JP4150332B2 - ハタケシメジの栽培方法 - Google Patents
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Description
菌床埋め込み工程では、菌床が完全に被覆材により覆われた後も、被覆材は菌床の上面より2〜12cmの高さに達するまで被せられていた。
この発明は、菌床より品質的に優れ、付着土が少ない子実体を短期間で、かつ安定して収穫することができるハタケシメジの栽培方法を提供することを目的としている。
菌床の作製方法は限定されない。例えば、菌床培養容器内に培養基を充填し、これを加熱滅菌し、それから培養基にハタケシメジの種菌を接種する。その後、種菌の菌糸が培養容器の内部に充分に蔓延する状態まで培養する方法などを採用することができる。
菌床を栽培容器内に載置後は、例えば被覆土で菌床を覆った後、全体が湿潤状態となるまで散水する。散水用の水は、ハタケシメジの栽培に適したpH6〜7が好ましい。
子実体の採取後は、覆土および被覆土を湿潤状態で保持しながら、菌糸体の育成適温範囲内の水を散水し、菌糸体を刺激してこれを成長させることにより、2回目以降のハタケシメジの収穫を行うことも可能である。その場合には、菌糸体の成長後、継続して子実体原基を形成する適温範囲内の水を散水し、子実体原基を形成させる必要がある。
覆土のpHは4.5〜9、好ましいpHは5〜8、さらに好ましいpHは5.5〜7.5である。覆土がpH4.5未満およびpH9を超えると、菌糸の活力が著しく低下する。
被覆土の好ましいpHは6〜7である。被覆土がpH5未満およびpH8を超えると、菌糸の活力が低下するため、菌糸の成長能力および子実体の発生能力が低下する。
被覆土の好ましい粒径は7〜13mmである。粒径が4mm未満では、被覆土の粒径が細か過ぎてハタケシメジの芽出し率が低下したり、芽出し期間が長くなる。また、発生した子実体に付着土が多く、商品性が低下する。
被覆土の厚さは2〜5cm、好ましくは3〜4cmである。2cm未満では菌床の表面が過乾燥状態となり、かつ温度変化が大きくなる。また、5cmを超えると芽出し期間が長くなりすぎる。
予め、ハタケシメジの菌床を製造する。菌床としては、培養基材に粉炭と栄養源(米糠、ふすまなど)とを、所定の割合で混合したものを使用する。培養基材の含水率は、55〜65%である。
それから、含水量調整済みの培養基を、加熱殺菌、例えば市販の耐熱用培養袋に1kg程度充填し、温度110〜130℃のオートクレーブで50〜90分加熱することで殺菌する。続いて、培養基を25℃以下に冷却し、クリーンベンチ内で予め作製しておいた種菌を培養基1kg当たり20〜40g接種する。接種後は、温度18〜25℃、湿度40〜80%、炭酸ガス濃度4000ppm以下の恒温恒湿室内で暗培養する。その後、菌糸が培養基全体に蔓延し、子実体原基の形成が確認されるまで熟成させ、これを菌床とする。
まず、覆土(埋込用土)13(図1(c))を作製する。赤玉土と日向土とを2:1(容積比)でバットに取り出し、十分混ぜ合わせて覆土13とする。赤玉土に代え、まさ土を採用してもよい。覆土13の粒径は、微細すぎて排水性を大きく損なうことなく、大径すぎて保水力が劣らないものが好ましい。具体的には、1〜7mmの粒径のものが好ましい。覆土13のpHは5〜8である。この範囲外の覆土13に対して、苦土、石灰などを適量添加し、pHを5〜8に調整する。
次に、市販品の平面視して長方形のプランタ10の底面に、厚さ約1cmで底石11を浅く敷き詰め、十分に散水する(図1(a))。プランタ10は容積20リットルの容器で、長尺側の一方の側板の下端部には、排水口10aが形成されている。底石11としては、例えば軽石、日向土の大粒などを採用することができる。
続いて、菌床12を埋設したプランタ10を、散水設備、排水装置、換気装置を備えた発生室内に配置する。室内環境は、子実体の成育適温付近(例えば19℃)、湿度約60%以上、照度500〜1500ルクス、好ましくは800ルクス程度で24時間の照明、CO2濃度1500ppm以下とする。このとき、室内湿度は約60%以上が好適である。ただし、特に湿度は設定する必要がないものの、湿度が90%以上となると、室内にカビなどの雑菌が発生するので注意を必要する。なお、秋期または春期であれば、遮光ネット(遮光率60〜80%)を外張りしたパイプハウスなどの簡易な発生室も利用することができる。
