JP4229730B2 - 制振材用エマルション - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、制振材用エマルションに関する。詳しくは、制振材配合物を構成するものとして好適に用いられる制振材用エマルションに関する。
【0002】
【従来の技術】
制振材は、各種の構造体における振動や騒音を防止して静寂性を保つためのものであり、自動車の室内床下等に用いられている他、鉄道車両、船舶、航空機や電気機器、建築構造物、建設機器等にも利用されている場合がある。このような制振材としては、例えば、自動車の室内床下等には無機粉体を含んだアスファルトシートが用いられてきたが、熱融着させる必要性があることから、作業性等の改善が望まれている。
【0003】
従来の制振材を形成する制振材用組成物としては、エマルションを含む共重合体ラテックスが開示されている。すなわち合成樹脂エマルション、アスファルトエマルションから選ばれる少なくとも1種の展色剤等を含む水系制振塗料組成物(例えば、特許文献1参照。)、脂肪族共役ジエン系単量体やエチレン系不飽和カルボン酸単量体等をα−メチルスチレンダイマーの存在下に共重合して得られる水系塗料用共重合体ラテックス(例えば、特許文献2参照。)、共役ジエン系単量体、エチレン系不飽和カルボン酸アミド単量体やエチレン系不飽和カルボン酸単量体等を無機過硫酸塩系の重合開始剤の存在下に乳化重合して得られる耐チッピング塗料用共重合体ラテックス(例えば、特許文献3参照。)、共役ジエン系単量体、エポキシ基を有するエチレン系不飽和単量体やエチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体等を乳化重合して得られる制振材用共重合体ラテックス(例えば、特許文献4参照。)、共役ジエン系単量体、エポキシ基を有するエチレン系不飽和単量体やエチレン系不飽和カルボン酸アミド単量体等を乳化重合して得られる制振材用共重合体ラテックス(例えば、特許文献5参照。)が開示されている。
【0004】
しかしながら、これらの技術では、優れた加熱乾燥性と制振性との両立を達成する制振材を得ることができなかった。すなわち合成樹脂エマルションやアスファルトエマルションを用いる場合には、塗膜を加熱乾燥して形成するときに表面乾燥すると共に未乾燥塗膜中の水分が蒸発しようとするためにフクレが発生しやすいことから、加熱乾燥性を向上させる工夫の余地があり、また、共役ジエン系単量体とその他の単量体とから形成される共重合体ラテックスを用いる場合には、共役ジエン系単量体による単量体単位が制振性を充分に発揮するものではなく、優れた加熱乾燥性と制振性とを両立させる工夫の余地があった。
【0005】
ところで、芯部及び皮層部よりなる複合粒子であるアクリル系重合体粒子を含有する水性分散液に関し、反応性アニオン系界面活性剤を使用して水性分散液を調製することができること、及び、このような水性分散液がチッピング材を形成するものとして好適であることが開示されている(例えば、特許文献6参照。)。このような水性分散液は、チッピング材を形成するために好適なものであることから、キズがつきにくいという硬い塗膜物性が重視され、スプレー塗装できるように粘度が低く設定されたものである。しかしながら、制振材としては、塗膜の硬さが硬い方がよいが、やわらかさも重視されることになる。また、制振材用組成物は、厚い塗膜を形成することができるように粘度が比較的高く設定されることになる。したがって、このような特性を有する制振材用組成物として好適に適用することができるようにしたうえで、制振性や加熱乾燥性に優れ、しかも経時変化が少なくなるようにする工夫の余地があった。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−104842号公報(第1、2頁)
【特許文献2】
特開平11−29737号公報(第1、2頁)
【特許文献3】
特開2000−178497号公報(第1、2頁)
【特許文献4】
特開2000−178498号公報(第1、2頁)
【特許文献5】
特開2000−178499号公報(第1、2頁)
【特許文献6】
特許第2904995号明細書(第1−3頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、優れた制振性を発揮すると共に、優れた加熱乾燥性を発揮し、しかも経時変化が少なく、また、配合物の安定性や分散性を向上することができる制振材配合物を形成する制振材用エマルションを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、種々の制振材配合物に用いられる原材料を検討するうち、水系制振材を与えるエマルションが作業性等の点において優れていることにまず着目し、反応性乳化剤により単量体成分を乳化重合してなるエマルションを含んでなると、エマルションに含まれる乳化剤が媒体である水中に遊離することが抑制され、これに起因して上記課題をみごとに解決することができることに想到した。
すなわちエマルションに含まれる乳化剤が水中に遊離すると、低分子量物質である乳化剤が塗膜表面にブリードし、熱乾燥時にその部分だけ乾燥が早くなって熱フクレの原因となり、また、経時的に乳化剤が水中に遊離すると、これに起因してエマルションの粘度が低下することになる。更にエマルションの機械安定性が良くないことからも、塗料化時に配合物がゲル化する可能性がある。しかし反応性乳化剤を用いて乳化重合すると、乳化剤の水中への遊離が少なくなることにより優れた加熱乾燥性を発揮し、また、乳化剤の経時での遊離が少なくなることによりエマルションの経時変化が少なることを見いだした。更に乳化剤がエマルションに化学結合しているため、機械安定性が良くなることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0009】
