JP4231113B2 - 高圧放電ランプおよび照明装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、透光性セラミック放電容器を備えた高圧放電ランプおよびこれを用いた照明装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
透光性アルミナなどの透光性セラミックからなる放電容器を備えた高圧放電ランプは、石英ガラスに比較して耐熱性および耐食性に優れることから、優れた寿命特性を有し、さらにジスプロシウムDyやナトリウムNaなどの発光金属との反応による失透現象が少なくて、したがってこれに伴う光束低下を抑制できると期待されている。
【0003】
ところで、透光性セラミックとして最も一般的に用いられている透光性アルミナセラミックは、結晶粒径を制御するために、数百ppmのMgOが添加剤として用いられる。添加されたMgOは、アルミナの粒成長の過程で結晶粒外に排出され、粒界においてアルミナとの化合物であるいわゆるスピネルを形成する。結晶粒界にスピネルが存在すると、光を散乱して光透過率が低下する。そこで、光透過率の低下を防止することを目的として、スピネルを低減させることは特公昭59−6831号公報に記載されている。しかし、この技術は、スピネル相の存在を前提としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者の研究によると、透光性セラミックの放電容器を用いたメタルハライドランプにおいて、従来の構成では、封入されている金属ハロゲン化物と放電容器との反応により、透光性セラミック放電容器の腐食が著しく進行しやすいという問題のあることが分かった。
【0005】
本発明者の考察によると、上記問題は以下の理由による。すなわち、MgOを添加剤として含む透光性セラミックにおいては、Al2O3に対してMgOが1:1の比率で混在しているときにのみスピネルを形成し、比率が少しでも上記からずれると、スピネルを形成しない。すなわち、透光性セラミックがスピネル型構造を含む場合には、スピネル型構造を形成していない添加剤を含んだ結晶が並存していると考えられる。そして、スピネル型構造は、安定性が高いので、水素および酸素などの不純ガスを吸着することはない。
【0006】
これに対して、添加剤を含むがスピネルを形成していない結晶は、不安定で、水素および酸素を吸着すると考えられる。
【0007】
さらに、本発明者は、スピネル型構造を含む透光性セラミック放電容器を用いた従来の高圧放電ランプを点灯すると、比較的早い段階において封入物のペレット中に混入している不純ガスの水素および酸素が消失することを発見した。
【0008】
ところで、スピネルになり得なかった結晶は、排出された余分のものから形成されていることから、上記したようにストイキオメトリックな組成からずれた様々な相の入り交じった不安定な状態にあるため、透光性セラミック放電容器内の水素および酸素を吸着するためであると考えられる。
【0009】
以上の説明を要約すると、スピネル型構造を含むセラミックにはゲッタ作用があるといえる。
【0010】
しかし、さらに点灯を継続することにより、今度は水素および酸素を吸着して水分を含んだスピネルになり得なかった結晶が、金属ハロゲン化物と激しく反応していると考えられる。
【0011】
そこで、本発明者はスピネルを含まない透光性アルミナセラミック放電容器を用意し、これを用いてメタルハライドランプを試作して点灯してみた。
【0012】
その結果、このランプにおいては、腐食は殆ど見られなかったが、残留水分特に酸素によるタングステン電極のアタックが激しく、これに伴うランプの黒化が著しかった。このため、光束の低下や温度の異常上昇による気密漏れなどが発生しやすくなるという問題がある。
【0013】
本発明は、透光性セラミック放電容器が金属ハロゲン化物と反応しにくくて、しかも不純ガスの除去により電極などの金属部分の損傷が少ないために、ランプの黒化に伴う光束の低下や気密漏れなどの不都合が少ない高圧放電ランプおよびこれを用いた照明装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を達成するための手段】
