JP4225453B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一対の環状のビードで両端が巻き返された1層以上のカーカス層と、トレッドの下方に位置する前記カーカス層をタガ効果で補強するベルト層とを備え、カーカス層の一部のコード角を傾斜させてある空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、空気入りタイヤの主流となっているラジアルタイヤは、一対の環状のビード間を補強し、複数のコードがタイヤ半径方向(子午線方向)に配列するカーカス層と、トレッドの下方に位置するカーカス層をタガ効果で補強し、コードがタイヤ周方向に対し傾斜した複数のベルト層とを備えた構造が一般的である。また、カーカス層の両端部は、ビードにて外側に巻き返されており、その巻き返し部のコードについてもタイヤ半径方向に配列しているのが通常であった。
【0003】
そして、ビード部の剛性を高めて操縦安定性等を向上させる目的で、ビード周りのカーカス層に加えて、長繊維や短繊維で補強された補強層を設けた空気入りタイヤが、各種知られている。また、このような補強層を設けずに、カーカス層の巻き返し部のコードをタイヤ半径方向から傾斜させることにより、ビード部の剛性を高めた空気入りタイヤも知られている(特開平11−170807号公報、特開平8−324213号公報等)。更に、カーカス層の巻き返し部の先端を高くすることによって、サイドウォール部の剛性を高めたものも存在する。
【0004】
一方、車両が比較的荒れた路面を走行すると、車室内においてロードノイズと呼ばれる騒音が発生する。このロードノイズは、タイヤが関係する騒音の一つであり、路面の凹凸がタイヤへの入力となってタイヤが振動し、この振動が車軸、サスペンション、車体といった伝播経路をとって伝わり、最終的に車室内で騒音を引き起こす。この車室内騒音のうち、125Hz付近に発生する低周波ロードノイズは、タイヤの一次共振周波数に近く、その周波数と合致しロードノイズのピークとなるため、ノイズの低減が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようにビード部又はサイドウォール部の剛性を高めると、一般的に低周波ロードノイズは大きくなり、その原因はタイヤの一次共振周波数の変化によるものであることが判明した。また、カーカス層の巻き返し部のコードをラジアル方向から傾斜させた上記のタイヤでは、その部分での前後力に対する剛性の向上効果が得られるが、タイヤの一次共振周波数が好適に制御されているわけでなく、低周波ロードノイズの低減効果は十分とは言い難かった。つまり、ビード部の剛性を高めて操縦安定性を向上させることと、低周波ロードノイズを低減することは、相反する現象であり、一次共振周波数の変化に着目して両者の両立を図る技術はこれまで存在しなかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、低周波ロードノイズの低減効果と操縦安定性の改善効果とを両立させることができる空気入りタイヤを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、操縦安定性を高めながら一次共振周波数を低下させる方法について鋭意研究したところ、カーカス層のうちビードフィラーに隣接配置された部分に、コードが所定のコード角で傾斜した傾斜部を設けることで、低周波ロードノイズの低減効果と操縦安定性の改善効果とを両立させられることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の空気入りタイヤは、一対の環状のビードで両端が巻き返された1層以上のカーカス層と、トレッドの下方に位置する前記カーカス層をタガ効果で補強するベルト層とを備える空気入りタイヤにおいて、前記カーカス層のビード間の本体部のうちビードフィラーの内側に隣接配置された部分は、コードとタイヤ周方向とのなすコード角が30〜85°の範囲内で一定又は角度変化する内側傾斜部を有すると共に、前記カーカス層の巻き返し部のうちビードフィラーの外側に隣接配置された部分は、前記コード角が30〜85°の範囲内で一定又は角度変化する外側傾斜部を有し、且つ、前記内側傾斜部及び前記外側傾斜部の一方または両方のコード角が、30〜85°の範囲内でタイヤ外周側へと徐々に大きくなるように角度変化することを特徴とする。
