JP4215939B2 - ジェット推進型滑走艇 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水流を後方に噴出してその反動で水上を航行する小型滑走艇(Personal Watercraft(パーソナルウォータークラフト);PWCとも呼ばれる)等のジェット推進型の滑走艇に関し、特にスロットルをOFF操作したときにも、ステアリング機能を維持できるジェット推進型滑走艇に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
所謂ジェット推進型の滑走艇は、レジャー用,スポーツ用としてあるいはレスキュー用等として、近年多用されている。このジェット推進型の滑走艇では、一般的に艇の底面に設けられた吸水口から吸い込んだ水を、ウォータージェットポンプで加圧・加速して噴射口から後方へ噴射することによって船体を推進させる。
【0003】
そして、このジェット推進型の滑走艇の場合、上記ウォータージェットポンプの噴射口の後方に配置したステアリングノズルを左右に揺動させることによって、後方への水の噴射方向を左右に変更することによって、艇を右側あるいは左側に操舵する。
【0004】
従って、このような構成のジェット推進型の滑走艇の場合、スロットルを全閉近くまで閉じてウォータージェットポンプからの水の噴射量が減少すると、艇を転向させるために利用できる推力(操舵のために利用できる推力)も同時に減少し、スロットルが再び開くまでは、艇を操舵する能力が減少する。
【0005】
このような現況に鑑みて、本出願人は、スロットルを全閉近くまで閉じてウォータージェットポンプからの水の噴射量が減少しても、船底の左右にそれぞれかかる水の抵抗のバランスを機械的に変化させることによって、操舵する能力を維持できるジェット推進型の滑走艇を提供した(特願2000−6708号)。
【0006】
しかしながら、上記ジェット推進型滑走艇の場合、部品点数が多くなって、構造が複雑となり、従って、重量が増加する。
【0007】
本発明は、このような現況に鑑みておこなわれたもので、スロットルをOFF操作(図12の降下線Zbの少なくとも一部を生じさせるような操作をいう、本明細書において同じ)した場合でも、艇を操舵することが維持できるジェット推進型滑走艇において、この操舵維持を、簡単に且つ重量を増加させることのないジェット推進型滑走艇を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本第1の発明は、上記課題を、以下のような構成からなるジェット推進型滑走艇によって解決することができる。即ち、
本第1の発明にかかるジェット推進型滑走艇は、ウォータージェットポンプで加圧・加速された水を後方の噴射口から噴射しその反動によって推進し、スロットルをOFF操作したときに、操舵機能を維持できるよう構成されたジェット推進型の滑走艇において、
ステアリング手段又はステアリングコラムとスロットルレバーとを連結する連結部材を備え、
ステアリング手段の操舵量に応じてスロットルレバーを開方向へ動作するように前記連結部材を構成したことを特徴とする。
【0009】
しかして、このように構成されたジェット推進型滑走艇によると、スロットルをOFF操作した場合であっても、ステアリング手段を操作すると、その操舵の大きさに応じて、又はこの操舵に伴うステアリングコラムの回動角度に応じて、連結部材がスロットルレバーを開方向へ動作させるように構成したので、このスロットルレバーの動作量に応じてエンジン回転数が上昇し、後方の噴射口からその上昇に見合った量の水を操舵された方向に噴射するため、スロットルのOFF操作がなされても、操舵機能を維持することとなる。
【0010】
また、上記第1の発明にかかるジェット推進型滑走艇において、前記連結部材をプッシュプル式のケーブルから構成し、該ケーブルの一端をステアリングコラムの外周面に直接的に又は間接的に突設された部分に連結する。このように、プッシュプル式のケーブルの一端をステアリングコラムの外周面に突設された部分に繋げるため、操舵に応じたステアリングコラムの回動動作をより大きな割合でプッシュプル式のケーブルの動作に変換することができる。そして、このように動作されるプッシュプル式のケーブルの他端の進退動作によって、スロットルレバーを開方向へ動作するように構成したので、当該連結部材を簡易な汎用部材から構成することができる。
【0011】