請求項1の発明の高圧放電ランプは、マグネシウム酸化物を添加剤として含むアルミナセラミックからなり、少なくとも放電空間を包囲する内面部分は添加剤のMgOによる内面部分の表面層のスピネルが昇華してスピネル型構造が存在しないように構成された膨出部および膨出部の両端に連通して配置され膨出部より内径が小さい端部部分を備えた透光性セラミック放電容器と;封着性の部分および封着性の部分の先端に基端部が接続している耐ハロゲン化物部分を備え、透光性セラミック放電容器の端部部分内を貫通するとともに、端部部分との間にわずかな隙間を形成する給電導体と;膨出部内に配設されて給電導体に接続した電極と;端部部分および給電導体を封着するセラミック封止用コンパウンドのシールと;
金属ハロゲン化物を含み放電空間部内に封入された放電媒体と;放電空間内の不純ガスを除去するゲッタ手段と;を具備していることを特徴としている。
【0015】
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0016】
「透光性セラミック放電容器」とは、半透明の気密性アルミニウム酸化物およびイットリウム−アルミニウム−ガーネット(YAG)などの多結晶の金属酸化物からなる耐火材料製の放電容器を意味する。
【0017】
なお、透光性とは、放電による発光を放電容器を透過して外部に導出できる程度に透過すればよく、透明および拡散透光性のいずれでもよい。
【0018】
スピネル型構造とは、R2MO4(MはMg、Fe、Zn、Mnであり、RはAl、Feなどをいう。)の組成を有する酸化物をいい、結晶粒径制御のための添加剤とセラミック構成材料との化合物である場合が多いが、本発明においてはその目的を問わない。
【0019】
「少なくとも放電空間を包囲する内面部分はスピネル型構造が存在しない」とは、透光性セラミック放電容器全体または膨出部全体にスピネル型構造が存在しない場合を含むが、さらに透光性セラミック放電容器の膨出部の内面部分のみにスピネル型構造が存在しないで、その他の部分はスピネル型構造が存在している場合をも含むという意味である。内面部分とは、内面から約20μmの深さまでをいう。
【0020】
内面部分にスピネル型構造が存在しない構成を得る方法の一例を説明する。すなわち、MgOの添加量を従来の約半分程度にし、さらに焼結時の温度を50〜100゜高い1850゜程度にする。これにより、表面層のスピネルが昇華してしまうため、内面部分のスピネル型構造を除去することができる。なお、スピネル型構造を含むか否かは化学分析による定量分析や電子顕微鏡による分析で判別できる。
【0021】
透光性放電容器の「膨出部」とは、端部部分の内径に対する相対的な意味であり、放電空間を形成するためのものである。したがって、膨出部と端部部分との間には、明確な段部を有するものの他に、両者の間が連続的な曲線によって結ばれているような放電容器であってもよい。
【0022】
ところで、透光性セラミック放電容器を製作するには、最初から膨出部および端部部分を一体に成形することができる。これと異なる方法としては、円筒体および円筒体の両端を閉塞する中心孔明きの一対の端板で膨出部を、また端板の中心孔に細長いチューブを挿入して端部部分を、それぞれ形成し、焼結して一体化してもよい。
【0023】
「給電導体」とは、電源からバラスト手段を介して電極間に電圧を印加して、高圧放電ランプを始動し、電流を導入して点灯するために、機能するものであって、透光性セラミック放電容器内に気密にシールされて導入され、電極に接続する部材をいう。そして、給電導体は、透光性セラミック放電容器との良好な気密を得るために、封着性の部分とこれに続く耐ハロゲン化物部分とからなり、主として封着性の部分で透光性セラミック放電容器の端部部分にセラミック封止用コンパウンドのシールを介して固着される。
【0024】
「封着性の部分」とは、セラミック封止用コンパウンドのシールにより、透光性セラミック放電容器を、その端部部分と封着性の部分との間で、またはセラミックスリーブがさらに介在してシールするのに適した材料の部分であればよく、たとえばハフニウム、バナジウム、ニオブおよびタンタルあるいはこれらの合金を用いることができる。また、封着性の部分としては、水素および酸素に対する透過性は問わないが、上記した材料は結果的に水素および酸素透過性材料と同じである。透光性セラミック放電容器の材料に透光性アルミナセラミックを用いる場合、ニオブおよびタンタルはそれらの平均熱膨張係数が透光性アルミナセラミックとほぼ同一であるから、封着性の部分としてニオブおよびまたはタンタルを用いるのが好適である。YAGの場合も差が少ない。
【0025】
「耐ハロゲン化物部分」とは、高圧放電ランプの作動中に透光性セラミック放電空間容器内に存在するハロゲン化物および遊離ハロゲンによる腐食作用が殆どないしは全く起こらない物質からなる部分であることを意味する。たとえば、タングステン、モリブデン、プラチナ、イリジウム、レニウムおよびロジウムからなるグループから選択された金属あるいはこれらの金属の少なくとも一種の珪化物、炭化物または窒化物の1種または複数種からなる部分であり、異なる材質の心材に対して上記材料で被覆したものであってもよい。