また本発明の制振材用エマルションにより形成される制振材においては、エマルションのガラス転移点を調整することにより、各種の構造体における振動や騒音を防止して静寂性を保つ作用が向上する効果が充分に達成されることになる。
このような作用効果は、エマルションの安定性や分散性が向上することや、制振材が制振材用エマルションとして好適な上記エマルションにより構成されること等に起因するものと考えられる。
【0010】
すなわち本発明は、反応性乳化剤により単量体成分を乳化重合してなるエマルションを含んでなる制振材用エマルションである。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明の制振材用エマルションは、乳化剤を用いて単量体成分を乳化重合する際に、乳化剤として反応性乳化剤を必須とするものを用いて乳化重合することにより得られるエマルションを含んでなるものである。本発明における乳化剤としては、反応性乳化剤を必須とするものであればよいが、反応性乳化剤を主体とするものを用いることが好ましく、最も好ましくは、単量体成分を乳化重合する際に用いる乳化剤のすべてが反応性乳化剤であることである。
このような制振材用エマルションにより、安定性、分散性、加熱乾燥性を向上することができると共に、このような制振材用エマルションを必須とする制振材配合物から形成される制振材の制振性を向上することができることとなる。
【0012】
本発明における反応性乳化剤としては、反応性アニオン系界面活性剤、スルホコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性、アルケニルコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性剤等が好適であり、1種又は2種以上を用いることができる。
スルホコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性剤の市販品としては、ラテムルS−120、S−120A、S−180及びS−180A(いずれも商品名、花王社製)、エレミノールJS−2(商品名、三洋化成社製)等が挙げられる。アルケニルコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性剤の市販品としては、ラテムルASK(商品名、花王社製)等が挙げられる。
【0013】
上記反応性乳化剤としてはまた、下記の界面活性剤等も好適である。
炭素数3〜5の脂肪族不飽和カルボン酸のスルホアルキル(炭素数1〜4)エステル塩型界面活性剤、例えば、2−スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム塩、3−スルホプロピル(メタ)アクリレートアンモニウム塩等の(メタ)アクリル酸スルホアルキルエステル塩型界面活性剤;スルホプロピルマレイン酸アルキルエステルナトリウム塩、スルホプロピルマレイン酸ポリオキシエチレンアルキルエステルアンモニウム塩、スルホエチルフマル酸ポリオキシエチレンアルキルエステルアンモニウム塩等の脂肪族不飽和ジカルボン酸アルキルスルホアルキルジエステル塩型界面活性剤。
【0014】
マレイン酸ジポリエチレングリコールエステルアルキルフエノールエーテル硫酸エステル塩、フタル酸ジヒドロキシエチルエステル(メタ)アクリレート硫酸エステル塩、1−アリロキシ−3−アルキルフエノキシ−2−ポリオキシエチレン硫酸エステル塩(商品名:アデカリアソープSE−10N、旭電化工業社製)、ポリオキシエチレンアルキルアルケニルフエノール硫酸エステル塩(商品名:アクアロン、第一工業製薬社製)。
【0015】
本発明においては、制振材用エマルションが顔料やフィラー等との混練性に優れるものとなることから、エチレンオキサイドの付加構造を有する反応性乳化剤を用いることが好ましい。エチレンオキサイドの付加構造により、顔料やフィラー等に対する安定性が向上されることとなる。このような反応性乳化剤としては、例えば、α−ヒドロ−ω−[2−(1−プロペニル)−4−ノニルフェノキシ]ポリオキシエチレン(商品名:アクアロン、第一工業製薬社製)等が好適である。
【0016】
上記エマルションは、水を連続相とし、上記反応性乳化剤の存在下で単量体成分を重合してなる重合体が分散している水系のものである。通常ではこのようなエマルションを必須とする制振材用エマルションと、必要に応じて他の添加剤や溶剤等とを含んでなる制振材配合物を塗布することにより制振材を形成することになる。
【0017】
本発明におけるエマルションを形成することになる単量体成分としては、本発明の作用効果を発揮することができる限り特に限定されるものではないが、不飽和カルボン酸単量体を必須とし、不飽和カルボン酸単量体及び不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な他の単量体を含んでなるものであることが好ましい。不飽和カルボン酸単量体としては、分子中に不飽和結合とカルボキシル基とを有する化合物であれば特に限定されるものではないが、エチレン系不飽和カルボン酸単量体を含むことが好ましい。すなわちエチレン系不飽和カルボン酸単量体を必須とする単量体成分を重合してなるエマルションを含んでなる制振材用エマルションは、本発明の好ましい形態の1つである。
【0018】
上記エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、モノメチルマイエート、モノエチルマイエート等の不飽和カルボン酸類又はその誘導体等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0019】
また上記単量体成分としては、アクリル系単量体を必須として含んでなることが好ましい。アクリル系単量体とは、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体を意味する。
