JP4163040B2 - 内燃機関の失火判定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、機関の回転変動に基づいて失火を判定する内燃機関の失火判定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、内燃機関の失火を判定する装置として、機関の回転変動値を検出し、該回転変動値と運転条件に応じた失火判定値とを比較することで、失火の有無を判定する装置があった(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平04−171249号公報
【特許文献2】
特開昭58−051243号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、内燃機関においては、失火によって回転変動が発生する他、フライホイールやマニュアルトランスミッションのクラッチなどの経時変化によるガタによっても、回転変動が発生することがあった。
【0005】
また、車両の悪路走行中には、車体の揺れに伴ってアクセル開度が微小変動することによる出力変化や駆動輪のトラクション変化により、回転変動が生じる場合がある。
【0006】
従来では、失火判定値を機関負荷・機関回転速度に応じて可変として、運転条件の違いによる回転変動の違いに対応できるようにしているが、上記のような失火以外を要因とする回転変動を区別することができず、失火を誤判定してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、機関の回転変動に基づいて失火判定を行う構成であって、フライホイール・クラッチなどのガタや悪路走行による影響で、失火を誤判定することのない内燃機関の失火判定装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そのため請求項1記載の発明は、機関の回転変動値と、機関運転条件に応じて設定された失火判定値との比較に基づいて失火を判定する失火判定装置において、前記回転変動値の平均的な値と前記失火判定値の平均的な値との比が、所定のキャンセル判定値以上である場合に、失火判定をキャンセルする構成とした。
【0012】
かかる構成によると、回転変動値の平均的な値を求め、同時に、該回転変動値と比較される失火判定値の平均的な値を求め、これら平均的な値の比とキャンセル判定値とを比較することで、回転変動値が平均的に大きくなっているか否かを判断する。
【0013】
そして、回転変動値の平均的な値と失火判定値の平均的な値との比が、所定のキャンセル判定値以上である場合には、回転変動値が通常よりも平均的に大きくなっていることになり、これは、フライホイール,クラッチなどの経時変化によるガタや車両の悪路走行などの失火以外を要因とする回転変動の増大を示すので、回転変動値と失火判定値との比較に基づく失火判定をキャンセルする。
【0014】
尚、回転変動値及び失火判定値の平均的な値には、平均値の他、積算値が含まれる。
請求項2記載の発明では、前記回転変動値と前記失火判定値との比の平均的な値が、所定のキャンセル判定値以上である場合に、失火判定をキャンセルする構成とした。
【0015】
かかる構成によると、回転変動値と失火判定値との比を求めると共に、該比の平均的な値を求め、比の平均的な値とキャンセル判定値とを比較することで、回転変動値が平均的に大きくなっているか否かを判断する。
【0016】
そして、回転変動値と失火判定値との比の平均的な値が、所定のキャンセル判定値以上である場合には、回転変動値が通常よりも平均的に大きくなっていることになり、これは、フライホイール,クラッチなどの経時変化によるガタや車両の悪路走行などの失火以外を要因とする回転変動の増大を示すので、回転変動値と失火判定値との比較に基づく失火判定をキャンセルする。
【0017】
請求項3記載の発明では、前記所定のキャンセル判定値が、機関負荷及び機関回転速度に応じて算出される構成とした。
