JP4154086B2 - 感光性重合体組成物、パターンの製造法及び電子部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光性重合体組成物及びこの組成物を用いたパターンの製造法並びに電子部品に関し、さらに詳しくは、加熱処理により半導体素子等の電子部品の表面保護膜、層間絶縁膜等として適用可能なポリイミド系耐熱性高分子となるポジ型の耐熱性の感光性重合体組成物及びこの組成物を用いたパターンの製造法並びに電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミドは耐熱性及び機械特性に優れ、また、膜形成が容易であり、表面を平坦化できる等の利点から、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜等として広く使用されている。
【0003】
ポリイミドを表面保護膜又は層間絶縁膜として使用する場合、スルーホール等の形成工程は、主にポジ型のホトレジストを用いるエッチングプロセスによって行われている。しかし、工程にはホトレジストの塗布や剥離が含まれ、煩雑であるという問題がある。そこで作業工程の合理化を目的に感光性を兼ね備えた耐熱性材料の検討がなされてきた。
【0004】
感光性ポリイミド組成物に関しては、1.エステル結合により感光基を導入したポリイミド前駆体組成物(特公昭52−30207号公報等)、2.ポリアミド酸に化学線により2量化または重合可能な炭素−炭素二重結合及びアミノ基と芳香族ビスアジドを含む化合物を添加した組成物(特公平3−36861号公報等)などが知られている。
【0005】
感光性ポリイミド組成物の使用に際しては、通常、溶液状態で基板上に塗布後乾燥し、マスクを介して活性光線を照射し、未露光部を現像液で除去し、パターンを形成する。しかし、上記1及び2の組成物はネガ型であり、また、現像に有機溶剤を使用する。そのため、ポジ型のホトレジストを用いるエッチングプロセスからネガ型の感光性ポリイミドに切り替えるためには、露光装置のマスクや現像設備の変更が必要になるという問題点がある。
【0006】
一方、ポジ型感光性ポリイミドに関しては、3.o−ニトロベンジル基をエステル結合により導入したポリイミド前駆体(特開昭60−37550号公報)、4.フェノール性水酸基を含むポリアミド酸エステルとo−キノンジアジド化合物を含む組成物(特開平4−204945号公報)等が知られている。
【0007】
しかし、上記3の前駆体は感光する波長が主に300nm以下であるため、感度が低く、特に最近使用されているi線ステッパ(365nmの単波長光)等では使用が困難であるという問題がある。上記4の組成物は上記3の前駆体より感度がよいが十分ではないという問題がある。これに対し、感度を向上させるためにフェノール2核体などを添加した組成物(特開平9−302221号公報)が知られている。しかし、フェノール2核体などを添加すると、現像後の熱処理過程においてレリーフパターンが熱による変形を起こしやすく、解像度が低下する。このように、十分な感度を有し、実用に問題のないポジ型感光性ポリイミドは得られていないのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記した従来技術の問題点を克服するものである。すなわち、本発明は、感度が高く、現像後の加熱処理によるパターンの変形が小さい、ポジ型で耐熱性の感光性重合体組成物を提供するものである。また、本発明は、前記発明の課題に加えて、より優れた感度、解像度、より短い現像時間、より良好な形状のパターン等の何れかを、さらに与える感光性重合体組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、前記の、感度が高い組成物の使用により、解像度が高く、良好な形状のパターンが得られるパターンの製造法を提供するものである。また、本発明は、良好な形状のパターンを有することにより、信頼性の高い電子部品を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電子部品の表面保護膜又は層間絶縁膜を形成するための感光性重合体組成物であって、互いに同一でない、(a)カルボキシル基又はフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性のポリイミド前駆体又はポリイミド、(b)光により酸を発生するo−キノンジアジド化合物、(c)フェノール性水酸基を有する化合物、(d)熱により(a)成分と架橋反応を起こす化合物、及び(e)オニウム塩、ジアリール化合物又はテトラアルキルアンモニウム塩から選択される、アルカリ水溶液に対する(a)成分の溶解を阻害する効果のある化合物を含有してなる感光性重合体組成物に関する。
【0011】
また本発明は、前記(a)成分が、ポリアミド酸エステル又はポリイミドである感光性重合体組成物に関する。また本発明は、前記(a)成分が、一般式(I)
【化4】
(式中、R1は4価の有機基を示し、R2はカルボキシル基又はフェノール性水酸基を有する2価の有機基を示し、2つのR3は各々独立に1価の有機基を示す)で表される繰り返し単位を有するポリアミド酸エステルである感光性重合体組成物に関する。
【0012】
また本発明は、前記(d)成分が2つ以上のエポキシ基をもつ化合物である感光性重合体組成物に関する。また本発明は、前記(d)成分が2つ以上のメチロール基をもつ化合物である感光性重合体組成物に関する。
【0013】
また本発明は、前記(d)成分が2つ以上のアルコキシメチル基をもつ化合物である感光性重合体組成物に関する。
【0014】
また本発明は、前記(e)成分が、ジアリールヨードニウム塩、ジアリールスルホン化合物又はテトラメチルアンモニウムハライド化合物である感光性重合体組成物に関する。また本発明は、前記(e)成分が、一般式(III)
【化5】
(式中、個々のR6及びR7は各々独立に1価の有機基を示し、o及びpは各々独立に0から5までの整数を示し、X-は対陰イオンを示す)で表されるジフェニルヨードニウム塩である感光性重合体組成物に関する。
【0015】
また本発明は、前記(a)成分100重量部に対して、前記(b)成分5〜100重量部、前記(c)成分1〜30重量部、前記(d)成分0.5〜20重量部、及び(e)成分0.01〜15重量部を配合する前記のいずれかの感光性重合体組成物に関する。
【0016】
また、本発明において、上記(c)成分が、一般式(II)
【化6】
(式中、Xは単結合又は2価の基を示し、個々のR4及びR5は個々独立にアルキル基を示し、m及びnは各々独立に0から3の整数を示す)で表される化合物であってもよい。
