JP4227747B2 - 内装用ボード及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、打放しコンクリート意匠を施した内装用ボード及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
打放しコンクリート意匠は、その素材の持つ自然の美しさや重厚な建築物の意匠性を高めることから、近年多くの建築物における躯体面等に採用されるに至っている。打放しコンクリート意匠とは、型枠内にコンクリートを打設し、乾燥後に脱型した状態のコンクリート表面に形成された意匠のことをいうのであるが、実際に現場にてコンクリートを打設するとなると、乾燥時間の確保などの関係から工期が長引いてしまい、コストが嵩んでしまうという欠点がある。特に、建築物の内装に打放しコンクリート意匠を施す際には、乾燥工程が更に長期化してしまい、室内がコンクリートで汚れてしまう等不具合があった。
【0003】
そこで、従来より、予め内装用ボードの表面に打放しコンクリート意匠を施しておき、これを現場まで運搬して、所定の設置位置へ固定設置するような工法が提案されおり、例えば、本出願人が先に提案した工法として、例えば特開2000−128665号公報で開示したものが挙げられる。
【0004】
同公報によれば、木根穴に似せた凹部が形成された内装用ボードの表面全体に浸透性吸水防止材を塗布しておき、その上からセメント系合成樹脂エマルジョンを塗布し、更にその上から型枠模様造成具にて型枠模様を造成していた。かかるセメント系合成樹脂エマルジョンは、アクリル共重合樹脂系等の合成樹脂エマルジョンにセメント及び顔料などを混合してなるものであり、得られたコンクリート色の塗布剤を内装用ボード表面に吹き付け塗布していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の内装用ボードの製造方法においては、浸透性吸水防止材の塗布、セメント系合成樹脂エマルジョンの塗布、型枠模様造成具による型枠模様の造成など製造過程における工程が多く、製造コストが嵩んでしまうという問題があった。また、内装用ボード表面にセメントを含有した塗材を塗布しているので、外装に用いられるものほどではないが、多少の白華現象などが生じてしまう虞もあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、製造過程における工程を削減して製造コストを低減させ得るとともに、セメントを用いない内装用ボード及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、設置個所に設置固定する前における内装用ボードの表面に打放しコンクリート意匠を施してなる内装用ボードの製造方法であって、ケイ酸カルシウムから成る前記内装用ボードの表面に木根穴用の凹部を形成する凹部形成工程と、該凹部形成工程で凹部が形成された前記内装用ボード表面全体に対し、所定色の顔料を混合して略コンクリート色に合成された防水性でない合成樹脂エマルジョンを塗布する塗布工程とを備えたことを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、塗布工程で合成樹脂エマルジョンをケイ酸カルシウムから成る内装用ボード表面に塗布すると、当該合成樹脂エマルジョンが所定部位では著しい吸水作用が生じ、他の部位ではあまり吸水作用が生じないといった不均一に基づく色ムラが生じ、該塗布ムラが打放しコンクリート意匠に近似することとなる。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記塗布工程の後、前記木根穴用の凹部と対応する位置に該凹部と略同一径の貫通孔が設けられたマスク板を前記内装用ボード表面に合致させ、その上面から前記塗布工程で形成された塗膜の色彩より濃いコンクリート色の顔料を混合した合成樹脂エマルジョンを塗布することにより前記凹部の底面及び側面に対し当該合成樹脂エマルジョンを塗布することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、最終工程で、前記内装用ボードの表面全