かかる構成によると、回転変動値の平均的な値と失火判定値の平均的な値との比、又は、回転変動値と失火判定値との比の平均的な値が、機関負荷及び機関回転速度に応じて算出されるキャンセル判定値と比較され、該比較結果に基づいて失火判定がキャンセルされる。
【0018】
従って、機関運転状態に最適なキャンセル判定値を算出し、判定精度を向上させることができる。
請求項4記載の発明では、前記回転変動値が前記失火判定値以上であるときの前記回転変動値及び失火判定値を、前記平均的な値を求めるときのサンプルとして採用しない構成とした。
【0019】
かかる構成によると、回転変動値が失火判定値以上で失火発生が判定されたときの回転変動値及び失火判定値は、平均的な値を求めるときのサンプルとして採用せず、回転変動値と失火判定値との比較によって失火が発生していないと判断されたときの回転変動値及び失火判定値に基づいて平均的な値を求める。
【0020】
従って、失火による大きな回転変動が、平均的な値の検出結果に影響して、誤って失火判定がキャンセルされてしまうことを回避できる。
【0021】
請求項5記載の発明では、前記平均的な値を求めるときに用いた回転変動値及び失火判定値のサンプル数が所定値よりも少ないときに、失火判定のキャンセルを禁止する構成とした。
【0022】
かかる構成によると、前記平均的な値を求めるときに用いた回転変動値及び失火判定値のサンプル数が少ない場合には、ガタや悪路走行による影響を精度良く判断できないので、前記平均的な値に基づく失火判定のキャンセルを禁止する。
【0023】
従って、少ないサンプル数のときにガタや悪路走行による影響を誤判断して、無用に失火判定がキャンセルされてしまうことを回避できる。
請求項6記載の発明では、前記平均的な値を求めた期間における失火頻度が所定以上であるときに、失火判定のキャンセルを禁止する構成とした。
【0024】
かかる構成によると、前記平均的な値を求めた期間における失火頻度が所定以上であるときには、ガタや悪路走行による影響があるとしても、実際に失火している可能性が高いので、失火判定のキャンセルを禁止する。
【0025】
従って、実際に失火している可能性が高い場合に、前記平均的な値に基づいて失火判定がキャンセルされてしまうことを回避できる。
請求項7記載の発明では、前記平均的な値を所定点火回数当たりの平均値として求める構成とした。
【0026】
かかる構成によると、所定の点火回数当たりにおける前記回転変動値及び失火判定値の平均値を求めるか、又は、所定の点火回数当たりにおける前記回転変動値と失火判定値との比の平均値を求める。
【0027】
従って、前記平均的な値を、簡便かつ的確に求めることができる。
請求項8記載の発明では、前記所定点火回数当たりの失火頻度を所定回数分積算し、該積算値が所定値以上であるときに、失火判定信号を出力する構成であり、前記失火判定キャンセル手段が前記積算値に基づく失火判定信号の出力を禁止する構成とした。
【0028】
かかる構成によると、所定点火回数当たりの失火頻度を求め、該失火頻度を所定回数分積算し、該積算値が所定以上であれば、ノイズ影響によるものでなく実際に失火が継続して発生しているものと判断し、失火判定信号を出力するが、前記平均的な値に基づいてガタや悪路走行による影響があるものと推定される場合には、たとえ前記失火頻度積算値が所定以上であっても、失火判定信号の出力はキャンセルされる。
【0029】
従って、ノイズ影響による失火の誤判断を回避し、かつ、ガタや悪路走行による影響による失火の誤判断を回避することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1は、実施の形態における内燃機関のシステム構成図である。
【0031】
この図1において、車両用内燃機関101の吸気管102には、スロットルモータ103aでスロットルバルブ103bを開閉駆動する電子制御スロットルチャンバ104が介装され、該電子制御スロットルチャンバ104及び吸気バルブ105を介して、燃焼室106内に空気が吸入される。
【0032】
燃焼排気は燃焼室106から排気バルブ107を介して排出され、フロント触媒108及びリア触媒109で浄化された後、大気中に放出される。
