JP4156208B2 - 無耐火被覆鉄骨構造物 - Google Patents
無耐火被覆鉄骨構造物 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4156208B2 JP4156208B2 JP2001119815A JP2001119815A JP4156208B2 JP 4156208 B2 JP4156208 B2 JP 4156208B2 JP 2001119815 A JP2001119815 A JP 2001119815A JP 2001119815 A JP2001119815 A JP 2001119815A JP 4156208 B2 JP4156208 B2 JP 4156208B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- steel
- temperature
- yield strength
- strength
- toughness
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Building Environments (AREA)
- Joining Of Building Structures In Genera (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築分野の鉄骨構造物に関し、より具体的には、高温降伏強度が高い耐火鋼材を用いた、無耐火被覆構造が可能な鉄骨構造物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築分野の鉄骨構造物に使用される鋼材については、仕様規定により表面温度350℃以下で使用することが定められている。
このため多くの場合、吹付けロックウール等の耐火被覆が必要となり、施工費用及び工程、環境・美観上の問題から鉄骨構造の競争力を著しく阻害している。
昭和62年の防耐火総プロの成果を受けて(建築基準法・旧38条認定により)性能型の設計が可能となった結果、鋼材の高温強度と、建物に実際に加わっている荷重により、耐火被覆の能力を決定できるようになり、場合によっては鋼材を無耐火被覆で使用することも可能になった。
【0003】
上記防耐火総プロの成果を受けて、近年は短時間の高温強度を高めた、いわゆる耐火鋼が多数開発されており、例えば特開平2−77523号公報を始めとして、600℃での高温耐力が常温時の2/3以上となる鋼材(耐火鋼)が多数開示されている。また特開平9−209077号公報には、700℃での高温耐力が常温時の2/3以上となる鋼材(耐火鋼)が開示されている。
【0004】
これら従来の耐火鋼においては、経済性を失することなく鋼に耐火性を与えるため、C,Mn,Mo等の合金化を図っているが、成分元素の添加はコストアップに直結するだけでなく、溶接性や靭性、常温降伏強度にも大きく影響する。換言すると、高温降伏強度の上昇は必然的に溶接性や靭性の劣化、常温降伏強度の上昇を招くという問題がある。
【0005】
一方、現行の耐震設計法では骨組の変形による地震エネルギー吸収を前提としていることから、設計で想定した骨組の崩壊形の確保や、部材の塑性変形能力の確保、部材性能を十分発揮させるための接合部耐力の確保が必要となり、これに用いる建築構造用の鋼材として、靭性下限や降伏強度の「ばらつき」の制限(つまり降伏強度上限)、降伏比上限などの耐震性の規定、Ceq上限などの溶接性の規定が必要となる。
【0006】
例えばSN材(JIS G 3136−1994)は、これらの耐震性・溶接性に関する規定がなされた鋼材であり、400MPa級(降伏強度下限235MPa)の場合、靭性下限が0℃で27J、降伏強度上限が355MPa、降伏比上限が80%、Ceq上限が0.36質量%というように規定されている。
したがって、耐火性を有する建築構造用の鋼材には、耐火性(高温降伏強度確保)と、耐震性(靭性下限、常温降伏強度上限)、溶接性(Ceq上限)という相反する性能を両立させる技術の確立が求められ、これこそが従来の耐火鋼開発すなわち無耐火被覆構造化の課題となっていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の700℃耐火鋼材では、無耐火被覆構造が可能となるのは、比較的可燃物量が少ない立体駐車場や外部鉄骨のみに限られ、無耐火被覆範囲を拡大するには、750℃〜850℃程度の耐火性能が必要である。
例えば、柱材として用いられることの多い箱形断面部材について、ISO834標準加熱を受けた場合の2次元熱伝導解析結果の例を図1に示す。図中の横軸1段目は鋼材の断面形状係数Hp/A(Hpは断面の周長、Aは断面積)を、横軸2段目は正方形断面とした場合の換算板厚(mm)を表す。なお、石膏ボードは通常使用される仕上材である。
【0008】
この図1では、
(1)耐火温度750℃以上の場合、鋼材裸使用ではHp/A≦80(換算板厚≧12.5mm)で30分無耐火被覆構造が可能である。
さらに、石膏ボード9.5mmとのセット使用では、すべての範囲で30分無耐火被覆構造が可能である。
