JP4208482B2 - 撮像装置及び同撮像装置を用いたx線診断システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は放射線医療機器等に用いられる撮像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
医療のさまざまな分野でディジタル化が進んでいる。X線診断の分野でも、画像のディジタル化のために、入射するX線をシンチレータ(蛍光体)により可視光に変換し、さらに撮像素子でかかる可視光像を撮像する2次元X線撮像装置が開発されてきている。ディジタル化されたX線撮影装置のアナログ写真技術に対する利点として次が挙げられる。フィルムレス化、画像処理による取得情報の拡大、データベース化等である。又、撮影した画像をその場で瞬時に表示出来ることは緊急を要する医療現場においては有用である。なお放射線とはX線やα、β、γ線、あるいは被写体の内部構造を検出できる高エネルギー線を言い、光はフォトダイオード等の光電変換手段により容易に検出可能な波長領域の電磁波であり、可視光、赤外光を含む。以下放射線としてX線の場合を取り上げて説明する。
【0003】
X線静止画の分野では、2次元X線撮像装置としては、例えば***撮影用、胸部撮影用には最大43cm□のアモルファスシリコン(a−Si)を用いた大板の静止画撮像装置(フラットパネルディテクタ)が作られている。この種の技術の例として、米国特許5315101号に記載のものがある。この従来の技術を図14に示す。ガラス基板上のアモルファスシリコン半導体を使った撮像素子は大板のものを得やすく、このパネルを4枚タイル貼りして、大板のX線撮像装置を実現しているものがある。また複数の単結晶撮像素子(シリコン撮像素子など)を用いて大板のX線撮像装置を構成する提案がある。この種の技術の例として、図15に示した米国特許4323925、5159455号がある。単結晶撮像素子としてはシリコンを使ったCCD型撮像素子やMOS型撮像素子、CMOS型撮像素子などがある。X線変換体として蛍光体のついたファイバーオプティックプレート(FOP)が用いられている。ファイバーオプティックプレートの素材にはX線を透過しにくい鉛ガラス等を含んだ材料を用いる。一般に、CCDのような単結晶シリコンのデバイスは、X線のような放射線によりダメージを受けやすく、暗電流の増加や光電変換効率の低下などの劣化を生じるので、ファイバーオプティックプレートをX線遮蔽材として利用することにより、耐X線性が高まって信頼性が向上する。従来のCCD型撮像素子やMOS型撮像素子、CMOS型撮像素子では素子を駆動する回路(シフトレジスタ、デコーダ、マルチプレクサ等)やメモリ回路は素子の画素領域の外周部に配置される。図13に4枚CMOS型撮像素子を張り合わせた場合を示す。これらの回路も画素部と同様にX線が直接進入すると、誤動作や劣化を起こすので、一般に鉛等を使ってX線を遮蔽する構造とする。
【0004】
X線動画の分野では、入射するX線をシンチレータ(蛍光体)とI.I.(イメージインテンシファイア)により可視光に変換し、CCD型撮像素子を用いたTVカメラでかかる可視光像を撮像する2次元のディジタルX線透視装置が開発されている。ただしこれはフラットパネルディテクタではない。
【0005】
ディジタル化の進む医療のX線診断分野では、フラットパネルによる小型化、高感度化、高速化された次世代の動画像撮像装置(透視等)が期待されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
アモルファスシリコン(a−Si)を用いた放射線撮像装置(フラットパネルディテクタ)は、大板化が容易だがアモルファスシリコンの材料の特性上、高感度化、高速化は困難である。よって静止画用に限定される。単結晶シリコンとFOPを組み合わせた放射線撮像装置は高速化、高感度化は容易だが大板化のためには非常な高価なテーパー状のFOPを使わざるをえないのでコストを減らすことができない。よって大板、高速、高精細、高感度、低コストの全てを完備するX線撮像装置はなかった。さらに単結晶シリコンにおけるX線の影響を低減するためにX線パルスの駆動と直接入射によるX線ノイズの関係を考慮した駆動はなかった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、所定の間隔で順次発生され、被写体を透過した放射線が変換された光を電気信号に変換するための複数の画素を有し、前記複数の画素の各々は、光電変換部と、前記電気信号を蓄積するための信号用サンプルホールド回路と、ノイズ信号を蓄積するためのノイズ用サンプルホールド回路と、を有する撮像領域と、前記撮像領域内の画素と画素の間に配置され、前記撮像領域を走査するための走査手段と、前記放射線が発生していない期間に、前記信号用サンプルホールド回路から前記電気信号が出力され、且つ前記ノイズ用サンプルホールド回路から前記ノイズ信号が出力されるように、前記走査手段による前記撮像領域の走査を制御する制御手段と、を有することを特徴とする撮像装置を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
