JP4147086B2 - スピンドルモータ及びこのスピンドルモータを備えたディスク駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば外径が1インチの記録ディスクを回転駆動する、薄型で且つ小径なディスク駆動用のスピンドルモータ及びこのスピンドルモータを備えたディスク駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ハードディスク等の記録ディスクを駆動するディスク駆動装置において使用されるスピンドルモータの軸受として、シャフトとスリーブとを相対回転自在に支持するために、両者の間に介在させたオイル等の潤滑流体の流体圧力を利用する動圧軸受が種々提案されている。
【0003】
このような従来の動圧軸受を備えたスピンドルモータの構成を説明すると、スリーブの中心に軸が上下一対のラジアル流体軸受を介して回転自在に支持されており、スリーブはベースに一体的に固定されて固定部材を構成している。また、そのスリーブの中心を貫通して上方に突出した軸の上端に、磁気ディスクを搭載するハブが取り付けられており、軸の下端の外径面には、抜け止め機能を有すると共にスラスト流体軸受を構成するスラストプレートが回転可能に固着されている。このスラストプレートは、スリーブの下部に設けた段状の凹所内に収納されている。
【0004】
ラジアル流体軸受を構成するラジアル受面は軸の外周面に形成され、これに対向するラジアル軸受面がスリーブの内径面に形成され、これら軸及びスリーブのラジアル受面の少なくとも一方に動圧発生用の溝が形成されている。
【0005】
また、前記スラスト流体軸受を構成するスラスト受面がスラストプレートの上下両平面に形成され、これに対向するスラスト軸受面がスリーブの下部の凹所の内面及びスラストカバーの上面に形成されており、これらスラストプレート、スリーブ及びスラストカバーのスラスト軸受面の少なくとも一方に動圧発生用の溝が形成されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、近年このようなスピンドルモータが使用されるディスク駆動装置は、携帯情報端末等の小型機器への適用が開始されており、更なる薄型化の要求が高まりつつある。
【0007】
このため、本願の出願人は、スラスト軸受部を構成するためのスラストプレートを不要として、モータの小型・薄型化を可能としつつ、ラジアル軸受部間の間隔を可能な限り大きくして所望の軸受剛性を得ることを可能としたディスク駆動装置用スピンドルモータを提案した(特許文献2参照)。
【0008】
より具体的には、シャフトが挿通されるスリーブの上端面とロータハブの下面との間でスラスト軸受部を構成し、またシャフトの外周面とスリーブの内周面とで一対のラジアル軸受部を構成すると共に、スラスト軸受部とこれに隣接する側のラジアル軸受部との間にオイルを連続的に保持してこれら両軸受部の協働によってロータに所望の浮上力を付与し、ロータをベース部材側に磁気吸引することで、スラスト軸受部及び一方のラジアル軸受部とで発生したロータの浮上力とバランスさせている。
【0009】
また、一対のラジアル軸受部に保持されるオイルは、シャフトとスリーブとの間に形成した空気介在部に保持される空気によって軸線方向に分離され、それぞれオイルと空気との気液界面を形成して保持されていると共に、スラスト軸受部に保持されるオイルは、スラスト軸受部の半径方向外方側に形成されたテーパシール部内でオイルと空気との気液界面を形成して保持されている。すなわち、動圧軸受内に保持されるオイルは、スラスト軸受部とこれに隣接する側のラジアル軸受部との間で保持されるオイルと、他方のラジアル軸受部で保持されるオイルとにそれぞれ空気によって分割され保持される構成となる。
【0010】
【特許文献1】
特開2000−197306号公報(第2−4頁、第1―3図)
【特許文献2】
特開2000−113582号公報(第5−6頁、第2図)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、昨今、これらディスク駆動装置が用いられる装置の多様化から、様々な環境下でも安定した性能を維持することが必要となり、また、このような小型機器の殆どが充電池により駆動されることから、より長時間の使用に耐えるために、更なる低消費電力化が要求されるようになってきた。
【0012】
これに対し、オイルを作動流体とする動圧軸受の場合、オイルは温度や気圧といった外部環境の変動によって特性が変化しやすいことから、その適用範囲は自ずと制約されることとなる。
【0013】