【0026】
「わずかな隙間」とは、給電導体および透光性セラミック放電容器の端部部分の内面との間に形成される空所の厚さが少なくとも5μm以上で、最大でも端部部分の内径の1/4以下の大きさで、約200μm以下の空所を意味する。したがって、端部部分を貫通する給電導体の耐ハロゲン化物部分の直径は、端部部分の内径の少なくとも1/2までとする。
【0027】
また、上記わずかな隙間は、端部部分と給電導体との間にセラミックスリーブを介在させて形成することもできる。この場合、わずかな隙間は給電導体とセラミックスリーブとの間およびセラミックスリーブと端部部分の内面との間にせれぞれ形成される。
【0028】
さらに、給電導体の耐ハロゲン化物部分を棒体と、棒体に巻回したコイルとにより構成した場合、わずかな隙間は、コイルの外周面と端部部分の内面との間に形成することもできる。
【0029】
さらにまた、わずかな隙間は、高圧放電ランプの作動中その中に余剰のハロゲン化物が液化状態で侵入して最冷部を形成するが、隙間の間隔を適当に設定することにより、所望の最冷部温度にすることができる。
【0030】
セラミックスリーブを用いる場合には、透光性セラミック放電容器を構成することができる前述の材料と同一材料またはサーメットからなるスリーブであることを許容する。
【0031】
セラミックスリーブを用いることにより、わずかな隙間を形成しやすい。
【0032】
また、セラミックスリーブを給電導体の封着性の部分の先端部側の部分を包囲するように、すなわち耐ハロゲン化物部分との境界部近傍に、配設することにより、良好な封着を得ることができる。
【0033】
「ゲッタ手段」は、主として封入物のペレットに混入した水分によって透光性セラミック放電容器内に残存する水素および酸素を除去することを目的とするもので、ランプ構成部材たとえば給電導体などがゲッタ手段を兼ねていることを許容する。しかし、ランプ構成部材とは別にゲッタ手段を配設することもできる。後者の場合、ゲッタ手段の配設位置を耐ハロゲン化物部分および封着性の部分の境界部側に位置する耐ハロゲン化物部分すなわち基端部近傍とすると効果的である。
【0034】
ゲッタ手段を上記の位置に規定することが効果的である理由は次のとおりである。すなわち、ゲッタ手段を前記耐ハロゲン化物部分の基端部近傍に配設すると、ゲッタ手段を高圧放電ランプの点灯中にゲッタ作用に効果的な400〜750℃の温度に維持しやすい。なお、400℃を下回ると、不純物吸収作用が不十分であり、また750℃を超えると、ハロゲンとの反応が激しくなり、発光金属とゲッタ金属たとえばニオブとの交換が発生して、発光効率の低下や発光色の変化を生じやすくなる。
【0035】
ところで、ゲッタ手段を支持する手段および形状は問わない。しかし、ゲッタ手段を細い線条に成形して耐ハロゲン化物部分に巻回するか、給電導体の回りにセラミックスリーブを配設する場合には、当該スリーブの外側に巻回することにより、支持が容易になる。
【0036】
また、ゲッタ手段は、透光性セラミック放電容器中の水素および酸素を吸収した後にセラミック封止用コンパウンドによって被覆されてもよい。すなわち、給電導体の封着性の部分をセラミック封止用コンパウンドのシールにより透光性セラミック放電容器の端部部分に封止してから、透光性セラミック放電容器を水素および酸素が放出される温度まで加熱する。この加熱によって放出された水素および酸素がゲッタ手段に吸収される。次に、セラミック封止用コンパウンドのシール部分を再度加熱すると、同コンパウンドが溶融してゲッタ手段の上まで流動し延在して当該ゲッタ手段を被覆する。
【0037】
ゲッタ手段としては、給電導体の封着性の部分と同一の材料を用いることができる。
【0038】
そうして、本発明においては、放電空間を包囲する透光性セラミック放電容器の内面部分にはスピネル型構造が存在しないので、透光性セラミック放電容器がゲッタ作用をすることはないが、水素および酸素を吸着して水分を含んだスピネル型構造が放電媒体の金属ハロゲン化物と反応して腐食するといったことがない。透光性セラミック放電容器内の残留不純ガスはゲッタ手段によって除去されるので、黒化の発生、始動電圧の上昇および異常温度上昇による透光性セラミック放電容器の気密漏れを抑制できる。
【0039】
したがって、良好な寿命特性を示す高圧放電ランプを提供する。