前記吸気バルブ105及び排気バルブ107は、それぞれ吸気側カムシャフト110A,排気側カムシャフト110Bに設けられたカムによって開閉駆動される。
【0033】
また、各気筒の吸気バルブ105上流側の吸気ポート111には、電磁式の燃料噴射弁112が設けられ、該燃料噴射弁112は、エンジンコントロールユニット(以下、ECUと略す)113から出力される噴射パルス信号によって開弁駆動されると、所定圧力に調整された燃料を吸気バルブ105に向けて噴射する。
【0034】
尚、燃料噴射弁112が燃焼室内に直接燃料を噴射する筒内直接噴射式の機関であっても良い。
シリンダ内に形成された混合気は、点火プラグ114による火花点火によって着火燃焼する。
【0035】
各点火プラグ114には、それぞれにパワートランジスタを内蔵したイグニッションコイル115が設けられており、前記ECU113は、前記パワートランジスタをスイッチング制御することによって、各気筒の点火時期(点火進角値)を独立に制御する。
【0036】
前記ECU113には、アクセル開度を検出するアクセルペダルセンサAPS116、機関101の吸入空気量Qを検出するエアフローメータ115、クランクシャフト121から単位クランク角度毎のポジション信号POSを取り出すクランク角センサ117、スロットルバルブ103bの開度TVOを検出するスロットルセンサ118、機関101の冷却水温度Twを検出する水温センサ119、吸気側カムシャフト110Aから気筒判別信号PHASEを取り出すカムセンサ120などからの検出信号が入力される
前記ECU113は、前記ポジション信号POSに基づいて機関回転速度Neを算出する。
【0037】
また、前記ECU113は、機関回転速度Neの変動に基づいて失火の発生を判定する失火判定装置としての機能をソフトウェア的に有しており、係る失火判定機能を、図2及び図3のフローチャートに従って説明する。
【0038】
図2のフローチャートは、1点火毎に実行されるルーチンを示し、まず、ステップS1では、点火カウンタをカウントアップし、ステップS2では、機関負荷Tp,機関回転速度Neを読み込む。
【0039】
尚、機関負荷Tpは、燃料噴射弁112における基本噴射量,シリンダ吸入空気量,スロットル開度などで代表させることができる。
ステップS3では、前記ステップS2で読み込んだ機関負荷Tp,機関回転速度Neが、それぞれ予め設定された範囲内であるか否かを判別し、機関負荷Tp,機関回転速度Neが所定範囲内であれば、ステップS4へ進む。
【0040】
ステップS4では、前記クランク角センサ117からの検出信号に基づいて算出される機関回転速度Neに基づいて回転変動値ΔNeを算出する。
前記回転変動値ΔNeは、1点火サイクル内での少なくとも2点での機関回転速度Neから算出され、例えば2点での機関回転速度Neの偏差として求める。
【0041】
前記クランク角センサ117及び上記ステップS4の演算処理が、回転変動値検出手段に相当する。
ステップS5では、予め機関負荷Tp・機関回転速度Neで区分される領域毎に失火判定値SLを記憶したマップを参照し、そのときの機関負荷Tp・機関回転速度Neに対応する失火判定値SLを算出する。
【0042】
尚、前記失火判定値SLは、失火が発生したときに前記回転変動値ΔNeが超える値として予め設定されている。
上記ステップS5の演算処理が、失火判定値設定手段に相当する。
【0043】
ステップS6では、前記回転変動値ΔNeが前記失火判定値SL以上であるか否かを判断する。
そして、前記回転変動値ΔNeが前記失火判定値SL以上であれば、ステップS7へ進んで、失火カウンタをカウントアップする。
【0044】
尚、前記回転変動値ΔNeが前記失火判定値SL以上であるときには、失火発生の可能性が高いが、本実施形態では、後述するように、前記回転変動値ΔNeが前記失火判定値SL以上であると判定された頻度(失火頻度)を400点火間で求め、係る失火頻度を2000点火間で積算し、該失火頻度積算値が所定値以上であると判断されたときに、最終的な失火判定信号を出力するようになっており、係る演算処理が失火判定手段に相当する。
【0045】