また、オイルを作動流体とする動圧軸受では、オイルの粘度が高い低音時には粘性抵抗による損失が大きくなり、スピンドルモータの消費電力量が増大する。
【0014】
本発明の目的は、小型・薄型且つ低コスト化が可能であると共に、様々な環境下であっても安定して使用することができ且つ低消費電力で駆動可能なスピンドルモータを提供することである。
【0015】
また、本発明の別の目的は、上記スピンドルモータを備えることで、携帯情報端末等の小型機器への適用が可能であると共に、長時間使用することができ且つ信頼性の高いディスク駆動装置を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、内部に空洞を規定する略カップ状のロータと、該ロータと一体的に回転するシャフトと、該シャフトが挿通される一端閉塞状の円筒状スリーブとを備えたスピンドルモータにおいて、前記ロータの底面の軸線方向下側に設けられた前記スリーブの開口側端面又は、前記スリーブの開口側端面と軸線方向上側の前記ロータの面に気体を半径方向内方側に流動させる形状の動圧発生溝が形成されることで気体を作動流体とするスラスト軸受部が構成され、前記シャフトの外周面と前記スリーブの内周面とは半径方向に対向すると共に、気体を作動流体とするラジアル軸受部が構成され、
前記ラジアル軸受部には、動圧発生溝として軸線方向溝が設けられており、また前記スリーブの閉塞側端面と前記シャフトの端面との間には、前記スラスト軸受部で発生する動圧と実質的に同等の圧力を有する空気室が形成され、前記ロータは前記スラスト軸受部と該空気室との協働によって浮上力が付与されると共に、前記ロータには、前記スラスト軸受部で発生する動圧の作用方向とは対向する方向に磁気背圧されていることを特徴とする。
【0017】
上記構成において、空気等の気体はオイル等の液体に比べて温度変化による粘性等の特性変化が小さいことから、低温環境下での使用においても粘性抵抗に起因する回転時の損失を小さくすることができ、低電力化が可能になる。また、高温環境下での使用においても、粘性低下に起因する支持剛性の低下も抑制されるため、様々な環境下で安定して使用することが可能になる。
【0018】
また、気体は液体に比べて粘性が小さく、圧縮性流体であることから、所定の支持剛性を得ようとした場合に、オイルを使用する軸受に比べて軸受部の寸法を比較的に大きく確保することが必要であるため、一般的には小型・薄型のスピンドルモータの軸受への適用は困難ではあるが、上記構成のように、軸受部にかえてロータを磁気背圧して支持することで、軸受の形成箇所を最小とし制限された寸法の中でも個々の軸受部の占有する面積を最大とすることによって、例えば外径が1インチの小径なディスクを駆動する極小のスピンドルモータにおいても適用可能となる。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1のスピンドルモータにおいて、前記ラジアル軸受部には、動圧発生溝として気体を軸線方向に流動させる形状の動圧発生溝が設けられていることを特徴とする。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1及び2のいずれかのスピンドルモータにおいて、前記スリーブの開口側端面は、軸線方向に間隙を介して前記ロータの面と対向していることを特徴とする。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかのスピンドルモータにおいて、前記スリーブの閉塞側端面に対向する前記シャフトの端面には、軸方向下に小突起が設けられていることを特徴とする。
【0022】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかのスピンドルモータにおいて、前記シャフトは軸部材と該軸部材の外周面に嵌着される中空円筒状の外筒部材とから構成され、該軸部材と該外筒部材との間には、前記ラジアル軸受部の上端部と下端部とを連結する連通孔が形成されていることを特徴とする。
【0023】
請求項6に記載の発明は、情報を記録できる記録ディスクが回転駆動されるディスク駆動装置において、ハウジングと、該ハウジングの内部に固定され該記録ディスクを回転させるスピンドルモータと、該記録ディスクに情報を書き込み又は読み出すための情報アクセス手段とを有するディスク駆動装置であって、前記スピンドルモータとして、請求項1乃至5のいずれかに記載したスピンドルモータを備えてなることを特徴とするディスク駆動装置。
【0024】
