JP4156479B2 - 高分子弾性体水分散液の含浸方法およびそれを用いた人工皮革基体の製造方法 - Google Patents

高分子弾性体水分散液の含浸方法およびそれを用いた人工皮革基体の製造方法 Download PDF

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本発明は水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分からなる極細繊維発生型繊維から構成された繊維絡合体へ高分子弾性体水分散液を含浸する際に、繊維絡合体に対する高分子弾性体水分散液の浸透性と含浸圧力等を調整することで、水溶性高分子の溶出、シワや伸びの発生、あるいは生産効率の低下を生じることなく該繊維絡合体の内部に高分子弾性体水分散液を含浸する方法およびそれを用いた人工皮革基体の製造方法を提供するものである。
従来から、不織布、織編物などの繊維絡合体およびこれらの各種加工品などの厚手のシート状物にポリウレタン等で代表される弾性重合体溶液、エマルジョンなどの高分子弾性体分散液を含浸し、皮革様の風合いの付与、さらには機能性の優れたシート状物を作製することは良く知られており、工業的にも広く活用されている。
また近年、有機溶剤の使用に対して人体、環境への悪影響の懸念から、人工皮革の製造においても無溶剤での製造プロセスの確立が要望されており、例えば、繊維絡合体に用いる極細繊維発生型繊維としては水溶液で抽出成分を抽出除去して極細繊維とするタイプが、また繊維絡合体の内部に含浸する樹脂としては高分子弾性体水分散液が検討されており、それらの組み合せの製造プロセスが挙げられる。また極細繊維発生型繊維として公知の剥離分割型タイプを用いる場合においても、形態安定性、高分子弾性体からの立毛層保護など風合い、品位を制御するといった目的からポリビニルアルコールを予め繊維絡合体に付与し、その後、さらに高分子弾性体水分散液を含浸する等の組み合せによる製造プロセスが挙げられる。しかしながらこれら組み合せ製造プロセスを用いた場合、ポリビニルアルコールが高分子弾性体水分散液の溶媒中へ溶出し、高分子弾性体水分散液を汚染してしまうといった問題を抱えている。
例えば、従来の含浸方法としては、走行している繊維絡合体を高分子弾性体溶液中へ浸漬した後、ニップ装置で絞ることにより繊維絡合体内部の空気を追出し高分子弾性体溶液と置換させる方法、さらには適当なニップ圧力を採用することにより所望の含浸率で含浸する方法(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。しかしながら、この方法で繊維絡合体内部に充分含浸液を含浸させるためにはニップ装置が複数段配列された多段ニップ装置で処理するか、あるいは単一のニップ装置であれば複数回のニップ処理を要しなければならず、この過程でのシワ、永久の伸びなどが問題となる他、多段ニップ装置の場合には設備費が高価になり、単一のニップ装置による複数回のニップ処理を行う場合には複数回の処理に要する手間により生産効率が悪くなる。また水溶性高分子成分を有する繊維からなる繊維絡合体へ高分子弾性体水分散液を含浸する場合、ニップ処理することで繊維中の水溶性高分子成分が搾り出され、高分子弾性体水分散液が汚染されて該高分子弾性体水分散液の品質が不安定となるといった問題も生じる。
また、含浸時のシワや伸びの発生などの問題点を改善する方法として、繊維絡合体の厚さと同程度又はそれよりも幾分大きい間隙を有する一対の複数組のローラー間を通過させ、ローラー表面に均斉にかつ定常的に高分子弾性体分散液を供給することによって繊維絡合体内部へ該高分子弾性体分散液を含浸させる方法(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。この方法では、繊維絡合体がローラーを通過するときのローラーによる加圧力が含浸の推進力となり、必要以上に強い力で圧縮しないため繊維絡合体のシワ、伸びの発生を防ぐことができる。しかしながら、各ローラー1本当たりの通過時間は0.1〜0.2秒程度の極めて短時間であるため、含浸を充分に行うために多数のローラーが必要となり、コスト的、スペース的に好ましくなく工業的に不利である。また水溶性高分子成分を有する繊維からなる繊維絡合体へ高分子弾性体水分散液を含浸する場合、ローラーが必要以上に強い力で圧縮しないものの、該繊維絡合体がローラーと接触する頻度や時間が長くなればなるほど、すなわち該繊維絡合体が高分子弾性体水分散液へ接触する時間が長くなればなるほど、繊維を構成する水溶性高分子成分の溶出が懸念され、やはり高分子弾性体水分散液が汚染されやすいといった問題が生じる。
また、ローラーによるニップ処理を行わない方法、あるいは多段ローラーを使用せずに含浸する方法として、走行している繊維絡合体に対して片面、もしくは両面から加圧液体を圧入することにより含浸させる方法(例えば、特許文献3および特許文献4参照。)が提案されている。しかしながらこれらの方法では、繊維絡合体内の厚さ方向に均一に含浸液が含浸しないうちに繊維絡合体が通過してしまい、充分に含浸液を含浸させるには繊維絡合体の反対側から更に吸引するか、処理速度を落とさなければならず、設備が複雑になるばかりか液体の含浸に比較的長時間を要し、生産効率を低下させるといった問題がある。
さらに、厚手の繊維絡合体に含浸処理する場合に含浸する液体の圧入圧力を上げると、繊維絡合体と含浸装置との境界面から含浸液が漏出してしまうなどの問題がある。