一方、前記回転変動値ΔNeが前記失火判定値SLよりも小さいときには、ステップS8へ進み、前記回転変動値ΔNeの前回までの積算値ΣΔNeに今回の回転変動値ΔNeを加算して、積算値ΣΔNeを更新する。
【0046】
次のステップS9では、前記失火判定値SLの前回までの積算値ΣSLに今回の失火判定値SLを加算して、積算値ΣSLを更新する。
ステップS10では、積算カウンタをカウントアップする。
【0047】
ステップS11では、前記点火カウンタの値が400になっているか否かを判別し、点火カウンタ=400であればステップS12へ進む。
前記点火カウンタは、後述するようにステップS12以降に進んだときに、0にリセットされるようになっているから、400点火毎にステップS12以降に進むことになる。
【0048】
ステップS12では、失火カウンタの値と総点火回数としての400との比として、失火頻度を算出する。
ステップS13では、前記積算カウンタが所定値A以上であるか否かを判別する。
【0049】
そして、前記積算カウンタが所定値Aよりも小さく、前記積算値ΣΔNe,積算値ΣSLのサンプル数が所定値Aよりも少ない場合には、ステップS16へ進む。
【0050】
ステップS16では、今回ステップS12で求めた失火頻度を、それまでの失火頻度積算値に加算して、失火頻度積算値を更新させる。
前記失火頻度積算値は、後述する図3のフローチャートに示すルーチンにおいて、最終的な失火判定信号(失火警告)の出力判断に用いられる。
【0051】
ステップS13からステップS16へ進んだ場合には、後述するように、失火判定のキャンセルが行われないことになり、ステップS13の比較演算処理が、サンプル数によるキャンセル禁止手段に相当する。
【0052】
一方、前記積算カウンタが所定値A以上である場合、即ち、前記積算値ΣΔNe,積算値ΣSLのサンプル数が所定値A以上である場合には、ステップS14へ進む。
【0053】
ステップS14では、前記積算値ΣΔNeと積算値ΣSLとの比(=ΣΔNe/ΣSL)が、予め設定されたキャンセル判定値以上であるか否かを判断する。ここで、ΣΔNe/ΣSLがキャンセル判定値よりも小さい場合には、前記ステップS16へ進んで、前記失火頻度積算値を更新させる。
【0054】
一方、ΣΔNe/ΣSLがキャンセル判定値以上である場合には、前記ステップS15へ進んで、前記ステップS12で求めた失火頻度が所定値以上であるか否かを判別する。
【0055】
そして、失火頻度が所定値以上であれば、ステップS16へ進んで前記失火頻度積算値を更新させ、失火頻度が所定値よりも小さい場合には、ステップS17へ進んで、キャンセルフラグに1をセットする。
【0056】
上記ステップS15の比較演算処理が、失火頻度によるキャンセル禁止手段に相当する。
前記ΣΔNe/ΣSLは、回転変動値ΔNeが平均的に大きくなって失火判定値SLに対して平均的に近づくと大きくなる値であり、回転変動値ΔNeと失火判定値SLとの平均的な相関を示すパラメータである。
【0057】
尚、ΣΔNe/積算数とすれば、回転変動値ΔNeの単純平均が求められ、ΣSL/積算数とすれば、失火判定値SLの単純平均が求められるが、(ΣΔNe/積算数)/(ΣSL/積算数)=ΣΔNe/ΣSLであるので、積算数による除算は省略してある。
【0058】
即ち、前記ΣΔNe/ΣSLは、回転変動値ΔNeの単純平均値と失火判定値SLの単純平均値との比に相当し、ΣΔNeは回転変動値ΔNeの平均的な値であり、ΣSLは失火判定値SLの平均的な値である。
【0059】
また、前記ΣΔNe,ΣSLの演算において、失火判定されたときの値を除外してあるから、前記ΣΔNe/ΣSLで示される回転変動値ΔNeと失火判定値SLとの平均的な相関は、失火以外の要因による回転変動の増大傾向を精度良く示すことになる。
【0060】
ここで、ΣΔNe/ΣSLがキャンセル判定値以上である場合には、回転変動値ΔNeが通常よりも平均的に大きくなっていることになり、これは、フライホイール,クラッチなどの経時変化によるガタや車両の悪路走行などの失火以外を要因とする回転変動の増大を示すものと判断される。
【0061】