体にトップコートを塗布したことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記凹部形成工程で凹部が形成された前記内装用ボード表面全体に対し、所定色の顔料を混合して略コンクリート色に合成された防水性でない合成樹脂エマルジョンを塗布する前記塗布工程の直後に、型枠模様造成具にて前記内装用ボードの表面を反復押圧することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4記載の製造方法にて製造された内装用ボードである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る内装用ボードは、ケイ酸カルシウム板の表面に木根穴に近似させた凹部及び打放しコンクリート意匠が施され、建築物の設置個所に設置固定する前に工場などで予め製造されるものである。以下、かかる内装用ボードの製造工程について説明する。
【0014】
まず、ケイ酸カルシウムを図1の如く矩形板状に圧縮成形したものを用意し、かかるケイ酸カルシウム板1を位置決め固定しつつ、その表面1aに対し、例えばルータ等の切削具にて図2に示すような木根穴用の凹部1bを形成する(凹部形成工程)。かかる凹部1bは、底面1ba及び側面1bbを有する有底円柱状の穴から成り、所定寸法離間させて複数個(本実施形態においては2個)形成されている。
【0015】
この凹部1bは、実際の打放しコンクリート表面に形成される木根穴と近似させたものであり、打放しコンクリート意匠における一部を構成する。尚、本実施形態においては、ルータ等の切削具で凹部1bを形成しているが、他の方法(例えば、ケイ酸カルシウム板を圧縮成形する際に、圧縮金型の一方に凸形状を形成しておき、該凸形状を転写して凹部を形成する方法など)としてもよい。
【0016】
上記凹部形成工程の後、表面1aを上方に向けた状態のまま加工台に載置し、略コンクリート色に合成された塗材を当該表面1a全体に吹き付け塗布する(塗布工程)。この時、凹部形成工程で得られた凹部1bにも塗材が塗布されることとなり、図4で示すように、ケイ酸カルシウム板1の表面1a全体において塗膜aが形成される。
【0017】
かかる塗材は、アクリル共重合樹脂系やアクリル・スチレン共重合樹脂系の合成樹脂エマルジョンに所定色の顔料を混合して略コンクリート色に合成されたものから成る。通常、合成樹脂エマルジョンは、防水性のものと防水性でないもの(付着性のもの)とに大別されるが、本実施形態においては、防水性でない合成樹脂エマルジョンが使用される。
【0018】
また、塗布工程で塗布される合成樹脂エマルジョンに混合される顔料は、コンクリートと略同一の色彩を帯びた無機質顔料又は有機質顔料を用いるのが好ましいが、コンクリートと略同一の色彩を帯びた着色材(シリカヒューム等の灰色系非晶物質)を用いてもよい。
【0019】
上記塗材をケイ酸カルシウム板1上に塗布すると、当該塗材が所定部位では著しい吸水作用が生じ、他の部位ではあまり吸水作用が生じないといった不均一に基づく色ムラが生じる。この色ムラが、打放しコンクリート意匠に近似することとなるため、別途に打放しコンクリート意匠を施す作業が不要となる。
【0020】
即ち、予め板材の表面に浸透性吸水防止材を塗布しておき、該浸透性吸水防止材が乾燥した後に所望色の塗材を塗布することにより、色ムラが生じないようにするのが一般の塗布作業であるのに対し、本発明においては、そのような浸透性吸水防止材を塗布することなく塗材を塗布し、色ムラを積極的に生じさせているのである。
【0021】
特に、ケイ酸カルシウム板1においては、吸水性が顕著に不均一となる性質があり、塗材の吹き付け塗布によって、色の濃い部位と薄い部位がまだら状に混在して打放しコンクリート表面に近似した意匠が得られるのである。尚、本実施形態においては、生産性を考慮して塗材を吹き付け塗布しているが、刷毛やローラなどによって塗材の塗布を行ってもよい。
【0022】
上記打放しコンクリート意匠が良好に得られない部位(所望の色ムラが得られ難い凹部1b周囲など)においては、適宜、修正作業を行うようにするのが好ましい。この修正作業は、型枠模様造成具にてケイ酸カルシウム板1の表面を反復押圧することにより行われるものであり、必要なければ行わなくてもよい。
