JP4164206B2 - 高温焼鈍時の再結晶粒微細化に優れた高強度高成形性アルミニウム合金板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温焼鈍時の再結晶粒微細化に優れた高強度高成形性アルミニウム合金板(以下、アルミニウムを単にAlと言う)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両、航空機、船舶、自動車、自動二輪、自転車等の輸送機、或いは圧力容器やタンク等の化学プラント、更には建築物や構造物等の構造部材や構造部品として、主として、AA乃至JIS 5052、5056、5082、5182、5083、5086等の、Mgを3.5% (質量% 、以下同じ) 以上を含むAl-Mg 系乃至5000系Al合金板が使用されている。これらMg含有量の多いAl-Mg 系Al合金板は、優れた強度や成形性を持ち、溶接性も良好であるため、溶接構造部材として汎用されている。
【0003】
このAl-Mg 系Al合金板は、周知の通り、常法により、鋳塊を均質化熱処理後、熱間圧延および冷間圧延により所定の板厚とした後、再結晶焼鈍を行ってAl合金板とされる。そして、このAl-Mg 系Al合金板の再結晶粒度は、通常20〜30μm のレベルである。
【0004】
これに対し、近年、このAl-Mg 系Al合金板の強度や成形性の更なる向上のために、再結晶粒度をより微細化することが研究されている。例えば、特願平11-268599 号などでは、最大で7.0%までのMgを含有させるとともに、Fe:0.1〜2.0%、Cr:0.05 〜0.5%、Zr:0.05 〜0.2%の一種または二種以上を含むAl-Mg 系Al合金について、冷間圧延において90% 以上の大圧下を加えて、再結晶焼鈍後の再結晶粒度を5 μm 以下の超微細粒とすることが提案されている。
【0005】
この技術は、Mg含有量を極端に多くするとともに、冷間圧延において大圧下を加えて、再結晶の核生成サイトとなる転位やFeを含む化合物粒子を増加させ、更に、Mn、Cr、Zrなどの分散粒子 (析出物) により、粒界の移動による再結晶粒の粗大成長を抑制しようとするものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この再結晶粒微細化技術により、実際に、再結晶焼鈍後の再結晶粒度を5 μm 以下の超微細粒としたAl-Mg 系Al合金板の製造が可能となる。しかし、この再結晶粒微細化技術では、再結晶粒度を5 μm 以下とするために、再結晶焼鈍温度を350 ℃以下の低温とする必要がある。言い換えると、再結晶焼鈍温度を350 ℃を越える温度とした場合、再結晶粒が粗大化して、粒度を5 μm 以下とすることができなくなる。
【0007】
この再結晶粒微細化技術では、Mg含有量を極端に多くするとともに、冷間圧延において大圧下を加えているため、Al合金板の加工硬化量が極端に大きい。このため、再結晶焼鈍の際の温度が低温側に制約されると、焼きなましが不十分となる場合が生じ、前記各種用途で要求される伸びや絞り高さなどの成形性を満足できない可能性がある。
【0008】
この点、前記特願平11-268599 号でも、最終焼鈍温度を350 ℃以下の低温とする必要があることが明記され、その実施例では、この発明範囲内の、Mn:0.2% 、Fe:1.26%、Cr:0.15%を含むAl-Mg 系Al合金板について、最終焼鈍温度を420 ℃とした場合に、350 ℃未満の焼鈍温度の発明例に比して、再結晶粒度が5 μm を越えて粗大化し、Al合金板の成形性などの特性が低下していることが記載されている。
【0009】