そして、回転変動が平均的に大きくなると、失火によるものではない僅かな回転変動の増大によって回転変動値ΔNeが失火判定値SLを超えることになり、失火を誤判断する可能性がある。
【0062】
逆に、ΣΔNe/ΣSLがキャンセル判定値よりも小さい場合には、フライホイール,クラッチなどの経時変化によるガタや車両の悪路走行などの失火以外を要因とする回転変動の増大はないものと推定され、回転変動値ΔNeと失火判定値SLとの比較に基づく失火判断は正しく行える状態であると判断される。
【0063】
そこで、ΣΔNe/ΣSLがキャンセル判定値よりも小さい場合には、ステップS16へ進み、今回ステップS12で求めた失火頻度を、それまでの失火頻度積算値に加算して、失火頻度積算値を更新させる。
【0064】
一方、ΣΔNe/ΣSLがキャンセル判定値以上である場合には、失火を誤判断する可能性があるが、失火頻度が所定値以上である場合には、フライホイール,クラッチの経時変化によるガタや車両の悪路走行などの失火以外を要因とする回転変動の増大があるとしても、実際に失火しているものと推定されるので、ステップS16へ進んで失火頻度積算値を更新させる。
【0065】
そして、ΣΔNe/ΣSLがキャンセル判定値以上であって、かつ、失火頻度が所定値よりも小さい場合には、今回求めた失火頻度は、フライホイール,クラッチの経時変化によるガタや車両の悪路走行などの失火以外を要因とする回転変動の増大に影響された結果であると判断し、最終的な失火判定に用いられることがないように、前記キャンセルフラグに1をセットする。
【0066】
更に、積算カウンタが所定値Aよりも小さく、積算値ΣΔNe,ΣSLを求めたときの回転変動値ΔNeのサンプル数が充分でないときには、フライホイール,クラッチの経時変化によるガタや車両の悪路走行などの回転変動値ΔNeに対する影響を、ΣΔNe/ΣSLに基づいて精度良く判断することができない。
【0067】
そこで、ΣΔNe/ΣSLがキャンセル判定値以上であるか否かに基づいて、キャンセルフラグの設定を行わせるのは、積算カウンタが所定値A以上であるときに限定し、積算カウンタが所定値Aよりも小さい場合には、ステップS16へ進んで失火頻度積算値を更新させ、誤って失火判定がキャンセルされることを回避する。
【0068】
ステップS18では、点火カウンタ,積算カウンタ,失火カウンタ及び積算値ΣΔNe,ΣSLをクリアして、本ルーチンを終了させる。
図3のフローチャートは、2000点火毎に実行されるルーチンを示し、ステップS21では、前記キャンセルフラグに1がセットされているか否かを判別する。
【0069】
キャンセルフラグに1がセットされている場合には、ステップS22へ進んで、失火頻度積算値及びキャンセルフラグをクリアし、そのまま本ルーチンを終了させることで、失火頻度積算値に基づく失火警告制御(失火判定信号の出力制御)をキャンセルする。
【0070】
従って、フライホイール,クラッチなどの経時変化によるガタや車両の悪路走行などの影響で回転変動値ΔNeが大きくなったために、実際の失火とは無関係に失火頻度が大きくなるときに、係る失火頻度に基づいて誤って失火警告がなされることを防止でき、失火判定の信頼性を向上させることができる。
【0071】
前記ステップS14の比較演算に基づきステップS17でキャンセルフラグに1を設定する処理、及び、ステップS21の判断に基づいてステップS22へ進む処理が、失火判定キャンセル手段に相当する。
【0072】
一方、ステップS21で前記キャンセルフラグに0がセットされていると判断されると、ステップS23へ進み、失火頻度積算値が所定値X以上であるか否かを判別する。
【0073】
本ルーチンは2000点火毎に実行されるのに対し、失火頻度は400点火毎に求められるから、前記ステップS23で所定値Xと比較される失火頻度積算値は、400点火毎に求められた失火頻度を5回分積算した値となる。
【0074】
ステップS23で失火頻度積算値が所定値X以上であると判別されると、ステップS24へ進み、ランプやブザーなどの警告装置123により運転者への失火警告を行う。
【0075】
尚、本実施形態では、最終的な失火判定信号の出力を警告装置123の作動信号の出力としたが、係る構成に限定されるものではなく、例えば、失火判定信号を、リーン空燃比燃焼の禁止信号として、目標空燃比をリーン空燃比から理論空燃比に強制的に切り換えるようにしても良い。
【0076】
ステップS25では、前記失火頻度積算値をクリアし、本ルーチンを終了させる。
ところで、上記実施形態では、回転変動値ΔNeと失火判定値SLとの平均的な相関を示すパラメータとしてΣΔNe/ΣSLを演算させる構成としたが、回転変動値ΔNeが算出される毎にΔNe/SLを演算し、該ΔNe/SLを積算させるようにしても良く、係る構成とした実施形態を、図4のフローチャートに示す。
【0077】
図4のフローチャートは、ステップS8A〜9A及びステップS14Aの部分のみが図2のフローチャートと異なるので、同じ処理を行うステップには同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0078】
図4のフローチャートのステップS8Aでは、今回演算された回転変動値ΔNeと失火判定値SLとの比(=ΔNe/SL)を演算する。
ステップS9Aでは、前記ΔNe/SLの積算値Σ(ΔNe/SL)を更新する。
【0079】
そして、400点火間で前記ΔNe/SLを積算して、ステップS14Aに進むと、積算値Σ(ΔNe/SL)/積算数、即ち、ΔNe/SLの平均値が、予め設定されたキャンセル判定値以上であるか否かを判別する。
【0080】
本実施形態では、前記ΔNe/SLの平均値が、回転変動値ΔNeと失火判定値SLとの平均的な相関を示すパラメータとなる。
積算値Σ(ΔNe/SL)/積算数がキャンセル判定値よりも小さい場合には、フライホイール,クラッチなどの経時変化によるガタや車両の悪路走行などの影響はないものと判断して、ステップS16へ進み、失火頻度の積算を行う。
【0081】
一方、積算値Σ(ΔNe/SL)/積算数がキャンセル判定値以上であるときには、更に、ステップS15で失火頻度が所定値以上であるか否かを判断し、失火頻度が所定値よりも小さく明らかな失火状態でない場合には、フライホイール,クラッチなどの経時変化によるガタや車両の悪路走行などの影響があると推定し、ステップS17へ進んで、キャンセルフラグに1をセットする。
【0082】
また、失火頻度が所定値以上であれば、フライホイール,クラッチの経時変化によるガタや車両の悪路走行などの影響があるとしても、実際に失火が発生しているものと判断されるので、ステップS16へ進んで、失火頻度の積算を行う。
【0083】
上記実施形態においても、フライホイール,クラッチなどの経時変化によるガタや車両の悪路走行などの影響によって回転変動が大きくなり、これによって失火が誤判定されることを回避できる。
【0084】
尚、上記実施形態では、回転変動値ΔNe,失火判定値SLの平均的な相関を求めるタイミングを400点火毎とし、最終的な失火判定を2000点火毎に行わせる構成としたが、係る点火回数に限定されるものでないことは明らかである。
【0085】
また、ステップS13における積算カウンタの判定、及び/又は、ステップS15における失火頻度の判定を省略することも可能である。
ところで、前記キャンセル判定値を、機関運転状態に応じて設定する構成とすることができ、係る構成とした実施形態を、図5のフローチャートに示す。
【0086】
図5のフローチャートは、図4のフローチャートに対して、キャンセル判定値の設定を行うステップS10a及びステップS10bを追加し、ステップS14Bで用いるキャンセル判定値が異なる。
【0087】
即ち、ステップS10aでは、機関負荷及び機関回転速度からキャンセル判定値を算出する。
該キャンセル判定値の算出は、機関負荷及び機関回転速度に応じてキャンセル判定値を記憶したマップを予め設定し、該マップからの検索によって行わせることができる。
【0088】
次のステップS10bでは、前記キャンセル判定値を積算する。
そして、ステップS14Bでは、前記キャンセル判定値の積算値をその積算回数で除算することで平均値を求め、該キャンセル判定値の平均値とΔNe/SLの平均値とを比較する。
【0089】
上記構成によれば、機関運転状態(機関負荷・機関回転速度)に最適なキャンセル判定値を算出し、判定精度を向上させることができる。
