JP4155448B2 - 赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法及び安定化赤燐の製造方法 - Google Patents

赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法及び安定化赤燐の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4155448B2
JP4155448B2 JP2002303353A JP2002303353A JP4155448B2 JP 4155448 B2 JP4155448 B2 JP 4155448B2 JP 2002303353 A JP2002303353 A JP 2002303353A JP 2002303353 A JP2002303353 A JP 2002303353A JP 4155448 B2 JP4155448 B2 JP 4155448B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
red phosphorus
particles
slurry
phosphorus particles
slurry containing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2002303353A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2004175575A (ja
Inventor
由和 渡辺
豊 木ノ瀬
修 宇賀神
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Chemical Industrial Co Ltd
Original Assignee
Nippon Chemical Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Chemical Industrial Co Ltd filed Critical Nippon Chemical Industrial Co Ltd
Priority to JP2002303353A priority Critical patent/JP4155448B2/ja
Priority to CNB02146121XA priority patent/CN100425305C/zh
Publication of JP2004175575A publication Critical patent/JP2004175575A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4155448B2 publication Critical patent/JP4155448B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Fireproofing Substances (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホスフィンガスの発生、更にはリンのオキソ酸の溶出を抑制することができる赤燐系難燃剤の製造原料に用いる赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法及びこれを用いたホスフィンガスの発生、更にはリンのオキソ酸の溶出が抑制された安定化赤燐の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
赤燐系難燃剤は、ノンハロゲン系難燃剤として、有力な難燃剤であるが、赤燐と空気中の水分との反応により微量のホスフィンガスが発生する問題や、赤燐表面からのリンのオキソ酸が溶出するという問題がある。
【0003】
従来より、赤燐は、黄燐の加熱による赤燐への転化、いわゆる熱転化反応により製造されている。
上記熱転化反応は、微小な赤燐の核の形成と、この核の成長及び結合によって進行するが、転化率の上昇と共に粒子間結合による集合体粒子の形成が促進され、その結果、生成する赤燐粒子は、急速に粗大化し、やがて固結し塊状赤燐となる。
【0004】
通常、この固結した塊状赤燐は、粗大な粒子群であるため、これを赤燐系難燃剤の原料として用いる場合には、この塊状赤燐を粉砕し、水簸法等により微粒分を除去し、所望の粒度特性に調整したものを用いてきた。
【0005】
しかしながら、水簸法等により微粒分を赤燐から除去する場合には、除去精度を上げるため、処理時間に長時間を要する上、巨大な装置を必要とし、また、温和な条件下での粒径の大きい粒子と小さい粒子との沈降差を利用することから、この水簸法を利用して連続的な分級工程を施すと、操作条件の管理が難しく、また、このようにして得られる赤燐粒子を含有するスラリーは、微粒子分を除去した安定した品質のものが得られにくいという欠点がある。
【0006】
例えば、微粒子分として含有されている粒径が1μm以下の赤燐粒子は、赤燐粒子の表面を被覆して安定化させるための被覆処理が技術的に難しく、また、これらの赤燐粒子の含有量が多くなるとホスフィンガスの発生量やリンのオキソ酸の溶出量が多くなる傾向があることが知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開昭63−134507号公報(第1頁、第3頁)
【特許文献2】
特開昭63−230510号公報(第1頁、第3頁)
【特許文献3】
特開昭64−24008号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献4】
特開平1−286909号公報(第2頁、第3頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、ホスフィンガスの発生やリンのオキソ酸の溶出の原因を探求していくうちに、粒径が1μm以下の赤燐粒子に加え、5μm未満の赤燐粒子の存在もホスフィンガスの発生の原因となり、これらの微粒分の含有量を低減することで、ホスフィンガスの発生やリンのオキソ酸の溶出が抑制されること、及びこの微粒分の除去を液体サイクロンを用いて行うと、従来になく短時間で精度よく効率的に行え、また、液体サイクロンを用いると、分級工程を連続的に施しても微粒分を除去した安定した品質のものが得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の目的は、第1に赤燐系難燃剤の製造原料として用いた場合に効果的にホスフィンガスの発生、更にはリンのオキソ酸の溶出を抑制することができる工業的に有利な赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法を提供することにあり、第2に前記スラリーを用いたホスフィンガスの発生、更にはリンのオキソ酸の溶出を抑制した安定化赤燐の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の前記第1の目的は、下記の赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法により達成される。
本発明の赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法は、不純物として鉄及び黄燐を含有する原料の赤燐粒子を含むスラリーを湿式粉砕処理して、該スラリー中に含まれる粒径45μm以下の赤燐粒子の含有量が赤燐粒子全体量の50重量%以上としたスラリーを調製する第一工程と、該第一工程で調製されたスラリーを液体サイクロンで処理して、該スラリー中に含まれる粒径5μm未満の赤燐粒子の含有量を赤燐粒子全体量の5重量%以下で、平均粒径が10〜40μmにしたスラリーを調製する第二工程、更に第一工程の前、第一工程後、第二工程後の何れかの時期に赤燐粒子を含むスラリーに酸及びアルカリを添加して該赤燐粒子を処理し、赤燐粒子中に含まれる不純物の鉄の含有量が0.1重量%以下及び黄燐の含有量が0.005重量%以下に低減する工程を含むことを特徴とする赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法である。
【0011】
また、前記第二工程は、粒径5μm未満の粒子の含有量が赤燐粒子全体量の5重量%以下としたスラリーを調製することが好ましい。
本発明の前記第2の目的は、下記の安定化赤燐の製造方法により達成される。本発明の安定化赤燐の製造方法は、上記の方法により製造された赤燐粒子を含有するスラリーに、Zn、Al、Mg、Ti、Si、Co、Zr、Snから選ばれる少なくとも1種以上の水溶性金属塩を添加して水性懸濁液を調製する工程と、該水性懸濁液にアルカリを添加して金属塩を赤燐粒子表面に沈殿させる工程を有することを特徴とする安定化赤燐の製造方法である。
【0012】
また、本発明の安定化赤燐の製造方法は、上記の方法により製造された赤燐粒子を含有するスラリーを固液分離して赤燐粒子を得る工程と、得られた該赤燐粒子を含有するスラリーを調製する工程と、該赤燐粒子を含有するスラリーに、Zn、Al、Mg、Ti、Si、Co、Zr、Snから選ばれる少なくとも1種以上の水溶性金属塩を添加して水性懸濁液を調製する工程と、該水性懸濁液にアルカリを添加して金属塩を赤燐粒子表面に沈殿させる工程を有することを特徴とする安定化赤燐の製造方法である。
【0013】
