JP4219098B2 - 静電型アクチュエータ、その製造方法及び前記静電型アクチュエータを用いたインクジェットヘッド、インクジェットプリンタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電型アクチュエータ、その製造方法及び静電型アクチュエータを用いた該インクジェットヘッド、インクジェットプリンタに関し、さらに詳しくは、記録を必要とする時にのみインク液滴を吐出し、記録紙面に付着させるインクジェット記録装置のインクジェットヘッドのアクチュエータであって、振動板と対向電極とが固着することのない、高耐久性の静電型アクチュエータ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明に関連した従来技術として、特開平11−179919号公報、特開平7−13007号公報等に記載されたものが知られている。
特開平11−179919号公報(静電型アクチュエータ及びその製造方法)の発明は、静電型アクチュエータを用いたインクジェットヘッドのインク室の底壁の表面及びセグメント電極の表面を含む振動室は、外部を結ぶ管と接続しており、この管はさらにバイパス管を介して外部に連通している。管の開放端を封止剤で封止した後、振動室内部にバイパス管を介して疎水膜を形成するための化合物が処理槽内で注入される。注入後、処理槽外で封止剤によりバイパス管を封止することにより振動室を気密封止することを特徴としたものである。
【0003】
また、特開平7−13007号公報(マイクロメカニカル装置の表面処理方法及び得られる装置)の発明は、2つの部品間のファンデルワールス力をこれらの表面にパッシベーション単分子層を生成することによって限定しているものである。マイクロメカニカル電子装置を例えばチップ上に準備し、パッシベートされる表面をプラズマでクリーニングおよび/またはアンダーカットした後、その表面をプラズマでアクチベートし、このチップを原料物資とともにコンテナに収容した集合をオーブンに入れて加熱してその表面を原料物資の蒸気に露出させ、その表面に上記単分子層を蒸着し、かつ過剰原料物資を排気することを特徴としたものである。
【0004】
さらに、特開平5−172846号公報(マイクロセンサ及びそれを用いた制御システム)の発明は、可動電極と固定電極との付着を防止する手段を設けている。具体的な構成としては、固体電極と弾性体によって支持された可動電極間に異常高電圧が印加されるか、または両電極に外部から静電気等の電荷が充電されても電気的絶縁層に電界が加わらないか、または電界強度が小さくなる手段を設ける。また、可動電極か過大変位した時の絶縁膜と固定電極との接触面積を微少化するような手段を設ける。これにより可動電極と固定電極の付着を防止することを特徴とする。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
インクジェット記録装置は、記録時の騒音が極めて小さいこと、高速印字が可能なこと、インクの自由度が高く安価な普通紙を使用できること等多くの利点を有する。この中でも記録の必要なときにのみインク液滴を吐出する、いわゆるインク・オン・デマンド方式が記録に不要なインク液滴の回収を必要としないため現在の主流となっている。
【0006】
インク・オン・デマンド方式のインクジェットヘッドには、特公平2−51734号公報に記載されたもののように、駆動手段が圧電素子であるものや、また特公昭61−59911号公報に記載されたもののように、インクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインクを吐出させるもの等がある。
しかしながら、上記方式のインクジェットヘッドには以下に述べるような課題がある。
【0007】
最近のインクジェット記録装置による印字には、高速・高印字品質が求められてきており、これを達成するためのマルチノズル化・ノズルの高密度化において、圧電素子を微細に加工して各々の振動板に接着することはかなり困難である。また、従来の機械加工における寸法精度では印字品質のばらつきが大きくなってしまうという課題がある。
【0008】
また、インクを加熱する方法においては、駆動手段が薄膜の抵抗加熱体により形成されるため上記のような課題は存在しないが、駆動時の急速な加熱・冷却の繰り返しや気泡消滅時の衝撃により抵抗加熱体がダメージをうけるためにインクジェットヘッドの寿命が短いという課題があった。
【0009】
上記の課題を解決するものとして、特開平5−50601号公報で開示されているように、駆動手段に静電気力を利用した静電型インクジェットヘッド記録装置がある。この方式は、小型高密度・高印字品質および長寿命であるという利点を有している。
