するヒートパイプを予め曲げ加工した後、径方向に押し漬すことで、偏平加工を施す方法を採っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のヒートパイプの加工方法によると、以下のような問題点がある。
【0006】
図2は、偏平加工を行った場合の問題点を示す。ヒートパイプ1を単に径方向に押し漬しただけでは、その漬し面11の中央部に凹み31が発生し、平滑な偏平加工が実現され難い。この凹み31は、蒸気通路を小さくすることになり、熱伝達性能低下の要因となる。漬し面11の中央部に凹み31が発生する現象は、より大きな偏平加工(より薄く、又はより広幅)を行った場合はさらに大きくなる。
【0007】
図3は、曲げ加工を行った後に偏平加工を行った場合の問題点を示す。断面円形のヒートパイプ1を予め曲げ加工した後に径方向に押し潰した場合は、曲げ部2に図2よりも大きな凹み31が発生する。
【0008】
図4は、偏平加工を行った後に曲げ加工を行った場合の問題点を示す。偏平加工を行った後に曲げ加工を行った場合は、曲げ部2の内側に座屈変形によるシワ32が生じやすく、平滑な偏平が行えない。
【0009】
図5は、広幅な偏平加工を行った場合の問題点を示す。断面円形のヒートパイプを単に径方向に押し漬して偏平化して広幅にした場合は、漬し面11の中央部が凹むのに加え、ヒートパイプ1の両端部に局部的な窪み33が発生する。この両端部の窪み33は、加工対象の断面円形のヒートパイプの径が大きい程大きくなってくる。一般にヒートパイプは、その両端部に発熱体と冷却体を取りつけて使用されることが多く、ヒートパイプの両端部に窪みが生じると、発熱体や冷却体との接触熱抵抗が大きくなり、冷却システムとしての熱伝達低下の要因となってしまう不都合がある。
【0010】
従って、本発明の目的は、偏平加工や曲げ加工等の変形加工を施した後も、平滑な面を維持でき、これによりヒートパイプ自体の熱伝達性能の低下を防ぐことができるヒートパイプの加工方法を提供することになる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、ヒートパイプを準備し、前記ヒートパイプに所定の内圧を加えた状態で前記ヒートパイプの変形加工を行うヒートパイプの加工方法であって、前記ヒートパイプの変形加工は、前記ヒートパイプに前記所定の内圧を加えると共に、対向する一対の偏平用型により前記ヒートパイプを所定の方向に偏平加工を行い、さらに前記ヒートパイプを前記偏平用型により前記所定の方向に拘束した状態、かつ、前記ヒートパイプに前記所定の内圧を加えた状態で前記ヒートパイプを前記所定の方向に垂直な方向に曲げ加工を行う工程を含むことを特徴とするヒートパイプの加工方法を提供する。
【0012】
上記構成によれば、内圧を加えた状態でヒートパイプの変形加工を行うことにより、潰し面の中央部の凹みを無くし、またヒートパイプ両端部の窪みは極力小さなものとなり、より平滑な面が維持される。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の形態に係るヒートパイプの加工方法を示す。
まず、同図(a)に示すように、所定の温度に加熱された一対の偏平用型41A,41Bによって銅等の金属からなる断面円形のヒートパイプ1を挟持する。一対の偏平用型41A,41Bによって挟持されたヒートパイプ1は、その高熱伝導率から瞬時に偏平用型41A,41Bとほぼ同じ温度に加熱され、内圧が上昇する。
【0014】
次に、同図(b)に示すように、偏平用型41A,41Bを所定の隙間Hとなるようにヒートパイプ1を押し付け、ヒートパイプ1の偏平加工を行う。
【0015】
次に、同図(c)に示すように、所定の曲率を有する凹部42aを備えた曲げ用メス型42と所定の曲率を有する凸部43aを備えた曲げ用オス型43を、偏平用型41A,41Bの隙間Hに挿入し、同図(c)の矢印に示す方向に加圧加工してヒートパイプ1の幅方向の曲げ加工を行う。
【0016】
次に、曲げ用メス型42および曲げ用オス型43を解放することで、同図(d)に示すように、所定の寸法に偏平加工及び曲げ加工が施こされたヒートパイプ1を得ることができる。
【0017】
次に、ヒートパイプ1を冷却してヒートパイプ1の内圧を低下させた後、偏平用型41A,41Bを開放してヒートパイプ1を取り出す。
【0018】
この実施の形態のヒートパイプの加工方法によれば、偏平加工を施す際に、ヒートパイプ1に内圧を加え、さらに上下の潰し面11が偏平用型41A,41Bによって拘束されているため、図2および図3に示したような凹み31や図4に示したようなシワ32が発生するのを防止することができ、さらにヒートパイプ1の両端部の窪みも小さくすることができる。また、変形加工後に偏平用型41A,41Bを解放するに当たって、ヒートパイプ1の筐体の肉厚が薄いときや偏平加工後の幅寸法が広い場合など、ヒートパイプ1の内圧が高い状態で解放すると、その内圧によって潰し面11が膨らんでしまうことがある。この場合、偏平用型41A,41Bを解放する前にヒートパイプ1の冷却を行い、内圧を低下させてから取り出すことで良好な形状のヒートパイプ1を得ることが可能となる。この結果、偏平加工および曲げ加工を行っても平滑な面を維持できるので、ヒートパイプ内部の蒸気通路を確保することができ、性能の良いヒートパイプを得ることができる。
また、ヒートパイプの両端部の窪みが抑えられるので、ヒートパイプとしての有効面が大きくなり、発熱体や冷却体と取り付ける際に、接触熱抵抗が大きくならず、冷却システムとしての熱伝達低下を防止することができる。
【0019】
なお、ヒートパイプを挟み込む型に段差を設けておくことで、偏平加工と厚み方向との曲げ加工を同時に行ってもよい。これにより、型の種類を減らすことができ、製造工程を簡素化できる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0021】
[実施例1]
直径5mmの断面円形のヒートパイプ1から、図1(d)に示したような厚み2mmで長さの中央部で幅方向に90度の曲げ部2を有する断面偏平なヒートパイプ1を製作する。
【0022】
まず、図1に示したような一対の偏平用型41A,41Bを準備した。この偏平用型41A,41Bを200℃の温度に加熱した後、断面円形のヒートパイプ1を挿入し、ヒートパイプ1の厚みが2mmになるように潰し加工を行つた。この状態から更に90度曲げを行うために曲げ用メス型42および曲げ用オス型43を偏平用型41A,41B間の隙間Hに挿入し、圧縮加工を行った。その後、偏平用型41A,41Bを解放し、偏平及び曲げ加工を行ったヒートパイプlを取り出し、その形状を調べた。また、比較のため断面円形のヒートパイプ1に90度の曲げ加工を施した後、室温で潰し加工を行い、同様なヒートパイプ1を製作した。その結果、従来法である後者のヒートパイプ1では、曲げ部2の漬し面11に大きな凹み31が発生していた。これに対し、本実施例1の方法による前者のヒートパイプ1では、直線部及び曲げ部2ともに平坦な潰し面11が得られた。
【0023】
[実施例2]
実施例1と同様な漬し曲げ加工を、偏平用型41A,41Bの温度を50℃,100℃,150℃,250℃,300℃に変えてヒートパイプ1の加工を行った。この結果、加工温度50℃のものでは、曲げ部2の内側に図4に示すような材料の座屈によるシワ32が発生した。加工温度100℃では、曲げ部2の内側に僅かにシワ状変形跡が見られたもののほぼ平坦な面が得られた。加工温度150℃〜250℃のものは、実施例1と同様平坦な加工であった。さらに温度を上げた300℃のものは、表面の酸化変色がややきつくなったのに加え、偏平用型41A,41Bの解放後に漬し面11が逆に若干膨らんでいる様に見られた。これより加工時の温度としては、この場合100℃以上300℃以下が適性値であることが分かった。
【0024】
[実施例3]
さらに幅の広い断面偏平なヒートパイプ1として、断面円形のヒートパイプ1から厚さ2mm、幅13mmに直線状の断面偏平なヒートパイプ1を製作した。図1に示した偏平用型41A,41Bを使用し、偏平加工時の偏平用型41A,41Bの温度が常温の場合と200℃の場合で潰し加工を行つた。この結果、常温加工のヒートパイプ1では、漬し面1lの中央が凹んだのに加えて、ヒートパイプ1の両端部にかなりの範囲で図5に示すような窪み33が生じた。これに対し、本実施例3の200℃で加工したヒートパイプ1では、ヒートパイプ1の両端部の一部に僅かな窪み33が生じているが、常温加工材に比べて大幅に改善することができた。また、潰し面11の中央部の凹み31は見られず、逆に若干膨らんでいるものが見られた。このため、200℃での漬し加工の後、偏平用型41A,41Bの冷却を行い、偏平用型41A,41Bの解放時の温度を変えてヒートパイプ1の製作を行った。この結果、解放時の偏平用型41A,41Bの温度が150℃以下であれば、本実施例3のヒートパイプ1では、漬し面11の膨らみが無く平坦な断面偏平なヒートパイプ1が得られることが分かった。
【0025】
[実施例4]
実施例3で得られた断面偏平なヒートパイプ1を、図1に示した曲げ用メス型42および曲げ用オス型43により幅方向の曲げ加工を行った。1つヒートパイプ1に対して常温での曲げ加工を行い、もう1つのヒートパイプ1に対して、偏平用型41A,41Bを200℃に加熱した状態で曲げ加工を行った後、偏平用型41A,41Bを150℃に冷却した後、ヒートパイプ1を取り出した。この結果、常温で加工を行ったヒートパイプ1には、曲げ部2の内側に大きなシワ32が発生したが、本実施例4の加熱加工を行ったものは、シワ状の変形も無く、平坦な形状のヒートパイプ1を得ることができた。
【0026】
[実施例5]
実施例3の200℃で偏平加工した状態で偏平用型41A,41Bを解放せず、ヒートパイプ1を厚み方向に拘束したまま、図1に示す曲げ用メス型42および曲げ用オス型43を挿入し、連続して曲げ加工を行った。その後曲げ用メス型42および曲げ用オス型43を抜き取り、偏平用型41A,41Bの温度を150℃に冷却した後、ヒートパイプ1を取り出した。こうして偏平加工と曲げ加工を連続して行って得られたヒートパイプ1も、実施例4のものと同様、平坦で形状の良い断面偏平なヒートパイプlが得られた。
【0027】
ヒートパイプに内圧をかけるための温度としては、ヒートパイプの筐体の肉厚等によって変わってくるが、本実施例の経験から言えば、少なくとも100℃以上の加熱が必要であり、これ以下では潰し面11の中央部の凹みを防止することができない。また、300℃を超えた場合、表面の酸化変色が強くなる傾向があり、好ましくない。
また、変形加工後にヒートパイプを取り出す際の温度に関しても、ヒートパイプの箇体の肉厚や偏平加工時の幅等に影響されるため、一概には言えないが、肉厚が薄く、幅が広い場合には、低い温度が必要になり、肉厚が厚く、幅が狭いものでは高温でも影響が少ない。但し、少なくとも100℃以下の状態でヒートパイプを取り出すことで、ほとんどの場合、内圧による影響が残らない結果となった。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ヒートパイプの変形加工の際に、ヒートパイプに内圧を加えているので、偏平加工や曲げ加工等の変形加工を施した後も、平滑な面を維持でき、これによりヒートパイプ自体の熱伝達性能の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(d)は本発明の実施の形態に係るヒートパイプの加工方法を示し、(a)および(b)は偏平加工方法を示す断面図、(c)は曲げ加工方法を示す平面図、(d)は曲げ加工されたヒートパイプを示す平面図である。
【図2】従来の方法で偏平加工したヒートパイプの断面図である。
【図3】従来の方法で曲げ加工したヒートパイプの外観図である。
【図4】従来の方法で曲げ加工したヒートパイプの外観図である。
【図5】従来の方法で偏平加工したヒートパイプの外観図である。
【符号の説明】
1 ヒートパイプ
2 曲げ部
5 ヒートパイプ
11 潰し面
31 凹み
32 シワ
41A,41B 平滑用型
42 曲げ用メス型
42a 凹部
43 曲げ用オス型
43a 凸部
H 隙間
Claims (5)
- ヒートパイプを準備し、
前記ヒートパイプに所定の内圧を加えた状態で前記ヒートパイプの変形加工を行うヒートパイプの加工方法であって、
前記ヒートパイプの変形加工は、前記ヒートパイプに前記所定の内圧を加えると共に、対向する一対の偏平用型により前記ヒートパイプを所定の方向に偏平加工を行い、さらに前記ヒートパイプを前記偏平用型により前記所定の方向に拘束した状態、かつ、前記ヒートパイプに前記所定の内圧を加えた状態で前記ヒートパイプを前記所定の方向に垂直な方向に曲げ加工を行う工程を含むことを特徴とするヒートパイプの加工方法。 - 前記ヒートパイプの変形加工は、前記変形加工後に前記所定の内圧を除去した状態で変形加工用型から前記ヒートパイプを取り出す工程を含む構成の請求項1記載のヒートパイプの加工方法。
- 前記ヒートパイプの変形加工は、前記ヒートパイプ全体を所定の温度に加熱あるいは冷却することにより、前記ヒートパイプに加える前記所定の内圧を制御して行う構成の請求項1記載のヒートパイプの加工方法。
- 前記ヒートパイプの変形加工は、前記ヒートパイプを100〜300℃に加熱して行う構成の請求項1記載のヒートパイプの加工方法。
- 前記ヒートパイプの変形加工は、前記ヒートパイプを100〜300℃に加熱して行い、加熱温度の80%以下に冷却して変形加工用型から変形加工後の前記ヒートパイプを取り出す工程を含む構成の請求項1記載のヒートパイプの加工方法。
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