また、本発明の安定化赤燐の製造方法は、上記の方法により製造された安定化赤燐を含むスラリーに、熱硬化性樹脂の合成原料又はその初期縮合物を添加し重合反応を行うことを特徴とする安定化赤燐の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法は、不純物として鉄及び黄燐を含有する原料の赤燐粒子を含むスラリーを湿式粉砕処理して、該スラリー中に含まれる粒径45μm以下の赤燐粒子の含有量が赤燐粒子全体量の50重量%以上としたスラリーを調製する第一工程と、該第一工程で調製されたスラリーを液体サイクロンで処理して、該スラリー中に含まれる粒径5μm未満の赤燐粒子の含有量を赤燐粒子全体量の5重量%以下で、平均粒径が10〜40μmにしたスラリーを調製する第二工程、更に第一工程の前、第一工程後、第二工程後の何れかの時期に赤燐粒子を含むスラリーに酸及びアルカリを添加して該赤燐粒子を処理し、赤燐粒子中に含まれる不純物の鉄の含有量が0.1重量%以下及び黄燐の含有量が0.005重量%以下に低減する工程を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の第一工程は、原料の赤燐粒子を含有するスラリーを湿式粉砕機に供給し湿式粉砕処理して、該スラリー中に含まれる粒径45μm以下の赤燐粒子の含有量が50重量%以上、好ましくは60重量%以上としたスラリーを調製する工程である。
【0016】
この第一工程において、スラリー中の赤燐粒子の粒度特性を上記範囲となるように調製することにより、目的とする平均粒径が10〜40μmの赤燐粒子を高収率で得ることができる。
【0017】
原料となる赤燐粒子は、粗粒の赤燐粒子であり、例えば黄燐を熱により赤燐に転化した塊状の赤燐であり、粒径75μmをこえる粒子の含有量が赤燐粒子全体量の10重量%以上で、粒径45μm以下の粒子の含有量が赤燐粒子全体量の50重量%未満であるものを示し、また、その他の物性は特に制限されるものではないが、赤燐粒子に含まれる赤燐の分解触媒となるFeの含有量が0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下で、また、化学的に不安定で発火性があるとともにリンのオキソ酸の溶出やホスフィンガスの発生の一つの要因となる黄燐の含有量が0.005重量%以下、好ましくは0.002重量%以下のものが好ましく、この範囲外にあるものは、後述する酸処理又はアルカリ処理を施すことにより、これらの不純物を除去し、より一層のホスフィンガスの発生やリンのオキソ酸の溶出を低減させることができる。
【0018】
第一工程は、まず、水100重量部に上記した粗粒の赤燐粒子5〜60重量部、好ましくは10〜55重量部を含むスラリーを調製する。スラリーの調製方法は、具体的には粗粒の赤燐粒子に所定量の水を添加することにより行う。
【0019】
次に、この粗粒の赤燐粒子を含むスラリーを湿式粉砕機に供給する。
用いることができる湿式粉砕機としては、例えば、ボールミル、ビーズミル等の湿式粉砕機を用いることができる。この中、ボールミルとしてタワーミルを使用すると、粉砕による微粒分の発生を極力抑制することができることから次工程の液体サイクロンでの分級操作を効率的に行えるため好ましい。
【0020】
本発明において、このタワーミルでの湿式粉砕処理は、酸の存在下で行うと粒径の大きい粒子と小さい粒子の沈降速度の差を利用しながら効率的に粉砕を行え、また、粒径5μm未満の粒子の発生率が少なくなるため、得られるスラリー中には、不要な100μm以上、好ましくは75μm以上の粒径の含有量及び粒径5μm未満の粒子の含有量を低減することができることから好ましい。
【0021】
この場合、用いることができる酸としては、特に制限されるものではないが、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、亜硫酸等が挙げられ、これらの酸は1種又は2種以上を用いることができる。この中、硝酸を用いると装置等の腐食がなく行えることから特に好ましい。
通常、この酸の添加量は、調整したスラリーのpHが4以下となるように粗粒の赤燐粒子を含有するスラリーに添加することが望ましい。
【0022】
なお、この第一工程は、上記した粒度のものが得られるまで何度でも行ってもよく、2種以上の湿式粉砕処理機や、湿式粉砕機と篩、水簸等の分級操作とを併用して上記範囲の粒度特性の赤燐粒子を含有するスラリーの調製を行ってもよい。
【0023】
第二工程は、第一工程後のスラリーを液体サイクロンに供給して処理し、少なくとも該スラリー中に含まれる粒径5μm未満の粒子の含有量を低減したスラリーを調製する工程である。
【0024】
本発明において、粒径5μm未満の粒子の含有量を低減させる理由は、上記したとおり、この粒径5μm未満の赤燐粒子はホスフィンガスの発生の原因となり、この粒径5μm未満の微粒分の含有量を低減することで、ホスフィンガスの発生やリンのオキソ酸の溶出を抑制することができる。この第二工程において、粒径5μm未満の赤燐粒子の含有量が赤燐粒子全体量の5重量%以下、好ましくは3重量%以下に調製することが、特にホスフィンガスとリンのオキソ酸の溶出を抑制する上で特に好ましい。
【0025】
用いることができる液体サイクロンは、微粒を装置のトップ部(上部)から排出し、粗粒を装置のボトム部(底部)から排出するタイプの二液分離型や、細粒より細かな微粒粉を装置トップ部より排出し、細粒を装置のミドル部(中間部)から排出し、粗粒を装置のボトム部から排出するタイプの三液分離型を用いることができる。
【0026】
液体サイクロンの材質は、耐食性および耐磨耗性を確保する上でセラミックや窒化ケイ素、ウレタン樹脂製のものが好ましい。本発明において、液体サイクロンは、1基あるいは複数を並列に稼動させてもよく、例えば、複数の液体サイクロンを並列稼動させると処理能力が大きくなるため大量生産を可能とし、生産性を向上させることができる。
【0027】
図1は本発明に使用する液体サイクロンの代表的な構造を示す概略図である。図中、aは液体サイクロンの円筒部内径、bは上部円筒部分の長さ、cは下部円錐部分の長さ、dは円錐部分の傾斜角、eは下流抜き出し部分の管径、fは上流抜き出し部分の管径を示す。Xは原液、Yは下流、Zは上流を示す。
【0028】
図1に示す液体サイクロンによる粒子を分別する機構は、粒子間の遠心沈降速度の差を利用することにより、スラリーから粒径が5μm未満のものを効率的に除去することができる。
【0029】
液体サイクロンによる分級効率は、液体サイクロンへのスラリーの送入圧力(送入速度)、供給するスラリーの比重(スラリー濃度)、液体サイクロン中での上・下流の流量の分配比率等の条件により変化し、これらの操業条件は、用いる液体サイクロンの上部の円筒部分の内径aと、円錐部分の傾斜角d、上部円筒部分の長さbおよび下部円錐部分の長さcの関係と、上・下流の抜き出し部分の管径f、eなどによって変化する。
【0030】
例えば、液体サイクロンとして円筒部内径aが56.5±0.5mm、円錐部分の傾斜角dが21.2度、上部円筒部分の長さbが58±0.5mm、下部円錐部分の長さcが135±5mm、上流の抜き出し部分の管径fが11.8±0.5mm、下流の抜き出し部分の管径eが5±0.5mmの二液分離型のものを用い、赤燐粒子を含有するスラリーの比重が1.02〜1.08のものを前記液体サイクロンへ供給する場合には、液体サイクロンへのスラリーの供給を送入圧0.025〜0.1MPa、好ましくは0.05〜0.08MPaとし、上流Z/下流Yの流量の流量分配比(Z/Y)は1.5〜2.5/1、好ましくは1.8〜2.2/1として、ボトム部(図1中の記号e)よりスラリーを回収することにより、スラリーから粒径が5μm未満のものを効率的に除去することができる。
【0031】
なお、液体サイクロンへのスラリーの供給は、スラリーの比重(スラリー濃度)とスラリーの供給圧力を常に一定となるようにして操作することが安定した品質のものが得られることから特に好ましい。
【0032】
かくして得られる赤燐粒子を含有するスラリーは、スラリー中に含まれる赤燐粒子の平均粒径が10〜40μm、好ましくは20〜35μmであり、粒径5μm未満の粒子の含有量が赤燐粒子全体量の5重量%以下、好ましくは3重量%以下のスラリーを得ることができる。更に前記粒度特性に加えて粒径1μm以下の粒子の含有量が赤燐粒子全体量の0.5重量%以下、好ましくは0.1重量%以下であるとホスフィンガスの発生やリンのオキソ酸の溶出をより一層低減できることから特に好ましい。
【0033】
また、第二工程終了後の赤燐粒子を含有するスラリーの濃度は、スラリーに含有される赤燐粒子の含有量が水100重量部に対して、上記の粒度調整された赤燐粒子が3〜45重量部、好ましくは7〜42重量部を含むものが望ましい。
【0034】
本発明の赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法において、例えば、第二工程前又は第二工程終了後に、ふるい目の開きの寸法が45μmの篩を用いて該スラリー中に含まれる粒径45μmを越える粒子の含有量が赤燐粒子全体量の5重量%以下、好ましくは3重量%以下となるまで十分に除去すると、その用途において、最大粒径を制御して用いる例えば、電線、ケーブル、封止材等の赤燐系難燃剤の製造原料として好適に用いることができる。この場合、前述の最大粒径の制御は、液体サイクロンで処理したスラリーをそのまま前述の篩に通過させて行うと多量のものを短時間で効率よく処理することができることから特に好ましい。
【0035】
本発明の赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法において、該赤燐粒子中に含まれる鉄の含有量が0.1重量%以上又は/及び黄燐分の含有量が0.005重量%以上である場合には、前記のスラリーに酸又はアルカリを添加し酸又は/及びアルカリ処理することが好ましい。
【0036】
即ち、該赤燐粒子をアルカリで処理することにより、化学的に不安定で発火があるともにリン酸分の溶出やホスフィンガスの発生の一つの要因となる黄燐分を除去することができ、また、酸で処理することにより、赤燐の酸化触媒となる鉄等の不純物を効果的に除去することができる。
【0037】