尚、図2のフローチャートに示す場合のように、ΣΔNe/ΣSLとキャンセル判定値とを比較させる構成において、図5のフローチャートと同様にして、キャンセル判定値を機関運転状態(機関負荷・機関回転速度)に応じて算出させることができることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態における内燃機関のシステム構成図。
【図2】実施形態における失火頻度積算値の更新制御を示すフローチャート。
【図3】実施の形態における失火判定制御を示すフローチャート。
【図4】失火頻度積算値の更新制御の別の実施形態を示すフローチャート。
【図5】キャンセル判定値を機関運転条件に応じて算出する実施形態を示すフローチャート。
【符号の説明】
101…内燃機関、113…エンジンコントロールユニット(ECU)、117…クランク角センサ、119…水温センサ、120…カムセンサ、121…クランクシャフト、123…警告装置
Claims (8)
- 機関の回転変動値を検出する回転変動値検出手段と、
前記回転変動値と比較する失火判定値を機関運転条件に応じて設定する失火判定値設定手段と、
前記回転変動値と失火判定値との比較に基づいて失火を判定する失火判定手段と、
前記回転変動値の平均的な値と前記失火判定値の平均的な値との比が、所定のキャンセル判定値以上である場合に、前記失火判定手段による失火判定をキャンセルする失火判定キャンセル手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関の失火判定装置。 - 機関の回転変動値を検出する回転変動値検出手段と、
前記回転変動値と比較する失火判定値を機関運転条件に応じて設定する失火判定値設定手段と、
前記回転変動値と失火判定値との比較に基づいて失火を判定する失火判定手段と、
前記回転変動値と前記失火判定値との比の平均的な値が、所定のキャンセル判定値以上である場合に、前記失火判定手段による失火判定をキャンセルする失火判定キャンセル手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関の失火判定装置。 - 前記所定のキャンセル判定値が、機関負荷及び機関回転速度に応じて算出されることを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関の失火判定装置。
- 前記失火判定キャンセル手段が、前記回転変動値が前記失火判定値以上であるときの前記回転変動値及び失火判定値を、前記平均的な値を求めるときのサンプルとして採用しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の内燃機関の失火判定装置。
- 前記平均的な値を求めるときに用いた前記回転変動値及び失火判定値のサンプル数が所定値よりも少ないときに、前記失火判定キャンセル手段による失火判定のキャンセルを禁止するサンプル数によるキャンセル禁止手段を設けたことを特徴とする請求項4記載の内燃機関の失火判定装置。
- 前記平均的な値を求めた期間における失火頻度が所定以上であるときに、前記失火判定キャンセル手段による失火判定のキャンセルを禁止する失火頻度によるキャンセル禁止手段を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の内燃機関の失火判定装置。
- 前記失火判定キャンセル手段が、前記平均的な値を所定点火回数当たりの平均値として求めることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の内燃機関の失火判定装置。
- 前記失火判定手段が、前記所定点火回数当たりの失火頻度を所定回数分積算し、該積算値が所定値以上であるときに、失火判定信号を出力する構成であり、
前記失火判定キャンセル手段が前記積算値に基づく失火判定信号の出力を禁止することを特徴とする請求項7記載の内燃機関の失火判定装置。
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