JP4198867B2 - アンテナ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の通信用衛星を同時に追尾することが可能なアンテナ装置と、このアンテナ装置の送受信信号伝送に利用可能な導波管に関する。
【0002】
【従来の技術】
通信用衛星は、現在すでに約200個が比較的低高度において地球上を周回している。このため、地球上のどの地点においても、少なくとも数個の衛星と交信することが可能である。通信用衛星を利用したシステムとして、イリジウムシステムやスカイブリッジシステムが提案されている。
【0003】
通信用衛星のための従来のアンテナ装置としては、パラボラアンテナ装置やフェーズトアレイアンテナ装置が広く用いられている。
【0004】
パラボラアンテナ装置の例を図11及び図12に示す。図11に示すパラボラアンテナ装置100は、地面あるいは建物上に鉛直に設立したポスト101と、このポスト101の上端部にポスト101と平行にかつポスト101周りに回動可能に取り付けられた回動軸102と、この回動軸102に外嵌された歯車102gと、この歯車102gと噛合すると共に回動モータ(図示せず)によって回転駆動される歯車103とを備えている。
【0005】
電波集束部120の上部が、回動軸102の上端部にブラケット111を介して上下回動自在に取り付けられ、電波集束部120の下部が、電波集束部120の下部が、回動軸102の下方部に取り付けたシリンダユニット112のロッド112aの先端に取り付けられている。電波集束部120による電波集束位置には、給電部130が設けられている。
【0006】
このようなパラボラアンテナ装置100は、回動モータを駆動させることにより、歯車103、102gを介して回動軸102を回動させて電波集束部120の方位角を制御することができる。一方、シリンダユニット112を伸軸作動させることにより、電波集束部120の仰角を制御することができる。これにより、パラボラアンテナ装置100は、通信用衛星を追尾して、電波集束部120を通信用衛星に向け、通信用衛星が出力する電波を良好な通信状態で受信する、あるいは、通信用衛星に向けて電波を良好な通信状態で送信することができる。
【0007】
しかしながら、上記のような従来のパラボラアンテナ装置100では、一つの電波集束部120が一つの給電部130に対応して構成されている。したがって、追尾する衛星の数が2個ある場合には、その数だけパラボラアンテナ装置100が必要である。
【0008】
二つのパラボラアンテナ装置100は、お互いに、電波集束部120と衛星との間の障害物とならないように配置される必要がある。例えば、電波集束部120が直径45cmの円形に構成されている場合には、一方の電波集束部120が他方の電波集束部120に「影」を形成しないようにするためには、図12に示すように、両電波集束部120が略水平に配置されると共に、略3m程度離して配置される必要がある。
【0009】
しかしながら、図12に示すような装置は、設置に広いスペースが必要であり、一般家庭に普及しにくいものであった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、2個の通信用衛星を同時に追尾することが可能な従来のアンテナ装置では、設置に広いスペースが必要であった。このため、2個の通信用衛星の追尾が可能で、しかもコンパクトで比較的小スペースに設置可能なアンテナ装置が要望されている。
【0011】
また、上記のアンテナ装置では、その開発において、小スペース化のため、送受信装置と一次放射器とを結合するための導波管を任意に折り曲がった形状とすることが要求される。しかしながら、送受信信号には、互いに直交する2つの偏波で、かつ互いに異なる周波数が用いられるため、折り曲げ部分で電気的特性の劣化が生じないようにする必要がある。
【0012】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、同時に2個の通信用衛星の捕捉・追尾が可能で、しかもコンパクトで比較的小スペースに設置可能なアンテナ装置を提供することを第1の目的とする。
【0013】
また、互いに直交する2つの偏波で、かつ互いに異なる周波数の信号を伝送する際に、折り曲げ部分で電気的特性の劣化が生じない導波管を提供することを第2の目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明に係るアンテナ装置は、以下のような特徴的構成を有する。
【0015】