具体的なアルカリ処理は、水100重量部に対して赤燐粒子20〜40重量部、好ましくは25〜35重量部となるようにスラリー濃度を調製し、次に、このスラリーにpHが10以上、好ましくは10.5以上となるようにアルカリ剤を添加し、温度40〜95℃、好ましくは75〜90℃で、2時間以上、好ましくは4時間以上攪拌下に処理する。
【0038】
用いることができるアルカリ剤としては、特に制限されるものではないが、例えばアンモニアガス、アンモニア水、苛性ソーダ、苛性カリ、NaHCO3 、Na2 CO3 、K2 CO3 、KHCO3 等の無機アルカリ、またはエタノールアミン等の有機アルカリが挙げられ、これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0039】
本発明において、前記アルカリ処理は、例えば、過酸化水素、過塩素酸、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、オゾン等の酸化剤を系内に存在させて行うと洗浄の際に発生するホスフィンガスを随時リンのオキソ酸に酸化して安全に作業を進めることができることから好ましく、この場合、酸化剤の添加量は、特に制限されるものではないが、赤燐粒子100重量部に対して、多くの場合0.001〜0.5重量部で充分である。
【0040】
一方、具体的な酸処理操作は、水100重量部に対して赤燐粒子20〜40重量部、好ましくは25〜35重量部となるようにスラリー濃度を調製し、次に、このスラリーにpHが4以下、好ましくは2以下となるように酸を添加し、温度40〜95℃、好ましくは75〜90℃で、1時間以上、好ましくは4時間以上攪拌して処理する。
【0041】
用いることができる酸としては、特に制限されるものではないが、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、亜硫酸等の1種又は2種以上が挙げられ、この中、硝酸が鉄の除去効率が高く、装置等の腐食がないことから特に好ましい。
【0042】
本発明の赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法において、前記アルカリ処理と酸処理とを適宜組み合わせて用いることができる。
また、前記酸処理又はアルカリ処理を行う時期は、第一工程の前、第一工程後、第二工程後の何れの時期であってもよい。
【0043】
かくして得られる酸又はアルカリ処理を施した赤燐粒子を含有するスラリーは、前記粒度特性に加えて、赤燐粒子中に含まれる鉄の含有量が0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下で、黄燐の含有量が0.005重量%以下、好ましくは0.002重量%以下であり、該赤燐粒子を赤燐系難燃剤の製造原料として用いることによりホスフィンガスの発生だけでなく、赤燐から溶出するリンのオキソ酸の溶出をより一層効果的に抑制することができる。
【0044】
なお、本発明の赤燐粒子を含有するスラリーは、そのまま製品とすることができる他、例えば、前記第二工程終了後、常法により固液分離して赤燐粒子を回収し、例えば、運送等の関係上、湿潤状態又は乾燥品として保存することができる。
【0045】
次に、本発明の安定化赤燐の製造方法について説明する。
(安定化赤燐の製造方法)
本発明の製造方法で得られる安定化赤燐は、上記の製造方法により得られた赤燐粒子を含有するスラリー、又は該スラリーから固液分離して得られる赤燐粒子を原料として用いて、該赤燐粒子の表面を無機物で被覆処理した安定化赤燐(以下、「第1の安定化赤燐」と呼ぶ。)、又は該赤燐粒子の表面を無機物で被覆処理し、次にこの無機物で被覆処理した赤燐粒子の表面を、更に熱硬化性樹脂で被覆処理した二重被覆赤燐(以下、「第2の安定化赤燐」と呼ぶ。)である。
【0046】
前記第1の安定化赤燐の製造方法は、(a)上記の製造方法により得られた赤燐粒子を含有するスラリーを用いるか、又は(b)該スラリーを固液分離して得られる湿潤状態の赤燐粒子又はそれを乾燥した乾燥赤燐粒子を用いて、所望の濃度に調製して赤燐粒子を含有するスラリーを用意するか、前記(a)または(b)のいずれかからなる(A1)工程、次いで、この赤燐粒子を含有するスラリーに、Zn、Al、Mg、Ti、Si、Co、Zr、Snから選ばれる少なくとも1種以上の水溶性金属塩とアルカリ剤とを添加して赤燐粒子表面にこれらの金属の水酸化物又は酸化物を沈澱させる(A2)工程、次いで、得られた無機物を被覆した赤燐を水で洗浄する(A3)工程を有する。
【0047】
前記の(A1)工程において、前記の(a)の赤燐粒子を含有するスラリーは、水100重量部に対して赤燐粒子5〜100重量部、好ましくは10〜80重量部を含むスラリーである。また、(b)の赤燐粒子を含有するスラリーは、湿潤状態の赤燐粒子又は乾燥赤燐粒子を水100重量部に対して赤燐粒子5〜100重量部、好ましくは10〜80重量部を含むようにスラリー濃度を調製する工程である。
【0048】
前記の(A2)工程は、具体的には(A1)工程で調製したスラリーに、Zn、Al、Mg、Ti、Si、Co、Zr、Snから選ばれる少なくとも1種以上の水溶性金属塩を、金属として赤燐粒子100重量部に対して0.05〜12重量部、好ましくは0.1〜10重量部を添加し、アンモニアガス、アンモニア水、苛性ソーダ、苛性カリ、NaHCO3 、Na2 CO3 、K2 CO3 、KHCO3 等の無機アルカリ剤またはエタノールアミン等の有機アルカリから選ばれる少なくとも1種以上のアルカリを添加し、該スラリーのpHを6〜10に調製し、温度40〜95℃、好ましくは75〜90℃で反応および熟成を行って前記金属の水酸化物又は酸化物を赤燐粒子表面に沈殿させることにより実施することができる。
【0049】
なお、赤燐粒子を水酸化亜鉛で被覆処理する場合には、pHを常に6.5以上に保持して行うことが好ましい。
【0050】
前記の(A3)工程は、(A2)工程後の無機物を被覆した赤燐を水で洗浄処理する工程である。本発明において、この洗浄を第1の安定化赤燐の10%スラリーとしたときの25℃での電気伝導度を所望の値まで低減したものを製品として用いることが好ましく、通常、この電気伝導度を1000μs/cm以下とすることにより、建築材料、塗料、家庭用品等の汎用品の難燃剤として用いることができ、好ましくは電気伝導度を300μs/cm以下としたものは、その他、例えば、電線、ケーブル、フェノール樹脂成形材料、合板用接着剤、発泡ポリエチレン等の難燃剤として用いることができる。
【0051】
この洗浄を行う方法としては、特に制限はないがリパルプ等の手段により行うことが洗浄効率が高いことから特に好ましい。
洗浄終了後、不活性ガス雰囲気中で乾燥して製品とする。
【0052】
かくして得られる第1の安定化赤燐は、赤燐含有率が80重量%以上であると、高分子材料に優れた難燃性を付与することができることから好ましく、一方、赤燐含有率が80重量%未満では、被覆成分により凝集しやすくなり、98重量%を越えると被覆量が少ないため、ホスフィンガスの発生やリンのオキソ酸の溶出を抑制するための安定性に欠けたものとなりやすいため、赤燐含有率が80〜98重量%とすることが好ましい。
【0053】
また、第1の安定化赤燐の粒度特性として平均粒径が10〜40μm、好ましくは18〜25μmであると各種高分子材料への分散性に優れるため好ましい。また、粒径5μm未満の粒子の含有量が5重量%以下、好ましくは3重量%以下で、更に好ましくは粒径1μmの含有量が0.5重量%以下、好ましくは0.1重量%以下であるとホスフィンガスの発生やリンのオキソ酸の溶出が一層低減されたものとなることから好ましい。更に、上記粒度特性に加え、45μmを越える粒子の含有量が5重量%以下、好ましくは3重量%以下であると最大粒径が要求される例えば、電線、ケーブル等の赤燐系難燃剤として好適に用いることができる。
【0054】
次に、前記第2の安定化赤燐の製造方法は、前記第1の安定化赤燐粒子を含むスラリーを調製する(B1)工程、次いで、この第1の安定化赤燐粒子を含むスラリーに、熱硬化性樹脂の合成原料またはその初期縮合物を添加し重合反応を行う(B2)工程、次いで、得られた熱硬化性樹脂で被覆した第1の安定化赤燐を水で洗浄する(B3)工程を有する。
【0055】
前記の(B1)工程は、前記の第1の安定化赤燐粒子を含有するスラリーを調製する工程である。具体的には水100重量部に対して第1の安定化赤燐5〜30重量部、好ましくは10〜20重量部を含むスラリーを調製する。
なお、この(B1)工程において、前記第1の安定化赤燐を含有するスラリーは、前記(A2)工程後の反応液をそのまま用いてもよい。
【0056】
前記(B2)工程は、具体的には、(B1)工程で調製したスラリーに、例えば、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール−ホルマリン系樹脂、尿素−ホルマリン系樹脂、メラミン−ホルマリン系樹脂等から選ばれる熱硬化性樹脂の合成原料またはその初期縮合物を添加する。例えば、被覆樹脂としてフェノール系樹脂を用いる場合には、(B1)工程で調製したスラリーに塩酸、硝酸、硫酸等の酸及び所望によりアンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリを添加し、次いで、フェノール樹脂の初期縮合物(固形分として)0.25〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部を添加して、所望により緩衝剤として塩化アンモニウムを添加し60〜90℃で1〜3時間攪拌しながら重合反応を行うことにより実施することができる。
【0057】
また、この(B2)工程では、第1の安定化赤燐として水酸化亜鉛で被覆処理した安定化赤燐を用いる場合には、適宜アルカリを添加しpH6.5以上で熱硬化性樹脂の重合反応を行うことが好ましい。
【0058】