また、上記第2の発明にかかるジェット推進型滑走艇において、前記連結部材として上述した如きプッシュプル式のケーブルを2つ用意し、これらのケーブルを、ステアリングコラムの回動に応じて互いに反対方向へ押し引きされるように設け、これら一対のプッシュプル式のケーブルの他端、即ちスロットルレバー側に繋げられるケーブルの端部のいずれか一方の進退動作によりスロットルレバーを開方向へ動作するように構成したので、ステアリング手段の左右のいずれの方向への操舵の際でも、この操舵の方向に拘わらずにスロットルレバーを開方向へ動作させることができる。
【0012】
また、本第4の発明にかかるジェット推進型滑走艇は、ウォータージェットポンプで加圧・加速された水を後方の噴射口から噴射しその反動によって推進し、操舵とともに、スロットルをOFF操作したときに、そのステアリング手段の操舵とスロットルOFF操作を検知して、一時的にエンジンの回転数を上昇させることによって、スロットルのOFF操作時に操舵機能を維持できるよう構成されたジェット推進型の滑走艇において、
スロットルのOFF操作を検知するスロットル開度検知センサーと、
ステアリング手段の操舵状態を検知するステアリング位置検知センサーと、
搭載されたエンジンの燃料供給装置のスロットルバルブとリードバルブの間の燃料供給経路に設けられた補助燃料供給装置とを備え、
スロットル開度検知センサーからスロットルがOFF操作された旨の信号と、ステアリング位置検知センサーからステアリング手段が操作されている信号が得られたときに、
前記補助燃料供給装置の燃料供給経路を開閉するバルブを開放し、一時的にエンジンの回転数を上昇させることを特徴とする。
【0013】
しかして、このように構成されたジェット推進型滑走艇によると、スロットルをOFF操作した状態において、ステアリング手段を操作すると、スロットル開度検知センサーおよびステアリング位置検知センサーがそれらの状態を検知して、艇に搭載されているエンジンの主となる燃料供給装置(以後、主燃料供給装置という)とはその制御系が独立した補助燃料供給装置のバルブを一時的に開放して、エンジンへの燃料供給量を増大させる構成としたので、主燃料供給装置を介した燃料供給がなされていなくても、この補助燃料供給装置を介してのエンジンへの燃料供給がなされ、これによってエンジンの回転数が一時的に上昇し、後方の噴射口からその上昇に見合った量の水を操舵された方向に噴射するため、スロットルのOFF操作がなされても、操舵機能を維持することとなる。
なお、このような補助燃料供給装置によって、主燃料供給装置のスロットル動作に依存されずに、エンジンに燃料を供給すべく、特に、2サイクルのエンジンにあっては、当該補助燃料供給装置を主燃料供給装置のスロットルバルブとリードバルブの間の燃料供給経路に配置することになる。
【0014】
また、上記第4の発明にかかるジェット推進型滑走艇において、前記ステアリング位置検知センサーが、ステアリングコラムの中途に配置された近接スイッチであると、当該センサーを簡易な構成で実現することができ、好ましい実施形態となる。
【0015】
また、上記第4又は第5の発明にかかるジェット推進型滑走艇において、前記補助燃料供給装置のバルブの開放をソレノイドで行うと、例えば当該補助燃料供給装置がスライド式のバルブを備えている場合に、その電気的な開閉制御が容易であり、好ましい実施形態となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態にかかるジェット推進型滑走艇について、小型滑走艇を例に挙げて、図面を参照しながら、具体的に説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1(a)および図1(b)は本発明の第1実施形態にかかるジェット推進型滑走艇としての小型滑走艇のステアリング手段部分の構成および動作を模式的に示す平面図、図2は図1のステアリングコラム近傍の部分拡大図、図4は本発明の実施形態にかかる小型滑走艇の全体側面図、図5は図4の平面図である。
【0018】
図4あるいは図5において、Aは船体で、この船体Aは、ハルHとその上方を覆うデッキDから構成され、これらハルHとデッキDを全周で接続する接続ラインはガンネルラインGと呼ばれ、この実施形態では、当該ガンネルラインGは、本小型滑走艇の喫水線Lより上方に位置している。
【0019】
そして、上記デッキDの中央よりやや後部には、図5に図示するように、船体Aの上面に長手方向に延びる平面視において略長方形の開口部16が形成され、図4,図5に図示するように、この開口部16上方に騎乗用のシートSが配置されている。
【0020】
また、エンジンEは、上記シートS下方のハルHとデッキDに囲まれた横断面形状が「凸」状の空間20内に配置される。