上記単量体成分におけるアクリル系単量体の含有量としては、例えば、全単量体成分に対して50質量%以上となるようにすることが好ましい。このような単量体成分としては、制振性の点から、共役ジエン系単量体の含有量が全単量体成分に対して10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、5質量%以下であり、最も好ましくは、共役ジエン系単量体を含有しないことである。
【0020】
更に上記単量体成分としては、全単量体成分に対して官能基を有する不飽和単量体を10質量%未満含有するものであることが好ましい。官能基を有する不飽和単量体における官能基は、エマルションを重合により得る際に架橋することができる官能基であればよい。このような官能基の作用により、エマルションの成膜性や加熱乾燥性を向上することができることになる。より好ましくは、0.1〜3.0質量%である。
なお上記質量割合は、全単量体成分100質量%に対する質量割合である。
【0021】
上記官能基としては、例えば、エポキシ基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、アジリジニル基、イソシアネート基、メチロール基、ビニルエーテル基、シクロカーボネート基、アルコキシシラン基等が挙げられる。これらの官能基は、不飽和単量体の1分子中に1種あってもよく、2種以上あってもよい。
【0022】
上記官能基を有する不飽和単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−i−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性不飽和単量体類;グリシジル(メタ)アクリレート、アクリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有不飽和単量体類等が挙げられる。これらの中でも、官能基を2個以上有する不飽和単量体(多官能性不飽和単量体)を用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明においては、上記単量体成分が、エチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体を32質量%以上含有するものであることが好ましい。エチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体の作用により、制振材用エマルションのTgや物性等を調整しやすくなる。エチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体の上記質量割合の上限としては、90質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、60質量%以下である。
また、上記単量体成分が、エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.1〜20質量%及び他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体99.9〜80質量%を含んでなることが好ましい。エチレン系不飽和カルボン酸単量体を含むことにより、本発明の制振材用エマルションを必須とする制振材配合物において、無機粉体等の充填剤の分散性が向上し、制振性がより向上することになる。また、その他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体を含むことにより、エマルションの酸価、Tgや物性等を調整しやすくなる。上記単量体成分において、エチレン系不飽和カルボン酸単量体が0.1質量%未満であっても、20質量%を超えても、いずれも、エマルションが安定に共重合できないおそれがある。
本発明におけるエマルションでは、これらの単量体から形成される単量体単位の相乗効果により、水系制振材において優れた加熱乾燥性と制振性とをより充分に発揮することが可能となる。
なお上記質量割合は、全単量体成分100質量%に対する質量割合である。
【0024】
上記エチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては特に限定されず、例えば、上述した官能基を有する不飽和単量体や、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0025】
本発明におけるエマルションを形成することになる単量体成分に含まれる単量体としては、上述した単量体以外に、スチレン等の芳香族不飽和単量体等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
本発明におけるエマルションの製造方法としては、反応性乳化剤の存在下で乳化重合法により単量体成分を重合することになるが、乳化重合を行う形態としては特に限定されず、例えば、水性媒体中に単量体成分、重合開始剤及び反応性乳化剤を適宜加えて重合することにより行うことができる。また、分子量調節のために重合連鎖移動剤等を用いてもよい。
なお、上記乳化重合を行う際に反応性乳化剤と共に非反応性乳化剤を用いることができるが、非反応性乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、ノニオンアニオン性乳化剤のいずれの乳化剤も使用することができる。
【0027】
上記水性媒体としては特に限定されず、例えば、水、水と混じり合うことができる溶媒の1種又は2種以上の混合溶媒、このような溶媒に水が主成分となるように混合した混合溶媒等が挙げられる。これらの中でも、水を用いることが好ましい。
【0028】
上記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、ブチルハイドロパーオキサイド等の公知の水溶性又は油溶性開始剤等が挙げられる。また、乳化重合を促進させるため、還元剤として亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸等を用いてレドックス系開始剤としてもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記重合開始剤の使用量としては特に限定されず、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、全単量体成分100重量部に対して、0.1〜2重量部とすることが好ましい。より好ましくは、0.2〜1重量部である。