(2)耐火温度800℃以上の場合、鋼材裸使用ではHp/A≦100(換算板厚≧11mm)で30分無耐火被覆構造が可能である。さらに、石膏ボード9.5mmとのセット使用では、すべての範囲で30分無耐火被覆構造が可能である。
(3)耐火温度850℃以上の場合、鋼材裸使用ではHp/A≦30(換算板厚≧37.5mm)で60分無耐火被覆構造が可能である。さらに石膏ボード9.5mmとのセット使用では、すべての範囲で30分無耐火被覆構造が可能である。
ことなどを示している。
【0009】
一方、耐震性(常温降伏強度上限)の確保の点から合金元素量の制約があるため、耐火性(高温降伏強度確保)と耐震性を同時に満足させることは非常に困難である。
そこで本発明では、火災を受ける可能性のある鉄骨構造物において、耐震性に関する制約を緩和できる鉄骨構造とすると共に、鉄骨部材として750℃〜850℃の高温領域で十分な降伏強度を確保できる耐火鋼材を用いることによって、少なくとも30分無耐火被覆構造が可能な鉄骨構造物を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、火災を受ける鉄骨構造物であって、損傷集中部材を介して柱に梁を接合する損傷制御構造専用として、この鉄骨構造物を構成する鉄骨部材を850℃での降伏強度が94MPa(常温降伏強度の下限比の0.4)以上であって靭性が破面遷移温度vTrs50で−12℃以下の耐火鋼材で形成した、750〜850℃で30分以上の無耐火被覆が可能な無耐火被覆鉄骨構造物である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明では、火災を受ける可能性のある鉄骨構造物において、特に耐震性の制約を緩和できる損傷制御専用の鉄骨構造を採用し、鉄骨部材として常温降伏強度が235MPa以上で、850℃における降伏強度が94MPa(常温降伏強度の下限比の0.4)以上の耐火鋼材を用いるものであり、750〜850℃で少なくとも30分無耐火被覆鉄骨構造を実現するものである。
本発明でいう鉄骨構造とは、柱、梁などの主部材および各種の接合金物(スプリットテイ、エンドプレート、スプライスプレートなど)、損傷集中部材、ボルトを構成部材として形成されるものであり、基本的には、これらの構成部材を本発明による耐火鋼材で形成するものである。
【0012】
本発明の鉄骨構造物は、主として長期(常時荷重)および短期(常時荷重+地震力)に、作用応力が大きくなる部材端あるいは部材端接合部の柱梁接合部や柱脚などの接合構造部に適用されるものであり、例えば、柱・梁接合構造にあっては、損傷制御構造専用とすることにより、柱・梁部材に求められる靭性下限や降伏強度の「ばらつき」の制限(つまり降伏強度上限)、降伏比上限などの耐震性に関する制限を緩和し、耐火性に寄与する合金元素量の制約を緩和するものである。
【0013】
本発明の鉄骨部材を形成する耐火鋼材としては、例えば質量%で、C:0.01〜0.08%、Si:0.2〜2.0%、Mn:0.5%以下、Al:0.25〜1.0%、Mo:0.5〜2.0%、V:0.05〜0.50%、Nb:0.02〜0.50%、Ti:0.05〜0.30%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる耐火鋼による鋼材、または、さらに質量%で、Cu:0.1〜2.0%、Ni:0.1〜0.5%、Cr:0.1〜1.0%、B:0.005〜0.010%のうち1種または2種以上を含有する耐火鋼材が適性があり、このような鋼材で鉄骨部材を形成すれば、850℃において94MPa以上の降伏強度(常温降伏強度下限比の0.4以上)の条件を満足する無耐火被覆構造の鉄骨構造物の実現が可能である。
【0014】
本発明でいう「損傷制御構造(システム)」とは、地震などの外部入力エネルギーを吸収するための損傷集中部材を有する接合構造で、以下「損傷制御構造」という。
これらの部位での接合構造には、溶接接合以外の接合手段、例えば柱梁接合構造にあっては、図2(a)、(b)に示すように、損傷集中部材(軸力抵抗要素、軸力+剪断力抵抗要素、軸力+剪断力+曲げ力抵抗要素など)を介して、柱に梁を接合する接合構造を損傷制御構造とするものである。この接合構造を採用することにより、損傷集中部材によって地震時の揺れや変形を低減させるだけではなく、この部分に集中的に地震エネルギーを集中させることにより、主架構部材である柱や梁の変形を弾性範囲内の変形に留め損傷を防ぐと同時に、鋼材に要求される常温降伏強度上限の制約を撤廃でき、耐火性に寄与する合金元素量の制約を緩和することができる。
【0015】
損傷集中部材としては、各階配置型の制振ダンパーが一般的であり、鋼材や鉛、粘弾性体やオイルなどが用いられる。
また、損傷制御構造の鉄骨構造を採用し、柱や梁の変形を弾性範囲に留めることによって、構造部材の靭性下限(破面遷移温度に言い換えると破面遷移温度上限)の制約をさらに緩和できることで、高温降伏強度上昇代を確保し、経済性を失することなく耐火性を向上させることができる。
【0016】
