JP4154839B2 - 燃料噴射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関(以下、エンジンという)の燃料噴射装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ディーゼルエンジンにおいて、低排出物(NOx、HC、黒煙)および高出力、低燃費を両立させるために、エンジンの運転条件に応じて燃料の噴射率を可変することが要求される。この要求を実現するために、従来技術として、弁部材を付勢するように2個のバネを用いた2段開弁圧のノズルが公知となっている。
しかし、この技術では、燃料噴射ポンプから圧送される燃料圧力は、エンジン運転状態によって変動するので、エンジンが要求する噴射率を全運転条件に応じて実現するのは困難である。
【0003】
そこで、例えば特開平8−326619号公報に開示される従来の燃料噴射弁には、弁部材を噴孔閉塞方向に燃料圧力を加える圧力室を設けたものがある。これは、ノズル燃料溜りに導入される燃料圧力により噴孔を開放方向へ向ける力と、圧力室の燃料圧力により噴孔を閉塞方向へ向ける力との大小関係により、弁部材のリフト量を可変するものである。
圧力室の圧力は、圧力室内の高圧燃料を低圧通路へ排出するためのパイロットバルブステムを開閉制御させることで変化するものであり、パイロットバルブステムにより圧力室の圧力を変化させることで、弁部材を段階的にリフトさせるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報(特開平8−326619号公報)に開示される従来の燃料噴射弁では、パイロットバルブステムによって圧力室の燃料圧力を変化させて、弁部材を段階的にリフトさせるものであった。
従って、弁部材のリフトを規制した低リフトの状態で燃料噴射を行う時、その規制位置が確実には定まらず、例えば温度等によりリフト量がばらついてしまい、要求される燃料噴射量が得られなくなるという不具合があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、弁部材のリフトの規制位置を機械的に決定し、エンジンの全運転状態に応じて要求される燃料の噴射率を安定して得ることのできる弁部材のリフト量を段階的に制御可能な燃料噴射装置の提供にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、第1圧力室の内圧変化によって噴孔の開閉を行う弁部材の動きが機械的に制御されるとともに、第2圧力室の内圧変化によってリフト量を決定するリフト規制ピストンの動きが機械的に制御されるものである。
つまり、リフト停止(閉弁)、低リフト時、高リフト時のぞれぞれにおいて、弁部材の位置が機械的に決定されるものである。このため、温度等によりリフト量がばらつく不具合がなく、要求される燃料噴射率を安定して得ることができる。
【0007】
請求項2の手段として、第1圧力室と第2圧力室を順次に変化させて、弁部材とリフト規制ピストンを順次リフトさせる構成を採用しても良い。
請求項3の手段として、弁部材が弁座に着座する閉弁状態の時、リフト規制ピストンの位置が弁部材を高リフトさせる位置にあるような構成を採用しても良い。
【0008】
請求項4の手段として、リフト規制ピストンの位置が弁部材を高リフトさせる位置にある時、弁部材のみが移動して噴孔の開閉を行うことができる構成を採用しても良い。
請求項5の手段として、制御弁が第1、第2圧力室内の圧力を制御することによって、弁部材による閉弁、低リフトでの開弁、高リフトでの開弁の3つの状態を択一的に選択するように設けても良い。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
図1に示す燃料噴射装置1は、図示しないエンジンのエンジンヘッドに挿入搭載され、エンジンの各気筒に燃料を直接噴射するように構成されている。図示しない燃料噴射ポンプから吐出された高圧燃料は、図示しない蓄圧管の蓄圧室で所定圧に蓄圧されて、燃料噴射装置1に供給される。燃料噴射ポンプは、エンジンの回転数、負荷、吸入燃料圧力、吸入空気量、冷却水の温度等に従って燃料吐出圧を調節するものである。
【0010】
燃料噴射装置1におけるハウジング2と弁ボディ3とは、チップパッキン4をはさみ、リテーニングナット5で締結されている。
弁部材6は、噴孔7側から、ニードル8、ロッド9、駆動ピストン10から構成されるものであり、そのスライド量は、噴孔7側の弁座11と、反噴孔7側に配置されたリフト規制ピストン12とによって規制される。
ニードル8は、弁ボディ3に往復自在に支持されるものであり、第1スプリング13によりロッド9を介して弁ボディ3に形成された弁座11に付勢されている。
【0011】
リフト規制ピストン12は、リフトした弁部材6の駆動ピストン10に当接して、ニードル8のリフト位置を低リフトと高リフトの2段階に規制するものである。
このリフト規制ピストン12は、第2スプリング14により、ニードル8の着座方向に付勢されるものであり、この下側に押し付けられた下死点の状態から、後述する高圧燃料によって、図1に示すように第2スプリング14を撓めた上死点までリフトできる。
【0012】
リフト規制ピストン12の下死点から上死点までのリフト量、つまり上死点時においてリフト規制ピストン12の下端面にできる隙間h2 が、リフト規制ピストン12の最大リフトである。
また、リフト規制ピストン12が上死点にあって、ニードル8が弁座11に押し付けられた状態における駆動ピストン10とリフト規制ピストン12の間の隙間h1 が、ニードル8の最大リフト(高リフト)となる。
そして、リフト規制ピストン12が下死点にあって、ニードル8が弁座11に押し付けられた状態では、駆動ピストン10とリフト規制ピストン12の間は隙間(h1 −h2 )となり、これがニードル8の中間規制リフト(低リフト)となる。
【0013】
弁部材6は、第1圧力室15が高圧の時に弁座11に着座(噴孔7閉塞)し、第1圧力室15が低圧の時にリフト(噴射)するものである。
リフト規制ピストン12は、第2圧力室16が高圧の時にリフトして弁部材6を高リフト可能な状態にし、第2圧力室16が低圧の時に着座して弁部材6を低リフト可能な状態にするものである。
【0014】
第1圧力室15は、高圧通路17を介して高圧燃料が供給されるように設けられている。また、第1圧力室15は、第1燃料通路18、制御弁19を介して、燃料排出用の低圧通路20に連通されている。そして、制御弁19が第1燃料通路18と低圧通路20とを遮断することにより、第1圧力室15が高圧燃料によって高圧になり、制御弁19が第1燃料通路18と低圧通路20とを連通することにより、第1圧力室15の高圧燃料が排出されて低圧になる。
【0015】
第2圧力室16も、高圧通路17を介して高圧燃料が供給されるように設けられている。また、第2圧力室16も、第2燃料通路21、制御弁19を介して、燃料排出用の低圧通路20に連通されている。そして、制御弁19が第2燃料通路21と低圧通路20とを遮断することにより、第2圧力室16が高圧燃料によって高圧になり、制御弁19が第2燃料通路21と低圧通路20とを連通することにより、第2圧力室16の高圧燃料が排出されて低圧になる。
【0016】
このように、第1圧力室15および第2圧力室16は、制御弁19によって圧力が制御される。
制御弁19は、図1に示すように、低圧通路20を閉塞して、第1圧力室15および第2圧力室16を共に高圧にする「閉弁モード」と、図2に示すように、第1燃料通路18、第2燃料通路21および低圧通路20を連通させて、第1圧力室15および第2圧力室16を共に低圧にする「低リフトモード」と、図3に示すように、第2燃料通路21のみを閉塞して、第1燃料通路18と低圧通路20を連通させて、第1圧力室15を低圧にするとともに、第2圧力室16を高圧にする「高リフトモード」とを切り替えるものである。
【0017】
制御弁19は、燃料噴射装置1の上部に装着される電磁弁22の構成部品であり、この電磁弁22は、ハウジング2の上部とナット23によって締結されている。この電磁弁22は、制御弁19の他に、アーマチュア24、ボディ25、コイル26、第1コイルバネ27、第2コイルバネ28等で構成されている。
【0018】
制御弁19は、第1コイルバネ27の付勢力によってハウジング2に着座して低圧通路20を閉塞可能なものであり、低圧通路20が閉塞されることにより上述した「閉弁モード」の設定となる。
制御弁19の上部に設けられた円盤状のコア29は、コイル26が通電されることにより発生する励磁吸引力により上方にリフトし、ピン30の下端30aに当接してH1 リフトする。この状態の制御弁19は、第1燃料通路18、第2燃料通路21および低圧通路20を連通させるものであり、上述した「低リフトモード」の設定となる。
【0019】
この「低リフトモード」の位置からコイル26に供給される電流値が更に大きい場合では、制御弁19のコア29に作用する励磁吸引力が大きくなり、制御弁19とピン30とが上昇して、制御弁19の上シート部19aがボディ25の着座部25aに当接し、制御弁19がH2 リフトする。この状態の制御弁19は、第2燃料通路21のみを閉塞して、第1燃料通路18と低圧通路20を連通させるものであり、上述した「高リフトモード」の設定となる。なお、低リフトモードから高リフトモードへの制御弁19のリフトは、H2 −H1 である。
【0020】
第1ピストンを制御することでニードル8の開閉動作を制御する第1圧力室15への高圧燃料の供給は、燃料入口31、高圧通路17、第1入口絞り32へと順に経由して導入される。
高圧状態の第1圧力室15を低圧状態(噴孔7開弁)に変化させるためには、制御弁19をリフトさせてハウジング2に形成された低圧通路20を開く。すると、第1圧力室15に供給された高圧燃料は、第1燃料通路18、バルブ燃料室33、低圧通路20へと順に排出されて燃料タンク34へ至る。ここで、低圧通路20の出口絞り35の流路面積は、第1入口絞り32の流路面積よりも大きく設けられている。
【0021】
リフト規制ピストン12を制御することでニードル8のリフト量を制御する第2圧力室16への高圧燃料の供給は、燃料入口31、高圧通路17、第2入口絞り36を経て第2圧力室16に供給される。ニードル8と共同する駆動ピストン10がリフトをする前では、高圧通路17内の高圧燃料が第2入口絞り36を経由して第2圧力室16に供給され、その力によってリフト規制ピストン12は第2スプリング14を撓めて上死点に到達している。
【0022】
第2圧力室16の高圧状態(高リフト)を低圧状態(低リフト)に変化させるためには、図2に示すように、制御弁19を中間位置、即ち制御弁19のコア29がピン30の下端30aに当接してH1 リフトした状態で停止させる。この状態では、第2燃料通路21と低圧通路20が連通し、第2圧力室16に供給された高圧燃料が、第2燃料通路21、バルブ燃料室33、低圧通路20へと順に排出されて燃料タンク34へ至る。ここで、低圧通路20の出口絞り35の流路面積は、第2入口絞り36の流路面積よりも大きく設けられている。
この実施形態の構成では、第2圧力室16を低圧状態に変化させる時は、制御弁19を中間位置にするので、第1燃料通路18と低圧通路20が連通して第1圧力室15も低圧状態に変化する。このため、リフト規制ピストン12を作動させるタイミングは、駆動ピストン10の作動に同期して行うものである。
【0023】
このように、第1圧力室15および第2圧力室16の内部燃料圧力を変化させることで駆動ピストン10とリフト規制ピストン12をそれぞれリフトさせて、ニードル8のリフトおよびリフト量の規制を行っている。そして、このニードル8を弁座11に着座することにより複数個の噴孔7を閉塞している。
そして、低リフトで開口する噴孔7と、高リフトで開口する噴孔7を備えることにより、噴射率を可変可能な構成としている。
【0024】
(第1実施形態の作動)
次に、燃料噴射装置1の作動を図1〜図3を用いて説明する。
まず、図示しない燃料噴射ポンプから燃料が吐出され、図示しない蓄圧管に送出される。蓄圧管の蓄圧室で所定の燃料圧に蓄圧された高圧燃料は、燃料噴射装置1の燃料入口31に供給される。
また、図示しないエンジン制御装置(ECU)により、エンジンの運転条件に応じた制御弁19の駆動電流が生成され、コイル26に供給される。駆動電流値が低い場合は、小さい励磁吸引力により制御弁19が第1コイルバネ27を撓めて上方にH1 リフトする。また、駆動電流値が高い場合は、大きい励磁吸引力により制御弁19が第1、第2コイルバネ27、28を撓めてH2 リフトする。
【0025】
第1の噴射作動形態では、電磁弁22のコイル26に高い電流が流れ、コイル26の励磁吸引力が大きく、図3に示すように、制御弁19がH2 リフトして制御弁19の上シート部19aがボディ25の着座部25aに当接する。この状態では、第2燃料通路21が閉塞して、第1燃料通路18と低圧通路20が連通する。
【0026】
すると、第1圧力室15は、第1燃料通路18と出口絞り35を介して低圧通路20に連通する。第1入口絞り32より出口絞り35の流路面積が大きく設定されているため、流入燃料よりも流出燃料が多く、第1圧力室15の燃料圧力は低下し始める。
第1圧力室15の燃料圧力が低下し、第1スプリング13の設定荷重と第1圧力室15の燃料圧力から受ける力との合力である噴孔7閉塞方向の力が、ニードル8を押し上げる力より小さくなると、ニードル8がリフトを開始する。
【0027】
この時、第2圧力室16の燃料圧力は、制御弁19の上シート部19aがボディ25の着座部25aに当接して第2燃料通路21を閉塞した状態であり、高圧状態が維持され、リフト規制ピストン12は上死点に停止している(h2 リフト状態)。従って、ニードル8は、上死点に停止しているリフト規制ピストン12に当接するまでリフトし、h1 リフトして停止する(高リフト)。
【0028】
所定の駆動パルス時間が過ぎると、コイル26への駆動電流の供給が停止され、制御弁19が閉弁し、低圧通路20を閉塞する(図1の状態)。すると、第1入口絞り32からの高圧燃料により第1圧力室15が高圧状態に移り、ニードル8と協動する駆動ピストン10が閉弁方向に移動する。この時も、第2圧力室16が高圧状態が保たれるため、リフト規制ピストン12は上死点で停止したままである。
【0029】
第2の噴射作動形態では、電磁弁22のコイル26に低い電流が流れ、コイル26の励磁吸引力が小さく、図2に示すように、制御弁19が第1リフト量H1 の位置までリフトし、制御弁19のコア29がピン30の下端30aに当接して停止する。この状態では、第1燃料通路18および第2燃料通路21が、低圧通路20に連通する。
【0030】
制御弁19が第1リフト量H1 までリフトすると、第1圧力室15の燃料圧力が低下し、第1スプリング13の設定荷重と第1圧力室15の燃料圧力から受ける力とを合せた力が低下することにより、高圧通路17から供給される燃料圧力によりニードル8が第1スプリング13に抗して押し上げられ、ロッド9を介して駆動ピストン10が持ち上げられ、ニードル8がリフトを開始する。
【0031】
この時、第2圧力室16は、第2燃料通路21と出口絞り35を介して低圧通路20に連通する。第2入口絞り36より出口絞り35の流路面積が大きく設定されているため、流入燃料よりも流出燃料が多く、第1圧力室15とともに第2圧力室16の燃料圧力も低下する。第2スプリング14の荷重より、第2圧力室16および第1圧力室15による荷重が小さくなると、リフト規制ピストン12は下方へリフトし、下死点で着座する。ここで、第2スプリング14の荷重で停止状態を維持する。この時のリフト規制ピストン12の移動量はh2 である。このため、ニードル8は、下死点で停止しているリフト規制ピストン12に当接するまでリフトし、h1 −h2 リフトして停止する(低リフト)。
【0032】
所定の駆動パルス時間が過ぎると、コイル26への駆動電流の供給が停止され、制御弁19が閉弁し、低圧通路20を閉塞する(図1の状態)。すると、第1入口絞り32からの高圧燃料により第1圧力室15が高圧状態に移り、ニードル8と協動する駆動ピストン10が閉弁方向に移動する。また、第2入口絞り36からの高圧燃料により第2圧力室16も高圧状態に移り、リフト規制ピストン12が上死点に移動する。
そして、第1圧力室15が高圧状態となることにより、駆動ピストン10が押し下げられ、ニードル8が弁座11に着座し、噴孔7を完全に閉塞する。
【0033】
エンジンに燃料噴射装置1を装着して噴射作動させるにあたり、前述の第1、第2の噴射作動形態の切り替えとともに、低リフトで開口する噴孔7と、高リフトで開口する噴孔7とを設けることにより、噴射率を変更可能な構成とすることができる。つまり、例えば、エンジンの高速高負荷運転時には、第1の噴射作動形態によって噴射率を大きくし、低速低負荷運転時には、第2の噴射作動形態によって噴射率を小さくする。この噴射形態の切替制御は、エンジンの制御装置(ECU)による駆動電流値を、高い電流値と低い電流値とで切り替えることで実施できる。
【0034】
(第1実施形態の効果)
燃料噴射装置1は、上述したように、機械的に切替設定されるリフト規制ピストン12の位置により、高リフトと低リフトの切替を実施できる。つまり、高リフトと低リフトを確実に得ることができ、燃料噴射率の切替制御を安定して行うことができるため、高い信頼性を得ることができる。
【0035】
さらに、噴射率を大きくする高リフトの状態では、第1の噴射形態を採用する。このため、制御弁19がフルリフト状態(図3の状態)となり、開口流路面積が大きく、且つ弁部材6だけが作動して、リフト規制ピストン12は停止したままであるため、高い応答性でニードル8をリフトでき、高い性能を得ることができる。
【0036】
〔第2実施形態〕
第2実施形態を図4を用いて説明する。図4は、第2実施形態による燃料噴射装置1の断面図である。なお、第1実施形態と同一機能物は同一符号を付して説明を省略する。
第2実施形態の燃料噴射装置1は、第1実施形態に対し、駆動ピストン10およびリフト規制ピストン12にそれぞれ面する第1圧力室15および第2圧力室16の燃料圧力を電磁弁22により制御し、ニードル8のリフト量を変化させて、噴射率を自由に設定可能とした点は同じであるが、第1圧力室15への高圧燃料のとり回しが異なるものである。
【0037】
具体的に第1実施形態では、高圧燃料は高圧通路17で分岐し、第1、第2圧力室15、16のそれぞれに並列に導入され、そのまま並列で制御弁19まで燃料通路が設けられていたが、この第2実施形態では、高圧通路17、第2圧力室16、バルブ燃料室33、第1圧力室15と直列に繋がれており、第1圧力室15への高圧燃料の導入が第2圧力室16を介して行われるものである。それ以外の構成および作動は第1実施形態と同じであるので説明は省略する。
【0038】
この第2実施形態の燃料噴射装置1は、第1、第2圧力室15、16への高圧燃料の供給が直列であるため、応答性の面では第1実施形態より劣るが、第1実施形態で示した第1入口絞り32が不要であるため、製造および調節に要するコストを抑えることができる。
【0039】
〔第3実施形態〕
第3実施形態を図5を用いて説明する。図5は、第3実施形態による燃料噴射装置1の断面図である。なお、上記実施形態と同一機能物は同一符号を付して説明を省略する。
第3実施形態の燃料噴射装置1は、第1実施形態に対し、駆動ピストン10およびリフト規制ピストン12にそれぞれ面する第1圧力室15および第2圧力室16の燃料圧力を電磁弁22により制御し、ニードル8のリフト量を変化させて、噴射率を自由に設定可能とした点は同じであるが、リフト規制ピストン12に面する第2圧力室16の位置、および第2スプリング14の位置が異なるものである。
【0040】
具体的にこの第3実施形態では、ニードル8の閉弁状態においてリフト規制ピストン12が上死点にあることは同じであるが、その位置を定めるのに、第1実施形態では第2圧力室16がリフト規制ピストン12のニードル8側にあって、その反対側に第2スプリング14が配置されていたのに対し、この第3実施形態では、第2圧力室16がリフト規制ピストン12の反ニードル8側に配置され、第2スプリング14がニードル8側に配置されている。従って、ニードル8の閉弁状態では、第2圧力室16の圧力は低圧状態にされており、リフト規制ピストン12は第2スプリング14の荷重により上死点に押圧されている。
【0041】
第1実施形態に対する作動上の相違点は、第2圧力室16の高圧・低圧状態が第1実施形態と逆になる。
制御弁19の周りの通路の配置は、上記第2圧力室16の圧力状態の変化に従って、電磁弁22の停止時に制御弁19が閉じる通路が第1実施形態では低圧通路20であったものが、この第3実施形態では第1圧力室15に通じる第1燃料通路18とし、低圧通路20は常時開放状態で、バルブ燃料室33に連通する構成を採用するものである。
【0042】
(噴射停止状態)
電磁弁22の停止時に制御弁19は第1燃料通路18の出口を閉じるため、第1入口絞り32からの高圧燃料によって第1圧力室15は高圧状態となる。この時、制御弁19の上シート部19aがボディ25の着座部25aと離れた状態にあるため、第2燃料通路21が低圧通路20と連通して、第2圧力室16は低圧状態となる。この状態では、第2圧力室16による下方への荷重よりも、第2スプリング14による上方への荷重が大きく、リフト規制ピストン12は上方へリフトされる。
【0043】
(高リフト噴射時)
電磁弁22のコイル26に小さい電流が与えられ、制御弁19が第1リフト量H1 の位置までリフトした状態では、第1燃料通路18の出口が開弁し、第1圧力室15が低圧状態に変化する。第2圧力室16は、低圧状態のままで、リフト規制ピストン12は上死点に停止しているので、駆動ピストン10は、上死点で停止しているリフト規制ピストン12に当接するまでリフトして停止する(高リフト)。
【0044】
所定の駆動パルス時間が過ぎ、コイル26への駆動電流の供給が停止され、制御弁19が閉弁して第1燃料通路18を再び閉塞すると、第1入口絞り32からの高圧燃料により第1圧力室15が高圧状態に移り、駆動ピストン10が閉弁方向に移動してニードル8が弁座11に着座して噴孔7を閉塞する。
【0045】
(低リフト噴射時)
電磁弁22のコイル26に大きい電流が与えられ、制御弁19が第2リフト量H2 の位置までリフトすると、第1燃料通路18の出口が開弁し、第1圧力室15が低圧状態に変化して、駆動ピストン10が開弁方向に移動を開始し、ニードル8のリフトが開始する。この時、第2燃料通路21の出口が制御弁19によって閉じられるため、第2入口絞り36からの高圧燃料により第2圧力室16が高圧状態に移り、リフト規制ピストン12が第2スプリング14の荷重に打ち勝って下方へ移動して下死点に着座する。
従って、上昇する駆動ピストン10は、下死点に着座するリフト規制ピストン12に当接して上昇が停止するため、ニードル8のリフト量はh1 −h2 の規制リフト状態となる(低リフト)。
【0046】
所定の駆動パルス時間が過ぎ、コイル26への駆動電流の供給が停止され、制御弁19が閉弁して第1燃料通路18を再び閉じ、第2燃料通路21を再び低圧通路20と連通させることにより、第1入口絞り32からの高圧燃料により第1圧力室15が高圧状態に移り、駆動ピストン10が閉弁方向に移動してニードル8が弁座11に着座して噴孔7を閉塞するとともに、第2圧力室16が低圧状態に移り、リフト規制ピストン12が第2スプリング14の付勢力によって上方へ移動して上死点で停止する。
【0047】
(第3実施形態の効果)
この第3実施形態では、閉弁状態において常時、第2入口絞り36、第2圧力室16、第2燃料通路21、バルブ燃料室33、低圧通路20を通る燃料の流れが存在するので、噴射圧力が比較的低いエンジン向きであるが、駆動ピストン10のリフト規制を油圧による荷重で行うため、確実な規制が可能になるとともに、応答性も向上する。
【0048】
〔第4実施形態〕
第4実施形態を図6を用いて説明する。図6は、第4実施形態による燃料噴射装置1の要部断面図である。なお、上記実施形態と同一機能物は同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
この第4実施形態は、リフト規制ピストン12の形状以外、上記第3実施形態と同じであり、説明は省略する。
この実施例では、第3実施形態と同様、リフト規制ピストン12の上側に第2圧力室16があるため、第1圧力室15とリフト規制ピストン12の下側を区切る必要がない。そこで、第3実施形態では2つあったリフト規制ピストン12の円柱状摺動部のうち、下側の小径摺動部を廃止したものである。なお、作動は第3実施形態と同じであり説明は省略する。
この第4実施形態では、リフト規制ピストン12の形状が単純化するため、製造コストを安価に抑えることができる。
【0050】
〔他の実施形態〕
上記の各実施形態では、電磁弁22を用いて制御弁19を駆動する例を示したが、電磁弁22に代えて電歪型のアクチェータを用いるなど、他のアクチェータを用いて制御弁19を駆動しても良い。
また、各燃料通路のとり回しや、第1スプリング13、第2スプリング14の配置状態等も、実施形態の例に限定されるものでなく、適宜変更可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料噴射装置の断面図である(第1実施形態)。
【図2】燃料噴射装置の作動説明のための要部断面図である(第1実施形態)。
【図3】燃料噴射装置の作動説明のための断面図である(第1実施形態)。
【図4】燃料噴射装置の断面図である(第2実施形態)。
【図5】燃料噴射装置の断面図である(第3実施形態)。
【図6】燃料噴射装置の要部断面図である(第4実施形態)。
【符号の説明】
1 燃料噴射装置
3 弁ボディ
6 弁部材
7 噴孔
11 弁座
12 リフト規制ピストン
15 第1圧力室
16 第2圧力室
19 制御弁
Claims (5)
- (a)噴孔を開閉する弁部材と、
(b)前記噴孔の燃料上流側に弁座を有するものであり、前記弁部材が前記弁座に着座することにより前記噴孔を閉塞し、前記弁部材が前記弁座から離座することにより前記噴孔を開放する弁ボディと、
(c)前記弁部材が前記弁座から離座してリフトした際に、そのリフトした弁部材に当接することにより、前記弁部材のリフト位置を、リフト量の少ない低リフトとリフト量の多い高リフトとに切り替えるリフト規制ピストンと、
(d)高圧燃料の給排によって前記弁部材の駆動を制御する第1圧力室と、
(e)高圧燃料の給排によって前記リフト規制ピストンの駆動を制御する第2圧力室と、
(f)前記第1圧力室内の圧力および前記第2圧力室内の圧力を切り替えることにより、前記弁部材および前記リフト規制ピストンの動きを制御する制御弁とを備え、
前記第1圧力室および前記第2圧力室のそれぞれと、燃料排出用の低圧通路との連通状態を、1つの前記制御弁で制御することを特徴とする燃料噴射装置。 - 請求項1の燃料噴射装置において、
前記制御弁は、前記第1圧力室と前記第2圧力室を順次に変化させて前記弁部材と前記リフト規制ピストンを順次リフトさせる構成であることを特徴とする燃料噴射装置。 - 請求項1または請求項2の燃料噴射装置において、
前記弁部材が前記弁座に着座する閉弁状態の時、前記リフト規制ピストンの位置は、前記弁部材を高リフトさせる位置にあることを特徴とする燃料噴射装置。 - 請求項1ないし請求項3のいずれかの燃料噴射装置において、
前記リフト規制ピストンの位置が、前記弁部材を高リフトさせる位置にある時、前記弁部材のみが移動して前記噴孔の開閉を行うことを特徴とする燃料噴射装置。 - 請求項1ないし請求項4のいずれかの燃料噴射装置において、
前記制御弁は、前記第1、第2圧力室内の圧力を制御することによって、前記弁部材による閉弁、低リフトでの開弁、高リフトでの開弁の3つの状態を択一的に選択することを特徴とする燃料噴射装置。
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