【0030】
上記反応性乳化剤を必須とする乳化剤の使用量としては、乳化剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、全単量体成分100重量部に対して、0.05重量部以上とすることが好ましく、また、5.0重量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.1重量部以上であり、また、3重量部以下である。
【0031】
上記重合連鎖移動剤としては特に限定されず、例えば、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素;メルカプト酢酸2−エチルヘキシルエステル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、メルカプトピロピオン酸トリデシルエステル等のメルカプトカルボン酸アルキルエステル;メルカプト酢酸メトキシブチルエステル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチルエステル等のメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステル;オクタン酸2−メルカプトエチルエステル等のカルボン酸メルカプトアルキルエステルや、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、アニソール、アリルアルコール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類を用いることが好ましい。重合連鎖移動剤の使用量としては、例えば、全単量体成分100重量部に対して、通常0〜2重量部、好ましくは0〜1.0重量部である。
【0032】
上記乳化重合においては、必要に応じて、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等のキレート剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の分散剤や無機塩等の存在下で行ってもよい。また、単量体成分や重合開始剤等の添加方法としては、例えば、一括添加法、連続添加法、多段添加法等の方法を適用することができる。また、これらの添加方法を適宜組み合わせてもよい。
【0033】
上記乳化重合における反応条件としては、単量体成分の組成や用いる重合開始剤等に応じて適宜設定すればよい。重合温度は、例えば、5〜90℃とすることが好ましい。より好ましくは、20〜85℃である。重合時間は、例えば、3〜8時間とすることが好ましい。また、重合や滴下は攪拌下に行われることが好ましい。
【0034】
上記製造方法においては、乳化重合によりエマルションを製造した後、中和剤によりエマルションを中和することが好ましい。これにより、エマルションが安定化されることになる。中和剤としては特に限定されず、例えば、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等の三級アミン;アンモニア水;水酸化ナトリウム等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、制振材用エマルションを必須とする制振材配合物から形成される塗膜の耐水性等が向上することから、塗膜の加熱時に揮散する揮発性塩基を用いることが好ましい。より好ましくは、加熱乾燥性が良好となり、制振性が向上することから、沸点が80〜360℃のアミンを用いることが好ましい。このような中和剤としては、例えば、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等の三級アミンが好適である。より好ましくは、沸点が130〜280℃のアミンを用いることである。
なお、上記沸点は、常圧での沸点である。
【0035】
上記中和剤の添加量としては特に限定されず、例えば、エマルションの酸価、すなわちエマルションが有する酸基1当量に対して中和剤の塩基が0.6〜1.4当量となるように添加することが好ましい。より好ましくは、0.8〜1.2当量である。
【0036】
上記エマルションは、数平均分子量が小さいと、エマルションを必須とする本発明の制振材用エマルションを含んでなる制振材配合物において、無機粉体等の充填剤とエマルションとの親和性が向上して分散性が向上することになる。
【0037】
制振材配合物の組成
エマルション 100重量部
炭酸カルシウム:NN♯200(商品名、日東粉化工業社製) 250重量部
分散剤:デモールEP(商品名、花王社製) 1重量部
増粘剤:アクリセットAT−2(商品名、日本触媒社製) 2重量部
消泡剤:ノプコ8034L(商品名、サンノプコ社製) 0.3重量部
【0038】
本発明の制振材用エマルションにおいて、上記エマルションは、Tgが−50℃〜40℃であることが好ましい。すなわち制振材用エマルションを構成するエマルション全体としてのガラス転移点(Tg)が上記の範囲内であることが好ましい。これにより制振材配合物の損失係数が好適なものとなり、優れた制振性を発揮することができることとなる。上記Tgが−50℃未満であっても40℃を超えても制振性が充分とはならないおそれがある。より好ましくは、−10℃以上であり、また、20℃以下である。
なお、エマルションのTgは、エマルションを形成する各単量体の単独重合体のTgにより計算することができる。
【0039】