収穫の際には、移植ゴテなどを用いて株ごと掘り取る。土中に残った株は必ず取り除き、穴があいた場合には、被覆土14を補充する。
第1回目の試験および第2回目の試験では、ハタケシメジの菌糸の培地基材として、市販バ−ク堆肥と広葉樹オガクズの粗めとを5:3(容積比) で混合したものを採用した。その後、培地基材とハタケシメジの菌糸の栄養源(特フスマ)とを5:1(容積比) で混合した。さらに、この培地基材と栄養源との混合物に、外割りで1重量%の竹粉炭を添加し、さらに水道水を適量添加することで、含水率約60%の菌床用の培土を作製した。一方、第3回目の試験では、第1回目の広葉樹オガクズ粗めに代え、広葉樹オガクズ細めを採用し、その他は第2回目と同じとした。得られた各培地は、高圧殺菌釜により121℃、60分間それぞれ殺菌した。
種菌には、山口県におけるハタケシメジの登録品種(山口TOJI 932号) を採用した。培養条件は、室温22℃(±2℃) 、湿度約65%とし、この条件で90日間暗がりに静置して菌糸を培養した。
Aは、赤玉土の小粒に日向土の小粒を容積比2:1で混合したもの(ただし、混合時に赤玉土は砕けて4mm以下の微粒子となる)、Bはぼら土の中粒、Cはぼら土の小粒、Dはぼら土の微粒、Eは雨水堆積後、熱風乾燥したぼら土の小粒、FはEの土と苦土とを容積比1:1で混合したもの、Gは市販のバ−ク堆肥、HはFの土を網目2×2mmの篩にかけて微細物を除去したものである。なお、中粒とは粒径7〜13mm、小粒とは粒径4〜7mm、微粒とは粒径4mm未満のものをいう。使用前のBの重量は、725g/リットルである。表1,表2中、覆土のpHの欄および被覆土のpHの欄の括弧書きの数値は、中性水を散布した後の各pHを示す。これは、雨水や菌糸の成長に伴う老廃物により酸性化する被覆土および覆土において、中性水の散布により、(1)中性付近の被覆土と覆土とが、栽培後まで中性付近に維持される点と、同じく中性水の散布により、(2)使用前にpH5〜8の範囲外の被覆土と覆土とが、中性付近まで中和される点とを明らかにするための記載である。
第1回目の試験では、遮光率60%の遮光ネットを外張りしたパイプハウスに収納し、ハタケシメジを栽培した。ここでは、雨水に晒され、散水も行われる環境下で実施した。雨水のpHは4.3〜5.8、散水のpHは6.8程度であった。
第2回目の試験および第3回目の試験では、遮光ネット(遮光率65%)を内張りしたガラス室でハタケシメジをそれぞれ栽培した。この場合、散水は行われるが、雨水を受けることはない。
なお、子実体の本数は、傘径1cm以上のものだけをカウントし、子実体の計量は、柄の途中から切断したものを計った。
覆土のpHおよび被覆土のpHの各数値は、使用前、栽培後の順に調査した(このうち、数値なしは未測定)。
芽だし期間は、試験例1,2が最も短くて安定していた。これに対して、比較例2がやや長く、比較例3は最も芽出し期間が長かった。
子実体の発生本数は、比較例2が最も多かったが、ばらつきも最大で、傘径の小さい子実体が多かった。表1中、この発生本数のばらつきが最も小さかったのは試験例1,2で、比較例4は最も子実体の発生本数が少なかった。
このように、試験例1,2は発生本数がほぼ同じであるにも拘らず、試験例1の方が重い原因は、試験例2で使用した被覆土の粒径が試験例1の場合より小さく、子実体の傘径が相対的に小さくなったためと考えられる。
子実体の付着土は、試験例1〜3が他の比較例1〜5に比べて最も少なかった。
以上の結果から明らかなように、試験例1、4,5の覆土A、被覆土Bの条件で栽培した方が他の条件での栽培に比べて、ハタケシメジの芽出し率が高く、菌床より品質的に優れ、子実体に付着土が少ないとともに子実体の1株当たりの発生本数や大きさが一定化し、商品価値が高いハタケシメジの子実体を、短期間で、かつ安定して収穫することができた。
12 菌床、
13 覆土、
14 被覆土。
Claims (1)
- 排水性を有する栽培容器内でハタケシメジの菌床を覆土により埋め込み、前記ハタケシメジを屋内で栽培するハタケシメジの栽培方法において、
前記栽培容器に菌床を載置し、その後、該栽培容器内に覆土を、該覆土の表面と前記菌床の表面との高さが揃うまで入れる覆土投入工程と、
その後、前記覆土上に、pH5〜8、粒径4mm以上の透水性を有する被覆土をかぶせる被覆工程とを備え、
前記被覆土は、宮崎県産のぼら土であるハタケシメジの栽培方法。
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