【0010】
上記静電方式においては、インクノズルに連通しているインク吐出室の底面が弾性変形可能な振動板として形成されている。この振動板には一定の間隔で対向電極基板が対向配置され、これらの対向電極の間の空間は封止された状態となっている。振動板と対向電極間に電圧を印加すると、これらの間に発生する静電気力によってインク室の底面(振動板)が基板の側に静電吸引あるいは静電反発されて振動する。このインク室の底面の振動に伴って発生するインク室の内圧変動によりインクノズルからインク液滴が吐出される。対向電極間に印加する電圧を制御することにより、記録に必要なときのみインク液滴を吐出するインク・オン・デマンド方式が実現される。
【0011】
ここで、対向電極間に繰り返し電圧を印加してインクジェットヘッドを駆動している間に、対向電極の表面すなわち対向しているインク室底面及び基板の表面に水分が付着すると、これらの極性分子の帯電によって静電吸引特性あるいは静電反発特性が低下する恐れがある。また、基板の表面に吸着した極性分子が相互に水素結合してインク室底面が基板側に貼り付いたままの状態となり、動作不能となる恐れがある。また水分が付着していなくてもファン・デル・ワールス力、静電引力により上記と同様インク室底面が基板側に貼り付いたままの状態となるおそれがある。
【0012】
上記のような弊害を回避するためにインク室底面および基板表面に疎水化処理を施すことが考えられる。例えば、特開平7−13007号公報ではパーフルオロデカン酸(PFDA)の配向分子層をこれらの表面に形成することによりこれらの表面を疎水化している。また特開平11−179919号公報ではヘキサメチルジシラザン等(HMDS)を用いて疎水化処理をすることを提案している。即ち疎水膜を形成するための化合物を対向電極の間の空間に気密封止して、静電型アクチュエータの耐久性を向上させることを提案している。
【0013】
確かに、上記のように疎水膜を形成するための化合物を対向電極の間の空間に気密封止する方法では液架橋力あるいは水素結合力によるインク室底面の基板側への付着は防ぐことができるが、ファンデルワールス力や、静電引力による振動板と電極との付着は防ぐことができない。
【0014】
図12は、従来の静電駆動方式のインクジェットヘッドにおける個々のアクチュエータ部の縦断面図である。
図13は、図12に示す個々のアクチュエータを複数並列状態で集積したインクジェットヘッドの横断面図であり、図中X−X断面が図12に示されている。
【0015】
個々の静電型アクチュエータ81は微少な隙間をもって対向する2個の電極部材を有しており、一方の電極は弾性変形可能な振動板83としてインク室82の底に形成されており、他方の電極86はガラス基板85上に形成されている。振動板83は薄肉とされており、図12において上下方向に弾性変形可能となっている。この振動板83は各インク室82側の共通電極として機能する。従来例において、この共通電極としての振動板83の底面にはヘキサメチルジシラザン(以下単にHMDSと呼ぶ)を用いて有機珪素化合物からなる疎水膜84が形成されている。この振動板83に対向する個別電極としてのセグメント電極86の表面にもHMDSを用いて有機珪素化合物からなる疎水膜87が形成されている。疎水膜84を挟み振動板83と、対応する各セグメント電極86とによって対向電極が形成されている。
この従来例では、有機珪素化合物からなる疎水膜84,87を形成することにより振動板83と電極86とが付着しないような構成としている。
なお、各個別電極としての各セグメント電極86には端子部88がリード部を介して接続され、封止材89の外方で露出している。
【0016】
しかしながら、疎水膜の処理のみでは液架橋、水素結合等の水分が原因となる振動板と電極との付着を防止することは可能であるが、ファンデルワールス力、静電引力が原因となる振動板と電極との付着を防止することはできない。
【0017】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ファンデルワールス力、静電引力、液架橋力、水素結合力等が原因で生じる振動板と電極との付着を防止することを目的とする。
より詳しくは、振動板と、該振動板と対向配置された対向電極と、前記振動板と対向電極間に振動室を備えている静電型アクチュエータにおいて、前記対向電極の上部を逆スパッタにより表面をエッチングすることにより、逆スパッタ後の前記対向電極の表面粗さを、前記振動板と対向電極が接触したときにおける前記振動板と対向電極との吸着力が前記振動板の復元力と等しくなるときの前記対向電極の表面粗さRa(th)よりも大きくしたことを特徴とするものである。
【0018】
静電方式のアクチュエータの場合、振動板の復元力が振動板と電極との吸着力よりも小さくなる場合に振動板と電極部が吸着し動作不良を起こす。
振動板の復元力は、以下の(1)式で表すことができる。
Fx=35Eh3δ/a4…(1)
Fx:振動板の単位面積当たりの復元力
E:振動板ヤング率
h:振動板板厚
δ:振動板最大変位量
a:振動板短辺幅
【0019】
また、吸着力と表面粗さの関係は、図11のグラフによって示すことができる。
図11のグラフのように表面粗さが小さいと吸着力は大きくなる。このため、振動板の復元力と振動板と電極部が接触したときの振動板と電極部の吸着力が釣り合う表面粗さRa(th)が存在する。電極表面の表面粗さをこのRa(th)よりも大きくすることで電極と振動板の吸着を防止することが可能となる。
【0020】
以上のように、本発明の目的は、振動板と電極との付着を防止し高耐久性の静電型アクチュエータを提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の技術手段は、振動板と、該振動板と対向配置された対向電極と、前記振動板と対向電極間に振動室を備えている静電型アクチュエータにおいて、前記対向電極の上部を逆スパッタにより表面をエッチングすることにより、逆スパッタ後の前記対向電極の表面粗さを、前記振動板と対向電極が接触したときにおける前記振動板と対向電極との吸着力が前記振動板の復元力と等しくなるときの前記対向電極の表面粗さRa(th)よりも大きくしたことを特徴とする。
【0023】
第2の技術手段は、第1の技術手段の静電型アクチュエータにおいて、前記対向電極の最上膜は絶縁膜で形成されていることを特徴とする。
【0024】
第3の技術手段は、第1の技術手段の静電型アクチュエータにおいて、前記対向電極の最上膜はSiO2膜で形成されてことを特徴とする。
【0025】
第4の技術手段は、第1の技術手段の静電型アクチュエータにおいて、前記対向電極の最上膜は電極上に形成された絶縁膜であることを特徴とする。
【0026】
第5の技術手段は、第1の技術手段の静電型アクチュエータにおいて、前記対向電極の最上膜はエッチングされた膜であることを特徴とする。
【0027】
第6の技術手段は、第3または4の技術手段の静電型アクチュエータにおいて、前記対向電極の膜上に絶縁膜を積層することを特徴とする。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の静電型アクチュエータ及びその製造方法について、図1〜図10に示す実施例に基づいて説明する。
(実施例1)
図1は、静電型インクジェットヘッドのアクチュエータ部の分解斜視図、図2は組み立てられた静電型インクジェットヘッドの断面構成図である。これらの図に示すように、本発明によるインクジェットヘッドのアクチュエータは、インク液滴を基板の上面に設けたインクノズルから吐出させるサイドシュータ型であり、静電駆動方式のものである。
インクジェットヘッド1はキャビティープレート3を中心にして、上側にノズルプレート4、下側にSi基板上に形成された電極プレート2がそれぞれ積層された3層構造となっている。キャビティープレート3はシリコン基板であり、プレートの表面には底壁が振動板5として機能するインク室6と各インク室に電極プレート側からインクを供給するためのインク供給口7がエッチングによって形成されている。このキャビティープレート3の下面には、駆動時の電荷の蓄積あるいは移動によって発生する振動劣化を防止するために酸化膜8が形成されている。
【0033】
キャビティープレート3の上側に接合されるノズルプレート4は、例えばシリコン基板、金属、樹脂等で形成されており、各インク室6に連通する複数のノズル9が形成されている。また、流体抵抗部10もノズルプレート4に形成されている。
また、電極プレート2はシリコン基板上に形成されており、インクジェットヘッドの裏面からインクを供給するためのインク供給口11が形成されている。また、各振動板5を静電引力あるいは静電反発力によって駆動させるための個別電極としての対向電極12が形成されている。さらに、電極の保護膜として酸化膜13が対向電極12の上部に形成されている。酸化膜13の表面は表面粗さがRa(th)以上となるようエッチング等により粗面化されており、この表面粗さにより振動板駆動時に振動板5と個別電極12とが付着することを防止している。付着の原因としてはファンデルワールス力、静電引力、液架橋力、水素結合力等があるが、表面粗さがRa(th)以上となるように制御されているため、これらの全ての原因による付着を防止することが可能となる。
また、振動室内を不活性ガスあるいは乾燥空気によって置換することにより、環境変化時の結露を防止することも可能であり、より高信頼性の静電アクチュエータを形成することが可能となる。
【0034】
次に、本発明の静電型アクチュエータの製造方法について図3,図4,図5,図6に基づいて説明する。
図3,図4は、本発明の静電型アクチュエータを形成する一連の工程の断面図である。また、図6は本発明の静電型アクチュエータを用いた静電ヘッドの分解斜視図である。
図3(A)に示すようにP型(100)Si基板21(厚さ625μm)を用意する。
次に、図3(B)に示すように2μmの厚さに酸化膜22をウェット酸化により形成する。酸化条件は1050℃、18.5hである。
次に、酸化膜22上に図示しないフォトレジストを塗布し、グラデーションマスクを用いてレジストのパターニングを行い、図3(C)に示すようにドライエッチングおよびウェットエッチングにより酸化膜22のパターニングを行う。グラデーションマスクを使用して、電極形状を形成することにより振動板に対して傾斜を有する非平行のギャップを形成することができ、低電圧化に有利な電極形状を形成することが可能となる。
図5は、グラデーションマスクパターンの一例を示す図である。グラデーションマスクは、所定のピッチで多数の開口Aが開いていて、ギャップ形状に対応して開口率が変化されている。
【0035】
次に、図3(D)に示すように電極となるTiN23を200nmの厚さにスパッタ法で形成する。
その後、図3(E)に示すようにTiN23を個別電極用にエッチングにより分離を行い、
その後、図3(F)に示すように電極保護膜としてシリコン酸化膜24を200nmの厚さに形成する。
次に、図3(G)に示すように保護膜24の上部を逆スパッタにより電極の表面粗さが0.2nm以上となるように電極表面25を形成する。
次に、図3(H)に示すように電極部以外の前記シリコン酸化膜及びTiNを各々ドライエッチング、ウェットエッチングにより除去する。
【0036】
その後、図4(I)に示すようにボロンを注入した厚さ400μmの(110)Si基板26を直接接合により900〜1000℃で接合を行い、
その後、図4(J)に示すように100μmの厚さになるまで研磨を行う。
次に、図4(K)に示すように電極基板21およびSi基板26にそれぞれ窒化膜27及び28を積層する。
その後、図4(L)に示すように、窒化膜のパターニングをして図4(M)に示すように液室部29をウェットエッチングにより形成する。ボロンを注入した領域はボロン注入していないSi領域と比較してエッチングレートが低下するため、選択的にボロン注入領域のみ残すことが可能である。上記方法により静電ヘッドのアクチュエータ部の作製を行う。
【0037】
次に、図6について説明すると、上記のように形成した静電アクチュエータ31及びドライバIC32が搭載されたにFPCケーブル33を異方性導電膜により接続する。その後、静電アクチュエータ31とノズルプレート34とを接合するために、シリコン液室の上面に接着剤を塗布する。シリコン液室とノズルプレート34を接着剤により接合する場合、接着剤のはみ出しが噴射特性に影響を与えるため、塗布膜厚を1μm前後にする必要がある。よって、シリコン液室上面に接着剤を塗布する方法は、転写法により塗布を行う。本実施例では、ローラーにドクターブレードで接着剤を薄膜化し、転写パッドによりローラーから接着剤を転写し、更に転写パッドからシリコン液室上面に接着剤を転写する方法により行う。また、ノズルプレートとシリコン液室の位置決めするために、仮接合用の紫外線硬化型接着剤をシリコン液室の仮接着剤塗布領域35にディスペンサにより塗布した。
【0038】
そして、Ni電鋳により形成されたノズルプレート34と、接着剤が塗布された静電アクチュエータ31を位置合わせし、仮加圧を行う。その後、紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射して接着剤を硬化させ、本加圧を行い加熱硬化させる。加熱接合する際に、シリコンとノズルプレート(NiまたはSUS)間の線膨張係数の差により反ってしまう。反りが発生すると、内部応力によりアクチュエータを破壊してしまう可能性がある。そこで、接着剤の硬化温度は低い方が良いため、2液混合型(常温硬化型)のエポキシ系接着剤を使用する。硬化温度は、低いほど良いが、本実施例では50℃で硬化を行う。また、インク供給タンクまたはインクカートリッジからインクを供給するためのジョイント部36と、フィルタ37が熱溶着されたフレーム38を接着接合する。フレーム38にアクチュエータ31とノズルプレート34を接着接合するために接着剤を塗布し、アクチュエータ31の位置合わせをして接着接合を行う。
以上のような構成により、個別電極にパルス電圧を印加することにより、振動板が静電気力によって電極側に変形する。そして、インクが共通液室から流体抵抗部を通り、圧力発生室に流入し、圧力発生室の体積が増加する。ここで、パルス電圧が解除されることで静電気力が無くなり、振動板がもとの状態に戻る。この振動板の弾性力によって圧力発生室の圧力が上昇し、ノズル孔からインクが噴射される。
【0039】
(実施例2)
以下、実施例2の静電型アクチュエータを用いたインクジェットヘッドについて説明する。
図7,図8は、実施例2の静電型アクチュエータの一連の製造工程における各工程での断面図である。
図7(A)に示すようにP型(100)Si基板41(厚さ625um)を用意する。
次に、図7(B)に示すように0.5μmの厚さにポリシリコン膜42を形成する。
次に、図7(C)に示すようにポリシリコン膜42をパターニングし、個別電極に分割を行う。
次に、図7(D)に示すようにポリシリコン膜42の上部に高温酸化膜(HTO)43を積層し、上部が平坦になるまで化学機械研磨(CMP研磨)を行う。
その後、図7(E)に示すようにグラデーションマスクを用いてレジストのパターニングを行い、ドライエッチングにより酸化膜のパターニングを行う。グラデーションマスクを使用して、電極形状を形成することにより非平行のギャップを形成することができ、低電圧化に有利な電極形状を形成することが可能となる。グラデーションマスクパターンは、実施例1で使用した図5に示すグラデーションマスクのものと同様のものを使用することができる。グラデーションのパターンを電極表面を荒らすように微少パターンを配置することにより、振動室を形成する際に同一工程で電極表面44の表面粗さを0.2nm以上にすることが可能である。また、グラデーションマスクに図5に示すようなパターンを形成することにより、同時に酸化膜に微細な突起を形成することが可能となる。
【0040】
その後、図8(F)に示すようにボロンを注入した厚さ400μmの(110)Si基板45を直接接合により900〜1000℃で接合を行い、
その後、図8(G)に示すように100μmの厚さになるまで研磨を行う。
次に、図8(H)に示すように電極基板41及びSi基板45に窒化膜46及び47を積層する。
その後、図8(I)に示すように、パターニングをして図8(J)に示すように液室部48をウェットエッチングにより形成する。ボロンを注入した領域はボロン注入していないSi領域と比較してエッチングレートが低下するため、選択的にボロン注入領域のみ残すことが可能である。以下、ノズルおよびユニット部、FPCケーブル等を接合する工程は前記した実施例1と同一工程で行う。
【0041】
本発明によって作成した静電アクチュエータと、ウェットエッチングによって振動室を作成した静電アクチュエータの振動耐久試験を行った結果を図9に示す。また、両サンプル電極部の表面観察をAFMにて行った結果を図10に示す。
図9に示すように本発明による静電アクチュエータでは30min経過後に吸着した振動板数は0%であったのに対し、ウェットエッチングによって振動室を作成した比較例では80%の振動板が吸着していた。各々の表面粗さは図10に示すように本発明:1.5nm、比較例:0.2nmであった。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば次のような効果が得られる。
請求項1の発明によれば、対向電極の上部を逆スパッタにより表面をエッチングすることにより、逆スパッタ後の対向電極の表面粗さを、前記振動板と対向電極が接触したときにおける前記振動板と対向電極との吸着力が前記振動板の復元力と等しくなるときの前記対向電極の表面粗さRa(th)よりも大きいことで、液架橋力、水素結合力、ファン・デル・ワールス力、静電引力等によって生じる振動板と対向電極との付着を防止することができるため、高耐久性の静電型アクチュエータを提供することが可能となる。
【0044】
請求項2の発明によれば、対向電極の最上膜は絶縁膜で形成されていることで、振動板と電極が接触する際に短絡するのを防止することができるため、高耐久性静電型アクチュエータを提供することが可能となる。
【0045】
請求項3の発明によれば、対向電極の最上膜はSiO2膜で形成されていることで、最上膜を酸化膜のデポや熱酸化により容易に形成することができ、また電極を覆う保護膜としても使用できるため、高耐久性静電型アクチュエータを提供することが可能となる。
【0046】
請求項4の発明によれば、対向電極の最上膜は電極上に形成された絶縁膜であることで、電極の表面の凹凸を反映して最上膜表面の表面粗さをRa(th)以上とすることができるため、液架橋力、水素結合力、ファン・デル・ワールス力、静電引力等によって生じる振動板と電極との付着を防止することができ、高耐久性の静電型アクチュエータを提供することが可能となる。
【0047】
請求項5の発明によれば、対向電極の最上膜はエッチングされた膜であることで、エッチング工程により最上膜表面の表面粗さをRa(th)以上とすることができるため、液架橋力、水素結合力、ファン・デル・ワールス力、静電引力等によって生じる振動板と電極との付着を防止することができ、高耐久性の静電型アクチュエータを提供することが可能となる。
【0048】
請求項6の発明によれば、請求項3あるいは請求項4記載の対向電極上の膜上に絶縁膜を積層することで、電極表面の凹凸を反映、またはエッチング工程により最上膜表面の表面粗さをRa(th)以上とすることができるため、液架橋力、水素結合力、ファン・デル・ワールス力、静電引力等によって生じる振動板と電極との付着を防止することができ、高耐久性の静電型アクチュエータを提供することが可能となる。また、積層する絶縁膜にフロー性のある絶縁膜を積層することで、振動板と対向電極の接合防止効果をより強固なものにすることが可能となり高信頼性の静電型アクチュエータを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 インクジェットヘッドの静電型アクチュエータ部の分解斜視図である。
【図2】 組み立てられたインクジェットヘッドの断面構成図である。
【図3】 実施例1の静電型アクチュエータを形成する一連の製造工程を示す断面図である。
【図4】 実施例1の静電型アクチュエータを形成する一連の製造工程を示す断面図で、図3に示す製造工程から続く製造工程を示す断面図である。
【図5】 静電型アクチュエータの製造時に用いるグラデーションマスクパターンの一例を示す図である。
【図6】 実施例1の静電型アクチュエータを用いたインクジェットヘッドを示す分解斜視図である。
【図7】 実施例2の静電型アクチュエータを形成する一連の製造工程を示す断面図である。
【図8】 実施例2の静電型アクチュエータを形成する一連の製造工程を示す断面図で、図7に示す製造工程から続く製造工程を示す断面図である。
【図9】 本発明によって作成した静電型アクチュエータと、ウェットエッチングによって振動室を作成した比較例の静電型アクチュエータの振動耐久試験を行った結果を示す図である。
【図10】 本発明によって作成した静電型アクチュエータと、ウェットエッチングによって振動室を作成した比較例の静電型アクチュエータの両サンプル電極部の表面観察をAFMにて行った結果を示す図である。
【図11】 吸着力と表面粗さの関係を示す図である。
【図12】 従来のインクジェットヘッドの静電型アクチュエータ部の縦断面図である。
【図13】 図12に示す静電型アクチュエータを複数並列状態で集積したインクジェットヘッドの横断面図である。
【符号の説明】
1…インクジェットヘッド、2…電極プレート、3…キャビティプレート、4…ノズルプレート、5…振動板、6…インク室、7…インク供給口、8…酸化膜、9…ノズル、10…流体抵抗部、11…インク供給口、12…個別電極、13…酸化膜、21…P型(100)シリコン基板、22…酸化膜、23…TiN、24…電極保護膜(シリコン酸化膜)、25…電極表面、26…(110)シリコン基板、27,28…窒化膜、29…液室部、31…静電型アクチュエータ、32…ドライバIC、33…FPCケーブル、34…ノズルプレート、35…仮接着剤塗布領域、36…ジョイント部、37…フィルタ部、38…フレーム、41…P型(100)シリコン基板、42…ポリシリコン膜、43…高温酸化膜、44…微細突起、45…(100)シリコン基板、46,47…窒化膜、48…液室部。
Claims (6)
- 振動板と、該振動板と対向配置された対向電極と、前記振動板と対向電極間に振動室を備えている静電型アクチュエータにおいて、
前記対向電極の上部を逆スパッタにより表面をエッチングすることにより、逆スパッタ後の前記対向電極の表面粗さを、前記振動板と対向電極が接触したときにおける前記振動板と対向電極との吸着力が前記振動板の復元力と等しくなるときの前記対向電極の表面粗さRa(th)よりも大きくしたことを特徴とする静電型アクチュエータ。 - 前記対向電極の最上膜は絶縁膜で形成されていることを特徴とする請求項1記載の静電型アクチュエータ。
- 前記対向電極の最上膜はSiO2膜で形成されていることを特徴とする請求項1記載の静電型アクチュエータ。
- 前記対向電極の最上膜は電極上に形成された絶縁膜であることを特徴とする請求項1記載の静電型アクチュエータ。
- 前記対向電極の最上膜はエッチングされた膜であることを特徴とする請求項1記載の静電型アクチュエータ。
- 前記対向電極の膜上に絶縁膜を積層することを特徴とする請求項3または4記載の静電型アクチュエータ。
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