JP4232545B2 - 高強度熱延鋼板とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車足廻り部品などに使用され、その薄肉軽量化に寄与する高強度熱延鋼板とその製造方法に関する。本発明にかかる熱延鋼板は、特に溶接性にも優れており、ホイールリムなど溶接後に成形されるような部品には最適である。
【0002】
【従来の技術】
連続熱間圧延によって製造されるいわゆる熱延鋼板は、比較的安価な構造用材料として自動車をはじめとする各種の産業機器に広く使用されている。特に燃費低減に大きく寄与する自動車の足廻り部品への高強度熱延鋼板の適用が増加しつつある。最近はさらなる環境問題意識の高まりにより、熱延鋼板の高強度化の要望はさらに強くなり、超高強度である880MPa以上の引張強さを有する熱延鋼板の要望がでてきた。
【0003】
880MPa以上の引張強さを有する熱延鋼板としては、例えば特許文献1、特許文献2に、低温巻取りにて変態強化を利用する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、熱間圧延後の冷却過程で鋼板の平坦が不芳になるという問題と、降伏強度/引張強度である降伏比(YR)が低いという問題があった。降伏比が低いと例えばホイール・リムでの縁石衝突強度等で高強度化の十分な効果が得られない。さらにホイール・リムなど溶接後成形される部品に適用する場合、溶接熱影響部 (HAZ 部) の軟化が生じるため、その後の成形性に問題があった。
【0004】
一方、析出強化を主体に高強度化する方法は、例えば特許文献3、特許文献4、特許文献5が開示されている。いずれもTiを主体とした析出強化を図ったものであるが、引張強さで880MPa以上の高強度は得られていない。
【0005】
【特許文献1】
特開2000-282175 号公報
【特許文献2】
特開平11-193443 号公報
【特許文献3】
特開平8-199298号公報
【特許文献4】
特開平6-200351号公報
【特許文献5】
特開平6-228708号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述したような従来技術の問題点を解決し、圧延直角方向の引張強さで880MPa以上を有し、かつ降伏比0.80以上を有する高強度鋼板とその製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
熱間圧延後の巻取温度に鋼板の強度 (引張強度および降伏強度) は大きく影響を受ける。高い降伏強度、すなわち降伏比を得るために、巻取温度を上げ析出強化を利用して高強度化を図っても、TiやNbなどのみでは、ある程度以上含有させると効果が飽和するため引張強さで880MPa以上の高強度が得られないという問題があった。
【0008】
一方、高強度化のため変態強化を利用すべく低温巻取りを行えば、前述の平坦不良やマルテンサイトの増大などによる降伏比の低下という問題が生じる。
本発明者らは、かかる課題実現のため鋭意実験の結果、引張強度で880MPa以上の高強度鋼と降伏比0.80以上を得るにはVの多量の添加が有効であることを見出した。その際、Tiの複合添加と適切なMn添加が必要であることを見出し、本発明を完成させたのである。
【0009】
すなわち、本発明者らは、Vによる析出強化を効果的に発揮させるためには、Ti (またはTi、Nb) との複合添加を行い、かつ巻取温度を上げることにより、Vの析出を促進させることが有効であり、さらにMn量で変態点を最適化することが有効であることを知った。さらに、これらの効果を十分に発揮させるためには、(a) 粗圧延前のスラブ加熱の段階での炭化物の未固溶を防止すること (後述する(1) 式参照) 、(b)V、Ti、NbとCの含有量をバランスさせること (後述する(2) 式参照) が必要で、そして更に所望の強度を得るためには後述する(3) 式の関係を満足すればよいことが分かった。
【0010】
かくして、本発明によれば、降伏比0.80以上で引張強度で880MPa以上の高強度熱延鋼板が得られる。
本発明においてVとTiまたはNbとを複合添加することによりVの析出が促進される理由は明らかでないが、VとTi、Nbが炭化物として複合析出するか、または、Ti、Nbの炭化物がVの析出核として働き、Vの析出が促進されるものと考えられる。
【0011】
なお、本発明で炭化物には微量の窒素を含有する炭窒化物をも含む。
本発明はこのような知見に基づき完成した高強度鋼板およびその製造方法であって、本発明を要約すると以下の通りである。
【0012】
(1)質量%で、C:0.04 〜0.20%、Si:0.001%〜1.1 %、Mn:0.8%超、3.0 %以下、Al:0.001〜0.5 %、V:0.1%超、0.5 %以下、Ti:0.05 %以上、0.15%未満、Nb:0〜0.05%、かつ、下記(1) 式〜(3) 式を満たし、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼組成を有し、880MPa以上の強度と降伏比0.8 以上を有する高強度熱延鋼板。
【0013】
(Ti/48+Nb/93) ×C/12≦ 3.5×10-5・・・・・・・・・ (1)
0.4 ≦ (V/51+Ti/48+Nb/93)/(C/12) ≦ 2.0・・・・・ (2)
V+Ti ×2+Nb×1.4+C×2+Si×0.2+Mn×0.1 ≧0.70・・ (3)
【0014】
(2)マルテンサイトおよび残留オーステナイトのそれぞれの体積率が5%未満であり、かつ合計の体積率が5%未満である上記(1) に記載の高強度熱延鋼板。
【0015】
(3)前記鋼組成が、更に、質量%で、Ca:0.0002 〜0.010 %、Zr:0.01 〜0.10%、および希土類元素:0.002〜0.10%のうちの1種または2種以上を含む上記(1) または(2) に記載の高強度熱延鋼板。
【0016】
(4)前記鋼組成が、更に、質量%で、Cr:0.05 〜1.0 %およびMo:0.05 〜1.0 %のうちの1種または2種を含む上記(1) 〜(3) のいずれかに記載の高強度熱延鋼板。
【0017】
(5)前記鋼組成が、更に、質量%で、Cu:0.05 〜1.0 %およびNi:0.05 〜1.0 %のうちの1種または2種を含む上記(1) 〜(4) のいずれかに記載の高強度熱延鋼板。
【0018】
(6)上記(1) 〜(5) のいずれかに記載の鋼組成を有する鋼片を1100℃以上に加熱してから、粗圧延を実施し、仕上温度750 ℃以上で仕上圧延を行って熱間圧延を終了後、平均冷却速度10℃/s以上で冷却し、400 〜650 ℃で巻取ることを特徴とする高強度熱延鋼板の製造方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態についてさらに具体的に詳細に説明する。なお、本明細書における鋼組成を示す「%」は、特にことわりがない限り、「質量%」である。
【0020】
(1)鋼片の鋼組成(化学組成)
C:Cは、鋼板の強度を高めるに好ましい成分であり、0.04%以上含有する。その含有量が0.20%を超えると加工性の低下、およびマルテンサイトや残留オーステナイトの増大による降伏比の低下を招く上に、溶接性の劣化を招く。従ってCの含有量は0.20%以下と定めた。なお、高強度化の観点からは、0.06%超が好ましく、より好ましくは0.09%超である。また、0.17%以下が好ましく、0.16%以下がより好ましい。
【0021】
Si:Siは、固溶強化を通して鋼板の強度、延性を向上させる好ましい成分である。この作用を得るには0.001 %以上の含有が必要である。一方、1.1 %を超えて含有させても上記作用による効果が飽和する上に、溶接性の劣化を招く。したがって、Si含有量は1.1 %以下と定めた。化成処理性と、島状スケール疵による表面性状の劣化を抑制するという観点からは、好ましくは1.0 %以下、より好ましくは0.6 %以下、さらに好ましくは0.1 %以下である。
【0022】
Mn:Mnは鋼板の強度確保に必要な元素である。変態点を下げ、V炭化物の析出状態を制御するのに寄与するとともに、固溶強化元素として高強度化にも寄与する。Mnの含有量が0.8 %以下の場合には前述の作用が得られず、一方、3.0 %を超えて含有させてもその効果が飽和するだけでなく、加工性の低下と、マルテンサイトや残留オーステナイトの増大による降伏比の低下を招く。このためMnの含有量は0.8 %超、3.0 %以下と定めた。なお、下限は、高強度化の観点からは、好ましくは1.0 %超、より好ましくは1.5 %超である。上限は、加工性の観点から、好ましくは2.6 %、より好ましくは2.4 %である。
【0023】
V:Vは本発明で最も重要な元素である。Vは、比較的低い温度で、フェライト地に炭化物 (主に炭化物、微量の窒素を含有する炭窒化物の場合もある) として微細に析出し、高強度化に寄与する。その効果は0.1 %以下では得られない。一方、0.5 %を超えて含有させるとその効果は飽和するだけでなく、Vの炭化物が粗大となり強度と延性が低下する。従ってVの含有量をV:0.1%超、0.5 %以下と定めた。なお、好ましくは0.15%超であり、より好ましくは0.2 %超である。化成処理性の向上の観点からは、0.3 %以下が好ましい。
【0024】
Ti:Tiは本発明で重要な元素である。フェライト地に炭化物として析出し、溶接性を劣化させることなく、高強度化に寄与するとともに、Vとの複合析出あるいはVの析出核として、Vの析出を促進し高強度化に大きく寄与する。その効果は0.05%未満では得られない。一方、Ti:0.15 %以上含有させてもその効果は飽和する上、炭化物が粗大となり強度と延性が低下する。従って、Ti:0.05 %超、0.15%未満と定めた。好ましくは0.07%以上、0.15%未満である。
【0025】
Nb:Nbは必要に応じて添加され、フェライトの細粒化および析出強化で鋼板の高強度化に有効な元素である。またV、Tiとの複合析出またはVの析出核としてのTi、Nb炭化物として、Vの析出を促進する作用をも有する。その効果を得るためには0.005 %以上とすることが好ましく、0.01%以上がより好ましい。一方、Nb:0.05 %を超えて含有させてもその効果は飽和してしまうため経済的でない。従ってNb:0〜0.05%と定めた。
【0026】
更に、上述のV、Ti、Nbの作用を発揮させて所望の特性を得るためには、さらに下記(1) 式〜(3) 式を満足する鋼組成とする。
Ti、Nbが(1) 式の上限を超えると、粗圧延前のスラブ加熱の段階で、未固溶炭化物が増大して、未固溶炭化物の粗大化や固溶炭素の減少による微細析出物の減少によって強度ばかりでなく、降伏比と延性が低下する。
【0027】
V、Ti、Nbの含有量が(2) 式の下限未満では、Vの析出が不十分となり強度が低下する。一方、上限を超えるとVが粗大になり強度と延性が低下する。
(3) 式の下限未満では880MPa以上の強度が得られない。
【0028】
一層、強度と延性を向上させるという観点からは、(2) 式の上限は1.5 以下が好ましく、1.0 以下がより好ましい。(2) 式の下限は0.45が好ましく、0.5 がより好ましい。また、(1) 式の上限は、3.2 ×10-5以下が好ましく、3.0 ×10-5以下がより好ましい。(1) 式下限は1.6 ×10-5以上が好ましく、2.0 ×10-5以上がより好ましい。(3) 式は0.75以上が好ましく、0.80以上がより好ましい。
【0029】
(Ti/48+Nb/93) ×C/12≦ 3.5×10-5 ・・・・・・・・・(1)
0.4 ≦ (V/51+Ti/48+Nb/93)/(C/12) ≦ 2.0 ・・・・・(2)
V+Ti ×2+Nb×1.4+C×2+Si×0.2+Mn×0.1 ≧0.70・・・(3)
【0030】
Al:Alは脱酸を目的として添加する。0.001 %未満ではこの効果が得られない。一方、Alはフェライト体積率の増加を助け加工性をより一層向上させる効果を有するので、この効果を得るために0.5 %まで含有させても良い。そのため、含有量は0.001 %〜0.5 %とした。単に脱酸を目的とする場合には、0.10%を超えるとその効果が飽和して経済性を損ねるので、その含有量は0.10%以下とすることが好ましい。
【0031】
本発明にかかる熱延鋼板には以下に示す理由により、Ca、Zr、希土類元素、Cr、Mo、Cu、Niの1種または2種以上を必要に応じ含有させることができる。
Ca、Zr、および希土類元素:これらの成分は何れも介在物の形状を調整して加工性を改善する作用を有する。しかしその含有量がそれぞれCa:0.0002 %未満、Zr:0.01 %未満および希土類元素:0.002%未満では前記作用による所望の効果が得られず、一方、それぞれCa:0.010%、Zr:0.10 %および希土類元素:0.10 %を超えて含有させると、逆に鋼中の介在物が多くなりすぎて加工性が劣化するので、それぞれの含有量を、Ca:0.0002 〜0.010 %、Zr:0.01〜0.10%、希土類元素:0.002〜0.10%と定めた。
【0032】
Cr、Mo:Cr、Moは少なくとも1種含有され、固溶強化により鋼板の高強度化を図る効果を有する。しかしその効果はそれぞれ0.05%未満では得られず、一方、それぞれ1.0 %を超えて含有させるとその効果が飽和するため経済的でない。従ってそれぞれの含有量を0.05〜1.0 %と定めた。化成処理性の観点から各々0.5 %以下が好ましく、合計で0.5 %以下がより好ましい。
【0033】
Cu、Ni:Cu、Niは少なくとも1種含有され耐食性向上の作用を有する。しかしその効果はそれぞれ0.05%未満では得られず、一方、それぞれ1.0 %を超えて含有させるとその効果が飽和するため経済的でない。従ってそれぞれの含有量を0.05〜1.0 %と定めた。より一層の経済性を考慮する場合には、それぞれ0.5 %未満が好ましい。
【0034】