ところで、請求項1以外の請求項に記載する発明は、本発明の実施形態に即した構成に関するものであり、重複した記載を避けるために、各請求項に係る発明の構成による作用効果並びにその原理に関しては、下記発明の実施の形態において詳述する。
【0025】
【発明の実施の形態】
次に、各図面を参照して本発明に係るスピンドルモータ及びこのスピンドルモータを用いたディスク駆動装置の実施形態について説明する。尚、本実施形態の説明では便宜上各図面の上下方向を「上下方向」とするが、スピンドルモータの実際の取付状態における方向を限定するものではない。
【0026】
(参考例1)
まず、図1及び図2を参照して第1の参考形態に係るスピンドルモータについて説明する。図1に図示されるスピンドルモータは、ブラケット2の略中央部に立設されるシャフト4と、このシャフト4に回転自在に支持されるロータハブ6とを有している。シャフト4は、軸線方向下端部がブラケット2に固着される円柱状の軸部4aと、この軸部4aの外周面に嵌着される外筒部4bとから構成されている。
【0027】
ロータハブ6は、軸部4aの先端部が挿通される中央開口6a1が設けられた略円板状の天板6aと、この天板6aの外周縁部からブラケット2側に向かって軸線方向下方側に垂下する円筒壁部6bとから構成される。円筒壁部6bの外周面には、ハードディスク等の記録ディスク(図5においてディスク板53として図示する)が載置されるフランジ状のディスク載置部6cが設けられていると共に、その軸線方向下側外周面にはリング状のロータマグネット8が取付けられている。
【0028】
これらシャフト4を構成する外筒部4b及びロータハブ6は、アルミナ等のセラミックス材あるいは表面にダイアモンドライクカーボンコーティング等の硬化被膜や二硫化モリブデンコーティング等の潤滑性被膜を形成したステンレス鋼等の金属材から形成するのが好ましい。
【0029】
また、ブラケット2は、軸部4aの軸線方向上端部側に向かって開口する略カップ状の形状を有しており、その内周面にはステータ10がロータマグネット8に対して半径方向外方から空隙を介して対向するよう固着されている。ステータ10の軸線方向上方は、ステータ10とロータマグネット8との間に形成される磁路からの漏洩磁束による記録ディスクへの影響を排除するために、強磁性体からなる周状の磁気シールド板12によって覆われている。
【0030】
ロータハブ6から軸線方向上方側に突出した軸部4aの外周面には、中央開口6a1の径よりも大外径なリング状部材13が取付けられており、このリング状部材13によって、ロータハブ6の軸線方向の移動が規制される。すなわち、ロータハブ6に対してリング状部材13が係合することで、ロータハブ6の抜止めが構成される。
【0031】
尚、ブラケット2及び軸部4aの上端部は、このスピンドルモータが収納されるディスク駆動装置の筐体(図5においてハウジング51として図示する)に固定される。このようにスピンドルモータの軸線方向上下端部がディスク駆動装置の筐体に固定された、いわゆる両端固定の構造を採用することによって、装置の薄型化等のためにディスク駆動装置の筐体が薄肉化された場合でも、スピンドルモータ自体が、筐体内でいわば柱としての役割を担うことで堅牢性を確保することが可能になる。また、ブラケット2及びシャフト4を含むスピンドルモータの固定側部材の剛性も強化されるので、ロータハブ6の振れ回りや振動あるいは衝撃等の外乱に対する特性が改善されることとなる。尚、ブラケット2は、ディスク駆動装置の筐体と一体に形成することも可能である。
【0032】
次に、この参考形態に係るスピンドルモータの軸受部の構成について説明する。ロータハブ6の天板6aの下面には、中央開口6a1の周縁にそって環状突部6a2が設けられており、スピンドルモータの停止時には、この環状突部6a2がシャフト4の外筒部4bと当接する。このとき、ロータハブ6の天板6aの下面にける環状突部6a2よりも半径方向外方側は、シャフト4の外筒部4bの上面との間に間隙14を形成して対向しており、この天板6aの下面と外筒部4bの上面との間に形成される間隙14は、後に説明するとおり、スラスト軸受部として機能する。
【0033】
また、シャフト4の外筒部4bの外周面は、ロータハブ6の円筒壁部6bの内周面と対向すると共に、その表面には動圧発生溝16aが設けられることで空気等の気体を作動流体とするラジアル軸受部16が構成されている。このラジアル軸受部16に形成される動圧発生溝16aは、図1において外筒部4bの一部を露出させて示すとおり、スパイラル形状とする他、間隙14側に位置するスパイラル溝部の軸線方向寸法に比べて空気導通路A側に位置するスパイラル溝部の軸線方向寸法の方が長く設定された、軸線方向にアンバランスなヘリングボーン形状とすることができる。
