JP4161391B2 - 磁気特性および被膜特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気特性および被膜特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は変圧器その他の電気機器の鉄心等に用いられる方向性けい素鋼板に関し、特に1次再結晶焼鈍後の内部酸化層の状態と焼鈍分離剤とを特定することにより磁気特性を改善する磁気特性および被膜特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法を提案しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性けい素鋼の製造工程は、鋼スラブを熱間圧延後に冷間圧延を施し、ついで1次再結晶焼鈍を施したのち2次再結晶のために最終仕上げ焼鈍を行うのが一般的である。このうち、最終仕上げ焼鈍中に2次再結晶が起こり、圧延方向に磁化容易軸の揃った粗大な結晶粒が生成する。この最終仕上焼鈍は、長時間行う必要があるため、鋼板の焼付防止を目的として、通常はこの焼鈍前にMgOを主体とする焼鈍分離剤を水に懸濁させてスラリー状にして塗布する。
【0003】
このMgOは、かような焼鈍分離剤としての役割のほかに、最終仕上焼鈍に先んじて行われる1次再結晶焼鈍により鋼板表面に生成するSiO2を主体とする酸化層と反応することによって、フォルステライト (Mg2SiO4)被膜を形成させるという働きがある。この形成されたフォルステライト被膜は、上塗りされるりん酸塩系絶縁コーティングと地鉄部分とを密着させる一種のバインダーとしての働きや、それ自体絶縁被膜としての働きや、鋼板に張力を付与することにより磁気特性を改善する働き等がある。したがって、均一な厚みを持ち、鋼板との密着性のよいフォルステライト被膜を形成させることが必要であり、それゆえに焼鈍分離剤の影響は大である。
【0004】
また、焼鈍分離剤には、これまで述べた以外に鋼板の析出物の生成、成長挙動や2次再結晶挙動を変化させて磁気特性に影響を及ぼす作用もある。例えば、MgOをスラリー化した際に持ち込まれる水分量が多すぎると鋼板が酸化されて磁気特性が劣化したり、被膜に点状欠陥が生成したりする。また、MgOに含まれる不純物が焼鈍中に鋼板に浸入することにより2次再結晶挙動が変化することなども知られている。
したがって、焼鈍分離剤の成分、粉体特性の良否は、方向性けい素鋼板の磁気特性、被膜特性を左右する重要な要因といえる。
【0005】
このため焼鈍分離剤については、方向性電磁鋼板の品質改善のため様々な手段が提案されている。例えば、特開昭50−145315号公報では、目開き44μm ふるい通過分を98%以上含有し、かつ20μm 以下の粒子を80%以上含有する微細酸化チタンを焼鈍分離剤に1〜20重量%含有させることにより耐熱性絶縁被膜を形成させる方法が開示されている。この他、特公昭54−14566 号公報には、マッフル炉により高温焼成されたマグネシヤの不純物の濃度、水和量およびふるい通過性を特定することにより良好なフォルステライト被膜を形成させる方法が開示されている。また、特開昭62−156227号公報では低活性マグネシヤの粒子最表面層に焼成後のマグネシヤの重量あたり0.3 〜2.0 %の範囲で水和層形成処理を施して活性化することにより被膜特性、磁気特性を改善する方法が開示されている。
【0006】
さらに、MgOを主成分とする焼鈍分離剤に、助剤を添加することにより、磁気特性を改善することも試みられ、例えば、特公昭57−32716 号公報や特公昭57−57952 号公報にはSrSO4 などのSr化合物を、特開昭60−174881号公報にはTiO2を、また特開昭61−204314号公報にはBiまたはBi含有物質を、それぞれ添加させた焼鈍分離剤が提案されている。
【0007】
これらの技術によりある程度被膜特性、磁気特性は向上してきたものの、コストの増大を招いたり、製品特性が向上しても安定的に生産できず、歩留まりを低下させたりする場合が多く、十分な効果が得られているとはいい難かった。特に、1次再結晶焼鈍から仕上焼鈍にかけての被膜形成に関与する工程では、製造条件の微妙な変動により被膜形成不足や被膜欠陥、密着性不良などの問題が生じやすく、工業的に大量生産する観点からは、焼鈍分離剤をさらに改良する必要性が高かった。
【0008】
一方、脱炭焼鈍後焼鈍分離剤塗布前の鋼板表面性状と焼鈍分離剤との関係で、特開昭61−170515号公報には脱炭焼鈍時に形成される酸化膜量に応じて、MgOを主成分とする焼鈍分離剤中のS濃度を調整する技術が提案開示されている。
しかしながら、このように単なる酸化膜量を因子として選択する方法では、実際に磁気特性の向上効果は認められるものの、安定的に磁気特性を改善することや被膜特性を改善することに関しては未だ十分ではなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、1次再結晶焼鈍条件ならびに焼鈍分離剤組成を調整することにより磁気特性、被膜特性を安定的に向上させうる磁気特性および被膜特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法を提案することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明の要旨構成は以下の通りである。
【0011】
Cを 0.10wt %未満、Siを2〜4.5wt%およびMnを0.03〜0.10 wt%の範囲で含有し、さらに、S、 Se Al およびNから選ばれる1種または2種以上を、S+ Se 0.01 0.03wt %、 Al 0.01 0.04wt %、N: 50 120ppm にて含有し、残部 Fe および不可避不純物からなる鋼素材を、加熱炉にて加熱後熱間圧延し、1回もしくは中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延を施して最終冷延板厚に仕上げたのち、1次再結晶焼鈍をし、その後スラリー状焼鈍分剤を塗布し乾燥してから最終仕上焼鈍を行う一連の工程よりなる方向性けい素鋼板の製造方法において、
1次再結晶焼鈍時の雰囲気、温度および時間を制御することにより、1次再結晶焼鈍で被成される酸化層中において下記に定義される酸化層中のラメラ状SiO2を含むシリカ富化層の厚み:w (μm)を0.2μm以上、3.6μm以下の範囲にすること、
Sr、Mg、Ti、Cu、Pb、NiまたはSnの硫酸化合物の1種または2種以上の添加剤を含むMgOを主体とする焼鈍分離剤を用い、MgO中の不純物と添加剤とを含めた焼鈍分離剤全体のS含有量をSO3 として換算した値:s (wt%)を0.1wt%以上、2.8 wt%以下の範囲にすること、さらに上記wとsとの関係を0.15≦w・s≦3.3 を満たす範囲に調整することとからなる方向性けい素鋼板の製造方法。

酸化層中のラメラ状SiO2を含むシリカ富化層の厚み:酸化層−地鉄界面の位置からからラメラ状SiO2が消える位置までの板厚方向での平均間隔
また、前記鋼材に、さらに、 Cu Sn Sb Mo Te Bi 、P、 Ni およびVから選ばれる1種または2種以上を合計で 0.01 0.2wt %含有することも可能である。
【0013】
ここで、上記ラメラ状SiO2を含むシリカ富化層(以下単にラメラ状SiO2層という)とは、図2に示すラメラ状SiO2層の説明図のように、地鉄表面(酸化層−地鉄界面の位置)からラメラ層が消える位置までのことをいい、ラメラ状SiO2層の厚みは、その間の板厚方向での平均間隔のことをいう。
【0014】
【発明の実施の形態】
発明者らは、磁気特性、被膜特性を安定的に向上させることのできる1次再結晶焼鈍後の内部酸化膜の形成条件と焼鈍分離剤組成について種々検討した結果、焼鈍分離剤中のSO3 濃度と酸化膜中のラメラ状SiO2層の厚みにより被膜特性、磁気特性が変化することを発見した。以下にこの知見を得るに至った実験例について述べる。
【0015】
C:0.043 wt%(以下%で示す。)、Si:3.22%、Mn:0.06%、Se:0.02%を含み、残部は実質的にFeよりなるけい素鋼スラブを1380℃の温度で30分間加熱後熱間圧延して2.2mm の板厚にしたのち、1050℃・1分間での中間焼鈍をはさんで0.23mm厚に冷間圧延し、最終冷延板厚に仕上げた。これを1次再結晶焼鈍後、焼鈍分離剤をスラリー状にしてロールコーターにより塗布、乾燥して最終仕上焼鈍を行った。ここで、1次再結晶焼鈍時の雰囲気の酸化性すなわち、水分、水素分圧比:PH2O/PH2 を0.1 〜0.6 、温度を800 ℃〜850 ℃の範囲で種々の値に制御することにより1次再結晶焼鈍後に被成される内部酸化層中のラメラ状SiO2層の厚みを0.1 μm 〜5.0 μm の範囲内に調節した。また、焼鈍分離剤として0.08%の不純物のSO3 を含むMgOに2%のTiO2と、SO3 換算で0〜2.82%のSrSO4 を添加し(トータルSO3 量で0.08〜2.9 %) 、これらをスラリー化して塗布した。
【0016】
このようにして得られた仕上焼鈍後のサンプルの磁気特性、被膜特性を調査した。得られた結果を図1に示す。図1はラメラ状SiO2層厚み、分離剤中のSO3 濃度と製品特性との関係を示すグラフである。
この図からわかるようにラメラ状SiO2層厚み(w)と添加物中のSO3 濃度(s)により製品特性は大きく変化する。特にwとsとの積を特定範囲内とすることにより良好な製品特性が得られる。
【0017】
このようにラメラ状SiO2層厚みと添加剤中のSO3 濃度により製品品質が変化した理由は明らかではないが発明者らは次のように考える。
焼鈍分離剤中のSO3 は仕上焼鈍中に分離し、S分が鋼中に浸入することによりインヒビターを補強する効果がある。これに加え被膜形成を促進する働きがあり、過度に存在すると局所的に被膜形成が促進されすぎてそれが剥離し、点状の被膜欠陥が生成する。
一方、ラメラ状SiO2層はラメラ状SiO2層直下の地鉄部分と焼鈍雰囲気や焼鈍分離剤との相互作用を抑制する働きがある。また、酸素分が内部酸化層中にトラップされる結果、内部酸化層中の固溶酸素量が増大し、SiO2の解離浮上、沈降が起こりにくくなる。
【0018】
これらのことから考えると、まず磁性に関しては、ラメラ状SiO2が薄いと雰囲気中に微量に含まれる水分によりインヒビターの分解が起こりやすくなるため、分離剤にSO3 を多量に添加してSによりインヒビターを補強する必要がある。ラメラ状SiO2が厚いとSも酸素も鋼中には入りにくいが、分離剤中のSO3 が多く過度にSが浸入する場合は、抑制力が強くなりすぎて板厚方向内部にある方位のずれた2次再結晶核が2次再結晶するため、磁気特性が劣化する。従って、SO3 添加量はラメラ状SiO2が薄い場合は増量し、厚い場合は減量することにより各々の弱点を補完して良好な磁気特性が安定して得られることになる。
【0019】
次に被膜に関しては、ラメラ状SiO2層が薄いと焼鈍雰囲気の影響を受けやすくなり、SiO2が沈降して二重構造の被膜となる。これは被膜密着性にとって不利な構造であるため、これを補うためにSO3 を多くして被膜形成量を増やす必要ある。ラメラ状SiO2層が厚いと内部酸化層中の固溶酸素量が多いため、分離剤中のSO3 が多いとさらにこれが分解して酸素源となり、鉄系酸化物が生成しやすくなり、点状被膜欠陥の原因となる。従って、SO3 添加量はラメラ状SiO2層が薄い場合は増量し、厚い場合は減量することにより各々の弱点を補完して良好な被膜特性が安定して得られることになる。
【0020】
以上の点から添加剤中のSO3 濃度(s)はラメラ状SiO2の厚み(w)により添加量を調整する必要があり、これはsとwとの積により評価することができると考えられる。
【0021】
なお、前記したように、特開昭61−170515号公報の鋼板表面の酸化膜量に応じて焼鈍分離剤のS量を調整する技術では、安定的な磁気特性の改善や被膜特性の改善が十分でなかった。
【0022】
その理由は、まず安定した磁気特性の向上に関しては、インヒビターの解離固溶現象が酸化膜量を調節しても十分に制御できなかった点にある。これは、例えば酸化膜量が多い場合にその膜中の酸素がインヒビターを解離させる現象や、酸化膜量が同一でもラメラ状SiO2層の存在の有無やその厚みによってインヒビターの解離固溶に変化が生じることを予見できなかったことによるものである。この点、ラメラ状SiO2層の厚みが酸素やSの被膜中の透過能を左右する重要な因子となっていることを新規に見いだしたこの発明とは相違する。
【0023】
そして、被膜特性の向上に関しては、酸化膜層と焼鈍分離剤中のs(SO3)濃度との関係が影響することがこれまで知られていなく、今回この発明により、ラメラ状SiO2層厚みがフォルステライト被膜の構造を決定する要因になること、この厚みとs濃度との関係を適正化することにより、フォルステライト被膜特性の向上がはかれることなどを始めて見出したものである。
よって、以上の各点からこの発明は特開昭60−170515号公報とは異なる技術思想のもとなされたものといえる。
【0024】
次に、この発明の限定理由ならびに好適条件などについて述べる。
この発明の素材である含けい素鋼の成分組成としては、次の通りである。
【0025】
まず、Cは出鋼段階で低下させて脱炭焼鈍を行わない方法と、ある程度の量を確保して組織の改善をはかり、その後の脱炭・1次再結晶焼鈍により除去する方法とがある。前者の場合はCの悪影響を避けるためには0.01wt%未満がよく、後者の場合の組織改善のための好適範囲は0.01%以上、0.10%未満がよい。
【0026】
Siは2〜4.5 %とする。2%以下では鉄損の低減効果が弱まり、4.5 %以上では冷間圧延性が損なわれる。また、次に示すインヒビター構成成分として、 Mn 0.03 0.10wt% の範囲で含有する。
【0027】
C、Siの他にインヒビター構成成分を添加する。すなわち、インヒビターにMnSおよび/またはMnSeを用いる場合、上記Mn:0.03〜0.10%のほか、S+Se:0.01〜0.03%にすることがよい。一方、AlNをインヒビターに用いる場合はAl:0.01〜0.04%、N:50〜120ppmとすることがよい。これらの範囲よりも低いとインヒビターとして効果が十分でなく、高いと2次再結晶が不安定になる。また、これらの他にCu、SnSbMo、Te、Bi、P、NiまたはVなども用いることができる。これらの各インヒビターは単独使用、複合使用いずれも可能であり、有効な濃度としてはトータルで0.01%以上、0.2 %以下がよい。
【0028】
ついで、製造条件について述べる。
これらの素材を公知の方法で熱間圧延を行ったあと、1回もしくは中間焼鈍をはさむ複数回の冷間圧延を行って最終冷延板厚にする。また、必要に応じて熱延板を冷間圧延前に焼鈍することも可能である。
【0029】
上述の処理ののち1次再結晶焼鈍を行い、焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上焼鈍を行う。これらの工程はこの発明では良好な磁気特性及び被膜特性を得るために厳重に管理する必要があり、また、1次再結晶焼鈍は焼鈍の雰囲気、温度および時間を制御することにより内部酸化層中のラメラ状SiO2層の厚み:wを0.2 μm 以上、3.6 μm 以下にする。このwが薄すぎると仕上焼鈍中のインヒビターの分解が著しく起こることにより磁気特性が劣化し、被膜形成不足となって被膜特性も劣化する。一方、厚すぎると方位のずれた2次再結晶粒が生成して磁気特性不良となるとともに被膜形成が進みすぎて被膜の密着性も劣化する。ラメラ状SiO2層の厚みを制御するための焼鈍の雰囲気、温度および時間は特に限定するものではないが、通常、雰囲気は水蒸気で水素分圧比:PH2O/PH2 で0.05以上、0.68以下、温度は750 ℃以上、900 ℃以下、時間は30秒間以上、180 秒間以下が良好となる。
【0030】
なお、1次再結晶焼鈍の加熱時の雰囲気と均熱時の雰囲気とを別々に制御して被膜特性を向上させる方法が知られているが、この発明ではその方法を用いることによりラメラ状SiO2層厚みを調節することもできる。さらに、AlNをインヒビターとする場合に1次再結晶焼鈍の前または途中または後に窒化処理を行う方法が知られているが、この発明でこのような方法を同時に行っても差し支えない。
【0031】
1次再結晶焼鈍後にはMgOを主体とする焼鈍分離剤を用いる。このとき、添加剤とMgO不純物とを含めた焼鈍分離剤全体でのS含有量をSO3 として換算した値:sを0.1 以上、2.8 %以下とする。MgO不純物をこの範囲にまで高める方法としては、原料に海水その他S含有量の多いMg源を用いること、製造工程途中で硫酸化合物を添加することなどが有効である。添加剤にSr, Ti等の硫酸化合物を用いることはSO3 の効果の他にSr, Ti等の陽イオンの効果も加味されるためさらに効果的である。なお、MgSO4 の場合は特に分解したMgイオンが被膜形成を助勢する働きがあり、MgO中のMgとは異なる作用を持つため有効である。
【0032】
発明者らが検討した硫酸化合物で、特に効果があったのがSr, Mg, Ti, Cu, Pb, NiまたはSnの硫酸塩である。これらは、単独使用、複合使用いずれも可能である。添加量は焼鈍分離剤全体でSO3 換算値:sで0.1 以上、2.8 %以下とする。sが少なすぎると磁気特性、被膜特性いずれにも効果がなく、多すぎると点状の被膜欠陥が生成するとともに磁気特性も劣化する。
【0033】
さらにこの発明ではラメラ状SiO2層の厚みw (μm)と焼鈍分離剤中のSO3 換算値:s(%)との積を0.15以上、3.3 以下とする。0.15より低ければ2次再結晶不良となるとともに被膜形成不足となる。一方、3.3 より高ければ方位のずれた2次粒が成長すると共に被膜形成過多となり点状被膜欠陥が発生する。
【0034】
焼鈍分離剤を塗布後、仕上焼鈍を行う。仕上焼鈍は公知の方法でよい。その後、絶縁張力コートを施してフラットニング焼鈍をして製品に仕上げることもよい。かかる処理工程によって優れた磁気特性、被膜特性を有する方向性けい素鋼板を得ることができる。
【0035】
【実施例】
実施例1
C:0.06%、Si:3.28%、Al:0.02%、N:50ppm 、Mn:0.07%、S:0.005 %およびCu:0.06%を含み残部は実質的にFeよりなるスラブを1400℃の温度に加熱後、2.2mm 厚に熱間圧延し、1050℃・2分間の中間焼鈍をはさんで0.35mmまで冷間圧延したのち、最終冷延板厚に仕上げた。
上記において、冷間圧延後に1次再結晶焼鈍を行い、その焼鈍条件を、水蒸気の水素分圧比:PH2O/PH2 で0.10〜0.75、温度を700 ℃〜950 ℃、時間は20秒間〜240 秒間の範囲でそれぞれ変化させることにより内部酸化層中のラメラ状SiO2層の厚みを種々変化させた。その後、窒化処理を施したあと、スラリー化することにより持込まれる水分量が2.0 %、また不純物のSO3 濃度が0.1 %のMgOに6%のTiO2と3%のSrSO4(SO3 換算で1.3 %) を添加した焼鈍分離剤を塗布したのち乾燥した。しかるのち、仕上げ焼鈍として700 ℃〜1000℃までを昇温速度20℃/h で昇温し、引続きdryH2 雰囲気で1150℃・5時間の純化焼鈍を行った。
【0036】
このようにして得られた鋼板の磁気特性及び被膜密着性を調査した。それらの調査結果を表1にまとめて示す。
【0037】
【表1】
Figure 0004161391
【0038】
表1から明らかなように、ラメラ状SiO2層厚みがこの発明の範囲内にあるとき良好な磁気特性及び被膜特性を得ることができる。
【0039】
実施例2
C:0.04%、Si:3.28%、Mn:0.07%、Se:0.02%およびSb:0.025 %を含み残部は実質的にFeよりなるスラブを1400℃の温度に加熱後、2.6mm 厚に熱間圧延し、1000℃・2分間の中間焼鈍をはさんで0.30mmまで冷間圧延し、最終冷延板厚に仕上げた。これを表2の1,2の条件で1次再結晶焼鈍することにより内部酸化層中のラメラ状SiO2層厚みを0.2 μm と1.3 μm とに変化させた。その後、不純物のSO3 濃度が0.1 %、水和水分量1.2 %のMgOと1.5 %のTiO2及び各種の硫酸化合物をSO3 換算で0.5 %添加した焼鈍分離剤を塗布したのち乾燥した。しかるのち仕上焼鈍として820 ℃の温度で50時間保定した後dryH2 雰囲気で1150℃・5時間の純化焼鈍を行った。
【0040】
【表2】
Figure 0004161391
【0041】
このようにして得られた鋼板の磁気特性を調査した。それらの調査結果を表3にまとめて示す。
【0042】
【表3】
Figure 0004161391
【0043】
表3から明らかなように、Sr, Mg, Ti, Cu, Pb, NiまたはSnの各硫酸塩を用いたこの発明の適合例は良好な磁気特性と被膜特性が得られている。
【0044】
実施例3
各種の化学組成を持つスラブを1400℃の温度に加熱し、2.2mm 厚に熱間圧延し、1050℃・2分間の中間焼鈍をはさんで0.30mmまで冷間圧延し、最終冷延板厚に仕上げた。これを前掲表2の条件で1次再結晶焼鈍することにより内部酸化層中のラメラ状SiO2層厚みを0.2 μm と1.3 μm とに変化させた。その後、持ち込み水分量2.0 %、不純物SO3 濃度0.1 %のMgOと0.8 %のCuSO4(SO3 換算で0.4 %) を添加した焼鈍分離剤を、塗布したのち乾燥した。しかるのち仕上焼鈍として700 ℃〜1000℃までの昇温速度を20℃/h で昇温後dryH2 雰囲気で1150℃・5時間の純化焼鈍を行った。
このようにして得られた鋼板の磁気特性を調査した。それらの調査結果を表4にまとめて示す。
【0045】
【表4】
Figure 0004161391
【0046】
表4から明らかなようにこの発明範囲(適合例)においては高い磁気特性が実現されている。
【0047】
【発明の効果】
この発明は、方向性けい素鋼板の製造において、1次再結晶焼鈍で被成される酸化膜層中のラメラ状SiO2層の厚み:wおよび焼鈍分離剤中のS量をSO3 として換算した値:sをそれぞれ特定するとともに、上記両者の積を特定するものであり、
この発明によれば、磁気特性、被膜特性の良好な方向性けい素鋼板を安定して製造することが可能となり、品質向上、歩留り向上に大きく寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ラメラ状SiO2層厚み、分離剤中のSO3 濃度と製品特性の関係を示すグラフである。
【図2】ラメラ状SiO2層の説明図である。

Claims (2)

  1. Cを 0.10wt %未満、Siを2〜4.5wt%およびMnを0.03〜0.10 wt%の範囲で含有し、さらに、S、 Se Al およびNから選ばれる1種または2種以上を、S+ Se 0.01 0.03wt %、 Al 0.01 0.04wt %、N: 50 120ppm にて含有し、残部 Fe および不可避不純物からなる鋼素材を、加熱炉にて加熱後熱間圧延し、1回もしくは中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延を施して最終冷延板厚に仕上げたのち、1次再結晶焼鈍をし、その後スラリー状焼鈍分剤を塗布し乾燥してから最終仕上焼鈍を行う一連の工程よりなる方向性けい素鋼板の製造方法において、
    1次再結晶焼鈍時の雰囲気、温度および時間を制御することにより、1次再結晶焼鈍で被成される酸化層中において下記に定義される酸化層中のラメラ状SiO2を含むシリカ富化層の厚み:w (μm)を0.2μm以上、3.6μm以下の範囲にすること、
    Sr、Mg、Ti、Cu、Pb、NiまたはSnの硫酸化合物の1種または2種以上の添加剤を含むMgOを主体とする焼鈍分離剤を用い、MgO中の不純物と添加剤とを含めた焼鈍分離剤全体のS含有量をSO3 として換算した値:s (wt%)を0.1wt%以上、2.8 wt%以下の範囲にすること、さらに上記wとsとの関係を0.15≦w・s≦3.3 を満たす範囲に調整することとからなる方向性けい素鋼板の製造方法。

    酸化層中のラメラ状SiO2を含むシリカ富化層の厚み:酸化層−地鉄界面の位置からからラメラ状SiO2が消える位置までの板厚方向での平均間隔
  2. 前記鋼材に、さらに、 Cu Sn Sb Mo Te Bi 、P、 Ni およびVから選ばれる1種または2種以上を合計で 0.01 0.2wt %含有する請求項1に記載の方向性けい素鋼板の製造方法。
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