【0009】
上記において、空気充填状態で荷重負荷したタイヤへのハンマー加振による上下方向の軸力応答から計測される一次共振周波数が105Hz以下であることが好ましい。ここで、一次共振周波数は具体的には実施例に記載の方法により測定される値である。
【0010】
また、前記内側傾斜部のコードと前記外側傾斜部のコードとが、タイヤ半径方向を基準として逆方向に傾斜していることが好ましい。
【0011】
また、前記カーカス層の本体部のうち、前記ベルト層の最大幅端部からビードフィラーの上端までの部分は、前記コード角が30〜85°の範囲内で一定又は角度変化する上側傾斜部を有することが好ましい。
【0012】
その際、前記内側傾斜部の上端がビードフィラーの上端の高さまで達し、前記上側傾斜部の下端がビードフィラーの上端の高さまで達して、前記内側傾斜部と前記上側傾斜部とが連続する傾斜部を形成していることが好ましい。
【0013】
[作用効果]
本発明によると、カーカス層のうちビードフィラーに隣接配置された部分に、コードが傾斜する傾斜部を有するため、横力及び前後力に対するビード周りの剛性を高めながら、縦力(上下方向の力)に対する剛性(縦剛性)を下げることができ、これによってタイヤの一次共振周波数を低下させることができる。その結果、低周波ロードノイズの低減効果と操縦安定性の改善効果とを両立させることができる。
【0014】
また、前記の一次共振周波数が105Hz以下である場合、より確実に低周波ロードノイズの低減効果を得ることができるようになり、操縦安定性の改善効果との両立が容易になる。
【0015】
前記内側傾斜部のコードと前記外側傾斜部のコードとが、タイヤ半径方向を基準として逆方向に傾斜している場合、前後力に対する剛性の方向性が小さくなり、何れの方向にも十分な前後剛性が得られると共に、横力に対する剛性も同方向に傾斜する場合と比較して向上する。
【0016】
前記カーカス層の本体部のうち、前記ベルト層の最大幅端部からビードフィラーの上端までの部分が、前記の上側傾斜部を有する場合、この上側傾斜部によって前後剛性及び横剛性をより高めることができ、操縦安定性の改善効果が大きくなる。
【0017】
前記内側傾斜部の上端がビードフィラーの上端の高さまで達し、前記上側傾斜部の下端がビードフィラーの上端の高さまで達して、前記内側傾斜部と前記上側傾斜部とが連続する傾斜部を形成している場合、両者が連続するため中間に剛性の低い部分が存在しないので、全体として効果的に前後剛性及び横剛性を高めることができ、操縦安定性の改善効果がより大きくなる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の空気入りタイヤの一例を示す部分断面図であり、図2(a)はそのカーカス層を模式的に示す側面図、図2(b)はカーカス層のコードの配置を模式的に示す説明図である。
【0019】
本発明の空気入りタイヤは、図1に示すように、一対の環状のビード1aで両端が巻き返された1層以上のカーカス層10と、トレッド4の下方に位置する前記カーカス層10をタガ効果で補強するベルト層6とを備える。なお、空気入りタイヤは、赤道線CLで対称又は略対称な断面構造になっている。本実施形態ではカーカス層10が1層で構成されている例を示す。
【0020】
本発明において、カーカス層10のビード1a間の本体部11のうちビードフィラー1bの内側に隣接配置された部分11B(高さH1の領域部分)は、図2に示すように、コード11bとタイヤ周方向PDとのなすコード角θ4 が30〜85°の範囲内で一定又は角度変化する内側傾斜部を有する。本実施形態では、この内側傾斜部が部分11Bと一致し、且つコード角θ4 が一定である例を示す。