更に前記した問題点を改善する方法として、加圧された高分子弾性体溶液を繊維絡合体の片面から厚さ方向の途中まで含浸させ、次いで該溶液が途中まで含浸された繊維絡合体をさらにニップロールで加圧処理して、繊維絡合体の厚さ方向全体に液体を含浸させる含浸方法(例えば、特許文献5参照。)が提案されている。この方法は処理速度を落とすことなく繊維絡合体の内部へ均一に含浸することが可能であり、またニップ処理を行うものの余剰含浸液が発生しない含浸方法である。しかしながら、水溶性高分子成分を有する極細繊維発生型繊維からなる繊維絡合体へ高分子弾性体水分散液を含浸する場合、ニップロール処理で該水溶性高分子成分が繊維絡合体外部へ搾り出されないまでも繊維絡合体内部へ搾り出されてしまう傾向がある。このような含浸状態で人工皮革を製造する場合、高分子弾性体が極細繊維を直接バインドする傾向がありそれによって風合いが硬く損なわれてしまう。
以上、従来の含浸技術では、水溶性高分子成分を有する極細繊維発生型繊維からなる繊維絡合体へ高分子弾性体水分散液を含浸する場合において、極細繊維発生型繊維を構成する水溶性高分子成分の溶出、繊維絡合体のシワや伸びの発生、あるいは生産効率が低下することなく含浸すること、さらには人工皮革を製造することができなかった。
実公昭61−26394号公報(第337−339頁) 特公昭48−27442号公報(第9−10頁) 特開昭54−96184号公報(第646−648頁) 特開2002−249974号公報(第2−3頁) 特公平7−17023号公報(第2−6頁)
本発明は水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分からなる極細繊維発生型繊維から構成されている繊維絡合体へ高分子弾性体水分散液を含浸させるに際し、繊維絡合体に対する高分子弾性体水分散液の浸透性と含浸圧力を調整することで、水溶性高分子成分の溶出、シワ、伸びの発生、さらには生産効率の低下を生じることなく含浸する方法を提供するものである。
すなわち、本発明は水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分からなる極細繊維発生型繊維から構成されている繊維絡合体の内部に高分子弾性体水分散液を含浸させるに際し、以下(1)〜(5)を満足することを特徴とする高分子弾性体水分散液の含浸方法である。
(1)高分子弾性体水分散液をポンプを設けて加圧することにより、繊維絡合体の内部に該高分子弾性体水分散液を加圧浸透させることを利用した含浸方法であること
(2)繊維絡合体への浸透時間を10秒以下に調節した高分子弾性体水分散液を用いること
(3)高分子弾性体水分散液の含浸圧力が1,000〜100,000Paであること
(4)繊維絡合体が含浸直前に繊維絡合体厚みの40〜99%の間隙で圧縮されていること
(5)高分子弾性体水分散液供給量が繊維絡合体空隙量の60〜100%であること
さらには、極細繊維発生型繊維を構成する水溶性高分子成分が、炭素数4以下のオレフィン単位および/またはビニルエーテル単位を1〜20モル%含有し、けん化度90〜99.99モル%である変性ポリビニルアルコールであることが好ましい。
また、上記含浸方法により繊維絡合体の内部に高分子弾性体水分散液を含浸した後、該高分子弾性体を加熱凝固し、さらに極細繊維発生型繊維を構成する水溶性高分子成分を60〜100℃の熱水で抽出除去し極細繊維化することを特徴とする人工皮革基体の製造方法であり、人工皮革基体を構成する高分子弾性体と極細繊維化された繊維絡合体の比率が15:85〜60:40の範囲となるように含浸することが好ましい。
本発明は、水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分からなる極細繊維発生型繊維から構成された繊維絡合体へ高分子弾性体水分散液を含浸する際に、該繊維絡合体に対する高分子弾性体水分散液の浸透性と含浸圧力を調整することで、水溶性高分子成分の溶出およびシワや伸びの発生がなく、また生産効率の低下を生じることなく含浸する方法、さらには皮革様で均一な風合いや優れた物性を有する人工皮革基体を安定に製造する方法を提供する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分からなる極細繊維発生型繊維から構成された繊維絡合体へ高分子弾性体水分散液を含浸する際に、該水溶性高分子成分の溶出、シワ、伸びの発生を抑制した含浸方法である。すなわち、繊維絡合体に対する高分子弾性体水分散液の浸透性と含浸圧力を調整することによって、含浸速度を低下させること無く、かつ過剰に加圧すること無く含浸させることが可能となる。また繊維絡合体を含浸直前に特定の圧縮を行うことによって、繊維絡合体内部の空気と高分子弾性体水分散液の置換および含浸量の制御が可能となり、さらに従来必要であったニップロールを用いなくとも皮革様の風合いや物性に適した所望の量の含浸および含浸状態が可能となる。また、高分子弾性体水分散液を繊維絡合体空隙量の60〜100%供給することで該繊維絡合体の内部へ均一に含浸することができる。
本発明の繊維絡合体を構成する極細繊維発生型繊維の繊度は特に人工皮革の用途によって任意に選択でき特に制限されるものではないが、極細繊維化後に0.0001〜0.5デシテックスの繊度を有し、0.001〜0.45デシテックスの繊度を有することが好ましく、0.002〜0.4デシテックスの繊度を有することが人工皮革基体を製造する上でより好ましい。