【0017】
また本発明は、前記のいずれかの感光性重合体組成物を支持基板上に塗布し乾燥する工程、露光する工程、現像する工程及び加熱処理する工程を含むパターンの製造法に関する。また本発明は、前記の露光する工程において使用する光が、i線であるパターンの製造法に関する。また本発明は、前記の製造法により得られるパターンを表面保護膜又は層間絶縁膜として有してなる電子部品に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明における(a)成分は、現像液として用いられるアルカリ水溶液に可溶性であることが必要であるため、カルボキシル基又はフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液に可溶性のポリイミド前駆体又はポリイミドから選択される重合体である。本発明における重合体の種類は、耐熱性に優れ、半導体装置や多層配線板の層間絶縁膜や表面保護膜として優れた特性を示すため、ポリイミド、又は、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリアミド酸アミド等のポリイミド前駆体である。
【0019】
(a)成分は、カルボキシル基又はフェノール性水酸基を有することにより、現像液として用いられるアルカリ水溶液に可溶であるが、露光後は(b)成分等の変化により、露光部の溶解速度が上がり、未露光部との溶解速度差が生じるので、レリーフパターンが形成できる。
【0020】
なお、アルカリ水溶液とは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、金属水酸化物、アミン等が水に溶解された、アルカリ性を呈する水溶液である。
【0021】
カルボキシル基又はフェノール性水酸基を有する(a)成分のポリイミド前駆体及びポリイミドの中でも、ポリアミド酸エステル又はポリイミドはリソグラフィ特性が良好なので好ましく、その中でも前記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリアミド酸エステルは、基材との密着性等に優れるのでより好ましい。
【0022】
前記一般式(I)において、R1で示される4価の有機基とは、ジアミンと反応して、ポリイミド前駆体の構造を形成しうる、テトラカルボン酸、その二無水物又はそれらの誘導体の残基であり、4価の芳香族基又は脂肪族基が好ましく、炭素原子数が4〜40のものがより好ましく、炭素原子数が4〜40の4価の芳香族基がさらに好ましい。芳香族基とは、芳香環(ベンゼン環、ナフタレン環等)を含む基をいう。4価の芳香族基としては、4個の結合部位はいずれも芳香環上に存在するものが好ましい。これらの結合部位は、2組の2個の結合部位に分けられ、その2個の結合部位が芳香環のオルト位又はペリ位に位置するものが好ましい。前記の2組は同一の芳香環に存在してもよいし、各種結合を介して結合している別々の芳香環に存在してもよい。
【0023】
前記一般式(I)において、R2で示されるカルボキシル基又はフェノール性水酸基を有する2価の有機基とは、テトラカルボン酸、その二無水物又はそれらの誘導体と反応してポリイミド前駆体の構造を形成しうる、カルボキシル基又はフェノール性水酸基を有するジアミンのアミノ基を除いた残基であり、芳香族基又は脂肪族基が好ましく、カルボキシル基を除いた炭素原子数が2〜40のものがより好ましく、芳香族基がさらに好ましい。ここで、芳香族基としては、その2個の結合部位が芳香環上に直接存在するものが好ましく、この場合2個の結合部位は同一の芳香環に存在しても異なった芳香環に存在してもよい。また、カルボキシル基又はフェノール性水酸基は1〜8個有することが好ましく、これらも芳香環に直接結合しているものが好ましい。
【0024】
一般式(I)において、R3で示される一価の有機基としては、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基が好ましく、炭素原子数1〜20のものがより好ましい。
【0025】
前記一般式(I)で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体は、一般式(I)で表される繰り返し単位以外の繰り返しを有してもよい。例えば、下記一般式(IV)
【化7】
(式中、R8は4価の有機基を示し、R9はカルボキシル基及びフェノール性水酸基を有しない2価の有機基を示し、R10は1価の有機基を示す)で表される繰り返し単位を有してもよい。
【0026】
一般式(IV)において、R8示される4価の有機基の説明は、前記R1の説明と同様である。また、一般式(IV)において、R9で示されるカルボキシル基及びフェノール性水酸基を有しない2価の有機基の説明は、前記R2の説明においてカルボキシル基とフェノール性水酸基のいずれも有しないことを除いて、R2と同様である。さらに、一般式(IV)において、R10で示される基のうち1価の有機基の説明は、前記R3の説明と同様である。なお、一般式(I)及び一般式(IV)において、R3及びR10で示される基は、各繰り返し単位中に2つあるが、これらは同一でも異なっていてもよい。また、複数の繰り返し単位において、R1、R2、R3、R8、R9及びR10で示される基は同一でも異なっていてもよい。
【0027】
一般式(I)で示される繰り返し単位を有するポリアミド酸エステルにおいて、一般式(I)と一般式(IV)の繰り返し単位の比は、前者の数をa、後者の数をbとしたときのa/(a+b)で、0.2〜1であることが好ましく、0.4〜1であることがより好ましい。この数値が0.2未満であるとアルカリ水溶液への溶解性が劣る傾向にある。
【0028】
一般式(I)で示される繰り返し単位を有するポリアミド酸エステルにおいて、さらに、その他の繰り返し単位として、一般式(I)又は一般式(IV)において2つのR3又は2つのR10のうち1つ又は2つとも水素原子に変えた繰り返し単位を有していてもよい。
【0029】
また、前記ポリアミド酸エステルにおいて、前記一般式(I)と一般式(IV)の繰り返し単位の合計数、すなわちテトラカルボン酸残基中のカルボキシル基が完全にエステル化された繰り返し単位の合計数は、繰り返し単位総数に対して、50%〜100%が好ましく、80%〜100%がより好ましく、90〜100%が特に好ましい。なお、ここでいう繰り返し単位とは、酸残基1つとアミン残基1つより構成される単位を1つとする。
【0030】