【0021】
このように傾斜部のコード角θ4 が一定である場合、コード11bのコード角θ4 が50〜70°の範囲内で一定であることが好ましい。この好ましい角度範囲はコード角θ4 が角度変化する場合も同様である。
【0022】
一方、カーカス層10の本体部11のうち、ビードフィラー1bの上端より上側の部分11Aは、いずれのコード角でもよいが、本実施形態では、この部分11Aのコード11aとタイヤ周方向PDとのなすコード角θ1 が85〜90°である例を示す。この場合、その部分は通常のラジアルタイヤと同じであり、ベルト層6とあいまって、ラジアルタイヤの乗り心地性、耐久性、運動性能などを好適に発現することができる。カーカス層10を構成するコードとしては、レーヨン、ポリエステル、ポリアミド、芳香族ポリアミド等の有機繊維、又はスチール等が挙げられる。
【0023】
ベルト層6は、上層6bと下層6aとの2層構成のものが例示できるが、各層を構成するコードのタイヤ赤道線CLに対する角度は10〜35°が好ましい。また、上層6bの上面に更に周方向にコードを配置した繊維補強層を設けてもよい。ベルト層6を構成するコード材は、スチールや芳香族ポリアミド等の有機繊維など、従来よりベルト層6に用いられる材料がいずれも使用できる。
【0024】
本発明において、カーカス層10の巻き返し部12は、図2に示すように、ビードフィラー1bに隣接配置された部分12B(高さH1の領域部分)と、それより先端側の部分12Aとに区別される。本発明では、この部分12Bが、コード角θ3 =30〜85°の範囲内で一定又は角度変化する外側傾斜部を有する。本実施形態では、この外側傾斜部が部分12Bと一致し、かつ部分12Aも部分12Bと同一のコード角で傾斜している例を示す。
【0025】
このように傾斜部のコード角θ3 が一定である場合、コード12bのコード角θ3 が50〜70°の範囲内で一定であることが好ましい。この好ましい角度範囲はコード角θ3 が角度変化する場合も同様である。なお、部分12Aのコード12aのコード角θ2 は30〜90°が好ましい。また、カーカス層10のうちビード1aの周囲の部分のコード角は何れでもよいが、コード角θ3 又はコード角θ4 と同じ又は略同じであるのが好ましい。
【0026】
本実施形態において、内側傾斜部のコード11bと外側傾斜部のコード12bとは、タイヤ半径方向を基準として逆方向に傾斜しているが、本発明では両者が同じ方向に傾斜していてもよい。また、両者のコード角θ3 とコード角θ4 は同一でも異なっていてもよい。
【0027】
巻き返し部12のうち部分12Bの高さH1は、低周波ロードノイズの低減効果と操縦安定性の改善効果とを両立させる上で、タイヤ断面高さHの20〜50%の高さであることが好ましく、40〜50%の高さであることがより好ましい。また、傾斜部の幅は、部分12Bの70%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。なお、巻き返し部12の先端の位置は、タイヤ最大幅Wの位置PWより高くても低くてもよいが、高い方が傾斜部の効果が大きくなり好ましい。
【0028】
本発明の空気入りタイヤは、空気充填状態で荷重負荷したタイヤへのハンマー加振による上下方向の軸力応答から計測される一次共振周波数が105Hz以下であるのが好ましく、より好ましくは一次共振周波数が95〜100Hzである。
【0029】
このような一次共振周波数は、傾斜部のコード角、幅、コードの材質、太さ、打ち込み数、カーカス層10の層数、ビードフィラー1bの硬度、形状、大きさなどによって調整することができる。これらを調整して横剛性を小さくすることで、一次共振周波数を低下させることができる。
【0030】
ビードフィラー1bの硬度(加硫後)は、JISA硬度で80〜98°が好ましい。
【0031】