従って、この再結晶粒微細化技術では、再結晶焼鈍後の再結晶粒度を5 μm 以下の超微細粒とするためは、焼鈍温度を350 ℃未満の低温とする必要がある。このため、用途によっては、強度が高すぎる乃至Al-Mg 系Al合金板特有のSSマークが生じるなど、要求される成形性を満足できない場合が生じ、Al合金板の用途が制約される可能性がある。
【0010】
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、高温の再結晶焼鈍を行っても、焼鈍後の再結晶粒度を5 μm 以下の超微細粒とすることが可能なAl-Mg 系Al合金板を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明Al-Mg 系Al合金板の要旨は、Mg:3.0〜10.0% (質量% 、以下同じ) 、Mn:0.1〜1.5%を含み残部Alおよび不可避的不純物からなり、冷間圧延において90% 以上の圧下が加えられるとともに、最終焼鈍後の再結晶粒度が5 μm 以下である、Al-Mg 系Al合金板であって、組織内に分散析出するAl-Mn 系化合物の最大長さを500nm 以下とすることである。
【0012】
また、選択的添加元素を加えた本発明Al合金板の別の態様として、前記Al合金板が、更に、Fe:0.1〜2.0%、Cr:0.05 〜0.2%、Zr:0.05 〜0.2%の一種または二種以上を含む (請求項2 に対応) 、および/ または、Ti:0.001〜0.1%、B:1 〜300ppmの一種または二種を含む (請求項3 に対応) を含むことである。
【0013】
そして、本発明Al合金板の好ましい用途としては、焼鈍の温度が350 ℃を越える高温の最終焼鈍に用いられることである (請求項4 に対応) 。
【0014】
本発明では、前記特願平11-268599 号の技術思想を前提としている。即ち、Mg含有量を多くするとともに、冷間圧延において大圧下を加えて、再結晶の核生成サイトとなる転位を増加させ、加えて核生成サイトとなるFeの化合物粒子( 晶出物) を増加させ、更に、Mn、Cr、Zrなどの化合物粒子 (析出物) により、粒界の移動による再結晶粒の粗大成長を抑制し、最終焼鈍後の再結晶粒度を5 μm 以下とする技術思想は、前記特願平11-268599 号と同じである。したがって、本発明では、後述するMnの必須添加と、Al合金板が90% 以上の大きな圧下率で冷間圧延されることを前提とする。
【0015】
しかし、本発明者らは、まず、粒界の移動による再結晶粒の粗大成長を抑制すべき、Mn、Cr、Zrなどの化合物粒子乃至分散粒子 (析出物) に、前記350 ℃以上の高温の再結晶焼鈍時には、350 ℃未満の低温の再結晶焼鈍時には無い、再結晶粒度の微細化 (粗大化防止) 効果の差が生じることを知見した。
【0016】
即ち、Mn、Cr、Zrなどの化合物粒子は、周知の通り、前記Al-Mg 系Al合金鋳塊の均質化熱処理時に生じるものである。ただ、各々の含有量や鋳造条件および均質化熱処理時の条件によって、特に、化合物粒子の大きさや形状が異なり、これが、350 ℃以上の高温の再結晶焼鈍時の再結晶粒度の微細化 (粗大化防止) 効果の差につながる。
【0017】
特に、Cr、Zrなどの化合物粒子は、Mnの化合物粒子の大きさに比して、通常は小さい。したがって、通常、結晶粒の成長抑制効果は、Cr、Zrなどの化合物粒子の方が、Mnの化合物粒子よりも大きいと思われがちである。
【0018】
しかし、一方、Cr、Zrなどの化合物粒子には、核生成サイトを減少させる作用もあり、この作用が大きいと、結晶粒の形状は、球状の等軸状ではなく、圧延方向に伸長した伸長粒となる。そして、この伸長粒は、特に、350 ℃以上の高温の再結晶焼鈍時には、より粗大化しやすい。したがって、この結果が、Cr、Zrなどの化合物粒子とMnの化合物粒子の再結晶粒度の微細化 (粗大化防止) 効果の差につながっているものと推考される。