鋼中に不可避的に混入する「不可避不純物」としてはP、S、Nが挙げられるが、P、S、Nについては出来ればその含有量を以下のように規制するのが望ましい。
【0035】
P:Pは、粒界偏析による脆化だけでなく、溶接性を劣化させるため、その含有量は0.05%以下にすることが望ましい。それらの特性をより一層向上させようとの観点からは 0.03 %以下とすることが好ましい。
【0036】
S:Sは硫化物系介在物を形成して加工性を低下させる不純物元素であるため、その含有量は0.05%以下に抑えるのが望ましいが、一段と優れた加工性を確保しようとの観点からは 0.008%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.003 %以下である。
【0037】
N:Nは加工性を低下させる不純物元素であり、その含有量は0.01%未満に抑えることが望ましい。好ましくは、0.006 %以下であり、より好ましくは、0.005 %未満である。
【0038】
本発明にかかる熱延鋼板の組織は、フェライトを体積率で50%以上含むことが好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。マルテンサイトや残留オーステナイトは、降伏比を低下させる上、HAZ 部での軟化を招いて溶接後の成形性を劣化させるため、その合計の体積率を5%未満とし、それぞれの体積率を5%未満とする。合計体積率は、好ましくは3%未満であり、より好ましくは0%である。マルテンサイトと残留オーステナイトのそれぞれの体積率は、好ましくは3%未満であり、より好ましくは0%である。このようにマルテンサイトおよび残留オーステナイトの組織を低減する手段としては熱間圧延終了後の冷却速度および巻取り温度を調整することが考えられる。
【0039】
本発明における鋼組成は、残部はFeであり、不可避的不純物として前述の窒素(N) や、P、Sの他にSn、B、Pb、Asなどがあり、それらは合計0.1 %まではその存在は許容される。
【0040】
以上の鋼組成を有する鋼は、例えば転炉、電気炉等により溶製される。鋼種も、リムド鋼、キャップド鋼、セミキルド鋼またはキルド鋼のいずれでもよい。さらに、鋼片の製造は、造塊−分塊圧延あるいは連続鋳造のいずれの手段によってもよい。これらの点について本発明は特に制限されない。
【0041】
このようにして用意された鋼片は、以下に述べる条件によって熱間圧延、巻取りを行う。
(2)熱延鋼板の製造条件
熱間圧延は、加熱温度1100℃以上、仕上温度は750 ℃以上で実施される。1100℃以上の加熱は、TiやVの析出物等を固溶させ、その後の再析出にて鋼板の強化に寄与させるためである。このとき加熱炉に装入するスラブは高温の熱片であってもよいし、室温まで冷やした冷片であってもよい。
【0042】
鋼片の加熱後、粗圧延を実施し、次いで仕上圧延が施される。粗圧延は特に制限されないが、仕上圧延の仕上温度は750 ℃以上とする。仕上温度が750 ℃未満では、バンド組織の過度の生成や、変態して生じたフェライトヘの過度の歪の導入で、加工性が劣化する。
【0043】
粗圧延後、仕上温度やコイル内での温度の均一化を図る目的で、粗バーを保温または加熱するのも有効な手段である。このときの加熱または保持は、租バーヒータや保温カバーで実施しても良いし、粗バーをコイル状に巻き取って、炉に装入しても構わない。なお、エッジなど一部のみ加熱するのも、有効な手段である。また仕上圧延開始前に前後の粗バーを接合して連続的に通板するのも何ら問題ない。
【0044】
仕上圧延後、冷却してコイル状に巻取られる。仕上圧延後から巻取りまでの冷却速度はTiやVの析出物の粗大化を抑えるために平均で10℃/s 以上とする。15℃/s 以上が好ましく、20℃/s 以上がより好ましい。上限は特に規定しないが、平均冷却速度が150 ℃/s を超えると平坦不良が発生しやすい。
【0045】
本発明においては、巻取温度が特に重要で、引張強さで880MPa以上、降伏比0.80以上を確保するには400 〜650 ℃とする。400 ℃未満では析出強化の働きが不十分であり、マルテンサイトや残留オーステナイトも増大する。また650 ℃を超えると析出物の粗大化が生じ、引張強さや降伏比の低下が生じる。析出物をより微細化し一層高強度化するためには巻取温度は600 ℃以下が好ましく、580 ℃以下がより好ましい。マルテンサイトや残留オーステナイトの体積率を低減してより一層降伏比を上昇させるためには、巻取温度は450 ℃以上が好ましく、より好ましくは500 ℃以上である。
【0046】
なお、炭化物の粗大化を抑制し、強度と延性をより一層向上させるという観点からは、650 ℃から巻取までの時間は15秒以内が好ましく、より好ましくは10秒以内である。