また、本実施形態では、図1に示すように、ビード周りにおいてカーカス層10の外側を補強するチェーハー21が設けられ、カーカス層10の内側を補強するフリッパー22が設けられている。これらはゴムの硬度を高めたものや長繊維又は短繊維で補強されたものが使用できる。
【0032】
上記の点以外は、通常のラジアルタイヤと略同じ構造を有している。即ち、図1に示すように、カーカス層10の両端は、ビード1aで折り返され、カーカス層10の折り返し部12と本体部11との間にはゴム硬度が高いビードフィラー1bが配置され、ビード部1が形成されている。また、通常のタイヤと同様にカーカス層10の外側にはサイドウォールゴム2a、内側にはインナーライナゴム3が配置され、ベルト層6の外側にはトレッド4等が配置され、トレッド4の外周面には所定のパターンが形成される。
【0033】
上記のゴム層等の原料ゴムとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。これらのゴムはカーボンブラックやシリカ等の充填材で補強されると共に、加硫剤、加硫促進剤、可塑剤、老化防止剤等が適宜配合される。また、ビードワイヤーとしては鋼線等が使用され、ゴムとの接着性を高めるべく、通常、表面処理や接着処理等がなされている。
【0034】
本発明の空気入りタイヤは、カーカス層の巻き返し部のコード角度をタイヤ径方向より部分的に変えたカーカス用プライを使用すること以外は、通常の空気入りタイヤと同様の製造方法で製造できる。上記のカーカス用プライは円筒状に成型され、例えばビードの配設後、チューブ状エアバッグが挿入され、内圧によりドーナツ状にシェーピングされた後、ベルト層6が常法により形成される。
【0035】
上記のカーカス用プライは、例えば、ゴム被覆したコードを供給しながら、駆動する貼り付けローラによってコードの先端を、トレイに所望の経路にて貼り付ける装置を用いたり、また、特開平8−244135号公報に記載の製造方法において、カーカス用プライの両端(カーカス先端部)をコード角をラジアルにすることで作製することができる。
【0036】
前者の装置を用いたカーカス用プライの形成方法について、更に説明すると、次のようになる。即ち、図6に示すような装置を用いて、ローラ群43でコード材料40を引き取ることにより、コード材料40をボビン41から送りながら、被覆ゴムの押出機42の口金部42aを通過させて未加硫ゴムで被覆され、ゴム被覆したコードは、緩衝部44の緩衝ローラ44a間に送られて緩んだ状態となる。ゴム被覆したコードの先端は、駆動機構46の駆動部46bに設けられた貼り付けローラ46cによって、トレイ47に所望の経路にて貼り付けられ、貼り付け量に応じたコード長さが緩衝部44からガイドローラ45を経て引き取られる。貼り付け経路の制御は、トレイ47の長手方向(Y方向)の移動の位置制御と、駆動機構46の支持部46aを往復動(X方向)する駆動部46bの移動の位置制御とにより行うことができる。これにより、カーカス用プライ48をトレイ47上に作製することができる。貼り付けはコードを切断せずに行うのが簡便であり、その場合、軸心が平行で高さが同じ2本の貼り付けローラ46cが使用される。
【0037】
所望のタイヤ形状と各部位での所望のコード角度を得るためには、カーカス用プライを作製する際のコード角度を適切に調整するのが好ましい。バイアスタイヤでは、プライ状態でのコード角度とタイヤ成型後のコード角度との関係が、下記の周知の関係式(近似式)により算出できるが、本発明でも当該関係式が同様に適用でき、Adを変数として対応する部分のRを決定することで、Aを求めることができる。
【0038】
Rd cosA=R cosAd
ここで、Rdはドラム半径、Adはドラム上の周方向に対するコード角、Rはタイヤ成型後のコードの位置に対応する半径、Aはタイヤ成型後の周方向に対するコード角である。
【0039】
[他の実施形態]
以下、本発明の他の実施の形態について説明する。
【0040】
(1)前述の実施形態では、カーカス層の巻き返し部が一定のコード角である例を示したが、本発明では、カーカス層10の傾斜部のコード角が変化していてもよい。その場合、内側傾斜部又は外側傾斜部の何れか一方のコード角が変化していてもよく、図3に示すように、両方のコード角が変化していてもよい。
【0041】
その場合、カーカス層10の巻き返し部12のうちビードフィラー1bの外側に隣接配置された部分12Bが、コード角θ3 が30〜85°の範囲内の角度範囲で先端側へと徐々に大きくなっている外側傾斜部を有しているのが好ましい。また、カーカス層10の本体部のうちビードフィラー1bの内側に隣接配置された部分11Bは、コード角θ4 が30〜85°の範囲内の角度範囲でタイヤ外周側へと徐々に大きくなっている内側傾斜部を有しているのが好ましい。このようにコード角が変化する場合のコード角θ3 又はθ4 は、コード12b又は11bの接線とタイヤ周方向PDとのなすコード角により決定される。
【0042】
(2)前述の実施形態では、カーカス層10の本体部11のうち、ビードフィラー1bの上端より上側の部分11Aのコード角θ1 が85〜90°である例を示したが、図4に示すように、カーカス層10の本体部11のうち、ベルト層6の最大幅端部BEからビードフィラー1bの上端までの部分11Aは、コード角θ1 が30〜85°の範囲内で一定又は角度変化する上側傾斜部を有していてもよい。
【0043】
その場合、前記内側傾斜部の上端がビードフィラー1bの上端まで連続し、前記上側傾斜部の下端がビードフィラー1bの上端まで連続して、連続する傾斜部を形成していることが好ましい。このとき両者の境界において、コード角θ1 とコード角θ4 とが同一又は略同一であることが好ましい。
【0044】
(3)前述の実施形態では、内側傾斜部のコードと外側傾斜部のコードとが、タイヤ半径方向を基準として逆方向に傾斜している例を示したが、本発明では図5に示すように、両者が同じ方向に傾斜していてもよい。即ち、カーカス層10の本体部11のうちビードフィラー1bの内側に隣接配置された部分11Bのコード11bと、カーカス層10の巻き返し部12のうち、ビードフィラー1bの外側に隣接配置された部分12Bのコード12bとが、タイヤ半径方向を基準として同方向に傾斜している。
【0045】
(4)前述の実施形態では、巻き返し部のうちビードフィラーの外側に隣接配置された部分が、外側傾斜部と一致する例を示したが、本発明では、巻き返し部には、外側傾斜部以外の部分、すなわちコード角が85〜90°である部分や30°未満の部分を一部含んでいてもよい。
【0046】
(5)前述の実施形態では、本体部のうちビードフィラーの内側に隣接配置された部分が、内側傾斜部と一致する例を示したが、ビードフィラーの内側に隣接配置された部分には、内側傾斜部以外の部分、すなわちコード角が85〜90°である部分や30°未満の部分を一部含んでいてもよい。
【0047】
【実施例】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における物性の測定と性能評価は下記のようにして行った。
【0048】
(1)静的前後剛性
タイヤの空気圧を210KPa、荷重負荷を510Kgとした状態で、前後方向の力を加えて、前後方向の力−前後たわみの関係を測定したグラフに基づき、、荷重負荷(510Kg)の0.3倍に相当する前後方向の力を、その力が作用した時の前後たわみで除して算出した。
【0049】
(2)1次共振周波数
タイヤの空気圧を指定された空気圧(210KPa)、荷重負荷(510Kg)とした状態で、タイヤ外周上面のトレッド中央部に対し、鉛直方向にハンマー加振し、その際の軸に生じる上下方向の応答を振動伝達レベルで周波数ごとに表示した。その際生じる複数の固有振動ピークのうち、周波数の低いものから1番目に現れるピークの周波数を、1次共振周波数(1次弾性モード周波数)とした。
【0050】
(3)操縦安定性
実施例等で得られたサイズ205/55R16 89Vの空気入りタイヤを空気圧220kPaにてリム組み(リム:6.5J)して実車(2000ccクラスの国産セダン)に装着した。この実車により、ドライ時のテストコースにおいて、パネラーによる実車フィーリングテスト(直進、レーンチェンジ、ハンドリング走行安定性)を実施し、その結果をポイントで評価した。この値が大きいほど、操縦性が優れている。
【0051】
(4)低周波ロードノイズ
操縦安定性の評価と同じ実車により、時速60kmでテストコース(粗面路)を惰行しながら走行し、運転席窓側の耳位置に取り付けたマイクで周波数125Hzでの騒音(低周波ロードノイズ)のレベルを測定した。
【0052】
参考例1
コードがレーヨン(1840dtex,伸度2%時の応力69N/本)で、打ち込み数48本/5cmのカーカス用プライと、ビードフィラー形成部材(加硫後のJISA硬度92°、三角形断面の底辺8mm、高さ45mm)とを用いて、本体部のビードフィラー隣接部(内側傾斜部)のコード角40°、巻き返し部(外側傾斜部)のコード角40°(内側傾斜部と逆方向に傾斜)、他の部分のコード角90°になるようにビードで外側に巻き返したカーカス層を形成し、他の部分は通常のラジアルタイヤと同様にして、図1に示すようなタイヤサイズ205/55R1689Vの空気入りタイヤを試作した。
【0053】
実施例1
参考例1において、内側傾斜部のコード角が85°から30°に徐々に小さくなるようにし、外側傾斜部のコード角が30°から85°に徐々に大きくなるようにビードで外側に巻き返したカーカス層を形成する以外は、参考例1と同様にして同じタイヤサイズの空気入りタイヤを試作した。
【0054】
参考例2
参考例1において、内側傾斜部のコードと外側傾斜部のコードとが、タイヤ半径方向を基準として逆方向にコード角40°で傾斜するようにビードで外側に巻き返したカーカス層を形成する以外は、参考例1と同様にして同じタイヤサイズの空気入りタイヤを試作した。
【0055】
比較例1(従来品)
参考例1と同じカーカス用プライとビードフィラー形成部材とを用いて、カーカス層の巻き返し部を全てコード角90°で形成し(コードが全ての位置でラジアル)、他の部分は通常のラジアルタイヤと同様にして、同じタイヤサイズの空気入りタイヤを試作した。
【0056】
比較例2
参考例1において、カーカス層の内側傾斜部及び外側傾斜部のコード角を29°とし、ビードフィラー形成部材の加硫後のJISA硬度を98°とする以外は、参考例1と同様にして同じタイヤサイズの空気入りタイヤを試作した。
【0057】
以上の空気入りタイヤを用いて、前記評価を行った結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
表1の結果が示すように、本発明によると、低周波ロードノイズの低減効果と操縦安定性の改善効果とを両立させることができる。これに対し、比較例2では、1次共振周波数が高いため低周波ロードノイズの低減効果は殆ど得られなかった。
【0059】
参考例3
コードがレーヨン(1840dtex,伸度2%時の応力69N/本)で、打ち込み数48本/5cmのカーカス用プライと、ビードフィラー形成部材(加硫後のJISA硬度92°、三角形断面の底辺8mm、高さ45mm)とを用いて、本体部のうちベルト端よりタイヤ内周側の部分(内側傾斜部+上側傾斜部)を全てコード角40°、巻き返し部(外側傾斜部)のコード角40°(内側傾斜部と逆方向に傾斜)、他の部分のコード角90°になるようにビードで外側に巻き返したカーカス層を形成し、他の部分は通常のラジアルタイヤと同様にして、図1に示すようなタイヤサイズ205/55R1689Vの空気入りタイヤを試作した。
【0060】
実施例2
参考例3において、上側傾斜部と内側傾斜部とのコード角が85°から30°に徐々に小さくなるようにし、外側傾斜部のコード角が30°から85°に徐々に大きくなるようにビードで外側に巻き返したカーカス層を形成する以外は、参考例3と同様にして同じタイヤサイズの空気入りタイヤを試作した。
【0061】
比較例3
参考例3において、カーカス層の上側傾斜部、内側傾斜部及び外側傾斜部のコード角を29°とし、ビードフィラー形成部材の加硫後のJISA硬度を98°とする以外は、参考例3と同様にして同じタイヤサイズの空気入りタイヤを試作した。
【0062】
以上の空気入りタイヤを用いて、前記評価を行った結果を比較例1と併せて表2に示す。
【0063】
【表2】
表2の結果が示すように、本発明によると、低周波ロードノイズの低減効果と操縦安定性の改善効果とを両立させることができる。これに対し、比較例3では、1次共振周波数が高いため低周波ロードノイズの低減効果は殆ど得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空気入りタイヤの一例を示す部分断面図
【図2】本発明の空気入りタイヤの要部を示す図であり、(a)はカーカス層を模式的に示す側面図、(b)はそのコードの配置を模式的に示す説明図
【図3】本発明の空気入りタイヤの他の例の要部を示す図であり、(a)はカーカス層を模式的に示す側面図、(b)はそのコードの配置を模式的に示す説明図
【図4】本発明の空気入りタイヤの他の例の要部を示す図であり、(a)はカーカス層を模式的に示す側面図、(b)はそのコードの配置を模式的に示す説明図
【図5】本発明の空気入りタイヤの他の例の要部を模式的に示す側面図
【図6】カーカス用プライの作製に用いられる装置の概略斜視図
【符号の説明】
1a ビード
1b ビードフィラー
4 トレッド
6 ベルト層
10 カーカス層
11 カーカス層の本体部
11A タイヤ外周側の部分(上側傾斜部)
11B ビードフィラーの内側に隣接配置された部分(内側傾斜部)
11a タイヤ外周側の部分のコード
11b ビードフィラーの内側に隣接配置された部分のコード
12 カーカス層の巻き返し部
12A 先端側の部分
12B ビードフィラーの外側に隣接配置された部分(外側傾斜部)
12a 先端側のコード
12b ビードフィラーの外側に隣接配置された部分のコード
H タイヤ断面高さ
PD タイヤ周方向
θ1 〜θ4 コード角
Claims (5)
- 一対の環状のビードで両端が巻き返された1層以上のカーカス層と、トレッドの下方に位置する前記カーカス層をタガ効果で補強するベルト層とを備える空気入りタイヤにおいて、
前記カーカス層のビード間の本体部のうちビードフィラーの内側に隣接配置された部分は、コードとタイヤ周方向とのなすコード角が30〜85°の範囲内で一定又は角度変化する内側傾斜部を有すると共に、前記カーカス層の巻き返し部のうちビードフィラーの外側に隣接配置された部分は、前記コード角が30〜85°の範囲内で一定又は角度変化する外側傾斜部を有し、且つ、前記内側傾斜部及び前記外側傾斜部の一方または両方のコード角が、30〜85°の範囲内でタイヤ外周側へと徐々に大きくなるように角度変化することを特徴とする空気入りタイヤ。 - 空気充填状態で荷重負荷したタイヤへのハンマー加振による上下方向の軸力応答から計測される一次共振周波数が105Hz以下である請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 前記内側傾斜部のコードと前記外側傾斜部のコードとが、タイヤ半径方向を基準として逆方向に傾斜している請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記カーカス層の本体部のうち、前記ベルト層の最大幅端部からビードフィラーの上端までの部分は、前記コード角が30〜85°の範囲内で一定又は角度変化する上側傾斜部を有する請求項1〜3いずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記内側傾斜部の上端がビードフィラーの上端の高さまで達し、前記上側傾斜部の下端がビードフィラーの上端の高さまで達して、前記内側傾斜部と前記上側傾斜部とが連続する傾斜部を形成している請求項4記載の空気入りタイヤ。
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