【0023】
ここで使用される型枠模様造成具は、フェルトなど弾力を有しつつ塗材を含浸可能なものから成り、かかる型枠模様造成具をケイ酸カルシウム板1における修正すべき部位に対し反復押圧する。これにより、当該修正部位をぼかすことができ、自然な仕上がりを得ることができる。
【0024】
上記塗材が乾燥した後、図5に示すように、木根用の凹部1bと対応する位置に該凹部1bと略同一径の貫通孔2aが設けられたマスク板2をケイ酸カルシウム板1の表面1aに合致させる。その後、図6に示すように、マスク板2の上面から所定色の顔料を混合した合成樹脂エマルジョンを吹き付け塗布する。
【0025】
かかる合成樹脂エマルジョンは、アクリル共重合樹脂系のものにFe3O4を主成分とする無機顔料を混合したものが使用され、この合成樹脂エマルジョンの一例としてNY−7000(ニチエー吉田株式会社の商品名)が挙げられ、顔料の一例としてバイフェロックス(バイエル株式会社の商品名)が挙げられる。ここで着色される色彩は、塗布工程で形成された塗膜aの色彩より濃いコンクリート色が好ましい。
【0026】
このような吹き付け塗布により、図7に示すように、凹部1bの底面1ba及び側面1bbに塗膜bが形成されることとなり、打放しコンクリート意匠をよりリアルなものとする一方、塗膜bが周囲に飛散してしまうのを防止でき、確実に見栄えのよい打放しコンクリート意匠を得ることができる。尚、塗膜bの色彩は、上述の如くコンクリートの色彩と略同一のものであっても、他の色彩(赤や黄色の原色など)であってもよい。
【0027】
マスク板2をケイ酸カルシウム板1の表面1aから取り除き、塗膜bが乾燥した後、その上面全体にトップコートを塗布しトップコート膜cを形成する(図8参照)。かかるトップコートは、防汚性に優れたシリコン樹脂系の透明な合成樹脂エマルジョンから成り、一例としてNY−7090(ニチエー吉田株式会社の商品名)が挙げられる。このように、防汚性に優れたトップコートによるトップコート膜cが塗膜a及び塗膜bを覆って形成されるので、人や物が内装用ボードに触れても打放しコンクリート意匠が汚れたり剥離してしまうのを回避でき、当該内装用ボードの耐久性を向上させ、更には寿命を延ばすことができる。
【0028】
以上により、打放しコンクリート意匠が施された内装用ボードが製造される。上記工程を経て製造された内装用ボードは、建築物の現場に運ばれ、壁面などの設置個所に接着剤や隠しビスなどを用いて設置固定される。その際、設置個所の形状が、上記ケイ酸カルシウム板1の形状と異なる場合には、鋸などで当該設置個所に対応した形状に切断加工した上、設置固定することとなる。
【0029】
上記実施形態によれば、設置固定された内装用ボードの表面には、既に打放しコンクリート意匠が施されているので、現場において当該意匠を施す作業が不要である。即ち、工場などで予め打放しコンクリート意匠を施すことができるので、生産性に優れ、大量生産することができ、ひいては製造コストを低減させることができる。
【0030】
また、塗布工程において、塗材を吹き付け塗布しているので、塗布対象面に対し素早く塗布することができるとともに、吹き付け加減で所望の模様が容易に形成できる。また、ケイ酸カルシウム板の性質により、打放しコンクリート意匠が自然と形成されるので、当該意匠を施す工程が不要となり、製造コストを低減させることができる。
【0031】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばトップコートを塗布せず、塗膜a及びbのみが表面に形成された内装用ボードとしてもよい。ここで、内装用とは、一般に建築物の内装に設置固定されるものをいうが、本明細書においては、雨のかからない軒天などの外装も含むものとする。
【0032】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、ケイ酸カルシウムから成る内装用ボード表面に合成樹脂エマルジョンを塗布すれば、自然と打放しコンクリート意匠に近似した色ムラが生じるので、浸透性吸水防止剤を予め塗布する必要がなく、内装用ボードの製造過程における工程を削減して製造コストを低減させ得る。更に、セメントを含有した塗材を用いないので、白華現象などが生じるのを回避することができる。