【0040】
本発明の高圧放電ランプの第1の態様において、透光性セラミック放電容器は、マグネシウム酸化物を添加剤として含むが、膨出部の内面部分にはスピネルが存在しないアルミナセラミックからなる。
【0041】
膨出部の内面は放電空間を包囲するが、当該内面部分にはスピネルが存在しないので、セラミック中のスピネルによる透光性セラミック放電容器の腐食の著しい進行は生じない。
【0042】
本発明の高圧放電ランプの第2の態様において、ゲッタ手段は、少なくとも一方の端部部分内において耐ハロゲン化物部分の基端部近傍に配設されている。
【0043】
本態様は、ゲッタ手段を耐ハロゲン化物部分の基端部近傍に直接支持するだけでなく、セラミックスリーブを給電導体の回りに配設し、そのセラミックスリーブにゲッタ手段を支持させてもよい。この場合、セラミックスリーブにゲッタ手段を支持させる具体的な手段を問わないが、たとえばセラミックスリーブの外面のゲッタ支持予定部に溝を形成して、当該溝にゲッタ手段の線条を巻回することにより、支持する。しかし、ゲッタは、板状に成形してもよい。
【0044】
セラミックスリーブにゲッタ手段を支持させても、当該ゲッタ手段は、所期の作用を発揮する。また、上記構成によりゲッタ手段の支持が容易となる。
【0045】
一方、ゲッタ手段を耐ハロゲン化物部分に支持させるには、たとえば当該ゲッタ手段を線条にして耐ハロゲン化物部分に巻回することにより、実現することができる。さらに、ゲッタ手段を耐ハロゲン化物部分に溶接してもよいが、巻回だけで移動しなければ、溶接しなくてもよい。
【0046】
ゲッタ手段は、板状などにしてもよい。
【0047】
本発明の高圧放電ランプの第3の態様において、ゲッタ手段は、給電導体の封着性の部分である。
【0048】
封着性の部分をゲッタ手段としても用いるには、当該部分をニオブおよびまたはタンタルで構成するのがよい。
【0049】
また、封着性の部分をゲッタ手段としても作用させるには、高圧放電ランプの製造過程で水素および酸素を除去する態様と、高圧放電ランプの作動中に水素および酸素を除去する態様とのいずれを採用してもよい。
【0050】
まず、前者の除去態様の一例について説明する。たとえば酸化ジスプロシウムを含むセラミック封止用コンパウンドのリングを透光性セラミック放電容器の端部部分に乗せ加熱溶融させて封着性の部分の一部が透光性セラミック放電容器の端部部分内に露出した状態を作り、この状態で透光性セラミック放電容器を600〜1100゜の温度に加熱して、透光性セラミック放電容器内の水素および酸素を放出させる。放出された水素および酸素は封着性の部分を透過して除去される。
【0051】
次に、たとえば酸化マグネシウムを含むセラミック封止用コンパウンドのリングを端部部分に乗せて再び加熱溶融させ、酸化ジスプロシウムを含むセラミック封止用コンパウンドが封着性の部分の端部部分内の露出部を被覆し尽くすようにすると、両セラミック封止用コンパウンドの連続シールを形成する。
【0052】
後者の除去態様について説明する。高圧放電ランプの作動中にゲッタ手段として作用するためには、給電導体の封着性の部分が透光性セラミック放電容器の端部部分内に露出していなければならない。しかし、ハロゲン化物によって腐食されないように配慮する必要がある。このためには、端部部分の内径に2mmを加算した値以上の距離だけ給電導体の耐ハロゲン化物部分が端部部分内に延在させる。
【0053】
そうして、上記各態様においては、給電導体の封着性の部分をゲッタ手段としても兼用するので、部品点数および組立工数が少なくなるので、コストを下げることができる。
【0054】
本発明の照明装置は、照明装置本体と;照明装置本体に装着される請求項1ないし5のいずれか一記載の高圧放電ランプと;を具備していることを特徴としている。
【0055】
本発明は、上述した本発明の高圧放電ランプを光源として何らかの目的のために利用する全ての装置に適応するもので、これらの装置を包括的に照明装置という。たとえば、各種照明器具、表示用装置および投光装置などである。照明器具としては、屋外用および屋内用の照明器具を含む。投光装置としては、液晶プロジクタ、オーバヘッドプロジェクタ、サーチライト、移動体用ヘッドランプなどに適用することができる。
【0056】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0057】
図1は、本発明の高圧放電ランプの第1の実施形態を示す要部拡大断面図である。
【0058】