このエンジンEは、多気筒(この実施形態では3気筒)のエンジンEで、図4に図示するように、クランクシャフト10bが船体Aの長手方向に沿うような向きで搭載されており、このクランクシャフト10bの出力端は、プロペラ軸15を介して、インペラ21が取着されているウォータージェットポンプPのポンプ軸側に、一体的に回転可能に連結されている。そして、このインペラ21は、その外周方が、ポンプケーシング21Cで覆われ、小型滑走艇の底面に設けられた給水口17から取り入れた水を吸水経路を介して取り込んで、ウォータージェットポンプPで加圧・加速して、通水断面積が後方にゆくに従って小さくなったポンプノズル(噴出部)21Rを通って、後端の噴射口21Kから吐出して、推進力を得るよう構成されている。
【0021】
また、図4において、21Vは整流するための静翼である。また、図4,図5おいて、10はステアリング手段である操舵用のハンドルで、このハンドル10を左右に操作することによって、上記ポンプノズル21R後方のステアリングノズル18を左右に揺動させて、ウォータージェットポンプPの稼働時に、艇を所望の方向に操舵できるよう構成されている。
【0022】
なお、図4,図5において、12は後部デッキで、この後部デッキ12には、開閉式のハッチカバー29が設けられ、ハッチカバー29の下方に小容量の収納ボックスが形成されている。また、図4あるいは図5において、23は前部ハッチカバーで、このハッチカバー23の下方には備品等を収納するボックス(図示せず)が設けられている。また、この前部ハッチカバー23の上方には、別のハッチカバー25が配置されて、二層式のハッチカバーが形成され、上記ハッチカバー25には、後端面に設けられた開口(図示せず)からその内部にライフジャケット等を収納することができるようになっている。
【0023】
ところで、本発明の実施形態にかかる小型滑走艇では、図1(a)および図1(b)に図示するように、上記ハンドル10のグリップ部10aの内側(この実施形態においては右側のみ)には、スロットルレバーLtが支持部材34を介して取り付けられている。この支持部材34は、ハンドル10から前方へ延びたブロック状をなし、その後端部から右側へ突出した部分に上下軸38を備え、該上下軸38によってグリップ部10aの前方位置においてスロットルレバーLtを回動自在に支持している。そして、スロットルレバーLtを操作する(握る)ことによって、当該スロットルレバーLtにスロットルケーブル35を介して連結された、エンジンEに装着された気化器のスロットルバルブ(図示せず)を動作させて、エンジンEの回転数を増減できるようになっている。
【0024】
また、前記ハンドル10のステアリングコラム10Aの長手方向の中途には、図2に図示するように、その外周面の一部に突起部30pを備える環状盤30が外嵌されてある。当該突起部30pは、この実施形態では、ハンドル10が中立位置にある状態で正面前方Fを向くように配置されており、ハンドル10の回転操作と一体的にステアリングコラム10Aが回動するようになっている。
【0025】
このようなステアリング操舵に応じた突起部30pの動作域の左右両側には、ハンドルストッパ32a,32bがそれぞれ適宜の位置に配設され、ハンドル10の切れ角、即ち最大操舵角度を規制している。なお、この実施形態では、前記最大操舵角度を左右にそれぞれ約20度としてある。但し、上記環状盤30の突起部30pおよびこれに応じたハンドルストッパ32a,32bの配設位置は、上述したものに限定するものではない。ただし、ハンドル10を左右方向へ均等な角度に操舵できるように、両者の位置関係を定めることが好ましい。
【0026】
図2に更に詳しく図示するように、各ハンドルストッパ32a,32bには、ケーブルホルダ34a,34bを介してプッシュプル式のケーブル31a,31bが、それらの一端の被覆部分をそれぞれ環状盤30の突起部30pの側へ向けて固定されている。同一端側の被覆部分の内側にある芯部分(インナーワイヤ部分)の端部には、所謂「ケーブル太鼓」と呼ばれる鼓状の肥大部分(ケーブルエンド)31da,31dbがあって、この肥大部分31da,31dbが、これに対向する突起部30pの位置に設けられた凹部31ca,31cbに収納されている。
【0027】
また、これら一対のプッシュプル式のケーブル31a,31bの他端は、図1(a)および図1(b)に図示するように、ハンドル10の支持部材34に取り付けられている。具体的には、この支持部材34には、ブロック状部材33が埋設されており、該ブロック状部材33には、2つの貫通孔34ha,34hbが左右方向に穿設されている。これらの貫通孔34ha,34hbにはピン33a,33bがそれぞれ貫通方向への移動自在に挿通されており、これらピン33a,33bの左側の端部は、上記プッシュプル式のケーブル31a,31bの前記他端にそれぞれ連結されている。
【0028】
従って、図1(a)に図示するように、ハンドル10を左側へ操舵すると、この側のプッシュプル式のケーブル31aのインナーワイヤ部分がその被覆部分内に押し込まれる一方、これとは反対側(右側)のプッシュプル式のケーブル31bのインナーワイヤ部分がその被覆部分から引き出されるように動作する。この結果、押された側のケーブル31aのインナーワイヤ部分は、これが連結されているピン33aを押して突出させ、引かれた側のケーブル31bのインナーワイヤ部分は、これが連結されているピン33bを引き込むこととなる。
【0029】
この押されて突出した側のピン33aは、スロットルレバーLtの対応部分に埋設された当て板39を押し、スロットルレバーLtを開く側へと回動させる。このようなピン33aの突出量は、図1(a)に図示するように、突起部30pが一方のハンドルストッパ32a(この場合は左側)に当接されるまでハンドル10を操舵したときに最大となる。なお、図1(a)および図1(b)には具体的に図示していないが、ハンドル10を右側へ操舵した場合には、もう一方のピン33bに押されることによって、同様にスロットルレバーLtが動作を行うように構成されている。
【0030】
なお、上記当て板39は、スロットルレバーLtが一般に合成樹脂又はアルミニウムなどの軽量材料から製作されているため、ピン33a,33bが当接するスロットルレバーLtの位置の磨耗を軽減するために、より耐磨耗性に優れた材料から製作されている。
【0031】
しかし、図1(b)に図示するように、突起部30pが左右のいずれのハンドルストッパ32a,32bにも当接していない中間位置にあるようなハンドル10の操舵位置においては、両方のピン33a,33bがスロットルレバーLtに当接しないように設定されている。
【0032】
以上のように、ハンドル10を左右のいずれかの方向へ一杯に切ったときに、いずれかのピン33a,33bの突出によってスロットルレバーLtを所定量だけ開方向へ回動させるので、スロットルがOFF操作されている場合であっても、強制的にスロットルを開くことができ、操舵を維持することができる。この操舵維持状態は、ライダーがハンドル10を略一杯に切っている間中おこなわれることになり、ライダーがハンドル10を、ピン33a,33pがスロットルレバーLtに当接しない位置まで中立方向へ戻すように操作をおこなうか、又は突出しているピン33a,33bの押動量よりも大きくライダーがスロットルレバーLtを開方向へ回動する操作をおこなうことによって解除される。つまり、この構成であれば、通常の走行状態では、スロットルレバーLtが既に開方向へ回動されているので、ピン33a,33bに当接することはない。
【0033】
(第2実施形態)
また、以上に説明したようなハンドル10の操作に応じて直接的にスロットルレバーLtを回動させる構成は、次に説明するような形態であっても実現することができる。即ち、本実施の形態は、上記第1実施形態のように2本のプッシュプル式のケーブル31a,31bを用いるのではなく、図3に図示するように、1本のプッシュプル式のケーブル31cを用いている。
【0034】
該ケーブル31cの両端は、上記第1実施形態のケーブル31a,31bのスロットルレバーLt側のそれと同様の形態で取り付けてある。また、ケーブル31cは、その被覆部分の中間部を所定長さに亘って欠落され、インナーワイヤ部分が剥き出しの状態とされている。この欠落された被覆部分が欠落の一対の端部36a,36bは、上記第1実施形態と同様にハンドルストッパ32a,32bのケーブルホルダ34a,34bにそれぞれ所定長突出して固定されており、これらケーブルホルダ34a,34bの間にあるケーブル31cのインナーワイヤ部分が、環状盤30の突起部30pに左右方向に穿設されたガイド孔31hに挿通されている。
【0035】
このガイド孔31hの左右のそれぞれの側にあるケーブル31cのインナーワイヤ部分の中途には、ワッシャ状のストッパ34wa,34wbが固着されている。各ストッパ34wa,34wbとハンドルストッパ32a,32bに固定された被覆部分の端部36a,36bとの間には、コイルバネからなるリターンバネ34pa,34pbを介在させてある。
【0036】
従って、例えば、ハンドル10が左側へ操舵され始めると、環状盤30は図3における反時計方向へ回転する。このとき、ケーブル31cのインナーワイヤ部分は、突起部30pのガイド孔31h内を滑り、左方へは押されない。やがて、突起部30pは、左側のストッパ34waに当接し、リターンバネ34paに抗してストッパ34waを左側、即ち上記端部36aへと押し付けるように動作する。これによって、ストッパ34waに一体とされているケーブル31cのインナーワイヤ部分は、図1(a)に図示した上記第1実施形態の動作と同様に、ピン33aを押動し、スロットルレバーLtを開方向へ回動させることになる。これとは反対に、もう一方のピン33bは、これに接続された上述とは反対側のケーブル31cのインナーワイヤ部分の端部により引き込まれるように動作する。なお、ここでは特段説明はしていないが、ハンドル10が右側へ操舵される場合には、上述とは反対の動作をする。
【0037】
従って、上述したケーブル31cの端部36a,36bのケーブルホルダ34a,34bからの突出量を可変とすることにより、ピン33a,33bの突出量を容易に調整することが可能となる。
【0038】
なお、それ以外の小型滑走艇の構成および作用は第1実施形態と同様であって、対応する部分には同一参照符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0039】
(第3実施形態)
図6は本発明の第3実施形態にかかるジェット推進型滑走艇としての小型滑走艇のステアリング手段近傍の一部断面した部分拡大図、図7はステアリング手段部分の要部の分解斜視図、図8は本発明の第3実施形態にかかるジェット推進型滑走艇の制御関係の構成を示すブロック図、図9は図8のブロック図に示す構成を実際のエンジンとの関連で表した図、図11は、図8のブロック図に示す構成要素の制御内容を示すフローチャートである。
【0040】
本発明の第3実施形態にかかる小型滑走艇においては、上述した第1実施形態の如きプッシュプル式のケーブルなどの機械的部材を利用して、スロットルのOFF操作状態での操舵機能維持をおこなうのではなく、以下に具体的に説明するように実施する。なお、それ以外の小型滑走艇の構成および作用は第1実施形態と同様であって、対応する部分には同一参照符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0041】
本発明の第3実施形態にかかる小型滑走艇では、図6,図7に図示するように、ハンドル10のステアリングコラム10A部分には、回転側と固定側に、近接スイッチで構成されるステアリング位置検知センサーSpが配置されている。この実施形態では、ステアリング位置検知センサーSpは、回転側に円板状の部材の一部に永久磁石40を配設するとともに、固定側に二箇所、上記永久磁石40が近接するとONになるセンサー41を、配置した構成のものによって形成されている。なお、本発明においては、ステアリング位置検知センサーSpをここに例示したような近接スイッチで構成する必要はなく、例えばポテンショメーター等の他の非接触式センサー、あるいは接触式センサーから構成することも可能である。
【0042】
また、図9に図示するように、CmはエンジンEが一般に備える主燃料供給装置であり、該主燃料供給装置Cmは、気化燃料を生成する気化器と、該気化器からその一方向への燃料の流れを許容するリードバルブバルブVLとを備え、気化器で気化された燃料は、その流量を制御するバタフライバルブ51を介して燃料供給経路を流れ、上記リードバルブVLを介してクランクケース内へ流入するようになっている。
そして、主燃料供給装置Cmには、図9に図示するように、前記燃料供給経路に配置されているバタフライバルブ51に近接して、スロットルのOFF操作を検出するための、スロットル開度検知センサーSbが配置されている。なお、この実施形態においては、主燃料供給装置Cmのスロットルバルブとしてバタフライバルブ51を用いているが、本発明においてはこのような構成に限定するものではなく、例えばスライド式のスロットルバルブを用いる構成としても構わない。さらに、図9に図示するように、クランク軸Crの近傍には、エンジン回転数検知センサーSeが配置されている。
【0043】
また、この実施形態においては、図9に図示するように、通常運転時にエンジンEへの燃料供給を担う主燃料供給装置Cmのバタフライバルブ51とリードバルブVLの間の燃料供給経路には、前記主燃料供給装置Cmよりも燃料供給容量の小さい補助燃料供給装置Csが設けられている。当該補助燃料供給装置Csは、所謂ベンチュリー式の燃料気化構造を備えており、取り入れられた外気によってその通気経路の中途に穿設された小径の開口に負圧を発生させ、該開口に接続された燃料管62を流れる燃料を吸引し霧化するものである。また、補助燃料供給装置Csは、主にライダーによるスロットルレバーLtの操作によって制御される主燃料供給装置Cmとは独立した制御系を備えている。即ち、補助燃料供給装置Csは、その通気経路の中途にスライド式のバルブ61を備え、該バルブ61をソレノイド60の動作により開閉させる構成となっている。なお、バルブ61としては、スライド式に限らずバタフライ式等の他の形態のバルブを用いても構わない。
【0044】
また、後で詳述するように、補助燃料供給装置Csにおいては、スロットルOFF操作時に、エンジンコントロールユニットEcからの指示信号によって前記ソレノイド60に通電させてバルブ61が開放され、これによって、主燃料供給装置Cmによる非燃料供給時であっても、一時的な燃料供給がなされるように構成されている。
【0045】
そして、図8に図示するように、上記ステアリング位置検知センサーSp,スロットル開度検知センサーSb,およびエンジン回転数検知センサーSeは、それぞれ、電線によって、エンジンコントロールユニットEcに接続されており、これら各センサーで検知した信号を、このエンジンコントロールユニットEcに伝達するよう構成されている。
そして、このエンジンコントロールユニットEcは、図8,図9に図示されるように、信号線(電線)によって、補助燃料供給装置Csのソレノイド60に図示しない駆動回路を介して接続されている。
【0046】
しかして、このように構成された本発明の第3実施形態にかかるジェット推進型滑走艇としての小型滑走艇は、以下のように、スロットルをOFF操作したときに、後で詳述するオフ・スロットル・ステアリングモード制御をおこない、操舵機能を維持することができる。以下、その作用の内容とともに、上記エンジンコントロールユニットEcに内蔵されているコンピュータのメモリに記録されている制御プログラムの制御内容について図11のフローチャートを参照しながら説明する。
つまり、小型滑走艇が滑走している通常運転状態(ステップ6(S6))において、ライダーが小型滑走艇のスロットルをOFF操作すると、上記スロットル開度検知センサーSbが、そのOFF操作(OFF操作の結果生じるエンジン回転数とPS(馬力)の変化状態を表す図12の降下線Zbを参照)を検知し(ステップ1(S1))、その信号を、上記エンジンコントロールユニットEcに伝達する。
なお、このようなOFF操作の検知は所定時間周期でおこなわれ、検知が無い場合には、通常運転状態を維持すべくステップ6の処理へ戻される。
そして、このような状態において、ライダーが、上記ハンドル10を右あるいは左に所定角度(この実施形態では、回転角度にして、左右にそれぞれ略20度程度)操作すると、上記ステアリング位置検知センサーSpが、その操舵動作を検知して(ステップ2(S2))、その信号を、上記エンジンコントロールユニットEcに伝達する。
なお、このような検知も所定時間周期でおこなわれ、検知が無い場合には、通常運転状態を維持すべくステップ6の処理へ戻される。
すると、エンジン回転数検知センサーSeが、そのときのエンジン回転数を検知する(ステップ3(S3))。
次に、エンジンコントロールユニットEcは、エンジン回転数検知センサーSeからの信号によって、そのときのエンジン回転数が第1回転数(例えば、5000rpm)以下か否か、チェックする(ステップ4(S4))。
そして、エンジン回転数が第1回転数以下である場合には、オフ・スロットル・ステアリングモード制御を開始して、補助燃料供給装置Csのバルブ61を所定時間開放して、そのままでは、極く短い時間でアイドリング状態まで降下しようとするエンジン回転数を、一時的に図12の増加線Zaにおける第2回転数(例えば、3000rpm)に上昇させる(ステップ5(S5))。なお、図12において、破線Uは、そのときのウォータージェットポンプPの推力を表し、この破線Uと、上記増加線Zaあるいは降下線Zbとの、縦軸方向の差hが、加速あるいは減速を生じさせるPS(負荷あるいは馬力)の大きさを表す。従って、降下線Zbの5500rpmに示す状態でオフ・スロットル・ステアリングモード制御を開始して、増加線Zaの3000rpmに示す状態にするには、実質上、エンジンEへの燃料供給量を増大する等して、エンジン回転数を上昇させるような動作が必要となる。また、図12において、増加線Zaおよび降下線Zbの矢印は、エンジン回転数の増減の変化の方向を示す。
なお、ステップ4において、エンジン回転数が第1回転数以下でない場合には、通常運転状態を維持すべくステップ6の処理へ戻される。
次に、燃料噴射タイミングと点火タイミングを元の状態(通常運転の状態)に戻し(ステップ6(S6))、オフ・スロットル・ステアリングモード制御を終了する。この際、例えば、上記元の状態に戻す条件として、例えば、所定時間(例えば15秒)経過するか、若しくはライダーが、上記ハンドル10の操作を戻したことを上記ステアリング位置検知センサーSpが検知すると、戻すようにしてもよい。
【0047】
(第4実施形態)
また、上記第3実施形態の補助燃料供給装置Csを次に説明するように構成することもできる。即ち、本実施形態においては、スライド式のバルブ61に代えて、図10に図示するように、ロータリ式のバルブ61aを用いる。このロータリ式のバルブ61aは、通気経路の通気方向と直交する回転軸を有するドラム形をなし、前記通気経路を塞ぐ態様に収納されている。また、このバルブ61aは、その周面の一部を欠落されており、この欠落部分61anによって回転に応じた前記通気経路の開放をおこなえるように構成されている。
【0048】
また、バルブ61aの開閉(回転)は、当該バルブ61aにその回転中心から偏心して設けられたソレノイド60aによりおこなわれる構成としてあり、該ソレノイド60aは、上記第3実施形態と同様にエンジンコントロールユニットEcにより動作される。
【0049】
なお、それ以外の構成および作用は第3実施形態と同様であって、対応する部分には同一参照符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0050】
(第5実施形態)
図13は本発明の第5実施形態にかかるジェット推進型滑走艇としての小型滑走艇のエンジンの構成を示す要部断面図である。
【0051】
本発明の第5実施形態にかかる小型滑走艇においては、上述した第3および第4実施形態の如き補助燃料供給装置Csを主燃料供給装置Cmのバタフライバルブ51とリードバルブVLの間の燃料供給経路に配置するのではなく、以下に具体的に説明するように実施する。なお、それ以外の小型滑走艇の構成および作用は第3および第4実施形態と同様であって、対応する部分には同一参照符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0052】
本発明の第5実施形態にかかる小型滑走艇では、図13に図示するように、補助燃料供給装置Csを、主燃料供給装置Cmのバタフライバルブ51近傍の気化器のハウジング部分に設けてある。具体的には、この補助燃料供給装置Csは、前記気化器のハウジングに、バタフライバルブ51の燃料供給経路の上流側および下流側を短絡するバイパス経路63を設ける。このバイパス経路63の中途には複数(図13においては2つ)の小径の開口64,64が穿設され、これらの開口64,64が図示しない燃料管に接続されている。従って、このバイパス経路63も所謂ベンチュリー式の燃料供給装置として作用し、ここでの燃料供給を、バイパス経路63の前記開口64,64よりも若干下流側に設けられたバルブ65によって開放又は遮断されるようになっている。
【0053】
なお、バルブ65は、図13においてはスライド式として示してあり、前記ハウジングの外方からバイパス経路63内へ穿設された孔に沿って進退自在とされている。また、バルブ65は、上記第3および第4実施形態で説明したバルブ61,61aと同様に、エンジンコントロールユニットEcによって制御されるソレノイド66により開閉動作される。
【0054】
従って、本実施形態の補助燃料供給装置Csもまた、主にライダーによるスロットルレバーLtの操作によって制御される主燃料供給装置Cmとは独立した制御系を備えており、スロットルOFF操作時に、エンジンコントロールユニットEcからの指示信号によって前記ソレノイド66に通電させてバルブ65が開放され、これによって、バタフライバルブ51が閉じた主燃料供給装置Cmの非燃料供給時であっても、一時的な燃料供給がなされるようになっている。
【0055】
本実施形態においては、バルブ65の開閉に伴ってバイパス経路63を流れる空気量に応じた燃料が供給されるものとして説明したが、例えば、開口64,64を遮断するなどして、空気のみを供給することによってエンジンEの回転数を上昇させる構成としてもよく、また、例えば、バイパス経路63の入口(開口64,64の上流側)を遮断するなどして、燃料のみを供給することによってエンジンEの回転数を上昇させる構成としてもよい。
【0056】
上記5つの実施形態では、特に、前進又は後進を限定して述べていないが、いずれの場合にも、本発明は適用できる。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、気化器式エンジンを搭載したものについても、スロットルの開度がアイドリング領域の状態になってウォータージェットポンプからの水の噴射量が減少した場合でも、艇を操舵することが維持できるジェット推進型滑走艇を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態にかかるジェット推進型滑走艇としての小型滑走艇のステアリング手段部分の構成および動作を模式的に示す平面図である。
【図2】 図1のステアリングコラム近傍の部分拡大図である。
【図3】 本発明の第2実施形態にかかるジェット推進型滑走艇としての小型滑走艇のステアリングコラム近傍の構成を示す平面図である。
【図4】 本発明の実施形態にかかる小型滑走艇の全体側面図である。
【図5】 図4の平面図である。
【図6】 本発明の第3実施形態にかかるジェット推進型滑走艇としての小型滑走艇のステアリング手段近傍の一部断面した部分拡大図である。
【図7】 ステアリング手段部分の要部の分解斜視図である。
【図8】 本発明の第3実施形態にかかるジェット推進型滑走艇の制御関係の構成を示すブロック図である。
【図9】 図8のブロック図に示す構成を実際のエンジンとの関連で表した図である。
【図10】 本発明の第4実施形態にかかるジェット推進型滑走艇としての小型滑走艇の構成を実際のエンジンとの関連で表した図である。
【図11】 図8のブロック図に示す構成要素の制御内容を示すフローチャートである。
【図12】 縦軸にPS(馬力)あるいは負荷、横軸にエンジンの回転数(kは「1000」を表す)をとって、エンジンの回転数の増加と降下の状態と馬力との関係、およびウォータージェットポンプの推力の状態を表した図である。
【図13】 本発明の第5実施形態にかかるジェット推進型滑走艇としての小型滑走艇のエンジンの構成を示す要部断面図である。
【符号の説明】
10A……ステアリングコラム
51………バタフライバルブ
Cm……主燃料供給装置
Cs……補助燃料供給装置
E………エンジン
Ec……エンジンコントロールユニット
Lt……スロットルレバー
P………ウォータージェットポンプ
Sp……ステアリング位置検知センサー
Sb……スロットル開度検知センサー
31a,31b,31c………プッシュプル式のケーブル
60,60a,66………ソレノイド
61,61a,65………バルブ
Claims (6)
- ウォータージェットポンプで加圧・加速された水を後方の噴射口から噴射しその反動によって推進し、スロットルをOFF操作したときに、操舵機能を維持できるよう構成されたジェット推進型の滑走艇において、
ステアリング手段又はステアリングコラムとスロットルレバーとを連結する連結部材を備え、
ステアリング手段の操舵量に応じてスロットルレバーを開方向へ動作するように前記連結部材を構成したことを特徴とするジェット推進型滑走艇。 - 前記連結部材は、ステアリングコラムの外周面に直接的に又は間接的に突設された部分にその一端を連結され、他端の進退動作によりスロットルレバーを開方向へ動作するプッシュプル式のケーブルを備えてなることを特徴とする請求項1記載のジェット推進型滑走艇。
- 前記連結部材は、ステアリングコラムの回動に応じて互いに反対方向へ押し引きされる前記プッシュプル式のケーブルを一対備え、これら一対のプッシュプル式のケーブルの前記他端のいずれかの進退動作によりスロットルレバーを開方向へ動作するように構成されていることを特徴とする請求項2記載のジェット推進型滑走艇。
- ウォータージェットポンプで加圧・加速された水を後方の噴射口から噴射しその反動によって推進し、操舵とともに、スロットルをOFF操作したときに、そのステアリング手段の操舵とスロットルOFF操作を検知して、一時的にエンジンの回転数を上昇させることによって、スロットルのOFF操作時に操舵機能を維持できるよう構成されたジェット推進型の滑走艇において、
スロットルのOFF操作を検知するスロットル開度検知センサーと、
ステアリング手段の操舵状態を検知するステアリング位置検知センサーと、
搭載されたエンジンの燃料供給装置のスロットルバルブとリードバルブの間の燃料供給経路に設けられた補助燃料供給装置とを備え、
スロットル開度検知センサーからスロットルがOFF操作された旨の信号と、ステアリング位置検知センサーからステアリング手段が操作されている信号が得られたときに、
前記補助燃料供給装置の燃料供給経路を開閉するバルブを開放し、一時的にエンジンの回転数を上昇させることを特徴とするジェット推進型滑走艇。 - 前記ステアリング位置検知センサーが、ステアリングコラムの中途に配置された近接スイッチであることを特徴とする請求項4記載のジェット推進型滑走艇。
- 前記補助燃料供給装置のバルブの開放をソレノイドで行うことを特徴とする請求項4又は5記載のジェット推進型滑走艇。
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