高温降伏強度については、従来の耐火鋼の場合では、常温降伏強度の2/3以上となるように性能を定めていたが、鉄骨構造物の実設計範囲が常温降伏強度下限の0.2〜0.4倍程度であることを勘案し、常温降伏強度下限比0.4以上であれば使用可能であることから、本発明では、このような降伏強度領域での使用も考慮する。
【0017】
本発明では、耐震性に関する制約を緩和することを前提として、建築構造用として使用できる常温降伏強度の範囲内で、750〜850℃で保持時間が30分以上で、常温降伏強度下限比の0.4以上の高温降伏強度を確保する方法について検討した。
その結果、Vを核としたNb,Moの複合析出物を微細に析出させることで、750〜850℃においても短時間であれば十分強化に有効な微細析出状態を維持できることが判った。
【0018】
この複合析出物は、単独の析出物や他の複合析出物に比べて高温における安定性が非常に高く、750〜850℃においても短時間であれば十分微細なまま安定である。
しかし、析出物自体は安定であっても、温度上昇によって素地が変態して析出物と素地の整合性が失われて非整合になると、析出物による強化作用が急激に低下する。すなわち、高温でも安定したVを核としたNb,Moの複合析出物による強化を利用するには、設計温度である750〜850℃においても素地組織を変態させないことが必須となる。
【0019】
発明者らは、以下に述べる添加元素の工夫により変態温度を高くして、Ac1変態温度を750℃以上または850℃以上とすることで、750〜850℃で30分程度保持した場合にも、Vを核としたNb,Moの複合析出物と素地との整合性が維持でき、十分な強化が可能であることを見出した。
Ac1変態温度を効果的に高める元素としては、Siや5%以上のCrなどが上げられるが、これらは常温引張強度を上げ過ぎるため、400MPa級および490MPa級鋼の規格値を満足する範囲では750℃以上のAc1変態温度を得ることは困難である。
【0020】
常温強度をあまり上げないでAc1 変態温度を大幅に上げる元素としてはAlが有効である。しかしながら、Alは多量に添加すると、特に溶接部の靭性を損なう場合があることから、その添加量は、脱酸のために必要な0.01〜0.05%程度であり、例えば0.1%を超えて添加されることは通常なかった。
本発明では、作用応力の大きな部位を溶接レス構造とすることを前提としており、溶接性をあまり要求しないことから、この制約に拘束されずにAlのAc1 変態温度上昇効果を有効に利用することができる。
【0021】
Ac1変態温度を十分に高くするためには、0.2%以上の添加が特に有効である。さらに、常温強度を上げ過ぎない範囲でSiを添加すること、Ac1変態温度を低下させ、かつ常温強度も上げる元素であるCおよびMnの添加量を抑制することによって、常温温度を上げ過ぎずに750℃以上のAc1変態温度を得ることができる。
一方、Ac1変態温度が900℃を超えると、圧延中に変態が進行するため析出サイトとして有効な圧延組織が得られないことから、却って高温強度は得にくくなる。したがって、750℃以上の高温強度を得るためにはAc1変態温度が750℃以上、900℃以下であることが必要条件となる。
【0022】
以下に、本発明で用いる耐火鋼の各成分の限定理由を説明する。
Cは、常温での強度を得るために0.01%が必要であるが、0.10%を超える添加によりAc1変態温度が上昇するために750℃〜850℃の高温強度が得にくく、靭性も低下する。このため添加量は、750℃の高温強度を得るためには0.01%以上、0.10%以下に限定し、850℃高温強度を得るためには0.01%以上、0.08%以下に限定する。
【0023】
Siは、Ac1変態温度を高めるために有効な元素であり、0.2%以上の添加が望ましい。しかし、2.0%を超えると母材靭性を低下させる場合があるため、0.2%以上、2.0%以下に限定する。なお、常温降伏強度上限を考慮する場合には、Siの上限は1.2%とすることが望ましい。
Mnは、常温温度に対する強化元素であるが、高温強度にはあまり効果がない。却ってAc1変態温度を低くするため、750℃〜800℃の高温強度には有害となることから、添加量は、750℃の高温強度を得るためには0.6%以下に限定し、850℃高温強度を得るためには0.5%以下に限定する。
Alは、常温強度をあまり高めずにAc1変態温度を大きく上昇させる、本発明における重要な元素である。この目的のためには0.2%以上の添加が特に有効である。しかし、1.0%を超えて添加するとAc1変態温度が高くなり過ぎて却って高温強度が得にくくなる。このため添加量は、750℃の高温強度を得るためには0.2%以上、1.0%以下に限定し、850℃高温強度を得るためには0.25%以上、1.0%以下に限定する。
【0024】
Moは、高温強度を高める複合析出物を構成する元素であり、固溶強化による高温強度向上効果もあることから、本発明においては必須元素である。こうした特性を発揮して750℃〜850℃の高温強度を高めるには、0.5%以上の添加が必要であるが、2.0%を超えて添加すると母材靭性を低下させる場合があるため、0.5%以上、2.0%以下に限定する。なお、常温降伏強度上限を考慮する場合には、Moの上限を1.5%とすることが望ましい。