図において、1は透光性セラミック放電容器、2はセラミックスリーブ、3は給電導体、4は電極、5はゲッタ手段、6はセラミック封止用コンパウンドのシール、7はわずかな隙間である。
【0059】
透光性セラミック放電容器1は、ランタン酸化物を添加剤として含む透光性アルミナセラミックからなり、膨出部1aおよび端部部分1b、1bを備えている。
【0060】
膨出部1aは、内径13mm、全長35mm、肉厚約1mmであり、円筒部およびその両端に位置する一対の円錐状部分からなる。
【0061】
端部部分1bは、内径2.2mm、長さ15mm、肉厚約1mmの円筒状をなしている。
【0062】
セラミックスリーブ2は、アルミナからなり、外径2mm、内径1mm、長さ15mmの円筒状をなしている。そして、セラミックスリーブ2の外端部から5mmの位置において、周囲に幅約1mm、深さ0.3mmの溝2aが形成されている。
【0063】
給電導体3は、封着性の部分3aおよび耐ハロゲン化物部分3bからなる。
【0064】
封着性の部分3aは、外径0.9mm、長さ4mmのニオブの棒からなる。
【0065】
耐ハロゲン化物部分3bは、外径0.7mmのタングステンの棒からなり、封着性の部分3aの先端にレーザにより溶接されている。
【0066】
電極4は、外径0.5mmのタングステン線を耐ハロゲン化物部分3bの先端部に2重巻回して構成されている。
【0067】
ゲッタ手段5は、外径0.5mmのニオブ線からなり、セラミックスリーブ2の周囲に形成された溝2aに3〜4ターン巻回されて支持されている。
【0068】
セラミック封止用コンパウンドのシール6は、Al2O3−SiO2−Dy2O3系のガラスフリットを溶融固化してなり、透光性セラミック放電容器1の端部部分1b、セラミックスリーブ2および給電導体3の封着性の部分3aを気密にシールしている。
【0069】
そうして、耐ハロゲン化物部分3bおよびセラミックスリーブ2の内面の間と、セラミックスリーブ2の外面および透光性セラミック放電容器1の端部部分1bの内面の間とにわずかな隙間7が形成されている。
【0070】
また、透光性セラミック放電容器1の内部に放電媒体として、始動用ガス、発光金属のハロゲン化物および緩衝用の水銀が封入されている。
【0071】
始動用ガスは、アルゴン50torrである。
【0072】
発光金属のハロゲン化物は、ヨウ化ジスプロシウム、ヨウ化タリウムおよびヨウ化ナトリウムの混合物が30mgである。
【0073】
得られた高圧放電ランプは、交流100V電源においてランプ電力250Wで作動する。
【0074】
本実施形態の高圧放電ランプと、ゲッタを備えない以外は上記と同一仕様である比較例の高圧放電ランプとを点灯試験した結果、100時間の発光効率はともに90lm/W、相関色温度4000Kであったが、6000時間経過後本実施形態は100時間値の85%であった。これに対して、比較例は同じく75%であった。
【0075】
また、ランプ電圧は、本実施形態が+15V以下であったが、比較例が+25Vであった。
【0076】
以下、上記高圧放電ランプの製造方法について説明する。
【0077】
封着性の部分3aと先端部に電極4を装着した耐ハロゲン化物部分3bとを溶接して給電導体3を製作し、これをセラミックスリーブ2に挿入して、封着構体Mを構成する。
【0078】
次に、封着構体Mを透光性セラミック放電容器1の一方の端部部分1bに挿入し、予めリング状に成形したセラミック封止用コンパウンドを透光性セラミック放電容器1の端部部分1bの端面に載置して、真空または希ガス雰囲気中で加熱することにより、セラミック封止用コンパウンドを溶融させ、所定の位置まで延在させてシール6を形成する。
【0079】
その後、ドライボックス内でハロゲン化物のペレットおよび水銀を他方の端部部分から透光性セラミック放電容器1内へ導入してから、他方の端部部分に封着構体Mを挿入し、リング状に成形したセラミック封止用コンパウンドを端部部分の端面に載置して、アルゴン雰囲気中で加熱して透光性セラミック放電容器1を気密に封止して、高圧放電ランプの形態を得る。
【0080】
以上の工程で給電導体2の封着性の部分は完全にセラミック封止用コンパウンドのシール6によって包囲されている。
【0081】
次に、650℃の真空雰囲気中において、高圧放電ランプを約2時間加熱する。この工程において、透光性セラミック放電容器1中のハロゲン化物のペレットは溶融して、内部に含有されていた水分が透光性セラミック放電容器1内に放出される。そして、放出された水分はゲッタ手段5に吸収されるために、透光性セラミック放電容器1内はクリーンナップされる。
【0082】