また本発明の制振材用エマルションは、ガラス転移点(Tg)が高いエマルションを必須としてなることが好ましく、また、Tgが高いエマルションとTgが低いエマルションとを含んでなることが好ましい。
上記Tgが高いエマルションとしては、Tgが0℃以上、また、50℃以下のものが好適である。より好ましくは、Tgが0℃以上、また、30℃以下である。また、上記Tgが低いエマルションとしては、Tgが−50℃以上、また、10℃以下のものが好適である。より好ましくは、Tgが−20℃以上、また、0℃以下である。
このように、Tgが異なる2種以上のエマルションを含んでなる制振材用エマルションであって、上記のようにTgが高いエマルションとTgが低いエマルションとを含んでなるものは、制振材用エマルションにおける制振性等の各種の基本性能を充分に発揮することができるものである。
【0040】
上記Tgが高いエマルションとしては、本発明における反応性乳化剤により単量体成分を乳化重合してなるエマルションを用いることが好ましく、上記Tgが低いエマルションとしては、反応性乳化剤を含有したエマルションを用いることもできるが、特に限定せず、SBR及び、アクリルエマルション等の市販品を使用しても良い。
【0041】
本発明の制振材用エマルションは、必要に応じて添加剤や溶剤等を配合することにより制振材配合物を製造することができるものである。このような、本発明の制振材用エマルションを必須とする制振材配合物は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0042】
本発明の制振材用エマルションを必須とする制振材配合物は、該制振材用エマルションと、上述した添加剤や溶剤等とを混合することにより製造することができる。
上記制振材配合物における制振材用エマルションの配合量としては、例えば、制振材配合物の固形分100質量%に対して、制振材用エマルションの固形分が30〜60質量%となるようにすることが好ましい。また、制振材配合物の固形分濃度としては、例えば、制振材配合物100質量%に対して10〜40質量%となるようにすることが好ましい。
【0043】
上記添加剤としては、例えば、充填剤、着色剤、防腐剤、分散剤、増粘剤、揺変剤、凍結防止剤、pH調整剤、消泡剤、湿潤剤、防錆剤、密着付与剤等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、充填剤を含むことが好ましい。
【0044】
上記充填剤としては特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、タルク、硫酸バリウム、アルミナ、酸化鉄、酸化チタン、ガラストーク等の無機質の充填剤;ガラスフレーク、マイカ等の鱗片状無機質充填剤;金属酸化物ウィスカー、ガラス繊維等の繊維状無機質充填剤等が挙げられる。
上記充填剤の配合量としては、例えば、エマルションの固形分100重量部に対して、50〜400重量部とすることが好ましい。より好ましくは、100〜350重量部である。
【0045】
上記溶剤としては、本発明の作用効果を奏する限り特に限定されず、1種又は2種以上を用いることができる。また、溶剤の配合量としては、例えば、制振材配合物の固形分濃度が上述した範囲となるように適宜設定すればよい。
【0046】
上記制振材配合物の製造に用いる装置としては特に限定されず、例えば、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、ニーダー、ディゾルバー等が挙げられる。
【0047】
上記制振材配合物は、優れた加熱乾燥性等の特性を発揮して、基材に塗布して乾燥することにより水系制振材となる皮膜を形成することになる。このような、本発明の制振材用エマルションを必須とする制振材配合物から形成される水系制振材は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
上記水系制振材において、乾燥時の皮膜の膜厚としては、0.5〜5.0mmとなるようにすることが好ましく、より好ましくは、1.5〜4.5mmである。このような水系制振材を形成するためには、制振材配合物の粘度としては、5万mPa・s〜20万mPa・s(BM型粘度、ローター2、20rpm)とすることが好ましい。より好ましくは、10万mPa・s〜15万mPa・sである。また、制振材配合物を基材に塗布して乾燥するに際し、塗布方法としては、例えば、刷毛、へら、エアスプレー、エアレススプレー、モルタルガン、リシンガン等を用いて塗布することができるが、スリット押し出し等を用いて塗布することが好適である。
【0048】
上記制振材配合物を塗布した後、乾燥して皮膜を形成させる条件としては、例えば、加熱乾燥してもよく、常温乾燥してもよいが、効率性の点で加熱乾燥することが好ましく、本発明では加熱乾燥性に優れることから、好適である。加熱乾燥の温度としては、例えば、80〜210℃とすることが好ましい。より好ましくは、110〜160℃である。
【0049】
本発明の制振材用エマルションを必須とする制振材配合物の用途としては特に限定されず、優れた加熱乾燥性と制振性とを発揮することができるため、例えば、自動車の室内床下の他、鉄道車両、船舶、航空機、電気機器、建築構造物、建設機器等に好適に適用することができる。
【0050】
【実施例】
以下に実施例を揚げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は、「重量部」を意味し、「%」は、「質量%」を意味するものとする。
【0051】
▲1▼水系制振材用共重合エマルションの特許(反応性乳化剤)
〔損失係数〕
制振性は、現在使われている2mm厚のアスファルトシートを施した鋼板の損失係数は0.1程度であり、その数値以上の値が一般的に要求されている。制振性すなわち損失係数は用いる塗膜のtanδに相関し、tanδが高い程損失係数が高く制振性に優れているといわれている。
【0052】
〔実施例1〕
