JP4222128B2 - アルミニウム溶湯除滓処理用フラックス - Google Patents

アルミニウム溶湯除滓処理用フラックス Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム溶湯除滓処理用フラックスに関する。尚、本明細書において、アルミニウム溶湯は、アルミニウム合金溶湯を含むと共に、単にアルミニウムと記載した場合は、アルミニウム合金を含むものである。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウムは、溶融と凝固との間における水素ガス溶解度の差が他の金属に比べて著しく高い。このため、溶解時においてアルミニウム溶湯に吸収された水素ガス(以下、単に水素とする)は、凝固の際に気泡(ポロシティ)生成の原因となる。また、アルミニウム溶湯の表面または内部に浮遊する酸化物その他の非金属介在物は、凝固後におけるアルミニウム製品の内部欠陥となり、上記気泡と共に係る製品の品質を著しく低下させる。このため、水素や非金属介在物を除去するための脱ガス処理や除滓処理(溶湯処理)は、アルミニウム溶湯を清浄化し、得られるアルミニウム製品の品質を高めるために、極めて重要となっている。
【0003】
従来、上記脱ガス処理や除滓処理に用いられる処理剤には、代表的なものとして、塩素ガス、窒素ガス、これらの混合ガス、あるいは有機塩化物、無機塩化物、無機フッ化物、金属の各種塩類などを組成物として配合した多種類のフラックスが用いられていきた。
一方、近年の環境意識の高まりにより、塩素系生成物が問題視される中で、アルミニウム溶湯の脱ガス処理や除滓処理に用いるフラックスについても、従来の主流品であった塩素系フラックス替わるべく、新たな非塩素系フラックスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−80851号公報 (第1〜5頁)
【0005】
上記非塩素系フラックスは、フッ素樹脂と無機フッ化物の少なくとも1種が3〜60wt%、金属硫酸塩が10〜50wt%、金属炭酸塩と金属硝酸塩の少なくとも1種が0〜30wt%、酸化物、アルミニウム、および炭素質物質の少なくとも1種が0〜50wt%からなり、組成物として塩化物を含んでいない。
しかし、係る非塩素系フラックスは、いわゆる除滓効果がほとんど得られず、アルミニウム溶湯を清浄化できないだけでなく、主成分であるフッ素樹脂および無機フッ化物と助燃剤である金属硫酸塩や金属硝酸塩との燃焼により、有害なフッ素ガスが発生する。このため、環境上の問題があった。
【0006】
また、アルミニウム溶湯中の非金属介在物を除去するため、不活性ガスをキャリアガスとするフラックスを、ランスを介して上記溶湯中に吹き込むと共に、係るランスの先端に設けた旋回体により上記溶湯を攪拌しながら、上記フラックスを分散して吹き込む溶湯処理装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
更に、アルミニウムなどの溶融軽金属に挿入した回転体の回転により、その溶融軽金属中に不活性ガスを微細気泡化して拡散し、上記回転によって溶融軽金属中に旋回流が生じる前に、係る旋回流と相反する対流を発生させる溶融軽金属の精製処理装置も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献2】
特開昭63−183136号公報 (第1〜5頁、図1,2)
【特許文献3】
特公平7−122106号公報 (第1〜5頁、図1)
【0008】
【発明が解決すべき課題】
しかしながら、前記溶湯処理装置や溶融軽金属の精製処理装置を用いて、アルミニウム溶湯中に従来の低公害フラックスを散布し且つ分散しても、その溶湯の液面に散布する場合に比べて除滓効果は向上するものの、有害ガスな塩素ガスやフッ素ガスなどの発生を十分に抑制できない、という問題があった。
本発明は、以上に説明した従来の技術における問題点を解決し、アルミニウム溶湯中の水素や非金属介在物を除去して清浄化しつつ有害な塩素ガスなどの発生を低減できるアルミニウム溶湯除滓処理用フラックスを提供する、ことを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段および作用ならびに発明の効果】
本発明は、上記課題を解決するため、発明者による鋭意研究および調査の結果、アルミニウム溶湯中で除滓作用を果たす塩化物をベースとし且つ係る溶湯と滓分との分離を促進するフッ化物の添加量を必要最小限抑制する、という知見により成されたものである。
即ち、本発明のアルミニウム溶湯除滓処理用フラックス(請求項1)は、〜10wt%のフッ化物と、40〜60 wt %のKClと、40〜60 wt %のNaClとからなる、ことを特徴とする。
【0010】
これによれば、アルミニウム溶湯中の非金属介在物(滓)を除去する除滓作用に必須の塩化物をベースとし且つ係る溶湯と滓分との分離を促進するフッ化物の添加量を必要最小限の範囲に抑制している。このため、上記フラックスをアルミニウムの除滓処理に用いると、係る溶湯中の滓分が容易に分離および除去されると共に、フッ化物を上記範囲に抑制したため、上記除滓作用の際に塩化物から生じる有害な塩素ガスなどの排出を低減することができる。従って、アルミニウム溶湯の除滓処理を効率良く行え且つ環境上でも支障を来たしにくくすることが可能となる。
【0011】
尚、上記フッ化物は、3wt%未満になると、アルミニウム溶湯と滓分との分離作用が不足化するため、下限を少なくとも6 wt %以上し、一方、10wt%を越えると、係る分離作用が飽和し且つ塩素ガスの発生が顕著になるため、10 wt %を上限とした
また、塩素ガスの発生は、後述する実験や実施例で示すように、従来の常識であったフラックス中の塩化物の量に依存するのではなく、係る塩化物と併用されるフッ化物の多少に依存する、という発明者による実験結果に着目して、その発生を低減可能にしたものである。
更に、前記40〜60 wt %のKClと、40〜60 wt %のNaClとの塩化物は、アルミニウム溶湯と非金属介在物との隙間に液化したフラックス成分を浸透させるが、上記KClとNaClとをほぼ1:1の比で併用することにより、塩化物による上記除滓作用を一層高めることができる
尚、前記フッ化物を含むフラックスの組成設計上の観点から、上記KClおよびNaClは、それぞれ40〜55 wt %の添加範囲が望ましい
【0012】
また、本発明には、前記フッ化物は、NaFである、アルミニウム溶湯除滓処理用フラックス(請求項2)も含まれる。
これによれば、上記NaFにより、アルミニウム溶湯と非金属介在物との分離を促進し、除滓作用を向上させることが可能となる。
尚、上記NaFは、非吸湿性であり、且つ上記溶湯とそれに含まれる酸化物または酸化被膜との結合を遮断する効果が高いため、推奨されるフッ化物である。
【0013】
、図1に示すように、アルミナやMgOなどの酸化物の表面にアルミニウム溶湯(溶滴)を垂らし、その周りをフラックスで覆った場合において、係る3者の間には、3つの界面張力が働く。即ち、図1中の矢印で示すように、σMOは、酸化物と溶湯との界面での張力、σMφは、溶湯とフラックスとの界面での張力、σOφは、酸化物とフラックスとの界面での張力である。
一方、上記溶湯と酸化物とが分離するには、数式1の成立が必要である。
上記σMOは、フラックスの組成に拘わらず一定であり、上記σOφは上記σMφの界面張力に比べて値が小さい。
このため、数式1を満足するためには、右項中のσMφをできるだけ小さくすることが望ましい。これにより、図2中の一点鎖線の矢印で示すように、アルミ溶湯と酸化物(滓分)との分離、即ち除滓作用を得ることが可能となる。そして、後述する実験例や実施例で示すように、σMφを550mN/m以下とすることにより、数式1を確実に満たすようになる
【0014】
【数1】
σMO>σMφ+σOφ
【0015】
また、本発明のアルミニウム溶湯除滓処理用フラックスは、フッ素樹脂、無機フッ化物、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属硝酸塩、酸化物、アルミニウム、および炭素質物質の少なくとも1種以上を17wt%以下の範囲で更に含む、ものとしても良い。
上記金属硫酸塩、金属炭酸塩、および金属硝酸塩を添加することにより、フラックスを発熱させ前記除滓作用を促進し、特に塩化物が前記KClとNaClとからなる低温用フラックスに有効である。また、酸化物を添加することにより、フラックス中の前記組成物に対し、アルミニウム溶湯中での反応を制御する調整または増量作用を促進させられる。但し、前記フッ化物や塩化物の最小添加量を確保し、且つこれらへの影響を回避するため、総量を17wt%以下とした。
【0016】
尚、前記金属硫酸塩には、NaSO、KSO、MgSO、CaSO、BaSOが含まれ、金属炭酸塩には、NaCO、KCO、MgCO、CaCO、BaCOが含まれる。また、金属硝酸塩には、NaNO、KNO、BaNOが含まれ、酸化物には、MgO、Al、SiOなどが含まれる。
付言すれば、前記フラックスの融点は、650℃以下であることが望ましい。これにより、大半のアルミニウムの融点よりも低くなって実用的となる。
【0017】
更に、本発明の前記アルミニウム溶湯除滓処理用フラックスは、これを、不活性ガスと共にランスを介してアルミニウム溶湯中に吹き込み、係るランスの先端に取り付けた旋回体により上記アルミニウム溶湯を攪拌しながら、係るアルミニウム溶湯に上記フラックスを分散しつつ放出する除滓工程を有する、アルミニウム溶湯の除滓処理方法に用いることも可能である
これによる場合、不活性ガスをガスキャリアとして攪拌されているアルミニウム溶湯中に前記フラックスを分散しつつ放出するため、前記塩化物による非金属介在物の除滓作用および前記フッ化物による係る除滓作用の促進により、上記溶湯中の非金属介在物を、係る溶湯との分離効率を維持しつつ確実に除去できる。しかも、フッ化物の配合が抑制されているため、上記除滓作用に伴う有害な塩素ガスやフッ素ガスの排出を低減でき、環境上の点からも好ましくなる。
【0018】
加えて、前記除滓工程の後に、前記旋回体の回転により前記アルミニウム溶湯に旋回流が生じる前に、係る旋回体の回転方向を正転または逆転するように交互に正逆回転して、前記不活性ガスにより上記アルミニウム溶湯を脱ガスをする脱ガス工程を有する、アルミニウム溶湯の除滓処理方法に用いることも可能である
これによる場合、、殆どの非金属介在物が除去された後のアルミニウム溶湯を、渦巻き状の旋回流が生じる前に、上記旋回体を正転および逆転の交互に回転させて上記溶湯内に緩やかな整流を反転させつつ生じせしめる。このため、係るアルミニウム溶湯中に微細化されて放出した不活性ガスにより、係る溶湯中の水素を上昇させて確実に放出することができる。従って、前記除滓工程と相まって、アルミニウム溶湯の清浄化を確実に且つ効率良く行うことが可能となる。
【0019】
【発明の実施形態】
以下において、本発明アルミニウム溶湯除滓処理用フラックス(以下、単にフラックスと称する)を使用する除滓処理方法に用いる処理装置について説明する。
図3は、アルミニウム溶湯の処理装置1を示し、耐火物からなる円筒形のルツボ2と、係るルツボ2に充填したアルミニウム溶湯Mに回転可能に挿入されるランス4と、を備えている。ランス4は、図示しないロータリージョイントを内設する支持部8に枢支され、その軸方向に沿って貫通する中空部3は、先端に設けた円盤形の旋回体6の中心部に位置する開口部5に連通している。また、旋回体の6の底面には、放射方向に沿って突出する複数の凸条7が対称に位置する。尚、係る凸条7に替えて、旋回体6の底面に複数の凹溝を対称に形成しても良い。
【0020】
公知の耐火物からなるランス4は、図3に示すように、継手16および支持部8を介して、モータ14により、正転および逆転方向に回転される。
更に、支持部8内のロータリージョイントには、Arなどの不活性ガスgの供給管12が傾斜管9を介して連通している。図3に示すように、供給管12と傾斜管9との連結部には、開口部11を介してホッパ10が接続され、係るホッパ10は、本発明のフラックスfを貯留している。尚、ホッパ10の底部には、上記開口部11を開閉する図示しない弁が設けられている。
従って、モータ14によりランス4および旋回体6を回転すると共に、供給管12から不活性ガスgを供給すると、係るガスgをキャリアガスとしてフラックスfが、傾斜管9やランス4の中空部3を介して、その先端の開口部5からアルミニウム溶湯M中に分散して放出される。同時に、不活性ガスgも、回転する旋回体6および凸条7により、微細な気泡として上記溶湯M中に放出される。
【0021】
図4は、本発明のフラックスを用いたアルミニウム溶湯の除滓処理方法における除滓工程を示す。
前記モータ14にてランス4および旋回体6を数100rpmで回転すると、図4に示すように、アルミニウム溶湯Mは、攪拌されて一方向に沿った渦巻き状の旋回流を生じる。係る状態にて、キャリアガスであるArガス(不活性ガス)gと共にフラックスfをランス4の中空部3を経て先端(下端)の開口部5から上記溶湯M中に分散しつつ放出する。放出されたフラックスfは、図4中で一点鎖線の矢印で示すように、上記溶湯M中を上昇しつつ係る溶湯Mに含まれる非金属介在物をAl(メタル)分から分離し、且つ当該溶湯Mの表面(液面)に浮上させる。
【0022】
この際、フラックスfは、前記のように、フッ化物の配合量が〜10wt%と少ないため、主成分の塩化物であるKClおよびNaClの反応による塩素ガスや当該フッ化物自体から発生するフッ素ガスを著しく低減できる。尚、上記フラックスfの全供給量は、上記溶湯Mの約0.2wt%が目安とされ、上記回転は約2〜3分間行われる。
従って、以上の除滓工程によれば、上記溶湯M中の非金属介在物を確実に効率良く除去(除滓)でき、且つ有害なガスの発生を低減でき環境上も良好となる。
【0023】
図5は、前記アルミニウム溶湯の除滓処理方法における脱ガス工程を示す。
前記除滓工程の後、前記ホッパ10の開口部11を閉鎖し、前記モータ14を減速または一端停止した後に、数100rpmで回転させ且つ約20〜30秒ごとの反転間隔で交互に正回転および逆回転させる。すると、ルツボ2内の除滓されたアルミニウム溶湯Mは、旋回体6や凸条7の回転による旋回流が生じる前に、その回転方向と逆方向に上記間隔ごとに交互に正回転および逆回転する。このため、図5に示すように、上記溶湯Mは、渦巻き状の旋回流を生じることなく、一定間隔こどに逆向きに流れが変わる整流状態となる。
係る状態で、Arガスgを前記供給管12、傾斜管9、ランス4の中空部3を経て、図5に示すように、ランス4先端の開口部5からアルミニウム溶湯M中に微細な気泡として放出する。係る気泡となった無数のArガスgは、上記溶湯M中を上昇する際に、当該溶湯Mに溶け込んでいた水素を浮上させる。
この結果、係る溶湯Mの脱ガス処理を効率良く行うことができる。
【0024】
次に、本発明のアルミニウム溶湯除滓処理用フラックスを得るに至る前提となった実験について説明する。
先ず、フラックス中の塩素(Cl)分と処理時に発生する塩素ガスとの関係の有無について調べるため、NaCl:KClが1:1である塩化物とNaFであるフッ化物とからなり且つ両者の配合割合を替えた18種類の参考用フラックスを用意し、500kgのアルミニウム(AC4C)溶湯M中に前記図4で示したランス4を介して個別に1kg添加し、旋回体6を一定回転数で回転して攪拌した。各フラックスごとの脱滓処理に発生した塩素ガスをガスクロマトグラフで測定し、その結果を図6のグラフに示した。尚、塩化物をNaClおよびKClの混合物とし且つこれらを1:1としたのは、塩化物の融点を下げるためである。
図6のグラフによれば、フラックス中の塩素分の量が増加するに連れて、発生した塩素ガスの量は反比例的に減少し、両者の間に因果関係がないことが判明した。この結果、従来のフラックス中の塩素分がアルミニウム溶湯処理時に塩素ガスを発生させる、という常識が事実に反することが解明された。
【0025】
更に、フラックス中のフッ素(F)分と処理時に発生する塩素ガスとの関係の有無について調べるため、フッ化物のNaFとNaCl:KClが1:1である塩化物とからなり且つ両者の配合割合を替えた18種類の参考用フラックスを用意し、前記同様にアルミニウム溶湯中に個別に添加し且つ攪拌した後、各フラックスごとの脱滓処理に発生した塩素ガスを前記同様の方法で測定した。その結果を図7のグラフに示した。図7のグラフによれば、フラックス中のフッ素分が増えるに連れて発生する塩素ガスの量がほぼ比例して増加することが判明した。この結果および図6のグラフにより、フラックス中のフッ素分が塩素分の反応を促進して塩素ガスを発生させることが判明した。
以上の実験結果から、前述したように、本発明アルミニウム溶湯処理用フラックスは、非金属介在物(滓)を除去する除滓作用に必須の塩化物であるKClとNaClとをベースとし且つ溶湯と滓分との分離を促進するフッ化物の添加量を必要最小限の範囲に抑制したものである。
【0026】
ところで、一般にアルミニウム溶湯に一定の条件で酸素を吹き込むと、ウェットで粘り気があり且つアルミニウムなどのメタル成分を含む酸化物の滓が係る溶湯の表面に生成する。係るウェットな滓は、フラックスを用いるアルミニウム溶湯処理の際に生成する滓に酷似している。
上記ウェットな滓にフラックスを添加して反応させると、除滓能力の大きいフラックスほど係るウェットな滓をドライなサラサラと乾燥した滓に変えられる。係るサラサラとした滓は、アルミニウムなどのメタル成分を含まないため、小さな重量となる。逆に滓にメタル成分が含まれるほど、その重量は大きくなる。
従って、フラックスをアルミニウム溶湯処理に用いて発生した滓を採取し、その重量を測定することで、当該フラックスの除滓能力を判定することができる。即ち、除滓能力の高いフラックスを用いると、メタル成分を含有するウェットな滓から酸化物だけの純然たる滓分のみを分離する能力が高いため、その除滓量は小さくなる。係る考え方を基にして、次述する実施例のための実験を行った。
【0027】
【実施例】
以下において、本発明による前記フラックスfの具体的な実施例を説明する。
予め、実施例および比較例ごとに、前記処理装置1のルツボ2に充填した下記アルミニウム溶湯Mに、一定条件下で酸素ガスを吹き込んで、ウェットで粘性がありアルミニウムなどのメタル成分を含む滓を上記溶湯Mの液面に生成させた。
次に、表1に示す実施例および比較例のフラックス(f)を用意し、各例ごとに前記図4に示したように、500kgのアルミニウム(AC4C)溶湯M中に挿入したランス4および旋回体6を400rpmで一方向に回転させて攪拌した状態で、各例のフラックス(f)を上記溶湯Mの0.2wt%(1kg)までランス4先端の開口部5から分散させつつ放出した。同時に、Arガスを30リットル/分ごとにキャリアガスとして放出した。各例ごとのメタル成分を除いた酸化物のみの非金属介在物からなる除滓量や、発生した塩素ガスおよびフッ素ガスの量をガスクロマトグラフなどの公知の方法で測定し、併せて表1中に示した。
尚、表1中の除滓量が少ない程、フラックスの除滓能力が高いことを示す。
【0028】
【表1】
Figure 0004222128
【0029】
表1よれば、NaClおよびKClからなる塩化物に〜10wt%のNaFを含む実施例1,2のフラックスfは、全て前記界面張力(σMφ)が550mN/m以下で、前記除滓工程での除滓量は、Al:5kg当たり約48〜75gであった。また、この工程で発生した塩素ガスとフッ素ガスは微量であった。
一方、NaClおよびKClからなる塩化物に3wt%未満のNaF(フッ化物)を含む比較例1〜4のフラックスは、全て前記界面張力(σMφ)が550mN/m超であり、前記除滓工程での非金属介在物の除滓量は、Al:5kg当たり約100〜200gであった。尚、比較例1〜4のフラックスは、NaFが過少なため、発生した塩素ガスとフッ素ガスは僅かであった。
更に、NaClおよびKClからなる塩化物に12wt%のNaFを含む比較例5のフラックスは、前記界面張力(σMφ)が550mN/m以下で、前記除滓工程での除滓量は、Al:5kg当たり40gであった。しかし、NaFが過多であったため、多量の塩素害およびフッ素ガスが発生した。
尚、表1に示すように、前記界面張力(σMφ)は、NaFの配合量と反比例的な関係にあることが理解される。
【0030】
次に、塩化物であるNaClおよびKClの除滓作用に適した組成を調べるため、NaCl:100〜0wt%とKCl:0〜100wt%との重量割合で、係る塩化物のみからなる複数組の参考用フラックスを用意し、前記同様の除滓工程を個別に行った。各フラックスの除滓能力を図8のグラフに示した。尚、図8中の滓量で「ブランク値」はメタル成分を含むウェットな滓量を、「発生量」は酸化物のみ(非金属介在物のみ)からなる純粋な滓量を示す。
図8のグラフによれば、NaClとKClとがほぼ50wt%ずつの組成の場合に、最も除滓能力が高くなることが判明した。しかし、最高の除滓能力であっても、上記グラフで示すように、滓量を0.2までに下げるのが限界であった。即ち、NaClとKClとをl:1の割合とし且つ必要最小限のフッ化物を配合することにより、更に高い除滓作用のフラックスが得られることが判明した。
【0031】
そこで、表2に示すように、NaClとKClとの重量を同じとし、NaFの配合量を〜10wt%の範囲内とした実施例3,4のフラックスfと、NaFの配合割合を3wt%未満とした比較例6〜8フラックスとを用意し、前記同様の条件で前記除滓工程を、各例ごとに行った。
各例ごとの前記界面張力(σMφ)と、除滓量と、発生した塩素ガスおよびフッ素ガスの量とを表2に示した。併せて、NaFの添加量と除滓作用との関係を、図9のグラフで示した。尚、図9中の「実」は実施例を、「比」は比較例を表す。
【0032】
【表2】
Figure 0004222128
【0033】
表2および図9のグラフによれば、実施例3,4のフラックスfのように、NaClとKClとをl:1の割合とし且つNaFをwt%以上配合すると、除滓能力(作用)が急激に向上するが、NaFが10wt%を越えると係る除滓能力が飽和する傾向にあることが判明した
一方、比較例6〜8フラックスは、NaFの配合量が3wt%未満と過少なため、塩化物の除滓作用を促進する能力に欠けていることが判明した。
【0034】
以上に説明した実施例1〜9のフラックスfにより、本発明のアルミニウム溶湯除滓処理用フラックスの作用が理解され且つその効果が裏付けられた。
尚、実施例1〜のフラックスfに対し、フッ素樹脂、無機フッ化物、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属硝酸塩、酸化物、アルミニウム、および炭素質物質の少なくとも1種以上を17wt%以下の範囲で且つNaClやKClの配合量を減らして添加しても良い。
【0035】
また、実施例1〜のフラックスfを前記図3に示したアルミニウム溶湯の処理装置1を用いて、アルミニウム溶湯Mに分散して吹き込んで非金属介在物を除去(除滓)する前記図4に示した除滓工程を行った後、前記図5に示した脱ガス工程を行って水素を除去することにより、アルミニウム溶湯Mを確実に清浄化でき、且つ環境上の支障も少なくできることも容易に理解される。
本発明は、以上において説明した実施の形態および実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルミニウム溶湯とフラックスと酸化物との間における界面張力を示す模式的概略図。
【図2】アルミニウム溶湯と酸化物が分離する場合を示す上記模式的概略図。
【図3】アルミニウム溶湯の除滓処理方法に用いる処理装置の概略図。
【図4】上記アルミニウム溶湯の除滓処理方法における除滓工程を示す概略図。
【図5】上記アルミニウム溶湯の除滓処理方法における脱ガス工程を示す概略図。
【図6】フラックス中の塩素分と発生する塩素ガスとの関係を調べたグラフ。
【図7】フラックス中のフッ素分と発生する塩素ガスの関係を調べたグラフ。
【図8】フラックスに配合する2種類の塩化物の配合割合と除滓能力との関係を示すグラフ。
【図9】本発明の実施例および比較例のフラックスにおけるフッ化物の配合割合と除滓能力との関係を示すグラフ。
【符合の説明】
4…ランス、 6…旋回体、 f…フラックス、
g…Arガス(不活性ガス)、 M…アルミニウム溶湯

Claims (2)

  1. 〜10wt%のフッ化物と、40〜60 wt %のKClと、40〜60 wt %のNaClとからなる
    ことを特徴とするアルミニウム溶湯除滓処理用フラックス。
  2. 前記フッ化物は、NaFである、
    請求項1に記載のアルミニウム溶湯除滓処理用フラックス。
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