図1〜図3は、本発明の濾過装置の第1〜第3の実施形態を示すものであって、本発明を外圧式の濾過モジュール1を備えた濾過装置に適用した場合を示している。このうち、図1に示す第1の実施形態において濾過モジュール1は、縦方向に延びる有底筒型のケーシング1A内に濾過膜2が収容されて構成されている。この濾過膜2は、本実施形態では図1に簡略化して示すように、やはり縦方向に延びる多数の中空糸膜2Aによって構成されており、これらの中空糸膜2Aが、濾過モジュール1の上端開口部を閉塞するように設けられるヘッダ部2Bによってまとめられていて、該中空糸膜2Aの内部は、その下端が濾過モジュール1の底部に接合されるなどして閉塞されるとともに、上端は上記ヘッダ部2Bに連通させられている。
そして、外圧式とされた本実施形態の濾過装置では、原水導入手段3によって濾過モジュール1に導入された原水Wは、濾過モジュール1のケーシング1A内において濾過膜2の中空糸膜2Aの周り(外部)に満たされ、その圧力によってこの中空糸膜2Aにより濾過されて濾過水Tとして該中空糸膜2A内部に浸み出し、この濾過水Tは上記ヘッダ部2Bから濾過水排出手段4を介して排出される。なお、濾過膜2としては上記中空糸膜2Aを多数束ねたもののほかに、中空糸膜をスクリーン状に張ったエレメントや平膜状の分離膜を有するエレメントを多数積膜したり、あるいは管状のセラミック膜エレメントを多数本束ねたりして、ヘッダ部に接続したものでもよい。
ここで、この濾過モジュール1に導入される原水Wは、例えば浄水場等において濾過処理されるものであって、上記原水導入手段3においては、この原水Wが原水タンク3Aに一旦保持され、バルブV1を備えて濾過モジュール1の底部側に接続された給水管3Bを介し、このバルブV1と原水タンク3Aとの間に備えられた給水ポンプ3Cにより大気圧よりも大きな圧力で濾過モジュール1に供給されて導入される。なお、この給水管3Bの濾過モジュール1とバルブV1との間からは、バルブV2を備えたドレン管3Dが分岐させられている。
また、濾過モジュール1の上部側にはバルブV3を備えた返送管3Eが接続されていて、濾過モジュール1内に導入された原水Wが原水タンク3Aに環流されるようになされており、これにより本実施形態の濾過装置は、上記給水管3Bが接続された底部から上部側に向けて濾過モジュール1内に原水Wの流れが形成されるとともに、濾過膜2の中空糸膜2Aはこの流れの方向に沿って延びて、その表面から該方向と交差する方向に原水Wを濾過する、クロスフロー式の濾過装置とされている。なお、この返送管3Eの濾過モジュール1とバルブV3との間からは、さらにバルブV4を備えたオーバーフロー管3Fが分岐されている。
さらにまた、この濾過膜2の上記ヘッダ部2Bには、中空糸膜2Aによって濾過された濾過水Tを排出する上記濾過水排出手段4の排出管4Aが接続されている。ここで、上述のように加圧濾過方式となる本実施形態の濾過装置では、この濾過水排出手段4は、上記原水導入手段3の給水ポンプ3Cによって大気圧よりも大きな圧力で濾過モジュール1に導入された上記原水Wから濾過されて中空糸膜2Aからヘッダ部2Bに流れ込んだ濾過水Tを、排出管4Aのヘッダ部2Bに接続された側とは反対側の端部を大気圧に開放することにより、圧力差によってこの濾過水Tを排出するものとされている。
また、この濾過水排出手段4の排出管4AにはバルブV5が設けられており、このバルブV5を間に挟んだ排出管4Aの両側には該バルブV5を跨ぐように設けられた分岐管5Aの両端が接続されるとともに、この分岐管5Aには濾過水Tの排出方向に向けて順にバルブV6、吸引ポンプ5B、およびバルブV7が設けられている。そして、これら分岐管5A、吸引ポンプ5B、およびバルブV6,V7により、本実施形態において上記濾過水排出手段4に備えられる吸引手段5が構成されている。
さらに、この濾過水排出手段4の排出管4Aには、本実施形態において濾過膜2を洗浄するための洗浄手段の1つとして、第1の洗浄手段6が備えられている。この第1の洗浄手段6は、上記吸引手段5よりも濾過水Tの排出方向側から分岐した濾過水管6AがバルブV8を介して濾過水タンク6Bに接続されるとともに、この濾過水タンク6Bからは逆洗ポンプ6CおよびバルブV9を備えた逆洗管6Dが、上記排出管4Aの上記ヘッダ部2Bと吸引手段5の分岐管5Aとの間に接続された構成とされている。