なお、加熱温度が高いほど不純ガスは早く吸収されるが、加熱温度が750℃を超えると、セラミック封止用コンパウンドのシールが損傷を受ける恐れがあるので、実用的には600〜700℃が望ましい。
【0083】
さらに、透光性セラミック放電容器内のクリーンナップは、その後の放電による熱によっても行われる。
【0084】
図2は、本発明の高圧放電ランプの第2の実施形態を示す要部拡大断面図である。
【0085】
次において、図1と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0086】
本実施形態は、給電導体3およびセラミックスリーブ2の定置が容易になるようにした点で異なる。
【0087】
すなわち、封着性の部分3aをセラミックスリーブ2に対して位置決めするために、セラミックスリーブ2に接する位置に加締め部kを形成している。
【0088】
一方、透光性セラミック放電容器1の端部部分1bの外端部の内面に周段部sを形成するとともに、セラミックスリーブ2の外端部の外面に周凸部pを形成する。
【0089】
そうして、給電導体3をセラミックスリーブ2に挿入して、加締め部kがセラミックスリーブ2の端面に当接させる。また、セラミックスリーブ2を端部部分1b内に挿入して、周凸部pを端部部分1bの周段部sに当接させる。この状態でセラミック封止用コンパウンドのシール6を形成して透光性セラミック放電容器1を気密にする。このように構成すれば、重力により所定の位置に給電導体3およびセラミックスリーブ2を固定することができる。なお、周段部sおよび周凸部pの係止により、セラミック封止用コンパウンドのシールの流下位置を規制することができる。
【0090】
図3は、本発明の高圧放電ランプの第3の実施形態を示す要部拡大断面図である。
【0091】
図において、図1と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0092】
本実施形態は、セラミックスリーブが2分割されている点で異なる。
【0093】
すなわち、第1のセラミックスリーブ2Aはセラミック封止用コンパウンドのシール6に寄与し、第2のセラミックスリーブ2Bは耐ハロゲン化物部分3bの回りにわずかな隙間7を形成するのに寄与する。
【0094】
両セラミックスリーブ2Aおよび2Bの間を利用してゲッタ手段5を耐ハロゲン化物部分1bに巻回して配設している。
【0095】
第2のセラミックスリーブ2Bを位置決めするためにストッパ8を用いている。
【0096】
図4は、本発明の高圧放電ランプの第4の実施形態を示す要部拡大断面図である。
【0097】
図において、図3と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0098】
本実施形態は、封着性の部分がニオブキャップ3a’から構成されている点で異なる。
【0099】
すなわち、端部部分1bとニオブキャップ3a’との間にセラミック封止用コンパウンドのシール6が形成されて透光性セラミック放電容器1は気密になっている。
【0100】
また、水素および酸素ゲッタ5は、耐ハロゲン化物部分3bの基端部に巻回されている。耐ハロゲン化物部分3bの中間部がセラミックスリーブ2Cに挿入され、ゲッタ手段5とストッパ8との間に固定されている。このセラミックスリーブ2Cはわずかな隙間7を形成している。
【0101】
図5は、本発明の高圧放電ランプの第5の実施形態を示す要部拡大断面図である。
【0102】
図において、図1と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0103】
本実施形態は、給電導体3の封着性の部分3aをゲッタ手段として兼用し、かつセラミックチューブを使用していない点で異なる。
【0104】
すなわち、透光性セラミック放電容器1’の端部部分1b’は、内径1.2mm、長さ15mm、肉厚2.9mmの円筒状をなしている。
【0105】
給電導体3の耐ハロゲン化物部分3bが端部部分1b’内の10mmの位置まで進入している。
【0106】
給電導体3の封着性の部分3aの耐ハロゲン化物部分3b側の部分は、端部部分内においてシール6から露出してゲッタ手段を兼ねている。
【0107】
そうして、働程中透光性セラミック放電容器1’内の不純ガスである水素およぶ酸素は、露出した封着性の部分3aから吸収され、封着性の部分内を透過して透光性セラミック放電容器1’の外部に排除される。
【0108】
図6は、本発明の高圧放電ランプの第6の実施形態を示す要部拡大断面図である。