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けたセパラブルフラスコに脱イオン水170.5部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を70℃まで昇温した。一方上記滴下ロートにメチルメタアクリレート54.5部、スチレン246部、2−エチルへキシルアクリレート192部、アクリル酸7.5部、予め20%水溶液に調整したアデカリアソープ(商品名、旭電化工業社製)を125部、脱イオン水64.6部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次にセパラブルフラスコの内温を70℃に維持しながら上記単量体乳化物を3時間かけて均一に滴下した。この時同時に5%過硫酸カリウム水溶液53.9部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、76℃で3時間熟成後、冷却して25%のアンモニア水を5.1部添加した。それら乳化物を冷却後100メッシュのステンレス金網によりろ過を行い取り出した。これにより水性樹脂を得た。得られた水性樹脂の不揮発分は55.1%、pHは8.8、粘度は500mPa・sであった。上記単量体組成物の組成をまとめて表1にまとめた。
【0053】
〔実施例2〕
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けたセパラブルフラスコに脱イオン水170.5部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を70℃まで昇温した。一方上記滴下ロートにメチルメタアクリレート53.5部、スチレン243.5部、2−エチルヘキシルアクリレート186.5部、アクリル酸7.5部、t−ドデシルメルカプタン10部、予め20%水溶液に調整したアデカリアソープ(商品名、旭電化工業社製)を125部、脱イオン水64.6部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次にセパラブルフラスコの内温を70℃に維持しながら上記単量体乳化物を3時間かけて均一に滴下した。この時同時に5%過硫酸カリウム水溶液53.9部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、76℃で3時間熟成後、冷却して25%のアンモニア水を5.1部添加した。それら乳化物を冷却後100メッシュのステンレス金網によりろ過を行い取り出した。これにより水性樹脂を得た。得られた水性樹脂の不揮発分は55.1%、pHは8.7、粘度は620mPa・sであった。上記単量体組成物の組成をまとめて表1にまとめた。
【0054】
〔実施例3〕
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けたセパラブルフラスコに脱イオン水170.5部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を70℃まで昇温した。一方上記滴下ロートにメチルメタアクリレート54.5部、スチレン246部、2−エチルヘキシルアクリレート192部、アクリル酸7.5部、予め20%水溶液に調整したアデカリアソープ(商品名、旭電化工業社製)を50部、脱イオン水112部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次にセパラブルフラスコの内温を70℃に維持しながら上記単量体乳化物を3時間かけて均一に滴下した。この時同時に5%過硫酸カリウム水溶液53.9部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、76℃で3時間熟成後、冷却して25%のアンモニア水を5.1部添加した。それら乳化物を冷却後100メッシュのステンレス金網によりろ過を行い取り出した。これにより水性樹脂を得た。得られた水性樹脂の不揮発分は54.9%、pHは8.7、粘度は520mPa・sであった。上記単量体組成物の組成をまとめて表1にまとめた。
【0055】
〔実施例4〕
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けたセパラブルフラスコに脱イオン水170.5部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を70℃まで昇温した。一方上記滴下ロートにメチルメタアクリレート54.5部、スチレン246部、2−エチルヘキシルアクリレート192部、アクリル酸7.5部、予め20%水溶液に調整したアデカリアソープ(商品名、旭電化工業社製)を50部、25%水溶液に調整したアクアロンRN−20(商品名、第一工業製薬社製)を20部、脱イオン水91.6部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次にセパラブルフラスコの内温を70℃に維持しながら上記単量体乳化物を3時間かけて均一に滴下した。この時同時に5%過硫酸カリウム水溶液53.9部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、76℃で3時間熟成後、冷却して25%のアンモニア水を5.1部添加した。それら乳化物を冷却後100メッシュのステンレス金網によりろ過を行い取り出した。これにより水性樹脂を得た。得られた水性樹脂の不揮発分は55.0%、pHは8.8、粘度は550mPa・sであった。上記単量体組成物の組成をまとめて表1にまとめた。
【0056】
〔実施例5〕