本発明における(a)成分のポリイミド前駆体又はポリイミドの分子量としては、重量平均分子量で3,000〜200,000が好ましく、5,000〜100,000がより好ましい。分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算し、値を得ることができる。
【0031】
本発明において、(a)成分がポリアミド酸エステルの場合、例えば、テトラカルボン酸ジエステルジハライド(クロライド、ブロマイド等)と、カルボキシル基又はフェノール性水酸基を有するジアミンと、さらに必要に応じてカルボキシル基又はフェノール性水酸基を有しないジアミンとを反応させて得ることができる。この場合、反応は脱ハロゲン酸剤の存在下に、有機溶媒中で行うことが好ましい。
【0032】
前記テトラカルボン酸ジエステルジハライドとしては、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドが好ましい。テトラカルボン酸ジエステルジクロリドは、テトラカルボン酸二無水物とアルコール化合物を反応させて得られるテトラカルボン酸ジエステルと塩化チオニルを反応させて得ることができる。
【0033】
前記テトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物等の芳香族系テトラカルボン酸二酸無水物が好ましく、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
前記ポリアミド酸エステルにおいて、その側鎖のエステル部位になる原料としてはアルコール化合物が用いられる。該アルコール化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール等のアルキルアルコール、フェノール、ベンジルアルコールなどが好ましく、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
さらに、前記ポリアミド酸エステルの原料として、ジアミンが用いられる。カルボキシル基、フェノール性水酸基等の酸性基を有するジアミンは、前記ポリアミド酸エステルや、ポリアミド酸アミド、ポリイミドのように、前記テトラカルボン酸のカルボキシル基が残存しない場合においては、重合体をアルカリ水溶液可溶とするために必ず用いられる。このようなジアミンとしては、例えば、2,5−ジアミノ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノテレフタル酸、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)メチレン、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)エーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジカルボキシ−2,2’−ジメチルビフェニル、1,3−ジアミノ−4−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−5−ヒドロキシベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等の芳香族系ジアミンが好ましく、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0036】
また、カルボキシル基及びフェノール性水酸基を有しないジアミンとしては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、ベンジシン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル等の芳香族ジアミン化合物が好ましく、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
その他、耐熱性向上のために、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル−3−スルホンアミド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル−4−スルホンアミド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル−3’−スルホンアミド、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル−4−スルホンアミド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル−3−カルボキサミド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル−4−カルボキサミド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル−3’−カルボキサミド、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル−4−カルボキサミド等のスルホンアミド基又はカルボキサミド基を有するジアミンを単独で又は2種以上併用することができ、併用する場合、これらはジアミン化合物の総量中、15モル%以下で使用することが好ましく、10モル%以下の範囲で使用することがより好ましい。
【0038】
ポリアミド酸エステルの合成において、テトラカルボン酸ジエステル化合物を合成する方法としては、例えば、前記テトラカルボン酸二無水物と前記アルコール化合物を有機溶剤中、塩基の存在下混合することにより得られる。テトラカルボン酸二無水物とアルコール化合物の割合(モル比)は、前者/後者で1/2〜1/2.5の範囲とするのが好ましく、1/2とすることが最も好ましい。また、テトラカルボン酸二無水物と塩基の割合(モル比)は、前者/後者で1/0.001〜1/3の範囲とするのが好ましく、1/0.005〜1/2とすることがより好ましい。この反応温度は10〜60℃が好ましく、反応時間は3〜24時間が好ましい。
【0039】
テトラカルボン酸ジエステルジクロリドを合成する方法は公知であり、例えば、有機溶剤に溶解したテトラカルボン酸ジエステルに塩化チオニルを滴下して反応させて得られる。テトラカルボン酸ジエステルと塩化チオニルの割合(モル比)は、前者/後者で1/1.1〜1/2.5の範囲とするのが好ましく、1/1.5〜1/2.2の範囲とするのがより好ましい。反応温度は−20〜40℃が好ましく、反応時間は1〜10時間が好ましい。
【0040】