【0109】
図において、図1と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0110】
本実施形態は、給電導体3”の封着性の部分3a”をゲッタ手段として兼用し、かつ透光性セラミック放電容器1”および耐ハロゲン化物部分3b’の構成において異なる。
【0111】
すなわち、透光性セラミック放電容器1”は、MgOを添加剤とするが、添加量を少なくするとともに、焼結時の温度を高くして内面部分のスピネルを昇華させたものを用いて形成されている。
【0112】
膨出部1a”は、内径が9.7mm、全長47mmの円筒の両端に中心孔を形成した端板で閉塞してなる。
【0113】
端部部分1b”は、外形2.6mm、内径1.0mmの透光性アルミナセラミックチューブを端板の中心孔に挿入し、膨出部1a”および端部部分1bを焼結して一体化された透光性セラミック放電容器1”を形成している。
【0114】
給電導体3”の封着性の部分3a”は、直径0.5mmのニオブ棒からなる。耐ハロゲン化物部分3b”は、直径0.5mmのタングステン棒体AおよびコイルBからなり、棒体Aの基端部を封着性の部分3a”の先端にレーザにより溶接されている。コイルBは、直径0.2mmのモリブデンワイヤを棒体Aの周囲に巻回してなる。
【0115】
電極4’は、外径0.1mmのタングステン線を棒体Aの先端部に巻回して構成されている。
【0116】
セラミック封止用コンパウンドのシール6は、Al2O3−SiO2−Dy2O3系からなるものを溶融させて、耐ハロゲン化物部分3b”の基端部まで被覆しているが、その製造過程において一時的に封着性の部分3a”を透光性セラミック放電容器1”内に露出させる。すなわち、セラミック封止用コンパウンドのシール6を形成するに際して、2段階の加熱を行う。最初の加熱により、セラミック封止用コンパウンドを溶融させて端部部分1b”の内面と封着性野部分3a”の外面との間のわずかな隙間7に溶融したセラミック封止用コンパウンドが進入するが、封着性の部分3a”の先端部が露出した状態に止める。封着性の部分3a”の先端が露出した状態で透光性セラミック放電容器1”を600〜1100゜に加熱する。これにより、透光性セラミック放電容器1”内の水素および酸素が放出され、封着性の部分1a”の先端の露出部分が水素および酸素を吸収する。その後、再び封止用セラミックコンパウンドのシール6を加熱して溶融させて封着性の部分1a”を完全に被覆し、さらに耐ハロゲン化物部分1b”の基端部までシール6により被覆させる。封着性の部分3a”に吸収された水素および酸素は封着性の部分1a”を透過して放電容器1”の外部に放出する。
【0117】
図7は、本発明の高圧放電ランプの第7の実施形態を示す正面図である。
【0118】
図において、8は発光管、9は支持導体、10は支持バンド、11は絶縁チューブ、12は導体枠、13はフレアステム、14は外管、15は口金、16は導線である。
【0119】
発光管8は、図1に示す実施形態と同一構造の高圧放電ランプである。
【0120】
支持導体9は、発光管8の図において上方の封着性の部分3aに溶接されて発光管8を支持するとともに、電流を導入する。
【0121】
支持バンド10は、絶縁チューブ11を介して発光管8の図において下方の封着性の部分3aを絶縁的に支持している。
【0122】
導体枠12は、発光管8の外側に間隔をおいて配置され支持導体9および支持バンド10の両端部を溶接して支持し、上端部には弾性接触片12a、12aを備えている。
【0123】
フレアステム13は、一対の内部リード線13a、13bを備え、その一方の内部リード線13aに導体枠12の図において下端を溶接して発光管8を所定の位置に支持している。他方の内部リード線13bは、導線16を介して発光管8の図において下方の封着性の部分3aに接続している。
【0124】
外管14は、円筒状のT形バルブからなり、図において下部のネック部にフレアステム13を封着して以上説明した各部材を内部に気密に収納している。なお、導体枠12の接触片12aは、外管14の先端部近傍の内面に弾性的に接触し、外部から印加される衝撃に対して、導体枠12を保護し、かつ外管14に対して所定の位置に保持する。また、外管14内は、排気されて真空状態にされるか、排気後不活性ガスを封入される。
【0125】
口金15は、外管14のネック部に固着されるとともに、フレアステム13の一対の内部リード線13a、13bに電気的に接続されている。
【0126】
なお、図示しないが、外管14内には、イニシャルゲッタおよびパーフォーマンスゲッタを配設必要に応じて配設する。
【0127】
そうして、以上説明した本発明の第5の実施形態の高圧放電ランプは、一般照明用として使用することができる。
【0128】
図8は、本発明の照明装置の一実施形態における天井埋込形ダウンライトを示す断面図である。
【0129】
図において、17は高圧放電ランプ、18はダウンライト本体である。
【0130】
高圧放電ランプ17は、図5に示す構造のものと同一構造である。
【0131】
ダウンライト本体18は、基体18a、ソケット18bおよび反射板18cなどを備えている。
【0132】
基体18aは、天井に埋め込まれるために、下端に天井当接縁eを備えている。
【0133】
ソケット18bは、基体18aに装着されている。
【0134】
反射板18cは、基体18aに支持されているとともに、高圧放電ランプ17の発光中心がそのほぼ中心に位置するように包囲している。
【0135】
【発明の効果】
本発明によれば、マグネシウム酸化物を添加剤として含むアルミナセラミックからなる透光性セラミック放電容器の少なくとも放電空間を包囲する内面部分は添加剤のMgOによる内面部分の表面層のスピネルが昇華してスピネル型構造が存在しないように構成するとともに、透光性セラミック放電容器内の不純ガスを除去するゲッタ手段を具備させたことにより、透光性セラミック放電容器のハロゲン化物との反応による腐食が少なくて、しかも不純ガスによる黒化が少なくて光束低下や温度の異常上昇による気密漏れの発生しにくい高圧放電ランプを提供することができる。
【0136】
加えてゲッタ手段が給電導体の封着性の部分であることにより、構造が簡単で安価な高圧放電ランプを提供することができる。
【0137】
加えてゲッタ手段を給電導体の耐ハロゲン化物部分の基端部近傍に配設したことにより、ゲッタ手段の作用が効果的に行われる高圧放電ランプを提供することができる。
【0138】
本発明によれば、上記本発明の高圧放電ランプの効果を有する照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の高圧放電ランプの第1の実施形態を示す要部拡大断面図
【図2】 本発明の高圧放電ランプの第2の実施形態を示す要部拡大断面図
【図3】 本発明の高圧放電ランプの第3の実施形態を示す要部拡大断面図
【図4】 本発明の高圧放電ランプの第4の実施形態を示す要部拡大断面図
【図5】 本発明の高圧放電ランプの第5の実施形態を示す要部拡大断面図
【図6】 本発明の高圧放電ランプの第6の実施形態を示す要部拡大断面図
【図7】 本発明の高圧放電ランプの第7の実施形態を示す要部拡大断面図
【図8】 本発明の照明装置の一実施形態における天井埋込形ダウンライトを示す断面図
【符号の説明】
1…透光性セラミック放電容器
1a…膨出部
b…端部部分
2…セラミックスリーブ
2a…溝
3…給電導体
3a…封着性の部分
3b…耐ハロゲン化物部分
4…電極
5…ゲッタ手段
6…セラミック封止用コンパウンドのシール
7…わずかな隙間
Claims (4)
- マグネシウム酸化物を添加剤として含むアルミナセラミックからなり、少なくとも放電空間を包囲する内面部分は添加剤のMgOによる内面部分の表面層のスピネルが昇華してスピネル型構造が存在しないように構成された膨出部および膨出部の両端に連通して配置され膨出部より内径が小さい端部部分を備えた透光性セラミック放電容器と;
封着性の部分および封着性の部分の先端に基端部が接続している耐ハロゲン化物部分を備え、透光性セラミック放電容器の端部部分内を貫通するとともに、端部部分との間にわずかな隙間を形成する給電導体と;
膨出部内に配設されて給電導体に接続した電極と;
端部部分および給電導体を封着するセラミック封止用コンパウンドのシールと;
金属ハロゲン化物を含み放電空間部内に封入された放電媒体と;
放電空間内の不純ガスを除去するゲッタ手段と;
を具備していることを特徴とする高圧放電ランプ。 - ゲッタ手段は、少なくとも一方の端部部分内において耐ハロゲン化物部分の基端部近傍に配設されていることを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
- ゲッタ手段は、給電導体の封着性の部分であることを特徴とする請求項1または2記載の高圧放電ランプ。
- 照明装置本体と;
照明装置本体に装着される請求項1ないし3のいずれか一記載の高圧放電ランプと;
を具備していることを特徴とする照明装置。
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