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けたセパラブルフラスコに脱イオン水170.5部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を70℃まで昇温した。一方上記滴下ロートにメチルメタアクリレート54.5部、スチレン246部、2−エチルヘキシルアクリレート192部、アクリル酸7.5部、予め20%水溶液に調整したポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(商品名:レベノールWZ、花王社製)を50部、25%水溶液に調整したアクアロンRN−20(商品名、第一工業製薬社製)を20部、脱イオン水91.6部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次にセパラブルフラスコの内温を70℃に維持しながら上記単量体乳化物を3時間かけて均一に滴下した。この時同時に5%過硫酸カリウム水溶液53.9部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、76℃で3時間熟成後、冷却して25%のアンモニア水を5.1部添加した。それら乳化物を冷却後100メッシュのステンレス金網によりろ過を行い取り出した。これにより水性樹脂を得た。得られた水性樹脂の不揮発分は55.0%、pHは8.9、粘度は540mPa・sであった。上記単量体組成物の組成をまとめて表1にまとめた。
【0057】
〔実施例6〕
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けたがセパラブルフラスコに脱イオン水170.5部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を70℃まで昇温した。一方上記滴下ロートにメチルメタアクリレート54.5部、スチレン246部、2−エチルヘキシルアクリレート192部、アクリル酸7.5部、予め20%水溶液に調整したアデカリアソープ(商品名、旭電化工業社製)を25部、20%水溶液に調整したレベノールWZ(商品名、花王社製)を25部、脱イオン水112部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次にセパラブルフラスコの内温を70℃に維持しながら上記単量体乳化物を3時間かけて均一に滴下した。この時同時に5%過硫酸カリウム水溶液53.9部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、76℃で3時間熟成後、冷却して25%のアンモニア水を5.1部添加した。それら乳化物を冷却後100メッシュのステンレス金網によりろ過を行い取り出した。これにより水性樹脂を得た。得られた水性樹脂の不揮発分は55.0%、pHは8.9、粘度は540mPa・sであった。上記単量体組成物の組成をまとめて表1にまとめた。
【0058】
〔比較例1〕
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けたセパラブルフラスコに脱イオン水170.5部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を70℃まで昇温した。一方上記滴下ロートにメチルメタアクリレート54.5部、スチレン246部、2−エチルヘキシルアクリレート192部、アクリル酸7.5部、予め20%水溶液に調整したレベノールWZ(商品名、花王社製)を125部、脱イオン水64.6部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次にセパラブルフラスコの内温を70℃に維持しながら上記単量体乳化物を3時間かけて均一に滴下した。この時同時に5%過硫酸カリウム水溶液53.9部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、76℃で3時間熟成後、冷却して25%のアンモニア水を5.1部添加した。それら乳化物を冷却後100メッシュのステンレス金網によりろ過を行い取り出した。これにより水性樹脂を得た。得られた水性樹脂の不揮発分は55.1%、pHは8.8、粘度は500mPa・sであった。上記単量体組成物の組成をまとめて表1にまとめた。
【0059】
〔比較例2〕
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けたセパラブルフラスコに脱イオン水170.5部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を70℃まで昇温した。一方上記滴下ロートにメチルメタアクリレート53.5部、スチレン243.5部、2−エチルヘキシルアクリレート186.5部、アクリル酸7.5部、t−ドデシルメルカプタン10部、予め20%水溶液に調製したレベノールWZ(商品名、花王社製)を125部、脱イオン水64.6部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次にセパラブルフラスコの内温を70℃に維持しながら上記単量体乳化物を3時間かけて均一に滴下した。この時同時に5%過硫酸カリウム水溶液53.9部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、76℃で3時間熟成後、冷却して25%のアンモニア水を5.1部添加した。それら乳化物を冷却後100メッシュのステンレス金網によりろ過を行い取り出した。これにより水性樹脂を得た。得られた水性樹脂の不揮発分は55.3%、pHは8.4、粘度は450mPa・sであった。上記単量体組成物の組成をまとめて表1にまとめた。
【0060】
〔比較例3〕
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けたセパラブルフラスコに脱イオン水170.5部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を70℃まで昇温した。一方上記滴下ロートにメチルメタアクリレート54.5部、スチレン246部、2−エチルヘキシルアクリレート192部、アクリル酸7.5部、予め20%水溶液に調整したアデカリアソープ(商品名、旭電化工業社製)を25部、脱イオン水128.4部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次にセパラブルフラスコの内温を70℃に維持しながら上記単量体乳化物を3時間かけて均一に滴下した。この時同時に5%過硫酸カリウム水溶液53.9部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を3時間かけて均一に滴下した。しかし滴下途中でエマルションがゲル化した。そのためそれ以降の評価を行わなかった。