一方、濾過モジュール1の底部には、上記洗浄手段の他の1つとして、第2の洗浄手段7が備えられている。この第2の洗浄手段7は、濾過モジュール1のケーシング1A底部に、多数の散気管7Aが、その一端をこのケーシング1A底部に接合された上記中空糸膜2Aの周りに開口させるようにして接続されるとともに、これらの散気管7Aの他端はバルブV10を介して該散気管7Aに空気を供給するコンプレッサ7Bに接続された構成とされている。また、濾過モジュール1のケーシング1Aにおける上記返送管3Eよりも上方には、この第2の洗浄手段7によってケーシング1A内に供給された空気や、原水Wの導入時にケーシング1A内に残った空気を排出し、また濾過モジュール1からの原水Wの排出時にはケーシング1A内に空気を導入するための吸排気管1Bが、バルブV11を介して接続されている。
そして、さらに本実施形態では、上記濾過モジュール1に活性炭Cを懸濁した懸濁液Eを供給する活性炭懸濁液供給手段(以下、単に供給手段と称する。)8が備えられており、この供給手段8は、濾過モジュール1に原水Wが導入されていない状態で該濾過モジュール1に接続されて上記懸濁液Eを供給するようにされている。すなわち、本実施形態における供給手段8は、例えば上記濾過水Tのような清澄な水に活性炭Cが懸濁させられてなる上記懸濁液Eを保持する懸濁液タンク8Aと、この懸濁液タンク8Aから供給ポンプ8BおよびバルブV12を介して濾過モジュール1のケーシング1A底部側に接続される給液管8Cとを備えたものであり、このバルブV12の操作により、原水Wが導入されていない状態の濾過モジュール1に接続されて本実施形態ではケーシング1A内に上記懸濁液Eを供給可能に制御される。
さらに、本実施形態の供給手段8は、濾過モジュール1内に供給された上記懸濁液Eを懸濁液タンク8Aに環流させる返送管8Dを備えている。この返送管8Dは、濾過モジュール1のケーシング1A上部において上記吸排気管1Bより低い位置にバルブV13を介して接続されており、本実施形態ではこのバルブV13を上記バルブV13と合わせて操作することにより、懸濁液Eが懸濁液タンク8Aと濾過モジュール1との間を上記返送管8Dと濾過モジュール1の底部側に接続される上記給液管8Cとを介して循環しながら濾過モジュール1に供給されるようになされている。
なお、上記懸濁液Eに懸濁される活性炭Cは、その平均粒径が10〜200μm程度のものが望ましく、また濾過モジュール1に供給される懸濁液Eにおける活性炭濃度は、本実施形態では0.1〜100mg/l程度の低濃度とされる。さらに、懸濁液タンク8Aには、供給された濾過水T等と活性炭Cおよび濾過モジュール1から返送された懸濁液Eとを撹拌する撹拌装置8Eが備えられていて、こうして撹拌された懸濁液タンク8A内の懸濁液Eの活性炭濃度が上述のような範囲で略一定となるように、この懸濁液タンク8Aに供給される上記濾過水T等と活性炭Cとの供給量が調整される。
次に、この第1の実施形態の濾過装置を用いた本発明の濾過方法の第1の実施形態について、通常の原水Wの濾過運転の後に濾過膜2の洗浄を行い、次いでこの濾過膜2の中空糸膜2A表面に活性炭Cの膜を形成してから、再び通常の原水Wの濾過運転を行う場合で説明する。本実施形態において、まず通常の原水Wの濾過運転時には、バルブV1,V3,V5,V11が開けられるとともに残りのバルブV2,V4,V6〜V10,V12,V13は閉じられ、原水タンク3Aの原水Wが給水ポンプ3Cによって給水管3Bを介し濾過モジュール1の底部側からそのケーシング1A内に供給されて導入され、さらに濾過モジュール1の上部から返送管3Eを介して原水タンク3Aに環流させられる。なお、ケーシング1A内に原水Wが充填された後はバルブV11は閉じられる。
そして、このように濾過モジュール1のケーシング1A内に導入されて濾過膜2の外部に充填された原水Wは、この濾過膜2を介して上述のように該原水Wの圧力により加圧濾過されてその濾過水Tが中空糸膜2A内に浸み出し、こうして濾過された濾過水Tはヘッダ部2Bから上記濾過液排出手段4の排出管4Aを介して排出される。また、排出された濾過水Tの一部は、バルブV8を開くことによって濾過水管6Aから濾過水タンク6Bに導入されて保持される。なお、この濾過運転時の濾過膜2の中空糸膜2Aの表面(外周面)は、当該濾過運転時において原水Wが導入される前に形成された活性炭Cの上記活性炭膜によって既に覆われているものとする。
このようにして原水Wの濾過が行われるうちに、この活性炭膜や個々の活性炭C自体、あるいは中空糸膜2Aに原水W中の濁質が付着、吸着することにより、活性炭Cの吸着能力や濾過膜2の濾過能力が低下したり濾過抵抗が増大したりした場合には、本実施形態では濾過モジュール1に原水Wが導入された状態のまま、上記第1、第2の洗浄手段6,7によって濾過膜2を洗浄し、しかる後に濾過モジュール1から原水Wを排出する。言い換えれば、本実施形態の濾過方法では、濾過モジュール1から原水Wを排出する前に濾過膜2を洗浄する。
すなわち、この濾過膜2の洗浄運転時には、まずバルブV2,V6,V7,V12,V13は閉じたまま、濾過運転時には開いていたバルブV1,V3を閉じて原水Wの濾過モジュール1への導入および濾過モジュール1から原水タンク3Aへの環流を停止するとともに、バルブV5も閉じて濾過水Tの排出も停止し、次いでバルブV4,V11を開いて濾過モジュール1上部に接続された吸排気管1Bおよびオーバーフロー管3Fを開放する。しかる後、第1の洗浄手段6においては、バルブV9を開くとともに逆洗ポンプ6Cを駆動して、濾過水タンク6Bから逆洗管6D、排出管4A、およびヘッダ部2Bを介して中空糸膜2Aの内部に濾過水T等の逆洗水を供給することにより、この逆洗水を中空糸膜2Aからケーシング1A内の原水W中に噴出させ、上記活性炭膜を付着した濁質ごと剥離するとともに中空糸膜2A自体に付着した濁質も剥離する。
また、第2の洗浄手段7では、バルブV10を開くとともにコンプレッサ7Bを駆動して、散気管7Aから濾過モジュール1のケーシング1A内の原水W中に空気の気泡を噴出させることにより、エアスクラビングによってやはり活性炭膜を剥離するとともに中空糸膜2A表面の濁質も剥離する。なお、こうして原水W中に噴出した空気は上記吸排気管1Bから排気され、またこの空気の噴出および逆洗水の流入によってケーシング1A内からオーバーフローした原水Wは、剥離した濁質や活性炭Cを伴った懸濁排水Dとしてオーバーフロー管3Fから排出される。さらに、このように第1、第2の洗浄手段6,7によって濾過膜2が洗浄された後は、バルブV9,V10を閉じるとともに逆洗ポンプ6Cおよびコンプレッサ7Bを停止し、次いでバルブV11は開いたままバルブV2を開くことにより、濾過モジュール1内の原水Wを剥離した濁質や活性炭Cごと、やはり濁質排水Dとしてケーシング1Aの底部からドレン管3Dを介して排出する。
そして、本実施形態の濾過方法においては、こうして濾過モジュール1内から原水Wが排出された後、次に濾過される原水Wが濾過モジュール1に導入されていない状態で、上記供給手段8により濾過モジュール1に懸濁液Eを供給し、濾過膜2における中空糸膜2Aに、この懸濁液Eに懸濁した活性炭Cによって活性炭膜を形成する。すなわち、この懸濁液Eの供給運転時には、まず上記バルブV2,V4を閉じ、またバルブV1,V3,V5〜V10も閉じたまま、バルブV12を開いて懸濁液タンク8Aの懸濁液Eを供給ポンプ8Bにより給液管8Cを介して濾過モジュール1のケーシング1A内にその底部から供給する。また、本実施形態ではバルブV12に合わせてバルブV13も開いて、濾過モジュール1内に供給された懸濁液Eをケーシング1Aの上部から返送管8Dを介して懸濁液タンク8Aに環流させ、この供給手段8の懸濁液タンク8Aと濾過モジュール1との間で、上述のように一定の比較的低濃度の活性炭濃度となるように調整された懸濁液Eを循環させる。
さらに、このように懸濁液Eが循環して濾過モジュール1に供給されるようになったなら、バルブV11を閉じた上で、濾過膜2によってこの懸濁液Eを濾過することにより、該懸濁液E中の活性炭Cを濾過膜2の中空糸膜2A表面に吸着させて活性炭膜を形成する。しかるに、このときにも懸濁液Eから濾過された濾過水Tは上記濾過水排出手段4により排出管4Aを介して排出されるのであるが、本実施形態ではこの懸濁液Eの濾過水Tの排出を、通常の原水Wの濾過運転時にこの原水Wから加圧濾過された濾過水Tを排出する濾過水排出手段4そのものを用いるのではなく、該濾過水排出手段4に備えられた上記吸引手段5を用いて、濾過モジュール1に懸濁液Eが供給された状態で濾過膜2から濾過水Tを吸引することにより行う。
すなわち、この懸濁液Eを濾過して濾過水Tを排出するときには、濾過水排出手段4の排出管4AにおけるバルブV5は閉じたまま、この排出管4Aから分岐した吸引手段5の分岐管5AのバルブV6,V7を開くことにより当該吸引手段5を濾過膜2に接続し、さらに吸引ポンプ5Bを駆動する。従って、濾過モジュール1に供給された懸濁液Eは、供給ポンプ8Bによるこの懸濁液E自体の圧力のみによることなく、上記吸引手段5によって濾過膜2の中空糸膜2A内部から濾過水Tが吸引されて排出されるのに伴い濾過され、これにより該懸濁液E中の活性炭Cが吸着されて上述のように中空糸膜2A表面に活性炭膜が形成される。
そこで、このようにして濾過膜2の中空糸膜2A表面に所定の膜厚の活性炭膜が形成されたなら、供給手段8のバルブV12,V13を閉じるとともに供給ポンプ8Bを停止して懸濁液Eの供給、循環を終了し、また吸引手段5のバルブV6,V7を閉じるとともに吸引ポンプ5Bを停止してこの吸引手段5による濾過水Tの吸引および懸濁液Eの濾過も終了し、次いで原水Wを濾過モジュール1に導入して上述した通常の濾過運転を再開する。すなわち、バルブV1,V3を開くとともに給水ポンプ3Cを駆動して原水タンク3Aから原水Wを濾過モジュール1に導入し、また返送管3Eから環流させるとともに、濾過水排出手段4のバルブV5を開いて、濾過膜2によって原水Wから濾過された濾過水Tを排出管4Aを介して排出する。
このように構成された濾過装置、および該濾過装置を用いた原水Wの濾過方法では、濾過膜2に形成された活性炭膜が、濾過モジュール1に原水Wが導入されていない状態において該濾過モジュール1に活性炭Cを懸濁した懸濁液Eを供給することにより形成されたものであるので、この活性炭Cが中空糸膜2Aに吸着されて上記活性炭膜が形成される前に原水W中の濁質等が中空糸膜2A表面に付着したりするような事態が生じるのを防いで、概ねこの懸濁液Eとして供給された活性炭Cのみによる膜や層を中空糸膜2Aに形成することができる。このため、こうして濁質等が先に中空糸膜2Aに付着して目詰まりを生じたりすることにより、その周囲に活性炭Cが吸着されなくなって部分的に活性炭膜が形成されなくなったりするようなことはなく、またたとえ活性炭膜が形成されたにしてもその膜厚が部分的に不均一となったりするようなこともなく、濾過膜2の全体に渡って確実に、しかも満遍なく均一な厚さの活性炭膜を形成することが可能となる。
従って、上記構成の濾過装置および濾過方法によれば、このような膜厚が均一な活性炭膜が全体的に満遍なく中空糸膜2Aに形成された濾過膜2によって原水Wの濾過を行うことにより、原水W中の比較的大きな濁質をこの活性炭膜によって確実に捕らえることができ、かかる濁質が中空糸膜2A表面に直接付着して中空糸膜2Aに目詰まり等を生じることにより原水Wの濾過が阻害されるのを防ぐことができる。そして、この活性炭膜に捕らえられる濁質よりも小さな原水W中の有機物等は活性炭膜を形成する活性炭C自体に吸着され、この有機物等よりもさらに小さい微細な濁質のみが中空糸膜2Aによって捕らえられて原水Wが濾過され、濾過水Tとして排出されることとなるので、濾過膜2への負担を軽減することができるとともに、効率的な原水Wの濾過を図ることが可能となる。
また、本実施形態では、上記供給手段8が返送管8Dを備えていて、懸濁液Eを懸濁液タンク8Aと濾過モジュール1との間で循環させつつ該濾過モジュール1に供給しながら濾過膜2によって濾過することにより、その中空糸膜2Aに上記活性炭膜を形成するようにしている。従って、懸濁液タンク8Aに供給される活性炭Cの供給量を設定すると、濾過操作にともない懸濁液タンク8Aに供給されるのが活性炭Cの供給終了後に濾過水Tのみになり、懸濁液Eは清澄になってくる。濾過モジュール1に供給される懸濁液Eが清澄になった時、設定した量の活性炭が濾過モジュール1の膜面に全て供給されたことになり、定量的な活性炭の供給が可能になる。しかも濾過モジュール1内においても、本実施形態における原水Wの流れと同様に、給液管8Cが接続された濾過モジュール1底部から返送管8Dが接続された濾過モジュール1上部に向けて懸濁液Eの流れが形成されることになって、懸濁液Eの活性炭濃度の均一化を図ることができるので、このような懸濁液Eを濾過して形成されることにより、上記活性炭膜は、その膜厚を一層の均一にして一定とすることができる。このため、本実施形態によれば、濾過膜2全体で偏りなく均一な活性炭膜による大きな濁質の捕捉、有機物等の吸着、および中空糸膜2Aによる微細な濁質の捕捉を図ることが可能となり、さらに効率的な濾過を促すことができる。
本実施形態においては、濾過モジュール1に供給される懸濁液Eの活性炭濃度が0.1〜100mg/lと低濃度とされており、従ってこのような懸濁液Eが濾過されることにより、中空糸膜2Aには上記活性炭膜が徐々にその膜厚を厚くするようにして形成されてゆくこととなる。従って、これとは逆に高濃度の懸濁液Eを供給した場合のように活性炭膜が急速に形成されることで膜内における活性炭Cの密度にばらつきが生じたりするのも防ぐことができ、より緻密で質的にも均一な活性炭膜を形成することが可能となるので、本実施形態によれば、このような活性炭膜が濾過膜2全体に満遍なく形成されることにより、さらに均一な原水W中の濁質の捕捉および有機物等の吸着を図ることが可能となる。
また、こうして懸濁液Eが低活性炭濃度とされることにより、これを原水Wと一緒に濾過したり返送管3Eを介して原水タンク3Aに環流させたりしても原水Wの濾過に支障を来すことがないので、中空糸膜2Aに活性炭膜が形成されてから原水Wを導入して濾過を行うときには、いちいち濾過モジュール1内に残った懸濁液Eをドレン管3Dを介して排出したりせずとも、そのまま原水Wを濾過モジュール1に導入してその濾過を行うことが可能となる。このため、こうして活性炭膜が形成された後に、懸濁液Eを濾過モジュール1から排出することなく原水Wを濾過モジュール1に導入することにより、この懸濁液Eの排出に要する時間や手間を省いて濾過作業の効率化を図ることができるという効果も得られる。なお、この懸濁液Eの活性炭濃度が上記範囲を上回るとこれらの効果を得ることができなくなるおそれがあるのは言うまでもないが、逆に上記範囲を下回るほど懸濁液Eの活性炭濃度が低すぎると、所定の膜厚の活性炭膜を形成するのに多くの時間を要して、却って当該濾過装置の稼働効率の低下を招くおそれがある。
さらに、この懸濁液Eに懸濁される活性炭Cの大きさも、その平均粒径が10〜200μm程度の微細なものとすることにより、中空糸膜2Aに形成される活性炭膜をより一層緻密で密度のばらつきも小さいものとすることができ、原水W中の濁質のさらに確実かつ濾過膜2全体での均一な捕捉を図ることができ。すなわち、活性炭Cの平均粒径が上記範囲を上回るほど大きいと、形成された活性炭膜内での隣接する活性炭C同士の間に形成される隙間が大きくなり、比較的大きな濁質がこの隙間を通り抜けて中空糸膜2Aに付着するおそれがあるとともに、個々の活性炭Cの粒径のばらつきも大きくなって活性炭膜に部分的な粗密が生じるおそれがある。ただし、平均粒径が上記範囲を下回るほど活性炭Cが微細すぎると、逆に活性炭C同士の間の隙間が小さくなりすぎ、濾過されるべき原水Wが活性炭膜を通過する際の抵抗が大きくなりすぎて却って濾過抵抗を増大させるおそれがあるので、活性炭Cの平均粒径は上述のように10〜200μmの範囲とされるのが望ましい。
さらにまた、このような懸濁液Eを濾過膜2によって濾過してその中空糸膜2に活性炭膜を形成するのに際し、本実施形態では、上記濾過液排出手段4に備えられた吸引手段5の吸引ポンプ5Bによって中空糸膜2Aを介して原水Wから濾過水Tを吸い出して濾過することにより、この中空糸膜2Aに上記活性炭膜を形成するようにしている。しかるに、この懸濁液Eを濾過して活性炭膜を形成する場合も、原水Wを濾過するときと同様に、濾過モジュール1に供給された懸濁液Eの圧力によって濾過水Tを浸み出させて濾過水排出手段4の排出管4Aから排出しながら濾過を行うことにより、活性炭Cを中空糸膜2Aに付着させて活性炭膜を形成することも可能であるが、このような加圧濾過方式では圧力の高い濾過モジュール1の底部近傍に比べて上部側で活性炭膜の膜厚が薄くなるといった膜厚の不均一が生じるおそれがあるのに対し、本実施形態では上記吸引手段5によって活性炭Cが中空糸膜2Aに吸着されて活性炭膜が形成されるので、このような圧力差による膜厚の不均一も抑えることができ、さらに一層均一な膜厚の活性炭膜を形成することが可能となるのである。
