JP4151269B2 - 回転検出器付き転がり軸受装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アンチロックブレーキシステム（ＡＢＳ）等の制御のために、車輪の回転速度を検出する回転検出器を備えた転がり軸受装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来から、ＡＢＳ制御のための回転検出器を備えた各種車両用転がり軸受装置が提案されている。
【０００３】
例えば、回転検出器付き転がり軸受装置が設置される車両用ハブユニットは、車輪を固定したハブホイールに装着した内輪と、車体に固定した外輪との間に転動体を介装してなり、転がり軸受を介して車輪が車体に対して回転自在に支持される。
【０００４】
回転検出器は、内輪にパルサリングを固定すると共に、パルサリングに対向してハウジング等にセンサを設けてなり、ハブホイールの回転に伴って回転するパルサリングの回転速度をセンサにて検出し、車輪の回転速度を検出する。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
パルサリングは、交互にＮ極とＳ極に着磁してなる環状のゴム磁石等からなり、内輪に圧入固定した支持環に固着して設けられている。
【０００６】
支持環は、例えば、押圧治具にて押圧して内輪に圧入される圧入部と、パルサリングを固着する板状部にて構成されている。
【０００７】
押圧治具にて支持環を押圧して内輪に圧入する際に、圧入部が径方向に傾斜し、その応力によってパルサリングを固着する板状部が傾斜することがあった。この結果、パルサリングが傾斜し、パルサリングとセンサの対向間隔が変化し、センサによる回転速度の検出精度が低下するという問題があった。
【０００８】
この発明は、センサの検出部と被検知部の対向間隔を所定の大きさに保つことができ、回転速度の検出精度が低下するのを防止できる回転検出器付き転がり軸受装置を提供することを目的とする。
【００１３】
【課題を解決するための手段】
本発明は、固定輪と、回転輪と、前記固定輪と前記回転輪の間に転動自在に設けた転動体と、前記回転輪の端縁に回転輪と同心状に固定され櫛歯を有したロータと、前記櫛歯に対向した検知部を有し前記櫛歯の特性の変化に対応して出力信号を変化させるセンサとを備えた回転検出器付き転がり軸受装置であって、前記ロータは磁性体にて形成され、前記回転輪の固定輪対向面に圧入した固定片と、前記固定片の端縁を径方向内外に交互に折曲し前記回転輪の端面に当接した当接片ならびに前記固定輪側に立ち上がった立上片とからなり、前記立上片または前記当接片が前記櫛歯となることを特徴とするものである。
【００１４】
本発明に係る回転検出器付き転がり軸受装置によると、回転輪に固定したロータの回転をセンサにて検出して、回転輪の回転速度が検出される。ロータは、固定片の端縁を径方向内外に交互に折曲して当接片ならびに立上片を形成してなる形状であるため、固定片を回転輪の端縁に圧入してロータを固定する際に、固定片や当接片部分を押圧することで、立上片に直接押圧力が作用せず傾斜を防止できる。また、当接片は回転輪の端面に当接することで傾斜を防止できる。さらに、固定片が圧入によって径方向に傾斜しても、立上片ならびに当接片は径方向内外に交互に折曲形成されているので、固定片の応力が立上片ならびに当接片に伝わり難く、立上片や当接片が傾斜するのを防止できる。これにより、立上片または当接片からなる櫛歯と、センサの検知部との対向間隔を適正に保つことができ、回転速度の検出精度が低下するのを防止できる。
【００１５】
【発明の実施の形態】
参考例の実施の形態について、図１ないし図４を用いて説明する。本発明に係る実施の形態ついては、図７および図８に基づき説明する。
【００１６】
図１は、この実施の形態における回転検出器付き転がり軸受装置を適用した車両用ハブユニットの断面図、図２は、支持環３の斜視図、図３は、支持環３の取付け工程図、図４は、パルサリング４の正面図を示している。
【００１７】
なお、以下の分において、車両インナ側とは、図１、図３、図５における右側を指し、車両アウタ側とは同図の左側を指す。
【００１８】
図１において、１はハブホイールであり、軸部１１と、車輪を固定するハブフランジ１２を有している。