【0034】
磁気シールド板12の上面とディスク載置部6cの下面との間並びに磁気シールド板12の内周面と円筒壁部6bの外周面との間には、ロータマグネット8とステータ10との間に形成される空隙に連続する空隙が形成されており、また円筒壁部6b及びロータマグネット8の下面とブラケット2の上面との間には、ロータマグネット8とステータ10との間に形成される空隙に連続する空隙が形成されている。これら一連の空隙によって、モータの外部からラジアル軸受部16まで連続する、空気導通路Aが形成されている。
【0035】
ロータハブ6が回転を始めると、ラジアル軸受部16では、動圧発生溝16aによるポンピング作用によって空気導通路Aを通じて外気を取り込みながら軸線方向上方側、すなわち間隙14側へと押し込み、ラジアル軸受部16の軸線方向下端部から間隙14にかけて空気による高圧な流体膜を形成していく。上記したとおり、スピンドルモータの停止時には、ロータハブ6は環状突部6a2において外筒部4bの上面に接触していることから、ラジアル軸受部16のポンピング作用によって軸線方向上方側に送り込まれた空気は、間隙14内に溜り、この間隙14内が一定圧以上にまで昇圧された段階で、ロータハブ6がシャフト4に対して浮上し、非接触で回転を開始する。このようにラジアル軸受部16と協働することによって、間隙14はスラスト軸受部としての機能を有することとなる。
【0036】
ロータハブ2が浮上することで、環状突部6a2と外筒部4bの上面との間に隙間が生じるため、間隙14に溜まった外気が抜け、ロータハブ6の浮上力は幾分低下することとなる。しかしながら、ブラケット2には、ロータマグネット8の下面と軸線方向に対向する位置にステンレス鋼等の強磁性体から形成された環状のスラストヨーク18が配置されており、ロータハブ6には、このスラストヨーク18とロータマグネット8との間に作用する磁気力によって、ブラケット2側に常時吸引されることとなるので、間隙14内が昇圧することで発生するロータハブ6の浮上力とこの磁気力とがバランスし、環状突部6a2と外筒部4bとの間の隙間が所定量以上に大きくなることはなく、またロータハブ6の浮上が安定する。
【0037】
このように、表面や形状等に対して高い加工精度が要求される動圧軸受部を外筒部材4bの外周面と円筒壁部6bの内周面との間に1つのみ形成した構成とすることで、加工工数が削減されて歩留まりが改善されると共に、低コスト化することが可能になる。また上記構成のように、軸受部にかえてロータハブ6を磁気背圧して支持することで、軸受の形成箇所を最小とし制限された寸法の中でもラジアル軸受部16の占有する面積を最大とすることによって、例えば外径が1インチの小径なディスクを駆動する極小のスピンドルモータにおいても適用可能となる。
【0038】
また、気体自体がオイル等の液体よりも粘度の低い流体であることから、動圧軸受部を1つのみ設けた構成と相俟って、回転時の粘性抵抗が可及的に小さくなる。よって、軸受部で発生する回転負荷等の損失が低減され、スピンドルモータの消費電力量を削減することが可能である。
【0039】
更に、気体は液体に比べて温度や圧力といった外部環境の影響を受けにくい、つまり、特性の変化が非常に小さい流体であるので、これを作動流体として用いてロータハブ6を支持することで、様々な環境下にあっても所定の軸受剛性を維持し続けることが可能で、非常に安定した回転を得ることができる。
【0040】
加えて、ロータハブ6とシャフト4とのスピンドルモータの停止時における接触が、環状突部6a2と外筒部4bの上面部分のみで発生することから、スピンドルモータの起動からロータハブ6が浮上するまでの間あるいは定常回転状態からロータハブ6が徐々に下降し完全に停止するまでの間に発生する、ロータハブ6とシャフト4との機械的な接触・摺動を最小限に抑え、異常摩耗の発生や発塵が防止される。
【0041】
また、上記構成においては、スラスト軸受部をラジアル軸受部16のポンピング作用に依存した形態となっているが、図1における環状突部6a2を設けず、天板6aの下面との間でスラスト軸受部を構成する外筒部4bの上面に、ラジアル軸受部と同様に空気を半径方向外方側、すなわちラジアル軸受部16側に圧送する形状のスパイラル溝あるいは半径方向にアンバランスなヘリングボーン溝による動圧発生溝を形成し、スピンドルモータの回転に応じて能動的に機能する動圧軸受を配置することも可能である。
【0042】