ポリアミド酸エステルは、例えば、前記ジアミンとピリジンなどの脱ハロゲン酸剤を有機溶剤に溶解し、有機溶剤に溶解したテトラカルボン酸ジエステルジハライドを滴下して反応させた後、水などの貧溶剤に投入し、析出物をろ別、乾燥することにより得られる。ジアミンの総量とテトラカルボン酸ジエステルジハライドの割合(モル比)は、前者/後者で0.6/1〜1/0.6の範囲が好ましく、0.7/1〜1/0.7の範囲がより好ましい。反応温度は−20〜40℃が好ましく、反応時間は1〜10時間が好ましい。脱ハロゲン酸剤とテトラカルボン酸ジエステルジハライドの割合は、前者/後者(モル比)が、1.8/1〜2.2/1の範囲が好ましく、1.9/1〜2.1/1の範囲がより好ましい。
【0041】
ポリアミド酸エステルの合成において、カルボキシル基、フェノール性水酸基等の酸性基を有しないジアミン化合物を併用する場合、酸性基を有するジアミンと酸性基を有しないジアミンの使用割合は、前者20〜100モル%、後者80〜0モル%で全体が100モル%になるように使用されるのが好ましく、前者40〜100モル%、後者60〜0モル%で全体が100モル%になるように使用されるのがより好ましい。前者のジアミンは、ポリアミド酸エステルにアルカリ水溶液に対する溶解性を付与するために使用されるが、これが20モル%未満であると感度が低下したり、現像時間が長くなる傾向にある。
【0042】
以上酸性基を有するポリアミド酸エステルについて詳述したが、(a)成分として、ポリアミド酸を用いる場合は、テトラカルボン酸の残基としてのカルボキシル基が存在するので、ジアミンとして、カルボキシル基、フェノール性水酸基等の酸性基を有するジアミンを用いなくともよい。ポリアミド酸は前記のテトラカルボン酸二無水物とジアミンを有機溶剤中で直接反応させることにより得られる。
【0043】
また、ジアミン残基に酸性基を有しないポリアミド酸エステルとして、エステルの一部がカルボキシル基であるものを用いることもできる。これは、前記のテトラカルボン酸二無水物とテトラカルボン酸ジエステルジハライドとジアミンとを反応させることにより得られる。
【0044】
また、ポリアミド酸アミドやポリイミドの場合は、アルカリ水溶液に可溶とするために、一般にジアミンとして、カルボキシル基、フェノール性水酸基等の酸性基を有するジアミンを使用するが、このジアミンと酸性基を有しないジアミンの好ましい使用割合は、前記ポリアミド酸エステルの合成の場合と同様である。
【0045】
ポリアミド酸アミドは、前記ポリアミド酸エステルの合成において、アルコール化合物の代わりに、モノアミン化合物、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、イソブチルアミン、1−ペンチルアミン、2−ペンチルアミン、3−ペンチルアミン、イソアミルアミン、1−ヘキシルアミン、2−ヘキシルアミン、3−ヘキシルアミン、モルホリン、アニリン、ベンジルアミンなどを用いることにより合成することができる。ポリイミドは、一旦ポリアミド酸を合成し、これを脱水閉環させること等により得られる。
【0046】
本発明に使用される(b)成分である光により酸を発生するo−キノンジアジド化合物は、感光剤であり、酸を発生させ、光の照射部のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有するものである。
【0047】
o−キノンジアジド化合物は、光により、カルボン酸に変化する部位を有する。この化合物は、例えば、o−キノンジアジドスルホニルクロリド類とヒドロキシ化合物、アミノ化合物などとを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られる。前記o−キノンジアジドスルホニルクロリド類としては、例えば、ベンゾキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド等が使用できる。
【0048】
前記ヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,3’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン,2,3,4,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10−テトラヒドロ−1,3,6,8−テトラヒドロキシ−5,10−ジメチルインデノ[2,1−a]インデン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
【0049】
アミノ化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが使用できる。
【0050】
o−キノンジアジドスルホニルクロリドとヒドロキシ化合物及び/又はアミノ化合物とは、o−キノンジアジドスルホニルクロリド1モルに対して、ヒドロキシ基とアミノ基の合計が0.5〜1当量になるように配合されることが好ましい。脱塩酸剤とo−キノンジアジドスルホニルクロリドの好ましい割合は0.95/1〜1/0.95の範囲とされる。好ましい反応温度は0〜40℃、好ましい反応時間は1〜10時間とされる。
【0051】
反応溶媒としては、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、N−メチルピロリドン等の溶媒が用いられる。脱塩酸剤としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどがあげられる。
【0052】
本発明の感光性重合体組成物において、(b)成分の配合量は、露光部と未露光部の溶解速度差と、感度の許容幅の点から、(a)成分100重量部に対して5〜100重量部が好ましく、8〜40重量部がより好ましい。
【0053】
本発明に使用される(c)成分はフェノール性水酸基を有する化合物である。この(c)成分を使用することにより、アルカリ水溶液で現像する際の露光部の溶解速度が増加し、感度を上げることができる。なお、本発明の(c)成分からは、前記の(a)成分としてのポリイミド又はポリイミド前駆体は除外される。(c)成分は、分子量が大きくなると露光部の溶解促進効果が小さくなるので、一般に分子量が1,500以下の化合物が好ましい。
【0054】
(c)成分である、フェノール性水酸基を有する化合物としては、次の一般式(II)
【化8】
(式中、Xは単結合又は2価の基を示し、R4及びR5は各々独立にアルキル基を示し、m及びnは各々独立に0から3の整数を示す)で示される化合物が、好ましいものとして使用される。一般式(II)で表される化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物の中でも、感度において、優れるものである。
【0055】
一般式(II)で表される化合物の具体例としては、2,2’−ビフェノール、5,5’−ジメチル−[(1,1’−ビフェニル)−2,2’−ジオール]、2,2’ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,6−ビス[(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノールなどがあげられる。このなかで、2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)が感度の点で最も好ましい。
【0056】
一般式(II)で表される化合物以外のフェノール化合物としてビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’,4’’−メチリデントリスフェノール、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)エタン、2,6−ビス[(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノール、4,4',4'',4'''−(1,2−エタンジリデン)テトラキスフェノール、2,2’−メチレンビス[6−[(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノールも使用することができる。
【0057】
本発明の感光性重合体組成物において、(c)成分の配合量は、現像時間と、未露光部残膜率の許容幅の点から、(a)成分100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、5〜20重量部がより好ましい。
【0058】
本発明においては、(d)成分として、熱により前記(a)成分と架橋反応を起こす化合物が用いられる。ここで、(d)成分の架橋反応を起こす温度としては、120〜350℃が好ましい。架橋反応は、現像によりパターン形成をした後の加熱処理の際に生じる。架橋反応は、一般に(a)成分中に存在するフェノール性水酸基、カルボキシル基、アミノ基等と、(d)成分中のこれらの基と反応し得る官能基の間で生じる。
【0059】
(d)成分としては、2つ以上のエポキシ基をもつ化合物、メチロール基をもつ化合物又は2つ以上のアルコキシメチル基をもつ化合物が好ましい。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ポリスルフィド型エポキシ樹脂、ジメチロール尿素、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ジメチロールエチレン尿素、ジメチロールプロピレン尿素、1,4−ビス(メトキシフェノキシ)ベンゼン、トリメトキシメチルメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミンなどがあげられる。このなかで、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジメチロール尿素、1,4−ビス(メトキシフェノキシ)ベンゼンが熱による変形を小さくする効果の点で最も好ましい。
【0060】
本発明の感光性重合体組成物において、(d)成分の配合量は、現像後の熱処理におけるパターンの変形と、現像時に発生する残渣の許容幅の点から、(a)成分100重量部に対して0.5〜20重量部が好ましく、5〜10重量部がより好ましい。
【0061】
本発明においては、(e)成分として、アルカリ水溶液に対する(a)成分の溶解を阻害する効果のある化合物を用いることが好ましい。(e)成分を使用することにより、アルカリ水溶液で現像する際の未露光部の溶解速度が減少し、(c)成分の効果と相まって露光部と未露光部の溶解度差が増大し、優れたパターンを形成することができる。
【0062】
(e)成分としては、オニウム塩、ジアリール化合物及びテトラアルキルアンモニウム塩が好ましい。オニウム塩としては、ジアリールヨードニウム塩等のヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、ホスホニウム塩、アリールジアゾニウム塩等のジアゾニウム塩などが挙げられる。ジアリール化合物としては、ジアリールスルホン、ジアリールケトン、ジアリールエーテル、ジアリールプロパン、ジアリールヘキサフルオロプロパン等の2つのアリール基が結合基を介して結合したものが挙げられる。テトラアルキルアンモニウム塩としては、前記アルキル基がメチル基、エチル基等のテトラアルキルアンモニウムハライドが挙げられる。
【0063】
これらの中で良好な溶解阻害効果を示すものとしては、ジアリールヨードニウム塩、ジアリールスルホン化合物、テトラメチルアンモニウムハライド化合物等が挙げられる。ジアリールヨードニウム塩としてはジフェニルヨードニウム塩が挙げられ、ジアリール尿素化合物としてはジフェニル尿素、ジメチルジフェニル尿素等が挙げられ、ジアリールスルホン化合物としてはジフェニルスルホン、ジメチルジフェニルスルホン等が挙げられ、テトラメチルアンモニウムハライド化合物としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムヨーダイド等が挙げられる。
【0064】
中でも、一般式(III)
【化9】
(式中、個々のR6及びR7は各々独立に1価の有機基を示し、o及びpは各々独立に0から5までの整数を示し、X-は対陰イオンを示す)で表されるジフェニルヨードニウム塩が好ましい。R6及びR7で示される1価の有機基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられ、それらの炭素原子数としては、1〜8が好ましい。
【0065】
前記ジフェニルヨードニウム塩の例としては、ジフェニルヨードニウムニトラート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニルヨードニウムナノフルオロブタンスルホナート、ジフェニルヨードニウムトルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムブロマイド、ジフェニルヨードニウムヨーダイト、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム−9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホナート、ジフェニルヨードニウム−8−アニリノナフタレン−1−スルホナート、4−メトキシジフェニルヨードニウムニトラート、4−メトキシジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、4,4’−ジt−ブチルジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。
【0066】
本発明の感光性重合体組成物において、(e)成分の配合量は、感度と、現像時間の許容幅の点から、(a)成分100重量部に対して0.01〜15重量部が好ましく、0.05〜10重量部がより好ましい。
【0067】
本発明の感光性重合体組成物は、前記(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分及び必要に応じて(e)成分やその他の成分を溶剤に溶解して得ることができる。溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン、γ−ブチロラクトン等の非プロトン性極性溶剤が好ましく、これらを単独で又は2種以上併用して用いられる。また、塗布性向上のため、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセラート等の溶剤を併用することができる。
【0068】
本発明の感光性重合体組成物には、さらに必要に応じて接着助剤として、有機シラン化合物、アルミキレート化合物や一般式(V)
【化10】
(式中、R11は4価の有機基を示し、R12は2価の有機基を示し、R13は1価の有機基を示し、zは1以上の整数を示す)で表される繰り返し単位を有するポリアミド酸を含むことができる。
【0069】
有機シラン化合物としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシランなどがあげられる。アルミキレート化合物としては、例えば、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、アセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレートなどがあげられる。
【0070】
前記一般式(V)で示される繰り返し単位を有するシロキサン構造を有するポリアミド酸において、R11で示される4価の有機基とは、ポリイミドの原料になるテトラカルボン酸二無水物の残基であり、4価の芳香族基又は脂肪族基が好ましく、炭素原子数が4〜40のものがより好ましく、炭素原子数が4〜40の4価の芳香族基がさらに好ましい。4価の芳香族基は、4個の結合部位がいずれも芳香環に存在することが好ましい。これらの結合部位は、2組の2個の結合部位に分けられ、その2個の結合部位が芳香環のオルト位またはペリ位に位置するもの)であることが好ましい。前記の2組は同一の芳香環上に存在していてもよいし、各種結合を介して結合している別々の芳香環上に存在していてもよい。
【0071】
前記一般式(V)において、2つのR12で挟まれる部分はシリコーンジアミン化合物のアミノ基を除いた残基であり、この部分は全体として炭素原子数が6〜40のものが好ましい。R12で示される2価の有機基としては、炭素原子数が1〜10のものが好ましく、前記炭素原子数のアルキレン基、フェニレン基等が好ましいものとして挙げられ、2つのR12は同一でも異なっていてもよい。R13で示される1価の有機基としては、炭素原子数1〜5の有機基が好ましく、前記炭素原子数のアルキル基又はフェニル基が好ましい。接着助剤を用いる場合は、(a)成分100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。
【0072】
本発明の感光性重合体組成物は、支持基板上に塗布し乾燥する工程、露光する工程、現像する工程及び加熱処理する工程を経て、ポリイミドのパターンとすることができる。支持基板上に塗布し乾燥する工程では、ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えばTiO2、SiO2等)、窒化ケイ素などの支持基板上に、この感光性重合体組成物をスピンナーなどを用いて回転塗布後、ホットプレート、オーブンなどを用いて乾燥する。
【0073】
次いで、露光工程では、支持基板上で被膜となった感光性重合体組成物に、マスクを介して紫外線、可視光線、放射線などの活性光線を照射する。これらのうち、高い解像度のパターンを形成できるので、中でもi線(365nmの単色光)を用いた露光が好ましい。現像工程では、露光部を現像液で除去することによりレリーフパターンが得られる。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどのアルカリ水溶液があげられる。これらの水溶液の塩基濃度は、0.1〜10重量%とされることが好ましい。
【0074】
さらに上記現像液にアルコール類や界面活性剤を添加して使用することもできる。これらはそれぞれ、現像液100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲で配合することができる。次いで、加熱処理工程では、得られたレリーフパターンに好ましくは150〜450℃の加熱処理をすることにより、イミド環や他に環状基を持つ耐熱性のポリイミドパターンになる。
【0075】
本発明の感光性重合体組成物は、半導体装置や多層配線板等の電子部品に使用することができ、具体的には、半導体装置の表面保護膜や層間絶縁膜、多層配線板の層間絶縁膜等の形成に使用することができる。本発明の半導体装置は、前記組成物を用いて形成される表面保護膜や層間絶縁膜を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとることができる。
【0076】
本発明の半導体装置の製造工程の一例を以下に説明する。図1は多層配線構造の半導体装置の製造工程図である。図において、回路素子を有するSi基板等の半導体基板は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜等の保護膜2で被覆され、露出した回路素子上に第1導体層が形成されている。前記半導体基板上にスピンコート法等で層間絶縁膜としてのポリイミド樹脂等の膜4が形成される(工程(a))。
【0077】
次に塩化ゴム系またはフェノールノボラック系の感光性樹脂層5が前記層間絶縁膜4上にスピンコート法で形成され、公知の写真食刻技術によって所定部分の層間絶縁膜4が露出するように窓6Aが設けられている(工程(b))。前記窓6Aの層間絶縁膜4は、酸素、四フッ化炭素等のガスを用いるドライエッチング手段によって選択的にエッチングされ、窓6Bがあけられている。ついで窓6Bから露出した第1導体層3を腐食することなく、感光樹脂層5のみを腐食するようなエッチング溶液を用いて感光樹脂層5が完全に除去される(工程(c))。
【0078】
さらに公知の写真食刻技術を用いて、第2導体層7を形成させ、第1導体層3との電気的接続が完全に行われる(工程(d))。3層以上の多層配線構造を形成する場合は、上記の工程を繰り返して行い各層を形成することができる。
【0079】
次に表面保護膜8が形成される。この図の例では、この表面保護膜を前記感光性重合体組成物をスピンコート法にて塗布、乾燥し、所定部分に窓6Cを形成するパターンを描いたマスク上から光を照射した後アルカリ水溶液にて現像してパターンを形成し、加熱してポリイミド膜とする。このポリイミド膜は、導体層を外部からの応力、α線などから保護するものであり、得られる半導体装置は信頼性に優れる。なお、上記例において、層間絶縁膜を本発明の感光性重合体組成物を用いて形成することも可能である。
【0080】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。
実施例1
攪拌機、温度計を備えた0.3リットルのフラスコ中に、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物24.82g(0.08モル)、n−ブチルアルコール11.86g(0.16モル)、トリエチルアミン0.4g(0.004モル)、N−メチルピロリドン(NMP)110gを仕込、室温で8時間で攪拌し反応させて、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジn−ブチルエステルのNMP溶液(α)を得た。
【0081】
次いで、フラスコを0℃に冷却した後、塩化チオニル17.13g(0.144モル)を滴下して1時間反応させて、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジn−ブチルエステルジクロリドの溶液(β)を得た。次いで、攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン105gを仕込、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン26.37g(0.072モル)を添加し、攪拌溶解した後、ピリジン22.78g(0.288モル)を添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジn−ブチルエステルジクロリドの溶液(β)を20分間で滴下した後、温度を30℃にして1時間攪拌を続けた。溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収、洗浄した後、減圧乾燥してポリアミド酸エステル(δ)を得た。
【0082】
ポリアミド酸エステル(δ)10.00g、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタンとナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリドを1/3のモル比で反応させたオルトキノンジアジド化合物1.40g、2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)1.20g、YL−980(油化シェルエポキシ(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)0.50g、ジフェニルヨードニウムニトラート0.10g、尿素プロピルトリエトキシシランの50%メタノール溶液0.60gを、N−メチルピロリドン17.78gに攪拌溶解した。この溶液を3μm孔のテフロン(登録商標)フィルタを用いて加圧濾過して感光性重合体組成物を得た。
【0083】
得られた感光性重合体組成物をスピンナーを使用してシリコンウェハ上に回転塗布し、ホットプレート上110℃で3分間加熱乾燥を行い、7.5μmの塗膜を得た。この塗膜に露光機としてi線ステッパ((株)日立製作所製)を用い、レティクルを介し、100〜500mJ/cm2の露光をした。次いで、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38重量%水溶液を現像液とし80秒間パドル現像を行い、純水で洗浄してレリーフパターンを得た。パターン観察により、適正露光量は300mJ/cm2と判断された。未露光部の残膜率は77%であった。得られたレリーフパターンを窒素雰囲気下350℃で1時間加熱処理したところ、良好なポリイミド膜のパターンを得られた。解像度は3μmで現像直後の値から変化はなかった。
【0084】
実施例2
実施例1で作成したポリアミド酸エステル(δ)10.00g、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタンとナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリドを1/3のモル比で反応させたオルトキノンジアジド化合物1.40g、2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)1.20g、ジメチロール尿素0.50g、ジフェニルヨードニウムニトラート0.10g、尿素プロピルトリエトキシシランの50%メタノール溶液0.60gを、N−メチルピロリドン17.78gに攪拌溶解した。この溶液を3μm孔のテフロンフィルタを用いて加圧濾過して感光性重合体組成物を得た。
【0085】
得られた感光性重合体組成物をスピンナーを使用してシリコンウェハ上に回転塗布し、ホットプレート上110℃で3分間加熱乾燥を行い、7.6μmの塗膜を得た。この塗膜に露光機としてi線ステッパ((株)日立製作所製)を用い、レティクルを介し、100〜500mJ/cm2の露光をした。次いで、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38重量%水溶液を現像液とし90秒間パドル現像を行い、純水で洗浄してレリーフパターンを得た。パターン観察により、適正露光量は300mJ/cm2と判断された。未露光部の残膜率は79%であった。またパターンの形状は、良好であった。得られたレリーフパターンを窒素雰囲気下350℃で1時間加熱処理したところ、良好なポリイミド膜のパターンを得られた。解像度は3μmで現像直後の値から変化はなかった。
【0086】
実施例3
実施例1で作成したポリアミド酸エステル(δ)10.00g、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタンとナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリドを1/3のモル比で反応させたオルトキノンジアジド化合物1.40g、2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)1.20g、1,4−ビス(メトキシフェノキシ)ベンゼン0.50g、ジフェニルヨードニウムニトラート0.10g、尿素プロピルトリエトキシシランの50%メタノール溶液0.60gを、N−メチルピロリドン17.78gに攪拌溶解した。この溶液を3μm孔のテフロンフィルタを用いて加圧濾過して感光性重合体組成物を得た。
【0087】
得られた感光性重合体組成物をスピンナーを使用してシリコンウェハ上に回転塗布し、ホットプレート上110℃で3分間加熱乾燥を行い、7.6μmの塗膜を得た。この塗膜に露光機としてi線ステッパ((株)日立製作所製)を用い、レティクルを介し、100〜500mJ/cm2の露光をした。次いで、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38重量%水溶液を現像液とし80秒間パドル現像を行い、純水で洗浄してレリーフパターンを得た。パターン観察により、適正露光量は350mJ/cm2と判断された。未露光部の残膜率は80%であった。またパターンの形状は、良好であった。得られたレリーフパターンを窒素雰囲気下350℃で1時間加熱処理したところ、良好なポリイミド膜のパターンを得られた。解像度は3μmで現像直後の値から変化はなかった。
【0088】
比較例1
実施例1で得られたポリアミド酸エステル(δ)10.00g、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタンとナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリドを1/3のモル比で反応させたオルトキノンジアジド化合物1.40g、2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)1.20g、尿素プロピルトリエトキシシランの50%メタノール溶液0.60gを、N−メチルピロリドン17.78gに攪拌溶解した。この溶液を3μm孔のテフロンフィルタを用いて加圧濾過して感光性重合体組成物を得た。
【0089】
得られた感光性重合体組成物をスピンナーを使用してシリコンウェハ上に回転塗布し、ホットプレート上105℃で3分間加熱乾燥を行い、7.4μmの塗膜を得た。この塗膜に露光機としてi線ステッパ((株)日立製作所製)を用い、レティクルを介し、100〜500mJ/cm2の露光をした。次いで、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38重量%水溶液を現像液とし25秒間パドル現像を行い、純水で洗浄してレリーフパターンを得た。パターン観察により、適正露光量は450mJ/cm2と判断された。未露光部の残膜率は80%であった。得られたレリーフパターンを窒素雰囲気下350℃で1時間加熱処理したところ、ポリイミド膜のパターンが得られたが、解像度は10μmで現像直後の3μmから悪くなっていた。
【0090】
【発明の効果】
本発明の感光性重合体組成物は、ポジ型でアルカリ水溶液で現像可能であり、感度が高く、現像後の熱処理によるパターンの変形が小さく、解像度が高く良好な形状のポリイミドパターンが得られるものである。
【0091】
また、本発明のパターンの製造法によれば、前記の、感度が高い組成物の使用により、解像度が高く、良好な形状のパターンが得られる。また、本発明の電子部品は、良好な形状のポリイミドパターンを表面保護膜または層間絶縁膜として有することにより、信頼性が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 多層配線構造の半導体装置の製造工程図である。
【符号の説明】
1 半導体基板
2 保護膜
3 第1導体層
4 層間絶縁膜層
5 感光樹脂層
6A、6B、6C 窓
7 第2導体層
8 表面保護膜層
Claims (12)
- 電子部品の表面保護膜又は層間絶縁膜を形成するための感光性重合体組成物であって、
互いに同一でない、(a)カルボキシル基又はフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性のポリイミド前駆体又はポリイミド、(b)光により酸を発生するo−キノンジアジド化合物、(c)フェノール性水酸基を有する化合物、(d)熱により(a)成分と架橋反応を起こす化合物、及び(e)オニウム塩、ジアリール化合物又はテトラアルキルアンモニウム塩から選択される、アルカリ水溶液に対する(a)成分の溶解を阻害する効果のある化合物を含有してなる感光性重合体組成物。 - (a)成分が、ポリアミド酸エステル又はポリイミドである請求項1に記載の感光性重合体組成物。
- (d)成分が2つ以上のエポキシ基をもつ化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性重合体組成物。
- (d)成分が2つ以上のメチロール基をもつ化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性重合体組成物。
- (d)成分が2つ以上のアルコキシメチル基をもつ化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性重合体組成物。
- (e)成分が、ジアリールヨードニウム塩、ジアリールスルホン化合物又はテトラメチルアンモニウムハライド化合物である請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光性重合体組成物。
- (a)成分100重量部に対して、(b)成分5〜100重量部、(c)成分1〜30重量部、(d)成分0.5〜20重量部、及び(e)成分0.01〜15重量部を配合する請求項1〜9のいずれか1項に記載の感光性重合体組成物。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の感光性重合体組成物を支持基板上に塗布し乾燥する工程、露光する工程、現像する工程及び加熱処理する工程を含むパターンの製造法。
- 露光する工程において使用する光が、i線である請求項10記載のパターンの製造法。
- 請求項10又は11記載の製造法により得られるパターンを表面保護膜又は層間絶縁膜として有してなる電子部品。
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