しかも、本実施形態の濾過装置においては、懸濁液Eが濾過モジュール1の底部側から供給されるのに対し、吸引手段5は、この供給時にバルブV5〜V7の操作によって濾過膜2のヘッダ部2Bに接続されて、濾過モジュール1の上部側から中空糸膜2Aを介して濾過水Tを吸引するようにされている。従って、濾過モジュール1の底部側に接続された上記供給手段8の給液管8Cからの懸濁液Eの供給圧が弱まる濾過モジュール1上部側では強い吸引力で活性炭Cを吸着することができる一方、逆にこの吸引力が弱まる濾過モジュール1の底部側では上記懸濁液Eの供給圧によって活性炭Cを確実に中空糸膜2Aに付着させることができるので、上記圧力差による活性炭膜厚の不均一を一層確実に抑制し、濾過膜2の全体に渡ってさらに確実な活性炭膜の均一化を図ることができるという利点も得られる。
一方、本実施形態の濾過装置では、濾過モジュール1に原水Wが導入されたままの状態において濾過膜2を洗浄する第1、第2の洗浄手段6,7が備えられており、本実施形態の濾過方法では、原水Wの濾過によって活性炭膜や中空糸膜2Aに付着、吸着された濁質や有機物等によって濾過抵抗が増大したり吸着能力が低下したりした場合には、この洗浄手段6,7によって濾過膜2を洗浄し、しかる後この濾過モジュール1内に残った原水Wを排出して、懸濁液Eが供給される前の上記源水Wが導入されていない状態とするようにしている。従って、本実施形態によれば、この洗浄手段6,7による洗浄によって中空糸膜2Aから剥離させられた濁質、有機物等を含む活性炭膜や中空糸膜2A自体が濾過した濁質は原水Wとともに排出されて濾過モジュール1内に残ることはなく、こうして濾過モジュール1に原水Wが導入されていない状態とされたところで、新たな懸濁液Eを濾過モジュール1に供給することにより、濁質等を含んでいない新たな活性炭膜が中空糸膜2Aに形成されるので、その後に速やかに次の原水Wの効率的な濾過を再開することが可能となる。
なお、本実施形態ではこのように、濾過膜2の中空糸膜2A内に逆洗水(濾過水T)を供給して洗浄(逆洗)を行う第1の洗浄手段6と、濾過モジュール1底部側から中空糸膜2Aの周りに空気(気泡)を噴出してエアスクラビングにより洗浄を行う第2の洗浄手段7との2つの洗浄手段が備えられているが、場合によってはこれら第1、第2の洗浄手段6,7の一方を備えただけであってもよい。また、これら第1、第2の洗浄手段6,7の少なくとも一方に代えて、あるいはこれら第1、第2の洗浄手段6,7に加えて、例えば濾過膜2の縦方向に延びる中空糸膜2Aの周囲またはこの束の内部から、空気(気泡)や洗浄水あるいは洗浄水に空気の混ざった気泡流などを噴出させて濾過膜2を洗浄する第3の洗浄手段を設けるようにしてもよい。さらに、こうして洗浄水や上記逆洗水を供給する場合には、これらに次亜塩素酸塩等の薬液を含有させるようにしてもよい。
ところで、本実施形態では、上記濾過モジュール1に原水Wが導入されていない状態として、このように濾過モジュール1に原水Wが導入された状態のまま濾過膜2を洗浄した後に原水Wを濾過モジュール1から排出した状態について説明したが、これ以外にも、例えば一連の濾過作業の終了後に次の濾過作業を開始する前や、濾過膜2の交換等の保守・点検作業後に濾過作業を再開する前の、原水Wが濾過モジュール1から排出されている状態、あるいは当該濾過装置を浄水場等に設置した後に最初に濾過を行う前の原水Wが導入されていない状態などに、まず懸濁液Eを供給して活性炭膜を形成し、しかる後に原水Wを導入して濾過を行うようにしてもよい。
次に、図2および図3は、それぞれ本発明の濾過装置の第2および第3の実施形態を示すものであり、図1に示した第1の実施形態の濾過装置と共通する部分には同一の符号を配して説明を省略する。ここで、この第1の実施形態の濾過装置は、上述のように濾過モジュール1に返送管3Eが接続されて原水Wが原水タンク3Aに循環されることにより濾過モジュール1内に原水Wの流れが形成され、濾過膜2はその中空糸膜2Aによってこの流れの方向に交差する方向に原水Wを濾過する、クロスフロー式の濾過装置であったのに対し、第2、第3の実施形態の濾過装置は、このような原水Wの返送管3Eを備えておらず、濾過モジュール1内に導入された原水Wを循環させることなく濾過膜2によって濾過しきって濾過水Tとして排出する、デッドエンド式の濾過装置とされている。
このうち、図2に示す第2の実施形態では、その濾過膜2が第1の実施形態と同様に多数の縦方向に延びる中空糸膜2Aを束ねて構成されたものとされている。一方、図3に示す第3の実施形態では、ケーシング1A内にこのような多数の中空糸膜等を束ねた濾過エレメント2Cが複数配設されて濾過膜2が構成され、ケーシング1A内上部に設けられたヘッダ部2Bにこれらの濾過エレメント2Cの中空糸膜等が連通して濾過水排出手段4に接続されるように構成されているとともに、各濾過エレメント2Cの下端はケーシング1Aの底部に接続されずに間隔を開けるようにされれており、この間隔が開けられた部分には、多数のノズル孔が形成された配管や微細な気孔を有する焼結管のような洗浄管7Cが横方向に延びるように配設されて、この洗浄管7CがバルブV10を介してコンプレッサ7Bに接続されることにより、第3の実施形態における第2の洗浄手段7が構成されている。
このように構成された濾過装置を用いた本発明の第2、第3の実施形態の濾過方法でも、上述のように原水Wを原水タンク3Aに循環させないこと以外は、第1の実施形態と同様に、原水Wの導入、濾過膜2による濾過、洗浄手段6,7による濾過膜2の洗浄、そして原水Wの濾過モジュール1からの排出といった操作により、濾過モジュール1に原水Wが導入されていない状態とされ、しかる後に活性炭Cを懸濁した懸濁液Eが供給手段8によって濾過モジュール1に特に循環されつつ供給され、濾過膜2の中空糸膜2Aに活性炭膜が形成される。従って、その後に濾過モジュール1に原水Wを導入して濾過を行うことにより、これら第2、第3の実施形態の濾過装置および濾過方法においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。しかも、濾過モジュール1内の原水Wが環流されることのないデッドエンド式の濾過装置およびこれを用いた濾過方法では、原水W中の濁質が濾過モジュール1内に残されたままとなって中空糸膜2A等の目詰まりなども発生しやすいので、そのような濾過装置および濾過方法に本発明を適用するのは、特に効果的である。
さらに、図4および図5は、それぞれ本発明の濾過装置の第4および第5の実施形態を示すものであり、図1〜図3に示した第1〜第3の実施形態の濾過装置と共通する部分には、やはり同一の符号を配して説明を省略する。すなわち、上記第1〜第3の実施形態の濾過装置が、濾過モジュール1においてそのケーシング1A内の濾過膜2の周りに原水Wを導入して加圧濾過することにより、中空糸膜2A等の内部に濾過水Tを浸み出させて排出する外圧式の濾過装置であったのに対し、これら第4、第5の実施形態の濾過装置は、原水Wが濾過膜2の内部に供給されて加圧濾過されることにより、濾過水Tが濾過膜2外部に浸み出してケーシング1A内の濾過膜2の周りに保持され、排出される内圧式の濾過装置とされている。
ここで、さらに図4に示す第4の実施形態は第1の実施形態と同様にクロスフロー式の濾過装置とされており、その濾過モジュール1のケーシング1Aには上部と底部とにヘッダ部2Dが設けられている。また、このケーシング1A内に収容される濾過膜2は、望ましくは管状膜や中空糸膜でも径の大きなもの(以下、合わせて単に管状膜2Eと称する。)により構成されていて、多数のこのような管状膜2Eが縦方向に延びて上下端がケーシング1内の上部および底部に接合され、その内部がヘッダ部2Dにそれぞれ連通させられている。
そして、原水導入手段3の給水管3B、ドレン管3D、第2の洗浄手段7の散気管7A、および上記供給手段8の給液管8Cは、このうちケーシング1A底部のヘッダ部2Dに接続されるとともに、原水導入手段3の返送管3E、オーバーフロー管3F、ケーシング1Aの吸排気管1B、および供給手段8の返送管8Dは上部のヘッダ部2Dに接続されている。一方、濾過水排出手段4の排出管4Aはケーシング1Aの上部に接続されて、該ケーシング1A内の濾過膜2の周りの空間に連通させられている。