【0047】
鋼板の引張強さおよび降伏比は、自動車足回り部品の衝撃強度へ大きく影響する。したがって、引張強さは930MPa以上、さらには980MPa以上であるのが好ましい。また、降伏比は0.85以上が好ましい。
【0048】
製造された熱延鋼板については、通常はスキンパス圧延による形状矯正や酸洗によるスケールの除去が行われ、表面には防錆油が塗布される。
なお、本発明鋼板に溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、電気めっき等の表面処理を施す場合には、更に優れた表面性状、延性を備えた表面処理鋼板が得られる。
【0049】
本発明にかかる熱延鋼板は、通常は、板厚さが6〜1.2mm 、場合により3.2mm 以下であるが、特に制限されることはない。
次に、実施例によって本発明の作用効果をさらに具体的に説明する。
【0050】
【実施例】
表1に示す化学組成の鋼を、実験圧延機を使用して、表2に示す条件で加熱し、粗圧延および仕上圧延相当の圧延を行って板厚2.6mm の鋼板とし、さらに冷却した後に巻取りシミュレーションを行った。
【0051】
このときの巻取りシミュレーションは、巻取り温度まで冷却した鋼板を、巻き取り温度に保持した電気炉に装入し、その温度で30分保持した後、20℃/hr で冷却することにより行い、巻取り後の温度履歴を模擬した。得られた鋼板からJIS 5号引張試験片を採取し、引張試験を行った。また、溶接幅100mm でDCバット溶接した試験片を作製し、内側半径を板厚と等しくした 180°曲げの曲げ試験を溶接部について行って割れの有無を調査した。
【0052】
これらの結果を表2に示した。
表2から明らかなように、本発明により製造された鋼板は、何れも、880MPa以上の引張強度と、降伏比 (=降伏強度/引張強度) が0.80以上の降伏強度を示すとともに、強度−延性バランス (TS×El) が14000MPa−%以上と延性にも優れる熱延鋼板となっている。
【0053】
一方、成分または製造方法が本発明を外れる試番12〜20では、降伏比、引張強度、または強度−延性バランス (TS×El) のいずれかが劣る。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【発明の効果】
本発明にかかる熱延鋼板は、880MPa以上の引張強度と降伏比0.80以上を有し、耐久性が問題となる自動車足廻り部品等に適用でき、特に耐縁石衝突強度が問題となるホイール・リムに最適である。
Claims (6)
- 質量%で、C:0.04 〜0.20%、Si:0.001〜1.1 %、Mn:0.8%超、3.0 %以下、Al:0.001〜0.5 %、V:0.1%超、0.5 %以下、Ti:0.05 %以上、0.15%未満、Nb:0〜0.05%、かつ、下記(1) 式〜(3) 式を満たし、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼組成を有し、880MPa以上の強度と降伏比0.80以上を有する高強度熱延鋼板。
(Ti/48+Nb/93) ×C/12≦ 3.5×10-5 ・・・・・・・・ (1)
0.4 ≦ (V/51+Ti/48+Nb/93)/(C/12) ≦ 2.0・・・・・ (2)
V+Ti ×2+Nb×1.4+C×2+Si×0.2+Mn×0.1 ≧0.70・・ (3) - マルテンサイトおよび残留オーステナイトのそれぞれの体積率が5%未満であり、かつ合計の体積率が5%未満である請求項1に記載の高強度熱延鋼板。
- 前記鋼組成が、更に、質量%で、Ca:0.0002 〜0.010 %、Zr:0.01 〜0.10%、および希土類元素:0.002〜0.10%のうちの1種または2種以上を含む請求項1または2に記載の高強度熱延鋼板。
- 前記鋼組成が、更に、質量%で、Cr:0.05 〜1.0 %およびMo:0.05 〜1.0 %のうちの1種または2種を含む請求項1〜3のいずれかに記載の高強度熱延鋼板。
- 前記鋼組成が、更に、質量%で、Cu:0.05 〜1.0 %およびNi:0.05 〜1.0 %のうちの1種または2種を含む請求項1〜4のいずれかに記載の高強度熱延鋼板。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の鋼組成を有する鋼片を1100℃以上に加熱してから、粗圧延を実施し、仕上温度750 ℃以上で仕上圧延を行って熱間圧延を終了後、平均冷却速度10℃/s以上で冷却し、400 〜650 ℃で巻取ることを特徴とする高強度熱延鋼板の製造方法。
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