【００１９】
ハブホイール１の軸部１１の外周には、複列のアンギュラ玉軸受からなる転がり軸受２が装着されている。転がり軸受２は、軸部１１の車両インナ側外周に圧入してかしめ固定した回転輪となる内輪２１と、固定輪となる外輪２２と、軸受２ならびに内輪２１に形成した内輪軌道１３，１４と，外輪２２に形成した外輪軌道２５，２６に沿って転動自在に配置した転動体となる２列の玉群２３とからなり、外輪２２には車体に連結したナックルを固定するフランジ２４が形成されている。
【００２０】
内輪２１の車両インナ側の端縁には、エンコーダとなる非磁性体の支持環３が設けられている。
【００２１】
支持環３は、図２に示すように、内輪２１の外輪対向面２１ａに沿って軸方向に延びる固定片３１と、固定片３１の車両インナ側の端縁を径方向内外に交互に折曲し、当該径方向内向きに折曲した当接片３２と、径方向外向きに折曲した立上片３３とからなる。すなわち、支持環３は、筒体の一側に周方向に並んで複数の切り込みを入れ、径方向内外に交互に折曲して形成される。
【００２２】
また、支持環３は、図３に示すように、固定片３１を内輪２１の外輪対向面２１ａに、車両インナ側から圧入して内輪２１に固定する。圧入に際しては、図３（Ａ）に示すように、立上片３３が傾斜しないように、圧入治具（図示せず）によって固定片３１部分もしくは当接片３２部分を矢印Ｐ方向に押圧する。支持環３を圧入することで、図３（Ｂ）に示すように、当接片３２が内輪２１の車両インナ側の端面２１ｂに当接する。
【００２３】
さらに、支持環３の立上片３３の車両インナ側面に、被検知部となるパルサリング４を固着する。パルサリング４は、円輪状に形成され、フェライトの粉末を混入したゴム磁石等の永久磁石からなり、周方向等間隔にＮ極４１とＳ極４２を交互に着磁してなる。
【００２４】
また、外輪２２に嵌合したカバー７の内側にセンサ５を設ける。センサ５は、パルサリング４に対向し、ホール素子や磁気抵抗素子等の磁束の流れ方向に応じて出力を変化させる検知部となる磁気検出素子と、当該磁気検出素子の出力波形を整える波形成形回路を組み込んだＩＣ等にて構成されたアクティブセンサである。なお、センサ５は合成樹脂６に包埋された状態でカバー７の内面にて保持されている。
【００２５】
軸部１１の回転に伴って内輪２１に固定したパルサリング４が回転すると、センサ５にてパルサリング４の磁束の変化を検知し、車輪の回転速度が検出される。
【００２６】
なお、図５および図６に、この実施の形態の変形例を示す。
【００２７】
すなわち、この変形例は、支持環３の当接片３２の車両インナ側面に、パルサリング４を固着したものである。センサ５は、パルサリング４に対向した位置に設けられている。
【００２８】
このように、パルサリング４は、センサ５の取付け位置に対応して、支持環３の当接片３２から立上片３３の車両インナ側面における任意の位置に設けることができる。例えば、当接片３２と立上片３３の両方に渡ってパルサリング４を設けてもよい。
【００２９】
このように構成された回転検出器付き転がり軸受装置によると、支持環３は、固定片３１の端縁を径方向内外に交互に折曲して当接片３２ならびに立上片３３を形成してなる形状であるため、固定片３１を内輪２１の端縁に圧入して支持環３を固定する際に、固定片３１や当接片３２部分を押圧することで、立上片３３に直接押圧力が作用せず傾斜を防止できる。また、当接片３２は内輪２１の端面２１ｂに当接するため傾斜を防止できる。さらに、固定片３１が圧入によって径方向に傾斜しても、立上片３３ならびに当接片３２は径方向内外に交互に折曲形成されているので、固定片３１の応力が立上片３３ならびに当接片３２に伝わり難く、立上片３３や当接片３２が傾斜するのを防止できる。これにより、立上片３３から当接片３２の車両インナ側面における任意の位置に設けたパルサリング４と、センサ５の検知部との対向間隔を適正に保つことができ、回転速度の検出精度が低下するのを防止できる。
【００３０】
また、センサ５に対向して、パルサリング４を立上片３３から当接片３２の車両インナ側面における任意の位置に設けることができ、パルサリング４の取付け位置の自由度が拡大する。
【００３１】
さらに、支持環３は、筒体の一側に周方向に並んで複数の切り込みを入れ、径方向内外に交互に折曲することで容易に形成できる。
【００３２】
本発明の実施の形態について、図７および図８を用いて説明する。
【００３３】
なお、以下の分において、車両インナ側とは、図７における右側を指し、車両アウタ側とは同図の左側を指す。
【００３４】
図７は、この実施の形態における回転検出器付き転がり軸受装置を適用した車両用ハブユニットの断面図、図８は、ロータ８の斜視図を示している。なお、図１と同一部分は、同一符号を付してその説明を省略する。
【００３５】
ロータ８は磁性体製であり、図８に示すように、内輪２１の外輪対向面２１ａに軸方向に延びる固定片８１と、固定片８１の車両インナ側の端縁を径方向内外に交互に折曲してなり、当該径方向内向きに折曲した当接片８２と、径方向外向きに折曲した立上片８３とを有している。このようにして、立上片８３が被検知部である櫛歯となる。
【００３６】
また、センサ９は、永久磁石９２、鋼板等の磁性体のステータ９１、コイル９３からなり、合成樹脂１０に包埋してカバー７に固定されている。なお、ステータ９１には、立上片８３間の切り欠き８４と等ピッチの開口部９４が形成されている。
【００３７】
以上のように構成されたパッシブセンサの動作について説明する。
【００３８】
内輪２１と共にロータ８が回転すると、ロータ８に対向したステータ９１内の磁束密度が変化し、コイル９３に生じる電圧が、内輪２１の回転速度に比例した周波数で変化する。
【００３９】
すなわち、切り欠き８４と開口部９４が対向すると、立上片８３と、開口部９４間の柱部９５が微小隙間を介して対向し、ロータ８とステータ９１の間に高密度の磁束が流れる。
【００４０】
また、切り欠き８４と開口部９４の位相が半分ずれると、柱部９５が切り欠き８４に、立上片８３が開口部９４にそれぞれ対向し、ロータ８とステータ９１の間に比較的大きな隙間が生じ、磁束密度が低くなる。
【００４１】
この結果、コイル９３に生じる電圧が、内輪２１の回転速度に比例して変化し、車輪の回転速度が検出される。
【００４２】
なお、当接片８２を被検知部である櫛歯とし、センサ９が対向配置されるものとしてもよい。この場合も、当接片８２がある箇所とない箇所で、センサ９との隙間の距離が変化するので、上記立上片８３を被検知部である櫛歯とした構成と同様、回転に伴って磁束密度が変化し、車輪の回転速度を検出することができる。
【００４３】
このように構成された回転検出器付き転がり軸受装置によると、ロータ８は、固定片８１の端縁を径方向内外に交互に折曲して当接片８２ならびに立上片８３を形成してなる形状であるため、固定片８１を内輪２１の端縁に圧入してロータ８を固定する際に、固定片８１や当接片８２部分を押圧することで、立上片８３に直接押圧力が作用せず傾斜を防止できる。また、当接片８２は内輪２１の端面２１ｂに当接するため傾斜を防止できる。さらに、固定片８１が圧入によって径方向に傾斜しても、立上片８３ならびに当接片８２は径方向内外に交互に折曲形成されているので、固定片８１の応力が立上片８３ならびに当接片８２に伝わり難く、立上片８３や当接片８２が傾斜するのを防止できる。これにより、立上片８３または当接片８２からなる櫛歯と、センサ９の検知部との対向間隔を適正に保つことができ、回転速度の検出精度が低下するのを防止できる。
【００４４】
また、ロータ８は、筒体の一側に周方向に並んで複数の切り込みを入れ、径方向内外に交互に折曲することで容易に形成できる。
【００４５】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。
【００４６】
（１）転がり軸受２の形状は、上述の実施の形態に限定されるものではない。例えば、複列外向きアンギュラ玉軸受以外に、円すいころ等の各種斜接形成の転がり軸受であっても構わない。
【００４７】
（２）実施の形態におけるパッシブセンサは一例であり、このような構成のものに限るものではない。
【００４８】
また、回転速度だけでなく、回転方向も検知できる回転検出器にも適用できる。
【００４９】
（３）前記各実施の形態は、内輪回転の転がり軸受であって、内輪２１にエンコーダが設けられる構成であったが、外輪回転の転がり軸受であって、回転輪となる外輪２２（この場合、内輪が固定輪となる）にエンコーダを設ける構成としてもよい。