【0033】
請求項2の発明によれば、マスク板を内装用ボード表面に合致させることにより当該内装用ボードにおける木根穴用の凹部のみを上方に臨ませ、その底面及び側面に対して合成樹脂エマルジョンを塗布しているので、その合成樹脂エマルジョンが他の表面に飛散して付着してしまうのを防止でき、確実に且つ見栄え良く打放しコンクリート意匠を施した内装用ボードを製造することができる。
【0034】
請求項3の発明によれば、塗布工程を経た内装用ボードの表面全体にトップコートを塗布しているので、人や物が内装用ボードに触れても打放しコンクリート意匠が汚れたり剥離してしまうのを回避でき、当該内装用ボードの耐久性を向上させ、更には寿命を延ばすことができる。
【0035】
請求項4の発明によれば、塗布工程の直後に、型枠模様造成具にて内装用ボードの表面を反復押圧するので、塗布工程で所望の打放しコンクリート意匠が得られなくても、確実に当該意匠を施すことができる。
【0036】
請求項5の発明によれば、実際の打放しコンクリート表面の意匠に極めて近似した内装ボードを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る内装用ボードに適用される素材板としてのケイ酸カルシウム板を示す斜視図
【図2】本発明の実施形態に係る内装用ボードに凹部を形成した状態を示す断面模式図
【図3】同斜視図
【図4】本発明の実施形態に係る内装用ボードの表面に塗膜aが形成された状態を示す断面模式図
【図5】本発明の実施形態に係る内装用ボード及びマスク板を示す斜視図
【図6】本発明の実施形態に係る内装用ボードにマスク板を合致させた状態を示す斜視図
【図7】本発明の実施形態に係る内装用ボードの表面に塗膜a及びbが形成された状態を示す断面模式図
【図8】本発明の実施形態に係る内装用ボードの表面に塗膜a、b及びトップコート膜cが形成された状態を示す断面模式図
【符号の説明】
1…ケイ酸カルシウム板(内装用ボード)
1a…(ケイ酸カルシウム板の)表面
1b…(木根穴用の)凹部
1ba…底面
1bb…側面
2…マスク板
2a…貫通孔
a…(塗布工程で形成された)塗膜
b…(凹部に形成された)塗膜
c…トップコート膜
Claims (5)
- 設置個所に設置固定する前における内装用ボードの表面に打放しコンクリート意匠を施してなる内装用ボードの製造方法であって、
ケイ酸カルシウムから成る前記内装用ボードの表面に木根穴用の凹部を形成する凹部形成工程と、
該凹部形成工程で凹部が形成された前記内装用ボード表面全体に対し、所定色の顔料を混合して略コンクリート色に合成された防水性でない合成樹脂エマルジョンを塗布する塗布工程と、
を備えたことを特徴とする内装用ボードの製造方法。 - 前記塗布工程の後、前記木根穴用の凹部と対応する位置に該凹部と略同一径の貫通孔が設けられたマスク板を前記内装用ボード表面に合致させ、その上面から前記塗布工程で形成された塗膜の色彩より濃いコンクリート色の顔料を混合した合成樹脂エマルジョンを塗布することにより前記凹部の底面及び側面に対し当該合成樹脂エマルジョンを塗布することを特徴とする請求項1記載の内装用ボードの製造方法。
- 最終工程で、前記内装用ボードの表面全体にトップコートを塗布したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の内装用ボードの製造方法。
- 前記凹部形成工程で凹部が形成された前記内装用ボード表面全体に対し、所定色の顔料を混合して略コンクリート色に合成された防水性でない合成樹脂エマルジョンを塗布する前記塗布工程の直後に、型枠模様造成具にて前記内装用ボードの表面を反復押圧することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の内装用ボードの製造方法。
- 請求項1乃至4記載の製造方法にて製造された内装用ボード。
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