【0061】
〔比較例4〕
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けたセパラブルフラスコに脱イオン水156部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を70℃まで昇温した。一方上記滴下ロートにメチルメタアクリレート54.5部、スチレン246部、2−エチルヘキシルアクリレート192部、アクリル酸7.5部、予め20%水溶液に調整したアデカリアソープ(商品名、旭電化工業社製)を250部、からなる単量体乳化物を仕込んだ。次にセパラブルフラスコの内温を70℃に維持しながら上記単量体乳化物を3時間かけて均一に滴下した。この時同時に5%過硫酸カリウム水溶液53.9部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、76℃で3時間熟成後、冷却して25%のアンモニア水を5.1部添加した。それら乳化物を冷却後100メッシュのステンレス金網によりろ過を行い取り出した。これにより水性樹脂を得た。得られた水性樹脂の不揮発分は55.1%、pHは8.8、粘度は350mPa・sであった。上記単量体組成物の組成をまとめて表1にまとめた。
【0062】
上記実施例1〜6及び比較例1〜4において得られたエマルションについて、下記の評価試験を行った。その結果は、表1及び2にそれぞれ示す通りであった。
(1)機械安定性試験(マローン試験)
300メッシュ金網でろ過したエマルション50gを、マローン試験安定性試験機(熊谷理機工業社製)にて、機械安定性試験を行った(JIS K6828,1996に準じる、台ばかり目盛10kg、円盤回転数1000rpm、回転時間5分間、試験温度25℃)。
試験後、エマルションを100メッシュ金網でろ過し110℃乾燥オーブンで1時間乾燥した。
試験後の評価を以下の式で行った。
凝集率(%)=(乾燥後の金網の重量(g)−乾燥前の金網重量(g))/50g×100
◎:0.1%以下
〇:0.1%以上〜0.5以下
△:0.5%以上〜1.0以下
×:1.0%以上
【0063】
(2)加熱乾燥性
実施例1〜6、比較例1〜4で得られたアクリル系樹脂エマルションを下記のとおり配合し、制振性水性塗料組成物として加熱乾燥性を確認した。
・アクリル共重合エマルション 100部
・炭酸カルシウムNN♯200 (*1) 250部
・分散剤 デモールEP (*2) 1部
・増粘剤 アクリセットAT−2 (*3) 2部
・消泡剤 ノプコ8034L (*4) 0.3部
(*1):日東粉化工業社製
(*2):花王社製
(*3):日本触媒社製
(*4):サンノプコ社製
【0064】
上記制振材配合物を冷間圧延鋼板(SPCC・15幅×250長さ×厚み0.8mm)上に、厚み1.5mm、3.5mm及び、4.5mmの型枠中に流し込み、150℃×25分間で乾燥した。乾燥後、塗膜の状態を観察し、乾燥性を以下の基準で評価した。
○:膨れなし
×:塗膜表面に膨れが発生
【0065】
(3)エマルションの経時安定性
エマルションの粘度をBM型粘度計(ローター2、30rpm)で測定した。
初期の粘度と、40℃1ヶ月貯蔵後の粘度を測定し、粘度変化率*)を計算した。変化率が10%以下であれば合格とした。
*)粘度変化率(%)=(初期の粘度−40℃貯蔵後の粘度)/(初期の粘度)×100
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【発明の効果】
本発明の制振材用エマルションは、上述のような構成よりなるため、制振材配合物を構成するものとして好適に用いることができるものである。また、このような制振材用エマルションを必須とする制振材配合物は、優れた制振性を発揮すると共に、優れた加熱乾燥性を発揮し、しかも経時変化が少なく、また、配合物の安定性や分散性を向上することができるため、自動車の室内床下の他、鉄道車両、船舶、航空機、電気機器、建築構造物、建設機器等に適用することができるものである。
Claims (5)
- 反応性乳化剤を必須とする乳化剤により単量体成分を乳化重合してなるエマルションを含んでなる制振材用エマルションであって、
該反応性乳化剤を必須とする乳化剤の使用量は、全単量体成分100重量部に対して、2重量部以上、5重量部以下であり、
該制振材用エマルションは、ガラス転移点が0℃以上、50℃以下であるものを必須とすることを特徴とする制振材用エマルション。 - 前記乳化重合は、重合開始剤としてレドックス系開始剤を使用して行う
ことを特徴とする請求項1記載の制振材用エマルション。 - 前記制振材用エマルションの粘度変化率は、初期の粘度と40℃で1ヶ月貯蔵後の粘度を測定したときに10%以下である
ことを特徴とする請求項1又は2記載の制振材用エマルション。 - 請求項1〜3の何れかに記載の制振材用エマルションを必須とする制振材配合物であって、
該制振材用エマルションの配合量は、制振材配合物の固形分100質量%に対して、制振材用エマルションの固形分が30〜60質量%であり、
該制振材配合物の固形分濃度は、制振材配合物100質量%に対して10〜40質量%であり、
該制振材配合物の粘度は、5万mPa・s〜20万mPa・sである
ことを特徴とする制振材配合物。 - 請求項4記載の制振材配合物から形成される水系制振材であって、
該水系制振材における乾燥時の皮膜の膜厚は、1.5〜5.0mmである
ことを特徴とする水系制振材。
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