このようにロータハブ6のスラスト方向の支持を動圧軸受によって行うことで、図1における構成による利点のいくつかは失われるものの、動圧発生溝によるポンピング作用によってロータハブ6を比較的に低い回転速度で浮上させることが可能になる。
【0043】
(参考例2)
次に図2を参照して、第2の参考形態に係るスピンドルモータについて説明する。尚、図2に図示されるスピンドルモータにおいて、上記第1の実施形態に係るスピンドルモータと実質的に同様の構成を有する部分については、同じ図番を付し、その説明は割愛する。
【0044】
第2の参考形態に係るスピンドルモータにおいては、スラスト軸受部としての機能を担う間隙14’が、ロータハブ6’とブラケット2との間に形成されている点で上記第1の参考形態に係るスピンドルモータとは異なる構成を有する。
【0045】
すなわち、ロータハブ6’における円筒壁部6b’の下面の外周縁部には、ブラケット2側に突出する環状突部6b’1が設けられており、円筒壁部6b’の下面における環状突部6b’1よりも半径方向内方側の領域には、ブラケット2の上面との間に間隙14’が形成されている。また、間隙14’が円筒壁部6b’の下面とブラケット2の上面との間に形成されることから、ラジアル軸受部16’における動圧発生溝16a’は、上記第1の実施形態のスパイラル溝又はヘリングボーン溝とは軸線方向における逆方向に外気を圧送する形状を有することとなる。
【0046】
このとき、スピンドルモータの停止時においても軸部4aの外周面とロータハブ6’の天板6a’に設けられた中央開口6a1’との間に形成される間隙からラジアル軸受部16’の軸線方向上端部に至る空気導通路Bが形成されるよう、環状突部6b’1の突出量を決定し、天板6a’の下面と外筒部4bの上面との間に隙間を確保しておく必要がある。
【0047】
この構成においても、上記第1の実施形態に係るスピンドルモータと同様の利点を得ることが可能である。また、スラスト軸受部として動圧軸受部を外筒部6b’の下面とブラケット2の上面との間に設けることも可能である。
【0048】
(実施例1)
次に図3を参照して本発明に係るスピンドルモータの第1の実施形態について説明する。図3に図示されるスピンドルモータは、ブラケット22の略中央部に設けた円筒状のボス部22a内に立設される中空円筒状のスリーブ23及びこのスリーブ23の軸線方向下端部側の開口を密封する円板状のカバー部材25と、これらスリーブ23の内周面及びカバー部材25の上面とによって規定される空間内に挿入されるシャフト24が一体的に設けられたロータハブ26とを有している。シャフト24は、ロータハブ26の中央部から延びる軸部24aと、この軸部24aの外周面に嵌着される外筒部24bとから構成されている。
【0049】
またロータハブ26は、軸部4aと同心状に形成された略円板状の天板26aと、この天板26aの外周縁部からブラケット22側に向かって軸線方向下方側に垂下する円筒壁部26bとから構成される。円筒壁部26bの外周面には、ハードディスク等の記録ディスク(図5においてディスク板53として図示する)が載置されるフランジ状のディスク載置部26cが設けられていると共に、その軸線方向下側外周面にはリング状のロータマグネット28が取付けられている。
【0050】
これらシャフト24を構成する外筒部24b並びにスリーブ23及びカバー部材25は、アルミナ等のセラミックス材あるいは表面にダイアモンドライクカーボンコーティング等の硬化被膜や二硫化モリブデンコーティング等の潤滑性被膜を施したステンレス鋼等の金属材から形成するのが好ましい。
【0051】
また、ブラケット22は、スリーブ23の軸線方向上端部側に向かって開口する略カップ状の形状を有しており、その内周面にはステータ30がロータマグネット28に対して半径方向外方から空隙を介して対向するよう固着されている。ステータ30の軸線方向上方は、ステータ30とロータマグネット28との間に形成される磁路からの漏洩磁束による記録ディスクへの影響を排除するために、強磁性体からなる周状の磁気シールド板32によって覆われている。
【0052】
更に、スリーブ23の外周面上端部には半径方向外方側に突出する環状のフランジ部23aが設けられており、また、ロータハブ26の円筒壁部26bの内周面には、スリーブ23の外径よりも小内径なリング状部材33が取付けられており、このリング状部材33とフランジ部2とによって、ロータハブ26の軸線方向の移動が規制される。すなわち、フランジ部23aに対してリング状部材33が係合することで、ロータハブ26の抜止めが構成される。
【0053】
次に、この実施形態に係るスピンドルモータの軸受部の構成について説明する。まず、スリーブ23の上面には、空気を半径方向外方側に圧送する形状のスパイラル溝あるいは半径方向にアンバランスなヘリングボーン溝による動圧発生溝27aが形成されており、ロータハブ26の天板26aの下面との間に空気等の気体を作動流体とするスラスト軸受部27が構成されている。
【0054】
またスリーブ23の内周面は、シャフト24の外筒部24bの外周面と対向すると共に、その表面には軸線方向溝からなる動圧発生溝36aが周方向に断続的に設けられることで空気等の気体を作動流体とするラジアル軸受部36が構成されている。
【0055】
更に、軸部24aと外筒部24bとで構成されるシャフト24の軸線方向寸法は、スリーブ23の内周面とカバー部材25の上面とによって規定される空間の軸線方向寸法よりも幾分短く設定されており、これにより、シャフト24の先端部下面とカバー部材25の上面との間に空気が保持された空間である空気室29が規定される。
【0056】
磁気シールド板32の上面とディスク載置部26cの下面との間並びに磁気シールド板32の内周面と円筒壁部26bの外周面との間には、ロータマグネット28とステータ30との間に形成される空隙に連続する空隙が形成されており、また円筒壁部26b及びロータマグネット28の下面とブラケット22の上面との間には、ロータマグネット28とステータ30との間に形成される空隙に連続し、これら一連の空隙によって空気導通路Cが形成されている。
【0057】
斯く構成において、スピンドルモータが回転すると、スラスト軸受部27の動圧発生溝27a内に保持されていた空気が半径方向内方側に流動することで動圧が発生し、ロータハブ26の浮上が開始される。また、ラジアル軸受部36においても、動圧発生溝36aによる動圧が発生し、ロータハブ26が調心される。
【0058】
ロータハブ26が浮上することでスラスト軸受部27が空気導通路Cに連続され、動圧発生溝27aによるポンピング作用で外気が軸受内に取り込まれていく。
【0059】
このように、スラスト軸受部27のポンピング作用によって外気が取り込まれると、シャフト24の先端部下面とカバー部材25の上面とによって規定される空気室内に保持される空気が昇圧される。すなわち、この実施形態に係るスピンドルモータにおいては、スラスト軸受部27と空気室29とが協働することでロータハブ26の浮上力を得る構成となっている。
【0060】
また、上記第1の参考形態の場合と同様に、この実施形態においてもロータハブ26には、スラストヨーク38とロータマグネット28との間に作用する磁気力によって、ブラケット2側に常時吸引されており、シャフト24の先端部下面とカバー部材25の上面との間に形成される空間内が昇圧することで発生するロータハブ26の浮上力とこの磁気力とがバランスし、ロータハブ6の浮上が安定する。
【0061】
この構成においても、上記第1及び第2の参考形態に係るスピンドルモータと同様の利点を得ることが可能である。
【0062】
尚、上記構成においてはスラスト軸受部27によって空気を空気室29側に向かって圧送する構成であることから、ラジアル軸受部36では空気を軸線方向に流動させる必要がないので、動圧発生溝36aとして軸線方向溝を形成したいわゆるステップ型の動圧軸受の構成としているが、これにかえて、ラジアル軸受部36に設けられる動圧発生溝36aを図1に図示されるスパイラル溝又はヘリングボーン溝とは軸線方向逆方向に空気を圧送する形状のスパイラル溝又はヘリングボーン溝としてラジアル軸受部36のポンピング作用によって空気を空気室29側に圧送する構成とし、スラスト軸受部27を設けない構成とすることも可能である。
【0063】
このようにラジアル軸受部36によって空気の圧送を行う場合、スピンドルモータの停止時においてもラジアル軸受部36を空気導通路Cに連続させることが必要である。従って、シャフト24の軸線方向寸法をスリーブ23とカバー部材25とによって規定される空間の軸線方向寸法よりも大きくしておく必要がある。この場合、ロータハブ26の浮上を確実に行うために、軸部24aの先端部下面の軸心部に小突起を設けておき、これをカバー部材25の上面に点接触あるいは面接触させ、空気室29を確保しておくことが望ましい。
【0064】
(実施例2)
次に図4を参照して、本発明の第2の実施形態に係るスピンドルモータについて説明する。この図4は、シャフト24’を構成する軸部24a’の表面を露出させた状態で示す断面図である。尚、図4に図示されるスピンドルモータにおいて、上記第1の実施形態に係るスピンドルモータと実質的に同様の構成を有する部分については、同じ図番を付し、その説明は割愛する。
【0065】
本発明の第2の実施形態に係るスピンドルモータにおいては、ラジアル軸受部36の軸線方向上端部側と下端部側とを連通する連通孔40が、軸部24a’の外周面と外筒部24b’との間に形成されている点で上記第1の実施形態に係るスピンドルモータとは異なる構成を有する。
【0066】
すなわち、シャフト24’を構成する軸部24a’の外周面には、その上端部側から下端部側に連続する一条の螺旋状溝40aが形成されており、軸部24a’の外周面に外筒部24b’が嵌着されることで、螺旋状溝40aと外筒部254b’の内周面との間に螺旋状溝40が形成されることとなる。尚、図4においては、螺旋状溝40aは軸部24aの図示方向裏面側に形成された部分について破線で示している。
【0067】
外筒部24b’の内周面上下端部には、螺旋状溝40aの上端部及び下端部に対応して、軸部24a’の外周面との間にごく僅かな隙間が形成されるよう、その上端面及び下端面に至る円周状の凹部24b’1,24b’2が設けられている。連通孔40は、この凹部24b’1,24b’2と軸部24a’の外周面との間に形成される僅かな隙間を通じてラジアル軸受部36に連続している。
【0068】
次に、この連通孔40の機能について説明する。
【0069】
例えばスリーブ23の内周面又は外筒部24bの外周面の最大の加工公差が組み合わされることによって、スリーブ23の内周面と外筒部24bの外周面との間に形成される間隙が、その軸線方向上端部側と下端部側とで隙間寸法に変化が生じた場合、空気に対して異常な流動が誘起されることとなる。その結果、スリーブ23の内周面と外筒部24bの外周面との間に形成される間隙の軸線方向上端部側と下端部側、すなわちスラスト軸受部27と空気室29との間で、空気の圧力差が生じることとなる。この圧力差を放置しておくと、空気が軸線方向下端部側から上端部側へ流動する場合は、空気室29内の空気を昇圧させることができず、ロータハブ26の浮上量が不足し、また、空気が軸線方向上端部側から下端部側へと流動する場合は、空気室29内が必要以上に昇圧され、ロータハブ2の過浮上が発生する。
【0070】
これに対し、連通孔40を設けることで、上記空気に軸線方向の流動が誘起され、スリーブ23の内周面と外筒部24bの外周面との間に形成される間隙の軸線方向上端部側と下端部側とで空気の圧力差が生じても、連通孔40を通じて、内圧の高い側から低い側への空気流動が生じるため、軸受部内の圧力をバランスさせることが可能になる。
【0071】
このように連通孔40を設けておくことで、上記各実施形態のスピンドルモータの構成による利点に加え、加工誤差に対する許容範囲が格段に拡大するので、歩留まりが改善される。また、ラジアル軸受部での空気の軸線方向の流動が許容されるので設計の自由度も高くとれる。
【0072】
また、図4に図示されるように、連通孔40の両端開口部をそれぞれ、外筒部24b’の内周面に設けられた円周状の凹部24b’1,24b’2と軸部24a’の外周面との間に形成される僅かな隙間内に位置させることで、空気の導通抵抗が生じ、連通孔40内を急激に空気が流動することはない。すなわち、連通孔40は上記した圧力の調整機能だけでなく、急激な圧力変動を抑制する緩衝機能を有することとなる。
【0073】
つまり、振動や衝撃といった外乱によってロータハブ26が振れると、軸受部内に形成される間隙はロータハブ26の移動方向側で広く、またその反対側では狭くなろうとする。このとき、連通孔40が直接的にラジアル軸受部36の軸線方向上下端部に連通されていた場合には、間隙が狭くなろうとする側からその反対側に向かって空気が容易に流動することが可能となるため、圧力が急激に変動しロータハブ26の振れを抑えることができない。しかしながら、連通孔40の両開口部の流通抵抗を大きくすることで、空気の流動が妨げられ、ロータハブ26の振れも最小限に抑えられると共に、時間を要することなく所定の浮上量へ復帰することが可能になる。
【0074】
(ディスク駆動装置の構成)
図5に、一般的なディスク駆動装置50の内部構成を模式図として示す。ハウジング51の内部は塵・埃等が極度に少ないクリーンな空間を形成しており、その内部に情報を記憶する円板状のディスク板53が装着されたスピンドルモータ52が設置されている。加えてハウジング51の内部には、ディスク板53に対して情報を読み書きするヘッド移動機構57が配置され、このヘッド移動機構57は、ディスク板53上の情報を読み書きするヘッド56、このヘッドを支えるアーム55及びヘッド56及びアーム55をディスク板53上の所要の位置に移動させるアクチュエータ部54により構成される。
【0075】
このようなディスク駆動装置50のスピンドルモータ52として上記実施形態のスピンドルモータを使用することで、携帯情報端末等の小型機器への適用が可能であると共に、長時間の使用並びに信頼性の向上が可能となる。
【0076】
以上、本発明に従う動圧軸受、スピンドルモータ並びにディスク駆動装置の一実施形態について説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0077】
例えば、上記実施形態においては、シャフトは、軸部の外周面に外筒部を嵌着した二重構造にて構成されているが、組立工程上許容されるならば、シャフトは一体構造であっても構わない。
【0078】
【発明の効果】
本発明のスピンドルモータによれば、小型・薄型化及び低コスト化を達成することが可能であると共に、様々な環境下にあっても安定した回転が可能で且つ低消費電力化することが可能となる。
【0079】
また、本発明のディスク駆動装置によれば、携帯情報端末等の小型機器への適用が可能であると共に、長時間の使用並びに信頼性の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の参考形態に係るスピンドルモータの概略構成を示す断面図である。
【図2】第2の参考形態に係るスピンドルモータの概略構成を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るスピンドルモータの概略構成を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るスピンドルモータの概略構成を示す断面図である。
【図5】ディスク駆動装置の内部構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
6,6’ ロータ
4 シャフト
4a 軸部(小外径部)
4b 外筒部(大外径部)
14,14’ 間隙(スラスト軸受部)
16 ラジアル軸受部
Claims (6)
- 内部に空洞を規定する略カップ状のロータと、該ロータと一体的に回転するシャフトと、該シャフトが挿通される一端閉塞状の円筒状スリーブとを備えたスピンドルモータにおいて、
前記ロータの底面の軸線方向下側に設けられた前記スリーブの開口側端面又は、前記スリーブの開口側端面と軸線方向上側の前記ロータの面に気体を半径方向内方側に流動させる形状の動圧発生溝が形成されることで気体を作動流体とするスラスト軸受部が構成され、
前記シャフトの外周面と前記スリーブの内周面とは半径方向に対向すると共に、気体を作動流体とするラジアル軸受部が構成され、
前記ラジアル軸受部には、動圧発生溝として軸線方向溝が設けられており、また前記スリーブの閉塞側端面と前記シャフトの端面との間には、前記スラスト軸受部で発生する動圧と実質的に同等の圧力を有する空気室が形成され、前記ロータは前記スラスト軸受部と該空気室との協働によって浮上力が付与されると共に、
前記ロータには、前記スラスト軸受部で発生する動圧の作用方向とは対向する方向に磁気背圧されていることを特徴とするスピンドルモータ。 - 前記ラジアル軸受部には、動圧発生溝として気体を軸線方向に流動させる形状の動圧発生溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスピンドルモータ。
- 前記スリーブの開口側端面は、軸線方向に間隙を介して前記ロータの面と対向していることを特徴とする請求項1及び2のいずれかに記載のスピンドルモータ。
- 前記スリーブの閉塞側端面に対向する前記シャフトの端面には、軸方向下に小突起が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスピンドルモータ。
- 前記シャフトは軸部材と該軸部材の外周面に嵌着される中空円筒状の外筒部材とから構成され、該軸部材と該外筒部材との間には、前記ラジアル軸受部の上端部と下端部とを連結する連通孔が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のスピンドルモータ。
- 情報を記録できる記録ディスクが回転駆動されるディスク駆動装置において、ハウジングと、該ハウジングの内部に固定され該記録ディスクを回転させるスピンドルモータと、該記録ディスクに情報を書き込み又は読み出すための情報アクセス手段とを有するディスク駆動装置であって、
前記スピンドルモータとして、請求項1乃至5のいずれかに記載したスピンドルモータを備えてなることを特徴とするディスク駆動装置。
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