また、濾過モジュール1に活性炭Cが懸濁した上記懸濁液Eを供給する供給手段8においては、上記給液管8CのバルブV12と濾過モジュール1との間に、多孔板スクリーン等からなるフィルター8Fが、濾過モジュール1との間にさらにバルブV14を介して介装されている。このフィルター8Fは、懸濁液タンク8Aから給液ポンプ8Bによって濾過モジュール1に供給される懸濁液E中の活性炭Cのうち、固まりになったりして粒径の大きくなったものを捕捉するためのものであって、こうしてフィルター8Fによって、固まりになったりして粒径の大きくなった活性炭Cが除去されることにより、ヘッダ部2D内の管状膜2Eへの流入部での活性炭Cによる詰まりを防止することができる。なお、図5に示す第5の実施形態は、この第4の実施形態をデッドエンド式としたものであって、返送管3Eが備えられずにオーバーフロー管3Fが直接ヘッダ部2Dに接続されていること以外は、第4の実施形態と同様の構成とされている。
このような第4、第5の実施形態において、原水導入手段3によってこの濾過モジュール1に導入された原水W、および濾過モジュール1に原水Wが導入されていない状態において上記供給手段8によって該濾過モジュール1に供給された懸濁液Eは、まずケーシング1A下側のヘッダ部2Dに供給され、濾過膜2内部を通って濾過されつつ上側のヘッダ部2Bに達するとともに、これら原水Wおよび懸濁液Eから濾過された濾過水Tは、ケーシング1A内の濾過膜2の周囲に充満して濾過水排出手段4により排出される。そして、このうち懸濁液Eの濾過の際には、この濾過水排出手段4に備えられた吸引手段5によって濾過水Tが吸引されて排出される一方、濾過膜2の上記管状膜2Eには、その内周面に懸濁液Eの濾過による活性炭膜が形成される。
なお、クロスフロー式の第4の実施形態では、上側のヘッダ部2Dに達した原水Wは返送管3Eを介して原水タンク3Aに循環させられる一方、デッドエンド式の第5の実施形態では、濾過モジュール1に導入された原水Wはこうして循環されることなく、濾過膜2によって濾過しきって濾過水Tとして排出される。さらに、原水Wが導入されていない状態において供給された懸濁液Eは、返送管8Dを介して懸濁液タンク8Aに循環させられる。
また、濾過モジュール1に原水Wが導入されたままの状態で洗浄手段6,7により濾過膜2を洗浄する洗浄運転時には、上記第1の洗浄手段6によって排出管4Aからケーシング1A内の濾過膜2の周りに清澄な濾過水Tを逆洗水として供給することにより、この濾過水Tが管状膜2Eの内部に浸み出して、該管状膜2Eにより濾過された濁質やその内周面に形成された上記活性炭膜を吸着された濁質ごと剥離する。一方、第2の洗浄手段7では、コンプレッサ7Bによって空気が気泡としてケーシング1A底部のヘッダ部2Dから濾過膜2の管状膜2E内に供給され、エアスクラビングによってやはり濁質や活性炭膜を管状膜2E内周面から剥離する。空気は吸排気管1Bから排出される。また、この洗浄運転時にケーシング1Aからオーバーフローした原水Wは懸濁排水Dとしてオーバーフロー管3Fから排出され、さらに洗浄運転が終了した後は、ケーシング1A底部のヘッダ部2Dに接続されたドレン管3Dから濾過モジュール1の濾過膜2(管状膜2E)内部の原水Wが懸濁排水Dとして排出される。
そして、このように濾過モジュール1から原水Wが排出されたりして、該濾過モジュール1内に原水Wが導入されていない状態となったところで、上記供給手段8によってこの濾過モジュール1に懸濁液Eを供給することにより、上述のように濾過膜2の上記管状膜2E内周面に活性炭膜が形成されるので、しかる後に濾過モジュール1に原水Wを導入して管状膜2Eの内部から濾過を行うことにより、これら第4、第5の実施形態の濾過装置および該濾過装置を用いた濾過方法によれば、上記第1〜第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。ただし、このような内圧式の濾過装置では、濾過モジュール1に導入された原水Wや懸濁液Eが通される濾過膜2内部で詰まりが生じ易いので、上述のようなフィルター8Fを備えるのは勿論、特に第5の実施形態のようなデッドエンド式の濾過装置および濾過方法は、濁質のより少ない浄水の最終段階の濾過等に用いられるのが望ましい。