また、この(B2)工程において、所望により、例えば、粒径が2μm以下、好ましくは0.2〜1μmのZnO、ZnCO3 、Zn2 SiO4 、Al23 、ZrO2 、TiO2 及びSnO2 から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を0.25〜20重量部の範囲で反応系内に添加し、重合反応を行ってもよい。
【0059】
前記の(B3)工程は、(B2)工程で得られる熱硬化性樹脂で被覆した第2の安定化赤燐を水で洗浄処理する工程である。本発明において、この洗浄を第2の安定化赤燐の10%スラリーとしたときの25℃での電気伝導度を所望の値まで低減するまで行うことが好ましい。通常、この電気伝導度を1000μs/cm以下とすることにより、建築材料、塗料、家庭用品等の汎用品の難燃剤として用いることができ、好ましくは300μs/cm以下としたものは、その他、例えば、電線、ケーブル、フェノール樹脂成形材料、合板用接着剤、発泡ポリエチレン等の難燃剤として用いることができる。
【0060】
この洗浄を行う方法としては、特に制限はないがリパルプ等の手段により行うことが洗浄効率が高いことから特に好ましい。
洗浄終了後、不活性ガス雰囲気中で乾燥して製品とする。
【0061】
かくして得られる第2の安定化赤燐は、第1の安定化赤燐と比べて、熱硬化性樹脂により更に強固に被覆されているため、一層ホスフィンガスの発生やリンのオキソ酸の溶出が低減されたものであり、また、赤燐含有率が80重量%以上であると、高分子材料に優れた難燃性を付与することができることから好ましく、一方、赤燐含有率が80重量%未満では、被覆成分により凝集しやすくなり、98重量%を越えると被覆量が少ないため、ホスフィンガスの発生やリンのオキソ酸の溶出を抑制するための安定性に欠けたものとなりやすいため赤燐含有率が80〜98重量%とすることが好ましい。また、粒径5μm未満の粒子の含有量が5重量%以下、好ましくは3重量%以下で、更に好ましくは粒径1μmの含有量が0.5重量%以下、好ましくは0.1重量%以下であるとホスフィンガスの発生やリンのオキソ酸の溶出が一層低減されたものとなることから好ましい。更に、上記粒度特性に加え、45μmを越える粒子の含有量が5重量%以下、好ましくは3重量%以下であると最大粒径が要求される例えば、電線、ケーブル、封止材等の赤燐系難燃剤として好適に用いることができる。
【0062】
本発明で得られる安定化赤燐は、各種高分子材料への赤燐系難燃剤として好適に用いることができ、また該赤燐系難燃剤は高分子材料に配合され、混練時、成形時において、ホスフィンガスの発生やリンのオキソ酸の溶出が抑制されるので難燃剤として好適である。
【0063】
用いることができる高分子材料としては、特に限定はなく、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、フラン樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリールフタレート樹脂等の硬化性樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンエーテル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド、熱可塑性ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリテトラフルオロエチレン及びこれらの変性物等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよく、2種類以上の混合物であってもよい。
【0064】
ここで、硬化性樹脂とは、熱、触媒、あるいは紫外線などの作用により化学変化をおこして架橋構造が発達し、分子量が増大して三次元網状構造を有して、硬化して半永久的に不溶性・不融性となる合成樹脂を示す。また、熱可塑性樹脂とは、加熱により流動性を示し、これにより賦形が可能である樹脂を表す。
【0065】
また、本発明における高分子材料は、ゴムであってもよく、例えば天然ゴム、スチレン−ブタジエン系ゴム(SBR)、アクロニトリル−ブタジエン系ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ポリブタジエンゴム(BR)、エチレン−プロピレン系ゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ポリイソブチレンゴム、アルリルゴム、水素化アクロニトリル−ブタジエンゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴム、クロロスルホン化ゴム、シリコーンゴム及びこれらの変性物等が挙げられ、これらは、2種以上のブレンドゴムであってもよい。
【0066】
本発明で用いる高分子材料は、前記硬化性樹脂、熱可塑性樹脂又はゴムから選ばれる2種以上のブレンド品であってもよい。
本発明の安定化赤燐の各種高分子材料に対する配合割合は、高分子材料100重量部に対して、Pとして2〜20重量部、好ましくは3〜10重量部である。
【0067】
また、本発明の安定化赤燐は、他の難燃剤と併用し用いることができる。
併用することが出来る他の難燃剤としては、水和金属化合物、リン系難燃剤、含窒素系難燃剤等が挙げられる。
【0068】
水和金属化合物としては、吸熱反応による燃焼抑制作用のあるMm n ・xH2 O(Mは金属、m、nは金属の原子価によって定まる1以上の整数、xは含有結晶水を示す。)で表わされる化合物または該化合物を含む複塩であり、具体的には、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム、ドーソナイト、スズ酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、塩基性炭酸亜鉛、ホウ砂、モリブデン酸亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、ハイドロカルマイト、カオリン、タルク、セリサイト、パイロフィライト、ベントナイト、カオリナイト、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛等が挙げられる。
【0069】
含窒素系難燃剤としては、メラミン、メラミンシアヌレート、メチロール化メラミン、(イソ)シアヌール酸、メラム、メレム、メロン、サクシノグアミン、硫酸メラミン、硫酸アセトグアナミン、硫酸メラム、硫酸グアニルメラミン、メラミン樹脂、BTレジン、シアヌール酸、イソシアネール酸、イソシアヌール酸誘導体、メラミンイソシアヌレート、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等のメラミン誘導体、グアニジン系化合物等が挙げられる。
【0070】
リン系難燃剤としては、例えば、リン酸トリエチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニル、リン酸クレジルフェニル、リン酸オクチルジフェニル、ジエチレンリン酸エチルエステル、ジヒドロキシプロピレンリン酸ブチルエステル、エチレンリン酸ジナトリウムエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチル―プロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチルブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、リン酸グアニル尿素、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニジン、エチレンジアミンリン酸塩、ホスファゼン、メチルホスホン酸メラミン塩等が挙げられる。
【0071】
前記した他の難燃剤は1種又は2種以上で用いられ、これらの中、水和金属化合物が好ましい。また、上記の他の難燃剤の添加量は、安定化赤燐100重量部に対して10〜100重量部、好ましくは20〜60重量部とすることが好ましい。なお、これらの他の難燃剤の粒径等は特に制限はないが、通常レーザー回折法から求められる平均粒径が100μm以下、好ましくは1〜30μmである。
【0072】
また、本発明の安定化赤燐を含有する高分子材料組成物は、その使用する用途に応じた他の成分を配合して用いることができる。他の成分としては、例えば、りん系、イオン系、ヒンダートフェノール系などの酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、染料、顔料を含む着色剤、架橋剤、軟化剤、分散剤等が挙げられるが特にこれらの添加剤に制限されるものではない。
【0073】
また、必要に応じて、繊維状、および/または粒状の充填剤を添加して、樹脂の剛性を大幅に向上させることができる。このような充填剤としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アラミド樹脂、アスベスト、チタン酸カリウムウイスカ、ワラステナイト、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、溶融シリカ、結晶性シリカ、マグネシア、酸化アルミニウムが挙げられる。
前記した高分子材料に配合するその他の成分や充填剤は、通常用いられる樹脂の種類や樹脂の用途に応じた通常用いられる配合割合でよい。
【0074】
なお、本発明の安定化赤燐を高分子材料に混合する方法は、特に制限されるものではなく、予め必要に応じて前記の他の難燃剤、他の配合剤を混合した後、要すれば加熱しながら混合した後、他の成分と混合するマスターバッチ法や、そのまま配合して混合する方法が挙げられるが、いずれの方法をとるかは、工業的に有利な方法を適宜選択すればよい。
【0075】
本発明における安定化赤燐を含有する高分子材料組成物は通常公知の方法で成形することができ、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、プレス成形、カレンダー成形、発泡成形などを施して、シート、フィルムなどのあらゆる形状の成形品とすることができる。これらの成形品は、例えば、積層板、封止材、フラットケーブル、電線ケーブル被覆材、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、壁紙などの各種用途に有用であるが、特にこれらに制限されるものではない。
【0076】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下に実施例1〜5を示すが、それらの実施例において、実施例2〜4は本発明の実施例を示し、実施例1および実施例5は参考例を示す。
【0077】
<粗粒の赤燐粒子>
製造原料となる粗粒の赤燐粒子は、黄燐を転化反応させて得られた塊状の赤燐粉末を用いた。その諸物性を表1に示す。
【0078】
【表1】
Figure 0004155448
【0079】
なお、粒度分布は、レーザー回折式粒度測定装置(セイシン企業社製、形式LMS−24型)により測定した。
鉄の含有量は酸分解チオグリコール酸吸光光度法より測定した。
黄燐はベンゼン抽出後、リン−バナジウムモリブデン酸吸光光度法により測定した。
【0080】
実施例1
実施例1では、図2の実験装置を用いて実験を行った。この実験装置は、粗粒の赤燐粒子を含有するスラリーを貯蔵した容器1、湿式粉砕機のビーズミル2、ビーズミル2から排出されるスラリーを一時的に貯蔵するための容器3、2機の液体サイクロン4−1及び4−2、液体サイクロンの上部から排出された溶液を貯蔵するための上部容器5及び液体サイクロンの下部から排出された溶液を貯蔵するための下部容器6とを備える。
【0081】
(第一工程)
上記の塊状赤燐10kgを水10000kgに分散させたスラリーを調製し、図2の容器1に貯蔵した。
次いで、粒径0.6mmφのガラスビーズ6kgを格納した容量5Lのボールミル(アイメックス社製;形式 NVM5)2に、上記で調製したスラリーを供給し、湿式粉砕処理を行った。湿式粉砕処理後に、容器3に貯蔵された赤燐粒子を含有するスラリーの諸物性を表2に示す。
湿式粉砕処理条件は、原料スラリーのチャージ量3L/分、ローター回転数800rpmで行った。
【0082】
なお、各粒子の含有量、鉄及び黄燐の含有量は、スラリーの一部を固液分離し、乾燥した赤燐粉末中に含まれる含有量を示す。また、粒度特性、鉄と黄燐の含有量は前記と同様な方法で求めた。
【0083】
【表2】
Figure 0004155448
【0084】
(第二工程)
第一工程後のスラリー500kgを液体サイクロン(三条鉄工社製)4−1及び4−2に供給した。液体サイクロン4−2のボトム部から排出された下部容器6に貯蔵されたスラリーの諸物性及び処理に要した時間と、5μm未満の赤燐粒子の除去率を表3に示す。
【0085】
5μm未満の赤燐粒子の除去率は、下記計算式(1)により求めた。
【0086】
【数1】
Figure 0004155448
【0087】
(式中のαは液体サイクロンに供給前の赤燐粒子全体量に占める5μm未満の粒子の含有量(重量%)、βは液体サイクロン処理後の赤燐粒子全体量に占める5μm未満の粒子の含有量(重量%)を示す。)
【0088】
なお、各粒子の含有量、鉄及び黄燐の含有量は、スラリーの一部を固液分離し、乾燥した赤燐粉末中に含まれる含有量を示す。また、粒度特性、鉄と黄燐の含有量は前記と同様な方法で求めた。
【0089】
また、用いた液体サイクロンは、図1に示す構造の液体サイクロンで、下記の寸法の二液分離型のものを2機用いた。
・円筒部内径(a):56.5mm
・円錐部分の傾斜角(d):21.2度
・上部円筒部分の長さ(b):58mm
・下部円錐部分の長さ(c):135mm
・上流の抜き出し部分の管径(f):11.8mm
・下流の抜き出し部分の管径(e):5mm
また、操作条件は以下のとおりである。
・送入圧;0.05MPa
・流量分配比(上流/下流);2/1
【0090】
比較例1
実施例1と同様に第一工程を実施した後、得られた赤燐粒子を含有するスラリー500kgを別に用意した攪拌機付きの円筒型(容量2000L)タンクに入れ、30分攪拌、攪拌を止め30分静置、円筒型タンク内のスラリーの上部の2/3を抜き取り、抜き取り分の水を補給する操作を6回繰り返してタンクデカンテーション法により微粒子カット(カット点5μm)を実施した。なお、6回の排出で抜き取られたスラリー量は合計で400kgであった。
【0091】
また、6回抜き取り後のタンク内に存在する赤燐粒子を含有するスラリーの一部を固液分離し、乾燥した赤燐粉末を得、この乾燥赤燐粉末中に含まれる各粒子の含有量、鉄及び黄燐の含有量を実施例1と同様に測定した。その結果及び処理に要した時間及び5μm未満の赤燐粒子の除去率を表3に示す。
【0092】
なお、除去率は、下記計算式(2)に求めた。
【0093】
【数2】
Figure 0004155448
【0094】
(式中のα1 はタンクデカンテーション法を実施する前の赤燐粒子全体量に占める5μm未満の粒子の含有量(重量%)、β1 はタンクデカンテーション法後の赤燐粒子全体量に占める5μm未満の粒子の含有量(重量%)を示す。)
【0095】
比較例2
実施例1と同様に第一工程を実施した後、得られた赤燐粒子を含有するスラリー500kgを別に用意した容量500Lの溢簸実験槽(向流接触式洗浄槽、上部:円筒型、下部:逆円錐型)に仕込み、下部より定量ポンプで水を送入して微粒子のみをオーバーフローさせる方法(水簸法)で微粒子をカットした。この時オーバーフローして回収したスラリーは2000kgであった。
【0096】
また、水簸法後の溢簸実験槽中の赤燐粒子を含有するスラリーの一部を固液分離し、乾燥した赤燐粉末を得た。この乾燥赤燐粉末中に含まれる各粒子の含有量、鉄及び黄燐の含有量を実施例1と同様に測定した。その結果及び処理に要した時間及び5μm未満の赤燐粒子の除去率を表3に示す。
【0097】
なお、除去率は、下記計算式(3)に求めた。
【0098】
【数3】
Figure 0004155448
【0099】
(式中のα2 は水簸法を実施する前の赤燐粒子全体量に占める5μm未満の粒子の含有量(重量%)、β2 は水簸法後の赤燐粒子全体量に占める5μm未満の粒子の含有量(重量%)を示す。)
【0100】
【表3】
Figure 0004155448
【0101】
表3の結果より、5μm未満の赤燐粒子の除去手段として、液体サイクロンを用いることにより5μm未満の赤燐粒子を短時間で且つ効率よく除去することができることが分かる。
【0102】
<ホスフィンガス発生量の測定>
実施例1及び比較例1〜2のスラリーから固液分離して乾燥して得た赤燐各0.5gをアルミナボードに採取し、試験管に入れ窒素ガス中で250℃、1時間加熱した。発生したPH3 量をテドラーバックに捕集して検知機で測定した。その結果を表4に示す。
【0103】
<リンのオキソ酸の溶出量の測定>
実施例1及び比較例1〜2のスラリーから固液分離して乾燥して得た赤燐各8gを100mlのポリプロピレン製ビンに採取し、蒸留水80mlを加えて密栓する。送風定温乾燥機にて80℃で20時間加熱、抽出後、乾燥機より取り出し、10分以内に常温まで冷却し、上澄み液をろ過した後、ろ液中の溶出PO4 イオン、PHO3 イオン及びPH22 イオンの濃度をイオンクロマトグラフで測定した。その結果を表4に示した。
【0104】
【表4】
Figure 0004155448
【0105】
表4の結果より、5μm未満の赤燐粒子を赤燐全体量の5重量%以下まで低減したものは、ホスフィン発生量とリンのオキソ酸の溶出量が低減されていることが分かる。
【0106】
実施例2及び比較例3〜4
実施例1及び比較例1〜2で得られた各赤燐粒子を含有するスラリーに水を加えて10%スラリーとし、このスラリー735gに、30%過酸化水素水溶液を0.7ml加えた。次いで、水酸化ナトリウム水溶液でpHを10に調製し、80℃で6時間保持した。次いで、硝酸を加え、pHを1に調製した後、80℃で4時間処理した後、ろ過し、スラリーのpHが8となるまで水で洗浄した。
【0107】
次いで、得られたスラリーから一部赤燐粒子を回収し、乾燥後、鉄と黄燐とを実施例1と同様な方法で測定した。その結果を表5に示す。また、実施例1と同様な方法でPH3 発生量と溶出したリンのオキソ酸の量を測定した。その結果を表5に示す。
【0108】
【表5】
Figure 0004155448
【0109】
表5の結果より、赤燐粒子を含有するスラリーを酸処理、アルカリ処理を施して鉄と黄燐の含有量を低減することにより、ホスフィン発生量とリンのオキソ酸の溶出量を低減させることができることが分かる。
【0110】
実施例3及び比較例5〜6
実施例2及び比較例3〜4で得られたスラリーに水を加えて10%スラリーに調製し、このスラリー300gにAl23 として8重量%の硫酸アルミニウム48.9gを加えて、攪拌しながら2.9wt%アンモニア水でpH8に調製し、80℃で3時間熟成を行った。
【0111】
放冷を行った後、遠心ろ過機によりろ過して、反応液から被覆赤燐を回収した。この被覆赤燐を、再び水を加えてスラリーとした後、常法によりリパルプして、この被覆赤燐の10%スラリーとした時の25℃の電気伝導度が30μs/cm以下になるまで洗浄した。洗浄した被覆赤燐を減圧下に110℃で6時間乾燥し安定化赤燐を得た。得られた安定化赤燐の諸物性を表6に示す。
【0112】
【表6】
Figure 0004155448
【0113】
(注)表6中の電気伝導度は25℃における安定化赤燐の10%スラリーの値である。電気伝導度は、溶出イオンの測定用検液を使用して、電気伝導計により得られた値である。
【0114】
<ホスフィンガス発生量の測定>
実施例3及び比較例5〜6で得られた安定化赤燐各0.5gをアルミナボードに採取し、試験管に入れ窒素ガス中で250℃、1時間加熱した。発生したPH3 量をテドラーバックに捕集して検知機で測定した。その結果を表7に示す。
【0115】
<リンのオキソ酸の溶出量の測定>
実施例3及び比較例5〜6で得られた各安定化赤燐8gを100mlのポリプロピレン製ビンに採取し、蒸留水80mlを加えて密栓する。送風定温乾燥機にて80℃で20時間加熱、抽出後、乾燥機より取り出し、10分以内に常温まで冷却し、上澄み液をろ過した後、ろ液中の溶出PO4 イオン、PHO3 イオン及びPH22 イオンの濃度をイオンクロマトグラフで測定した。その結果を表7に示した。
【0116】
【表7】
Figure 0004155448
【0117】
表7の結果より、本発明の製造方法で、ホスフィン発生量とリンのオキソ酸の溶出量が比較例のものと比べて低減されていることが分かる。
【0118】
実施例4
実施例4では、図3の実験装置を用いて実験を行った。この実験装置は、粗粒の赤燐粒子を含有するスラリーを貯蔵した容器1、湿式粉砕機のタワーミル7、ふるい目の開きの寸法が75μmの篩8、該篩8を通過したスラリーを一時的に貯蔵するための容器3、2機の液体サイクロン4−1及び4−2、液体サイクロン4−2の上部から排出された溶液を貯蔵するための上部容器5、ふるい目の開きの寸法が45μmの篩9を通過したスラリーを貯蔵するための下部容器6とを備える。
【0119】
前記タワーミル7で粉砕された粉砕物は溢流により、篩8に送られ、粒径75μmより大きな粒子は再びタワーミルに送られる。一方、この篩8を通過した粒子は、一時的に貯蔵するための容器3へ貯蔵される。また、液体サイクロン4−2の下部から排出されるスラリーは、篩9を通って、下部容器6に貯蔵される。
【0120】
(第一工程)
上記の粗粒の赤燐3300kg(3.3t)を水10000Lに分散させたスラリーを調整し、これに硝酸を加えてpH3.5に調製し容器1に貯蔵した。
次いで、このスラリーをタワーミル装置(日本タワーミル社製 形式VW−15)7に導入し、湿式粉砕処理を行った。篩8を通過し、容器3に貯蔵された赤燐粒子を含有するスラリーの諸物性を表8に示す。なお、各粒子の含有量、鉄及び黄燐の含有量は、スラリーの一部を固液分離し、乾燥した赤燐粉末中に含まれる含有量を示す。なお、粒度特性、鉄及び黄燐の含有量を実施例1と同様な方法で測定した。
【0121】
また、タワーミル装置の操作条件は以下のとおりで行った。
・サイズ;高さ4.8m×長さ3.6m×幅2.8m
・回転数;60rpm
・粉砕媒体;2.5cm径のアルミナボール
【0122】
【表8】
Figure 0004155448
【0123】
(第二工程)
第一工程後のスラリー300kgに水を加えてスラリーの比重を1.04に調製した後、これを液体サイクロン(三条鉄工社製)4−1及び4−2に供給した。液体サイクロンのボトム部から排出され、ふるい目の開き45μmの篩9を通過し、下部容器6に貯蔵されたスラリーの諸物性及び処理に要した時間を表9に示す。
【0124】
なお、各粒子の含有量、鉄及び黄燐の含有量は、スラリーの一部を固液分離し、乾燥した赤燐粉末中に含まれる含有量を示す。なお、粒度特性、鉄及び黄燐の含有量を実施例1と同様な方法で測定した。
【0125】
また、用いた液体サイクロンは、図1に示す構造の液体サイクロンで、下記の寸法の二液分離型のものを2機用いた。
・円筒部内径(a):56.5mm
・円錐部分の傾斜角(d):21.2度
・上部円筒部分の長さ(b):58mm
・下部円錐部分の長さ(c):135mm
・上流の抜き出し部分の管径(f):11.8mm
・下流の抜き出し部分の管径(e):5mm
また、操作条件は以下のとおりである。
・送入圧;0.05MPa
・流量分配比(上流/下流);2/1
【0126】
【表9】
Figure 0004155448
【0127】
次いで、上記で得られた赤燐粒子を含有するスラリーに水を加えて10%スラリーとし、このスラリー735gに、30%過酸化水素水溶液を0.7ml加えた。次いで、水酸化ナトリウム水溶液でpHを10に調製し、80℃で6時間保持した。次いで、硝酸を加え、pHを1に調製した後、80℃で4時間処理した後、ろ過し、10%スラリーのpHが8となるまで水で洗浄した。スラリーの一部を固液分離し、実施例1と同様の方法で鉄と黄燐の含有量を測定したところ、乾燥した赤燐粉末中に含まれる鉄の含有量は0.01重量%で、黄燐の含有量は0.002重量%であった。
【0128】
次いで、洗浄後の赤燐を再び10%スラリーとし、このスラリー300gにAl23 として8重量%を含有する硫酸アルミニウム1.2gを加えて、攪拌しながら2.9%アンモニア水でpH8に調製し、80℃で3時間熟成を行った。
【0129】
放冷を行った後、常法によりろ過して反応液からこの被覆赤燐を回収し、再び水を加えてスラリーとした後、常法によりリパルプして、この被覆赤燐の10%スラリーとした時の電気伝導度が1000μs/cm以下になるまで洗浄を行った。
【0130】
次いで、この洗浄後の赤燐を再び10%スラリーとし、29wt%アンモニア水でpH10として、フェノール樹脂(大日本インキ社製、初期縮合物、フェノライトTD2388;固形分25%)を6g加えた。
次いで、塩酸を用いてpHを6.5に調製し、次に90℃で1時間硬化反応を行った。
【0131】
放冷した後、十分にスラリーをろ過、洗浄し、ろ過ケーキは減圧下に乾燥した後、140℃で1時間硬化処理を行い、放冷後100メッシュの篩を通過させて安定化赤燐試料を得た。得られた安定化赤燐の諸物性を表10に示す。また、実施例3と同様な方法で、ホスフィンガスの発生量とリンのオキソ酸の溶出量を測定した。その結果を表10に示す。
【0132】
【表10】
Figure 0004155448
【0133】
(注)表中の電気伝導度は25℃における安定化赤燐の10%スラリーの値である。
【0134】
実施例5
実施例5は、図3の実験装置を用い、スラリーの製造を5回行い、品質安定性を評価した。
【0135】
(第一〜第二工程)
上記の粗粒の赤燐3300kg(3.3t)を水10000Lに分散させたスラリーを調整し、これに硝酸を加えてpH3.5に調製し、図3中の容器1に貯蔵した。
【0136】
次いで、このスラリーをタワーミル装置(日本タワーミル社製 形式VW−15)7に導入し、湿式粉砕処理を行い、次いで、篩8を通過し、容器3に貯蔵された赤燐粒子を含有するスラリーに水を加えて比重を1.04としたものを液体サイクロン(三条鉄工社製)4−1及び4−2に供給し、液体サイクロンのボトム部から排出され、篩9を通過したスラリーを下部容器6に貯蔵した。これにより第1回目のスラリーを得た。
【0137】
第2回目のスラリーは、第1回目のスラリーと同じように、上記の粗粒の赤燐3300kgを水10000Lに分散させたスラリーを用いて、第1回目と同様に第一工程から第二工程の操作を行い、第2回目のスラリーを得た。
同様に、上記の第一工程から第二工程の操作を合計で5回行い下部容器6中に貯蔵された各スラリー中に含まれる赤燐粒子の粒度特性を実施例1と同様に測定した。その結果を表11に示す。
また、第2工程の処理に要した時間を表11に合わせて併記した。
【0138】
また、タワーミル装置の操作条件は下記のとおりである。
・サイズ;高さ4.8m×長さ3.6m×幅2.8m
・回転数;60rpm
・粉砕媒体;2.5cm径のアルミナボール
【0139】
また、用いた液体サイクロンは、図1に示す構造の液体サイクロンで、下記の寸法の二液分離型のものを2機用いた。
・円筒部内径(a):56.5mm
・円錐部分の傾斜角(d):21.2度
・上部円筒部分の長さ(b):58mm
・下部円錐部分の長さ(c):135mm
・上流の抜き出し部分の管径(f):11.8mm
・下流の抜き出し部分の管径(e):5mm
また、液体サイクロンの操作条件は以下のとおりである。
【0140】
・送入圧;0.05MPa
・分配比率(上流/下流);2/1
【0141】
【表11】
Figure 0004155448
【0142】
表11の結果より、本発明の赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法は、安定した品質のものを短時間で製造することができることが分かる。
【0143】
【発明の効果】
上記したとおり、本発明の赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法によれば、工業的に有利な方法で、ホスフィンガスの発生、更にはリンのオキソ酸の溶出が少ない赤燐粒子を含有するスラリーを短時間で、且つ安定した品質で得ることができる。
【0144】
また、本発明の安定化赤燐の製造方法によれば、上記の赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法により得られた赤燐粒子を製造原料として用いて、ホスフィンガスの発生量及びリンのオキソ酸の溶出量が効果的に抑制された安定化赤燐を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用する液体サイクロンの代表的な構造を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例1の第一工程と第二工程で用いた実験装置を示す概略図である。
【図3】本発明の実施例4及び実施例5の第一工程と第二工程で用いた実験装置を示す概略図である。
【符号の説明】
a 液体サイクロンの円筒部内径
b 液体サイクロンの上部円筒部分の長さ
c 液体サイクロンの下部円錐部分の長さ
d 液体サイクロンの円錐部分の傾斜角
e 液体サイクロンの下流抜き出し部分の管径
f 液体サイクロンの上流抜き出し部分の管径
P ポンプ
1 容器
2 ビーズミル
3 容器
4−1,4−2 液体サイクロン
5 上部容器
6 下部容器
7 タワーミル
8 ふるい目の開き寸法75μmの篩
9 ふるい目の開き寸法45μmの篩

Claims (8)

  1. 不純物として鉄及び黄燐を含有する原料の赤燐粒子を含むスラリーを湿式粉砕処理して、該スラリー中に含まれる粒径45μm以下の赤燐粒子の含有量が赤燐粒子全体量の50重量%以上としたスラリーを調製する第一工程と、該第一工程で調製されたスラリーを液体サイクロンで処理して、該スラリー中に含まれる粒径5μm未満の赤燐粒子の含有量を赤燐粒子全体量の5重量%以下で、平均粒径が10〜40μmにしたスラリーを調製する第二工程、更に第一工程の前、第一工程後、第二工程後の何れかの時期に赤燐粒子を含むスラリーに酸及びアルカリを添加して該赤燐粒子を処理し、赤燐粒子中に含まれる不純物の鉄の含有量が0.1重量%以下及び黄燐の含有量が0.005重量%以下に低減する工程を含むことを特徴とする赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法。
  2. 前記第一工程の湿式粉砕処理をタワーミルを用いて行う請求項1記載の赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法。
  3. 前記タワーミルでの湿式粉砕処理を硝酸の存在下に行う請求項2記載の赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法。
  4. 更に、第二工程後のスラリーから粒径45μmを越える赤燐粒子を除去する工程を有する請求項1乃至3のいずれかの項に記載の赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法。
  5. 前記粒径45μmを越える赤燐粒子の除去を篩により行う請求項4記載の赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法。
  6. 請求項1乃至のいずれかに記載の方法により製造された赤燐粒子を含有するスラリーに、Zn、Al、Mg、Ti、Si、Co、Zr、Snから選ばれる少なくとも1種以上の水溶性金属塩を添加して水性懸濁液を調製する工程と、該水性懸濁液にアルカリを添加して金属塩を赤燐粒子表面に沈殿させる工程を有することを特徴とする安定化赤燐の製造方法。
  7. 請求項1乃至のいずれかに記載の方法により製造された赤燐粒子を含有するスラリーを固液分離して赤燐粒子を得る工程と、得られた該赤燐粒子を含有するスラリーを調製する工程と、該赤燐粒子を含有するスラリーに、Zn、Al、Mg、Ti、Si、Co、Zr、Snから選ばれる少なくとも1種以上の水溶性金属塩を添加して水性懸濁液を調製する工程と、該水性懸濁液にアルカリを添加して金属塩を赤燐粒子表面に沈殿させる工程を有することを特徴とする安定化赤燐の製造方法。
  8. 請求項6または7に記載の方法により製造された安定化赤燐を含むスラリーに、熱硬化性樹脂の合成原料又はその初期縮合物を添加し重合反応を行うことを特徴とする安定化赤燐の製造方法。
JP2002303353A 2002-09-30 2002-10-17 赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法及び安定化赤燐の製造方法 Expired - Fee Related JP4155448B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002303353A JP4155448B2 (ja) 2002-09-30 2002-10-17 赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法及び安定化赤燐の製造方法
CNB02146121XA CN100425305C (zh) 2002-09-30 2002-10-29 含有赤磷粒子的浆料的制造方法及稳定化赤磷的制造方法

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002285491 2002-09-30
JP2002303353A JP4155448B2 (ja) 2002-09-30 2002-10-17 赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法及び安定化赤燐の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2004175575A JP2004175575A (ja) 2004-06-24
JP4155448B2 true JP4155448B2 (ja) 2008-09-24

Family

ID=32715555

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002303353A Expired - Fee Related JP4155448B2 (ja) 2002-09-30 2002-10-17 赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法及び安定化赤燐の製造方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP4155448B2 (ja)
CN (1) CN100425305C (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111170292B (zh) * 2019-11-04 2023-09-29 湖北大学 一种纤维相红磷纳米粒子的制备方法及其应用
CN112209356B (zh) * 2020-09-28 2021-12-14 浙江工业大学 一种类p2o5结构材料及其制备方法和应用
CN114560209B (zh) * 2022-03-01 2023-12-12 宿迁洁丽环保设备制造有限公司 一种垃圾分类投放站

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS61111342A (ja) * 1984-11-06 1986-05-29 Nippon Chem Ind Co Ltd:The 難燃剤およびその製造法
JPH0647449B2 (ja) * 1987-07-20 1994-06-22 日本化学工業株式会社 安定化赤リンの製造法
JPH01286909A (ja) * 1988-05-12 1989-11-17 Nippon Chem Ind Co Ltd 安定化赤リンおよびその製造法
JP2855331B2 (ja) * 1988-10-20 1999-02-10 日本化学工業株式会社 安定化赤リンおよびその製造方法
CN1051526C (zh) * 1997-08-08 2000-04-19 李兴德 浸提法磷泥回收黄磷的方法
JP3894257B2 (ja) * 1998-11-27 2007-03-14 日本化学工業株式会社 改質赤リン及びその製造方法ならびに消色化赤リン組成物
CN100339439C (zh) * 2000-05-25 2007-09-26 日本化学工业株式会社 环氧树脂用红磷系阻燃剂及其制造方法和组合物、半导体密封材料用环氧树脂组合物、密封材料及半导体装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2004175575A (ja) 2004-06-24
CN1486762A (zh) 2004-04-07
CN100425305C (zh) 2008-10-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101005406B1 (ko) 개질 적린, 그의 제조 방법, 소색화 적린 조성물 및 난연성 고분자 조성물
AU713119B2 (en) Silane treated inorganic pigments
AU2009217065B2 (en) A process for the production of nanodispersible boehmite and the use thereof in flame retardant synthetic resins
MX2008015384A (es) Proceso para la produccion de hidroxido de aluminio.
TWI632113B (zh) Calcium carbonate filler for resin and resin composition containing the same
KR20110086807A (ko) 합성 무기 난연제, 이의 제조 방법, 및 난연제로서의 그의 용도
JP6200426B2 (ja) 樹脂用炭酸カルシウム填料及び該填料を含む樹脂組成物
WO2006059666A1 (ja) リン含有被覆酸化マグネシウム粉末、その製造方法及びその粉末を含む樹脂組成物
KR101374985B1 (ko) 깁사이트 유형 수산화 알루미늄 입자
JP5277633B2 (ja) 低ソーダ微粒水酸化アルミニウムの製造方法
JP2009062214A (ja) 水酸化マグネシウム微粒子及びその製造方法
JP4155448B2 (ja) 赤燐粒子を含有するスラリーの製造方法及び安定化赤燐の製造方法
WO2023216719A1 (zh) 一种烷基次膦酸盐组合物及其制备方法和应用
JP5115039B2 (ja) 低ソーダ微粒水酸化アルミニウム及びその製造方法
JP2016037598A (ja) 繊維強化熱可塑性樹脂組成物およびその成形体
EP4317297A1 (en) Polyphenylene sulfide resin composition and molded article formed from same
JP2001503075A (ja) 難燃性組成物
WO2008004133A2 (en) Coated magnesium hydroxide particles produced by mill-drying
JP2003040609A (ja) 赤燐粒子の製造方法及び安定化赤燐の製造方法
CN117247600A (zh) 一种多孔性二烷基次膦酸铝颗粒物及其制备方法和应用
JP2022110743A (ja) 樹脂組成物の製造方法
TW200817282A (en) Coated aluminum hydroxide particles produced by mill-drying
JP2011016672A (ja) 低ソーダ微粒水酸化アルミニウム及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20041125

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20070424

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20071212

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080206

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080326

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080521

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080702

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20080703

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110718

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4155448

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120718

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120718

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130718

Year of fee payment: 5

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140718

Year of fee payment: 6

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees