JP4173241B2 - プリント配線板層間接続バンプ用硬化性導電ペースト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は硬化性導電ペーストに関し、特に基材との接着力、耐熱性や硬度が要求される電子回路成形用に使用する、プリント配線板層間接続バンプ用硬化性導電ペーストに関する。
【0002】
【従来の技術】
硬化性導電ペーストは、エレクトロニクス分野において、IC回路用、導電性接着剤、電磁波シール等、多くの用途に使用されている。特に最近では、少なくとも一方の面の所定位置に導電ペーストで作った円錐状導電バンプが設けられた第一の基板と、少なくとも一方の面に配線パターンが設けられた第二の基板とを、前記導電バンプが設けられた面および前記配線パターンが設けられた面を内側にして対向させ、前記第一の基板と前記第二の基板との間に絶縁体層を配置して積層体を構成し、該積層体を積層プレスすることにより絶縁体層の厚さ方向に前記バンプを貫通させて、導電配線部を形成するプリント配線板の製造方法が提案されている。
【0003】
上記の導電バンプの形成には、例えばメラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等のバインダー成分と、例えば銀、金、銅、半田粉等の導電性粉末およびこれらの合金粉末と混合して調整された硬化性導電ペーストが使用されている。
【0004】
【発明が解決しようする課題】
上記プリント配線基板の製造において、上記硬化性導電ペーストを使用した場合、次のような問題があった。
【0005】
第一の問題は、硬化性導電ペーストから形成した円錐状バンプの絶縁体層の貫通不良により、接続不良が生じることである。導電バンプの貫通温度は、各種絶縁体層により最適な範囲に設定されねばならないが、例えば比較的軟化点の低いFR−4(米国NEMA:national electrical manufacuturers association規格)タイプのガラスクロス入りプリプレグでは、80〜120℃の温度範囲で貫通する。このため、この温度範囲で変形しないレベルのバンプ軟化点、硬度が必要であり、変形した場合バンプが絶縁体層を貫通できないため、層間に接続不良が生じる。
【0006】
第二の問題は、積層プレス時にバンプの割れによる接続不良や、バンプ先端部の飛びによる回路のショートが起きることである。これは、バインダー樹脂が脆い場合や、導電粉、チクソ付与剤等の充填剤が適切に配合されていない場合に起きる傾向があった。
【0007】
第三の問題は、バンプ突き当て部と配線パターン間の、積層プレス後の接着不良である。バインダー自体の接着力が弱い場合の他、バンプの硬化度が進み過ぎた場合に起きる傾向があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、硬化性導電ペーストのバインダー成分として、高接着力のエポキシ樹脂と温度依存が大きい潜在性硬化剤を使用し、かつ絶縁層貫通前の導電バンプの硬化度を任意に制御することで、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、エポキシ樹脂、硬化剤、導電粉及び溶剤を含み、エポキシ樹脂が、3官能以上の多官能エポキシ樹脂40〜70重量%と2官能エポキシ樹脂30〜60重量%とからなり、かつMETTLER FP-90自動軟化点測定装置で1℃/分の昇温速度で測定した軟化点が80〜130℃の範囲にあるエポキシ樹脂であり、硬化剤が潜在性硬化剤であるプリント配線板層間接続バンプ用硬化性導電ペーストに関するものである。
【0010】
本発明に用いられるエポキシ樹脂は、METTLER FP−90自動軟化点測定装置で測定した軟化点が80〜130℃のエポキシ樹脂であり、好ましくは85〜125℃のエポキシ樹脂である。エポキシ樹脂の軟化点がこのようであると、バンプの絶縁体貫通性が良好であり、かつバンプの割れがない点から好ましい。
【0011】
全エポキシ樹脂100重量%中の3官能以上の多官能エポキシ樹脂の混合割合は、40〜100重量%が好ましく、特には60〜100重量%が好ましい。従って2官能のエポキシ樹脂の混合割合は、0〜60重量%が好ましく、特には0〜40重量%が好ましい。3官能以上の多官能エポキシ樹脂の混合割合が上記のようであると、バンプの硬度が不足せず、また耐熱性も低下しない。
【0012】
上記3官能以上の多官能エポキシ樹脂としては、トリスグリシジル型、テトラグリシジル型及びノボラック型が好ましく、特にノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。また上記2官能エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、特に軟化点100℃以上のビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
【0013】
本発明において使用される硬化剤は、潜在性硬化剤である。潜在性硬化剤とは、エポキシ樹脂に配合して室温に放置する限りにおいては長時間にわたって安定であるが、熱の作用で掛け金が外れると直ちに硬化反応を開始する硬化剤である。
このような潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルスルホン、多価フェノール、潜在性のイミダゾール等がある。潜在性のイミダゾールの例としては、2−フェニルー4,5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニルー4−メチルー5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2.4−ジアミノー6−[2′メチルイミダゾールー(1′)]−エチル−S−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−ヘプタデシルイミダゾール等がある。上記潜在硬化剤の中では、2−フェニルー4,5−ヒドロキシメチルイミダゾールが好ましい。
【0014】
これらの硬化剤は、各々単独でまたは併用して使用することができる。これらの硬化剤はポットライフが長い、バンプ硬化度のコントロールがし易い、プリント配線版と同等な硬化温度である、ボイドの原因となるような副生成物の量が極めて少ないなどの理由から、本発明の硬化剤として適している。
【0015】
上記硬化剤の添加量は、使用する硬化剤の種類に応じて、通常使用される量を選択すれば良い。一般にエポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.3〜1.1当量、好ましくは0.4〜1.0当量である。硬化剤の添加量が上記のようであると、得られる硬化体の架橋密度が小さくならず、且つ十分な耐熱性、硬度および良好な導電性が得られる。
【0016】
導電性ペーストの耐熱性の指標であるガラス転移点(Tg)は、好ましくは135〜200℃、更には150〜180℃が好ましい。
また硬度は、30〜45程度が好ましい。硬度がこの程度であると、導電性バンプが絶縁体層を貫通することができ、かつ脆くならない。
【0017】
本発明においては、イミダゾール、アミンアダクト等の硬化促進剤を併用することが好ましい。バンプ印刷後、溶剤を除去するためバンプを乾燥するが、この乾燥中に絶縁層を貫通できるバンプ硬度にするとともに、貫通後FR4と同じプレス条件で、突き当て部の配線パターンとバンプが強く接着できる硬化度に制御する必要がある。硬化剤と硬化促進剤を併用することで、硬化度の制御がし易さくなる。硬化促進剤の使用量は、エポキシ樹脂及び硬化剤の種類により異なるが、エポキシ樹脂100重量部に対し0.05〜3重量部程度が適当である。
【0018】
本発明においては、導電粉としては例えば、銀、金、銅、半田粉等の金属粉末、これらの合金粉末もしくは混合金属粉末を使用できる。これらのなかでは、硬度の点で銀および銅が好ましい。使用される導電粉量は、エポキシ樹脂と硬化剤との合計量100重量部に対して、300〜1900重量部、好ましくは400〜1000重量部の割合で用いられる。
【0019】
導電粉割合が上記のようであると、良好な導電性が得られると同時に、ペーストの流動性が低下しないので印刷性が悪くならず、また得られる硬化体の金属粉の結合力が十分なのでバンプの割れやバンプ先端部の飛びが生じにくくなり、接続不良や短絡も発生しないので好ましい。
【0020】
本発明における溶剤としては、公知のものが特に制限なく使用できる。例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類が挙げられる。上記溶剤は単独でも、あるいは2種類以上を混合して使用しても良いが、スクリーン印刷でバンプを形成する場合は、版乾きを考慮してカルビトール類及びセロソルブ類が好ましい。溶剤の使用量は目標粘度により変化するが、通常はペースト全体の5%から15%程度である。
【0021】
本発明においては、その特性を著しく低下させない範囲で、公知の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、例えば、チクソトロピー付与剤、消泡剤、分散剤、防錆剤、還元剤等が挙げられる。
【0022】
本発明の硬化性導電ペーストの製造方法は特に制限されないが、たとえば上記エポキシ樹脂、硬化剤、導電性粉及び溶剤を予備混合し、三本ロールを用いて混練し、ペーストを得て、真空下脱泡するなどの方法がある。
【0023】
本発明において、マルコム社製スパイラル粘度計で10回転/分、25℃で測定した硬化性導電ペーストの粘度は、好ましくは1000〜3500Pa・sであり、より好ましくは1500〜3000Pa・sが適当である。
【0024】
また、log(10min−1粘度/5min−1粘度)log(5/10)で計算するチクソ比は、静置している間は見掛け粘度が上がって顔料の沈降を防ぎ、激しくかき混ぜれば見掛け粘度が低下して塗り易くなる性質を表すものであり、好ましくは0.2〜1.0であり、さらに好ましくは0.3〜0.9である。
【0025】
硬化性導電ペーストの粘度およびチクソ比が上記のようであると、スクリーンへの濡れが良く、版の穴も通り易く、また印刷した時十分なバンプ高さが得られる。
【0026】
本発明の硬化性導電ペーストは特に限定されず、スクリーン印刷、ディスペンサー等の公知の方法で印刷することができるが、スクリーン印刷が好ましい。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、配合割合は重量部であり、評価や測定は次の方法に従った。
【0028】
(1)軟化点
エポキシ樹脂を熔融し、METTLER FP−90自動軟化点測定装置で1℃/分の昇温速度で測定した。
【0029】
(2)ガラス転移点(Tg)
ペーストを銅箔のS面(電解法銅箔の回転陰極側光沢のある面)に300μm厚みに塗布した後、160℃で20分乾燥した。塗布面にS面を下にした銅箔を載せ、プレスで170℃、60分間硬化しサンプルとした。ガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)により、昇温速度10℃/分で測定した。
【0030】
(3)硬度
ペーストを銅箔のM面(電解法銅箔の電解液側光沢のない面)に300μm厚みに塗布した後、160℃で20分乾燥しサンプルとした。硬度は微少硬度計MXT50(松沢製機(株))で、試験温度23℃、試験荷重25kgf、荷重保持時間15秒で測定した。
【0031】
(4)銅箔引き剥がし強さ
ペーストを銅箔のM面に300μm厚みに塗布した後、160℃で20分乾燥した。塗布面にM面を下にして銅箔を載せ、プレスで170℃、60分間硬化しサンプルとした。JIS C6481に準じて、銅箔引き剥がし強さ(N/cm)を測定した。
【0032】
(5)印刷性
導電性ペーストを、直径0.3mmの孔を所定の位置に穿設してなる厚さ0.5mmのメタルスクリーン板を通して、厚さ18μmの電解銅箔に印刷した。
良好:メタルスクリーンの全孔を通してバンプが印刷でき、形状・塗布高さが揃っている。
不良:メタルスクリーンの一部の孔に詰まりがあり、全孔で印刷できない。或いは形状・塗布高さがばらついている。
【0033】
(6)貫通性
厚さ18μmの電解銅箔に、直径0.3mmの孔を所定の位置に穿設してなる厚さ0.5mmのメタルスクリーン板を通して、導電性ペーストを印刷した。印刷した導電ペーストを、160℃で10分間乾燥処理した後、同一メタルスクリーン板を用いて、同一位置に印刷、乾燥処理を3回繰り返した。3回目印刷後は160℃で20分間乾燥し、円錐状の導電性バンプを形成した。その後、導電性バンプを設けた電解銅箔に、エポキシ樹脂をガラスクロスに含浸したFR4タイプのプリプレグを載せ、専用の貫通機を通してバンプをプリプレグに貫通させ貫通性をみた。
良好:全バンプがプリプレグを貫通し、突き出たバンプ部分の形・高さが揃っている。
不良:プリプレグを貫通していないバンプがある。
【0034】
【実施例1】
軟化点95℃のナフタレンノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製NC7000)70部、及び軟化点125℃のビスフェノールA型エポキシ樹脂(三井化学(株)製R367)30部を、酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル70部に、130℃加熱下混合し溶解する。25℃に冷却した樹脂溶液にジアミノジフェニルスルホン19部、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール0.5部、銀粉677部、及びアエロジル(#200)18部を加え、万能混合器で30分予備混合する。その後三本ロールで混練して導電ペーストを得た。
【0035】
得られた導電ペーストについて前記記載の方法で、粘度、チクソ比、硬度、ピール強度、印刷性、バンプの一回印刷高さ、及びバンプのプリプレグ貫通性を測定した。結果を表1に示した。
【0036】
【実施例2〜3、5および参考例4】
表1のような配合組成を有し、実施例1と同様の操作で実施例2〜3、5および参考例4の導電ペーストを得た。得られた導電ペーストについて前記記載の方法で粘度・チクソ比、硬度、ピール強度、印刷性、バンプの一回印刷高さ、及び貫通性を測定した。結果を表1に示した。
【0037】
【比較例1】
軟化点125℃のビスフェノールA型エポキシ樹脂(三井化学(株)製R367)100部を、酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル70部に、130℃加熱下混合し溶解する。25℃に冷却した樹脂溶液にジシアンジアミド1部、2−フェニルー4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール0.25部、銀粉550部、及びアエロジル(#200)14部を加えた以外は、実施例1と同様に混合し、導電ペーストを得た。
得られた導電ペーストについて前記記載の方法で、粘度、チクソ比、硬度、ピール強度、印刷性、バンプの一回印刷高さ、及びプリプレグ貫通性を測定した。結果を表1に示した。
【0038】
【比較例2〜3】
表1のような配合組成および比較例1と同様の操作で、比較例2〜3の導電ペーストを得た。得られた導電ペーストについて前記記載の方法で、粘度、チクソ比、硬度、ピール強度、印刷性、バンプの一回印刷高さ、及びプリプレグ貫通性を測定した。結果を表1に示した。
【0039】
表中の略号は、それぞれ次を意味する。
エポキシ樹脂
R367:BPA型固形エポキシ樹脂(SP=125℃)、三井化学(株)製
VG3101:3官能型エポキシ樹脂(SP=61℃)、三井化学(株)製
NC7000:ナフタレン型ノボラックエポキシ樹脂(SP=95℃)、日本化薬(株)製
EOCN104S:オルソクレゾール型ノボラックエポキシ樹脂(SP=96℃)、日本化薬(株)製
硬化剤
PSM4326:フェノールノボラック樹脂、群栄化学(株)製
DDS:ジアミノジフェニルスルホン
Dicy:ジシアンジアミド
硬化促進剤
2PHZ:2-フェニルー4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、四国化成(株)製
PN23:エポキシアミンアダクト、味の素(株)製
【0040】
【発明の効果】
本発明の硬化性導電ペーストを使用すると、印刷性が良好であり且つバンプを高く印刷出来る。また、バンプ貫通性が良好でありながら、貫通後のバンプと配線パターンとの接着力が大きく、かつ高耐熱性の貫通型の導電配線部を製造することができる。この結果、貫通型の導電配線部を有するプリント配線板製造において、歩留まりが向上するとともに接続信頼性が向上する。
【0041】
【表1】
Claims (4)
- エポキシ樹脂、硬化剤、導電粉及び溶剤を含み、
エポキシ樹脂が、3官能以上の多官能エポキシ樹脂40〜70重量%と2官能エポキシ樹脂30〜60重量%とからなり、かつ
METTLER FP-90自動軟化点測定装置で1℃/分の昇温速度で測定した軟化点が80〜
130℃の範囲にあるエポキシ樹脂であり、
硬化剤が潜在性硬化剤であるプリント配線板層間接続バンプ用硬化性導電ペースト。 - 前記潜在性硬化剤が、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルスルホン、多価フェノール、潜在性イミダゾールから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載のプリント配線板層間接続バンプ用硬化性導電ペースト。
- 導電粉が銀粉または銅粉であり、エポキシ樹脂と硬化剤の合計量100重量部に対し、300〜1900重量部の割合で含まれることを特徴とする、請求項1に記載のプリント配線板層間接続バンプ用硬化性導電ペースト。
- 25℃における粘度が1000〜3500Pa・sであり、チクソ比が0.2〜1.0であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプリント配線板層間接続バンプ用硬化性導電ペースト。
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