JP4168466B2 - 製缶用積層体及びシームレス缶 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は製缶用積層体及びこの積層体を用いて製造されたシームレス缶に関するもので、より詳細には高温殺菌されているコーヒー飲料、お茶類等の充填容器に使用でき、高温での貯蔵安定性が顕著に改善され、耐衝撃性(耐デント性)、加工性及び耐内容物性の組み合わせに優れた積層体及ぴこの積層体から成形されたシームレス容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属素材を熱可塑性ポリエステルフィルムで被覆した積層体は、製缶用素材として古くから知られており、この積層体を絞り加工或いは絞り・しごき加工に付して、飲料等を充填するためのシームレス缶とすることもよく知られている。
【0003】
金属素材に積層する熱可塑性ポリエステルとしては、加工性、耐腐食性、香味保持性等の見地から、エチレンテレフタレート単位を主体とし、所望により、他のエステル単位を含むポリエステル或いは共重合ポリエステルが使用されてきた。
【0004】
特開平7−82391号公報には、平均粒径2.5μm以下の滑剤を含有する共重合ポリエステルからなる二軸配向フイルムであって、該共童合ポリエステルが2,6−ナフタレンジカルボン酸80〜95モル%及ぴメチレン基数2〜10の脂肪族直鎖ジカルボン酸5〜20モル%からなる酸成分と、主としてエチレングリコールからなるグリコール成分とから構成され、かつ固有粘度([η〕)0.5〜0.7の分子量を有することを特徴とする全属板貼合せ成形加工用ポリエステルフイルムが記載されている。
【0005】
特開平9−52337号公報には、少なくとも2層以上の層構造を有し、一方の表面を構成するA層が、下記エステル単位Xを主たる繰り返し単位とするポリエステルが70〜30重量%、下記エステル単位Yを主たる繰り返し単位とするポリエステルが30〜70重量%混合された混合ポリエステルからなり、もう一方の表面を構成するB層が、結晶融解エンタルピーが25J/g以下、融点が165−210℃であるポリエステルまたは混合ポリエステルからなり、各層を構成するポリエステルのガラス転移点の最大値と最小値の差が10℃以下であり、耐衝撃性指数が4以上であることを特徴とする金属被覆用積層ポリエステルフィルム、
エステル単位X:エチレンテレフタレートまたはエチレンナフタレート
エステル単位Y:ブチレンテレフタレートまたはブチレンナフタレート
が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
熱可塑性ポリエステルを被覆した積層体から形成されたシームレス缶は、耐腐食性については、一応満足できる評価は得られているものの、近年レトルト殺菌の合理化や効率化のために、高温レトルトが望まれている。高温のレトルト殺菌では、内面側のポリエステルフィルムからの低分子量成分の溶出量が大きくなることが分かった。
【0007】
即ち、高温湿熱条件下では、フィルム中に必然的に含まれている低分子量成分の内容物中への移行量が大きくなり、また、低分子量成分の内でも、比較的高分子量成分であり、本来水溶液に対する溶解度の極めて小さいものである成分の抽出が顕著になる。内容物中に移行する量は、厚生省告示規則、及び米国FDA規則による制限量よりはるかに少なくとも、高温処理され、また更に長期間保存される場合、内容物中に移行した比較的高分子量の成分は凝集して粒子サイズが大きくなり、濁りを生じる場合があり、心証的に好ましいものではない。
【0008】
本発明者らは先に、金属基体と該基体表面に設けられた熱可塑性ポリエステル層とからなる製缶用積層体において、前記熱可塑性ポリエステル層が、エチレンテレフタレート単位を主体とするエチレンテレフタレート系ポリエステル(A)と、エチレンナフタレート単位を主体とするエチレンナフタレート系ポリエステル(B)とを、全塩基性カルボン酸成分当たりのナフタレンジカルボン酸成分の量が1.0乃至95モル%となるように含有するブレンド物から形成され且つエステル交換量が特定の範囲にある積層体では、高温処理及び長期保存において、ポリエステルフィルム中に必然的に存在する低分子量成分の内容物中への移行が極力抑えられ、濁りの発生が抑制されることを提案した(これについても特許出願中)。
【0009】
しかしながら、上記提案は高温での熱履歴を経た缶詰の濁りの発生抑制には有効であるものの、実際の缶詰製品に要求される耐衝撃性、加工性及び耐内容物性の組み合わせに関しては、未だ十分満足しうるものではなかった。
【0010】
実際の缶詰製品に要求される実用的な耐衝撃性として、耐デント性と呼ばれるものがある。これは、缶詰製品を落下して、或いは缶詰製品同士が相互に衝突して、缶詰製品に打痕と呼ばれる凹みが生じた場合にもなお、被覆の密着性やカバレージが完全に保たれることが要求されるという特性である。即ち、デント試験で被覆が剥離し或いは被覆にピンホールやクラックが入る場合には、この部分から金属溶出や孔食による漏洩等を生じて、内容物の保存性を失うという問題を生じるのである。
一般に、耐内容物性に優れたポリエステルの場合、一般にデント試験の際の衝撃を吸収し或いは緩和させるという特性に欠けており、これらの特性の付与が重要な課題となる。
【0011】
また、ポリエステル積層体から形成されるシームレス缶の場合、シームレス缶への絞り成形やしごき成形が苛酷なことに加えて、蓋との巻締加工を行うために、ネックイン加工、フランジ加工、巻締加工等の二次加工が不可欠であり、シームレス缶に加工された積層体は、これらの加工に耐える加工性を尚保持していなければならない。
耐内容物性に優れたポリエステルの場合、シームレス缶への加工の際高度の分子配向を受けるのが通例であり、このような高配向状態では一般に加工性がかなり低下している。更に、缶詰用缶の場合、被覆への熱処理の影響を避けることができない。即ち、缶の外面に内容物等を表示する印刷を施すのが普通であり、印刷インクを焼き付けるための加熱の影響が、ポリエステルフィルムに生じる。ポリエステルは、加熱により結晶化が進行する(脆くなる)傾向があり、これにより耐デント性が低下し、また、ネックイン加工、巻締加工等の際の加工性が低下する。
【0012】
従って、本発明の目的は、高温処理及び長期保存において、ポリエステルフィルム中に必然的に存在する低分子量成分の内容物中への移行が極力抑えられ、濁りの発生が抑制されると共に、耐衝撃性(特に耐デント性)、加工性及び耐内容物性の組み合わせに優れた金属−ポリエステル積層体、並びにこの積層体から形成されたシームレス容器を提供するにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、金属基体と該基体表面に設けられた熱可塑性ポリエステル層とからなる製缶用積層体において、前記熱可塑性ポリエステル層が、(I)全塩基性カルボン酸成分あたりのナフタレンジカルボン酸成分の量が1.0乃至95モル%となるように含有する共重合ポリエステルあるいはブレンドポリエステルからなる表面層と、(II)エチレングリコールとブチレングリコールを主体とするアルコール成分とテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸のうち少なくとも1成分を含む酸成分から誘導されたもの、及びエチレングリコールとブチレングリコールを主体とするアルコール成分と脂肪族2塩基酸を含む酸成分から誘導されたものから成り、ガラス転移点(Tg)が65℃以下のポリエステル乃至ポリエステル組成物からなる下層とを備え且つ表面層のガラス転移点と下層のガラス転移点との差が10℃よりも大である積層フィルムからなる製缶用積層体が提供される。
本発明によればまた、上記積層体を絞り成形或いは絞り・しごき成形で形成したシームレス缶が提供される。
【0014】
【発明の実施形態】
[作用]
本発明の製缶用積層体は、金属基体と該基体表面に設けられた熟可塑性ポリエステル層とからなるが、本発明においては、この熱可塑性ポリエステル層として、(I)全塩基性カルボン酸成分当たりのナフタレンジカルボン酸成分の量が1.0乃至95モル%となるように含有する共重合ポリエステル或いはブレンドポリエステルからなる表面層と、(II)テレフタル酸成分を含み且つガラス転移点(Tg)が65℃以下のポリエステル乃至ポリエステル組成物から成る下層とを備えていること、及び表面層のガラス転移点と下層のガラス転移点との差が10℃よりも大であることが特徴である。
【0015】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、結晶性であると共に高い融点を有し、引っ張り強さ、耐衝撃性、耐屈曲疲労をはじめとして優れた諸性能を有するが、高温湿熱条件下では、物性が急激に低下するという欠点を有している。例えば、130℃のオートクレーブ処理における経時時間と伸びの保持率との関係を調べると、ポリエチレンテレフタレートでは、伸びの保持率が、20時間で約85%、40時間で約70数%、60時間で50%以下と、経時により伸びの保持率が大きく低下することが認められる。この理由は、ポリエチレンテレフタレートが、高温湿熱条件下で加水分解を受けるためと考えられる。
【0016】
これに対して、ポリエチレンナフタレート(PEN)は、上述したオートクレーブ処理に際しても、20時間で90%以上、40時間で80%以上、60時間で60%以上と、経時による伸びの保持率が高く、エチレンナフタレート単位をポリエステルに組み込むか或いはエチレンテレフタレート系ポリエステルをブレンドすることにより、高温湿熱条件下での経時劣化を有効に防止することが可能となることが理解されよう。
【0017】
本発明においては、表面層ポリエステルの全塩基性カルボン酸成分当たりのナフタレンジカルボン酸成分の量が1.0乃至95モル%となるように共重合或いはブレンドにより存在させると、驚くべきことに、高温湿熱条件下での内容物の保存性が顕著に改善されることが分かった。ナフタレンジカルボン酸成分の含有量が上記範囲よりも少ないポリエステル層を備えたシームレス缶におけるレトルト殺菌時における濁りの発生は、例えば濁度で4.2のオーダーである(後述する比較例2参照)のに対して、ナフタレンジカルボン酸成分を上記の割合で含有するポリエステル層を備えたシームレス缶では、濁りの発生を、濁度で1桁低いオーダーに抑制することができる。
【0018】
ポリエステル層を備えたシームレス缶において、濁りの発生はポリエステル中のオリゴマーの溶出によるものであるが、本発明における特定の表面層ポリエステルでは、このオリゴマーの溶出が著しく抑制されているのである。この事実は、本発明者らの多数の実験により、現象として見いだされたものであり、本発明は以下の理由により何らかの拘束を受けるものではないが、その理由は次のようなものと考えられる。
【0019】
一般に、自由体積とは、物質により占められている体積の内、構成粒子(この場合重合体鎖)によって占められていない体積をいう。文献によると、ポリエチレンテレフタレートの自由体積率は、300゜Kで0.39、400゜Kで 0.41、500゜Kで0.44であるのに対して、ポリエチレンナフタレートでは、300゜Kで0.32、400゜Kで 0.33、500゜Kで0.34であって、ポリエチレンテレフタレートに比して小さな自由体積率を示す。即ち、本発明に用いる表面層ポリエステルでは、ナフタレンジカルボン酸成分が存在することによりポリエチレンテレフタレートに比して自由体積が減少しており、この自由体積の減少が、濁り発生の原因となるオリゴマーの混入を抑制していると考えられる。
【0020】
本発明においては、上記表面層ポリエステルと組み合わせて、テレフタル酸成分を含み且つガラス転移点(Tg)が65℃以下のポリエステル樹脂を含むポリエステルを、下層として設けると共に、表面層のガラス転移点と下層のガラス転移点との差を10℃よりも大であるようにすることが、耐内容物性を損なわずに耐衝撃性及び加工性を向上させるために重要である。
【0021】
即ち、上記表面層ポリエステルは、一般にガラス転移点が高く、衝撃等を吸収し或いは緩和する能力に欠けているが、本発明においては、表面層の下にテレフタル酸成分を含み、ガラス転移点が65℃以下でしかも表面層のガラス転移点よりも少なくとも10℃低いガラス転移点を有するポリエステル層を設けることにより、衝撃を吸収乃至緩和させ、デント試験の際の樹脂層の剥離や、ピンホール、割れ等の発生を防止でき、更にシームレス缶への成形性や成形後の缶のネックイン加工、フランジ加工等の二次加工性を高めることができる。
【0022】
本発明では、耐衝撃性を高め且つ加工性を向上させるために、上記下層ポリエステルを用いることが必須不可欠であるが、それと同時に上記の特定の表面層ポリエステルも耐衝撃性や加工性の向上に役立っている。
【0023】
ナフタレンジカルボン酸成分の共重合比の少ない共重合ポリエステルの場合や、ポリエチレンナフタレートのブレンド比が少ないブレンドポリエステルの場合、缶の上部の加工度が大きい部分が白化する等加工性が悪く、耐デント性も劣る(比較例1及び3参照)。一方、エチレンナフタレート系ポリエステルのブレンド量比が多い場合、缶の上部の加工度が大きい部分では亀裂を発生し、成形が困難となる(比較例4)。これに対して、ナフタレンジカルボン酸成分を特定の量比で含有する共重合ポリエステル或いはブレンドポリエステルを表面層として使用することにより、シームレス缶への成形性を向上させ、また缶の耐デント性を向上させることができる(実施例1乃至4参照)。
【0024】
[シームレス缶及び積層体の概略]
本発明のシームレス缶の一例を示す図1において、この深絞り缶1は前述したポリエステル−金属ラミネートの曲げ伸ばし−しごき加工により形成され、底部2と側壁部3とから成っている。側壁部3の上端には所望によりネック部4を介してフランジ部5が形成されている。この缶1では、底部2に比して側壁部3は曲げ伸ばし及びしごき加工により積層体元厚の30乃至100%、特に30乃至85%の厚みとなるように薄肉化されている。
【0025】
側壁部3の断面構造の一例を示す図2において、この側壁部3は金属基体6とポリエステル系積層フィルム7とから成っている。金属基体6には外面被膜8が形成されているが、この外面被膜8はフィルム内面被膜7と同様のものであってもよいし、また通常の缶用塗料や樹脂フィルム被覆であってもよい。