また本発明の水溶性高分子成分とは、該成分が水溶液により抽出除去される成分を示し、水難溶性高分子成分とは、該成分が水溶液により抽出除去されにくい成分を示す。そして、水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分からなる極細繊維発生型繊維は少なくとも1成分が水溶液による抽出処理で抽出除去されるものであれば、海島型複合繊維、混合紡糸型繊維などの多成分系複合繊維のいずれを使用してもよい。本発明で用いられる水溶性高分子成分としては、水溶液(水系溶剤と称することもある)で抽出処理できるポリマーであれば、公知のポリマーが使用できるが、水系溶剤で溶解可能なポリビニルアルコール共重合体類(以下PVAと略することもある)を用いることが好ましい。PVAは容易に熱水で溶解除去が可能であり、水系溶剤で抽出除去する際の収縮挙動によって極細繊維成分の極細繊維発生型繊維に構造捲縮が発現し、繊維絡合体が嵩高く緻密なものとなって非常に柔軟な天然皮革のような優れた風合いの人工皮革基体が得られる点、および抽出処理する際に極細繊維成分や高分子弾性体成分の分解反応が実質的に起こらないため極細繊維成分に用いる熱可塑性樹脂および高分子弾性体成分の限定が無い点、更には環境に配慮した点等から好適に用いられる。
上記PVAはホモポリマーであっても共重合単位を導入した変性ポリビニルアルコールであってもよいが、溶融紡糸性、水溶性、繊維物性および抽出処理時の収縮特性などの観点から、共重合単位を導入したPVAであることが好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数4以下のα―オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチレンビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類がより好ましい。また炭素数4以下のα−オレフィン類および/またはビニルエーテル類に由来する単位は、PVA中に1〜20モル%存在していることが好ましい。さらに、α−オレフィンがエチレンである場合において、繊維物性が高くなることから、特にエチレン単位が4〜15モル%変成されたPVAを使用することがより好ましい。
またけん化度は90〜99.99モル%が好ましく、92〜99.98モル%がより好ましく、94〜99.96モル%がさらに好ましく、95〜99.95モル%が特に好ましい。けん化度が90モル%未満の場合には、PVAの熱安定性が悪く熱分解やゲル化によって満足な複合溶融紡糸を行うことができない。一方、けん化度が99.99モル%よりも大きいPVAは安定に製造することが困難である。
また常温で水に溶出するタイプのPVAを水溶性高分子成分として用いた場合には含浸時に水溶性高分子成分が溶出し高分子弾性体水分散液を汚染してしまう場合があり、また水溶性高分子成分の一部溶出に伴い極細繊維部分が露出することによって含浸した高分子弾性体が極細繊維を直接バインドし人工皮革の風合いが硬く損なわれやすいことから60〜100℃の熱水に溶出するタイプのPVAを水溶性高分子成分として用いることが好ましい。さらに60〜100℃の熱水で水溶性高分子成分を溶出することによって、繊維絡合体の収縮挙動が発生し構造捲縮を生じやすいことから天然皮革並みの優れた風合いの人工皮革基体が得られる点で好ましい。
またPVAを高温で紡糸すると紡糸性の悪化を招くため、本発明の水難溶性高分子成分としては公知の極細繊維となりうる、例えば、ポリアミド系、ポリエステル系およびポリオレフィン系等の成分であれば特に限定するものではない。そして、極細繊維を構成する水難溶性高分子成分の融点を適宜選択することが好ましく、極細繊維を構成する水難溶性高分子成分としては、極細繊維を形成する過程において抽出除去される水溶性高分子成分の融点プラス60℃以下の融点を有する熱可塑性成分を選択することが極細繊維発生型繊維の紡糸安定性の点で好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、イソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートあるいはイソフタル酸を共重合したポリブチレンテレフタレートなどで代表されるポリエステル系樹脂、あるいはナイロン6、ナイロン11、ナイロン12などで代表されるポリアミド系樹脂が好ましく挙げられる。なお水溶性高分子成分の融点としては、紡糸性などの点から160〜230℃が好ましい。
そして必要に応じて、極細繊維中に顔料を0〜5質量%添加してもよく、この場合の顔料としては、例えばフタロシアニン系、アントラキノン系などの有機顔料や酸化チタン、カーボンブラック、クロムレッド、モリブデンレッドなどの無機顔料など通常ポリマー原着に使用されているものを用いることができる。顔料の添加方法としては、極細繊維を構成するポリマー中における顔料の分散性を良好にするため、極細繊維を構成するポリマーと顔料を押出機などのコンパウンド設備を用いて混練した後ペレット化したマスターバッチ方式を採用することが好ましい。また、極細繊維成分には本発明の目的や効果を損なわない範囲で、銅化合物などの安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤を重合反応時、またはその後の工程で添加しても良い。微粒子の種類は特に限定されず、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの不活性微粒子を添加することができ、これらは単独で使用しても2種類以上併用しても良い。紡糸性、延伸性が向上する場合がある。
なお、極細繊維発生型繊維を構成する水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分の質量比率としては、10/90〜60/40の範囲が、断面形成性が良好なため水溶性高分子が極細繊維を完全被覆しており、繊維絡合体内部での均一な浸透性が得られ均一含浸に有利である点、あるいは人工皮革基体とした場合、断面形成性が良好なため発生する極細繊維が均一であり、得られる人工皮革の風合いを損なわない点で好ましい。
本発明の繊維絡合体としては、公知の方法を用いることができる。例えば、上記で得られる極細繊維発生型繊維を捲縮付与した後ステープル化し、カード、クロスラッパー、ランダムウエバー等によりウエブを形成し、ニードルパンチにより繊維を絡ませ、必要に応じ乾熱収縮、熱水収縮、熱プレスすることで得られる。得られた繊維絡合体は人工皮革として仕上げ、その用途によって任意に選択でき特に制限されるものではないが、目付は600〜1500g/m、密度0.20〜0.80g/cmが好ましく、0.25〜0.70g/cmがより好ましい。0.20g/cm未満では立毛調人工皮革としたときの繊維の立毛感や人工皮革基体の機械物性が不足し、0.80g/cmを越えると人工皮革基体の風合いが硬くなってしまう。そして繊維絡合体の厚みは該目付け範囲および密度範囲を満たしていれば特に限定されないが、厚み斑が大きい場合、供給する高分子弾性体水分散液が繊維絡合体供給面で付着斑を生じやすいため、厚み斑としては繊維絡合体平均厚みの±7.5%以下が好ましく、±5.0%以下がより好ましい。なおここでいう繊維絡合体平均厚みとは、繊維絡合体10箇所以上の厚み測定を行ない、その値から算出した平均値を指す。
前記した通り、水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分からなる極細繊維発生型繊維で構成される繊維絡合体へ高分子弾性体水分散液を含浸する際、特に繊維絡合体の密度が高い場合、含浸圧力だけで浸透させるには含浸圧力を過剰に高めない限り、繊維絡合体内の厚さ方向に均一に含浸液が含浸しないうちに繊維絡合体が含浸処理を終了してしまい、充分に高分子弾性体水分散液を含浸させ難い。その対策として繊維絡合体の含浸側とは反対側から更に吸引を行うか、または含浸処理速度を低下させなければならず、複雑な設備が必要となり、また高分子弾性体水分散液の含浸に比較的長時間を要し、生産効率が低下する傾向がある。しかしながら無理に含浸圧力を高めた場合、繊維絡合体と含浸装置との境界面から含浸液の漏出が生じて適量の含浸が困難となる傾向がある。本発明は繊維絡合体に対する高分子弾性体水分散液の浸透性と含浸圧力を調整することで、煩雑なプロセスを用いること無く、また含浸圧力を高めること無く、繊維絡合体の内部に高分子弾性体水分散液を均一な状態でかつ短時間で含浸処理することを可能とするものである。まず高分子弾性体水分散液の浸透性に関しては、繊維絡合体への浸透時間を10秒以下に調節した高分子弾性体水分散液を用いることが重要であり、5秒以下が好ましく、2秒以下がより好ましい。10秒を越える場合、繊維絡合体へ供給された全ての高分子弾性体水分散液が繊維絡合体内部へ均一にかつ十分に含浸しきれず、高分子弾性体水分散液が繊維絡合体供給面から溢れ溶液供給部周辺を汚染し、更には繊維絡合体内部での含浸樹脂量が不足したものとなる。
なお、ここでいう浸透時間とは、高分子弾性体水分散液と繊維絡合体の相対的な浸透時間をいい、含浸する高分子弾性体水分散液0.035ccを10cmの高さから繊維絡合体へ滴下し、滴下時より完全に浸透するまでの時間を測定したものである。また、完全に浸透するとは、高分子弾性体水分散液が繊維絡合体上に盛り上がった状態でなくなることを目視で確認できた状態をいう。そして、本発明の浸透時間となるように適宜高分子弾性体水分散液の粘度や濃度を調整した後に処理すれば良い。繊維絡合体の密度が0.20〜0.80g/mの場合、高分子弾性体水分散液の粘度は2〜80cpoiseが好ましく、濃度は30〜60%とする組み合せが浸透時間を10秒以下としやすい点で好ましい。 また高分子弾性体水分散液濃度は、35〜50質量%であることがより好ましい。30質量%未満では乾燥工程でマイグレーションを生じやすく、また60質量%を越える場合、前記した浸透時間が増加傾向にあり、所定量の含浸樹脂量が低下する傾向がある。
また、繊維絡合体と高分子弾性体水分散液の粘度および濃度の組みわ合せが上記のままの組み合せでは浸透時間が10秒を越える場合、浸透性向上のために高分子弾性体水分散液中へ界面活性剤を適宜添加して10秒以下とすることが良い。界面活性剤としては、湿潤剤、浸透剤、レベリング剤など公知のものが使用でき、中でもスルホコハク酸ジー2−エチルヘキシルエステルナトリウム塩、スルホコハク酸ジオクチルエステルナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩型アニオン界面活性剤:ラウリル硫酸エステルナトリウム、硫酸化オレイン酸ブチルエステルナトリウム塩、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム等の硫酸エステル塩型アニオン界面活性剤:ポリエチレングリコールーモノー4ーノニルフエニルエーテル、ポリエチレングリコールーモノーオクチルエーテル、ポリエチレングリコールーモノーデシルエーテル等のHLB価6〜16のポリエチレングリコール型ノニオン界面活性剤:フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
本発明の高分子弾性体水分散液の含浸方法においては繊維絡合体に対する高分子弾性体水分散液の浸透性が前記の範囲を満足すると共に含浸圧力を調整する必要がある。特に繊維絡合体内部に高分子弾性体をより均一に含浸するためには繊維絡合体の密度や目付にもよるが、供給する高分子弾性体の含浸圧力は1,000〜100,000Paが必要であり、2000〜80000Paが好ましく、2000〜50000Paがより好ましい。1,000Pa未満では供給する高分子弾性体水分散液を、人工皮革基体の繊維絡合体に対し高分子弾性体供給面から反対側まで充分浸透ができず、さらには得られる人工皮革基体の風合いが低下する。一方100,000Paを越える場合、浸透性は良好であるが供給される高分子弾性体が供給面から洩れを生じ、周囲が汚染され作業性が低下する。前記範囲の高分子弾性体水分散液の含浸圧力で含浸する繊維絡合体としては、高分子弾性体水分散液の浸透性が10秒以下である繊維絡合体を用いることが必要であり、繊維絡合体の密度が0.20〜0.80g/cm、目付が600〜1500g/mであることがより好ましい。なお、ここでいう高分子弾性体水分散液の含浸圧力とは、繊維絡合体へ接している液溜室内の圧力を指し、該液溜室へ液圧測定装置を設置しておくことで求めることができる。ここでの液圧測定装置は測定できるものであれば特に限定されない。
本発明で繊維絡合体へ供給される高分子弾性体水分散液を構成する高分子弾性体としては、人工皮革に用いられる含浸用高分子弾性体であれば特に限定されないが、ウレタン系重合体、アクリル系重合体が好ましく用いられ、該重合体を水などの非溶剤中に分散させて得られる重合体分散液などが挙げられる。そして必要に応じて種々の有機系顔料および無機系顔料などを添加してもよく、その場合の有機顔料としては、例えばフタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ぺリレン系、チオインジゴ系、アゾ系顔料等が挙げられ、また無機系顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、べんがら、クロムレッド、モリブデンレッド、リサージ、酸化鉄等が挙げられる。
また高分子弾性体水溶液を含浸した後、高分子弾性体を加熱凝固する。凝固する方法としては、公知の方法が挙げられるが、例えば、熱処理して乾式凝固、あるいは熱水処理、スチーム処理して感熱凝固する方法が好ましく挙げられる。
また本発明では、高分子弾性体水分散液に感熱ゲル化性化合物を添加する等の公知の方法で、繊維絡合体全体に均一に存在できるように高分子弾性体を凝固する方法を加えることがより好ましい。繊維絡合体全体に均一に存在できるように高分子弾性体を凝固する方法がより好ましい。
また粘度としては高分子弾性体水分散液の浸透性が阻害されない範囲であればよく、上記のように、2〜80cpoiseが好ましく、5〜60cpoiseがより好ましく、10〜50cpoiseが更に好ましい。
そして繊維絡合体内部で均一な含浸を行なうために、高分子弾性体水分散液の供給量が繊維絡合体空隙量の60〜100%であることが重要であり、70〜99%が好ましい。なお、ここでいう繊維絡合体空隙量は、後述の計算方法によって求めることができる。高分子弾性体水分散液の供給量が繊維絡合体空隙量の60%未満の場合、繊維絡合体の高分子弾性体分散液供給側とその反対側での含浸量が異なり、繊維絡合体内部での高分子弾性体分散液の分布が不均一となるため、該繊維絡合体からなる人工皮革基体を人工皮革に仕上げた場合、皮革様の風合いに劣り、さらに立毛調人工皮革に仕上げた場合の表面感が劣ったものとなる。一方、100%を越える場合、繊維絡合体内部での高分子弾性体分散液の分布は均一であるが、供給過剰のため繊維絡合体の高分子弾性体分散液供給面と反対の面から該高分子弾性体水分散液が溢れ、接するローラーなどの含浸設備を汚染するのみならず繊維絡合体の不必要な部分にまで高分子弾性体水分散液が付着してしまい、工程通過性や作業性に問題を生じる。
本発明で繊維絡合体へ高分子弾性体水分散液を供給する場合の含浸装置は、繊維絡合体の内部に加圧浸透させることを利用した含浸方法を用いた装置である必要がある、例えば繊維絡合体を走行させるバックロール、および該バックロールに近接して含浸具を配し、さらに該含浸具から高分子弾性体水分散液を供給するためのポンプを設けた装置であることが好ましい(例えば、図1を参照。)。そして、この場合のポンプは、単位時間当たりの液供給量が一定であり、含浸の条件に応じてその供給量の設定値を変更できるものであることがより好ましい。
含浸装置には、繊維絡合体が含浸具を通過する際の入口と出口にエッジを設け、さらに処理方向と垂直の方向すなわち繊維絡合体横断方向(巾方向)両側に側壁を設け、該エッジと該側壁で囲まれた液溜め室が形成されており、該液溜め室内のスリット状吐出口からポンプにより定量の高分子弾性体水分散液を繊維絡合体の内部に加圧浸透させて供給する。側壁は液溜め室の液体をシールできれば特に限定されないが、供給される高分子弾性体水分散液が繊維絡合体の両端から洩れることなく全て繊維絡合体内部へ浸透させるため、繊維絡合体横断方向両側に設けている側壁の間隔(高分子弾性体水分散液供給幅)は繊維絡合体幅よりも狭めておくことが好ましく、各側壁は各繊維絡合体サイドより5cm以上内側であることがより好ましい。
そして該含浸装置は繊維絡合体の上方、あるいは下方、あるいは上下両方に設ける場合のいずれでもかまわないが、作業性およびコスト面から下方へ一箇所設置してあることが工業的に有利である。

そして本発明の高分子弾性体水分散液の含浸方法は、繊維絡合体が含浸直前に繊維絡合体厚みの40〜99%の間隙で圧縮される必要があり、70〜98%であることが好ましい。繊維絡合体厚みの40%よりも強く圧縮されている場合、繊維絡合体と含浸装置の摩擦抵抗が大きく繊維絡合体の走行を阻害し、所定の速度で繊維絡合体が走行できないことから、繊維絡合体長さ方向における均一で安定な含浸が困難になる。また繊維絡合体厚みの99%を越える弱い圧縮では、繊維絡合体への高分子弾性体水分散液供給面から液が洩れやすく、含浸具周囲が汚染されてしまい、また所定量供給された高分子弾性体水分散液が全て浸透できないことから高分子弾性体含浸量が計算による使用予定量より不足してしまう傾向がある。従って圧縮の間隙は広すぎても、狭すぎても均一で安定な含浸が困難な結果となる。なお含浸後に繊維絡合体を圧縮する場合、水溶性高分子が溶出することで高分子弾性体水分散液を汚染し、また極細繊維発生型繊維を構成する水溶性高分子成分が過剰に溶出すると水難溶性高分子成分が直接露出し易い傾向にあり、高分子弾性体水分散液中の高分子弾性体が極細繊維を直接把持し、得られる人工皮革の風合いが硬く劣ったものとなることから、含浸直前に繊維絡合体を圧縮し圧縮された状態にて含浸することが必要である。なお、供給された高分子弾性体水分散液が繊維絡合体内部へ浸透し所定量含浸したものに加え繊維絡合体供給面に過剰に付着することで表面層を形成してしまう場合には、繊維絡合体の出口にエッジを設けることによって、該表面層を除去することも可能である。
また該含浸装置を用いて含浸する場合は、高分子弾性体水分散液が浸透する時間を確保できれば生産速度を低下させなくとも処理が可能である。好ましくは2m/min以上であり、より好ましくは2〜10m/minであればよい。2m/min未満では高分子弾性体水分散液の浸透は充分可能であるが、処理速度が遅いことから生産性が低下してしまい、また10m/minを越える場合、浸透時間によっては供給された高分子弾性体水分散液を全て浸透しきれない場合が生じ、所定量の含浸が困難な場合を生じる懸念がある。また、含浸は可能であっても凝固乾燥が不十分となる懸念があり、これらが払拭されれば10m/分以上での処理も可能である。
また含浸される高分子弾性体水分散液は、高分子弾性体:極細繊維絡合体=15:85〜60:40の質量比となるように付与することが好ましい。人工皮革として仕上げる場合、高分子弾性体は繊維を結束するバインダーとしての効果を得るものであり、15質量%未満の場合、バインダー効果を充分満足できず、また60質量%を越える場合、前述した効果が得られるものの、引裂強力、引張強力などの物性が劣り、また風合いが固く劣ったものとなる。
本発明の高分子弾性体水分散液を含浸する方法は、浸透性と含浸圧力等を調整することで高分子弾性体水分散液供給量全てを繊維絡合体へ所定量、かつ均一に含浸できることから、ニップロールを使わなくとも、高分子弾性体:極細繊維絡合体=15:85〜60:35の質量比調整を高分子弾性体水分散液の供給量と濃度調整だけで行なえる。ニップロール処理が不要となることで、さらに繊維絡合体表面が有する水溶性高分子を高分子弾性体水分散液に溶出することを防ぐことができ、またシワ、伸びの発生などの問題も解消することができる。
極細繊維発生型繊維からなる繊維絡合体へ高分子弾性体水分散液を含浸した後、極細繊維および高分子弾性体の非溶剤であり且つ抽出除去成分の溶剤である処理液で抽出除去成分を除去し、極細繊維発生型繊維を極細化する。
特に抽出除去する場合、環境問題の点から熱水、アルカリ液などの水系溶媒で抽出除去成分を除去して極細繊維発生型繊維を極細化する方法が好ましい。特に熱水抽出する場合は、熱水温度として60〜100℃の温度が好ましく、80〜95℃がより好ましい。60℃未満では水溶性高分子の除去に時間を要することから熱水温度は高いほど好ましい。しかし100℃を越える温度を付与した際、樹脂と繊維の結束がゆるみ易く、樹脂が有する繊維把持性の低下が懸念されるため100℃以下の範囲が好ましい。また必要に応じて所望の厚みに加圧加熱処理や分割処理などで厚みあわせを行う。また、極細繊維発生型繊維を極細化する前あるいは後に、少なくとも一面をバフィング処理等の起毛処理を施し、極細繊維を主体とした極細繊維立毛面を形成させて立毛調人工皮革としてもよい。またその場合、必要により、揉み柔軟化処理、逆シールのブラッシングなどの仕上げ処理を行うことができる。
本発明の人工皮革は、必要に応じて樹脂層を付与して、銀付き調あるいは半銀付き調の人工皮革とすることもできる。また、表面を加熱し、平滑面に押圧することにより不織布表層部を溶融して樹脂層とすることもできる。表面に付与する樹脂としては、ポリウレタンやアクリルで代表される弾性重合体が好適に用いられる。また、極少量の染料あるいは少量の顔料を用いて着色処理を行っても良い。また、必要に応じて、本発明の人工皮革を上層に使用し、編物あるいは編物を下層となるよう貼り合わせたり、あるいは、本発明の立毛調人工皮革を上層に使用し、該立毛調人工皮革を構成する繊維とは異種の繊維からなる層を下層となるよう貼り合わせたりしても構わない。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお以下の実施例、比較例中に記載されている性能測定などの評価は以下の方法で行なった。
[浸透時間測定]
高分子弾性体水分散液として、グレー水分散顔料(大日本インキ化学工業株式会社製 RyudyeWグレー)とエーテル系ポリウレタン水分散エマルジョン (第一工業製薬株式会社製 スーパーフレックス E−4800)を顔料/エマルジョン=1.8/100の固形分質量比に混合し、濃度40質量%、粘度10cpoise、密度1.02g/cmの高分子弾性体水分散液を作成し、該高分子弾性体水分散液0.035ccを10cmの高さから繊維絡合体へ滴下し、滴下時より完全に浸透するまでの時間を測定した。
[繊維絡合体空隙量]
単位時間あたりに処理する繊維絡合体空隙量は以下の計算式より算出した。
A=DEFG×(C/D−1)/B
A(cm3/min) : 繊維絡合体空隙量
B(g/cm3) : 高分子弾性体水分散液の密度
C(g/cm3) : 繊維構成樹脂の密度
D(g/cm3) : 繊維絡合体の見掛け密度
E(cm) : 繊維絡合体の厚み
F(cm) : 高分子弾性体水分散液塗布幅
G(cm/min) : 走行速度
イソフタル酸10モル%共重合ポリエチレンテレフタレート(融点234℃)を島成分とし、エチレン単位10モル%含有し、けん化度98.4モル%、融点210℃のポリビニルアルコール共重合体(株式会社クラレ製 エクセバール)を海成分とし、質量比を海/島=30/70とした64島の繊維を複合紡糸した後、延伸することで繊度5.5デシテックス、島成分繊度0.06デシテックス、繊維構成樹脂密度1.27g/cmの繊維を得た。この繊維を捲縮処理した後51mmへカットし、カード、ニードル処理し、185℃の乾熱収縮により20%面積収縮し、170℃熱プレスすることで目付け1080g/cm、見掛け密度0.64g/cm、平均厚み1.68mm、厚み斑±4.5%の繊維絡合体を得た。
次にグレー水分散顔料(大日本インキ化学工業株式会社製 RyudyeWグレー)とエーテル系ポリウレタン水分散エマルジョン (第一工業製薬株式会社製 スーパーフレックス E−4800)を顔料/エマルジョン=1.8/100の固形分質量比に混合し、濃度40質量%、粘度10cpoise、密度1.02g/cmである高分子弾性体水分散液を得た。該高分子弾性体水分散液の前記した繊維絡合体への浸透時間は0.37秒であった。
次に含浸設備としてリップコーター設備(株式会社ヒラノテクシード製 リップダイレクト方式)を用い、バックローラー下部に設置されているノズルヘッド通過時の含浸直前の繊維絡合体圧縮を繊維絡合体に対して86%の間隙で設定し、バックローラーを介して幅100cmの上記不織布を2.5m/minで走行させた。このクリアランス設定で繊維絡合体は問題なく走行した。
塗布幅を90cm設定となるように側壁を設け、該繊維絡合体へ前記した高分子弾性体水分散液を塗布、含浸する場合、繊維絡合体空隙量は2322cm/minであった。ここで極細繊維化された繊維絡合体/高分子弾性体=70/30の質量比となるよう、40質量%の高分子弾性体水分散液を繊維絡合体空隙量の84%に相当する1950cc/min、また含浸圧力20000Paで供給した。その際、供給した高分子弾性体水分散液は、ノズルヘッドと繊維絡合体の隙間から洩れることなく、全て繊維絡合体中へ浸透していた。また高分子弾性体水分散液供給面では液切れ状態が均一なものが得られ、もう一方の面と同等の外観が得られていた。高分子弾性体水分散液含浸後、160℃の熱風乾燥機で3分30秒間加熱凝固乾燥した。
含浸後、両サイド5cmの未含浸個所をカットし、90℃の熱水でポリビニルアルコール共重合体成分を抽出することで人工皮革基体を得た。得られた人工皮革基体はシワ、伸びの発生が無く良好な外観であり、皮革様の均一な風合いや優れた物性を有する人工皮革基体であった。また高分子弾性体割合は、31質量%であった。また、得られた人工皮革基体を2分割にスライスし、各々の高分子弾性体分布を調査した結果、高分子弾性体水分散液供給面側での高分子弾性体割合は32質量%、もう片側の高分子弾性体割合は30質量%であり、基体中の高分子弾性体水分散液分布はほぼ均一であった。
実施例1の繊維絡合体厚み斑として±3%のものを使用する以外は実施例1と同様の操作を行なった。その結果、得られた人工皮革はシワ、伸びの発生がなく良好な外観であり、皮革様の均一な風合いや優れた物性を有する人工皮革基体であった。また、高分子弾性体割合は31質量%とほぼ目標通りであった。同様に高分子弾性体分布は、高分子弾性体水分散液供給面側/反対側=32質量%/質量%30とほぼ均一であった。
実施例1の繊維絡合体として見掛け密度0.58g/cm、目付1246g/cm、平均厚み2.1mm、厚み斑±4.5%、実施例1で用いた高分子弾性体水分散液の濃度35質量%を用い、高分子弾性体水分散液の繊維絡合体への浸透時間を0.21秒とした。そして、繊維絡合体空隙量は3238cm/minであるため、極細繊維化された繊維絡合体/高分子弾性体=65/35の質量比となるよう、高分子弾性体水分散液を繊維絡合体空隙量の74%に相当する2400cm/minで供給した。その他は実施例1と同様の操作を行った。その結果、得られた人工皮革はシワ、伸びの発生がなく良好な外観であり、皮革様の均一な風合いや優れた物性を有する人工皮革基体であった。また、高分子弾性体割合は33質量%とほぼ目標通りであった。同様に高分子弾性体分布は、高分子弾性体水分散液供給面側/反対側=33質量%/35質量%とほぼ均一であった。
実施例1の高分子弾性体水分散液供給時の含浸圧力を50000Paとする以外は実施例1と同様の操作を行なった。その結果、供給した高分子弾性体水分散液はノズルヘッドと繊維絡合体の隙間から洩れることなく、全て繊維絡合体中へ浸透していた。また得られた人工皮革はシワ、伸びの発生が無く良好な外観であり、皮革様の均一な風合いや優れた物性を有する人工皮革基体であった。また、高分子弾性体割合は、31質量%であった。同様に高分子弾性体分布を調査した結果、高分子弾性体水分散液供給面側での高分子弾性体割合は32質量%、もう片側の高分子弾性体割合は30質量%であり、基体中の高分子弾性体分布はほぼ均一であった。
実施例1のノズルヘッド通過時の繊維絡合体圧縮率を繊維絡合体厚みの90%設定とする以外は実施例1と同様の操作を行なった。その結果、得られた人工皮革基体はシワ、伸びの発生がなく良好な外観であり、皮革様の均一な風合いや優れた物性を有する人工皮革基体であった。また、高分子弾性体割合は31質量%とほぼ目標通りであった。同様に高分子弾性体分布は、高分子弾性体水分散液供給面側/反対側=32質量%/30質量%とほぼ均一であった。
実施例1の高分子弾性体水分散液供給量を繊維絡合体空隙量の97%である2250cc/minとし、繊維化された繊維絡合体/高分子弾性体=65/35の質量比を目標として含浸処理する以外は実施例1と同様の操作を行なった。その結果、得られた人工皮革基体はシワ、伸びの発生がなく良好な外観であり、皮革様の均一な風合いや優れた物性を有する人工皮革基体であった。また、高分子弾性体割合は34質量%とほぼ目標通りであった。同様に高分子弾性体分布は、高分子弾性体水分散液供給面側/反対側=35質量%/34質量%とほぼ均一であった。
比較例1
実施例1の海成分としてポリエチレンを用い、また高分子弾性体溶液としてポリウレタンDMF溶液を用いる以外は実施例1と同様の操作を行なった。その結果、得られた人工皮革基体はシワ、伸びの発生はなかったが、繊維絡合体へのポリウレタンDMF溶液の浸透性が悪く、得られた基体の高分子弾性体割合は15質量%と目標値に未達であり、高分子弾性体による極細繊維の結束が弱いため、機械物性に劣るものであり、表面平滑性に劣るものであった。
比較例2
実施例1の繊維絡合体として見掛け密度0.96g/cm、目付け1249g/cm、厚み1.3mm、厚み斑±4.5%を用い、高分子弾性体水分散液の繊維絡合体への浸透時間を21秒とした。この繊維絡合体空隙量は881cm/minであり、その97%である855cm/minで高分子弾性体水分散液を供給することで繊維化された繊維絡合体/高分子弾性体=85/15の質量比を目標とし含浸処理を行う以外は実施例1と同様の操作を行なった。その結果、得られた人工皮革基体はシワ、伸びの発生はなかったが、繊維絡合体への高分子弾性体水分散液の浸透性が悪く、得られた人工皮革基体の高分子弾性体割合は8質量%と目標値に未達であった。
比較例3
実施例1の高分子弾性体水分散液供給時の含浸圧力を200000Paとする以外は実施例1と同様の操作を行なった。その結果、高分子弾性体水分散液供給面から反対面まで高分子弾性体水分散液の浸透性は良好であるが、供給面から高分子弾性体水分散液の洩れが見られ、生産効率の低下のみならず、得られた人工皮革基体の外観に劣るものであった。
比較例4
実施例1のノズルヘッド通過直前の圧縮率を繊維絡合体の間隙の35%に設定とする以外は実施例1と同様の操作を行なった。その結果、ノズルヘッドと繊維絡合体間の摩擦抵抗が大きく、繊維絡合体の走行を阻害し、含浸処理が不可能であった。
比較例5
実施例1の高分子弾性体水分散液供給量を最大充填量の55%である1278cm/min、高分子弾性体濃度を58質量%とする以外は実施例1と同様の操作を行なった。その結果、得られた人工皮革基体はシワ、伸びの発生がなかったが、皮革様の均一な風合いおよび機械物性に劣るものであった。また、高分子弾性体分布は高分子弾性体水分散液供給面側/反対側=40質量%/20質量%と不均一であった。
比較例6
実施例1の高分子弾性体水分散液供給方法としてディップニップ方式を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、高分子弾性体水分散液中に極細繊維発生型繊維を構成するポリビニルアルコール共重合体成分が溶出したため高分子弾性体水分散液粘度が増加し、含浸量を制御することが困難であった。また高分子弾性体水分散液含浸中にポリビニルアルコール共重合体成分が溶出していることから、得られた人工皮革基体は高分子弾性体が島成分の極細糸直接把持しており、風合いが固く、引き裂き強力に劣ったものであった。
本発明の含浸装置の一例を示す概略図である。
符号の説明
1 バックローラー
2 ポンプ
3 リップコーター
4 繊維絡合体
5 エマルジョン

Claims (4)

  1. 水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分からなる極細繊維発生型繊維から構成されている繊維絡合体の内部に高分子弾性体水分散液を含浸させるに際し、以下(1)〜(5)を満足することを特徴とする高分子弾性体水分散液の含浸方法。
    (1)高分子弾性体水分散液をポンプを設けて加圧することにより、繊維絡合体の内部に該高分子弾性体水分散液を加圧浸透させることを利用した含浸方法であること
    (2)繊維絡合体への浸透時間を10秒以下に調節した高分子弾性体水分散液を用いること
    (3)高分子弾性体水分散液の含浸圧力が1,000〜100,000Paであること
    (4)繊維絡合体が含浸直前に繊維絡合体厚みの40〜99%の間隙で圧縮されていること
    (5)高分子弾性体水分散液供給量が繊維絡合体空隙量の60〜100%であること
  2. 極細繊維発生型繊維を構成する水溶性高分子成分が、炭素数4以下のオレフィン単位および/またはビニルエーテル単位を1〜20モル%含有し、けん化度90〜99.99モル%である変性ポリビニルアルコールである請求項1に記載の高分子弾性体水分散液の含浸方法。
  3. 請求項1または2に記載の含浸方法により繊維絡合体の内部に高分子弾性体水分散液を含浸した後、高分子弾性体を加熱凝固し、さらに極細繊維発生型繊維を構成する水溶性高分子成分を60〜100℃の熱水で抽出除去し極細繊維化することを特徴とする人工皮革基体の製造方法。
  4. 人工皮革基体を構成する高分子弾性体と極細繊維化された繊維絡合体の比率が15:85〜60:40の範囲となるように含浸する請求項3に記載の人工皮革基体の製造方法。
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