本発明は、シリカガラスの選別方法に関し、さらに詳しくは、ArFエキシマレーザー半導体露光装置用の合成シリカガラス光学部材に用いられるシリカガラスの選別方法に関する。
半導体チップは、年々、大容量化と高集積化及び低消費電力化が図られ高性能化している。この半導体チップの製造で最も重要な技術はリソグラフィーと呼ばれる露光技術である。現在主流となっている露光装置はステッパーまたはスキャナーと呼ばれる縮小投影光学系を有するもので、これはシリカガラス上に形成された回路パターンを1/4倍または1/5倍に縮小してシリコンウェハー上に転写する露光装置である。
高集積化を達成するためには、回路パターンをより微小、かつ、精度良く形成することが必要で、解像力の高い微細な回路パターンを転写できる露光装置が必要である。そのため、露光装置の解像力を向上させる幾つかの技術が開発されてきた。特に解像力向上に効果的な手法は、より短波長の光源を用いることである。
したがって、以前はステッパーの露光光源として水銀ランプのg線(436nm)やi線(365nm)が用いられていたが、微細化の要求が厳しくなるにつれ、紫外線パルスレーザーが用いられるようになってきた。具体的には波長248nmのKrFエキシマレーザーや波長193nmのArFエキシマレーザーである。2003年の時点では、KrFエキシマレーザーを用いた露光装置により半導体チップの量産が行われており、更にArFエキシマレーザーを用いた量産が本格的に始まろうとしている。
光源が短波長化されることで、露光装置に用いられる光学部品は以前と比較して、透過性や紫外線照射耐性が優れていることが要求され、実質的に使用可能な光学材料は数種類に限定される。具体的にはフッ化カルシウムなどのフッ化物結晶及び合成シリカガラスである。特にシリカガラスは、レンズ加工の容易さ、高い紫外線の透過性、大型材料が得られやすい、といった有利な点が多いため、露光装置のレンズ材料に最も多く用いられている。一般的に、KrFエキシマレーザー露光装置における投影レンズ材料は全てシリカガラスで構成され、また、ArFエキシマレーザー露光装置でも大部分の光学部品にシリカガラスが用いられている。
露光装置の解像度を向上し、正確な回路パターンを転写するためには、収差の少ない光学系を形成することが必要不可欠なため、レンズ材としてのシリカガラスに対してもより厳しい光学的品質が要求されている。露光装置に用いられるシリカガラス材に要求される品質を以下に列記すると、
1)使用する波長での高い光透過性
2)屈折率均質性が高いこと
3)複屈折が低いこと
4)長期的にレーザー照射に対して安定していること(耐レーザー性)
などが挙げられる。
透過性については、合成シリカガラスを製造するときの工程汚染を極力低減することにより高透過性を達成することができ、従来から幾つかの手法が考案されている。屈折率均質性や複屈折の低減も、熱処理方法の最適化や工夫、また、シリカガラス中の不純物分布の平坦化等の手法によってある程度満足できるものが得られている。これらの特性は露光装置の初期の結像性能に影響を及ぼす項目で、現状、ほぼ満足できるレベルが達成されている。
近年、ArFエキシマレーザー露光装置が量産用として出荷される段階にきているため、上記の初期結像性能に影響を及ぼす品質以上に、特にレーザー耐性について厳しい性能が要求されている。ここでいうレーザー耐性とは、一般的に、レーザー照射によって透過率や均質性、複屈折の悪化が少なく、長期にわたって安定していることを指している。レーザー照射によって生じるダメージは幾つかあり、以下に列挙しておく。
1)構造欠陥の生成による透過率の低下(ソラリゼーション)
2)構造変化による透過波面の変化
もちろん、以前からシリカガラスのArFエキシマレーザー照射による透過率低下や透過波面の変化を抑制する研究は数多く発表されている。例えば、シリカガラス中に水素分子やフッ素をドープする方法、Si−OH基濃度を最適化することで透過率低下を効果的に抑制する方法、などが数多く開示されている。一方、透過波面の変化については、ArFエキシマレーザーを照射することによってシリカガラスが収縮し、照射部分の屈折率が上昇する現象、いわゆる「レーザーコンパクション」と呼ばれるダメージが良く知られており、以前から詳細な研究が行われてきた。
ArFエキシマレーザー露光装置に用いられる各種シリカガラスについて、レーザーコンパクションの挙動を包括的にまとめたものが1999年に米国SPIE(Society of Photo-Optical Instrumentation Engineers)主催の学会、Optical Microlithographyで発表されている。この発表内容によると、レーザーコンパクションは2光子吸収によって引き起こされるため、ダメージはレーザーのエネルギー密度の2乗に比例する。実際の屈折率変化(波面変化)の算出は、照射部分の収縮が未照射部分に束縛された状況で引き起こされるため、数学的な解析法を適用して算出されるが、基本的にエネルギー密度が高いほど収縮が大きいため透過波面の変化も大きい。なお、この報告は0.2mJ/cm2から数mJ/cm2のエネルギー密度(大部分は数mJ/cm2の実験)で照射された実験結果をもとに行われたものである。
当時のレーザー耐性の評価は、評価時間を短縮するために、実際の露光機で用いられるレーザーのエネルギー密度より数倍から数十倍高いエネルギー密度で照射実験を行い、積極的にシリカガラスにダメージを与えて(加速試験)評価する方法が一般的で、エネルギー密度依存性を調べることによって、実際に使用される低エネルギー密度で使用した場合の挙動を予測する、という方法が採用されていた。実際、レーザーコンパクションはエネルギー密度の2乗に比例することが調べられていたため、これを実際に使用されるエネルギー密度に想定した場合、シリカガラスは実質的に十分なレーザーコンパクション耐性を有し、実際のArF半導体露光装置では問題が起きないと考えられていた。
更にレーザーコンパクションとレーザーパルス幅についても研究が進められた。レーザーコンパクションが問題視されたのは、光源がHgランプの連続光からパルスレーザーに変更されたことが大きい。エキシマレーザーの場合、1パルスあたりのエネルギー総量はHgランプとあまり差がない場合でも、光が発生している時間が非常に短いため、瞬間的に非常に強い光が照射されている。1パルスあたりのエネルギー総量が同じ場合、パルス幅が短いほど強い光が照射される。レーザーコンパクションは瞬間的に照射される光の強度(尖頭値)に依存することから、レーザーコンパクションを抑制するためにはパルス幅を長くすることが好ましい。
したがって、長期的安定性を得るために、各社のエキシマレーザーは長パルス化を目的に開発が進められてきた。当初エキシマレーザーのパルス幅は20nsec(ナノ秒)前後あったものが、パルスパワー電源やチャンバーの改良や発振条件の最適化などにより、60nsec程度まで長パルス化が達成され、これによってレーザーコンパクションダメージを大きく抑制することができるようになった。このように、シリカガラス材料の耐コンパクション性の向上とレーザー光の長パルス化を採用することによって、実際の半導体露光装置の耐久性にはほとんど問題ない、と当時は考えられていた。
しかし、1999年、実際の露光装置に近い条件、すなわちより低いエネルギー密度でArFレーザーを照射したところ、これまでよく知られていたコンパクションによる透過波面が遅れるダメージと正反対のダメージが発見された。これはエキシマレーザー技術が発達し、高繰り返しのレーザーが開発されたため、より低いエネルギー密度で長期間照射することが実験上可能になったため、実際の操業状態での条件に近い照射実験ができるようになり発見されたダメージである。それでも実験には数ヶ月単位の期間を要するため、このダメージが一般的に認知されるようになったのは2001年以降であり、ダメージは照射部分の体積が膨張していることから「レアファクション」と呼ばれた。
従来の耐レーザー性の向上に関する研究は、主として、透過率の低下とコンパクションを如何にして改善するか、ということに着目して改良が進められてきた。しかし、レアファクションに関する実験が進むうちに、コンパクションに対する特性が良いものが必ずしもレアファクションに対する特性が良い、というわけではなく、むしろ、非常に悪化してしまう場合も確認された。レアファクションの発見は、従来からコンパクション特性が良好とされ露光装置用に好適と考えられていたシリカガラス材料が、実際にはまったく使用できなくなる可能性を含んでいたため、非常に大きな衝撃を与えた。
このように、レーザー耐性に関する透過波面の変化は混沌とした状況が続いたが、最終的には実際の露光装置に組み込まれた場合の長期耐性を良くすることが最も重要であり、より実際の使用条件に近い照射条件で使用されたときに屈折率の変化が少ない材料の開発が望まれることとなった。
V.S.Khotomchenko et al,J.Appl.Spectrosec.,4632〜635(1987)
R.E.Schenker and W.G.Oldham, "Ultraviolet-induced densification in fused silica," J. Appl. Phys. 82, 1065-1071 (1997)
前記した如く、高エネルギー密度で照射した場合と低エネルギー密度で照射した場合、シリカガラスに生じるダメージがまったく異なる種類のものであるため、従来から行われてきたレーザー耐性評価における加速試験は、実際の露光機で用いられるシリカガラス材料の耐久性を予測することができない。
現実の露光機におけるシリカガラス材料の耐久性予測をするためには、現実の露光機で照射されている条件、すなわち、非常に低いエネルギー密度でArFレーザーを長期間照射しなければならず、これには膨大な時間と経費がかかり、実質上不可能であった。例えば、一般的な露光機に要求されている寿命は数年間以上であり、これは照射パルス数で換算すると1011ショット以上となり、要求される照射数の照射試験を行うことは実質上不可能である。
本発明のシリカガラスの選別方法は、実際の露光機に用いられる条件で照射された時のシリカガラス部材の耐久性予測をより短時間に行う方法を提供するもので、この方法を用いることで、ArFエキシマレーザー露光機に好適なシリカガラス材料を短時間に選別することができる。また、本発明の光学用シリカガラス部材は、本発明のシリカガラスの選別方法を用いて選別され、現実のArFエキシマレーザー露光機に好適に用いられるシリカガラス部材を提供するものである。
具体的には、ArFレーザーを1パルスあたりのエネルギー密度0.01〜0.1mJ/cm2という低いレベルで長期間照射したときの屈折率変動を許容レベルまで抑えたシリカガラス材を提供するものである。更に具体的には、0.01〜0.1mJ/cm2のエネルギー密度で2×1010パルス照射したときの632.8nmにおける屈折率変動が±100ppb以内に設定されたシリカガラス光学部材を提供するもので、このレベルに抑えられたシリカガラス材を用いることにより、実質的に長期的安定性を有する、優れた半導体露光装置を構成することができる。
上記課題を解決するために、本発明のシリカガラスの選別方法は、シリカガラスに高エネルギー密度のArFエキシマレーザーを照射して生じる屈折率増加量と波長200nm以下の紫外線連続光を照射して生じる屈折率減少量から、該シリカガラスにおける低エネルギー密度のArFエキシマレーザーが照射された場合の屈折率変動量を予測し、低エネルギー密度での長期間照射において屈折率変動量が少ないシリカガラスを選別することを特徴とする。
本発明のシリカガラスの選別方法の第1の態様においては、前記高エネルギー密度のArFエキシマレーザーが1パルスあたり5mJ/cm2以上のエネルギー密度を有し、前記低エネルギー密度のArFエキシマレーザーが1パルスあたり0.01〜0.1mJ/cm 2 のエネルギー密度を有し、かつ、前記紫外線連続光を生じる光源が0.01mW/cm2〜100mW/cm2の照度を有するXe2エキシマランプであることが必須である。
本発明のシリカガラスの選別方法の第1の態様において、1パルスあたりのエネルギー密度が5mJ/cm2以上のArFエキシマレーザー光を照射したときの屈折率増加を下記式(1)で近似した場合、αの値が50以下であり、かつ、照度30mW/cm2のXe2エキシマランプを100時間照射したときの屈折率低下量が3×10−6〜15×10−6であるシリカガラスを良品と判定する。
(但し、式(1)において、dnCompaction:波長632.8nmにおける屈折率の変化分(ppb)、α:比例定数、ε:1パルスあたりのエネルギー密度(J/cm2)、P:照射パルス数、τ:レーザーのパルス幅(ナノ秒)である。)
本発明のシリカガラスの選別方法の第2の態様においては、前記高エネルギー密度のArFエキシマレーザーが1パルスあたり5mJ/cm2以上のエネルギー密度を有し、前記低エネルギー密度のArFエキシマレーザーが1パルスあたり0.01〜0.1mJ/cm 2 のエネルギー密度を有し、かつ、前記紫外線連続光を生じる光源が0.01mW/cm2〜100mW/cm2の照度を有する低圧水銀ランプであることが必須である。
本発明のシリカガラスの選別方法の第2の態様において、1パルスあたりのエネルギー密度が5mJ/cm2以上のArFエキシマレーザー光を照射したときの屈折率増加を下記式(1)で近似した場合、αの値が50以下であり、かつ、照度30mW/cm2の低圧水銀ランプを100時間照射したときの屈折率低下量が2×10−7〜1×10−6であるシリカガラスを良品と判定する。
(但し、式(1)において、dnCompaction:波長632.8nmにおける屈折率の変化分(ppb)、α:比例定数、ε:1パルスあたりのエネルギー密度(J/cm2)、P:照射パルス数、τ:レーザーのパルス幅(ナノ秒)である。)
本光学用シリカガラス部材の第1の態様は、本発明のシリカガラスの選別方法で選別されたシリカガラスを用いて製造された光学用シリカガラス部材であり、1パルスあたりのエネルギー密度が5mJ/cm2以上のArFエキシマレーザー光を照射したときの屈折率増加を下記式(1)で近似した場合、αの値が50以下であり、かつ、照度30mW/cm2のXe2エキシマランプを100時間照射したときの屈折率低下量が3×10−6〜15×10−6であることを特徴とする。
(但し、式(1)において、dnCompaction:波長632.8nmにおける屈折率の変化分(ppb)、α:比例定数、ε:1パルスあたりのエネルギー密度(J/cm2)、P:照射パルス数、τ:レーザーのパルス幅(ナノ秒)である。)
本光学用シリカガラス部材の第2の態様は、本発明のシリカガラスの選別方法で選別されたシリカガラスを用いて製造された光学用シリカガラス部材であり、1パルスあたりのエネルギー密度が5mJ/cm2以上のArFエキシマレーザー光を照射したときの屈折率増加を下記式(1)で近似した場合、αの値が50以下であり、かつ、照度30mW/cm2の低圧水銀ランプを100時間照射したときの屈折率低下量が2×10−7〜1×10−6であることを特徴とする。
(但し、式(1)において、dnCompaction:波長632.8nmにおける屈折率の変化分(ppb)、α:比例定数、ε:1パルスあたりのエネルギー密度(J/cm2)、P:照射パルス数、τ:レーザーのパルス幅(ナノ秒)である。)
本光学用シリカガラス部材において、Si−OH基濃度が10wppm以上400wppm以下、水素分子濃度が1×1016個/cm3以上2×1018個/cm3以下であることが好ましい。
本光学用シリカガラス部材が、193.4nmにおける初期内部透過率が99.7%以上、1パルスあたりのエネルギー密度が2mJ/cm2のArFレーザーを1×104パルス照射した時の照射中の193.4nmにおける内部透過率の低下量が0.7%/cm以下、632.8nmにおける屈折率の最大値と最小値の差Δnが1×10−6以下、632.8nmにおける複屈折が0.3nm/cm以下であることが好適である。
実際の半導体露光装置を長期間、安定に使用するためには、露光機に使用されている光学用シリカガラスのエキシマレーザー耐性が優れていなければならない。しかし、実際の稼動状態でのシリカガラスのダメージ挙動を知るには、稼動時における照射条件、すなわち非常に低いエネルギー密度で長期間照射を続けなくてはいけない。
本発明のシリカガラスの選別方法によると、比較的高いエネルギー密度の照射により加速的に屈折率が増加するダメージを与え、また、独立して紫外線ランプを照射することによって加速度的に屈折率が低下するダメージを与えることによって、長期間の屈折率安定性を予測することが可能になった。すなわち、本発明のシリカガラスの選別方法によると、長期間のArFレーザー照射試験を行うことなく、短時間、低コストで半導体露光装置に好適なレーザー耐性の高いシリカガラス材料を選択することができる。
更に、本発明のシリカガラスの選別方法による加速試験において、コンパクション側への屈折率増加及びレアファクション側への屈折率低下がある一定値以下であるシリカガラスを用いて製造された本発明の光学用シリカガラス部材は、実際の露光機の使用条件で長期間の安定性を有するレーザー耐性の高い材料で、レーザーダメージによる屈折理変動に起因する結像性能が悪化することなく、高精度、かつ、安定な半導体露光装置を構成できる。
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明するが、図示例は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
本発明者らは、各種条件で試作されたシリカガラス部材に、実際の半導体露光装置に実装されたシリカガラス中を通過するArFエキシマレーザー光と同程度のエネルギー密度でArFレーザーを照射し、屈折率変動の挙動を調べることによって、以下の知見を得ることができた。
1)照射するArFレーザーのエネルギー密度が高いとコンパクションによる屈折率増加が優勢に、一方、エネルギー密度が低いとレアファクションによる屈折率低下が優勢となる。
2)ArFレーザーのパルス幅が短いとコンパクションが優勢に、一方、パルス幅が長いとレアファクションが優勢となる。
ArFレーザー照射中の屈折率の変動は、コンパクションが起きる反応とレアファクションが起きる反応が同時に生じている。両者をうまくバランスさせることによって、長期的に安定なシリカガラスを得ることができる。1)のコンパクションは2光子吸収によって生じるため、レーザーのエネルギー密度が高ければ高いほど優勢となり、相対的にレアファクションによる影響は無視できるレベルになる。これまでコンパクションによる屈折率増加については多くの研究がされてきており、その変化量dn[dnCompaction:波長632.8nmにおける屈折率の変化分(ppb)]は下記の一般式(1)で近似することができる。
ここで、αは比例定数、εは1パルスあたりのエネルギー密度(J/cm2)、Pは照射パルス数、τはレーザーのパルス幅(ナノ秒)である。上記式(1)中の指数部分もフィッティングパラメータとして取り扱うことができるが、多くの一般的な光学用シリカガラスの場合、指数部は0.55〜0.7の範囲に設定することができる(非特許文献2参照。)。したがって、指数部を定数として固定することによってフィッティングパラメータはαの1つになり、αの値が個々のシリカガラス材料のコンパクション特性を示すパラメータとして取り扱うことができる。
このように、高エネルギー密度のArFレーザー照射時に生じるコンパクションによる屈折率増加の挙動は定式化されている。実質上、エネルギー密度が1mJ/cm2以上であれば、コンパクションが優勢でレアファクションの影響はほとんど無視できるため、屈折率変化は上記式(1)に示したコンパクションによる屈折率の変動のみで近似できる。
しかし、照射エネルギー密度が0.1mJ/cm2程度の低い領域になると、上記のコンパクションによる屈折率増加だけではなく、レアファクションによる屈折率低下の影響も無視できなくなる。レアファクションによる屈折率変動についてはまだ共通認識された式は定まっていないが、本発明者らはレーザー照射による実験データの近似から下記の式(2)を導き出した。
ここで、dnRarefactionは波長632.8nmにおける屈折率の変化分(ppb)、βは比例定数、εは1パルスあたりのエネルギー密度(J/cm2)、Pは照射パルス数、COHはSi−OH基の濃度(wppm)である。(2)式には(1)式中に入っているτ(パルス幅)のパラメータが入っていない。すなわち、レアファクションによる屈折率低下はパルス幅に依存しない。
前述したように、低エネルギー密度のArFレーザー照射による屈折率変化は、コンパクションによる+方向の屈折率変化とレアファクションによる−方向の屈折率変化の競合によって決定されるが、パルス幅が影響を与えるのはコンパクションによる+方向の変化のみである。したがって、パルス幅が短いとコンパクションが大きくなり屈折率の+方向への変化が優勢に、また、パルス幅が短いとコンパクションが小さくなるため、相対的に屈折率は−方向の変化が優勢となる。
いずれにしても、(2)式にしたがってレアファクションが生じるのは、ArFレーザーが低エネルギー密度で照射された時であり、レアファクションダメージが顕在化する。すなわち、現実の露光機の操業条件ではこのダメージが無視できなくなるため、その挙動の定量的把握が求められるが、実際にArFレーザーを照射してシリカガラス材料の屈折率変化を正確に測定するためには膨大なパルス数の実験が必要となる。
そこで、本発明者らは、上記レアファクションによる屈折率変化のみを、選択的、かつ、加速的に生じさせることができれば、実際のレーザー照射による屈折率変動を簡単に予測できるのではないかと考えた。すなわち、レーザー照射による屈折率変動は、コンパクションによる屈折率増加方向への変化と、レアファクションによる屈折率低下方向への変化の競争になっているため、それぞれの方向への変化を独立に求めることができれば、予測に適用できると考えた。
コンパクションによる変化量は、従来からのArFレーザー照射による加速試験で求めることが可能である。一方、レアファクションによる屈折率低下を選択的に起こさせる方法は、本発明者らが鋭意研究した結果、波長200nm以下の紫外線連続光を照射することによって、ArFレーザーを低エネルギー密度で長期間照射したときと同様にレアファクションを引き起こすことができることを見出した。更に紫外線照射による屈折率の低下はかなり短時間で変化が起こるため、ArFレーザー照射を用いた場合と比較して、非常に短時間でレアファクションによる屈折率低下量を測定することが可能になった。
レアファクションを生じさせる紫外線ランプとして、低圧水銀ランプやXe2エキシマランプがある。Xe2エキシマランプは172nmに単独の発光線を有している。一方、一般的な低圧水銀ランプでは紫外線領域に254nm及び185nmに発光線を有している。低圧水銀ランプでは185nmと254nmの発光強度比は1:100程度で、185nmの強度が小さい。しかしレアファクションを引き起こす発光線は185nmである。レアファクションを生じさせるには低圧水銀ランプ、Xe2エキシマランプのいずれを用いてもかまわないが、一般的にXe2エキシマランプの出力が高いこと、また、波長が172nmと短いため、より効果的である。
以下、半導体製造用露光装置に好適に用いられるシリカガラス部材を選別する方法を、照射実験条件などを含めて具体的に説明する。
まずコンパクションによる屈折率増加について、1パルスあたりのエネルギー密度5mJ/cm2以上のArFエキシマレーザーを照射して測定する。レアファクションによる屈折率低下の影響を十分低くするためには、従来の加速試験と同様、エネルギー密度を高く設定すればよい。実質的には0.5mJ/cm2以上のエネルギー密度に設定しておけば、レアファクションに起因する屈折率変動は無視できるが、できるだけ短時間で優劣の判定を行うためには、ある程度以上のエネルギー密度を設定することが好ましく、5mJ/cm2以上が妥当である。また、屈折率増加量が大きいほうが測定誤差も少なく、できるだけ高いエネルギー密度を設定したほうが好ましく、実際には50mJ/cm2程度のエネルギー密度が選択される。
図1は製造方法を変えた2種類のシリカガラス(サンプル1及び2)に、エネルギー密度50mJ/cm2、レーザーのパルス幅20ナノ秒のArFエキシマレーザーを照射した時の屈折率増加量を照射パルス数に対してプロットしたものである。それぞれコンパクションによる屈折率増加が認められているが、サンプルによってその増加する強度が異なっており、シリカガラスの製造方法によって、コンパクション耐性が異なっていることがわかる。
各サンプルの屈折率変化は前記式(1)で近似することができる。近似式で用いられている各種パラメータの単位は、エネルギー密度(J/cm2)、屈折率変動量(ppb)、パルス幅(ナノ秒)となっており、サンプル1、2共に式(1)で再現されている。αの値は、サンプル1は45、サンプル2は80を用いた。
コンパクションによる屈折率増加は少ないほうが良いが、実際に半導体露光装置用のシリカガラスとして好適に用いるためには、より低エネルギー密度の照射時にコンパクションとレアファクションとのバランスで屈折率変動が決定されるため、加速試験におけるコンパクションが多少認められても問題はない。しかしあまりにコンパクションが大きいと、レアファクションによる屈折率低下量との相殺ができなくなる。実質的には、半導体露光装置に好適に用いるためには、αの値が50以下であることが好ましい。αの値が50とは、パルス幅が20ナノ秒、パルスあたり50mJ/cm2のエネルギー密度のArFレーザーを1×106パルス照射したとき、屈折率が約900ppb(即ち、0.9×10-6)増加することを意味している。
次いでレアファクションによる屈折率低下量を測定するために、Xe2エキシマランプを照射し、屈折率低下量を測定する。ArFエキシマレーザーによる加速試験と同様、サンプルの一部分のみ選択的に照射し、干渉計で透過波面の変化を測定し、屈折率低下量を算出する。サンプルの一部に照射するためには、サンプル直前に孔の開いたマスクを設け、孔を通過した光のみサンプルに照射されるようにしておけばよい。
図1に示されたサンプル1及び2を照度30mW/cm2のXe2エキシマランプを100時間照射したときの屈折率低下量を調べたところ、サンプル1の照射部位で約9×10―6、サンプル2で約2.4×10-5の低下が認められた。このようにXe2エキシマランプの照射によって引き起こされる屈折率低下もサンプルによって大きく異なっている。
Xe2エキシマランプ照射による屈折率の低下量は3×10-6〜15×10-6程度であることが好ましい。というのは、実際の露光装置と同様の照射条件の場合、コンパクションによる屈折率増加が顕著に現れ、一方、1.5×10-5を超える場合、レアファクションによる屈折率低下が顕著に表れるからである。
Xe2エキシマランプ照射によって引き起こされる屈折率低下は、シリカガラス中に存在する水素分子濃度やSi−OH基濃度などにより変化する。Si−OH基濃度は10wppm以上400wppm以下、水素分子濃度が1×1016個/cm3以上2×1018個/cm3以下であることが好ましい。Si−OH基濃度が10wppm未満であると、Xe2エキシマランプによる屈折率低下がほとんど生じないため、結果的にコンパクションによる屈折率増加が優勢となり、屈折率は増加する。逆に400wppmを超えるとレアファクションによる屈折率低下が優勢となり、屈折率が低下するため好ましくない。また、水素分子が1×1016個/cm3未満では屈折率増加が優勢に、2×1018個/cm3を超えると屈折率低下が優勢になる。
ランプによるレアファクション加速試験は低圧水銀ランプを用いてもよい。この場合、照度30mW/cm2の低圧水銀ランプを100時間照射したときに生じる屈折率低下を0.2×10-6〜1×10-6の範囲で設定することで、最終的な露光装置に組み込んだ場合、コンパクションとレアファクションがうまく相殺されたシリカガラス部材を選別することができる。屈折率の低下量はXe2エキシマランプと比較してかなり小さいため、屈折率変化量の測定は多少難しくなるため、どちらかといえば、Xe2エキシマランプを用いることが好ましい。なお、ここでいう低圧水銀ランプの照射エネルギーは市販の254nm用照度計で測定した値を指している。
以上、Xe2エキシマランプや低圧水銀ランプ照射による屈折率低下量を適当な量に設定することで、コンパクションによる屈折率増加とレアファクションによる屈折率低下がうまく相殺され、低エネルギー密度でのArFレーザー照射時の屈折率変化の挙動を予測することができ、実際の半導体露光装置に好適なシリカガラス材料を選別することが可能になる。
実際に、前記した2つのサンプル1、2について、実際の半導体露光装置の使用条件と同程度の低エネルギー密度で長期間ArFレーザーを照射したところ、サンプル1では顕著な屈折率変化は認められなかったものの、サンプル2ではレアファクションによる顕著な屈折率低下が認められた。なお、低エネルギー密度照射実験の条件は、エネルギー密度0.1mJ/cm2程度で、照射数は2×1010パルス以上であり、したがって、この実証実験を完了するまで数ヶ月を要した。
このように、実際の半導体露光装置の使用条件に合致させるべく低エネルギー密度のArFレーザーを用いた評価では、膨大な経費と長い時間を要するが、本発明による高エネルギー密度のArFレーザー光照射を適用したコンパクションの加速試験と紫外線ランプを用いたレアファクションの加速試験を組み合わせることにより、非常に短期間、かつ、低コストで、半導体露光装置に好適に使用されるシリカガラスを判別することが可能となった。
また、本発明の選別方法によって、屈折率増加量と屈折率低下量がある一定値以下の材料は、ArFエキシマレーザー半導体露光装置の光学材料に使用した時、長期間にわたり屈折率が安定し、結像性能を維持できるものである。
なお、コンパクション及びレアファクションによる屈折率変化は、初期透過率やArFレーザー照射時に誘起される吸収による透過率低下等に影響されるため、前記式(1)及び(2)は一定の透過性を維持している場合にのみ成り立つ。ちなみに、193.4nmにおける初期透過率は、シリカガラス中の金属不純物や構造欠陥の量に依存する。また、ArFレーザー照射時の透過率の低下は、E’センターと呼ばれる波長215nm近辺に中心を持つ吸収生成が原因で、特にシリカガラス中に還元性の欠陥が存在する場合、ArFレーザー照射によって誘起される吸収帯である。
初期透過率が低い場合やレーザー誘起吸収が大きい場合は、より大きなレーザーのエネルギーがシリカガラス中に吸収されるため、大きなダメージが生じる。従来から初期透過率やレーザー誘起吸収は半導体露光装置のスループットに影響を及ぼすことが指摘されていたが、本発明の照射実験で、新たにコンパクション及びレアファクションによる屈折率変化にも甚大な影響を及ぼすことが確認された。
本発明者らの実験結果によると、具体的には、193.4nmにおける初期内部透過率が99.7%以上、かつ、1パルスあたりのエネルギー密度が2mJ/cm2のArFレーザーを1×104パルス照射した時の照射中の193.4nmにおける内部透過率の低下量が0.7%/cm以下であるシリカガラス体で前記式(1)及び(2)のモデル式が良く成り立っている。
また、半導体露光装置に使用されるシリカガラスは、高い均質性と低い複屈折率も満足していなければいけない。具体的には、632.8nmにおける屈折率の最大値と最小値の差Δnが1×10-6以下、632.8nmにおける複屈折が0.3nm/cm以下といった光学特性を兼ね備え、かつ、前記の初期透過率及び誘起吸収特性を兼ね備えたシリカガラスにおいて、本発明の選別方法によって選別されたシリカガラスは、ArFレーザーを用いた半導体露光装置用のレンズ等の光学材料に非常に好適に用いられるものである。
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
以下、本発明の方法で選別されたシリカガラスの製造方法と評価結果について、詳細な具体例を挙げ説明する。なお、本発明で用いる測定値は下記の測定法による。
i)ArFレーザー照射によるコンパクション加速試験
両面を光学研磨した直径30mm、厚さ20mmのサンプルの中心部に、パルス幅が20ナノ秒、パルスあたりのエネルギー密度が50mJ/cm2のArFエキシマレーザー円形ビームを照射し、一定照射数毎に632.8nmにおける屈折率変化を測定する。なお、屈折率変化の測定はフィゾー型干渉計(Zygo Mark IV)で、透過波面を測定し算出する。最終的には1×107パルスまで照射し、屈折率増加量を前記式(1)により近似する。
図2にコンパクションによって透過波面が遅れたサンプルの波面形状を3Dマップにして表現したものを一例として示す。図2で中央部分の凸形状に盛り上がっている部分がレーザーを照射された部分で、コンパクションによって透過波面が遅れる方向に変化している。
透過波面の変化量の算出は図3のようなマスクを用い、点線16で示されたレーザー照射スポットの内部にある照射部計算エリア14の平均値から、レーザー照射スポットの外側にある未照射部計算エリア12の平均値を差し引いて求める。計算された透過波面の変化量から632.8nmにおける屈折率の変化量を算出する。
ii)脈理;
直交ニコルの偏光板にて目視観察。
iii)屈折率均質性;
He−Neレーザー波長(632.8nm)での屈折率差の測定による評価。フィゾー型干渉計(Zygo Mark IV)にてレーザー照射前のガラス体を測定。
iv)水素分子濃度の測定;
レーザーラマン散乱分光法による測定(非特許文献1参照。)。この方法は、SiO2に関する波数800cm-1のラマンバンドの強度と合成シリカガラス中に含有される水素分子に関する4135cm-1の強度との比により、合成シリカガラス中の水素分子濃度を求めるものであり、水素分子濃度Cは、次の式(3)により算出される。
(数7)
C=k×I(4135)/I(800) ・・・(3)
(式(3)中、I(4135)は、4135cm-1のラマンバンドの面積強度である。I(800)は、800cm-1のラマンバンドの面積強度である。kは、定数で、1.22×1021である。)
この式(3)により算出される水素分子濃度は、1cm3の容積当たりの水素分子の個数で示される。本実施例において、ラマン散乱法による水素分子濃度の測定に使用した測定機器は、日本分光株式会社製のラマン散乱分光器NR−1100ダブルモノクロタイプであり、検出器は浜松フォトニクス株式会社製の光電子増倍管R943−02であり、測定に使用したレーザー光はArイオンレーザー(488nm)である。
v)複屈折;
HINDS Exicor350AT複屈折自動測定装置による測定
vi)193.4nmでの初期透過率;
Varian Cary4E可視・紫外分光光度計による測定。厚さ10mmで両面研磨した試料で測定。193.4nmにおけるシリカガラスの理論透過率90.86%(表面の多重反射によるロスを100%から差し引いた値)を用い、厚さ10mmにおける見掛け透過率T%に対し、(T/90.86)×100より求める。
vii)Si−OH基濃度の測定
赤外線吸収スペクトル分光光度計(日本分光製IR−700型)にて波長2.7ミクロンのO−H伸縮振動バンドの強度から算出。
(実施例1)
四塩化珪素を蒸留処理して不純物を除去した後、これを原料として、CVD法で外径300mm,長さ1200mmの円柱状の多孔質シリカガラス母材を作製した。該多孔質シリカガラス母材を、カーボンヒーター仕様の真空炉に入れ、2.5Paの真空度の条件にて1853Kまで加熱し、透明ガラス化を行った。得られた透明ガラス体は、外径180mm、長さ800mmの円柱状の透明ガラス体であった。
得られた透明ガラス体の両端をシリカガラス加工旋盤のチャックに把持されたシリカガラス製の支持棒に溶接し、合成シリカガラスインゴットを回転させた。回転しているインゴットをバーナーで局部加熱して溶融帯域を形成しつつ、ゆっくりと延伸することで、直径120mmのガラス体に成型した。その後、連続して、再度バーナーにより局部的に過熱し溶融帯域を形成しつつ、チャックの回転方向及び回転数を独立に変動させ、溶融帯域に応力を発生させ、インゴットの脈理除去及び均質化を図った。
その後、シリカガラス加工用旋盤のチャック間を狭め、合成ガラスインゴットを押圧しボール状の合成シリカガラスに変形し、ボール状合成シリカガラスを切り離し、切り離し面を上下にして合成シリカガラスインゴットを支持台の支持棒に取り付け回転しながらバーナーで加熱軟化させ、再度均質化して棒状合成シリカガラスインゴットを製造した。得られたインゴットには3方向で脈理や層状構造は認められなかった。
前記合成シリカガラスインゴットを所望の形状に成型するために、Naの灰分20wtppm以下のグラファイトルツボ中にインゴットを入れ、ルツボ内を窒素雰囲気で置換したのち炉内温度を2173Kに保温し、10分間保持し成型した。得られたシリカガラス部材の寸法は、外径400mm、厚さ100mmであった。成型工程はシリカガラス部材の表面が直接グラファイトツルボに接していることから、特に表面近傍で金属不純物による汚染が懸念されたため、次の熱処理工程の前に、上下及び外周部分の全ての面から10mm研削して表面を除去し、直径380mm、厚さ80mmのシリカガラス部材に加工した。
その後、このシリカガラス部材を純度99%以上のアルミナを炉材とする電気炉内に設置し、1423Kで50時間保持したのち、0.2K/時間の冷却速度で1210Kまで徐冷し、ついで自然冷却して、除歪操作を行った。
得られたシリカガラス部材に水素分子を含有させるために、上下面を12.5mmずつ研削し、直径380mm、厚さ55mmのシリカガラス体に加工した。このシリカガラス体を圧力0.15MPaの100容量%水素ガス雰囲気中、温度673Kで、1500時間静置し、水素分子を含有させた。このままでは水素分子はシリカガラスの表面近傍に高濃度に存在しているため、水素含有処理後、雰囲気を窒素に置換し、温度673Kで400時間静置し、表面近傍の水素分子を脱ガスすることにより、シリカガラス中の水素分子濃度分布を平坦化した。
このシリカガラス体の中心部の水素分子濃度をラマンスペクトル測定装置によって測定したところ、約5×1017(分子/cm3)であった。また、不純物分析の結果、Na、Li、K、Fe、Cu、Al、Tiなどの金属不純物濃度は全て5ppb以下であった。また、金属不純物以外の元素として塩素濃度を分析したが、5wppm以下であった。
金属不純物分析を行った部分の近傍より、直径60mm、厚さ10mmの試験片を切り出し、両面(対面)に光学研磨を施し、可視紫外分光光度計にて波長193.4nmの内部透過率を測定したところ、99.75%であり、良好な初期透過率を示した。更に、1パルスあたりのエネルギー密度が2mJ/cm2のArFレーザーを1×104パルス照射した時の193.4nmにおける内部透過率の低下量が0.2%以下と照射初期に誘起される吸収は少なく、良好な照射初期耐性を示した。更にこの合成シリカガラス部材のSi−OH基濃度を測定したところ、約300wtppmであった。
また、屈折率均質性及び複屈折を調べたところ、光学軸と直交する面内の直径280mm以上の領域で632.8nmにおける屈折率の最大値と最小値の差(Δn)が1.0×10-6であり、複屈折は0.3nm/cm以下であった。
本シリカガラス体からレーザー耐性評価用の試験片を切り出し、両面を研磨した直径30mm、厚さ20mmの円盤状に加工し、両面を鏡面に研磨した。
上記測定法に従い、ArFレーザー照射によるコンパクション加速試験を行った。1パルスあたりのエネルギー密度が50mJ/cm2、パルス幅が20ナノ秒のArFエキシマレーザー光を前記得られた円盤状試験片の研磨面中心部に4mmのスポット径で1×107ショットまで照射した。照射中、2×106パルス毎に試験片を取り出し、フィゾー型干渉計(Zygo Mark IV)にて632.8nmにおける長手方向の透過波面を測定し、屈折率の変化量を測定した。図4は照射パルス数と屈折率増加量をプロットしたもので、前記式(1)で近似した場合、αは45であった。
次に、Xe2エキシマランプによるレアファクション加速試験を行った。他の試験片にて照度30mW/cm2のXe2エキシマランプ光を直径4mmのビーム径で100時間照射したところ、照射部分で約1×10-5の屈折率の低下が認められた。
一方、実際の露光装置の場合と同程度のエネルギー密度でArFレーザーを照射したときの屈折率変化を調べた。50×25×100mmの四角柱状の全面に光学研磨を施したサンプルに、パルス幅20ナノ秒及び50ナノ秒、周波数2KHzのArFエキシマレーザーを試験片の長手方向に照射した。なお、エネルギー密度は0.1mJ/cm2p及び0.05mJ/cm2pで2×1010パルスまで照射し、照射パルス数と屈折率変化量をプロットして図5に示した。
図5に示されるように、レーザーのパルス幅が20ナノ秒及び50ナノ秒のいずれの照射条件においても、2×1010パルスまで照射した時の屈折率の変化が±100ppb以内の範囲に収まっている。エネルギー密度が0.1mJ/cm2p以下の範囲でコンパクション、レアファクションによる大きな屈折率変化は認められず、広い範囲の照射条件で長期的に屈折率が安定していることが理解される。
上記したごとく、実施例1により得られたシリカガラス体は、実際の半導体露光装置で使用される照射条件に近い、低エネルギー密度で長期間の照射に対しても安定しており、コンパクション、レアファクションといったレーザーダメージに対して優れた耐性を備え持ち、かつ、高均質、低複屈折という光学ガラスに必要な特性をも兼ね備え、更に紫外線領域の初期透過率もきわめて良好であることから、半導体製造用のエキシマレーザー露光装置のレンズ材に好適に用いることのできる大型のシリカガラス部材である。
また、本発明のシリカガラスの選別方法によれば、長期間のレーザー照射をすることなく、長期間安定した特性をもつガラス部材を、簡単なArFレーザー照射によるコンパクション加速試験とXe2エキシマランプによるレアファクション加速試験により選別することが可能であることが確認された。
(実施例2)
高純度テトラメトキシシランを原料として、実施例1と同様の方法で、外径300mm,長さ1200mmの円柱状の多孔質シリカガラス母材を作製した。該多孔質シリカガラス母材を温度1223Kにて窒素雰囲気中で10時間熱処理を施した。その後の処理は実施例1とまったく同様に行い、透明ガラス体を得た。
水素含有処理も実施例1と同じ条件で施し、水素分子濃度は5×1017であった。また、不純物分析の結果、Na、Li、K、Fe、Cu、Al、Tiなどの金属不純物濃度は全て5ppb以下、塩素も5wppm以下であった。また、波長193.4nmの内部透過率を測定したところ、99.75%であり、良好な初期透過率を示した。更に、1パルスあたりのエネルギー密度が2mJ/cm2のArFレーザーを1×104パルス照射した時の193.4nmにおける内部透過率の低下量が0.2%以下と照射初期に誘起される吸収は少なく、良好な照射初期耐性を示した。Si−OH基濃度は150wppmであった。また、屈折率均質性及び複屈折を調べたところ、光学軸と直交する面内の直径280mm以上の領域で632.8nmにおける屈折率の最大値と最小値の差(Δn)が0.8×10-6であり、複屈折は0.2nm/cm以下であった。
実施例1と同様の条件でArFレーザーによるコンパクション加速試験を行った結果を図6に示した。前記式(1)で近似した場合、αの値は約40であった。実施例1と同様の条件で、別の試験片にてレアファクション加速試験を行った。照度30mW/cm2のXe2エキシマランプを100時間照射したときの632.8nmにおける屈折率の低下量は約5×10-6であった。
実施例1と同様に、低エネルギー密度のArFレーザーを照射し、屈折率変化を測定し、その結果を図7に示す。実施例1の場合と比較して、若干屈折率の増加が認められるが、2×1010ショット照射後でもその変化量は±100ppb以内であり、実質上問題のないレベルに収まっている。実施例2のシリカガラス部材も、ArFエキシマレーザーを用いた半導体露光装置の光学材料に好適に用いることができるものである。
(比較例1)
テトラメトキシシランを蒸留処理して不純物を除去した後、これを原料として、直接火炎加水分解法にて、外径180mm、長さ800mmの円柱状の透明ガラスを得た。直接火炎加水分解法とは、珪素化合物を酸素・水素火炎中に導入し、生じたシリカ微粒子を耐熱性ターゲット上に堆積、と同時に、バーナーからの酸素・水素火炎によって高温に保持された表面上に溶融され、直接透明な合成シリカガラス体を得る方法である。実施例1の場合は、一旦、シリカ微粒子を堆積させて多孔質な母材を得たのち、電気炉にて再溶融し、透明ガラス体を得るものなので、若干製造方法が異なるものである。直接火炎加水分解法によって得られた該透明ガラスインゴットは、合成時に酸素・水素火炎中の水素分子が溶け込むため、約3×1018(分子/cm3)の水素分子を含有していた。
このシリカガラスインゴットを実施例1の場合と同様に、旋盤による脈理及び層状構造の除去、グラファイトるつぼ内での成型、除歪のための熱処理アニールを施した。このシリカガラス体の中心部の水素分子濃度をラマンスペクトル測定装置によって測定したところ、約3×1017(分子/cm3)であった。これは、直接火炎加水分解法で合成されたインゴット中に多量の水素分子が含有されていたため、アニールによってかなりの水素分子が脱ガスされたものの、まだ十分な量の水素分子が残留しているからである。
また、不純物分析の結果、Na、Li、K、Fe、Cu、Al、Tiなどの金属不純物濃度は全て5ppb以下、塩素は5wppm以下であった。また、波長193.4nmの内部透過率を測定したところ、99.75%であり、良好な初期透過率を示した。更に、1パルスあたりのエネルギー密度が2mJ/cm2のArFレーザーを1×104パルス照射した時の193.4nmにおける内部透過率の低下量が0.3%以下と実施例1及び2の場合と比較して若干大きいものの、実質的には問題のないレベルで、良好な照射初期耐性を示した。Si−OH基濃度は1000wppmであった。また、屈折率均質性及び複屈折を調べたところ、光学軸と直交する面内の直径280mm以上の領域で632.8nmにおける屈折率の最大値と最小値の差(Δn)が1.5×10-6であり、複屈折は0.5nm/cm以下であった。
実施例1と同様の条件でArFレーザーによるコンパクション加速試験を行った結果を図8に示した。前記式(1)で近似した場合、αの値は約80であり、実施例1、2と比較して大きなコンパクションが観測された。実施例1と同様の条件で、別の試験片にてレアファクション加速試験を行った。照度30mW/cm2のXe2エキシマランプを100時間照射したときの632.8nmにおける屈折率の低下量は約2.5×10-5と、実施例1、2と比較してかなり大きな変化を示した。
実施例1と同様に、低エネルギー密度のArFレーザーを照射し、屈折率変化を測定し、その結果を図9に示す。いずれの照射条件においても屈折率は減少する方向に変化している。特にパルス幅が50ナノ秒の条件での照射部分の屈折率低下量が大きいことがわかる。また、2×1010ショット照射後には実に屈折率が−300ppb以上低下している部位もあり、強いレアファクションが生じていることがわかる。
比較例1のシリカガラスは、照射前の均質性や複屈折、内部透過率などの特性が半導体用露光装置の結像特性を満足するに足る特性を備えていたとしても、長期間の使用により強いレアファクションによるダメージが進行するため、結果的に結像特性が悪化し深刻な問題を引き起こすことが懸念されるため、露光装置の光学材料としては不適当なものである。
また、本発明の選別方法においても、高エネルギー密度のArFエキシマレーザー及びXe2エキシマランプによる短時間の照射試験に対しても大きな屈折率変動を示しており、この結果からも容易に実装された場合のシリカガラスの優劣判定を簡単に、かつ、短時間で行えることが確認された。
(比較例2)
四塩化珪素を蒸留処理して不純物を除去した後、これを原料として、実施例1の場合と同様の方法で外径180mm、長さ800mmの円柱状の透明シリカガラスを得た。この透明シリカガラスインゴットを実施例1の場合と同様に、旋盤による脈理及び層状構造の除去を施した。ここまでは実施例1とまったく同様の手順でシリカガラス体を作成したが、所望の形状に成型する工程及びその後の除歪のための熱処理では、特に金属不純物による汚染対策を講じない方法で行った。
すなわち、通常高純度を維持するためには、熱処理時のグラファイト部材には金属不純物が少ない材料を選択するが、本比較例では特にその点に留意することなく、市販の通常純度と呼ばれている、具体的にはNaの灰分20wppm以上のグラファイト材料を用いて熱成型処理を行った。また、実施例1の場合、その後の除歪熱処理を施す前に成型工程時にグラファイトが接触した汚染部分を全て研削していたが、本比較例ではグラファイトが接触したことによる汚染部分を取り除くことなく長時間の熱除歪処理を施した。
このように、熱処理工程中の金属元素汚染に対する対策を講じなかったため、最終処理を終えたシリカガラス体の金属不純物分析を行ったところ、Naが約40ppb検出された。そのため、紫外線領域での透過性も悪化しており、波長193.4nmの内部透過率を測定したところ、99.60%であった。水素濃度は約5×1017(分子/cm3)、Si−OH基濃度は300wppmであった。また、屈折率均質性及び複屈折を調べたところ、光学軸と直交する面内の直径280mm以上の領域で632.8nmにおける屈折率の最大値と最小値の差(Δn)が1.5×10-6であり、複屈折は0.5nm/cm以下であった。
実施例1と同様の条件でArFレーザーによるコンパクション加速試験を行った結果を図10に示した。前記式(1)で近似した場合、αの値は約55であった。実施例1と同様の条件で、別の試験片にてレアファクション加速試験を行った。照度30mW/cm2のXe2エキシマランプを100時間照射したときの632.8nmにおける屈折率の低下量は約8×10-6であった。
実施例1と同様に、低エネルギー密度のArFレーザーを照射し、屈折率変化を測定し、その結果を図11に示す。特に、パルス幅20ナノ秒、エネルギー密度0.1mJ/cm2で照射した部位は非常に強いコンパクションによる屈折率増加が観測された。2×1010ショット照射後では既に+300ppb程度の屈折率上昇が認められている。初期透過率が悪い場合、コンパクションによる屈折率上昇が大きくなることが判明した。このような場合、半導体露光装置がレンズ上に光束が絞られるような条件で使用された場合にはコンパクションダメージが無視できないものとなり、結像性能の低下が懸念される。また、初期透過率が悪いため、レーザーのエネルギーが吸収され、レンズ材料自体が発熱し屈折率を変動させることも懸念されるため、露光装置の光学部材としては不適当なものといえる。
(比較例3)
水素分子を含有する工程の処理条件を変更した以外は、実施例1とまったく同様の方法でシリカガラス材料を作成した。なお、水素を含有させる条件を下記に示した。圧力0.15MPaの100容量%水素ガス雰囲気中、温度873Kで、350時間静置した後、水素分子濃度を平坦化するために、温度873Kの100%窒素雰囲気中に100時間静置した。
このシリカガラス体の中心部の水素分子濃度をラマンスペクトル測定装置によって測定したところ、約4×1017(分子/cm3)であった。また、不純物分析の結果、Na、Li、K、Fe、Cu、Al、Tiなどの金属不純物濃度は全て5ppb以下、塩素も5wppm以下であった。また、波長193.4nmの内部透過率を測定したところ、99.70%であり、実施例1と比較して若干透過性は低下したものの、実質上問題ないレベルの良好な初期透過率を示した。更に、1パルスあたりのエネルギー密度が2mJ/cm2のArFレーザーを1×104パルス照射した時の193.4nmにおける内部透過率の低下量が1.1%となり、実施例1の場合と比較して、かなり大きな誘起吸収が観測された。これは、高温度の水素処理によってE’センターのプリカーサである還元性欠陥が生成したことによるものである。Si−OH基濃度は300wppmであった。また、屈折率均質性及び複屈折を調べたところ、光学軸と直交する面内の直径280mm以上の領域で632.8nmにおける屈折率の最大値と最小値の差(Δn)が0.8×10-6であり、複屈折は0.4nm/cm以下であった。
実施例1と同様の条件でArFレーザーによるコンパクション加速試験を行った結果を図12に示した。前記式(1)で近似した場合、αの値は約55であった。実施例1と同様の条件で、別の試験片にてレアファクション加速試験を行った。照度30mW/cm2のXe2エキシマランプを100時間照射したときの632.8nmにおける屈折率の低下量は約8×10-6であった。
実施例1と同様に、低エネルギー密度のArFレーザーを照射し、屈折率変化を測定し、その結果を図13に示す。比較例2と同様に、パルス幅20ナノ秒、エネルギー密度0.1mJ/cm2で照射した部位に非常に強いコンパクションによる屈折率増加が観測された。2×1010ショット照射後では既に+300ppb程度の屈折率上昇が認められている。レーザー照射による初期の誘起吸収が大きいシリカガラスでは、コンパクションによる屈折率上昇が大きくなることが判明した。このような場合、半導体露光装置がレンズ上に光束が絞られるような条件で使用された場合にはコンパクションダメージが無視できないものとなり、結像性能の低下が懸念される。また、レーザーエネルギーの吸収により、レンズ材料自体が発熱し屈折率を変動させることも懸念されるため、露光装置の光学部材としては不適当なものである。
(比較例4)
シリカガラスを合成する際、原料に蒸留した四塩化珪素を用いたこと以外、比較例1と同様の手順でシリカガラス体を合成した。得られたシリカガラス体を比較例1の場合と同様に旋盤による脈理及び層状構造の除去を施した。その後、比較例2の場合と同様、不純物汚染に対しする対策を講じることなく、グラファイトるつぼ内での成型、除歪のための熱処理アニールを施し、比較例1の場合と同サイズのシリカガラス体を得た。得られたシリカガラス体の水素分子濃度は、シリカガラス体中心部で約3×1017(分子/cm3)であった。
また、不純物分析の結果、Naが約40ppb検出された。また、塩素を約70wppm含有していた。波長193.4nmの内部透過率を測定したところ、99.60%とかなり低い値であった。更に、1パルスあたりのエネルギー密度が2mJ/cm2のArFレーザーを1×104パルス照射した時の193.4nmにおける内部透過率の低下量が1.1%であった。これは、直接火炎加水分解法によるシリカガラスインゴット成長中に還元性雰囲気中で生成した還元性欠陥に起因する誘起吸収によるものと思われる。なお、Si−OH基濃度は700wppmであった。また、屈折率均質性及び複屈折を調べたところ、光学軸と直交する面内の直径280mm以上の領域で632.8nmにおける屈折率の最大値と最小値の差(Δn)が1.5×10-6であり、複屈折は0.5nm/cm以下であった。
実施例1と同様の条件でArFレーザーによるコンパクション加速試験を行った結果を図14に示した。前記式(1)で近似した場合、αの値は約85であった。実施例1と同様の条件で、別の試験片にてレアファクション加速試験を行った。照度30mW/cm2のXe2エキシマランプを100時間照射したときの632.8nmにおける屈折率の低下量は約2.2×10-5であった。
実施例1と同様に、低エネルギー密度のArFレーザーを照射し、屈折率変化を測定し、その結果を図15に示す。パルス幅20ナノ秒、エネルギー密度0.1mJ/cm2で照射した部位は強いコンパクションによる屈折率上昇が観測された。一方、パルス幅50ナノ秒、エネルギー密度0.1mJ/cm2で照射した部位は強いレアファクションによる屈折率低下が観測された。2×1010ショット照射中にその変化量は、コンパクション側では+200ppb程度、レアファクション側では−300ppb程度の屈折率変動が認められ、実際の露光装置の条件で使用された場合、非常に大きな屈折率変動が懸念されることがわかった。このようなシリカガラスが半導体露光装置に組み込まれた場合、長期的な屈折率安定性が保証できないため、結像性能の低下が強く懸念され、光学部材としてはまったく不適当なものであることがわかった。
ArFレーザー照射によるコンパクション加速試験の結果一例を示すグラフである。
コンパクション生成により透過波面が変化した図を示す。
透過波面の変化量を定量するための手法を示す概略説明図である。
実施例1のArFレーザー照射加速試験の結果を示すグラフである。
実施例1の低エネルギー密度によるArFレーザー照射試験の結果を示すグラフである。
実施例2のArFレーザー照射加速試験の結果を示すグラフである。
実施例2の低エネルギー密度によるArFレーザー照射試験の結果を示すグラフである。
比較例1のArFレーザー照射加速試験の結果を示すグラフである。
比較例1の低エネルギー密度によるArFレーザー照射試験の結果を示すグラフである。
比較例2のArFレーザー照射加速試験の結果を示すグラフである。
比較例2の低エネルギー密度によるArFレーザー照射試験の結果を示すグラフである。
比較例3のArFレーザー照射加速試験の結果を示すグラフである。
比較例3の低エネルギー密度によるArFレーザー照射試験の結果を示すグラフである。
比較例4のArFレーザー照射加速試験の結果を示すグラフである。
比較例4の低エネルギー密度によるArFレーザー照射試験の結果を示すグラフである。
符号の説明
10 サンプル
12 未照射部計算エリア
14 照射部計算エリア
16 レーザー照射スポット