Vは、高温強度を高める複合析出物を構成する基本元素として重要である。750℃〜850℃の高温強度を高めるためには、0.05%以上の添加が有効である。しかし、0.50%を超えて添加すると微細析出物が得にくくなり、また母材靭性を低下させる場合があるため、添加量は0.05%以上、0.50%以下に限定する。なお、常温降伏強度上限を考慮する場合には、Vの上限は0.20%とすることが望ましい。
【0025】
Nbは、高温強度を高める複合析出物を構成する基本元素として重要である。750℃〜850℃の高温強度を高めるためには、0.01%以上の添加が有効である。しかし、0.50%を超えて添加すると微細析出物が得にくくなり、また母材靭性を低下させる場合があるため、添加量は、750℃高温強度を得るためには0.01%以上、0.20%以下に限定し、850℃高温強度を得るためには0.02%以上、0.50%以下に限定する。
Tiは、析出強化により750℃〜850℃の高温強度を高める析出物を得る元素として重要であり、その目的で添加する場合には、0.01%以上必要であるが、0.10%を超えて添加すると母材靭性を低下させる場合がある。このため添加量は、750℃高温強度を得るためには0.01%以上、0.10%以下に限定し、850℃高温強度を得るためには、母材靭性下限(換言すれば破面遷移動温度上限)の制約の緩和を条件として0.05%以上、0.30%以下に限定する。
【0026】
Cuは、析出強化元素として添加する場合には0.1%以上の添加を必要とするが、2.0%を超えて添加しても効果は変わらず、また靭性を低下させることから、添加量は0.1%以上、2.0%以下に限定する。
Niは、母材靭性を高めるために添加する場合には0.1%以上を必要とするが、Ac1変態温度を低下させるため、0.5%を超えて添加すると高温強度が低下することから、添加量は0.1%以上、0.5%以下に限定する。
Crは、焼入強化元素として添加する場合には0.1%以上を必要とするが、1.0%を超えて添加すると常温強度が高くなり過ぎ、またAc1変態温度を低下させて高温強度を低下させることから、添加量は0.1%以上、1.0%以下に限定する。
Bは、焼入性を高め、強度を得るために添加する場合には0.005%以上の添加を必要とするが、0.010%を超えて添加してもその効果が変わらないので、添加量は0.005%以上、0.010%以下に限定する。
【0027】
【実施例】
以下に、本発明で用いる鉄骨部材として適性のある耐火鋼材(以下「本耐火鋼材」という)の実施例について説明する。
表1に示すような化学組成を有する各種の圧延鋼板を供試鋼板とし、それぞれの鋼板から採取した長さ方向が圧延方向である試験片について、室温(常温)引張試験と850℃の高温引張試験を行った。この試験結果を表1に示す。
この実験に供された本耐火鋼材は、850℃の耐火特性、所要の靭性を有するものであり、耐火温度750℃、800℃の耐火特性も兼ねる750℃〜850℃で少なくとも30分無耐火被覆を可能とするものであり、ここでは実験例の評価は、850℃で少なくとも30分無耐火被覆が可能かどうかの観点で行っている。
【0028】
表1中、A1〜A10は本耐火鋼材、B1〜B14は化学組成が本耐火鋼材と異なる耐火鋼材(以下「比較鋼材」という)である。この比較鋼材で下線のあるところは、化学組成で本耐火鋼材と異なるところ、特性で本発明の鉄骨部材としての目標値に達していないところである。
なお、常温降伏強度の目標値は235MPa以上とし、Ac1 変態温度の目標値は850℃以上、900℃以下とした。
また、靭性は、JIS Z 2242記載の方法により破面遷移温度vTrs50を測定し、目標値はvTrs50≦−10℃とした。
【0029】
本耐火鋼材A1〜A10は、いずれもAc1 変態温度が850〜900℃の範囲にあり、850℃での降伏強度が94MPa以上、vTrs50が−10℃以下である。
これに対して、比較鋼材B1はCが高いため、比較鋼材B6はMoが高いため、比較鋼材B12はCuが高いため、それぞれAc1 変態温度が低く、850℃での降伏強度も低く、かつ靭性も低い。
比較鋼材B2はSiが低いため、比較鋼材B4はMnが高いため、比較鋼材B13はNiが高いため、比較鋼材B14はCrが高いため、それぞれAc1 変態温度が低く、850℃降伏強度も低い。
【0030】
比較鋼材B3はSiが高いため、Ac1 変態温度が高過ぎて、850℃降伏強度が低く、かつ靭性が低い。
比較鋼材B5はMoが低いため、比較鋼材B7はNbが低いため、比較鋼材B9はVが低いため、それぞれ850℃降伏強度が低い。
比較鋼材B8はNbが高いため、比較鋼材B10はVが高いため、比較鋼材B11はTiが高いため、それぞれ靭性が低い。
なお、本耐火鋼材は、図2、図3に示す柱梁接合部を有する鉄骨構造の構造部材にのみ限定して用いるものではなく、作用応力が大きな部位に接合部を有する各種の構造部材にも広く用いることができる。
【0031】