【００５０】
【発明の効果】
本発明の回転検出器付き転がり軸受装置によれば、センサの検出部と被検知部の対向間隔を所定の大きさに保つことができ、回転速度の検出精度が低下するのを防止できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 参考例の実施の形態における回転検出器付き転がり軸受装置を適用した車両用ハブユニットの断面図である。
【図２】 参考例の実施の形態における回転検出器付き転がり軸受装置の支持環の斜視図である。
【図３】 参考例の実施の形態における回転検出器付き転がり軸受装置の支持環の取付け工程図である。
【図４】 参考例の実施の形態における回転検出器付き転がり軸受装置のパルサリングの正面図である。
【図５】 参考例の実施の形態における回転検出器付き転がり軸受装置の変形例の断面図である。
【図６】 図５の変形例における支持環の斜視図である。
【図７】 本発明の実施の形態における回転検出器付き転がり軸受装置を適用した車両用ハブユニットの断面図である。
【図８】 本発明の実施の形態における回転検出器付き転がり軸受装置のロータの斜視図である。
【符号の説明】
２ 転がり軸受
３ 支持環（エンコーダ）
４ パルサリング（被検知部）
５，９ センサ
８ ロータ（エンコーダ）
１３，１４ 内輪軌道
２１ 内輪（回転輪)
２２ 外輪（固定輪）
２３ 玉群（転動体）
２５，２６ 外輪軌道
３１，８１ 固定片
３２ 当接片
３３ 立上片
８２ 当接片（被検知部）
８３ 立上片（被検知部）
【発明の属する技術分野】
本発明は、アンチロックブレーキシステム（ＡＢＳ）等の制御のために、車輪の回転速度を検出する回転検出器を備えた転がり軸受装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来から、ＡＢＳ制御のための回転検出器を備えた各種車両用転がり軸受装置が提案されている。
【０００３】
例えば、回転検出器付き転がり軸受装置が設置される車両用ハブユニットは、車輪を固定したハブホイールに装着した内輪と、車体に固定した外輪との間に転動体を介装してなり、転がり軸受を介して車輪が車体に対して回転自在に支持される。
【０００４】
回転検出器は、内輪にパルサリングを固定すると共に、パルサリングに対向してハウジング等にセンサを設けてなり、ハブホイールの回転に伴って回転するパルサリングの回転速度をセンサにて検出し、車輪の回転速度を検出する。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
パルサリングは、交互にＮ極とＳ極に着磁してなる環状のゴム磁石等からなり、内輪に圧入固定した支持環に固着して設けられている。
【０００６】
支持環は、例えば、押圧治具にて押圧して内輪に圧入される圧入部と、パルサリングを固着する板状部にて構成されている。
【０００７】
押圧治具にて支持環を押圧して内輪に圧入する際に、圧入部が径方向に傾斜し、その応力によってパルサリングを固着する板状部が傾斜することがあった。この結果、パルサリングが傾斜し、パルサリングとセンサの対向間隔が変化し、センサによる回転速度の検出精度が低下するという問題があった。
【０００８】
この発明は、センサの検出部と被検知部の対向間隔を所定の大きさに保つことができ、回転速度の検出精度が低下するのを防止できる回転検出器付き転がり軸受装置を提供することを目的とする。
【００１３】
【課題を解決するための手段】
本発明は、固定輪と、回転輪と、前記固定輪と前記回転輪の間に転動自在に設けた転動体と、前記回転輪の端縁に回転輪と同心状に固定され櫛歯を有したロータと、前記櫛歯に対向した検知部を有し前記櫛歯の特性の変化に対応して出力信号を変化させるセンサとを備えた回転検出器付き転がり軸受装置であって、前記ロータは磁性体にて形成され、前記回転輪の固定輪対向面に圧入した固定片と、前記固定片の端縁を径方向内外に交互に折曲し前記回転輪の端面に当接した当接片ならびに前記固定輪側に立ち上がった立上片とからなり、前記立上片または前記当接片が前記櫛歯となることを特徴とするものである。
【００１４】
本発明に係る回転検出器付き転がり軸受装置によると、回転輪に固定したロータの回転をセンサにて検出して、回転輪の回転速度が検出される。ロータは、固定片の端縁を径方向内外に交互に折曲して当接片ならびに立上片を形成してなる形状であるため、固定片を回転輪の端縁に圧入してロータを固定する際に、固定片や当接片部分を押圧することで、立上片に直接押圧力が作用せず傾斜を防止できる。また、当接片は回転輪の端面に当接することで傾斜を防止できる。さらに、固定片が圧入によって径方向に傾斜しても、立上片ならびに当接片は径方向内外に交互に折曲形成されているので、固定片の応力が立上片ならびに当接片に伝わり難く、立上片や当接片が傾斜するのを防止できる。これにより、立上片または当接片からなる櫛歯と、センサの検知部との対向間隔を適正に保つことができ、回転速度の検出精度が低下するのを防止できる。
【００１５】
【発明の実施の形態】
参考例の実施の形態について、図１ないし図４を用いて説明する。本発明に係る実施の形態ついては、図７および図８に基づき説明する。
【００１６】
図１は、この実施の形態における回転検出器付き転がり軸受装置を適用した車両用ハブユニットの断面図、図２は、支持環３の斜視図、図３は、支持環３の取付け工程図、図４は、パルサリング４の正面図を示している。
【００１７】
なお、以下の分において、車両インナ側とは、図１、図３、図５における右側を指し、車両アウタ側とは同図の左側を指す。
【００１８】
図１において、１はハブホイールであり、軸部１１と、車輪を固定するハブフランジ１２を有している。
【００１９】
ハブホイール１の軸部１１の外周には、複列のアンギュラ玉軸受からなる転がり軸受２が装着されている。転がり軸受２は、軸部１１の車両インナ側外周に圧入してかしめ固定した回転輪となる内輪２１と、固定輪となる外輪２２と、軸受２ならびに内輪２１に形成した内輪軌道１３，１４と，外輪２２に形成した外輪軌道２５，２６に沿って転動自在に配置した転動体となる２列の玉群２３とからなり、外輪２２には車体に連結したナックルを固定するフランジ２４が形成されている。
【００２０】
内輪２１の車両インナ側の端縁には、エンコーダとなる非磁性体の支持環３が設けられている。
【００２１】
支持環３は、図２に示すように、内輪２１の外輪対向面２１ａに沿って軸方向に延びる固定片３１と、固定片３１の車両インナ側の端縁を径方向内外に交互に折曲し、当該径方向内向きに折曲した当接片３２と、径方向外向きに折曲した立上片３３とからなる。すなわち、支持環３は、筒体の一側に周方向に並んで複数の切り込みを入れ、径方向内外に交互に折曲して形成される。
【００２２】
また、支持環３は、図３に示すように、固定片３１を内輪２１の外輪対向面２１ａに、車両インナ側から圧入して内輪２１に固定する。圧入に際しては、図３（Ａ）に示すように、立上片３３が傾斜しないように、圧入治具（図示せず）によって固定片３１部分もしくは当接片３２部分を矢印Ｐ方向に押圧する。支持環３を圧入することで、図３（Ｂ）に示すように、当接片３２が内輪２１の車両インナ側の端面２１ｂに当接する。
【００２３】
さらに、支持環３の立上片３３の車両インナ側面に、被検知部となるパルサリング４を固着する。パルサリング４は、円輪状に形成され、フェライトの粉末を混入したゴム磁石等の永久磁石からなり、周方向等間隔にＮ極４１とＳ極４２を交互に着磁してなる。
【００２４】
また、外輪２２に嵌合したカバー７の内側にセンサ５を設ける。センサ５は、パルサリング４に対向し、ホール素子や磁気抵抗素子等の磁束の流れ方向に応じて出力を変化させる検知部となる磁気検出素子と、当該磁気検出素子の出力波形を整える波形成形回路を組み込んだＩＣ等にて構成されたアクティブセンサである。なお、センサ５は合成樹脂６に包埋された状態でカバー７の内面にて保持されている。
【００２５】
軸部１１の回転に伴って内輪２１に固定したパルサリング４が回転すると、センサ５にてパルサリング４の磁束の変化を検知し、車輪の回転速度が検出される。
【００２６】
なお、図５および図６に、この実施の形態の変形例を示す。
【００２７】
すなわち、この変形例は、支持環３の当接片３２の車両インナ側面に、パルサリング４を固着したものである。センサ５は、パルサリング４に対向した位置に設けられている。
【００２８】
このように、パルサリング４は、センサ５の取付け位置に対応して、支持環３の当接片３２から立上片３３の車両インナ側面における任意の位置に設けることができる。例えば、当接片３２と立上片３３の両方に渡ってパルサリング４を設けてもよい。
【００２９】
このように構成された回転検出器付き転がり軸受装置によると、支持環３は、固定片３１の端縁を径方向内外に交互に折曲して当接片３２ならびに立上片３３を形成してなる形状であるため、固定片３１を内輪２１の端縁に圧入して支持環３を固定する際に、固定片３１や当接片３２部分を押圧することで、立上片３３に直接押圧力が作用せず傾斜を防止できる。また、当接片３２は内輪２１の端面２１ｂに当接するため傾斜を防止できる。さらに、固定片３１が圧入によって径方向に傾斜しても、立上片３３ならびに当接片３２は径方向内外に交互に折曲形成されているので、固定片３１の応力が立上片３３ならびに当接片３２に伝わり難く、立上片３３や当接片３２が傾斜するのを防止できる。これにより、立上片３３から当接片３２の車両インナ側面における任意の位置に設けたパルサリング４と、センサ５の検知部との対向間隔を適正に保つことができ、回転速度の検出精度が低下するのを防止できる。
【００３０】
また、センサ５に対向して、パルサリング４を立上片３３から当接片３２の車両インナ側面における任意の位置に設けることができ、パルサリング４の取付け位置の自由度が拡大する。
【００３１】
さらに、支持環３は、筒体の一側に周方向に並んで複数の切り込みを入れ、径方向内外に交互に折曲することで容易に形成できる。
【００３２】
本発明の実施の形態について、図７および図８を用いて説明する。
【００３３】
なお、以下の分において、車両インナ側とは、図７における右側を指し、車両アウタ側とは同図の左側を指す。
【００３４】
図７は、この実施の形態における回転検出器付き転がり軸受装置を適用した車両用ハブユニットの断面図、図８は、ロータ８の斜視図を示している。なお、図１と同一部分は、同一符号を付してその説明を省略する。
【００３５】
ロータ８は磁性体製であり、図８に示すように、内輪２１の外輪対向面２１ａに軸方向に延びる固定片８１と、固定片８１の車両インナ側の端縁を径方向内外に交互に折曲してなり、当該径方向内向きに折曲した当接片８２と、径方向外向きに折曲した立上片８３とを有している。このようにして、立上片８３が被検知部である櫛歯となる。
【００３６】
また、センサ９は、永久磁石９２、鋼板等の磁性体のステータ９１、コイル９３からなり、合成樹脂１０に包埋してカバー７に固定されている。なお、ステータ９１には、立上片８３間の切り欠き８４と等ピッチの開口部９４が形成されている。
【００３７】
以上のように構成されたパッシブセンサの動作について説明する。
【００３８】
内輪２１と共にロータ８が回転すると、ロータ８に対向したステータ９１内の磁束密度が変化し、コイル９３に生じる電圧が、内輪２１の回転速度に比例した周波数で変化する。
【００３９】
すなわち、切り欠き８４と開口部９４が対向すると、立上片８３と、開口部９４間の柱部９５が微小隙間を介して対向し、ロータ８とステータ９１の間に高密度の磁束が流れる。
【００４０】
また、切り欠き８４と開口部９４の位相が半分ずれると、柱部９５が切り欠き８４に、立上片８３が開口部９４にそれぞれ対向し、ロータ８とステータ９１の間に比較的大きな隙間が生じ、磁束密度が低くなる。
【００４１】
この結果、コイル９３に生じる電圧が、内輪２１の回転速度に比例して変化し、車輪の回転速度が検出される。
【００４２】
なお、当接片８２を被検知部である櫛歯とし、センサ９が対向配置されるものとしてもよい。この場合も、当接片８２がある箇所とない箇所で、センサ９との隙間の距離が変化するので、上記立上片８３を被検知部である櫛歯とした構成と同様、回転に伴って磁束密度が変化し、車輪の回転速度を検出することができる。
【００４３】
このように構成された回転検出器付き転がり軸受装置によると、ロータ８は、固定片８１の端縁を径方向内外に交互に折曲して当接片８２ならびに立上片８３を形成してなる形状であるため、固定片８１を内輪２１の端縁に圧入してロータ８を固定する際に、固定片８１や当接片８２部分を押圧することで、立上片８３に直接押圧力が作用せず傾斜を防止できる。また、当接片８２は内輪２１の端面２１ｂに当接するため傾斜を防止できる。さらに、固定片８１が圧入によって径方向に傾斜しても、立上片８３ならびに当接片８２は径方向内外に交互に折曲形成されているので、固定片８１の応力が立上片８３ならびに当接片８２に伝わり難く、立上片８３や当接片８２が傾斜するのを防止できる。これにより、立上片８３または当接片８２からなる櫛歯と、センサ９の検知部との対向間隔を適正に保つことができ、回転速度の検出精度が低下するのを防止できる。
【００４４】
また、ロータ８は、筒体の一側に周方向に並んで複数の切り込みを入れ、径方向内外に交互に折曲することで容易に形成できる。
【００４５】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。
【００４６】
（１）転がり軸受２の形状は、上述の実施の形態に限定されるものではない。例えば、複列外向きアンギュラ玉軸受以外に、円すいころ等の各種斜接形成の転がり軸受であっても構わない。
【００４７】
（２）実施の形態におけるパッシブセンサは一例であり、このような構成のものに限るものではない。
【００４８】
また、回転速度だけでなく、回転方向も検知できる回転検出器にも適用できる。
【００４９】
（３）前記各実施の形態は、内輪回転の転がり軸受であって、内輪２１にエンコーダが設けられる構成であったが、外輪回転の転がり軸受であって、回転輪となる外輪２２（この場合、内輪が固定輪となる）にエンコーダを設ける構成としてもよい。
【００５０】
【発明の効果】
本発明の回転検出器付き転がり軸受装置によれば、センサの検出部と被検知部の対向間隔を所定の大きさに保つことができ、回転速度の検出精度が低下するのを防止できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 参考例の実施の形態における回転検出器付き転がり軸受装置を適用した車両用ハブユニットの断面図である。
【図２】 参考例の実施の形態における回転検出器付き転がり軸受装置の支持環の斜視図である。
【図３】 参考例の実施の形態における回転検出器付き転がり軸受装置の支持環の取付け工程図である。
【図４】 参考例の実施の形態における回転検出器付き転がり軸受装置のパルサリングの正面図である。
【図５】 参考例の実施の形態における回転検出器付き転がり軸受装置の変形例の断面図である。
【図６】 図５の変形例における支持環の斜視図である。
【図７】 本発明の実施の形態における回転検出器付き転がり軸受装置を適用した車両用ハブユニットの断面図である。
【図８】 本発明の実施の形態における回転検出器付き転がり軸受装置のロータの斜視図である。
【符号の説明】
２ 転がり軸受
３ 支持環（エンコーダ）
４ パルサリング（被検知部）
５，９ センサ
８ ロータ（エンコーダ）
１３，１４ 内輪軌道
２１ 内輪（回転輪)
２２ 外輪（固定輪）
２３ 玉群（転動体）
２５，２６ 外輪軌道
３１，８１ 固定片
３２ 当接片
３３ 立上片
８２ 当接片（被検知部）
８３ 立上片（被検知部）
Claims (1)
- 固定輪と、回転輪と、前記固定輪と前記回転輪の間に転動自在に設けた転動体と、前記回転輪の端縁に回転輪と同心状に固定され櫛歯を有したロータと、前記櫛歯に対向した検知部を有し前記櫛歯の特性の変化に対応して出力信号を変化させるセンサとを備えた回転検出器付き転がり軸受装置であって、
前記ロータは磁性体にて形成され、前記回転輪の固定輪対向面に圧入した固定片と、前記固定片の端縁を径方向内外に交互に折曲し前記回転輪の端面に当接した当接片ならびに前記固定輪側に立ち上がった立上片とからなり、前記立上片または前記当接片が前記櫛歯となることを特徴とする回転検出器付き転がり軸受装置。
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Applications Claiming Priority (1)
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| JP2003206945A JP2003206945A (ja) | 2003-07-25 |
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