図1は、走査手段である水平、垂直シフトレジスタなどの周辺回路を有効画素領域内に作りこんだ撮像素子の構成を示す図である。図2は有効画素領域内の画素及びシフトレジスタ、保護回路、外部端子などのレイアウトを示す図である。図3、4、5は該撮像素子を9個張り合わせた撮像モジュ−ルを説明するための図である。図11は本実施の形態による撮像装置の構成を示すブロック図である。
【0009】
図11に示すように、被写体の動画像を得る場合は、放射線源であるパルスX線発生器100からX線パルスを発生させ、被写体を透過した撮像パネル101内のX線がシンチレータによって可視光に変換される。この光を撮像パネル101内の撮像素子で電気信号に変換する。アナログ量の電気信号はA/D変換器102によりディジタル信号に変換された後、画像処理回路103で画像処理が行われ、動画像を複数フレーム蓄積する記憶部106に蓄積される。そして、表示部105に画像が表示される。また、撮像素子は、センサ駆動部107によって、パルスX線装置100は、X線駆動部108によって駆動される。パルスX線発生器、撮像モジュ−ルの各撮像素子、画像処理装置の制御は制御手段であるコントローラ109で行っている。このコントローラへの入力操作には、操作装置、および操作モニタが用いられる。
【0010】
図4は138mm□の撮像素子を9枚タイル状に張り合わせて形成した414mm□の大面積撮像モジュ−ルの撮像素子部分を示す。
【0011】
図5は図4のA−A’断面を示す。ユウロピウム、テルビウム等を付活性体として用いたGd2O2SやCsIなどのシンチレータからなるシンチレータ板をFOPの上に設置する。X線はシンチレータに当たり、可視光に変換される。この可視光を撮像素子で検出する。シンチレータは、その発光波長が撮像素子の感度に適合するように選択するのが好ましい。外部処理基板は撮像素子の電源、クロック等を供給し、又、撮像素子から信号を取り出して処理する回路を有する。TAB(Tape Automated Bonding)は、各撮像素子と外部処理基板とを電気的に接続する。
【0012】
9枚の撮像素子は、実質的に撮像素子間に隙間ができないように貼り合わせる。ここで実質的に隙間ができないこととは、9枚の撮像素子により形成される画像に撮像素子間の欠落ができないということである。撮像素子のクロック等や電源の入力、画素からの信号の出力は撮像素子端部に設けた電極パッドに接続したTABを通して、撮像素子の裏側に配置した外部処理基板との間で行う。TABの厚さは画素サイズに対して十分薄く撮像素子の間の隙間を通しても、画像上の欠陥は生じない。
【0013】
図3は現在主流の8インチウエハから一個の撮像素子を取り出す場合を示す。8インチウエハはN型ウエハであり、これを用い、CMOSプロセスによって138mm□のCMOS型撮像素子を1枚取りで作成する。
【0014】
図6にCMOS型撮像素子の各画素を構成する画素部の構成図を示す。光電変換をするフォトダイオードPD、電荷を蓄積するフローティングディフュージョンCFD、フォトダイオードが生成した電荷をフローティングディフュージョンに転送する転送MOSトランジスタ(転送スイッチ)、フローティングディフュージョンに蓄積された電荷を放電するためのリセットMOSトランジスタ(リセットスイッチ)、行選択をするための行選択MOSトランジスタ(行選択スイッチ)、ソースフォロワーとして機能する増幅MOSトランジスタ(画素アンプ)を有する。
【0015】
図7に3×3画素での全体回路の概略図を示す。
【0016】
転送スイッチのゲートは垂直走査回路の一種である垂直シフトレジスタからのφTXに接続され、リセットスイッチのゲートは垂直走査回路からのφRESに接続され、行選択スイッチのゲートは垂直走査回路からのφSELに接続されている。
【0017】
光電変換はフォトダイオードでおこなわれ、光量電荷の蓄積期間中は、転送スイッチはオフ状態であり、画素アンプを構成するソースフォロアのゲートにはこのフォトダイオードで光電変換された電荷は転送されない。該画素アンプを構成するソースフォロアのゲートは、蓄積開始前にリセットスイッチがオンし、適当な電圧に初期化されている。すなわちこれがダークレベルとなる。次に又は同時に行選択スイッチがオンになると、負荷電流源と画素アンプで構成されるソースフォロワー回路が動作状態になり、ここで転送スイッチをオンさせることで該フォトダイオードに蓄積されていた電荷は、該画素アンプを構成するソースフォロアのゲートに転送される。
【0018】
ここで選択行の出力が垂直出力線(信号出力線)上に発生する。この出力は列選択スイッチ(マルチプレクサ)を水平走査回路の一種である水平シフトレジスタによって駆動することにより順次出力部アンプへ読み出される。
【0019】
図2は垂直シフトレジスタの単位ブロック(一行を選択し駆動するための単位)を1画素領域(1セル)に1画素回路と共に配置した様子を示す。1画素回路は図6に示すものである。垂直シフトレジスタは転送信号φTX、リセット信号φRES、行選択信号φSELを作り出すためにスタティック型シフトレジスタと転送ゲートで構成した簡単な回路を示す。これらはクロック信号線(不図示)からの信号により駆動する。シフトレジスタの回路構成はこの限りではなく、画素加算や間引き読み出し等のさまざまな駆動のさせ方により、任意の回路構成をとることができる。ただし本実施形態のように機能ブロックを一つのセルの中に画素回路と共に配置し、有効画素領域内にシフトレジスタを設け、全面有効画素領域の撮像素子を実現する。
【0020】
本実施の形態においては、垂直シフトレジスタやn対2nデコーダ等の垂直走査回路、水平シフトレジスタやn対2nデコーダ等の水平走査回路を有効画素領域内の各画素領域(セル)内に配置することを特徴とする。
【0021】
同様に本実施の形態においては、共通処理回路を有効画素領域内の各画素領域(セル)内に配置することを特徴とする。ここで共通処理回路とは、最終信号出力アンプ、シリアル・パラレル変換マルチプレクサ、バッファー、各種ゲート回路等の複数画素を一括して共通に処理する回路を意味する。
【0022】
これに対して個別回路とは、フォトダイオード、転送スイッチ、画素選択スイッチ、画素出力増幅回路等の1画素のみを処理する回路を意味する。
【0023】
図1に本実施形態の撮像素子の構成(平面図)を示す。本実施形態では垂直シフトレジスタと水平シフトレジスタを撮像素子の有効画素領域に配置する。1つのラインを共通処理するシフトレジスタの1ブロックを1画素ピッチ内に収まるように配置する。これらのブロックを並べて一連の垂直シフトレジスタブロックとし、水平シフトレジスタブロックとする。これらのブロックは垂直方向、水平方向に直線状に伸びている。これらのシフトレジスタブロックのある画素の受光部の面積と、他の画素の受光部の面積は同じにし、感度のばらつきをなくす。さらに全ての受光部の重心(画素の重心)は同一とする。シフトレジスタとしてスタティックシフトレジスタを用いる。シフトレジスタの回路構成は、設計でいろいろなものが適用できる。この実施形態では一般的な回路例を取り上げた。
【0024】
本実施の形態によれば、撮像素子の周辺にデッドスペースが生じないので、撮像素子全面が有効画素領域となる。
【0025】
これらの撮像素子をタイル状に、実質的に隙間がないように並べることで、大板の撮像装置(フラットパネルディテクタ)を形成できる。実質的に繋ぎ目のない大板の画像を得ることができる。
【0026】
医療用のX線撮像装置では、画素の大きさは、100μm□〜200μm□程度に大きくてよいので、構成素子数の多いスタティックシフトレジスタを配置しても、十分大きい開口率を実現できる。
【0027】
また走査手段として、シフトレジスタではなく、n対2nデコーダを使用することもできる。デコーダの入力に順次インクリメントするカウンタの出力を接続することにより、シフトレジスタと同様に順次走査することが可能となり、一方、デコーダの入力に画像を得たい領域のアドレスを入力することにより、ランダム走査による任意の領域の画像を得ることができる。
【0028】
本実施形態は、撮像素子として、CMOS型撮像素子を用いているので、消費電力が少なく、大板の撮像装置を構成する場合に好適である。
【0029】
なお撮像素子内にマルチプレクサを作りこむのは、撮像素子での動作を早くするためである。
【0030】
また撮像素子からは電極パッドを経由して外部に信号を取り出すが、この電極パッド周りには大きな浮遊容量がある。従って電極パッドの前段にアンプを設けることにより、信号の伝送特性を補償することができる。
【0031】
本実施形態では、垂直、水平シフトレジスタを有効画素領域内に配置するので、シンチレータ板を抜けたX線が直接シフトレジスタに当たる。X線は、これらの回路中の素子にダメージを与えたりや回路中にエラーやノイズを生じたりするので問題である。
【0032】
エラーの例としてあげられるのは、絶縁酸化膜SiO2とシリコンの界面に電荷が蓄積され、閾値の変動やリーク電流の増加が起きる現象である。またダメージの例としてあげられるのは、pn接合面に生じる欠陥であり、この欠陥がリーク電流の増大を引き起こす。エラーの他の例としてあげられるのは、MOS型ダイナミックRAMでの誤動作として知られるホットエレクトロンの作用によるエラー(ソフトエラー)と同様なものである。例えば駆動用回路ではリセット回路にノイズが発生し、走査が一時的に停止したり、またシフトパルスがずれたりする。他の周辺回路では主にノイズとなる場合が多い。電界により発生するホットエレクトロンは、電界が高くなる短チャンネル構造で起こりやすいが、X線により発生するホットエレクトロンはサイズによらず発生するので、平面的なサイズによらずX線が当たると撮像装置は不安定になりやすい。ノイズとしては、単結晶シリコン中に進入したX線により、シリコン中に電子・ホール対を生成する。これらキャリアが回路中に侵入することにより生じるノイズがあり、回路が持つ固有のシステムノイズに付加される。このような現象はシフトレジスタばかりでなく、X線が直接の照射される可能性のあるデコーダや共通アンプなどの等の回路を用いる場合も発生する。
【0033】
FOPを用いることにより、撮像素子に直接進入するX線の量(X線フォトン数)を数十分の1以下にすることができる。X線のダメージは吸収したX線の総量に比例するので、FOPによりX線のダメージは相当低減することができる。一方X線によるエラーやノイズは、X線の総量ばかりでなく、X線のエネルギーにも依存する。80kVpの管電圧で発生したX線のエネルギーは、最大で80keV、平均で60keV程度と非常に大きい。この高エネルギーX線フォトンが1個でも吸収されると、数万個の電子・ホール対が発生する。これらが受光部に侵入すると、スパイク状の信号となり、同時にこの信号の揺らぎがノイズとして付加される。受光部以外の容量、信号線、トランジスタに侵入すると、ノイズ成分となり付加される。またシフトレジスタなどのロジック回路に侵入すると動作エラーの原因となる。つまりFOPのみでは、ダメージを低減することはできるが、エラーやノイズを低減することは難しい。
【0034】
本発明では以下のような駆動を考慮することにより、直接的なX線によるノイズに強いX線撮像装置を実現できた。図8は本実施形態の撮像装置の動作を示すタイミングチャートである。3×3画素の動作で説明する。
【0035】
T1でリセット信号φRESがハイレベルになり、全画素のリセットMOSトランジスタがオンになることで、フローティングディフュージョンCFDがリセットされる。被写体撮像のためのX線パルスを照射し、フォトダイオードを露光する。全画素一括で転送信号φTXをハイレベルとし転送スイッチをオンすることで、フォトダイオードに蓄積されていた電荷を画素アンプを構成するソースフォロワーのゲート部に形成されるフローティングディフュージョンCFDに完全転送する。行選択信号SEL1がハイレベルになることで該当行の行選択MOSトランジスタがオンとなり、増幅MOSを介して信号出力線に撮像信号が読み出される。こうして読み出された1行分の撮像信号は、水平シフトレジスタにより列選択信号φSH1、φSH2、φSH3が順次オンになることで共通アンプを介して撮像素子の外部へ読み出される。同様に各行の信号が読み出される。本実施例ではX線のパルスはリセット信号φRESと転送信号φTXの間に照射する。X線がFOS画素領域全面に照射されている間、画素領域内に設置された水平シフトレジスタ、垂直シフトレジスタで駆動用信号を作り出すことはないので、これらが誤動作することはない。またX線によるノイズがこれらの回路に付加されることもない。
【0036】
これらの動作を行っているのは画素領域内に設置した垂直、水平シフトレジスタであり、これらの回路を駆動している間はX線は照射されず、これらが誤動作することはない。またこの間シリコンバルクに進入したX線によるキャリアの発生もなく、回路動作中にノイズが付加されることはない。また 画素加算等を画素毎に行うために、画素信号を加算して出力するための加算スイッチを設ける場合もある。このような場合には画素を共通に処理するため共通処理回路を画素領域内に設ける。この共通処理回路で加算等の動作を行う場合も、X線がオフの場合に行う。加算時、加算後の信号に直接X線によるノイズが付加されることはなく、共通処理回路が誤動作を起こすこともない。
【0037】
なお、以上説明した実施形態では、X線を可視光に変換するのに蛍光体を用いたが、一般的なシンチレータ、つまり波長変換体であればよい。また蛍光体がなくとも光電変換素子自身が直接放射線を検知し、電荷を発生するものでもよい。
【0038】
また、X線を用いた場合を例に説明したが、α、β、γ線等の放射線を用いることができる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態で用いられる撮像素子は、基本構成は第1の実施形態と同じであるが、1画素の回路構成が第1の実施形態と異なっている。図9は本発明の第2の実施形態の1画素回路を示す。本実施形態では、光電変換部でのkTC補正を画素内で行うようにし、更に感度切替え手段を画素内に設けることで、静止画撮影と高速動画撮影をモード切替で実現している。
【0040】
ここで静止画撮影、動画撮影兼用の撮像素子での光電変換部に求められる特有の条件について説明する。動画撮影時の照射X線量は静止画撮影時の1/100程度であり、画素当たり高々数個のX線ホトンの量(実際画素に入射するのはこのX線が変換された可視光)であり、撮像素子としては最大の感度が求められる。但し、ダイナミックレンジは問題ない。更に、読取速度としては60から90フレーム/秒が求められる。画素の解像度は200μm□から400μm□と粗くともよい。一方、静止画撮影時には、80dB近いダイナミックレンジが要求される。画素の解像度は100μm□から200μm□が必要である。これらの仕様を同時に満たす撮像素子はこれまでなかった。
【0041】
そこで本実施形態では、CMOS型撮像素子において図9に示すような画素回路構成とすることで、これらの仕様を満たす撮像素子を実現している。図9において、PDは光電変換部としてのCCD等で用いられているものと同じ埋め込み型のフォトダイオードである。埋め込み型のフォトダイオードは表面に不純物濃度が高いp+層を設けることで、SiO2面で発生する暗電流を抑制するものである。またフォトダイオードPDの容量CPDは、動画撮影時に最大感度を得るために最小となるように設計している。後述するようにフォトダイオードPDの容量を小さくすると、ダイナミックレンジが縮小する。動画時に比べて照射X線量が100倍以上になる静止画撮影時にはダイナミックレンジが不足するので、ダイナミックレンジ拡大用の容量C1をフォトダイオードFDと並列に設けている。
【0042】
M1は静止画モード(高ダイナミックレンジ)と動画モード(高感度モード)を切り替える切り替えスイッチである。電荷を蓄積するフローティングディフュージョン(浮遊拡散領域)容量CFD(不図示)も動画時に最大感度となるよう最小容量に設計する。フローティングディフュージョン(浮遊拡散領域)は増幅MOSトランジスタM4のゲート部に接続して形成されている。M2はフローティングディフュージョンに蓄積された電荷を放電するためのリセットMOSトランジスタ(リセットスイッチ)、M3は画素アンプ1を選択をするための選択MOSトランジスタ(選択スイッチ)、M4はソースフォロワーとして機能する増幅MOSトランジスタ(画素アンプ1)である。
【0043】
この画素アンプ1の後段に本実施形態の特徴であるクランプ回路が設けられている。このクランプ回路により光電変換部で発生するkTCノイズを除去する。CCLはクランプ容量、M5はクランプスイッチである。クランプ回路の後に第1の実施形態と同様にサンプルホールド回路を設けている。M6は画素アンプ2を選択するための選択MOSトランジスタ(選択スイッチ)、M7はソースフォロワーとして機能する増幅MOSトランジスタ(画素アンプ2)である。M8は光信号蓄積用のサンプルホールド回路を構成するサンプルMOSトランジスタスイッチ、CH1はホールドコンデンサである。
【0044】
またM9は画素アンプ3を選択するための選択MOSトランジスタ(選択スイッチ)、M10はソースフォロワーとして機能する増幅MOSトランジスタ(画素アンプ3)である。M11はノイズ信号蓄積用のサンプルホールド回路を構成するサンプルMOSトランジスタスイッチ、CH2はホールドコンデンサである。M12は画素アンプ3を選択をするための選択MOSトランジスタ(選択スイッチ)、M13はソースフォロワーとして機能する増幅MOSトランジスタ(画素アンプ3)である。
【0045】
本実施形態においては、画素アンプでの熱ノイズ、1/fノイズ、温度差、プロセスばらつきによるFPNを除去するためにこれらの光信号、ノイズ用画素内サンプルホールド回路を用いている。
【0046】
次に画素部の構成について説明する。本実施形態では画素が160μm□と大きいため、適度な開口率(フォトダイオードの面積)で容量CPDを小さくするには限界がある。フォトダイオードの面積はそのままで電極面積を小さくする方法をとることで容量CPDを小さくできるが、この方法では電極への電荷の収集効率が落ち、転送スイッチにより信号電荷をフローティングディフュージョンへ完全転送することが困難になる。本実施形態では完全転送を行わない設計とし、転送スイッチは設けず、フォトダイオードとフローティングディフュージョンを直結し光電変換部としている。また動画撮影時に最高感度となるようにフォトダイオードの容量CPDとフローティングディフュージョンの容量CFDは最小となるように設計している。
【0047】
本実施形態では、完全転送ではないので光電変換部のリセット時にkTCノイズが発生してしまうが、回路的にこのkTCノイズ(リセットノイズ)を除去することは光電変換装置の高S/N化の重要なポイントとなる。そのため、本実施形態ではクランプ回路を画素毎に設ける構成としている。kTCノイズ除去のためにクランプ回路を用いることは公知である。画素のサイズが50から100μm□と比較的小さく完全転送が可能な場合は光電変換部でのkTCノイズは発生しないのでこの限りではない。
【0048】
しかしながら、静止画モードと動画モードを兼用する撮像素子とするためには、静止画モードでもkTCノイズの除去は必要であり、画素内にクランプ回路を設けることは必須となる。本実施形態では一括露光の動画モードでもkTCノイズを除去できるように一括露光用のサンプルホールド回路の前段にクランプ回路を設けている。
【0049】
また静止画撮影用にフォトダイオードのダイナミックレンジを大きくするためには容量CPDが大きい方が良いが、そうすると信号電圧が下がってしまうので、S/Nが下がってしまう。動画撮影時の最高感度を維持しながら静止画撮影時のダイナミックレンジを広げるために、感度(ダイナミックレンジ)切り替え回路を設け、容量と切り替えスイッチを本実施形態では各画素に設けている。静止画撮影時は容量が増えるのでS/Nが悪くなってしまうが、S/Nをよくするためには、特にkTCノイズを除去するクランプ回路が必要である。
【0050】
図10は本実施形態を動画モードで駆動している場合の画素部の動作を示すタイミングチャートである。図10を用いて、この撮像素子の駆動タイミングを説明する。
まず全画素一括で垂直シフトレジスタVSRからの信号φEN、φCHGをハイレベルとし、選択スイッチM3、M6をオンすること増幅トランジスタへの定電流源をオンし、信号φRESをハイレベルとしてフォトダイオードの電荷をリセット電位にリセットする。次に信号φCLをハイレベルとしてMOSトランジスタM5をオンすることで、クランプ容量の1端がクランプ電位にバイアスされる。こうしてフォトダイオードの電荷のリセットにより生じるkTCノイズ(リセットノイズ)をクランプ容量に蓄積する。また信号φTNをハイレベルとすると、クランプ容量のクランプ電位がノイズ用サンプルホールド容量CH2に蓄積される。以上がノイズ信号蓄積動作である。
【0051】
次にX線のパルス照射により露光が行われ、光電荷がフォトダイオードに蓄積される(これが露光動作である)。この後で信号φENをハイレベルにすると、クランプ容量の一端の電位は光電荷に対応する信号成分だけ変動する。すなわち、クランプ容量にはkTCノイズ成分が蓄積されているので、kTCノイズ成分を含む撮像信号からkTCノイズ成分が差し引かれた電位分クランプ容量の一端の電位が変動することになる。このkTCノイズのキャンセルされた撮像信号を読み出すため、信号CHGおよび信号φTSをハイレベル.にすることで、kTCノイズのキャンセルされた撮像信号(光信号)が信号用サンプルホールド容量に蓄積される。以上が光信号蓄積動作である。
【0052】
上記の一連の動作が繰り返される。ここで撮像素子の露光可能時間は、クランプ電位を容量に転送後、即ち信号ENがロウレベルになってから、信号φRESがハイレベルになりリセットMOSトランジスタがオンになる迄である。本実施形態では、特にこのX線パルスのタイミングと画素領域内に設置したシフトレジスタの駆動タイミングの関係に注目する。本実施形態では信号読み出しの間はX線を照射しない。図10に示すように信号読み出しを終わったあとから次のφENをオンする前にX線照射を行う。すなわちX線パルスが照射されていいない間に、各行ごとに信号φSELをハイレベルとし、さらに各列ごとに信号φSELHをハイレベルとすることで、ノイズ信号と光信号とが出力される。これらの駆動信号を作りだしているのは、垂直、水平シフトレジスタであり、これらのシフトレジスタが信号を作り出している間は、X線は照射されない。つまりX線パルスが照射されてフォトダイオードが露光されている間は、シフトレジスタによる画素内の素子の駆動は行われない。よってX線パルスが撮像素子に直接進入した場合、シフトレジスタでエラー(誤動作)が起こったり、信号転送中にノイズが乗ったりすることがない。
【0053】
ノイズ信号出力線と光信号出力線に転送された信号はノイズ信号出力線と光信号出力線とに接続された減算出力アンプ(図示せず)で、(信号−ノイズ)の減算処理を行う。この時、光信号とノイズ信号は非常に速い時間差で、画素アンプ2からサンプルホールド回路に取り込まれるので、低周波数で値の大きい1/fノイズを除去でき、高周波の成分は無視できる。またこの時間差では出力段ソースフォロワーの温度差による閾値Vthのばらつきもない。ホールド容量に蓄えられていた出力電荷は、1個の画素アンプについての、リセット時と信号電荷入力時の両者の場合の出力を時間的に連続して得たものであり、更にこれら両出力の差分をとることにより、画素アンプでの熱ノイズ、1/fノイズ、温度差、プロセスばらつきによるFPNを除去することができる。
【0054】
一方、静止画モードでは、信号φSCをハイレベルとし、容量C1をフォトダイオードPDに並列接続した段階で、上記と同様な動作を行う。この場合、容量C1には容量CFDの10倍近い容量を持たせているので、広いダイナミックレンジを実現できる。また光電変換部のkTCノイズはクランプ回路により画素毎に除去できる。更に、画素中に光信号蓄積用、ノイズ信号蓄積用のサンプルホールド回路を設けることで、画素アンプでの熱ノイズ、1/fノイズ、温度差、プロセスばらつきによるFPNを除去することができる。これにより、動画モードでは9枚の撮像素子で時間的、空間的に繋ぎ目のない高速、高感度の動画像撮影を実現できる。一方、静止画モードでは高感度、高ダイナミックレンジの静止画像撮影を実現できる。
【0055】
これらの動作を行っているのは画素領域内に設置した垂直、水平シフトレジスタであり、これらの回路を駆動している間はX線は照射されず、これらが誤動作することはない。またこの間シリコンバルクに進入したX線によるキャリアの発生もなく、回路動作中にノイズが付加されることはない。また 画素加算等を画素毎に行うために、画素信号を加算して出力するための加算スイッチを設ける場合もある。このような場合には画素を共通に処理するため共通処理回路を画素領域内に設ける。この共通処理回路で加算等の動作を行う場合も、X線がオフの場合に行う。加算時、加算後の信号に直接X線によるノイズが付加されることはなく、共通処理回路が誤動作を起こすこともない。
【0056】
本実施例では信号用とノイズ用のサンプルホールド回路を有している。これらの回路に信号が蓄積されている場合に、X線が照射されるとこれらの回路中でノイズが発生し画質を低下させるおそれがある。よって好適にはこれらのサンプルホールド回路に信号が蓄積されている間にはX線パルスを照射しないようにする。
【0057】
なお、以上説明した各実施形態では、X線を可視光に変換するのに蛍光体を用いたが、一般的なシンチレータ、つまり波長変換体であればよい。また蛍光体がなくとも光電変換素子自身が直接放射線を検知し、電荷を発生するものでもよい。
また各実施形態では、X線を用いた場合を例に説明したが、α、β、γ線等の放射線を用いることができる。
【0058】
以上のように、第1、第2の実施の形態では、パルスX線発生器100からの所定間隔で発生する放射線パルスが発生していない期間に、垂直、水平シフトレジスタ等の走査手段が撮像領域を走査するように、センサ駆動部107、X線駆動部108を制御するコントロ−ラ119を有することにより、良好な画像を得ることが可能となる。
【0059】
(第3の実施形態)
図12は、実施の形態1、2で説明した撮像装置のX線診断システムへの応用例を示したものである。
【0060】
X線チューブ6050で発生したX線6060は患者あるいは被験者6061の胸部6062を透過し、シンチレータ、FOP、撮像素子、外部処理基板を備える放射線撮像装置6040に入射する。この入射したX線には患者6061の体内部の情報が含まれている。X線の入射に対応してシンチレータは発光し、これを撮像素子が光電変換して、電気的情報を得る。この情報はディジタルに変換されイメージプロセッサ6070により画像処理され制御室のディスプレイ6080で観察できる。
【0061】
またこの情報は電話回線6090等の伝送手段により遠隔地へ転送でき、別の場所のドクタールームなどディスプレイ6081に表示もしくは光ディスク等の保存手段に保存することができ、遠隔地の医師が診断することも可能である。またフィルムプロセッサ6100によりフィルム6110に記録することもできる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にかかる撮像装置によれば、高品質の動画像を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】撮像素子のレイアウトを示す平面図である。
【図2】撮像素子内の1画素回路とシフトレジスタの単位ブロックの関係を示す図である。
【図3】撮像素子とその元となるウエハを示す平面図である。
【図4】撮像モジュ−ルにおける撮像素子の配列及び走査回路の配列を示す平面図である。
【図5】撮像モジュ−ルの構成を示す断面図であり、図4のA−A’断面を示す。
【図6】本発明の第1の実施形態による撮像素子の1画素回路図である。
【図7】本発明の第1の実施形態による撮像素子における等価回路である。
【図8】本発明の第1の実施形態における動作タイミングである。
【図9】本発明の第2の実施形態による撮像素子の1画素回路図である。
【図10】本発明の第2の実施形態における動作タイミングである。
【図11】撮像装置のブロック図である。
【図12】放射線撮影システムの構成を示す概念図である。
【図13】第1の従来の技術をあらわす図である。
【図14】第2の従来の技術をあらわす図である。
【図15】第3の従来の技術をあらわす図である。
【符号の説明】
100 パルスX線装置
101 撮像モジュ−ル
107 センサ駆動部
108 X線駆動部
109 コントロ−ラ
Claims (7)
- 所定の間隔で順次発生され、被写体を透過した放射線が変換された光を電気信号に変換するための複数の画素を有し、前記複数の画素の各々は、光電変換部と、前記電気信号を蓄積するための信号用サンプルホールド回路と、ノイズ信号を蓄積するためのノイズ用サンプルホールド回路と、を有する撮像領域と、
前記撮像領域内の画素と画素の間に配置され、前記撮像領域を走査するための走査手段と、
前記放射線が発生していない期間に、前記信号用サンプルホールド回路から前記電気信号が出力され、且つ前記ノイズ用サンプルホールド回路から前記ノイズ信号が出力されるように、前記走査手段による前記撮像領域の走査を制御する制御手段と、
を有する撮像装置。 - 請求項1において、前記複数の画素の各々は、前記光電変換部からの信号を増幅して出力する増幅手段と、前記増幅手段の入力部をリセットするリセット手段とを有し、前記制御手段は、前記放射線が発生していない期間に、前記増幅手段の入力部をリセットし、リセット後の前記ノイズ信号を前記増幅手段より前記ノイズ用サンプルホールド回路に読み出し、前記光電変換部で発生した前記電気信号を前記増幅手段より前記信号用サンプルホールド回路に読み出すように、前記走査手段による前記撮像領域の走査を制御することを特徴とする撮像装置。
- 請求項2において、前記複数の画素の各々は、前記増幅手段の後段に設けられたクランプ回路を更に有し、前記信号用サンプルホールド回路及び前記ノイズ用サンプルホールド回路は前記クランプ回路の後段に設けられていることを特徴とする撮像装置。
- 請求項1乃至3のいずれか1項において、前記制御手段は、前記放射線が発生していない期間に、複数の前記光電変換部からの信号を加算するように前記走査手段を制御することを特徴とする撮像装置。
- 請求項2又は3において、前記走査手段は、前記リセット手段に駆動信号を与えるための垂直走査回路と、出力された信号を順次読み出すための共通処理回路と、前記共通処理回路を駆動するための水平走査回路と、を有し、前記制御手段は、前記放射線が発生していない期間に、前記垂直走査回路及び前記水平走査回路を駆動することを特徴とする撮像装置。
- 請求項1乃至5のいずれか1項において、前記撮像領域からの信号を処理する信号処理手段と、前記信号処理手段からの信号を記録するための記録手段と、前記信号処理手段からの信号を表示するための表示手段とを有することを特徴とする撮像装置。
- 請求項6に記載の撮像装置と、前記撮像装置からの情報を記録媒体に記録するプロセッサと、を有することを特徴とするX線診断システム。
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