【表1】
【0032】
【発明の効果】
本発明の鉄骨構造物は、損傷制御構造にして耐震性に関する制約を緩和することによって、常温降伏強度、靭性、高温降伏強度に優れた鋼材の使用を可能とし、常温降伏強度および750℃〜850℃での高温降伏強度が高く、30分以上の無耐火被覆構造が可能な鉄骨構造物を、経済性を失することなく市場に供給することが可能である。
30分以上の無耐火被覆構造とすることにより、耐火被覆省略によるコストダウン、工期短縮を可能とし、さらには耐火被覆工程省略による環境負荷低減や、無耐火被覆による鉄骨構造物を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】箱形断面部材の温度と断面形状係数および正方形断面部材の換算板厚の関係を表す説明図。
【図2】本発明を適用する損傷制御構造の鉄骨構造例を示す側面説明図で、(a)図は、H形鋼柱にボルト接合された損傷集中部材にH形鋼梁をボルト接合した柱・梁接合構造を示す。(b)図は、H形鋼柱にボルト接合した損傷集中部材にH形鋼梁をボルト接合した柱・梁接合構造の他の例を示す。
Claims (1)
- 火災を受ける鉄骨構造物であって、損傷集中部材を介して柱に梁を接合する損傷制御構造専用として、この鉄骨構造物を構成する鉄骨部材を850℃での降伏強度が94MPa(常温降伏強度の下限比の0.4)以上であって靭性が破面遷移温度vTrs50で−12℃以下の耐火鋼材で形成した、750〜850℃で30分以上の無耐火被覆が可能な無耐火被覆鉄骨構造物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001119815A JP4156208B2 (ja) | 2001-04-18 | 2001-04-18 | 無耐火被覆鉄骨構造物 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001119815A JP4156208B2 (ja) | 2001-04-18 | 2001-04-18 | 無耐火被覆鉄骨構造物 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002309671A JP2002309671A (ja) | 2002-10-23 |
JP4156208B2 true JP4156208B2 (ja) | 2008-09-24 |
Family
ID=18969968
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001119815A Expired - Fee Related JP4156208B2 (ja) | 2001-04-18 | 2001-04-18 | 無耐火被覆鉄骨構造物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4156208B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006307621A (ja) * | 2005-03-28 | 2006-11-09 | Jfe Steel Kk | 集合住宅共用部構造体 |
KR20240005647A (ko) | 2023-12-26 | 2024-01-12 | 플러스스틸 주식회사 | 화재시 철골 구조물의 강도 저하 방지 시스템 |
-
2001
- 2001-04-18 JP JP2001119815A patent/JP4156208B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2002309671A (ja) | 2002-10-23 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4197460B2 (ja) | 無耐火被覆高力ボルト接合部構造 | |
JP5296350B2 (ja) | 制振部材 | |
Smith et al. | The reinstatement of fire damaged steel framed structures | |
JPH0277523A (ja) | 耐火性の優れた建築用低降伏比鋼材の製造方法およびその鋼材を用いた建築用鋼材料 | |
Kanno | Advances in steel materials for innovative and elegant steel structures in japan–A review | |
TW201135037A (en) | Metal joint | |
JP4156208B2 (ja) | 無耐火被覆鉄骨構造物 | |
JP3728211B2 (ja) | 無耐火被覆鉄骨構造物 | |
JP3728240B2 (ja) | 無耐火被覆鉄骨部材 | |
JP2004360361A (ja) | 無耐火被覆鉄骨構造物 | |
Sarno et al. | Special metals for seismic retrofitting of steel buildings | |