積層フィルム7は、全塩基性カルボン酸成分あたりのナフタレンジカルボン酸成分の量がl.0乃至95モル%となるように含有する共重合ポリエステルあるいはブレンドポリエステルからなる表面層7aと、テレフタル酸を含み且つガラス転移点(Tg)が65℃以下で、表面層のガラス転移点よりも少なくとも10℃低いガラス転移点を有するポリエステル乃至ポリエステル組成物からなる下層7bとを備えている。
【0026】
側壁部の断面構造の他の例を示す図3において、複合ポリエステル層7と金属基体6との間に接着用プライマーの層9を設けている以外は、図3の場合と同様である。
これらの何れの場合も、底部2の断面構造は、薄肉化加工を受けていないだけで、側壁部3の断面構造と同様である。
【0027】
[金属板]
本発明では、金属板としては各種表面処理鋼板やアルミニウム等の軽金属板が使用される。
【0028】
表面処理鋼板としては、冷圧延鋼板を焼鈍後二次冷間圧延し、亜鉛メッキ、錫メッキ、ニッケルメッキ、電解クロム酸処理、クロム酸処理等の表面処理の一種または二種以上行ったものを用いることができる。好適な表面処理鋼板の一例は、電解クロム酸処理鋼板であり、特に10乃至300mg/m2 の金属クロム層と1乃至50mg/m2 (金属クロム換算)のクロム酸化物層とを備えたものであり、このものは塗膜密着性と耐腐食性との組合せに優れている。表面処理鋼板の他の例は、0.5乃至11.2g/m2 の錫メッキ量を有する硬質ブリキ板である。このブリキ板は、金属クロム換算で、クロム量が1乃至30mg/m2 となるようなクロム酸処理或いはクロム酸−リン酸処理が行われていることが望ましい。
【0029】
更に他の例としては、アルミニウムメッキ、アルミニウム圧接等を施したアルミニウム被覆鋼板が用いられる。
【0030】
軽金属板としては、所謂アルミニウム板の他に、アルミニウム合金板が使用される。耐腐食性と加工性との点で優れたアルミニウム合金板は、Mn:0.2乃至1.5重量%、Mg:0.8乃至5重量%、Zn:0.25乃至0.3重量%、及びCu:0.15乃至0.25重量%、残部がAlの組成を有するものである。これらの軽金属板も、金属クロム換算で、クロム量が20乃至300mg/m2 となるようなクロム酸処理或いはクロム酸/リン酸処理が行われていることが望ましい。
【0031】
金属板の素板厚、即ち缶底部の厚み(tB )は、金属の種類、容器の用途或いはサイズによっても相違するが、一般に0.10乃至0.50mmの厚みを有するのがよく、この内でも表面処理鋼板の場合には、0.10乃至0.30mmの厚み、また軽金属板の場合には0.15乃至0.40mmの厚みを有するのがよい。
【0032】
[複合ポリエステル層]
本発明に用いる複合ポリエステル層は、(I)全塩基性カルボン酸成分あたりのナフタレンジカルボン酸成分の量がl.0乃至95モル%となるように含有する共重合ポリエステルあるいはブレンドポリエステルからなる表面層と、(II)テレフタル酸を含み且つガラス転移点(Tg)が65℃以下のポリエステル乃至ポリエステル組成物からなる下層とから成る。
【0033】
(I)表面層
表面層は、ナフタレンジカルボン酸成分を上記の量で含有する限り、共重合ポリエステルでも、ブレンドポリエステルでもよい。ナフタレンジカルボン酸は、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸が好適であるが、勿論これ以外のナフタレンジカルボン酸成分が含有されていてもよい。
【0034】
(I−1)共重合ポリエステル
共重合ポリエステルの場合、ナフタレンジカルボン酸成分を上記量比で含有するが、それ以外のカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタール酸、P−β−オキシエトキシ安息香酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができるが、テレフタル酸(TA)を主体とするカルボン酸成分が好適である。
【0035】
共重合ポリエステルのアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのアルコール成分を挙げることができるが、エチレングリコールを主体とするアルコール成分(EG含有量95モル%以上)が好適である。
【0036】
共重合ポリエステルは、フィルム形成範囲の分子量を有するべきであり、溶媒として、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した固有粘度〔η〕は0.5以上、特に0.5乃至1.5の範囲にあるのが腐食成分に対するバリアー性や機械的性質の点でよい。
【0037】
(II−2)ブレンドポリエステル
表面層に用いるブレンドポリエステルは、エチレンナフタレート単位を主体とするポリエステル(A)と、それ以外のポリエステル、特にエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルとを、全カルボン酸成分当たりのナフタレンジカルボン酸成分の量が1.0乃至95モル%となるようにブレンドしたブレンド物から形成される。
【0038】
エチレンナフタレート系ポリエステル(A)
エチレンナフタレート系ポリエステル(A)としては、ポリエチレンナフタレートの他にエチレンナフタレート単位を主体とする共重合ポリエステルが使用される。ナフタレンジカルボン酸は酸成分の50モル%以上を占めていることが好ましい。エチレングリコールはアルコール成分の95モル%以上、特に98モル%以上を占めていることが望ましい。
【0039】
ナフタレンジカルボン酸以外の酸成分としては、テレフタル酸、イソフタール酸、P−β−オキシエトキシ安息香酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができる。
【0040】
またエチレングリコール以外のアルコール成分としては、前に例示したものが使用される。
【0041】
エチレンテレフタレート系ポリエステル(B)
エチレンテレフタレート系ポリエステル(B)としては、ポリエチレンテレフタレートの他にエチレンテレフタレート単位を主体とする共重合ポリエステルが使用される。テレフタル酸は酸成分の50モル%以上を占めていることが好ましい。エチレングリコールはアルコール成分の95モル%以上、特に98モル%以上を占めていることが望ましい。上記量のテレフタル酸及びエチレングリコールからなるポリエステルは、分子配向性、腐食成分や香気成分に対するバリアー性等から好ましい。
【0042】
テレフタル酸以外の酸成分としては、イソフタール酸、P−β−オキシエトキシ安息香酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができる。イソフタル酸を含有する共重合ポリエステルは、共重合体の融解エンタルピーを下げて、成形性や耐デント性の改善が大であり、また種々の成分、香味成分や腐食成分に対してバリアー効果が大きく、吸着性においても少ないという特徴を有する。
また、エチレングリコール以外のアルコール成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのアルコール成分を挙げることができる。
【0043】
ブレンドポリエステルは、フィルム形成範囲の分子量を有するべきであり、溶媒として、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した固有粘度〔η〕は0.5以上、特に0.5乃至1.5の範囲にあるのが腐食成分に対するバリアー性や機械的性質の点でよい。
【0044】
エチレンナフタレート系ポリエステル(A)とエチレンテレフタレート系ポリエステル(B)とのブレンド物は、ドライブレンドやメルトブレンドで製造でき、前者の場合、樹脂をブレンダー、ヘンシェルミキサーやスーパーミキサー等で混合し、直接押出機のホッパーに供給すればよく、また後者の場合、一軸或いは二軸の押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で混練すればよい。
【0045】
(II)下層
複合ポリエステル被覆の下層は、テレフタル酸成分を含み且つガラス転移点が65℃以下のポリエステル乃至ポリエステル組成物から成るものである。
【0046】
下層に用いるポリエステル乃至ポリエステル組成物は、上記の条件を満足するものであれば何れをも用いることができるが、エチレングリコールとブチレングリコールを主体とするアルコール成分、及びテレフタル酸、イソフタル酸及びナフタレンジカルボン酸のうち少なくとも1成分を含む酸成分から誘導されたものであることが好ましく、更に酸成分として脂肪族2塩基酸を含むものから誘導されたものであることが好ましい。
【0047】
一層好適には、下層に用いるポリエステル乃至ポリエステル組成物は、(I)ポリエチレンテレフタレート・セグメントと(II)ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグメントと(III )ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグメントとを含有して成る。本明細書において、セグメントとは、通常使用されている意味、即ち、鎖状高分子の特性を統計的に表現する際に使用される高分子鎖中の最小単位である。
【0048】
本発明に使用するポリエステルにおいて、上記エチレンテレフタレート・セグメント(I)は、形成される被覆に機械的強度や剛性及び耐熱性を付与する成分であり、一方ポリエステル・セグメント(II)及び(III )は形成されるポリエステル被覆のガラス転移温度を低下させると同時に結晶化速度を速くし、微細結晶を生成するとともに、ポリエステル被覆層の加工性を向上させ、さらに缶の用途に適用した際の耐デント性を向上させる成分であり、これらを組み合わせてポリエステル被覆層の下層に用いることにより、耐熱性を低下させることなく、耐衝撃性の向上が得られる。
【0049】
即ち、ポリエステル・セグメント(II)及びポリエステル・セグメント(III )を同時に組み込むことによって、デント試験後の金属露出による電流値を約3桁低い値に抑制できる。
【0050】
下層(II)を構成するポリエステル乃至ポリエステル組成物においては、合計量を100重量部として、I:II:III =10〜90:7〜81:3〜54の重量比、特にI:II:III =10〜70:15〜60:15〜54の重量比で含有することが好ましい。既に述べたとおり、これらの各ポリエステル・セグメントは、統計的に上記の組成比でポリエステル乃至ポリエステル組成物に含まれていればよく、その存在状態は特に問わない。例えば、ポリエステル相互のブレンド物でもよく、また共重合ポリエステルでもよい。しかしながら、本発明においては、(I)エチレンテレフタレート・セグメントを主体とするポリエステルと、ポリエステル・セグメント(II)及びポリエステル・セグメント(III )を含む共重合ポリエステルとのブレンド物であることが好ましいので、以下この例について詳細に説明するが、本発明はこの場合に限定されない。
【0051】
本発明で下層(II)の一方の成分として用いるエチレンテレフタレート系結晶性ポリエステルは、エステル反復単位の大部分、80モル%以上をエチレンテレフタレート単位が占める結晶性ポリエステルが好適である。ホモポリエチレンテレフタレートが耐熱性の点で好適であるが、エチレンテレフタレート単位以外のエステル単位の少量を含む共重合ポリエステルも使用し得る。
【0052】
テレフタル酸以外の酸成分としては、イソフタル酸、オルソフタル酸、P−β−オキシエトキシ安息香酸、ナフタレン2,6−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4′−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリメリット酸及びピロメリット酸から成る群より選ばれた多塩基酸の少なくとも1種が好適である。共重合成分としてイソフタル酸及び/またはナフタレンジカルボン酸を含むポリエステルは耐内容物性、内容物の香味保持性等に優れている。
【0053】
ジオール成分は、エチレングリコールのみからなることが好適であるが、本発明の本質を損なわない範囲で、それ以外のジオール成分、例えば、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上が含まれていてもよい。
【0054】
用いるエチレンテレフタレート系結晶性ポリエステルは、フィルム形成範囲の分子量を有するべきであり、溶媒として、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した固有粘度〔IV〕は0.5以上、特に0.5乃至1.5の範囲にあるのがよい。
【0055】
本発明で下層(II)の他方の成分として用いる共重合ポリエステルは、(II)ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導されたエステル単位と(III )ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたエステル単位とを前記量比で含む共重合ポリエステルである。
【0056】
エステル単位(II)を構成する芳香族二塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、P−β−オキシエトキシ安息香酸、ナフタレン2,6−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4′−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸等が挙げれるが、テレフタル酸が好適である。
【0057】
エステル単位(III )を構成する脂肪族二塩基酸成分としては、コハク酸、アゼライン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ダイマー酸等をあげることができるが、Tgを低下する効果が大きいことから長鎖の脂肪族二塩基酸が好ましく、工業的生産の見地から特にアジピン酸が好ましい。
【0058】
ジオール成分は、ブチレングリコールのみからなることが好適であるが、本発明の本質を損なわない範囲内で、ブチレングリコール以外のジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0059】
この共重合ポリエステルは、芳香族エステル単位(II)と 脂肪族エステル単位(III )とを前記量比で含むことが好ましく、脂肪族エステル単位の含有量が上記範囲よりも少ないときには、耐衝撃性(耐デント性)の改善が不十分となる傾向があり、一方上記範囲を上回ると、被覆の耐熱性、加工性、腐食成分に対するバリアー性等が低下するようになる傾向がある。
【0060】
この共重合ポリエステルも、フィルム形成範囲の分子量を有するべきであり、溶媒として、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した極限粘度〔η〕は0.5以上、特に0.5乃至1.5の範囲にあるのがよい。
【0061】
本発明では、エチレンテレフタレート系ポリエステルと上記の特定の共重合ポリエステルとを前述した量比となるようにブレンドして使用する。混合は乾式混合で行っても、或いはメルトブレンドによって行ってもよい。
【0062】
本発明で下層(II)に用いるポリエステル組成物は、エチレンテレフタレート系ポリエステルと共重合ポリエステルのブレンドから成るが、全体として65℃以下のガラス転移点を有するべきであることに関連して、示差熱分析に付すると、エチレンテレフタレート系ポリエステルに特有の融点(Tm1 )、共重合ポリエステルに特有の融点(Tm2 )を示す。勿論、各ピークの高さは両成分の配合比に依存する。この事実は、均一の組成物であっても、エチレンテレフタレート系ポリエステルと共重合ポリエステルとが主として互いに独立の相として存在していることを示している。
【0063】
本発明で下層に用いるポリエステル乃至ポリエステル組成物には、それ自体公知の樹脂用配合剤を配合することができる。例えば、酸化防止剤、特に分子量が400以上の酸化防止剤を配合することにより、製缶用積層体の耐熱性を顕著に向上させることができる。
【0064】
上記の高分子フェノール系酸化防止剤としては、例えば、
テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン(分子量1177.7)、
1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(分子量544.8)、
1,3,5−トリメチルー2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(分子量775.2)、
ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル(分子量794.4)、
1,3,5−トリス(3’5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン 2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン(分子量783.0)、
トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](分子量586.8)、
1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(分子量638.9)
等を用いることができる。中でも特に、テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンが好適である。
【0065】
分子量400以上の酸化防止剤の他の例として、トコフェロール系酸化防止剤、例えばα−型、β−型、γ−型、δ−型等のトコフェロールを挙げることができる。α−トコフェロールが特に好適である。
【0066】
これらの酸化防止剤は、前記ポリエステル乃至ポリエステル組成物100重量部当たり0.01乃至1.5重量部の量で用いる。
【0067】
勿論、このポリエステル組成物には、それ自体公知の他の樹脂用配合剤、例えば非晶質シリカ等のアンチブロッキング剤、二酸化チタン(チタン白)等の顔料、各種帯電防止剤、滑剤等を公知の処方に従って配合することができる。
【0068】
本発明に用いる複合ポリエステル被覆において、上層(I)は一般に0.5乃至20μm、特に1乃至15μmの厚みを有することが好ましく、一方、下層(II)は一般に0.5乃至40μm、特に1乃至35μmの厚みを有することが好ましく、ポリエステル被覆層全体は、一般に1乃至60μm、特に2乃至40μmの厚みを有することが好ましい。
【0069】
[積層体の製造]
上記複合ポリエステル被覆層を備えた金属積層体は、押出コート法によっても或いは、積層フィルムの熱接着法によっても製造することができる。
【0070】
押出コート法の場合、上層ポリエステルの押出機及び下層ポリエステルの押出機を使用し、多層多重ダイ内で両樹脂を合流させ、上層及び下層ポリエステルを共押出すると共に、これを溶融状態で金属基体上に押出しコートして、熱接着させることにより製造することができる。
【0071】
複合ポリエステル−金属積層体の押出コート法による製造方法を説明するための図4において、金属板11を必要により加熱ロール12a、12bにより予備加熱し、チルロール13とニップロール14間に供給する。一方、ポリエステルは、押出機のダイヘッド15を通して薄膜16の形に押し出し、チルロール13とニップロール14間に金属板11と重ねられるように供給される。チルロール13とニップロール14は、強制冷却されており、金属板11に複合ポリエステルから成る薄膜16を圧着して両者を熱接着させると共に両側から急冷することにより積層体17を得る。
【0072】
金属基体に対する複合ポリエステル組成物の熱接着は、溶融ポリエステル層が有する熱量と、金属板が有する熱量とにより行われる。金属板の加熱温度(T1 )は、一般に90乃至290℃、特に100乃至280℃の温度が適当である。
【0073】
積層ポリエステルフィルムを用いる製造法の場合、図4のダイヘッドの代わりに、積層フィルムのロールを設け、巻き戻した積層フィルムをチルロール13とニップロール14間に供給するようにすればよい。この場合、金属板の加熱ロール12による加熱を、積層ポリエステルの融点以上の温度に加熱することが必要である。
【0074】
上記積層フィルムは、前述した共押出物をT−ダイ法やインフレーション製膜法でフィルムに成形することにより得られる。例えば、キャスト成形法による未延伸フィルムを用いることもできる。また、一般には、このフィルムを延伸温度で、逐次或いは同時二軸延伸し、延伸後のフィルムを熱固定することにより製造された二軸延伸フィルムを用いることができる。
【0075】
ポリエステル系フィルムの二軸配向の程度は、X線回折法、偏光蛍光法、複屈折法、密度勾配管法密度等でも確認することができる。フィルムの二軸延伸の程度は、表面層ポリエステルが0.04乃至0.18の複屈折を有するものが適当である。フィルムの延伸は一般に80乃至130℃の温度で、面積延伸倍率が2.5乃至16.0、特に4.0乃至14.0となる範囲から、ポリエステルの種類や他の条件との関連で、複屈折が前記範囲となる延伸倍率を選ぶ。また、フィルムの熱固定は、130乃至240℃、特に150乃至230℃の範囲から、やはり前記条件が満足されるような熱固定温度を選ぶ。
【0076】
複合ポリエステルフィルムと金属素材の間に所望により設ける接着プライマーは、金属素材とフィルムとの両方に優れた接着性を示すものである。密着性と耐腐食性とに優れたプライマー塗料の代表的なものは、種々のフェノール類とホルムアルデヒドから誘導されるレゾール型フェノールアルデヒド樹脂と、ビスフェノール型エポキシ樹脂とから成るフェノールエポキシ系塗料であり、特にフェノール樹脂とエポキシ樹脂とを50:50乃至1:99重量比、特に40:60乃至3:97の重量比で含有する塗料である。
【0077】
接着プライマー層は、一般に0.01乃至10μmの厚みに設けるのがよい。接着プライマー層は予め金属素材上に設けてよく或いは予めポリエステルフィルム上に設けてもよい。
【0078】
[シームレス缶及びその製造方法]
本発明のシームレス缶において、その側壁部は複合ポリエステル−金属積層体絞り−再絞り加工による曲げ伸ばし或いは更にしごき加工により、積層体元厚の20乃至95%、特に30乃至85%の厚みとなるように薄肉化されているのが好ましい。
【0079】
本発明のシームレス缶は、上記の複合ポリエステル−金属積層体をポンチとダイスとの間で、有底カップに絞り−深絞り成形し、深絞り段階で曲げ伸し或いは更にしごきによりカップ側壁部の薄肉化を行なうことにより製造される。即ち、薄肉化のための変形を、缶軸方向(高さ方向)の荷重による変形(曲げ伸ばし)と缶厚み方向の荷重による変形(しごき)との組み合わせでしかもこの順序に行う。曲げ伸ばしはエチレンテレフタレート単位のc軸方向への分子配向を与え、一方しごきはエチレンテレフタレート単位のベンゼン面のフィルム面に平行な分子配向を与える。
【0080】
積層体の絞り−しごき成形は次の手段で行われる。即ち、図5に示す通り、被覆金属板から成形された前絞りカップ30は、このカップ内に挿入された環状の保持部材31とその下に位置する再絞り−しごきダイス32とで保持される。これらの保持部材31及び再絞り−しごきダイス32と同軸に、且つ保持部材31内を出入し得るように再絞り−しごきポンチ33が設けられる。再絞り−しごきポンチ33と再絞り−しごきダイス32とを互いに噛みあうように相対的に移動させる。
【0081】
再絞り−しごきダイス32は、上部に平面部34を有し、平面部の周縁に曲率半径の小さい作用コーナー部35を備え、作用コーナー部に連なる周囲に下方に向けて径の減少するテーパー状のアプローチ部36を有し、このアプローチ部に続いて曲率部37を介して円筒状のしごき用のランド部(しごき部)38を備えている。ランド部38の下方には、逆テーパ状の逃げ39が設けられている。
【0082】
前絞りカップ30の側壁部は、環状保持部材31の外周面40から、その曲率コーナ部41を経て、径内方に垂直に曲げられて環状保持部材31の環状底面42と再絞りダイス32の平面部34とで規定される部分を通り、再絞りダイス32の作用コーナ部35により軸方向にほぼ垂直に曲げられ、前絞りカップ30よりも小径の深絞りカップに成形される。この際、作用コーナー部35において、コーナー部35と接する側の反対側の部分は、曲げ変形により伸ばされ、一方、作用コーナー部35と接する側の部分は、作用コーナー部を離れた後、戻し変形で伸ばされ、これにより側壁部の曲げ伸ばしによる薄肉化が行われる。
【0083】
曲げ伸ばしにより薄肉化された側壁部は、その外面が径の次第に減少する小テーパー角のアプローチ部36と接触し、その内面がフリーの状態で、しごき部38に案内される。側壁部がアプローチ部を通過する行程は続いて行うしごき行程の前段階であり、曲げ伸ばし後のラミネートを安定化させ、且つ側壁部の径を若干縮小させて、しごき加工に備える。即ち、曲げ伸ばし直後のラミネートは、曲げ伸ばしによる振動の影響があり、フィルム内部には歪みも残留していて、未だ不安定な状態にあり、これを直ちにしごき加工に付した場合には、円滑なしごき加工を行うことができないが、側壁部の外面側をアプローチ部36と接触させてその径を縮小させると共に、内面側をフリーの状態にすることにより、振動の影響を防止し、フィルム内部の不均質な歪みも緩和させて、かつ曲げ伸ばしにより発生した熱も奪い、円滑なしごき加工を可能にするものである。
【0084】
アプローチ部36を通過した側壁部は、しごき用のランド部(しごき部)38と再絞り−しごきポンチ33との間隙に導入され、この間隙(C1)で規制される厚みに圧延される。最終側壁部の厚みC1は積層体元厚(t)の20乃至95%、特に30乃至85%の厚みとなるように定める。尚、しごき部導入側の曲率部37は、しごき開始点を有効に固定しながら、しごき部38への積層体の導入を円滑に行うものであり、ランド部38の下方の逆テーパ状の逃げ39は、加工力の過度の増大を防ぐものである。
【0085】
再絞り−しごきダイス32の曲率コーナー部35の曲率半径Rdは、曲げ伸ばしを有効に行う上では、ラミネートの肉厚(t)の2.9倍以下であるべきであるが、この曲率半径があまり小さくなるとラミネートの破断が生じることから、ラミネートの肉厚(t)の1倍以上であるべきである。
【0086】
テーパー状のアプローチ部36のアプローチ角度(テーパー角度の1/2)αは1乃至8゜を有するべきである。このアプローチ部角度が上記範囲よりも小さいと、ポリエステルフィルム層の配向緩和やしごき前の安定化が不十分なものとなり、アプローチ部角度が上記範囲よりも大きいと、曲げ伸ばしが不均一な(戻し変形が不十分な)ものとなり、何れの場合もフィルムの割れや剥離を生じることなしに、円滑なしごき加工が困難となる。
【0087】
しごき用のランド部38と再絞り−しごきポンチ33とクリアランスは前述した範囲にあるが、ランド長Lは、一般に0.5乃至3mmの長さを有しているのがよい。この長さが上記範囲よりも大きいと加工力が過度に大きくなる傾向があり、一方上記範囲よりも小さいとしごき加工後の戻りが大きく、好ましくない場合がある。
【0088】
本発明のシームレス缶において、フランジ部のポリエステル層は、過酷な巻締加工を受けることから、缶側壁部のポリエステル層に比して、マイルドな加工を受けていることが好ましい。これにより、巻締部の密封性及び耐腐食性を向上させることができる。この目的のため、しごき後の缶側壁部の上端に、缶側壁部の厚みよりも厚いフランジ形成部が形成されるようにする。即ち、缶側壁部の厚みをt1 及びフランジ部の厚みをt2 とすると、t2 /t1 の比は、1.0乃至2.5、特に1.0乃至2.0の範囲に定めるのがよい。
【0089】
再絞り−しごき成形後のシームレス缶を示す図6、図7及び図8において、シームレス缶50は、素板厚とほぼ同じ厚みを有する底部51と、再絞り−しごき加工により薄肉化された側壁部52とから成るが、側壁部52の上部には、これよりも厚肉のフランジ形成部53が形成されている。
【0090】
フランジ形成部53には、種々の構造があり、図6に示した例では、側壁部52の外面とフランジ形成部53の外面とが同一径の円筒面上にあり、フランジ形成部53の内面は側壁部52の内面よりも小さい径を有している。このタイプのフランジ形成部53は、再絞り−しごきポンチ32において、側壁部が伸ばされてフランジ形成部53が位置する部分を他の部分に比して小径にしておくことにより形成される。
【0091】
フランジ形成部53の図7に示した例では、側壁部52の内面とフランジ形成部53の内面とが同一径の円筒面上にあり、フランジ形成部53の外面は側壁部52の外面よりも大きい径を有している。このタイプのフランジ形成部53は、再絞り−しごきダイのランド部と共に、このランド部に続く部分にランド部よりも小径のしごき部分を設けることで、フランジ形成部53と側壁部52とが形成される。
【0092】
フランジ形成部53の図8に示した例では、フランジ形成部53の外面は側壁部52の外面よりも大きい径を有すると共に、フランジ形成部53の内面は側壁部52の内面よりも小さい径を有している。このタイプのフランジ形成部53は、再絞り−しごきポンチ32において、側壁部が伸ばされてフランジ形成部53が位置する部分を他の部分に比して小径にしておくと共に、再絞り−しごきダイのランド部と、更に、このランド部に続く部分にランド部よりも小径のしごき部分を設けることで、フランジ形成部53と側壁部52とが形成される。
【0093】
本発明のシームレス缶を製造するに際して、表面の複合ポリエステル層は十分な潤滑性能を付与するものであるが、より潤滑性を高めるために、各種油脂類或いはワックス類等の潤滑剤を少量塗布しておき、固体表面潤滑で前記加工を行うことができる。勿論、潤滑剤を含有する水性クーラント(当然冷却も兼ねる)を使用することもできるが、操作の簡単さの点では避けた方がよい。
【0094】
また、再絞り−しごき加工時の温度(しごき終了直後の温度)は、ポリエステルのガラス転移点(Tg)よりも50℃高い温度以下で且つ10℃以上の温度であることが好ましい。このため、工具の加温を行ったり、或いは逆に冷却を行うことが好ましい。
【0095】
本発明によれば、次いで絞り成形後の容器を、少なくとも一段の熱処理に付することができる。この熱処理には、種々の目的があり、加工により生じるフィルムの残留歪を除去すること、加工の際用いた滑剤を表面から揮散させること、表面に印刷した印刷インキを乾燥硬化させること等が主たる目的である。この熱処理には、赤外線加熱器、熱風循環炉、誘導加熱装置等それ自体公知の加熱装置を用いることができる。また、この熱処理は一段で行ってもよく、2段或いはそれ以上の多段で行うこともできる。熱処理の温度は、180乃至280℃の範囲が適当である。熱処理の時間は、一般的にいって、1乃至10分のオーダーである。
【0096】
熱処理後の容器は急冷してもよく、また放冷してもよい。即ち、フィルムや積層板の場合には急冷操作が容易であるが、容器の場合には、三次元状でしかも金属による熱容量も大きいため、工業的な意味での急冷操作はたいへんであるが、本発明では急冷操作なしでも、結晶成長が抑制され、優れた組合せ特性が得られるのである。勿論、所望によっては、冷風吹付、冷却水散布等の急冷手段を採用することは任意である。
【0097】
得られた缶は、所望により、一段或いは多段のネックイン加工に付し、フランジ加工を行って、巻締用の缶とする。また、ネックイン加工に先立って、ビード加工や、特公平7−5128号公報に記載された周状多面体壁加工を施すことができる。
【0098】
【実施例】
本発明を次の例で説明する。
【0099】
▲1▼積層体の作成
表1に示した実施例1及び3、比較例1〜4については、TFS鋼板(板厚0.195mm、調質度T−4、金属クロム量110mg/m2 、クロム水和酸化物量15mg/m2 )の片面に、表1に示した組成からなるポリエステル樹脂を縦3.0倍、横3.0倍で二軸延伸したフィルムを、他の面にも同様の樹脂組成で顔料として酸化チタンを20重量%を含有した白色共重合体ポリエステル樹脂を二軸延伸した膜厚13μmのフィルムを熱ラミネートし、直ちに水冷することによりラミネート金属板を得た。このとき、ラミネート前板温は、ポリエステル樹脂の融点より約15℃高く設定した。また、ラミネートロール温度は150℃、通板速度は40m/min.でラミネートを行った。
表1に示した実施例2及び4については、図4に示した構成の装置を用い、表1に示した樹脂を、ブレンドするものについてはドライブレンドし、65mmφの押し出し機に供給し、樹脂膜の厚みが、表1のようになるよう各樹脂の溶融流動開始温度+20℃に加熱したTFS鋼板(板厚0.195mm、調質度T−4、金属クロム量110mg/m2 、クロム水和酸化物量15mg/m2 )の両面に押し出し、樹脂の溶融流動開始温度−100℃になるように温調している一対の温間ラミネートロールを用いて20m/minの速度でラミネートした。その後、水シャワーによる急冷工程とコイル両サイドの僅かなトリム工程を経て積層体を得た。
【0100】
▲2▼IV(固有粘度)測定
缶胴部を切り出し、6N塩酸にて金属板を溶解して、フィルムを単離した。その後、少なくとも24時間の真空乾燥に供して、IV測定用サンプルとした。このサンプル200mg分をフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶液(重量比1:1)に110℃で溶解し、ウベローデ型粘度計を用いて30℃で比粘度を測定した。
固有粘度は下記式により求めた。
[η]=[(−1+(1+4K’ηsp1/2 )/2K’C] (dl/g)
K’:ハギンスの恒数(=0.33)
C :濃度(g/100ml)
ηsp:比粘度[=(溶液の落下時間−溶媒の落下時間)/溶媒の落下時間]
【0101】
▲3▼デント試験
コーラを充填した缶を横向きに静置した後、5℃において、金属板の圧延方向に対し直角となる缶軸線上で、缶のネック加工部の缶底側終点に、径65.5mmの球面を有する1kgのおもりを60mmの高さから球面が缶に当たるように落下させて衝撃を与えた。その後、37℃の温度で貯蔵試験を行い1年後の缶内面の状態を観察した。
【0102】
▲4▼レトルト処理試験
95℃で蒸留水を充填後、135℃、30分のレトルト処理を行い、室温に戻し蒸留水を抜き取り濁度測定に供した。また、缶内面の腐食状態を観察した。
濁度測定は、安井機器製簡易型高感度濁度・色度計を用い、検体100mlを濁度用比色管に採り検体用セルに入れ、一方比較用の標準として希釈濁度標準液100mlを採った濁度用比色管を対照セルに入れ、上部から底部を透視し両者の底部の明るさを比較して濁度を測定した。
【0103】
▲5▼Tgの測定
表層、下層各層のキャストフィルムを準備し、DSC測定サンプルとした。測定は、パーキンエルマー社製DSC7型を用いた。Tgは、フィルムを−20℃から280℃まで昇温したサンプルを−20℃まで急冷し、5分間放置後、20℃/minで280℃まで昇温を行い得られたチャートよりJIS K−7121に準じて求めた。
【0104】
実施例1
表1にまとめた組成の樹脂を用いた積層体にワックス系潤滑剤を塗布し、直径166mmの円盤を打ち抜き、浅絞りカップを得た。次いでこの浅絞りカップを再絞り・しごき加工を行い、深絞り−しごきカップを得た。
この深絞りカップの諸特性は以下の通りであった。
カップ径:66mm
カップ高さ:128mm
素板厚に対する缶壁部の厚み65%
素板厚に対するフランジ部の厚み77%
この深絞りしごきカップを、常法に従いドーミング成形を行い、220℃にて熱処理を行った後、カップを放冷後、開口端縁部のトリミング加工、曲面印刷および焼き付け乾燥、ネック加工、フランジ加工、を行って350g用のシームレス缶を得た。成形上、問題はなかった。
次いで、コーラ充填によるデント試験及び蒸留水充填によるレトルト処理試験に供した。
この缶に用いたフィルムの分析値、評価結果は、表2にまとめたが、デント試験におけるデント部腐食、レトルト試験による腐食の発生は認められず、良好であった。また、レトルト後の濁度も低い値であり、良好であった。これらの結果より、ここで得られたシームレス缶は、飲料保存用に優れたものであると評価された。
【0105】
実施例2
表1にまとめたように、樹脂組成が異なる他は、実施例1と同様に成形を行った。成形上、問題はなかった。また、実施例1と同様に評価及びフィルムの分析を行った。
どの評価においても、良好な結果を得ており、ここで得られたシームレス缶は、飲料保存用に優れたものであると評価された。
【0106】
実施例3
表1にまとめたように、樹脂組成が異なる他は、実施例1と同様に成形を行った。成形上、問題はなかった。また、実施例1と同様に評価及びフィルムの分析を行った。
どの評価においても、良好な結果を得ており、ここで得られたシームレス缶は、飲料保存用に優れたものであると評価された。
【0107】
実施例4
表1にまとめたように、樹脂組成が異なる他は、実施例1と同様に成形を行った。成形上、問題はなかった。また、実施例1と同様に評価及びフィルムの分析を行った。
どの評価においても、良好な結果を得ており、ここで得られたシームレス缶は、飲料保存用に優れたものであると評価された。
【0108】
実施例5
表1にまとめたように、樹脂組成が異なる他は、実施例1と同様に成形を行った。成形上、問題はなかった。また、実施例1と同様に評価及びフィルムの分析を行った。
どの評価においても、良好な結果を得ており、ここで得られたシームレス缶は、飲料保存用に優れたものであると評価された。
【0109】
比較例1
表1に示した樹脂組成の積層体を作成し、実施例1と同様に成形を行ったところ、缶上部において、白化が認められた。この缶を実施例1と同様にデント試験に供したところデント部において、フィルム下腐食が認められた。さらに、レトルト試験に供したところ、ネック部において、腐食の発生が激しかった。この腐食による内容物の茶色い濁りが認められたため、濁度の測定は行わなかった。これらは、フィルムの融解エンタルピーから示唆されるフィルムの過度の結晶化のためであると考えられた。
これらの結果より、ここで得られた缶は、飲料保存用には、不適なものであると評価された。
【0110】
比較例2
表1にまとめたように、樹脂組成が異なる他は、実施例1と同様に成形を行った。成形上、問題はなかった。また、実施例1と同様に評価及びフィルムの分析を行ったところ、腐食は認められなかったが、濁度の測定値が、実施例1〜5に比較し大きなものとなった。
これらの結果より、ここで得られた缶は、飲料保存上、大きな問題のあるものではなかったが、実施例1〜5に比較し、濁度の点で劣るものであった。
【0111】
比較例3
表1に示した樹脂組成の積層体を作成し、実施例1と同様に成形を行ったところ、缶上部において、白化が認められた。この缶を実施例1と同様にデント試験に供したところデント部において、フィルム下腐食が認められた。さらに、レトルト試験に供したところ、ネック部において、腐食の発生が激しかった。この腐食による内容物の茶色い濁りが認められたため、濁度の測定は行わなかった。
これらの結果より、ここで得られた缶は、飲料保存用には、不適なものであると評価された。
【0112】
比較例4
表1に示した樹脂組成の積層体を作成し、実施例1と同様に成形を行ったところ、缶上部において、フィルムの亀裂が認められ、後の評価に供するだけの缶が得られなかった。
【0113】
【表1】
Figure 0004168466
【0114】
【表2】
Figure 0004168466
【0115】
【発明の効果】
本発明によれば、金属基体と該基体表面に設けられた熟可塑性ポリエステル層とからなる積層体において、この熱可塑性ポリエステル層として、(I)全塩基性カルボン酸成分当たりのナフタレンジカルボン酸成分の量が1.0乃至95モル%となるように含有する共重合ポリエステル或いはブレンドポリエステルからなる表面層と、(II)テレフタル酸成分を含み且つガラス転移点(Tg)が65℃以下のポリエステル乃至ポリエステル組成物から成る下層とを備えている組み合わせを選び、表面層のガラス転移点と下層のガラス転移点との差を10℃よりも大きくしたことにより、高温処理及び長期保存において、ポリエステルフィルム中に必然的に存在する低分子量成分の内容物中への移行が極力抑えられ、濁りの発生が抑制されると共に、耐衝撃性(特に耐デント性)、加工性及び耐内容物性の組み合わせに優れた金属−ポリエステル積層体、並びにシームレス容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるシームレス缶を示す側面断面図である。
【図2】本発明に用いる積層体の断面構造の一例を示す拡大断面図である。
【図3】本発明に用いる積層体の断面構造の他の例を示す拡大断面図である。
【図4】積層工程を示す説明図である。
【図5】曲げ伸ばし・しごき工程を示す説明図である。
【図6】本発明のシームレス缶のフランジ部の一例を示す断面図である。
【図7】本発明のシームレス缶のフランジ部の他の例を示す断面図である。
【図8】本発明のシームレス缶のフランジ部の別の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 深絞り缶
2 底部
3 側壁部
4 ネック部
5 フランジ部
6 金属基体
7 内面被膜(積層フィルム)
7a 表面層
7b 下層
8 外面被膜
9 接着用プライマー層
11 金属板
12a 加熱ロール
12b 加熱ロール
13 チルロール
14 ニップロール
15 ダイヘッド
16 薄膜
17 積層体
30 前絞りカップ
31 環状の保持部材
32 再絞り−しごきダイス
33 再絞り−しごきポンチ
34 平面部
35 作用コーナー部
36 アプローチ部
37 曲率部
38 ランド部
39 逃げ
40 外周面
41 曲率コーナー部
42 環状底面
51 底部
52 側壁部
53 フランジ形成部

Claims (3)

  1. 金属基体と該基体表面に設けられた熱可塑性ポリエステル層とからなる製缶用積層体において、前記熱可塑性ポリエステル層が、(I)全塩基性カルボン酸成分あたりのナフタレンジカルボン酸成分の量が1.0乃至95モル%となるように含有する共重合ポリエステルあるいはブレンドポリエステルからなる表面層と、(II)エチレングリコールとブチレングリコールを主体とするアルコール成分とテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸のうち少なくとも1成分を含む酸成分から誘導されたもの、及びエチレングリコールとブチレングリコールを主体とするアルコール成分と脂肪族2塩基酸を含む酸成分から誘導されたものから成り、ガラス転移点(Tg)が65℃以下のポリエステル乃至ポリエステル組成物からなる下層とを備え且つ表面層のガラス転移点と下層のガラス転移点との差が10℃よりも大である積層フィルムからなる製缶用積層体。
  2. 前記熱可塑性ポリエステル層が、全体として、固有粘度0.5以上に相当する分子量を有する請求項記載の製缶用積層体。
  3. 請求項1又は2記載の積層体を絞り成形或いは絞り・しごき成形で形成したシームレス缶。
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