(1)設置個所に水平に固定される固定ベースと、この固定ベース上に配置され、水平面に対して垂直なZ軸回りに回転自在な回転ベースと、この回転ベース上に、前記Z軸上に中心点がくるようにして、前記中心点を通り前記Z軸に垂直なY軸回りに回動自在に載置される、所定の曲率で略半円弧状に形成してなる支持レールと、この支持レールの中心点と両端との間を前記Y軸に対して垂直なX軸として、前記中心点と一方の端部との間、前記中心点と他方の端部との間それぞれに、互いに独立して回転自在に設けられる第1及び第2の回転シャフトと、前記第1及び第2の回転シャフトそれぞれに固定される第1及び第2のアンテナ装置と、前記回転ベースを前記Z軸回りに回動させるZ軸駆動機構と、前記支持レールをY軸回りに回動させるY軸駆動機構と、前記第1及び第2の回転シャフトを互いに独立してX軸回りに回動させる第1及び第2のX軸駆動機構と、前記固定ベース上で装置全体を覆うレドームとを具備することを特徴とする。
【0016】
上記構成では、第1及び第2のアンテナ装置が互いに独立して3軸回りに回動自在であるため、互いに異なる周回衛星を捕捉追尾することが可能となる。
【0017】
(2)(1)の構成において、第1及び第2のアンテナ装置としては、一次放射器及びリフレクタを有する反射型アンテナ、あるいは複数のアンテナ素子を平面上に配列したアレイ型アンテナを用いることが可能である。いずれもタイプも、前記X軸に対して垂直な方向に指向性を有するように、前記第1及び第2の回転シャフトそれぞれに固定するものとする。
【0018】
(3)(1)の構成において、前記Y軸駆動機構は、ワイヤーの両端部をそれぞれ前記支持レールの外側両端に取り付け、当該ワイヤーをローラに巻き付けて、当該ローラを正逆方向に回転駆動させることで前記支持レールを前記Y軸回りに回動させることを特徴とする。
【0019】
上記構成では、機械的に回転軸を持たない支持レールを容易にかつ精度よく回動させることが可能となる。
【0020】
(4)(3)の構成において、前記ワイヤーの少なくとも一方の端部には、引っ張り応力を有する弾性材を介在させるようにしたことを特徴とする。
【0021】
上記構成では、ワイヤーの延びを吸収することができ、またローラへの巻き付け締め具合を維持することができるようになる。
【0022】
(5)(2)の構成において、前記第1及び第2の反射型アンテナ装置のリフレクタは、前記X軸に垂直な方向に長軸を有する楕円形状とすることを特徴とする。
【0023】
上記構成では、リフレクタの開口面積を最大限にとることが可能となる。
【0024】
(6)(5)の構成において、前記第1及び第2の反射型アンテナ装置は、それぞれ前記リフレクタの背面に送受信モジュールを搭載し、リフレクタ背面の送受信モジュールとリフレクタ前面の一次放射器とを導波管により結合し、当該導波管により一次放射器を支持することを特徴とする。
【0025】
上記構成では、送受共用の導波管により一次放射器が支持されるため、新たに一次放射器を支持するためのステーを設ける必要がなく、ブロッキングを低減することが可能となる。
【0026】
(7)(6)の構成において、前記導波管は、前記第1及び第2の反射型アンテナ装置の送受信に用いる2つの偏波及び周波数に合わせて高さ及び幅を決定した方形導波管であることを特徴とする。
【0027】
上記構成では、導波管を任意形状に折り曲げても、送受信偏波の電気的特性を維持することが可能となる。
【0028】
(8)(6)の構成において、前記導波管を前記リフレクタの背面から前面に引き出す位置を前記リフレクタの長軸と短軸との間とすることを特徴とする。
【0029】
上記構成では、デットスペースとなっている長軸と短軸との中間で斜めに渡すため、設置スペースを拡大しなくてもすむようになる。
【0030】
(9)(2)の構成において、前記支持レールは、真ん中から中心点に延び、中心点で前記第1及び第2の回転シャフトを支持する支持シャフトを備え、前記第1及び第2のX軸駆動機構は、前記第1及び第2の反射型アンテナ装置のリフレクタ背面にそれぞれ半円盤状に形成された第1及び第2のセクタギヤを取り付け、この各セクタギヤそれぞれに噛み合うように第1及び第2のピニオンギヤを装着した第1及び第2のモータを前記支持シャフトに固定して、前記第1及び第2のモータを互いに独立して正逆方向に回転させることで、前記第1及び第2の反射型アンテナ装置をX軸回りに回動させることを特徴とする。
【0031】
上記構成では、X軸駆動に、半円盤状のセクタギヤを用いているので、リフレクタ後面のスペースを有効利用することが可能となる。
【0032】
また、本発明に係る導波管は、互いに直交する偏波により互いに異なる周波数の2つの信号を伝送し、適宜折り曲げて使用する場合に、前記2つの信号の偏波及び周波数に合わせて高さ及び幅を決定した方形型とすることを特徴とする。
【0033】
上記構成では、折り曲げ部分での高次モードやクロストークの発生を抑制することができるようになる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図10を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0035】
図1乃至図4は、本発明の一実施形態によるアンテナ装置11を示す概略構成図で、図1は正面側の斜視図、図2は背面側の斜視図、図3(a)は正面図、図3(b)は側面図を示している。
【0036】
図1乃至図3に示すように、アンテナ装置11は、設置個所に水平に固定される略円形の固定ベース12を備える。この固定ベース12の中央には鉛直方向に第1回転軸(以下、Z軸)を有する回転ベース13が配置される。この回転ベース13の上には、Z軸上に中心がくるように、平板を一定の曲率で半円弧状に湾曲させた支持レール14が、その円弧中心軸をZ軸に垂直な第2回転軸(以下、Y軸)として回動自在に載置される。
【0037】
支持レール14には、その真ん中の位置から円弧中心に延びる支持シャフト15が設けられ、さらにその円弧中心位置と支持レール14の両端との間で第1及び第2の回転シャフト16,17が互いに独立して回転自在に支持される。すなわち、支持シャフト15と第1及び第2の回転シャフト16,17はレール14の円弧中心で直角に交わっている。第1及び第2シャフト16,17はY軸に垂直な第3回転軸(以下、X軸)となる。
【0038】
上記第1及び第2の回転シャフト16,17には、支持レール14における円弧中心の両側にそれぞれ当該シャフト16,17に対して垂直な方向に指向性を有するようにパラボラアンテナ装置18,19が装着される。すなわち、これらのパラボラアンテナ装置18,19は、回転シャフト16,17により互いに独立してX軸回りに回動可能となっている。
【0039】
上記のようにして組み立てられた装置全体は、第2回転軸Yより上側を半球形状とした、断面が逆U字型のレドーム20で覆われる。
【0040】
上記概略構成において、さらに各部の詳細について説明する。
【0041】
まず、固定ベース12上の周縁部には、レギュレータ21及びプロセッサ22が載置される。また、中央部に配置される回転ベース13の近傍には、Z軸駆動モータ23が配置される。
【0042】
図4は、回転ベース13のZ軸回転駆動機構及び支持レール14のY軸回動機構の詳細を示す拡大斜視図である。図4において、24はZ軸に取り付けられたプーリであり、このプーリ24と固定ベース12側のZ軸駆動モータ23の回転軸とはベルト25によって連結されている。これにより、モータ23の回転がプーリ24に伝わり、Z軸回りに回転ベース13が回転するようになる。モータ23はプロセッサ22により駆動制御される。
【0043】
回転ベース13の上には基台26が載置され、この基台26の上には凹字型の支持具27が載置される。この支持具27には、支持レール14をその外面でスライド自在に支持する一対の外面支持ローラ28,29と、その内面周縁部でスライド自在に支持する4個の内面支持ローラ30,31,32,33と、その側面でスライド自在に支持する4個の側面支持ローラ34,35,36,37と、支持レール14の支持部下方に配置され、ワイヤー送り機構を構成する径大の送りローラ38及び一対のテンションローラ39,40とがそれぞれ回転自在に支持されている。また、基台26または支持具27には、送りローラ38を回転させる送りローラ駆動モータ41が固定されている。上記内面ローラ30,31,32,33は、支持レール14の支持シャフト15の端部、回転シャフト16,17の支持部が支持レール14の回動に伴ってぶつからないような長さとする。
【0044】
図5及び図6は上記ワイヤー送り機構の構成を示すもので、図5は側面図、図6はワイヤー送り部分の拡大斜視図である。図5及び図6において、42はワイヤーであり、このワイヤー42の両端は支持レール14の両端部で固定され、送りローラ38に複数回螺旋状に巻き付けられ、一対のテンションローラ39,40により支持ローラ14の外方向に押し出す状態で支持されている。すなわち、テンションローラ39,40の作用により、ワイヤー42が外面支持ローラ28,29に絡まないようにすることができ、また送りローラ38への巻き付け締め具合を均一に保つことができる。この状態で送りローラ38をモータ41により正逆方向に回転させることで、支持レール14をY軸回りの正逆方向に回動させることができる。モータ41はプロセッサ22により駆動制御される。
【0045】
尚、ワイヤー42の両端部には、バックラッシュ機構として、引っ張りばね等の引っ張り応力を有する弾性材421,422を介在させておく。これにより、ワイヤー42の延びを吸収することができ、さらに送りローラ38への巻き付け締め具合を維持することができる。尚、弾性材は421,422はいずれか一方だけでもよい。
【0046】
図7は上記第1のパラボラアンテナ装置18の構造と、そのX軸回りの回動機構の構成を示す斜視図である。図1乃至図3及び図7において、第1のパラボラアンテナ装置18は、第1の回転シャフト16に取付基板51を装着固定し、この取付基板51の一方面にリフレクタ(反射鏡)52の裏面を接合し、他方面にアップコンバータ53、ダウンコンバータ54、冷却ユニット(ヒートシンク、ファン等)55を取り付け、リフレクタ52のセンター鉛直方向の焦点にホーン(一次放射器)56を配置した構造となっている。リフレクタ52は、開口面積を最大限に確保するため、X軸方向とは垂直な方向に長軸をもつ楕円形状とする。アップコンバータ53及びダウンコンバータ54は図示しない複合ケーブルによってレギュレータ21に接続され、当該レギュレータ21との間で給電及び信号の送受が行われる。
【0047】
ここにおいて、アップコンバータ53の出力端には送信用帯域フィルタ57が接合され、ダウンコンバータ54の入力端には受信用帯域フィルタ58を接合される。各フィルタ57、58はT型結合器59で結合され、この結合器59とホーン56が導波管60によって結合される。
【0048】
このとき、ホーン55がリフレクタ52のセンター鉛直方向の焦点に位置するように、導波管60を適宜接曲させる。これにより、導波管60がホーン55のステーとして機能するため、新たにホーン55を支持するステーを設ける必要がない。但し、導波管60は電波放射面内で影となり、ブロッキングの要因となるため、その表面に電波吸収材を貼り付けておき、あるいは塗布しておき、導波管60による電波の不要輻射を抑制して良好なサイドローブ特性を確保する。
【0049】
尚、導波管60を背面から全面に引き出す際に、その引き出し箇所をリフレクタ52の長軸から支持レール14の中心側に傾けた位置にしておくと、レドーム20内のデッドスペースを有効利用することができる。
【0050】
上記構造によるパラボラアンテナ装置18におけるX軸回りの回動機構は、以下のような構造となっている。まず、回転シャフト16の支持シャフト15側に半円盤状のセクターギヤ61を装着し、支持シャフト15にX軸駆動モータ62を装着し、この駆動モータ62の回転シャフトにピニオンギヤ63を取り付け、このピニオンギヤ63をセクターギヤ61に噛み合わせる。これにより、駆動モータ62の回転が減速して回転シャフト16に伝達され、この回転シャフト16に固定された第1のパラボラアンテナ装置18を略180度、正逆方向に回動させることができる。モータ62はプロセッサ22により駆動制御される。
【0051】
第2のパラボラアンテナ装置19の構造と、そのX軸回りの回動機構の構造は、第1のパラボラアンテナ装置18の場合と全く同じである。すなわち、第2のパラボラアンテナ装置19は、図2に示すように、取付基板64、リフレクタ65、アップコンバータ66、ダウンコンバータ67、冷却ユニット68、ホーン69、送信用帯域フィルタ70、受信用帯域フィルタ71、T型結合器72、導波管73を備える。また、そのX軸回りの回動機構は、セクターギヤ74、X軸駆動モータ75、ピニオンギヤ76で構成される。モータ75はプロセッサ22により駆動制御される。
【0052】
以上の構成により、第1及び第2のパラボラアンテナ装置18,19は、回転シャフト16,17によるX軸、支持レール14によるY軸、回転ベース13によるZ軸の3軸回りに回転あるいは回動可能であり、しかも第1のパラボラアンテナ装置18と第2のパラボラアンテナ装置19とで互いに独立して回動可能であることから、各回転・回動機構のモータをプロセッサ22によって駆動制御することにより、各パラボラアンテナ装置18,19をそれぞれ全く軌道の異なる2つの衛星に指向させ追尾させることができる。
【0053】
ここにおいて、パラボラアンテナ装置18,19とその追尾衛星との間の通信には円偏波が用いられ、送信と受信でアンテナを共用するため、互いに異なる周波数が用いられる。この場合、導波管60,73には、互いに直交する偏波の異なる波が通ることになる。本装置では、導波管60,73を折り曲げる必要があるが、偏波の異なる波を通すに当たり、曲げる軸に直交する偏波の波に高次モード(円形の場合はTM10、方形の場合はTM11)が発生してしまう。特に、円形導波管では、曲げによって直交性がくずれ、クロストークを生じやすくなる。
【0054】
そこで、本アンテナ装置11では、図8に示すような方形導波管を用い、そのサイズを適切に選定することで高次モードの発生を抑制する。以下にその原理を説明する。
【0055】
まず、方形導波管内を通る波をλi A ,λi B (i=1,2,…,n、λi A とλi B は偏波が直交している)とする。前述の問題を解決するには、各波の基本モード(TE11)遮断するように導波管サイズを選ぶ。ここで、導波管サイズとして、図8に示すように、幅をa、高さをbで表すものとする。
【0056】
基本モードの波が通るには、その波長λがλ≦2aであればよい。λ=c/f(c:光速、f:周波数)であるから、偏波A、Bを通す条件は、
【数1】
である。尚、f1 A ,f1 B は偏波A,Bの中で最も低い周波数を表す。
【0057】
高次モードの遮断周波数fc TM11より通過する周波数が低く、(1)式と以下の(2)式を満足するa,bを選ぶ。
【0058】
【数2】
【0059】
例えば、パラボラアンテナ装置がよく用いられるレーダの場合は、送信周波数と受信周波数が同じであることから、使用周波数をfとすると、f=f1 A =f1 B 、a=bとなるから、
【数3】
なるaの正方形導波管ベンドを選べばよい。これに対し、本装置は、通信用に用いられ、送信周波数と受信周数が異なり、f1 A ≠f1 B ,a=c/2f1 A ,b=c/2f1 B となるから、
【数4】
なる周波数fc TM11以下の直交する波が通るベンドを選べばよい。このように、本アンテナ装置11では、導波管を適宜折り曲げて使用することになるが、上記のように方形導波管を用い、その寸法を互いに直交する送信偏波、受信偏波に合わせて選定するだけで、曲部に発生する高次モードを抑制することができ、電気的特性を満足させることができる。
【0060】
その他、プロセッサ22は、図示しないホストコンピュータに接続され、衛星の位置、軌道に関する情報が入力されるようになっている。
【0061】
次に、上記構成によるアンテナ装置11の衛星捕捉・追尾動作について、図9及び図10を用いて説明する。図9は第1及び第2のパラボラアンテナ装置18,19が2つの衛星に指向するように制御された様子を示す斜視図であり、図10はアンテナ装置11の座標系を定義して、各軸の回転・回動制御について説明するためのものである。
【0062】
まず、ベース座標系O−xyz(地球固定、x軸は北を指し、y軸は西を指し、z軸は天頂を指すものとする)を設定する。アンテナ装置11の設置時に、このベース座標系のxyz軸に装置のXYZ軸を一致させる。中心Oは、支持レール14の円弧中心とする。捕捉・追尾の対象となる2つの衛星をA,Bとする。尚、座標系の一致の精度は低くても、その誤差角を求めることで指向制御時に補正することが可能である。
【0063】
ここで、アンテナ各軸のアジマス角θAZ、エレベーション角θEL、2つの衛星A,Bの各フィード角θFA,θFBは次のように定義される。
【0064】
アジマス角θAZ:アジマス軸(AZ軸)は回転ベース13のz軸と等しく、θAZはz軸に対して左回りを正とし、x軸方向を0°とする。但し、−180°≦θAZ≦180°とする。
【0065】
エレベーション角θEL:エレベーション軸(EL軸)はθAZ=0°のときy軸と等しく、θELはEL軸に対して右回りを正とし、支持レール14が北側に水平になっている状態を0°とする。但し、0°≦θEL≦180°とする。
【0066】
フィード角θFA,θFB:中心Oについて半径1の球を仮想し、この仮想球の中心Oと2つの衛星A,Bの仮想球面上に投影した座標点のフィードFeed-A,Feed-Bとで作られる平面(図10中の斜線部分)に対して、図のようにθFA,θFBをとる。但し、0°≦θFA<θFB≦180°とする。
【0067】
上記のように定義された座標系において、2つの衛星A,Bの仮想球面上のベクトルa→,b→は、
【数5】
と表される。このとき、2つのパラボラアンテナ装置18,19の基準指向方向を仮想球面上でベクトルv→で表すとすれば、このベクトルv→は以下のように表すことができる。
【0068】
【数6】
EL軸のベクトルをEL→とすると、
【数7】
と表現できる。この結果、EL角度θEL、AZ角度θAZは以下のように表現できる。
【0069】
【数8】
一方、cosθFA,cosθFBは
【数9】
と表される。よって、上式より、Feed-Aの角度θFA、Feed-Bの角度θFBは次式で表される。
【0070】
【数10】
【0071】
そこで、プロセッサ22において、ホストコンピュータから受け取った衛星の位置、軌道に関する情報に基づいて時々刻々と変化するFeed-Aの角度θFA、Feed-Bの角度θFBを計算し、これらの角度相当分、X軸、Y軸、Z軸の各駆動機構を制御する。これにより、第1及び第2のパラボラアンテナ装置18,19で2つの衛星A,Bを捕捉・追尾することができる。
【0072】
以上のように、上記構成によるアンテナ装置は、天空状の全く独立の2衛星を捕捉・追尾することができる。このとき、各衛星を追尾するパラボラアンテナ装置18,19が互いに共通の軸(X軸)に搭載され、かつ独立に駆動されるにもかかわらず、互いの電波的ブロッキング、機械的干渉がない。
【0073】
また、Y軸駆動は、半円弧状の支持レール14をスライドさせる構造としており、駆動軸(Y軸)に物理的な軸を持たず、そこに2つのパラボラアンテナ装置18,19を設置してスペース効率を上げている。この場合、支持レール14が円環ではなく、半円弧状としているため、アンテナビームのブロッキングを生じることはない。
【0074】
尚、上記実施形態では、Y軸駆動機構として、ローラで支持レール14の外面、内面、側面を支持し、自重方向とそれ以外の方向の加重、モーメントを拘束するようにしたが、この部分の駆動方式としては、スライド面をV字型とするレールとローラを用いて支持するVレール方式も考えられる。
【0075】
また、本アンテナ装置11のマウント構造によれば、アンテナ重心位置の近傍にX軸、Y軸、Z軸を設定できるので、モータのサイズを劇的に小型化することができる。さらに、アンテナ最外形を抑制できるので、レドーム20の直径をより縮小することができ、結果的に電気開口(リフレクタの直径)を最大にとることができる。この場合において、各パラボラアンテナ装置18,19をセンターフィードの楕円ビーム式としているので、レドーム20内の電気開口を最大限広げることができる。
【0076】
ここで、センターフィードはブロッキングの点でオフセット型に比して不利であるが、設置スペースの点では有利である。そこで、ホーンの支持するために、導波管をステーとして利用して不要なステーを省略し、さらに導波管には電波吸収材を貼り付け、あるいは塗布することで、ブロッキングによるサイドローブ特性の劣化を抑制し、センターフィードの問題を低減している。
【0077】
また、導波管をリフレクタの前面と後面との間で渡す際に、楕円型のリフレクタの長軸上ではなく、デットスペースとなっている長軸と短軸との中間で斜めに渡すようにし、これによって設置スペースを拡大しなくてもすむようにしている。
【0078】
また、導波管には方形のものを使用し、その寸法を2つの互いに直交する偏波に合わせて選定するようにしているので、折り曲げによる高次モードの発生を低減することができる。
【0079】
また、回転軸を持たない支持レール14の回動には、ワイヤードライブ方式を採用することで、安定したスライド動作を実現している。
【0080】
また、パラボラアンテナ装置18,19のX軸駆動には、半円盤状のセクタギヤを用いているので、リフレクタ後面のスペースを有効利用することができる。
【0081】
また、上記実施形態では、2つのアンテナ装置として、リフレクタと一次放射器を備えた反射型のものを用いた場合について説明したが、複数のアンテナ素子を平面上に配列したアレイ型のものを用いてもよい。
【0082】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、同時に2つの通信用衛星の捕捉・追尾が可能で、しかもコンパクトで比較的小スペースに設置可能なアンテナ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態によるアンテナ装置を示す概略構成を示す斜視図。
【図2】 同実施形態によるアンテナ装置の背面側の斜視図。
【図3】 同実施形態によるアンテナ装置の正面図及び側面図。
【図4】 同実施形態で用いる回転ベースのZ軸回転駆動機構及び支持レールのY軸回動機構の詳細を示す拡大斜視図。
【図5】 同実施形態で用いるワイヤー送り機構の構成を示す側方断面図及びワイヤー送り部分を拡大して示す斜視図。
【図6】 同実施形態で用いる第1及び第2のパラボラアンテナ装置の構造とそのX軸回りの回動機構の構成を示す斜視図。
【図7】 図6に示す第1のパラボラアンテナ装置の構成とそのX軸回りの回動機構の構成を拡大して示す斜視図。
【図8】 同実施形態で用いる導波管の形状、サイズを説明するための平面図及び断面図。
【図9】 同実施形態の第1及び第2のパラボラアンテナ装置が2つの衛星に指向するように制御された様子を示す斜視図。
【図10】 同実施形態におけるアンテナ装置の座標系を定義して、各軸の回転・回動制御について説明するための図。
【図11】 従来のパラボラアンテナ装置の例を示す概略構成図。
【図12】 従来のパラボラアンテナ装置を用いて2つの周回衛星を捕捉追尾する様子を示す図。
【符号の説明】
11…アンテナ装置
12…固定ベース
13…回転ベース
14…支持レール
15…支持シャフト
16…第1の回転シャフト
17…第2の回転シャフト
18…第1のパラボラアンテナ装置
19…第2のパラボラアンテナ装置
20…レドーム
21…レギュレータ
22…プロセッサ
23…Z軸駆動モータ
24…プーリ
25…ベルト
26…基台
27…支持具
28,29…外面支持ローラ
30,31,32,33…内面支持ローラ
34,35,36,37…側面支持ローラ
38…送りローラ
39,40…テンションローラ
41…送りローラ駆動モータ
42…ワイヤー
51,64…取付基板
52,65…リフレクタ
53,66…アップコンバータ
54,67…ダウンコンバータ
55,68…冷却ユニット
56,69…ホーン
57,70…送信用帯域フィルタ
58,71…受信用帯域フィルタ
59,72…T型結合器
60,73…導波管
61,74…セクターギヤ
62,75…X軸駆動モータ
63,76…ピニオンギヤ
Claims (6)
- 設置個所に水平に固定される固定ベースと、
この固定ベース上に配置され、水平面に対して垂直なZ軸回りに回転自在な回転ベースと、
この回転ベース上に、前記Z軸上に中心点がくるようにして、前記中心点を通り前記Z軸に垂直なY軸回りに回動自在に載置される、所定の曲率で円弧状に形成してなる支持レールと、
この支持レールに、当該支持レールを形成する円弧の中心点を通り、前記Y軸に対して垂直なX軸として回転自在に設けられる回転シャフトと、
前記回転シャフトに固定されるアンテナと、
前記回転ベースを前記Z軸回りに回動させるZ軸駆動機構と、
前記支持レールを前記Y軸回りに回動させるY軸駆動機構と、
前記回転シャフトを前記X軸回りに回動させるX軸駆動機構と
を具備し、
前記Y軸駆動機構は、ワイヤーの両端部をそれぞれ前記支持レールの外側両端に取り付け、当該ワイヤーをローラに巻き付けて、当該ローラを正逆方向に回転駆動させることで前記支持レールを前記Y軸回りに回動させることを特徴とするアンテナ装置。 - 前記ワイヤーの少なくとも一方の端部には、引っ張り応力を有する弾性材を介在させるようにしたことを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
- さらに、前記固定ベース上で装置全体を覆うレドームを具備することを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
- 前記アンテナは、リフレクタの前方に一次放射器が配置される反射型であり、前記一次放射器及びリフレクタは前記X軸に対して垂直な方向に指向性を有するように前記回転シャフトに固定されることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
- 前記アンテナのリフレクタは、前記X軸に垂直な方向に長軸を有する楕円形状とすることを特徴とする請求項4記載のアンテナ装置。
- 前記支持レールは、真ん中から前記円弧の中心点に延び、その中心点で前記回転シャフトを支持する支持シャフトを備え、
前記X軸駆動機構は、前記アンテナのリフレクタ背面に取り付けられ、半円盤状に形成されるセクタギヤと、前記支持シャフトに固定され、前記セクタギヤに噛み合うようにピニオンギヤが装着されるモータとを備え、前記モータを正逆方向に回転させることで、前記アンテナをX軸回りに回動させることを特徴とする請求項4記載のアンテナ装置。
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