JP4860071B2 (ja) | 800℃高温耐火建築構造用鋼およびその製造方法 | |
JP3987813B2 (ja) | 常温降伏応力が455N/mm2超で800℃高温特性に優れる耐火建築構造用高強度鋼およびその厚鋼板の製造方法 | |
JP3411217B2 (ja) | 母材および溶接部靭性の優れた降伏比の高い低降伏点鋼 | |
JP4203343B2 (ja) | 800℃高温特性に優れる常温引張強さ400〜490N/mm2級耐火建築構造用鋼およびその厚鋼板の製造方法 | |
JP4388407B2 (ja) | 耐火建築構造用鋼用のガスメタルアーク溶接ワイヤ | |
JP2733866B2 (ja) | ガスシールドアーク溶接方法 | |
JPH0252196A (ja) | 耐火鋼用溶接ワイヤ | |
JP5005178B2 (ja) | 溶接性及び耐衝撃性に優れた鋳鋼製柱梁接合金物 | |
JP3835369B2 (ja) | 制震ダンパー用鋼材およびその製造方法 | |
JPH10204584A (ja) | 耐溶融亜鉛メッキ割れ性に優れた調質型耐震鋼材 | |
JP3879383B2 (ja) | 低降伏点鋼材の溶接方法 | |
JP2002105585A (ja) | 850℃高温耐火建築構造用鋼およびその製造方法 | |
JPH11229076A (ja) | 靭性の優れた低降伏点鋼 | |
JPH1112648A (ja) | 耐座屈特性および耐火性に優れた鋼部材 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20050531 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050607 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20050804 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20051115 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060113 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20060425 |
|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20061106 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20061108 |
|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 Effective date: 20061208 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20080414 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20080602 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20080709 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110718 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110718 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120718 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120718 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130718 Year of fee payment: 5 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130718 Year of fee payment: 5 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130718 Year of fee payment: 5 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130718 Year of fee payment: 5 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130718 Year of fee payment: 5 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130718 Year of fee payment: 5 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |