JP4154924B2 - 顔料分散液とその製造方法、インクジェット用顔料インク及びそれを用いたインクジェット画像記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、顔料分散液とその製造方法、及びインクジェット記録で用いるインクジェット用顔料インクとそれを用いたインクジェットの画像記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて記録媒体に付着させ、画像、文字等の記録を行うものであるが、比較的高速、低騒音、多色化が容易であるという利点を有している。
【0003】
また、近年の技術進歩により、染料インクによるインクジェットプリントが、その銀塩写真に迫る高画質や装置の低価格化に伴い、その普及を加速させている。
【0004】
染料は溶媒に可溶であり、色素分子は分子状態もしくはクラスター状態で着色している。従って、各分子の環境が似通っているために、その吸収スペクトルはシャープであり高純度で鮮明な発色を呈する。更に、粒子に起因する粒状パターンがなく、また、散乱光や反射光が発生しないため、透明性が高く色相も鮮明なインクジェット画像を得ることができる。
【0005】
しかしその一方で、光化学反応等により分子が破壊された場合には、分子数の減少がそのまま着色濃度に反映するために、耐光性が悪いという欠点を有している。染料インクを用いたインクジェット記録画像は、高画質であるが、経時保存による画像品質の低下が大きく、画像保存性の観点で銀塩写真を凌駕する技術が未だ現れていないのが現状である。
【0006】
染料インクに対して、光による退色に強い画像を必要とする用途向けのインクとして、耐光性が良好である顔料を着色剤として用いる顔料インクが使用されている。しかしながら、顔料は染料と比べて顔料粒子として存在するため、光の散乱を受けやすく、透明感のない画像を与えるので、色再現性の点で染料には及ばない欠点があった。
【0007】
この欠点を克服するために、顔料粒子として、分散により分散粒径の小さい顔料インクを調製して、色再現を向上することが試みられている。しかしながら、一般的に、一次粒子が小さくなるほど、顔料の分散及び安定性の確保が難しくなり、また粘度上昇等の悪影響がある。それを回避するための技術としては、顔料誘導体、無機塩等で顔料表面を改質する技術が、塗料分野では知られている。具体的には、ミルを用いて高温で長時間ミリングする、硫酸に溶かして水中にペーストする等の方法がある。更に、キナクリドン系顔料においては、特公昭54−135821号、特開平5−230384号には、顔料誘導体をジメチルスルホオキサイドのアルカリ溶媒に、キナクリドンとともに溶解してペーストする技術も公開されている。
【0008】
しかし、これらの技術は塗料等の非水系または水系のポリマー含有率の高い分散物を得る目的のための技術であり、インクジェットインクのように、粘度が低くポリマー含有率の極端に低い場合に、それらの技術をそのまま適用することは困難であった。その為、インク中の高分子分散剤を増やさざるえず、そのために記録液の粘度上昇による記録液の吐出安定性の低下等、インクジェットとしての基本的な問題を解決するまでは至っていなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を鑑みなされたものであり、その目的は、一次粒径が小さい顔料分散液とその製造方法を提供することであり、更には、インク保存性、インクヘッドの目詰まり、ブロンジング及び光沢性の改良されたインクジェット用顔料インク(以下、単に顔料インクともいう)及びそれを用いたインクジェット画像形成方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成された。
【0011】
1.顔料粒子を媒体中に分散した顔料分散液において、水溶性高分子と極性基を有する顔料誘導体とを含有し、該顔料粒子の一次粒径分布で、D90とD10との差(D90−D10)が25nm以下であることを特徴とする顔料分散液。
着していることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載の顔料分散液。
【0012】
ここでD90値、D10値は、顔料粒子の一次粒径分布関数dG=f(D)xdD(Gは粒子数、Dは一次粒径を表す)の積分において、それぞれ、D90以下の一次粒径の顔料粒子が、全顔料粒子の0.9(90個数%)を占めるような一次粒径(nm)、D10以下の一次粒径の顔料粒子が、全顔料粒子の0.1(10個数%)を占めるような一次粒径(nm)を表す。
【0013】
2.前記顔料粒子の平均一次粒径が、30nm以下であることを特徴とする前記1項に記載の顔料分散液。
【0014】
3.界面活性剤を含有することを特徴とする前記1又は2項に記載の顔料分散液。
【0015】
4.前記顔料粒子表面に、水溶性高分子が吸着していることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載の顔料分散液。
【0016】
5.前記水溶性高分子が、アニオン性極性基を有していることを特徴とする前記3又は4項に記載の顔料分散液。
【0017】
6.前記顔料粒子表面に、界面活性剤が吸着していることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載の顔料分散液。
【0019】
7.前記媒体が、少なくとも50質量%の水からなる水性媒体であることを特徴とする前記1〜6項のいずれか1項に記載の顔料分散液。
【0020】
8.顔料粒子を媒体中に分散した顔料分散液において、水溶性高分子と極性基を有する顔料誘導体とを含有し、下記式(1)で表される顔料粒子の多分散性指数(PDI)が、2以下であることを特徴とする顔料分散液。
【0021】
式(1)
PDI=(D90−D10)/D50
ここで、D90、D50、D10は、D90値、D10値は、顔料粒子の一次粒径分布関数dG=f(D)xdD(Gは粒子数、Dは一次粒径を表す)の積分において、それぞれ、D90以下の一次粒径の顔料粒子が、全顔料粒子の0.9(90個数%)を占めるような一次粒径(nm)、D50以下の一次粒径の顔料粒子が、全顔料粒子の0.5(50個数%)を占めるような一次粒径(nm)、D10以下の一次粒径の顔料粒子が、全顔料粒子の0.1(10個数%)を占めるような一次粒径(nm)を表す。
【0022】
9.界面活性剤を含有することを特徴とする前記8項に記載の顔料分散液。
【0023】
10.前記顔料粒子表面に、水溶性高分子が吸着していることを特徴とする前記8又は9項に記載の顔料分散液。
【0024】
11.前記水溶性高分子が、アニオン性極性基を有していることを特徴とする前記9又は10に記載の顔料分散液。
【0025】
12.前記顔料粒子表面に、界面活性剤が吸着していることを特徴とする前記9又は10項に記載の顔料分散液。
【0027】
13.前記媒体が、少なくとも50質量%の水からなる水性媒体であることを特徴とする前記8〜12項のいずれか1項に記載の顔料分散液。
【0028】
14.前記1〜13項のいずれか1項に記載の顔料分散体を製造する顔料分散液の製造方法であって、顔料粒子と高分子化合物とが溶解した溶液と、顔料不溶性媒体とを混合して、晶析させることを特徴とする顔料分散液の製造方法。
【0029】
15.前記顔料不溶性媒体の少なくとも50質量%が水であり、かつ前記高分子化合物が水溶性であることを特徴とする前記14項に記載の顔料分散液の製造方法。
【0030】
16.晶析と同時に脱塩を行うことを特徴とする前記14又は15項に記載の顔料分散液の製造方法。
【0031】
17.前記1〜13項のいずれか1項に記載の顔料分散体を製造する顔料分散液の製造方法であって、顔料粒子が溶解した溶液と、高分子化合物を含有する顔料不溶性媒体とを混合して、晶析させることを特徴とする顔料分散液の製造方法。
【0032】
18.前記顔料不溶性媒体の少なくとも50質量%が水であり、かつ前記高分子化合物が水溶性であることを特徴とする前記17項に記載の顔料分散液の製造方法。
【0033】
19.晶析と同時に脱塩を行うことを特徴とする前記17又は18項に記載の顔料分散液の製造方法。
【0034】
20.前記1〜13項のいずれか1項に記載の顔料分散体を製造する顔料分散液の製造方法であって、顔料粒子と界面活性剤とが溶解した溶液と、顔料不溶性媒体とを混合して、晶析させることを特徴とする顔料分散液の製造方法。
【0035】
21.前記1または8項に記載の顔料分散液を含有することを特徴とするインクジェット用顔料インク。
【0036】
22.前記14又は17項に記載の顔料分散液の製造方法で製造された顔料分散液を含有することを特徴とするインクジェット用顔料インク。
【0037】
23.前記21又は22項に記載のインクジェット用顔料インクにより、多孔質インクジェット記録媒体上で画像形成することを特徴とするインクジェット画像記録方法。
【0038】
24.前記インクジェット用顔料インクに含有される顔料粒子の平均一次粒径が、前記多孔質インクジェット記録媒体の平均空隙径の80%以下であることを特徴とする前記23に記載のインクジェット画像記録方法。
【0039】
25.前記21又は22項に記載のインクジェット用顔料インクにより、多孔質インクジェット記録媒体上で画像形成することを特徴とするインクジェット画像記録方法。
【0040】
26.前記インクジェット用顔料インクに含有される顔料粒子の平均一次粒径が、前記多孔質インクジェット記録媒体の平均空隙径の80%以下であることを特徴とする前記25項に記載のインクジェット画像記録方法。
【0041】
本発明者は上記の課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、顔料粒子と高分子化合物とが溶解した溶液と、顔料不溶性媒体とを混合すること、あるいは顔料粒子が溶解した溶液と、高分子化合物を含有する顔料不溶性媒体とを混合することにより、生成した顔料分散液は一次粒子が小さく、且つ水に親和性が高く、機械的な分散を行わずに、分散粒径の小さい水分散物を与えることを見いだし、本発明に至った次第である。
【0042】
以下、本発明を詳細に説明する。
請求項1に係る発明では、顔料粒子を媒体中に分散した顔料分散液において、水溶性高分子と極性基を有する顔料誘導体とを含有し、顔料粒子の一次粒径分布で、D90とD10との差(D90−D10)が25nm以下であることが特徴であり、また、請求項8に係る発明では、顔料粒子を媒体中に分散した顔料分散液において、水溶性高分子と極性基を有する顔料誘導体とを含有し、顔料粒子の前記式(1)で表される多分散性指数(PDI)が、2以下であることが特徴である。
【0043】
本発明でいうD90値、D10値及び分散性指数(PDI)とは、下記の定義によるものである。
【0044】
本発明でいう多分散性指数(PDI:polydispersity index)とは、分散体の粒径分布を定義する指数であり、これは下記式(1)により定義されるものである。
【0045】
式(1)
PDI=(D90−D10)/D50
式(1)において、D90、D50、D10は、D90値、D10値は、顔料粒子の一次粒径分布関数dG=f(D)xdD(Gは粒子数、Dは一次粒径を表す)の積分において、それぞれ、D90以下の一次粒径の顔料粒子が、全顔料粒子の0.9(90個数%)を占めるような一次粒径(nm)、D50以下の一次粒径の顔料粒子が、全顔料粒子の0.5(50個数%)を占めるような一次粒径(nm)、D10以下の一次粒径の顔料粒子が、全顔料粒子の0.1(10個数%)を占めるような一次粒径(nm)を表す。
【0046】
上記の関係式を、更に図を用いて説明する。
図1は、顔料粒子の粒径(D)が横座標にプロットされ、与えられた寸法の各顔料粒子の粒子数関数(G)が縦座標にプロットされている座標系において、顔料分散液の粒径の分布関数の曲線を実線として示す。さらに、同じ座標系において、10%、50%および90%粒子数関数の点および粒径の関連する点D10、D50およびD90がクロスにより表されている分布関数の積分を破線曲線を示す。
【0047】
請求項1で規定するD90とD10との差が25nm以下とは、図1の6で示すΔD(D90−D10)が25nm以下であることを表し、好ましくは1〜20nmであり、さらに好ましくは1〜15である。また、請求項9で規定する多分散性指数(PDI)が、2以下であることが特徴であるが、好ましくは0.2〜1.8であり、さらに好ましくは0.3〜1.6である。
【0048】
上記関係式において、粒径分布が狭いほど、PDIはゼロに近づき、逆に、粒径分布が広い、つまり多分散性が大きいほど、PDIは大きくなる。
【0049】
粒径分布は、慣用法で、例えば、顔料分散液を透過型電子顕微鏡で観察し、無作為に粒子1,000個程度の長径を測定し、それより粒径分布曲線を作成したり、または分析用超遠心機により(例えば、W.Maechtle、Makromol.Chem.185巻(1984年)、1025〜1039ページ参照)求めることができ、あるいはPDIは得られた各値から計算しても求めることができる。実際、2つの方法により得られた多分散性値は直接に比較できないが、これらは両方共に完了分散液の粒分布を特徴づけるのに適当である。
【0050】
本発明において、請求項1又は請求項8で規定する特性値を有する顔料分散液を得る方法として、水溶性高分子と極性基を有する顔料誘導体とを用いることにより達成することができる。
【0051】
次いで、本発明に係る顔料について説明する。
本発明で用いられる顔料は、色を有する有機顔料を指し、具体的には、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料が挙げられる。
【0052】
具体的な有機顔料を以下に例示する。
マゼンタ又はレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0053】
オレンジ又はイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0054】
グリーン又はシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0055】
これらの顔料を溶解する溶媒としては、酸性溶媒とアルカリ性非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
【0056】
酸性溶媒としては、硫酸、スルホン酸系溶媒(例えばメタンスルホン酸、エタンスルオン酸など)が挙げられる。
【0057】
アルカリ性非プロトン性極性溶媒とは、アルカリ性物質(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)の水溶液を含有した非プロトン性極性溶媒のことをいう。
【0058】
非プロトン性極性溶媒としては、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、アセトニトリル等が挙げられる。好ましくは、アミド類、スルホキシド類、アセトニトリルである。
【0059】
請求項4に係る発明では、顔料粒子表面に、水溶性高分子が吸着していることが特徴であり、また請求項5に係る発明では、水溶性高分子がアニオン性極性基を有していることが特徴である。顔料分散時に、水溶性高分子を顔料粒子表面に吸着せしめることにより、顔料の晶析による結晶成長期に、最適な一次粒子制御を行うことにより、所望の粒径及び粒径分布を有する顔料分散液を得ることができる。
【0060】
本発明でいう水溶性高分子とは、例えば、天然水溶性高分子であるトウモロコシ、小麦等のデンプン類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、グアーガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、アラビアゴムなどの多糖類、ゼラチン、カゼイン、ケラチン等の蛋白質物質などが挙げられる。
【0061】
更に、水溶性高分子の好ましい例として合成高分子が挙げられ、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に好ましい例としては、ポリビニルピロリドン類及びそれを含有する共重合体が挙げられる。
【0062】
水溶性高分子の分子量は、1,000以上200,000以下が好ましい。更には、3,000以上40,000以下がより好ましい。1,000未満では顔料粒子の成長及び凝集を抑制する効果が少なくなり、200,000を越えると粘度上昇、溶解不良等の問題が発生し易くなる。
【0063】
水溶性高分子の添加量は、溶解された顔料に対して10質量%以上1000質量%以下が好ましい。更には、50質量%以上200質量%以下がより好ましい。10質量%未満では顔料粒子の成長及び凝集を抑制する効果が少なくなり、1000質量%を越えると粘度上昇、溶解不良等の問題が発生し易くなる。
【0064】
本発明において、極性基としては、−SO3M、−OSO3M、−COOMおよび−PO(OM1)2から選ばれた少なくとも一種の極性基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。ただし、上記極性基において、Mは水素原子あるいはNa、K、Li等のアルカリ金属、又はアンモニウム、トリエタノールアンモニウム等の無機、有機アンモニウムカチオンを表し、またM1は水素原子、Na、K、Li等のアルカリ金属あるいはアルキル基を表す。
【0065】
本発明では、顔料分散液が極性基を有する顔料誘導体を含有していることが特徴である。
【0066】
本発明に係る極性基を有する顔料誘導体とは、有機顔料母核を有する有機物で直接に又はジョイントを介して極性基が結合しているものを言う。
【0067】
極性基としては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、燐酸基、硼酸基、水酸基が挙げられるが、好ましくはスルホン酸基、カルボン酸基であり、更に好ましくは、スルホン酸基である。
【0068】
有機顔料母核としては、アントラキノン母核、ジオキサジン母核、チオインジゴ母核、キナクリドン母核、フタロシアニン母核、ピロロピロール母核、ペリレン顔料母核、イソインドリノン顔料母核、キノフタロン顔料母核等の多環式顔料母核、及びアゾ基を有する顔料が挙げられるが、好ましくはキナクリドン母核、フタロシアニン母核、アントラキノン母核であり、更に好ましくは、キナクリドン母核、フタロシアニン母核である。
【0069】
キナクリドン母核を有する顔料誘導体としてはスルホキナクリドン、ジスルホキナクリドン、カルボキシキナクリドン、ジカルボキシキナクリドン、スルホフェニルアミノスルホニルキナクリドン、スルホブチルアミノスルホニルキナクリドン等が挙げられ、フタロシアニン母核を有する顔料誘導体としてはスルホフタロシアニン、ジスルホフタロシアニン、テトラスルホフタロシアニン、ジカルボキシフタロシアニン、テトラカルボキシフタロシアニン等が挙げられる。
【0070】
アゾ基を有する顔料誘導体としてはC.I.Pigmwnt Yellow 74のスルホン化物、C.I.Pigment Yellow 128のスルホン化物等が、イソインドリノン母核を有する顔料誘導体としてはC.I.Pigment Yellow109のスルホン化物等が、アントラキノン母核を有する顔料誘導体としてはC.I.Pigment Red168のスルホン化物等が、ペリノン母核を有する顔料誘導体としてはC.I.Pigment Orange 168のスルホン化物等がそれぞれ挙げられ、特に好ましくはキナクリドン母核を有する顔料誘導体である。
【0071】
ジョイントとは、2価の連結基を指す。具体的には、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルケニレン基、置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のヘテロ環基(例えば、フラニレン基、ピロリレン基、イミダゾリレン基等)、−O−,−COO−,−OCO−,−SO2−,−SO−,−SO2NH−,−NHSO2−,−NHCO−,−CONH−,−S−、及びこれらを組み合わせた連結基が挙げられる。
【0072】
極性基は、フリーでも塩の状態でも良い。カウンター塩としては、無機塩(リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ニッケル、アンモニウム)、有機塩(トリエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ピリジニウム、トリエタノールアンモニウム等)が挙げられる。好ましくは1価の価数を有するカウンター塩である。
【0073】
これらの顔料誘導体は、公知の方法で容易に合成することができるが、顔料を硫酸、クロル硫酸などのスルホン化剤によるスルホン化、クロル硫酸を用いてスルホニルクロリド化後アミンと反応させる方法、又は、予めスルホン酸が入っている中間体を用いて顔料を合成する方法等が用いられる。
【0074】
本発明に係る極性基を有する顔料誘導体は、顔料と同一骨格であることが好ましく、更に好ましくは極性基を有する顔料誘導体及び顔料が、キナクリドン母核を有する顔料であり、さらに顔料はアルカリ性非プロトン性極性溶媒に溶解して溶液とすることが好ましい。
【0075】
顔料誘導体の添加量は、溶解された顔料に対して0.1mol%以上50mol%以下が好ましい。0.1mol%未満では顔料粒子の成長及び凝集を抑制する効果が少なくなり、50mol%を越えると期待する程の効果が得られない。
【0076】
請求項8に係る発明では、液体媒体が、少なくとも50質量%の水からなる水性媒体であることを特徴とする。
【0077】
この水性媒体中には、水に溶解する水溶性有機溶媒を加えても良い。水溶性の有機溶媒の具体的例としては、水溶性アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、水溶性多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、水溶性ケトン類(アセトンなど)が挙げられる。
【0078】
本発明の顔料分散液の製造方法として、請求項14に係る発明では、顔料粒子と高分子化合物とが溶解した溶液と、顔料不溶性媒体とを混合して、晶析させることが特徴であり、また請求項17に係る発明では、顔料粒子が溶解した溶液と、高分子化合物を含有する顔料不溶性媒体とを混合して、晶析させることが特徴である。
【0079】
更に、請求項15、18に係る発明では、顔料不溶性媒体の少なくとも50質量%が水であることが1つの特徴である
【0080】
本発明でいう顔料不溶性媒体としては、代表的には水であるが、その他に前述の水溶性有機溶媒を適宜添加しても良い。
【0081】
次いで、本発明の顔料分散液の製造方法について、詳細に説明する。
本発明においては、反応容器内で、前述の酸性溶媒あるいはアルカリ性非プロトン性極性溶媒に顔料を溶解し、必要に応じ高分子化合物を含む溶液と、必要に応じ高分子化合物、極性基を有する顔料誘導体を含む顔料不溶性媒体とを、攪拌、混合した後、顔料粒子を晶析して、顔料分散液を得る。
【0082】
本発明に係る反応容器の撹拌手段は、特に制限はなく、通常のインペラーを用いることができる。パドル翼、湾曲パドル翼、傾斜パドル翼、プロペラ翼、タービン翼、ブルマージン翼、イカリ翼、螺旋軸翼、螺旋帯翼、ディゾルバー翼、ホモミクサー翼などが挙げられる。これらのうち、回転軸方向の推力により軸方向への流れを強く発生させることができる軸流型撹拌翼を用いることが好ましい。
【0083】
顔料溶液の混合においては、より均一な混合を行うために実質的に乱流であることが好ましい。乱流はレイノルズ(Re)数により定義される。レイノルズ数とは、流れの中にある物体の代表的な長さをD、速度をU、密度をρ、粘性率をηとすると、
Re=DUρ/η
なる無次元数によって定義される。
【0084】
一般に、Re<2300の時を層流、2300<Re<3000を遷移域、Re>3000の時を乱流という。実質的に乱流とは、Re>3000を指し、好ましくはRe>5000、より好ましくはRe>10000である。本発明においてはレイノルズ数3000以上で混合することが好ましく、5000以上が更に好ましい。
【0085】
顔料溶液の添加は、液の流れによどみのない場所に添加することが好ましく、撹拌翼近傍の液中に添加することがより好ましい。また顔料溶液の添加ノズルは1本でも良いが、複数本存在する方が好ましい。
【0086】
本発明において、混合装置は内部に攪拌機を有する動的混合装置でも良いし、攪拌機を有さない静的混合装置でも良い。静的混合装置の場合には、全ての供給管及び析出した顔料を排出する管の軸が全て同一の点で集結し、かつ管内部に撹拌機を有さないことを特徴とする。例えばT字型でも良いしY字形でも良い。動的混合装置においても静的混合装置においても、顔料溶液及び顔料誘導体溶液、更に水性媒体を導入するノズルの数が1本又は1本ずつでも良いが、複数本又は複数本ずつ存在する方が好ましい。
【0087】
極性基を有する顔料誘導体を溶解、又は分散させた水性媒体中に、溶解された顔料の溶液を加える時の温度は、特に制限をされないが、好ましくは0℃〜80℃の範囲が挙げられる。0℃未満では、親水媒体中の水が氷結する可能性があるし、80℃を越えると顔料粒子の成長が著しく速くなり、所望の粒径が得られない。
【0088】
請求項16、19に係る発明では、晶析すると同時に脱塩を行うことが特徴である。本発明において脱塩とは、高分子化合物、極性基を有する顔料誘導体及び顔料を用いる顔料分散液の製造方法において、該顔料分散液の製造時又は製造後に生ずるナトリウムなどの塩類や、酸性溶媒、アルカリ性非プロトン性極性溶媒を除去する工程を示す。脱塩方法としては、遠心分離法、浮上分離法、沈降分離法、限外濾過法、電気透析法など様々な方法が好ましく用いられる。本発明において、より好ましい方法としては限外濾過法が挙げられる。
【0089】
本発明において脱塩度は、溶液の伝導度として5,000μm/cm以下が好ましく、3,000μm/cm以下がより好ましく、1,000μm/cm以下が更に好ましい。
【0090】
本発明においては、晶析、脱塩、濃縮により、所望の小粒径を有する顔料分散液を得ることができるが、それでも不充分な場合には、更に機械的分散手段を適宜使用しても良い。機械的な分散手段としては、例えば、ディスパー、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェーカーなど様々な方法が好ましく用いられる。本発明において、より好ましい方法としてはサンドミルが挙げられる。
【0091】
本発明の顔料分散液で用いることのできる界面活性剤、高分子分散剤の種類は特に制限されないが、アニオン系、又はノニオン性の界面活性剤、また高分子分散剤で好ましく使用される界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。高分子分散剤の例としては、ポリスチレン−アクリル酸共重合体などが挙げられる。
【0092】
本発明の顔料インクに使用できるインク溶剤としては、水溶性の有機溶媒が好ましく、具体的にはアルコール類(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、スルホン酸塩類(例えば1−ブタンスルホン酸ナトリウム塩等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0093】
これらのインク溶剤は単独で用いても、また併用して用いても良い。
本発明の顔料インクにおいて、ラテックスをインク中に加えても良い。例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン、シリコン−アクリル共重合体及びアクリル変性フッ素授脂等のラテックスが挙げられる。ラテックスは、乳化剤を用いてポリマー粒子を分散させたものであっても、また乳化剤を用いないで分散させたものであってもよい。乳化剤としては界面活性剤が多く用いられるが、スルホン酸基、カルボン酸基等の水に可溶な基を有するポリマー(例えば、可溶化基がグラフト結合しているポリマー、可溶化基を持つ単量体と不溶性の部分を持つ単量体とから得られるポリマー)を用いることも好ましい。
【0094】
本発明のインクではソープフリーラテックスを用いることが特に好ましい。
ここにソープフリーラテックスとは、乳化剤を使用していないラテックス、及びスルホン酸基、カルボン酸基等の水に可溶な基を有するポリマー(例えば、可溶化基がグラフト結合しているポリマー、可溶化基を持つ単量体と不溶性の部分を持つ単量体とから得られるポリマー)を乳化剤として用いたラテックスのことを指す。
【0095】
近年、ラテックスのポリマー粒子として、粒子全体が均一であるポリマー粒子を分散したラテックス以外に、粒子の中心部と外縁部で組成を異にしたコア・シェルタイプのポリマー粒子を分散したラテックスも存在するが、本発明においては、このタイプのラテックスも好ましく用いることができる。
【0096】
本発明の顔料インクにおいて、ラテックス中のポリマー粒子の平均粒径は10nm以上300nm以下が好ましく、10nm以上100nm以下であることがより好ましい。ラテックスの平均粒径が300nmを越えると、画像の光沢感の劣化が起こり、10nm未満であると耐水性、耐擦過性が不十分となる。なおラテックス中のポリマー粒子の平均粒子径は光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法を用いた市販の粒径測定機器により求めることができる。
【0097】
本発明の顔料インクにおいて、ラテックスは固形分添加量としてインクの全質量に対して0.1質量%以上、20質量%以下となるように添加されるが、ラテックスの固形分添加量を0.5質量%以上、10%質量%以下とすることが特に好ましい。ラテックスの固形分添加量が0.1質量%未満では、耐水性に関して十分な効果を発揮させることが難しく、また、20質量%を越えると、経時でインク粘度の上昇が起こったり、顔料分散粒径の増大が起こりやすくなるなどインク保存性の点で問題が生じることが多い。
【0098】
本発明の顔料インクには、この他に、防腐剤、防黴剤、粘度調整剤等を必要に応じて含有させてもよい。
【0099】
本発明の顔料インクには、電気伝導度調節剤を用いることもでき、例えば、塩化カリウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどの無機塩や、トリエタノールアミン等の水性アミン等が挙げられる。
【0100】
本発明の顔料インクにおいては、吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、さらに粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防錆剤、防腐剤等を添加することもできる。
【0101】
記録に用いられる記録媒体としては、普通紙、コート紙、インク液を吸収して膨潤するインク受容層を設けた膨潤型インクジェット用記録紙、多孔質のインク受容層を持った空隙型インクジェット用記録紙、また基紙の代わりにポリエチレンテレフタレートフィルムなどの樹脂支持体を用いたものも用いることができるが、請求項23、25に係る発明では、記録媒体として、多孔質インクジェット記録媒体を用いることが特徴であり、この組み合わせにより本発明の効果を最も発揮することができる。
【0102】
多孔質インクジェット記録媒体としては、具体的には、空隙型インクジェット用記録紙又は空隙型インクジェット用フィルムを挙げることができ、これらはインク吸収能を有する空隙層が設けられている記録媒体であり、空隙層は、主に親水性バインダーと無機微粒子の軟凝集により形成されるものである。
【0103】
空隙層の設け方は、皮膜中に空隙を形成する方法として種々知られており、例えば、二種以上のポリマーを含有する均一な塗布液を支持体上に塗布し、乾燥過程でこれらのポリマーを互いに相分離させて空隙を形成する方法、固体微粒子及び親水性又は疎水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、乾燥後に、インクジェット記録用紙を水或いは適当な有機溶媒を含有する液に浸漬して固体微粒子を溶解させて空隙を作製する方法、皮膜形成時に発泡する性質を有する化合物を含有する塗布液を塗布後、乾燥過程でこの化合物を発泡させて皮膜中に空隙を形成する方法、多孔質固体微粒子と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、多孔質微粒子中や微粒子間に空隙を形成する方法、親水性バインダーに対して概ね等量以上の容積を有する固体微粒子及び/又は微粒子油滴と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布して固体微粒子の間に空隙を作製する方法などが挙げられるが、本発明のインクを用いる上では、いずれも方法で設けられても、良い結果を与える。
【0104】
請求項24,26に係る発明では、インクジェット用顔料インクに含有される顔料粒子の平均一次粒径が、多孔質インクジェット記録媒体の平均空隙径の80%以下であることが特徴であり、この条件とすることにより、本発明の目的効果をいかんなく発揮することができる。
【0105】
インクジェット記録で使用するインクジェットヘッドはオンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(R)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
【0106】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0107】
実施例1
《顔料分散液の調製》
下記に記載の方法に従って、顔料分散液1〜25を調製した。
【0108】
はじめに、顔料溶液(A液)に水溶性高分子を添加して、顔料分散液1〜9を調製した。この方法を「調製方法A」と称す。
【0109】
〔顔料分散液1の調製:比較例〕
(A1液の調製)
50gのC.I.ピグメントレッド122と9.0gの顔料誘導体1とをDMSO(Dimethyl sulfoxide)750gと10%NaOH水溶液250gの混合溶液に溶解させ、1μmのミリポアフィルターで濾過した液をA1液とする。
【0110】
(B1液の調製)
水2075gに酢酸42.5gを加えたものをB1液とする。
【0111】
【化1】
【0112】
(顔料分散液の調製)
容量約4Lの容器にB1液を入れ、容器の周囲から氷冷し、液温を0〜10℃にする。次に、図2に記載の装置を用いて、顔料分散液1を調製した。
【0113】
T.K.ロボミックス(特殊機化工業株式会社製)の攪拌部としてホモミキサーMを用いて、水性媒体BとしてB1液を5000rpmで攪拌する。次いで、この装置にダイアフラムポンプ(株式会社ヤマダコーポレーション社製 DP−10BPT)を用いて限外濾過膜(旭化成工業株式会社製 ラボモジュール SIP−1013)に10L/minの流量で循環させる装置を取り付けて、B1液の液中に顔料溶液AとしてA1液をローラーポンプPを用いて30分で添加し、顔料微粒子を析出させるのと同時に、脱塩及び濃縮を繰り返し、溶液の伝導度が500μS/cm以下になるまで脱塩、濃縮を行い、濃度6%の顔料分散液1を得た。
【0114】
〔顔料分散液2の調製〕
(A2液の調製)
50gのC.I.ピグメントレッド122とポリビニルピロリドン(東京化成社製:K15 分子量10,000 以下、PVP(K15)と略す)100gとを、DMSO(Dimethyl sulfoxide)750gと10%NaOH水溶液250gの混合溶液に溶解させ、1μmのミリポアフィルターで濾過し、この液をA2液とする。
【0115】
(顔料分散液の調製)
前記顔料分散液1の調製において、A1液に代えて、上記A2液を用いた以外は同様にして、顔料分散液2を調製した。
【0116】
〔顔料分散液3の調製〕
(A3液の調製)
50gのC.I.ピグメントレッド122、9.0gの顔料誘導体1と100gのポリビニルピロリドンとを、DMSO(Dimethyl sulfoxide)750gと10%NaOH水溶液250gの混合溶液に溶解させ、1μmのミリポアフィルターで濾過し、この液をA3液とする。
【0117】
上記顔料分散液2の調製において、A2液に代えて、上記A3液を用いた以外は同様にして、顔料分散液3を調製した。
【0118】
〔顔料分散液4の調製〕
上記顔料分散液3の調製において、下記に記載の方法で脱塩工程を行った以外は同様にして、顔料分散液4を調製した。
【0119】
容量約4Lの容器に前述のB1液を入れ、容器の周囲から氷冷し、液温を0〜10℃にする。次に、図2に記載の装置を用いて、顔料分散液4を調製した。
【0120】
T.K.ロボミックス(特殊機化工業株式会社製)の攪拌部としてホモミキサーMを用いて、水性媒体BとしてB1液を5000rpmで攪拌する。このB1液の液中に顔料溶液AとしてA3液をローラーポンプPを用いて30分で添加し、顔料微粒子を析出させた。
【0121】
次いで、顔料微粒子が析出した溶液をダイアフラムポンプ(株式会社ヤマダコーポレーション社製 DP−10BPT)を用いて限外濾過膜(旭化成工業株式会社製 ラボモジュール SIP−1013)に10L/minの流量で循環させて濃縮し、純水を加える操作を繰り返し行うことで、溶液の伝導度が500μS/cm以下になるまで脱塩を行い、濃度6%の顔料分散液4を得た。
【0122】
〔顔料分散液5〜7の調製〕
前記顔料分散液3の調製において、A3液のPVP(K15)に代えて、表1に記載のようにポリビニルピロリドン−ビニルスルホン酸共重合体(質量比9:1 以下、PVP−VSと略す)、PVA203、PVA L3266を用いた以外は同様にして、顔料分散液5〜7を調製した。
【0123】
PVA203:クラレ社製 極性基を持たないポリビニルアルコール
PVA L3266:日本合成化学社製 スルホン酸変性ポリビニルアルコール
〔顔料分散液8、9の調製〕
前記顔料分散液3の調製において、A3液の顔料の種類及び溶剤と顔料誘導体の種類を表1に記載のように変更した以外は同様にして、顔料分散液8、9を調製した。なお、表1記載の溶剤であるDMFは、ジメチルホルムアミドを表す。
【0124】
【化2】
【0125】
次いで、水性媒体(B液)に水溶性高分子を添加して、顔料分散液10〜22を調製した。この方法を「調製方法B」と称す。
【0126】
〔顔料分散液10の調製:比較例〕
(A4液の調製)
50gのC.I.ピグメントレッド122と9.0gの顔料誘導体1とを、DMSO(Dimethyl sulfoxide)750gと10%NaOH水溶液250gの混合溶液に溶解させ、1μmのミリポアフィルターで濾過した液をA4液とする。
【0127】
(顔料分散液10の調製)
容量約4Lの容器にB1液を入れ、容器の周囲から氷冷し、液温を0〜10℃にする。次に、図2に記載の装置を用いて、顔料分散液10を調製した。
【0128】
T.K.ロボミックス(特殊機化工業株式会社製)の攪拌部としてホモミキサーMを用いて、水性媒体BとしてB1液を5000rpmで攪拌する。次いで、この装置にダイアフラムポンプ(株式会社ヤマダコーポレーション社製 DP−10BPT)を用いて限外濾過膜(旭化成工業株式会社製 ラボモジュール SIP−1013)に10L/minの流量で循環させる装置を取り付けて、B1液の液中に顔料溶液AとしてA4液をローラーポンプPを用いて30分で添加し、顔料微粒子を析出させるのと同時に、脱塩及び濃縮を繰り返し、溶液の伝導度が500μS/cm以下になるまで脱塩、濃縮を行い、濃度6%の顔料分散液10を得た。
【0129】
〔顔料分散液11の調製〕
(A5液の調製)
50gのC.I.ピグメントレッド122を、DMSO(Dimethyl sulfoxide)750gと10%NaOH水溶液250gの混合溶液に溶解させ、1μmのミリポアフィルターで濾過した液をA5液とする。
【0130】
(B2液の調製)
100gのPVP(K15)を水2075gに溶解し、1μmのミリポアフィルターで濾過した液に酢酸42.5gを加えたものをB2液とする。
【0131】
(顔料分散液の調製)
上記顔料分散液10の調製において、A4液及びB1液に代えて、上記A5液及び上記B2液を用いた以外は同様にして、顔料分散液11を調製した。
【0132】
〔顔料分散液12の調製〕
上記顔料分散液10の調製において、B1液に代えて、上記B2液を用いた以外は同様にして、顔料分散液12を調製した。
【0133】
〔顔料分散液13の調製〕
上記顔料分散液12の調製において、下記に記載の方法で脱塩工程を行った以外は同様にして、顔料分散液13を調製した。
【0134】
容量約4Lの容器に前述のB2液を入れ、容器の周囲から氷冷し、液温を0〜10℃にする。次に、図2に記載の装置を用いて、顔料分散液13を調製した。
【0135】
T.K.ロボミックス(特殊機化工業株式会社製)の攪拌部としてホモミキサーMを用いて、水性媒体BとしてB2液を5000rpmで攪拌する。このB2液の液中に顔料溶液AとしてA5液をローラーポンプPを用いて30分で添加し、顔料微粒子を析出させた。
【0136】
次いで、顔料微粒子が析出した溶液をダイアフラムポンプ(株式会社ヤマダコーポレーション社製 DP−10BPT)を用いて限外濾過膜(旭化成工業株式会社製 ラボモジュール SIP−1013)に10L/minの流量で循環させて濃縮し、純水を加える操作を繰り返し行うことで、溶液の伝導度が500μS/cm以下になるまで脱塩を行い、濃度6%の顔料分散液13を得た。
【0137】
〔顔料分散液14〜22の調製〕
上記顔料分散液12の調製において、表1に記載のように、顔料溶液(A液)の顔料の種類、顔料誘導体の種類、溶媒の種類と水性溶媒(B液)の水溶性高分子の種類を変更した以外は同様にして、顔料分散液14〜22を調製した。
【0138】
表1中、水溶性高分子の詳細は、以下の通りである。
PVA SK5102:クラレ社製 カルボン酸変性のポリビニルアルコール
CMC 1105:ダイセル社製 カルボキシメチルセルロース
次いで、比較の調製方法として、ソルトミリングにより顔料分散液23〜25を調製した。この方法を「調製方法C」と称す。
【0139】
〔顔料分散液23の調製〕
ステンレスガロンニーダー中に、50gのC.I.ピグメントレッド122、塩化ナトリウム500g、50gのジエチレングリコールを添加し、60℃で180分間混練した。
【0140】
次いで、混練済みの結晶を水洗処理した後、顔料誘導体1を9.0gと水1000gとを添加して、これらを混合物を、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、顔料分散液23を調製した。
【0141】
〔顔料分散液24、25の調製〕
上記顔料分散液23の調製において、顔料の種類及び顔料誘導体の種類を表1に記載のように変更した以外は同様にして、顔料分散液24、25を調製した。
【0142】
《顔料分散液の評価》
(顔料分散液の一次粒径の測定)
上記調製した各顔料分散液を透過型電子顕微鏡で観察し、無作為に粒子1,000個の長径を測定し、一次平均粒径を算出した。
【0143】
(D90、D50、D10及びPDIの測定)
上記測定した1,000個の粒径測定データを基に、横座標が粒径(D)、縦座標が粒子数関数(G)からなる粒径分布曲線及び分布関数の積分曲線を作成し、積分曲線より、粒子数関数で10個数%、50個数%、90個数%に対応する粒径点D10、D50及びD90を求め、それらの測定値より、D90−D10及び前記式(1)に従ってPDI(多分散性指数)を求めた。
【0144】
以上により得られた結果を表1に示す。
【0145】
【表1】
【0146】
表1より明らかなように、本発明に係る方法に従って調製された顔料分散液は、比較品に対し、一次平均粒径が小さく、かつ粒径分布も極めて狭いことが判る。
【0147】
実施例2
《顔料インクの調製》
下記の記載の方法により、実施例1で調製した顔料分散液1〜25を用いて、顔料インク1〜25を調製した。
【0148】
顔料分散液 160g
ジエチレングリコール 180g
グリセリン 80g
ペレックスOT−P(花王(株)製 アニオン性界面活性剤) 5g
プロキセルGXL(ゼネカ社製) 2g
からなる組成で、イオン交換水で1000gに仕上げ、1μmのミリポアフィルターを2度通過させて各顔料インクを調製した。
【0149】
《記録媒体への記録》
ノズル孔径20μm、駆動周波数12kHz、1色当たりのノズル数128、同色間のノズル密度180dpiであるピエゾ型ヘッドを搭載し、最大記録密度720×720dpiのオンデマンド型のインクジェットプリンタを使用して、普通紙と平均空隙径が0.03μmの多孔質インクジェット記録媒体上に、反射濃度として1.0を与える均一画像パターン1〜25を出力した。なお、本発明で言うdpiとは、2.54cm(1inch)当たりのドット数をいう。
【0150】
《顔料インク及び出力画像の評価》
(分散安定性の評価)
各顔料インクについて、ゼータサイザー1000(マルバーン社製)を用いて、分散粒径を測定した後、顔料インク100mlを蒸発が起こらない様に密閉したサンプル瓶に入れ、60℃の恒温槽に1週間攪拌しながら停滞させ、その後、ゼータサイザー1000(前出)を使用して粒径変化率を求め、粒径変化率が10%未満であれば○、粒径変化率が10〜50%であれば△、粒径変化率が50%を越えた場合を×として、分散安定性の評価を行った。
【0151】
(ヘッドの目詰まりの評価)
20℃、30%RHの環境下で、ノズル孔径20ミクロンのピエゾ型ヘッドを用いて、1滴当たり12ピコリットルを吐出する条件で、クリーニングをせずに1週間連続して吐出を続けて状態を観察し、下記に示す基準に則り評価した。
【0152】
○:全ノズルから正常に出射
△:1〜3ノズルに目詰まりが見られるがノズル面からの吸引クリーニングにより回復
×:4ノズル以上に目詰まりが発生し、吸引クリーニングにより回復不可能な目詰まりが1ノズル以上発生
(ブロンジングの評価)
下記基準に則り、目視で評価を行った。
【0153】
◎:ブロンジングがほとんど感じられない
○:若干のブロンジングが見られるが、実用上問題がない
△:実用上問題のあるブロンジングが見られる
×:著しいブロンジングが見られる。
【0154】
(光沢性の評価)
評価サンプル画像を写像性測定器ICM−1DP(スガ試験機械社製)で反射60度、光学くし2mmでの写像性(光沢値C値%)を測定した。評価は、以下の基準によって行った。
【0155】
◎:C値%が61以上
○:C値%が60〜51
△:C値%が50〜41
×:C値%が40以下
上記評価ランクにおいて、◎、○が実用上好ましいランクと判断した。
【0156】
以上により得られた各評価結果を表2に示す。
【0157】
【表2】
【0158】
表2より明らかなように、本発明で規定する一次平均粒径、D90−D10及びPDIを有する顔料分散液を用いた顔料インクは、比較例に対し、顔料インクの安定性、印字時のヘッドの目詰まり耐性に優れ、かつ形成した画像のブロンジング及び光沢性に優れていること、さらに多孔質インクジェット記録媒体を用いた際にその効果が顕著に発揮されていることが判る。
【0159】
実施例3
上記実施例2の顔料インク1〜25の調製において、界面活性剤であるペレックスOT−P(花王(株)製)に代えて、ブラウノンDP−9(青木油脂工業(株)製 C12H25PhO(EO)9H)に変更した以外は同様にして、顔料インク26〜50をそれぞれ調製し、実施例2に記載の方法に従って記録媒体への記録を行って、形成画像26〜50を作成して、実施例2に記載の方法に準じて、顔料インクの分散安定性、ヘッドの目詰まり、記録媒体の種類違いによるブロンジング及び光沢性の評価を行い、得られた結果を表3に示す。
【0160】
【表3】
【0161】
表3より明らかなように、顔料インクに添加する界面活性剤を、アニオン性界面活性剤から、非イオン性界面活性剤に変更しても、実施例2の結果と同様に、本発明の顔料インクは、顔料インクの安定性、印字時のヘッドの目詰まり耐性に優れ、かつ形成した画像のブロンジング及び光沢性に優れていること、さらに多孔質インクジェット記録媒体を用いた際にその効果が顕著に発揮されていることが判る。
【0162】
実施例4
上記実施例2の顔料インク1〜25の調製において、界面活性剤であるペレックスOT−P(花王(株)製)に代えて、ハイテノールNE−15(第一工業製薬(株)製 RPhO(EO)2SO3 -NH4 +)に変更した以外は同様にして、顔料インク51〜75をそれぞれ調製し、実施例2に記載の方法に従って記録媒体への記録を行って、形成画像51〜75を作成して、実施例2に記載の方法に準じて、顔料インクの分散安定性、ヘッドの目詰まり、記録媒体の種類違いによるブロンジング及び光沢性の評価を行い、得られた結果を表4に示す。
【0163】
【表4】
【0164】
表4より明らかなように、顔料インクに添加する界面活性剤を、アニオン性界面活性剤から、両性界面活性剤に変更しても、実施例2の結果と同様に、本発明の顔料インクは、顔料インクの安定性、印字時のヘッドの目詰まり耐性に優れ、かつ形成した画像のブロンジング及び光沢性に優れていること、さらに多孔質インクジェット記録媒体を用いた際にその効果が顕著に発揮されていることが判る。
【0165】
【発明の効果】
本発明により、一次粒径が小さい顔料分散液とその製造方法を提供することであり、更には、インク保存性、インクヘッドの目詰まり、ブロンジング及び光沢性の改良されたインクジェット用顔料インク及びそれを用いたインクジェット画像形成方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るD10、D50、D90を表す粒径の分布関数曲線。
【図2】本発明の顔料分散液調製に用いることのできる装置の一例を示すプロセス図。
【符号の説明】
1 顔料分散液の粒径分布関数
2 粒径の分布関数の積分曲線
3 D90の表示
4 D50の表示
5 D10の表示
6 D90−D10
A 顔料溶液
B 水性媒体
M ホモミキサー
P ローラーポンプ
Claims (26)
- 顔料粒子を媒体中に分散した顔料分散液において、水溶性高分子と極性基を有する顔料誘導体とを含有し、該顔料粒子の一次粒径分布で、D90とD10との差(D90−D10)が25nm以下であることを特徴とする顔料分散液。
ここでD90値、D10値は、顔料粒子の一次粒径分布関数dG=f(D)xdD(Gは粒子数、Dは一次粒径を表す)の積分において、それぞれ、D90以下の一次粒径の顔料粒子が、全顔料粒子の0.9(90個数%)を占めるような一次粒径(nm)、D10以下の一次粒径の顔料粒子が、全顔料粒子の0.1(10個数%)を占めるような一次粒径(nm)を表す。 - 前記顔料粒子の平均一次粒径が、30nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の顔料分散液。
- 界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の顔料分散液。
- 前記顔料粒子表面に、水溶性高分子が吸着していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の顔料分散液。
- 前記水溶性高分子が、アニオン性極性基を有していることを特徴とする請求項3又は4に記載の顔料分散液。
- 前記顔料粒子表面に、界面活性剤が吸着していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の顔料分散液。
- 前記媒体が、少なくとも50質量%の水からなる水性媒体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の顔料分散液。
- 顔料粒子を媒体中に分散した顔料分散液において、水溶性高分子と極性基を有する顔料誘導体とを含有し、下記式(1)で表される顔料粒子の多分散性指数(PDI)が、2以下であることを特徴とする顔料分散液。
式(1)
PDI=(D 90 −D 10 )/D 50
ここで、D 90 、D 50 、D 10 は、D 90 値、D 10 値は、顔料粒子の一次粒径分布関数dG=f(D)xdD(Gは粒子数、Dは一次粒径を表す)の積分において、それぞれ、D 90 以下の一次粒径の顔料粒子が、全顔料粒子の0.9(90個数%)を占めるような一次粒径(nm)、D 50 以下の一次粒径の顔料粒子が、全顔料粒子の0.5(50個数%)を占めるような一次粒径(nm)、D 10 以下の一次粒径の顔料粒子が、全顔料粒子の0.1(10個数%)を占めるような一次粒径(nm)を表す。 - 界面活性剤を含有することを特徴とする請求項8に記載の顔料分散液。
- 前記顔料粒子表面に、水溶性高分子が吸着していることを特徴とする請求項8又は9に記載の顔料分散液。
- 前記水溶性高分子が、アニオン性極性基を有していることを特徴とする請求項9又は10に記載の顔料分散液。
- 前記顔料粒子表面に、界面活性剤が吸着していることを特徴とする請求項9又は10に記載の顔料分散液。
- 前記媒体が、少なくとも50質量%の水からなる水性媒体であることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の顔料分散液。
- 請求項1〜13のいずれか1項に記載の顔料分散体を製造する顔料分散液の製造方法であって、顔料粒子と高分子化合物とが溶解した溶液と、顔料不溶性媒体とを混合して、晶析させることを特徴とする顔料分散液の製造方法。
- 前記顔料不溶性媒体の少なくとも50質量%が水であり、かつ前記高分子化合物が水溶性であることを特徴とする請求項14に記載の顔料分散液の製造方法。
- 晶析と同時に脱塩を行うことを特徴とする請求項14又は15に記載の顔料分散液の製造方法。
- 請求項1〜13のいずれか1項に記載の顔料分散体を製造する顔料分散液の製造方法であって、顔料粒子が溶解した溶液と、高分子化合物を含有する顔料不溶性媒体とを混合して、晶析させることを特徴とする顔料分散液の製造方法。
- 前記顔料不溶性媒体の少なくとも50質量%が水であり、かつ前記高分子化合物が水溶性であることを特徴とする請求項17に記載の顔料分散液の製造方法。
- 晶析と同時に脱塩を行うことを特徴とする請求項17又は18に記載の顔料分散液の製造方法。
- 請求項1〜13のいずれか1項に記載の顔料分散体を製造する顔料分散液の製造方法であって、顔料粒子と界面活性剤とが溶解した溶液と、顔料不溶性媒体とを混合して、晶析させることを特徴とする顔料分散液の製造方法。
- 請求項1または8に記載の顔料分散液を含有することを特徴とするインクジェット用顔料インク。
- 請求項14又は17に記載の顔料分散液の製造方法で製造された顔料分散液を含有することを特徴とするインクジェット用顔料インク。
- 請求項21又は22に記載のインクジェット用顔料インクにより、多孔質インクジェット記録媒体上で画像形成することを特徴とするインクジェット画像記録方法。
- 前記インクジェット用顔料インクに含有される顔料粒子の平均一次粒径が、前記多孔質インクジェット記録媒体の平均空隙径の80%以下であることを特徴とする請求項23に記載のインクジェット画像記録方法。
- 請求項21又は22に記載のインクジェット用顔料インクにより、多孔質インクジェット記録媒体上で画像形成することを特徴とするインクジェット画像記録方法。
- 前記インクジェット用顔料インクに含有される顔料粒子の平均一次粒径が、前記多孔質インクジェット記録媒体の平均空隙径の80%以下であることを特徴とする請求項25に記載のインクジェット画像記録方法。
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