JP4213368B2 - 冷間伸線性に優れた高強度線材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷間伸線されて線径が0.2mmφ以下の極細鋼線として使用される高強度鋼線に関するものであり、殊に冷間伸線の際に断線が生じない様な冷間伸線性に優れた高強度線材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スチールコードやベルトコード等の極細鋼線では、熱間圧延によって得られる5.5〜32mmφ程度の線材に対して、冷間加工(冷間伸線)を繰り返すことによって0.2mmφ以下にまで伸線して製造されるのが一般的である。そして、こうした線材では、冷間伸線の際に断線が生じない様な、良好な冷間伸線性が要求される。
【0003】
冷間伸線の際に断線が生じる原因は、線材中に存在するアルミナ等の硬質の非金属介在物であると言われており、断線を低減するという観点から、これまでにも硬質の非金属介在物を極力低減したり、或は非金属介在物を軟質化する試みがなされてきた。例えば、特公平6−74484号、同6−74485号および特開平62−99437号等には、非金属介在物が冷間伸線中に延伸または破壊し易くし、実質的に鋼破断の原因とならない軟質な形態に制御するため、即ち非金属介在物を無害化するため、非金属介在物の組成や存在率を規定することが示されており、これによって鋼材の冷間加工性および疲労強度を良好にすることが提案されている。
【0004】
これらの技術では、非金属介在物の存在量を定量化する際、鋼断面に現われる介在物の個数計測を行なっているが、鋼中に多く存在している軟質介在物を定量化する場合には或る一定の断面積以上を観察すれば、評価に足る計測数を得ることができる。しかしながら、製造過程で取鍋耐火物等から不可避的に混入してくるアルミナの様な硬質介在物の場合には、鋼中に僅かしか存在せず、断面観察によっては殆ど計測されることがないので、断面観察による定量評価は事実上不可能であり、ある一定体積以上若しくは一定重量以上から抽出して定量する必要がある。
【0005】
こうした観点から、例えば特開平9−125200号には、鋼材の酸溶解によってアルミナを抽出し、X線マイクロアナライザー(EPMA)分析によって検出される鋼材50g中のアルミナ個数を規定することによって、冷間加工性を良好にした高清浄度鋼が提案されている。
【0006】
しかしながら、冷間伸線における最終線径が細くなって0.2mm以下にまで強加工を受ける極細鋼線にあっては、アルミナ系介在物のみの個数を少なくしただけでは断線頻度を改善できず、別の介在物に起点した破断が顕在化しているのが実状である。
【0007】
本発明者らが冷間伸線時に破断した線材を回収し、その破断面に現れた非金属介在物の組成を分析した結果、アルミナ系介在物のみならず、ジルコニアやジルコン等のジルコニア系介在物も破断起点となっていることが判明した。従って、冷間伸線時における破断を極力少なくした冷間伸線性に優れた高強度線材を実現する為には、アルミナ系介在物のみを少なくしただけでは不十分であり、鋼中におけるジルコニア系介在物の存在個数も少なくしなければならないことを突き止めた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこうした状況の下になされたものであって、その目的は、アルミナ系介在物のみならず、ジルコミア系介在物の存在量をも極力低減することによって、冷間伸線性に優れた高強度線材を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明の高強度線材とは、Al含有量が0.003%以下であり、C:0.4〜1.3%、Si:0.1〜2.5%、Mn:0.2〜1%を夫々含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる線径:3〜10mmの線材を、純水、硝酸(濃度60%)および硫酸(濃度95%)を、体積比で夫々55:25:1に混合した酸溶液を加熱し、溶液温度を90〜95℃に保持しながら酸溶解し、抽出される介在物をEPMA法で分析したときに検出される介在物のうち、
(1)長径が20μm以上で、ZrO2を70%以上含有するジルコニア系介在物、
(2)長径が20μm以上で、ZrO2を50%以上含有すると共に、SiO2を20%以上含有するジルコニア系介在物、
の合計個数が、線材50g当たり0.1〜1個であり、且つ、
(1)、(2)および(3)長径が20μm以上で、Al2O3を70%以上含有するアルミナ系介在物と、の総合計個数が、線材50g当たり1個以下である点に要旨を有するものである。
【0010】
尚、本発明において「線材」とは、棒状または線状に熱間圧延された鋼材およびその後熱処理された鋼材を意味し、「鋼線」とは主として線材に対して冷間伸線を施したものを意味する。
【0011】
本発明の高強度線材においては、基本成分としてC:0.4〜1.3%、Si:0.1〜2.5%、Mn:0.2〜1%を夫々含有するものであることが好ましい。また、該線材には必要によって、(1)Ni:0.01〜1%、(2)Cu:0.01〜1%および/またはCr:0.01〜1.5%等を含有させることも好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、精錬スラグ組成の適性化、並びに製造過程で溶鋼と接触する耐火物材質の改善を進めると共に、ジルコニア系介在物やアルミナ系介在物の線材中における存在個数と、冷間伸線時の断線回数との関係について検討した。その結果、線材50g中に存在するジルコニア系介在物やアルミナ系介在物を1個以下となる様に制御すれば、冷間伸線時の断線回数を減少することができ、冷間伸線性に優れた線材が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
本発明において、線材中に存在するジルコニア系介在物およびアルミナ系介在物の個数とは、線材の酸溶解により抽出された個数を意味する。アルミナ系介在物は、酸溶解で抽出できることは知られているので、本発明者らは、ジルコミアやジルコンなどのジルコニア系介在物が温硝酸溶液に可溶か不可溶かを調査した。
【0014】
夫々10〜50μmに分級された酸化物粉末を合計で0.1g計り取り、90℃の温硝酸溶液に入れ、5時間後の酸化物重量を計測した。その結果を、下記表1に示す。このうちNo.1〜3のものは、工業的耐火物原料粉末を粒度分級したもの、No.4のものはAl2O3,MgOおよびMnOの各試薬から合成したものである。この調査結果から、ジルコニア系介在物(酸化物)は、アルミナ系酸化物と同様に、酸には殆ど溶けないことが確認できた。線材を酸溶解した場合にも、ジルコニア系介在物はアルミナ系介在物と共に溶液中に残り、この溶液を濾過すれば濾紙上に介在物が残る。そして、この濾紙上の介在物の組成分析および個数計算を行なうことによって、線材中のジルコニア系介在物或はアルミナ系介在物の個数評価ができる。
【0015】
【表1】
【0016】
本発明者らは、断線した鋼線について、断線破面に現われる介在物組成について調査した。その結果を、下記表2および表3に示す。この表2、3の結果に基づいて、断線破面に現われる介在物の割合を図1に示す。これらの結果から明らかな様に、断線破面に現われる介在物はジルコニア系介在物が過半数を占め、アルミナ系介在物を含めると、断線の原因となる介在物は殆どがこれらによって占められていることが分かる。
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
【0019】
本発明では、長径が20μm以上のもので、(1)ZrO2を70%以上含有するか、または(2)ZrO2を50%以上含有すると共にSiO2を20%以上含有するジルコニア系介在物の合計個数を計測することで、冷間伸線性を評価するものであるが、これは前記表2、3および図1の結果から明らかな様に、実際の冷間伸線時の破断面に現われる介在物の過半数(54%)が上記の様な組成を有するジルコニア系介在物であるので、その個数を測定することによって冷間伸線性の評価ができるからである。
【0020】
また、本発明では、上記ジルコニア系介在物の個数に加えて、Al2O3を70%以上含み長径が20μm以上のアルミナ系介在物の個数をも考慮すれば更に効果的であるが、これは前記表2、3および図1から明らかな様に、断線の原因となる介在物は上記のジルコニア系介在物と該アルミナ系介在物でその殆ど(96%)を占めるからである。
【0021】
換言すれば、上記の範囲を外れる介在物、例えば(1)ZrO2の含有量が50〜70%未満であってもSiO2の含有量が20%未満である介在物、(2)ZrO2の含有量が50%未満である介在物、(3)Al2O3の含有量が70%未満の介在物、等は比較的軟質のものとなり、冷間伸線中の破断面に現れる可能性は極めて低いものとなる。
【0022】
上記介在物の個数を計測する際に、酸溶解に供する線材量については、任意に選べば良いが、好ましくは1500g以上とするのが良い。即ち、アルミナ系介在物およびジルコミア系介在物は不可避的に鋼中に混入したものであるので、鋼中に含まれる量は僅かであり、酸溶解量が少ないと鋼中全体の介在物量を代表することにはならないからである。
【0023】
図2は、酸溶解量と介在物個数(長径20μm以上のアルミナ系介在物個数)の関係を示したものであるが、この結果から、酸溶解に供する鋼線重量を200gから3000gに増加させた際に、線材100g当たりに含有される長径20μm以上のアルミナ系介在物の個数は、数100g〜1000gの溶解量では安定しないが、1500g以上の溶解量になると数値的に安定してくることが分かる。
【0024】
本発明では、対象とする介在物の大きさを、その長径で20μm以上とするものであるが、これは前記表2、3から明らかな様に、冷間伸線時間の破断面には長径が20μm未満の介在物は出現しないからである。また、本発明では、鋼線材中のAl含有量を0.003%以下と規定するものであるが、その理由は、Al含有量が0.003%を超えると、溶鋼精錬中時に脱酸生成物としてAl2O3を生成し、冷間伸線性を著しく損ねるからである。このAl含有量は、本来では0%であることが好ましいのであるが、鋼中に不可避的に混入してくるAlが存在するので、その許容量として0.003%とした。
【0025】
また、本発明では、対象とする鋼線材の線径を3〜10mmと規定するものである。前述の如く鋼線を製造する場合には、所定の線径(5.5〜32mm程度)までは熱間加工によって成形し、その後冷間伸線を繰り返して極細鋼線とするのが一般的であるが、この熱間圧延の際に線径が10mmを超えると、その後の冷間伸線工程が多くなってしまうことになる。一方、線径が3mm未満になるまで熱間加工すると、冷間伸線で鋼線材に付与すべき強度が不十分なものとなってしまうことになる。また冷間伸線性の良否は、冷間伸線直前の「線材」によって評価するのが、判断に最も適しているからである。
【0026】
ところで、上記の様な鋼線材を製造する方法としては、下記の方法が最適な方法として採用できる。本発明者らは、硬質の介在物を極力低減した高清浄鋼度するという観点からも、様々な角度から検討してきた。そして、混入するアルミナ系介在物やジルコニア系介在物の起源は、取鍋に内張りされた耐火物ばかりでなく、スラグと耐火物の反応による生成層が精錬中に剥離・脱落して溶鋼中に混入・懸濁することにもよることを明らかにし、またその個数は取鍋内表面の材質に依存しているとの知見が得られた。
【0027】
上記の様な知見に基づき、上記したアルミナ系やジルコニア系等の硬質介在物をできるだけ低減する為の具体的手段について、更に検討を進めた結果、最も簡便な手段として、転炉または電気炉で製造された溶鋼を取鍋に受鋼して二次精錬を施し、精錬後の溶鋼を取鍋から排出して連続鋳造した後、該取鍋を前記転炉または電気炉に再び戻して溶鋼を受鋼する工程を1サイクルとする操業を行なうに際し、使用する取鍋を専用化すれば、硬質の非金属介在物をを画期的にアルミナ系介在物の個数を低減することができ、その他の断線の原因となるジルコニア・ジルコン系介在物を極力低減できることを見出した。
【0028】
尚この方法において、取鍋を専用化するとは、例えば或る取鍋が転炉から溶鋼を受鋼した場合に、二次精錬を経て連続鋳造へ溶鋼を排出し、転炉に戻って次チャージの溶鋼を受鋼するサイクルにおいては、使用する取鍋を鋼種毎に専用化することを意味する。即ち、上記の様な操業を行なうに当たっては、複数の取鍋の組み合わせによって循環使用し、或る鋼種について連続して複数回繰り返して操業されるのであるが、この繰り返しが終了するまでは、取鍋が受鋼する鋼種を同種である様にして操業するものである。
【0029】
また、ここでいう「鋼種」とは、基本的には溶鋼の化学成分によって区別されるものであるが、溶鋼の脱酸状態によっても区別されるべきものであり、脱酸状態が違っても、相反する脱酸を行なわなければ同種の鋼種と扱うことができる。
【0030】
また、この方法では、内張り耐火物がアルミナ系耐火物である取鍋を使用するに際しては、取鍋内表面の付着スラグのAl2O3濃度を70%以下に制御して操業することが好ましい実施形態である。こうした構成を採用することによって、溶鋼に接する取鍋壁面のスラグをゲーレナイト(Gehlenite)を中心とする組成とすることができ、画期的にアルミナ系介在物の個数を低減でき、その他の断線の原因となるジルコニア系、ジルコン系の介在物を、問題が生じない程度まで低減できるのである。
【0031】
また、上記方法で、ゲーレナイト化する為の具体的な手段としては、アルミナ系耐火物を主成分とする耐火物を使用した取鍋を用い、取鍋精錬時のトップスラグ(上置きスラグ)の組成を塩基度(CaO/SiO2):1〜3、Al2O3濃度:10%以下に制御すれば、次チャージの段階で取鍋内表面にAl2O3が70%以下のスラグ反応層を付着させることができるので好ましいことも判明している。
【0032】
本発明で対象とする線材の化学成分は、少なくともAl含有量が0.003%以下であれば良く、その他の化学成分については特に限定されるものではないが、一般に使用されるスチールーコード用鋼の様な伸線加工用鋼材を適用できる。こうした鋼材の基本成分としては、例えばC:0.4〜1.3%、Si:0.1〜2.5%、Mn:0.2〜1.0%を夫々含有するものが挙げられる。これらの化学成分の範囲限定理由は下記の通りである。
【0033】
C:0.4〜1.3%
Cは強度の向上に有効な元素であり、その為には0.4%以上含有させることが好ましい。しかしながら、C含有量が過剰になると、鋼が脆化して伸線性が損なわれるので、1.3%以下とすることが好ましい。
【0034】
Si:0.1〜2.5%
Siは脱酸作用を有する元素であり、この作用を発揮させるためには、0.1%以上含有させることが好ましい。しかしながら、Siの含有量が過剰になると脱酸生成物としてのSiO2が多くなり過ぎ、伸線性が損なわれるので、2.5%以下とすることが好ましい。
【0035】
Mn:0.2〜1%
MnはSiと同様に、脱酸作用を有すると共に、介在物制御作用を有しており、これらの作用を有効に発揮させる為には、0.2 %以上含有させることが好ましい。但し、Mn含有量が多なり過ぎると、線材が脆化して伸線性が劣化するので、1%以下とすることが好ましい。
【0036】
本発明の線材における基本的な化学成分組成は上記の通りであり、残部は実質的にFeからなるものであるが、必要によって、Ni,Cu,Cr等も含有させることも有効である。これらの元素を含有させるときの範囲限定理由は下記の通りである。尚、上記「実質的にFe」とは、本発明の線材にはFe以外にその特性を阻害しない程度の微量成分(許容成分)を含み得るものであり、こうした許容成分としては、P,S等の元素や、Ti,V等の不可避不純物が挙げられる。
【0037】
Ni:0.01〜1%
Niは鋼線の強度向上にあまり寄与しないが、伸線材の靭性を高める効果を発揮する。こうした効果を発揮させる為には、Niは0.01%以上含有させることが好ましいが、1%を超えて含有させてもその効果は飽和することになる。
【0038】
Cu:0.01〜1%および/またはCr:0.01〜1.5%
CuおよびCrは、いずれも鋼線の高強度化に有効な成分である。このうち、Cuは析出硬化作用によって鋼線の高強度化に寄与する元素である。こうした効果を発揮させるためには、Cu含有量は0.01%以上とすることが好ましい。しかしながら、Cu含有量が過剰になって1%を超えると、結晶粒界に析出し、鋼材の熱間圧延工程で割れや疵を発生させる原因になる。
【0039】
一方、Crは伸線加工時における加工硬化率を高める作用があり、比較的低い加工率でも高い強度が得られ易くなる。しかも、Crは鋼の耐食性を高める作用も有しており、タイヤやゴム等の補強材として用いられる極細鋼線の腐食を抑制する上でも有効に作用する。しかしながら、Crの含有量が過剰になると、パーライト変態に対する焼入れ性が高くなってパテンティング処理が困難になり、更に二次スケールが緻密になり過ぎてメカニカルデスケーリング性および酸洗性が劣化するので、1.5%を上限とする。
【0040】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0041】
【実施例】
溶銑を240トン転炉で一次精錬し、これを取鍋に受鋼した後、取鍋加熱精錬設備にて二次精錬を行ない、成分調整を行なった。このとき取鍋耐火物には、ジルコニア系介在物の不可避的混入を避けるために、アルミナ系のものを用いた。但し、こうした構成では、アルミナ系介在物の不可避的混入が避けられないので、溶鋼を受ける直前に、CaO/SiO2=1〜2のスラグを用いて少なくとも1回以上連続して取鍋精錬処理に供された取鍋、同鋼種で専用化した取鍋を用いた。また、溶鋼の取鍋精錬処理を行なうに際しても、同様のCaO/SiO2=1〜2のスラグを用いた。
【0042】
こうした構成を採用したのは、前述の如く、取鍋内張りのアルミナ系介在物とスラグ中のCaOおよびSiO2とを反応させることによって、溶鋼と接触する耐火物表面に精錬スラグとの反応層を形成し、耐火物表面の純粋なAl2O3を、Al2O3濃度が70%未満のAl2O3−CaO−SiO2系の複合酸化物とすることにより、不可避的に混入するアルミナ系介在物を極小化するものである。また、仮にアルミナ系介在物が混入してきたとしても、断線起点となることが極めて少ない組成、即ちAl2O3濃度が70%未満の組成とする為である。
【0043】
この様にして得られた溶鋼を、鋳造および鍛造をして、最終的に線径3〜10mmの線材に加工した。この鋼線材から、必要量切り出し、酸溶解による介在物抽出、および介在物の組成分析に供した。
【0044】
酸溶解による介在物抽出および介在物組成の分析は、次の様にして行なった。まず、純水、硝酸(濃度60%)および硫酸(濃度96%)を、体積比で夫々55:25:1に混合した酸溶液の入ったビーカを準備し、これに線材を入れる。このビーカを加熱し、溶液温度を90〜95℃に保持しながら線材を完全に溶解する。溶解後、篩目が10μmのフィルターで濾過する。その後、フィルター上に残った介在物のうち、長径が10μm以上の介在物の組成分析およびその個数計測を行なう。
【0045】
介在物の定量に当たっては、EPMA−8705(商品名:島津製作所製)を用い、加速電圧:20kV、試料電流:0.01μAで、特性X線の波長分析により介在物中央部の定量分析を行なった。このときの定量対象元素は、Al,Mn,Si,Mg,Ca,Zr,Oであり、これらの元素濃度が既知の物質でX線強度と元素濃度の関係を検量線として予め作成しておき、観察対象介在物から得られたX線強度からその存在濃度を定量した。そして、各々の元素がAl2O3,MnO,SiO2,MgO,CaO,ZrO2の形で存在すると仮定し、EPMAによって分析された各元素濃度より、介在物中のAl2O3,MnO,SiO2,MgO,CaO,ZrO2の構成比を算出した。
【0046】
フィルター上には、酸に溶けないSiO2系介在物が多数存在するが、個数計測を行なう対象は、ZrO2を70%以上含有するか、またはZrO2を50%以上含有し且つSiO2を20%以上含有するジルコニア系介在物、およびAl2O3を70%以上含有するアルミナ系介在物である。
【0047】
下記表4に、介在物の酸溶解抽出に供した線材成分、線材100g中のジルコニア系介在物個数およびアルミナ系介在物個数、並びに夫々の線材を冷間伸線したときの断線回数(指数)を示す。尚、断線回数の測定方法は、下記の通りである。
【0048】
(断線回数)
熱間圧延後の線材(5.5mmφ)を2.5mmφまで一次伸線し、熱処理(空気パテンティング)し、その後二次伸線して0.8mmφとし、引き続き熱処理(鉛パテンティング)およびブラスめっきを施し、0.15mmφまで湿式伸線し、鋼線10t当たりの断線回数に換算した。
【0049】
【表4】
【0050】
この結果から、次の様に考察できる。チャージNo.A1〜A7は、本発明で規定する要件を満足する実施例であり、アルミナ系介在物個数およびジルコニア系介在物の個数のいずれも非常に少なく、冷間伸線性に優れたものであることが分かる。これに対して、チャージNo.B1〜B7のものでは、アルミナ系介在物或はジルコニア系介在物個数が本発明で規定する範囲を外れており、いずれも断線指数が高く、冷間伸線性が悪くなっていることが分かる。
【0051】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、線材中のジルコニア系介在物やアルミナ系介在物の組成とサイズおよび個数を定量的に規定することによって、冷間伸線性に優れた高強度線材が実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】断線破面に現われる介在物の割合を示したグラフである。
【図2】酸溶解量と介在物個数の関係を示したグラフである。
Claims (2)
- Al含有量が0.003%(質量%の意味、以下同じ)以下であり、C:0.4〜1.3%、Si:0.1〜2.5%、Mn:0.2〜1%を夫々含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる線径:3〜10mmの線材を、純水、硝酸(濃度60%)および硫酸(濃度95%)を、体積比で夫々55:25:1に混合した酸溶液を加熱し、溶液温度を90〜95℃に保持しながら酸溶解し、抽出される介在物をEPMA法で分析したときに検出される介在物のうち、
(1)長径が20μm以上で、ZrO2を70%以上含有するジルコニア系介在物、
(2)長径が20μm以上で、ZrO2を50%以上含有すると共に、SiO2を20%以上含有するジルコニア系介在物、
の合計個数が、線材50g当たり0.1〜1個であり、且つ、
(1)、(2)および(3)長径が20μm以上で、Al2O3を70%以上含有するアルミナ系介在物と、の総合計個数が、線材50g当たり1個以下であることを特徴とする冷間伸線性に優れた高強度線材。 - Cu:0.01〜1%および/またはCr:0.01〜1.5%を含有するものである請求項1に記載の高強度線材。
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