【0019】
このため、Cr、Zrなどの化合物粒子は、350 ℃未満の低温の再結晶焼鈍時には再結晶粒度の微細化効果を発揮するものの、350 ℃以上の高温の再結晶焼鈍時には再結晶粒度の微細化効果が弱くなる。この結果、最終焼鈍後のAl-Mg 系Al合金板の再結晶粒度を、通常の再結晶粒度20〜30μm のレベル以下の微細粒とはできるものの、本発明の主目的である5 μm 以下の超微細粒とすることができなくなる。
【0020】
また、Mnの化合物粒子が粗大化した場合には、特に、350 ℃以上の高温の再結晶焼鈍時における、Mnの化合物粒子自体の再結晶粒度の微細化効果が弱くなることも、本発明者らは知見した。そこで、本発明者らは、Mn化合物粒子の粗大化の、再結晶粒度の微細化効果発揮の臨界的な大きさとして、Al-Mg 系Al合金板の結晶粒内に分散析出するAl-Mg 系化合物の最大長さを500nm 以下とすべきことを更に知見して、本発明をなしたものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
(Al-Mn 系化合物粒子)
本発明で言うAl-Mn 系化合物粒子とは、FeやSiが含まれない場合にはMnAl6 であり、FeやSiが含まれる場合には、(Fe,Mn)3SiAl12、(Fe,Mn)Al6等の化合物である。
【0022】
そして、本発明では、これらAl-Mn 系化合物粒子の最大長さを500nm 以下と規定する。Al-Mn 系化合物粒子の最大長さが500nm を越えて粗大化した場合、前記した、Al合金組織内における、Al-Mn 系化合物粒子の微細分散析出による、350 ℃以上の高温の再結晶焼鈍時の再結晶粒度の微細化効果が弱くなる。この結果、最終焼鈍後のAl-Mg 系Al合金板の再結晶粒度を、通常の再結晶粒度20〜30μm のレベル以下の微細粒とはできるものの、本発明の主目的である5 μm 以下の超微細粒とすることができなくなる。
【0023】
Al-Mn 系化合物粒子の最大長さは、Al-Mn 系化合物粒子の形状にもよるが、Al-Mn 系化合物粒子の形状の内、最も長い部分の長さである。例えば、Al-Mn 系化合物粒子が板状の場合には最大の辺の長さ、粒状の場合には最大の径の長さ等が該当する。
【0024】
これらAl-Mn 系化合物粒子の最大長さの測定と同定 (検証) は、Al合金組織の10000 倍以上の透過電子顕微鏡(TEM) による、観察により行う。なお、透過型電子顕微鏡による測定は、機械研磨で約0.1mm 厚みに薄肉化した測定用試料を、更に、電解研磨 (ジェットポリッシュ) で観察部位の厚さを局部的に0.1 〜0.3 μm(1000〜3000Å) の薄膜化した部位をTEM で観察して行う。そして、各視野で測定できるAl-Mn 系化合物粒子の最大長さを各々計測し、1 視野当たりの化合物粒子の最大長さを10視野で平均値化したものとする。
【0025】
また、Al合金板の再結晶粒度の測定は、光学顕微鏡および走査電子顕微鏡(SEM) を用い、切断法により行う。より具体的には、直線で切断される結晶粒の数が100 個以上となるように直線を描き、この直線の長さを切断された結晶粒の数で除して、再結晶粒度とする。
【0026】
(本発明Al合金の化学成分組成)
次に、本発明Al合金における、化学成分組成について説明する。
【0027】
(本発明Al合金の各元素量)
Mg:3.0〜10.0% 。
Mgは、Al合金板に構造材に必要な強度と成形性を固溶強化により付与するとともに、大圧下による冷間圧延時の回復を抑制し、最終焼鈍後の再結晶粒度を微細にするために必須の元素である。Mgの3.0%未満の含有では、固溶強化が十分ではなく、更に大圧下による冷間圧延時の回復を抑制できず、最終焼鈍後の再結晶粒度の微細化が困難となる。この結果、必要な強度や成形性が不足する。また、一方、10.0% を越えて含有されると、鋳造や熱間圧延などの板の製造自体が困難となり、大圧下による冷間圧延時のエッジクラックも増大するため、工業的な製造に適さなくなる。したがって、Mgの含有量は3.0 〜10.0% の範囲とする。
【0028】
Mn:0.1〜1.5%
Mnは、前記した通り、微細なAl-Mn 系化合物粒子の形成と、350 ℃以上の高温の再結晶焼鈍 (最終焼鈍後) 後の再結晶粒度の微細化、特に、再結晶粒度が5 μm 以下の超微細化のために必要な元素である。Mnの含有量が0.1%未満では、組織内に形成されるAl-Mn 系化合物粒子の量 (数) が不足し、350 ℃以上の高温の最終焼鈍後の再結晶粒度を5 μm 以下の超微細化させることができない。一方、Mnの含有量が1.5%を越えた場合には、結晶粒微細化効果が飽和し、また、化合物粒子により、Al合金板の伸びおよび成形性が却って低下する。したがって、Mnの含有量は0.2 〜1.5%の範囲とする。
【0029】
Fe:0.1〜2.0%、Cr:0.05 〜0.2%、Zr:0.05 〜0.2%。
Fe、Cr、Zrは、再結晶焼鈍後の再結晶粒度の微細化の効果がある点で同効元素である。
【0030】
Feは、Al-Fe 系の化合物粒子 (晶出物) を形成し、再結晶焼鈍 (最終焼鈍後) 時の核生成サイトとなって、再結晶粒度の微細化の効果を発揮する元素である。0.1%未満の含有ではこの効果が不足し、一方、2.0%を越えた場合には、却って、再結晶焼鈍後のAl合金板の成形性や伸びなどを低下させる。したがって、Feの含有量は0.1 〜2.0%の範囲とする。
【0031】
Cr、Zrは、前記Mnと同様に、Al-Cr 系、Al-Zr 系の化合物粒子を形成し、再結晶焼鈍 (最終焼鈍後) 後の再結晶粒度の微細化の効果がある同効元素である。前記した通り、これらの再結晶粒度の微細化元素は、350 ℃以上の高温の最終焼鈍後の再結晶粒度を5 μm 以下にする効果はないものの、350 ℃未満の低温の再結晶焼鈍時には、焼鈍後の再結晶粒度を5 μm 以下にする微細化効果を発揮する。したがって、選択的に含ませる場合には、Mnを必須とし、これに加えて、一種または2 種以上を組み合わせて用いる。
【0032】
各々の下限量未満では、結晶粒内に形成される各々の化合物粒子の数乃至量が不足し、再結晶焼鈍時の再結晶粒度を5 μm 以下にする微細化効果が無い。一方で、各々の上限量を越えた場合には、結晶粒微細化効果が飽和し、また、粗大な晶出物を生成し、却って、Al合金板の破壊靱性および疲労特性、あるいは伸びや成形性などを劣化させる。したがって、各々の含有量は、Cr:0.05 〜0.2%、Zr:0.05 〜0.2%の範囲とする。
【0033】
Ti:0.001 〜0.1%、B:1 〜300ppm。
Ti、B は鋳塊の結晶粒を微細化する効果がある。このため、特にTiは通常添加する元素である。Tiの0.001%未満、B の1ppm未満の含有では、この効果が得られず、一方、Tiを0.1%を越えて、またB を300ppmを越えて含有すると、粗大な晶出物を形成する。したがって、Ti、B を一種または二種含有する場合、Tiの含有量は0.001 〜0.1%の範囲、B の含有量は1 〜300ppmの範囲と、各々することが好ましい。
【0034】
(本発明Al合金板の製造方法)
Al合金板自体は常法により製造可能であるものの、最終焼鈍処理時および最終焼鈍処理後の、Al合金板の結晶粒内のAl-Mn 系化合物の最大長さを500nm 以下とするため、また、最終焼鈍後の再結晶粒度が5 μm 以下とするための好ましい工程条件について以下に説明する。
【0035】
Al-Mn 系化合物粒子の固溶と析出とを初期に支配する鋳造工程においては、固溶を促進して、析出を抑制することが好ましい。このためには、鋳造の際の冷却速度が早い方が好ましい。この点、固定式水冷鋳型を有する半連続鋳造法(DC鋳造法)よりは、回転式水冷鋳型などを有する双ロール法、ベルトキャスター法、3C法、ブロック法等の連鋳では、凝固時の冷却速度 (液相線温度から固相線温度まで) を2 ℃/sec〜10℃/secとすることが可能となる。
【0036】
これらAl合金鋳塊の熱間圧延前の均質化熱処理において、Al-Mn 系化合物粒子を微細にかつ多数析出させるためには、均質化熱処理温度を430 〜520 ℃程度とすることが好ましい。処理温度が520 ℃以上では、Al-Mn 系化合物粒子が粗大化する可能性が大きい。また、均質化熱処理温度が430 ℃未満では、固溶による均質化自体の効果が不足する。
【0037】
熱間圧延は常法により可能であるが、後述する冷間圧延の圧下率に対し、熱間圧延の加工度も影響を与える。後述する冷間圧延の加工度 (圧下率) を高くするために、最終板厚が同じ場合、熱間圧延終了時の板厚が厚い方が好ましい。また熱間圧延時に導入されるひずみ( 転位密度) が大きくすることが好ましく、このために、熱間圧延終了温度は低い方が好ましい。
【0038】
引き続く冷間圧延の圧下率は、最終焼鈍後の再結晶粒度が5 μm 以下とするために重要である。通常の冷間圧延Al-Mg 系Al合金板の再結晶粒度が、通常20〜30μm のレベルであるのは、Mg含有量が比較的低いことと、この冷間圧延の圧下率が大きくても90% 未満のレベルであることによる。このため、本発明では、90% 以上の圧下率で冷間圧延することが必要で、これ未満の圧下率では、最終焼鈍後の再結晶粒度を5 μm 以下とすることができない。90% 以上の圧下率で冷間圧延することにより、転位を高密度で導入するとともに局部変形領域を高密度に形成して、これらを再結晶の核生成サイトとして作用させ、最終焼鈍後の再結晶粒度を5 μm 以下とすることが可能となる。
【0039】
冷間圧延の際の中間焼鈍および冷間圧延後の最終焼鈍 (再結晶焼鈍) は、バッチ式の熱処理炉或いは連続式熱処理炉により、製品板に要求される機械的特性や成形性などの要求特性に応じた、温度と時間により行う。
【0040】
なお、高温焼鈍によっても再現性よく再結晶粒度の超微細化を行うために、高温の最終焼鈍の前に、Al-Mn 系化合物を再現性よく微細化しておくためには、単に化学成分や通常の基本的な製造工程だけではなく、鋳塊の鋳造における冷却速度や均質化熱処理条件を合わせて考慮して、Al-Mn 系化合物の大きさを制御することが重要である。言い換えると、他の条件が同じでも、鋳造における冷却速度や均質化熱処理条件が異なる場合には、Al-Mn 系化合物の大きさがかなり異なってくる。
【0041】
【実施例】
次に、本発明方法の実施例を説明する。表1 に示すNo.A〜J までの、化学成分組成を有するAl-Mg 系Al合金を用い、表2 に示す通り、種々製造条件を変えてAl合金板の供試材を製造した。
【0042】
因みに、表1 の内、A 〜C は本発明範囲内の組成で、Mn量を変えた発明例である。
また、D 〜G は本発明範囲内の組成で、Fe、Cr、Zrの一種または二種以上を添加した発明例で、D はMg量が上限の発明例、E はMg量が比較的少ない発明例である。
更に、H 〜J は本発明範囲外の組成で、H はMn等の微細化元素を含まない比較例、I はMnが下限量未満で、Fe、Cr、Zrの三種を添加した比較例、J はMg量が下限量未満の比較例である。
【0043】
Al合金板の具体的な製造方法は、Al-Mg 系Al合金鋳塊をDC鋳造法 (冷却速度 5℃/ 秒) により50mm厚みの鋳塊に溶製した後、表2 に示す各温度で、4 時間の均質化熱処理 (昇温速度は共通して50℃/ 秒) を施した。そして、この熱処理温度から熱間圧延を開始し、300 ℃で圧延を終了し、厚さ10mmまで熱間圧延した。更に、これらの熱延板を、厚さ0.4 〜1.5mm まで、最大96% の大圧下率から85% の圧下率まで、表2 に示す圧下率で冷間圧延した。そして、この冷間圧延板をソルトバスを用いて、表2 に示す温度で20秒間 (昇温速度は共通して100 ℃/ 秒) 最終焼鈍 (再結晶焼鈍) を施した。
【0044】
因みに、表2 の内、No.1〜3 は、表1 のA の本発明範囲内の組成のAl合金板を用い、最終焼鈍を350 〜500 ℃まで変えた発明例である。
No.4は、A の本発明範囲内の組成のAl合金板を用い、冷間圧延圧下率が本発明下限の90% とした発明例である。
No.5は、A の本発明範囲内の組成のAl合金板を用い、均質化熱処理の温度が470 ℃と比較的低い発明例である。
No.6〜11は、表1 のB 〜G までの本発明範囲内の組成のAl合金板を用い、製造条件を全く同じとした発明例である。
【0045】
更に、表2 の内、No.12 〜14は、表1 のH 〜J までの本発明範囲外の組成のAl合金板を用い、製造条件を発明例No.1と全く同じとした比較例である。
また、No.15 は、表1 のA の本発明範囲内の組成のAl合金板を用い、冷間圧延圧下率が本発明下限未満の85% とした比較例である。
そして、No.16 は、均質化熱処理の温度を540 ℃と比較的高くした比較例である。
【0046】
(Al-Mn 系化合物粒子の測定)
各例のAl合金板の再結晶粒内のAl-Mn 系化合物粒子の同定と最大長さ、さらに再結晶粒の大きさ (再結晶粒度) を各々前記した測定方法により測定した。これらの結果を表2 に示す。
【0047】
(Al合金板の特性評価)
また、引張試験(JIS Z 2241 法) にて引張試験を行い、引張強さ (σB ) 、耐力 (σ0.2)、伸び(%) を測定した。これらの結果を表2 に示す。
【0048】
また、前記各供試板のプレス成形性を評価するために、供試板よりブランク材を採取して、 LDHO 測定用の金型 (直径50.8mmφの球頭パンチ) を用いて、簡易的な球頭張出試験を行い、その際に割れを生じずに成形できた LDHO (最大張出高さ) を求めた。これらの結果も表2 に示す。
【0049】
表2 から明らかな通り、発明例No.1〜11は、最終焼鈍が350 ℃以上の500 ℃の高温となっても、Al合金板の再結晶粒内のAl-Mn 系化合物粒子の最大長さが500nm 以下であり、再結晶粒度が5 μm 以下の超微細粒となっている。この結果、表2 に示す通り、優れた引張強さ (σB ) 、耐力 (σ0.2)、伸び(%) とともに、高い成形限界高さを示している。また、発明例No.11 は、最終焼鈍が320 ℃の低温の際にも、再結晶粒度が勿論5 μm 以下の超微細粒となることを示している。したがって、この結果から、本発明Al合金板は、最終焼鈍温度を、低温から高温まで、要求特性に応じて適宜選択できる利点を有することも示している。
【0050】
また、発明例No.3の結果は、前記特願平11-268599 号の実施例 (Mnを含むAl-Mg 系Al合金板の最終焼鈍温度が高い場合に再結晶粒度が5 μm を越えて粗大化) の傾向なり方向を裏付けている。
【0051】
一方、表2 の内、表1 のH 〜J までの本発明範囲外の組成のAl合金板を用い、製造条件を発明例No.1と全く同じとした比較例No.12 、13は、Al-Mn 系化合物粒子自体が無いか、または量が少なく、比較例No.14 はMg量が少ないために、いずれも再結晶の核生成サイトが不足し、350 ℃以上の高温の再結晶焼鈍時に再結晶粒度が5 μm 以下の超微細粒とすることができない。
また、表1 のA の本発明範囲内の組成のAl合金板を用い、冷間圧延圧下率が本発明下限未満の85% とした比較例No.15 は、再結晶の核生成サイトが不足し、350 ℃以上の高温の再結晶焼鈍時に再結晶粒度が5 μm 以下の超微細粒とすることができない。
更に、表1 のA の本発明範囲内の組成のAl合金板を用い、均質化熱処理温度を540 ℃の高温とした比較例No.16 は、Al-Mn 系化合物粒子の最大長さが500nm を超え、350 ℃以上の高温の再結晶焼鈍時に再結晶粒度が5 μm 以下の超微細粒とすることができない。
そして、この結果、これら各比較例はいずれも表2 に示す通り、引張強さ (σB ) 、耐力 (σ0.2)、伸び(%) 、成形限界高さが、発明例に比して著しく劣っている。
【0052】
したがって、これらの結果から、本発明の要件の臨界的な意義や好ましい製造条件の意義が分かる。また、再結晶焼鈍温度、そして合金組成や製造条件によって、Al-Mn 系化合物粒子の最大長さや再結晶粒度が大きく異なり、本発明のAl-Mn 系化合物粒子の最大長さの規定によって始めて、350 ℃以上の高温の再結晶焼鈍時の再結晶粒度5 μm 以下が保証されることが分かる。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、高温の再結晶焼鈍を行っても、焼鈍後の再結晶粒度を5 μm 以下の超微細粒とすることが可能なAl-Mg 系Al合金板を提供することができる。この結果、輸送機用のAl合金材の用途を大きく拡大できる点で工業的な価値が大きい。
Claims (4)
- Mg:3.0〜10.0% (質量% 、以下同じ) 、Mn:0.1〜1.5%を含み残部Alおよび不可避的不純物からなり、冷間圧延において90% 以上の圧下が加えられるとともに、最終焼鈍後の再結晶粒度が5 μm 以下である、Al-Mg 系アルミニウム合金板であって、組織内に分散析出するAl-Mn 系化合物の最大長さが500nm 以下であることを特徴とする高温焼鈍時の再結晶粒微細化に優れた高強度高成形性アルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金板が、更に、Fe:0.1〜2.0%、Cr:0.05 〜0.2%、Zr:0.05 〜0.2%の一種または二種以上を含む請求項1に記載の高温焼鈍時の再結晶粒微細化に優れた高強度高成形性アルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金板が、更に、Ti:0.001〜0.1%、B:1 〜300ppmの一種または二種を含む請求項1または2に記載の高温焼鈍時の再結晶粒微細化に優れた高強度高成形性アルミニウム合金板。
- 前記焼鈍温度が350 ℃を越える請求項1乃至3のいずれか1項に記載の高温焼鈍時の再結晶粒微細化に優れた高強度高成形性アルミニウム合金板。
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JP27429399A JP4164206B2 (ja) | 1999-09-28 | 1999-09-28 | 高温焼鈍時の再結晶粒微細化に優れた高強度高成形性アルミニウム合金板 |
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JP27429399A JP4164206B2 (ja) | 1999-09-28 | 1999-09-28 | 高温焼鈍時の再結晶粒微細化に優れた高強度高成形性アルミニウム合金板 |
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